アップル、自分でiPhoneやMacを修理するための純正パーツ・ツールを提供するプログラムを発表

Apple(アップル)からうれしい、そして予想外のアップデートがあった。同社は、ユーザーが自宅でデバイスの一般的な修理を行えるようにするための新しいプログラム「Self Service Repair」を発表した。このプログラムでは、故障したデバイスを持っているユーザーに、同社のGenius Bar(ジーニアスバー)で使用しているものと同じ「Apple純正」のツールや部品が提供される。

また、新しいApple Self Service Repair Online Storeでは、オンラインの修理マニュアル(動画ではなくテキスト)を提供する。これは、同社が独立系修理業者(現在、米国内に2800社とApple正規サービスプロバイダー5000社が存在)向けに、ディスプレイ、バッテリー、カメラの修理を中心にiPhone 12と13から展開してきたものと似ている。また、M1Mac向けの同様のサービスも「間もなく」開始する予定だ。

COOのJeff Williams(ジェフ・ウィリアムズ)氏は今回の発表のリリースの中で「Apple純正部品へのアクセスを拡大することで、修理が必要になった際の顧客の選択肢がさらに広がります」と述べている。「Appleは過去3年間で、Apple純正部品、ツール、トレーニングを利用できるサービス拠点の数を約2倍に増やしてきましたが、今回、自分で修理をしたい人のための選択肢を提供します」。

Appleは具体的な価格をまだ公表していないが、顧客が破損した部品をリサイクルのために郵送した場合、最終的な価格に対するクレジットを得る。2022年初めに米国でサービスを開始する際には、約200種類の部品やツールを提供する予定だ。修理作業を自宅で行っても機器の保証は無効にはならないが、修理の過程でさらに製品を破損させてしまった場合は無効になるかもしれない。なのでマニュアルをしっかりと読んだ方がいい。これらを確認した上で、Apple Self Service Repair Online Storeから部品を購入できる。

今回のニュースは、修理する権利の法制化を求める動きが強まっている中でのものだ