石川県加賀市がxIDおよびLayerXと連携、ブロックチェーンとデジタルID活用の電子投票システム構築へ

石川県加賀市がxIDおよびLayerXと連携協定、ブロックチェーンとデジタルID活用の電子投票システム構築へ

石川県加賀市xIDLayerXは12月3日、同市におけるブロックチェーンおよびデジタルIDを活用した「安全かつ利便性の高いデジタル社会」の実現に向けて、連携協定を締結したと発表した。今後は、行政サービスのデジタル化推進に向けた取り組みの一環として、加賀市の政策に関する電子投票実現に向けた検討を開始する。

今回の提携を機に、加賀市における課題解決の手段としてブロックチェーン技術をどう活用ができるかの討議を、三者間で協力して取り進める。その取り組みの第1弾として、ブロックチェーンおよびデジタルID技術を活用した市の政策に関する電子投票(インターネット投票)の実現に向けて、検討を開始する。

デジタル化が進む北欧・エストニアでは、2004年の提供開始以来、電子投票は一般的なものとなっており、2019年の国政選挙では高齢者を含む半数近くの投票者が、インターネットを介した電子投票を利用したという。特に過疎地に住む市民にとっては、選挙時に遠く離れた投票所に足を運ぶ必要がなくなり、また自分のペースで投票できるなど、その利便性の高さは一定の評価を受けているとした。

日本の公職選挙法における電子投票は、投票所においてタッチパネル式の投票用デバイスなどを使用する方法は地方選挙において認められているものの、システムの安定性、投票用デバイスの費用などが課題となっており、加賀市においても実現に至っていないという。また、インターネットを介した投票については、二重投票の防止、投票の秘密を守るための高い技術ハードル、投票用デバイスの費用など、より多くの課題がある。

今回、投開票プロセスの透明性と投票内容の秘匿性を両立した電子投票プロトコルを研究・開発したLayerXと、本人であることが証明でき、かつひとりにつきIDひとつのみ発行できる技術を持つxIDを連携させることで、投票の秘密を守ると共に一人一票主義を担保できる、利便性が高い電子投票技術の構築が可能であると考えているとした。

今後は、電子投票プラットフォームを提供する事業者との提携を視野に入れながら、根幹技術に関する議論を進める。また、民意の反映や、市政の透明性の担保を目的として、加賀市の施策に関する電子投票の実現可能性を検討する。

石川県加賀市は、人口減少や高齢化が急速に進む中で行政のデジタル化にも力を入れており、利便性の高い行政サービスの提供を進行。2018年に「ブロックチェーン都市宣言」を発表し、RPA(ロボティック プロセス オートメーション)による市役所業務の一部自動化などデジタル化を推進。2019年にはブロックチェーンの要素技術を採用したデジタルIDソリューションを提供しているxIDとの連携協定を締結。2020年8月には同ソリューションを活用した電子申請サービスを提供開始するなど、着実にデジタル化に向けた歩みを進めている。

加賀市ではブロックチェーンを広く活用することで、より耐改ざん性と透明性の高い行政システムの構築を目指しているものの、ブロックチェーン技術はその特性上、透明性が高いがゆえにデータ保護、プライバシーの観点から情報の秘匿性・匿名性の担保が容易ではなく、それらが社会実装における課題となっていた。

LayerXは、ブロックチェーンの社会実装にかかる次世代プライバシー保護技術「Anonify」(アノニファイ)をはじめ、プライバシー保護と個人情報の活用の両立のため、秘匿化・匿名化技術の研究開発を推進しており、今回デジタルIDを用いることで、利便性が高くかつ安全なデジタル社会の実現を目指している加賀市・xIDのビジョンが一致し、連携協定の締結へと至ったという。

xID」は、マイナンバーカードと連携することで、より手軽に本人認証ができるデジタルIDアプリ(Android版iOS版)。初回登録時にマイナンバーカードに格納されている基本4情報(氏名・住所・性別・生年月日)をスマートフォンのNFC経由で読み取り、マイナンバーカードとxIDを紐付ける。その後、連携するオンラインサービスのログイン用の暗証番号と電子署名用の暗証番号を設定し、利用時に認証・電子署名することで本人確認を完結し、様々なオンラインサービスの安全な利用を実現する。

LayerXのAnonifyは、PCやスマートフォンに備えられたプロセッサーのセキュリティ機能であるTEE(Trusted Execution Environment)を活用した、ブロックチェーンのプライバシー保護技術。ブロックチェーン外のTEEで取引情報の暗号化や復号を行いビジネスロジックを実行することで、ブロックチェーンの性質を活かしながらプライバシーを保護する、LayerX独自のソリューション。

石川県加賀市がxIDおよびLayerXと連携協定、ブロックチェーンとデジタルID活用の電子投票システム構築へ

xIDは「信用コストの低いデジタル社会を実現する」をミッションとして掲げ、マイナンバーカードに特化したデジタルIDソリューションを中心に、次世代の事業モデルをパートナーと共に創出するGovTech企業。デジタルID先進国のエストニアで培った知見・経験をもとに、情報のフェアな透明性を担保し、データ・個人・企業・政府の信頼性が高い社会をデジタルIDを通して創出する。

LayerXは、「すべての経済活動を、デジタル化する。」をミッションに、ブロックチェーン技術を軸として、金融領域を始めとした様々な産業のDXを推進。信用や評価のあり方を変え、経済活動の摩擦を解消し、その恩恵を多くの企業や個人が受けられるような社会を実現していく。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:xID電子投票プライバシー(用語)マイナンバー(製品・サービス)LayerX(企業)LayerX Labs日本(国・地域)

モバイル投票は新型コロナに苦悩する投票所を救う

2020年大統領選挙を目前にして、不正投票への不安を巡って激しく対立しする米国では、今なお脅威が衰えない新型コロナウイルスへの対応として、州や地方の選挙管理人たちが投票の延期と投票妨害の告発を求めている。

選挙管理人の課題は、投票所の安全と効率性を保ち、市民により効果的で信頼性の高い選択肢を提供することだ。

新型コロナウイルス対策として全国に広がった郵便投票という選択肢は、選挙事務員への過度な負担増加(AJC記事)と、有権者の選挙権が剥奪されかねないという点で非難されている。予備選挙では、郵便投票の投票用紙が失われたり、票数に入れられないことがあった。

最近になって、従来の不在者投票よりも多くの郵便投票を許可することに政府の批判(Washington Times記事)やメディアの批判(CBS News記事)が集まっているが、そこではシステムの欠陥に鋭い光が当てられている。

私は、投票者の身元を保証しつつ、その匿名性を保ち、新型コロナウイルスから守ることができる、より優れたテクノロジーの導入という道があると信じている。人が投票所に赴く直接投票を補完するモバイル投票は、今の政治的に緊迫した空気の中では、最も合理的な選択肢だ。

今の投票システムは時代遅れ

投票所で直接行う以外の投票方法の選択肢を提供する取り組みは、いまだ底知れず低迷を続ける投票率の向上を目指して年々増加している。郵便投票、投票時間の延長、週末投票、その他のアイデアは、ある程度は成功しているものの、旧来の時代遅れな手段への依存は変わらない。地域ごとに投票方法を決められるアメリカの分散型投票制度は、紙による投票から、メカニカルな投票装置、タブレットのタッチスクリーンを使う電子投票に至るまで、さまざまな投票デバイスを生み出した。

古風な投票方式について語ろうとするなら、「Hanging Chad」という言葉が選挙用語に加わった2000年大統領選挙の再集計問題を見れば事足りる。Hanging Chadとは、パンチ式投票用紙の穴がきれいに開かずに、穿孔くずがくっついている状態のこと。それを有効票とするか否かで過去に問題になった。この2000年大統領選挙の教訓から数々の投票方式の改善が試みられてきたが、20年が経過した現在でも、多くの地域で同じ方式が使われており、同じ失敗が繰り返されている。

今年前半の予備選挙では、郵便投票を広めようとする努力が難航(Newsweek記事)した。ペンシルベニア郡では6000人の投票者が、投票日の前日までに票を発送せず、締め切り前日の消印がもらえなかった。

投票用紙の請求を行ったにも関わらず、投票期限までに用紙を受け取れない投票者が全国にいた。期限までに投票用紙が郵送された場合でも、一度に大量の投票を受け取った選挙事務員は、すべてを集計しきれなかった(New York Times記事)。

投票所での投票は長い行列やマスクなど危険な密集状態

新型コロナウイルスが大部分の地域に居座っている状況で、選挙事務員は、投票所で行われる直接投票での住民のための安全対策を考える必要があるが、それでも惨事となる危険性は残る。大統領選挙では、投票所に長い行列ができて長時間待たされる地域が少なくない。投票者の登録を確認する受け付けテーブルで、選挙管理人やボランティアの数が不足していることもしばしばだ。

ボランティアは高齢者が多く、ウイルスに感染した場合に重篤化するリスクが高い。選挙管理人は、投票者の安全を守るだけではく、職員やボランティアの安全も同様に守る必要がある。そのためには、より多くの手順、検査方法、必要に応じて消毒の方法を設定しなければならず、それが投票者の待ち時間をさらに延長しかねない。

何百もの人たちが列に並び、待ち時間が数時間にもおよぶとなれば、投票を諦める市民が増えてしまう恐れがある。これは米国の民主主義にとって大変な災難だ。

モバイル投票なら安全

モバイル投票システムでは、登録投票者は自分のスマートフォンと認証されたアプリで投票を記録できる。ブロックチェーン技術を使ってアプリはオーディット・トレール(監査記録)を提供し、投票者の身元を確認する。モバイル投票は、紙の記録も残せるので、さらに安全度が高まる。

初期のモバイル投票プログラムは、米国の住民と海外に赴任している軍関係者が簡単に投票できる手段を提供した。新型コロナウイルスの耐性が低い身体障害者にも有効だ。

2018年、ウェストバージニアで市民と海外の軍関係者に対して実施されたモバイル投票の試験運用では、高い投票率が示された(New York Times記事)。

モバイル投票はまた、ウェブによる投票システムを含む(Voatzブログ記事)その他の電子投票方式よりも安全であることが証明されている。電子投票に批判的な人たちはハッキングの危険性を指摘するが、事実はそれを否定している。

2020年5月、慈善団体のTusk Philanthropies(タスク・フィランソロピーズ)は、5つの州で、複数のモバイル投票技術のプラットフォームを用いて、海外の投票者と障害者を対象にモバイル投票の実験を行った。選挙の安全性を心配するのはいいことだが、モバイル投票は、投票用紙の期限切れや紛失、書き損じ、機械の故障などさまざまな欠陥の可能性を含む既存のどの選挙制度よりも安全性は高い。

全員が参加してこそ民主主義は強くなる

この困難で不安な時期、私たちの政府のリーダーには、信頼と誠実さが何よりも求められる。安全で確実で信頼できる環境で投票する米国人の権利は、実に多くの祖先たちが命を賭して守ってきた理想を堅持するための礎となる。

参加する市民の数が増えれば、民主主義は強くなる。新型コロナウイルスのパンデミックが世界的で続く中、この秋の大統領選挙で「投票災害」を防ぐ新たな選択肢の探求を怠れば、米国の未来に深刻な影響を及ぼしかねない。

【編集部注】著者のJonathan Johnson(ジョナサン・ジョンソン)は、Medici Venturesの社長でOverstock.comのCEOを務める人物だ。

画像クレジットerhui1979 / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

米国下院議会が遠隔投票を承認、ただし技術は未定

米国下院議会は、米国時間5月15日に新型コロナウイルスのパンデミックに対応するための下院965号決議が採択されたことで、その歴史上で初めての遠隔投票が可能になった。

マサチューセッツ選出のJim McGovern(ジム・マクガバン)下院議員が提出したこの議案は、社会が正常に戻るまでの45日間、議員による代理投票と委員会への遠隔参加を認めるというものだ。

下院決議965号はまた、国会議事堂の外からのデジタル投票を超党派で研究する仕組みを確立することにより、米国議会の運用方法を恒久的に変える可能性もある。

その指示によれば「下院管理委員会の議長は、野党幹部と協議の上、下院議会での遠隔投票を可能にする技術の有効性について調査し、下院議会での遠隔投票に使用できる実施可能で安全性が保証された既存技術を決定した後、下院に対して証明しなければならない」とされている。

これまでの下院の規定では、本人の直接投票のみが認められていた。上院議会では、いまだに声による「賛成」と「反対」を集計用紙に記録している

5月15日の議会の同意は、新型コロナウイルス(COVID-19)が米国中のあらゆる組織に対して、主にデジタルツールを駆使して長年の慣習を改めるよう迫っていることのひとつの表れだ。

下院決議965号が求める短期と長期のそれぞれの対応に、下院議会がどのような技術を導入するのか、詳細はまだ不透明だ。

この代理投票の合意により、下院議員は指名された議事堂内の代理人を通じて遠隔投票できるようになる。つまり事実上の議会の代打だ。公聴会の遠隔参加においては、Google MeetやMicrosoft Teamsといったいくつかのオプションが選択できる。先週、上院議会で証言を行ったAnthony Fauci(アンソニー・ファウチ)博士はZoomを使用した。

長期的な遠隔投票の手段については、下院運営委員会の議長Zoe Lofgren(ゾーイ・ロフグレン)氏(民主党カリフォルニア州選出)と、下院決議965号に反対票を入れた野党Rodney Davis(ロドニー・デイビス)氏(共和党イリノイ州選出)に委ねられている。

ロフグレン氏は5月15日の下院決議965号を支持する声明で、それがどのようなシステムになるかを、こう説明している。「議場での投票では、議員主導の遠隔管理による承認を組み合わせた安全性が保証された電子メールシステムを信頼することになります。このシステムでは、代理投票用として安全性が保証された電子メールを使用します。つまり、サイバーセキュリティーの観点からよく理解されていて、非常に低い帯域幅に対応した、堅実で、既知の、回復力のある技術です」。

もちろんその前に、ロフグレン氏と共和党下院議員デイビス氏は、ほぼすべての案件で両党が対立している今の状況下で合意を得なければならない。下院決議965号の採決は、党によってくっきり割れた。民主党議員の217名は賛成票を投じたが、共和党議員は誰ひとりとしてこの議案を支持しなかった。

関連記事:Why Congress isn’t working remotely due to COVID-19(未訳)

これまで下院議会は、遠隔投票を求める声に抵抗してきた。911事件の後、そして2001年の炭疽菌攻撃の後にも、同様の対策が必要だとの議論があった。だがそれは有権者の代表として議会で実際に投票する姿を見てもらいたいという、昔からの願望によって掻き消されてしまった。

この2カ月間で下院議会は、国中がテクノロジーを利用した対策で遠隔化が進む中、人と人が直接面と向かう米国最後の職場となりそうだ。

3月に新型コロナウイルスが米国を襲った直後、下院議員Eric Swalwell(エリック・スウォルウェル)氏(民主党カリフォルニア州選出)は、アーカンソー州選出の共和党下院議員Rick Crawford(リック・クロフォード)氏と共同で、特別な状況化で議員が公聴会に遠隔参加し投票できるようにする決議案を提出したことがある。

画像クレジット:Bill Dickinson / Getty Images

だがそれは、その当時、議会をそのまま存続させ、初めての新型コロナウイルス景気刺激法案を通すために議員の出席を望んでいた下院議長Nancy Pelosi(ナンシー・ペロシ)氏によって拒否されてしまった。

それから2カ月、200名のアメリカ人の命が失われてようやく、下院議会で最も重要な手続きに、その231年の歴史で初めて変革をもたらす影響力が新型コロナウイルスにあることがわかってきた。

人による直接投票は、間もなく2段認証のデジタル投票に置き換えられそうだ。それは、各地を回って有権者と話をし、ワシントンD.C.と地元との間に時間を割いてきた政治家の長年の慣習を変えることになるだろう。

画像クレジット:Brendan Hoffman / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:金井哲夫)

新型コロナ蔓延のいま、我々は安全なオンライン投票について検討しなければならない

オンライン投票

予備選挙と選挙を延期した州が急速に増加している。ニュージャージー州は地方選挙の延期をも決定した。議会でさえ、今後挙がってくるパンデミック関連法案の採決をリモートな手段で行うべきという要求が高まっており、新型コロナウイルスの蔓延という前例のない事態に対処する中で、伝統から離れ、安全な選挙とは何かを再考している。

しかし、この議論では重要な背景を見落としている。多くの米国市民はすでに在宅でまたは海外からオンラインによる投票を行っているのだ。米国の23州およびワシントンDCでは一部の不在者投票をEメールで、また別の5つの州ではウェブポータルで行うことを認めている

我々は、一部の有権者にオンラインによる投票手段を提供することが義務付けられている2つの州の選挙担当官である。これらの有権者にとって、この議論は学術的なものではなく、必要上の問題である。従来の投票方式は海外在住者、軍勤務者、障害者にとって機能していない。選挙担当官として、市民の憲法上の権利を守るのは我々の義務であり、彼らがどのような環境にいるのであれ、また彼らの現実がどのようなものであれ、オンライン投票を実現することで、これらの2つのグループに属する人々が我々の民主主義に参画する機会が劇的に改善するのである。

オンライン投票を認めるか否かを議論すべきではない。そうではなく、問うべきは「電子的なかたちでの投票を促進するための最も安全な方法とはなにか」である。オンライン投票はすでに既存のものだからである。また一部の有権者グループにオンライン投票が必要とされており、そのニーズが近い将来拡大する可能性があるからである。

連邦投票支援プログラムが隔年で行う海外米国市民人口分析によると、全国で300万人の有権者が海外に在住しているが、そのうち2016年の選挙に投票したのは7%だけであった。同分析によると、投票方式におけるバリアを取り除くことで、投票率が30%上がることがわかった。また別の分析では、100万人近くの現役軍人が投票権を持っているにもかかわらず、2018年の選挙で実際に投票したのはそのうちの約23%にすぎなかったことが明らかになった

従来の郵送による不在者投票や決まった場所で行われる投票の仕組みはこれらの有権者の役には立たない。選挙権を奪われているのは、彼らだけではない。投票率について言えば、障害者を持つ3500万人の投票者にとっても現実は厳しい。2017年10月の米国会計検査院の報告書でも、プライバシーを守った形での投票を難しくする機械など、障害者が投票するにあたっての多くの問題が明らかにされた。 2017年のラトガース大学の研究で明らかになったように、過去2回の大統領選挙で障害者の投票率が2008年の57.3%から2016年の55.9%に下がっているのは無理もないことである。

新たなテクノロジーにより、海外に在住する米国市民や障害を持った有権者の投票へのアクセスが拡大され、確保される。ユタ州の最高齢の有権者である、106才のMacCene Grimmett(マッケーン・グリメット)さんについて考えよう。彼女が生まれた1913年には、女性の選挙権は認められていなかった。彼女は2年前に足首を負傷して以来、外出できなくなり、またペンをしっかり握ることも難しい。しかし昨年、モバイルデバイスのアプリのおかげで投票することができたのだ。テクノロジーによって力を得たマッケーンさんは、誰かに頼ることなく、匿名で、安全にそして威厳をもって、彼女の最も基本的な市民としての義務を遂行することができた。

全国で様々な規模の先行試験や検証が行われ、現在のところ前向きな結果が示されている。2019年にユタ郡が海外在住者に携帯電話による投票を提案したところ、投票率に飛躍的な増加が見られた。アプリを使って海外から投票した有権者の投票率は、投票日に実際に会場に出向いて投票した人の投票率よりも高かった。2019年には、オレゴン州でも市民に対しアプリによる投票を認めた

重要なのは、全ての先行試験に厳密に結果を精査する機能が含まれているため100%の精度を確保できる点である。

最終的な課題は、投票へのアクセスを最大化するために、安全で革新的な方法でいかにテクノロジーを継続的に用いるかである。安全は最優先事項である。我々は、相互につながりあった世界に住んでおり、海外の敵やその他の悪意のある組織が情報技術を使用して我々の政治システムを弱体化させようとしていることを深く認識している。今後に向けて進む中で、我々自身の責任として、自らの環境を理解しておくべきである。

これらの懸念は実際問題ではあるが、インタネットを基盤とした投票の必要性や潜在的なメリットを抑制するものであってはならない。我々のテクノロジーには全く綻びがないと盲目的に信じることはできないのと同様、何百万もの有権者の選挙権を無駄にし、選挙への信頼を揺るがすような無意味で全面的な不信に陥る必要もない。

大ざっぱな判断を下すのではなく、それぞれのケースを個別に検討する必要がある。例えば、アイオワ州では、不十分なトレーニング、検証の欠如や、ある政党による特定のテクノロジープラットフォームに関する政党幹部会での結果報告にトラブルなどがあったことが原因でオンライン投票がうまくいかなかった。その失敗がなぜユタ州の障害者やオレゴン州の軍人がアプリで投票し、承認することに悪影響を与えるべきなのだろうか?

全市民のために投票へのアクセスを確保することにより投票率を上げることは、我々の民主主義を守るために、最も優先すべき事項である。21世紀の今、投票に電子的な手段が含まれるのは必然の成り行きである。海外の有権者に関する問題に直面し、また国内ではCOVID-19のような新たな課題が発生し、人々が大勢集まり長い列を作ることは脅威と考えられる現在では特にである。

我々は投票へのアクセスを広げるため、システムを強化しより耐性の高いものにしつつ、試行や実験を継続していく必要がある。小規模の先行試験からはじめ、機能する点を確認し、結果を厳密に精査してから、それをまた新しい段階の検証へと活用していくのである。例えばアプリベースの投票はEメールで投票を返信するよりも安全であり、Eメールでは不可能な投票者の匿名性を保護することもできる(Eメールを開き、集計のため投票を紙の投票用紙に手書きでコピーする担当者は、誰が送信したかわかるため)。

これらはインターネット上での投票が現時点で成功を収めている側面である。我々がゆっくりと責任と自信をもって前進するのと並行し、これらの成功が議論が促進してくれるはずである。

【編集部注】寄稿者のAmelia Powers-Gardner(アメリア・パワーズ-ガードナー)は、2019年1月に就任したユタ州ユタ郡の郡書記官。Chris Walker(クリス・ウォーカー)はオレゴン州ジャクソン郡の郡書記官だで、2008年に初めて任命され、 その後2010年、2014年に再任された。

画像クレジット: NickS / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Dragonfly)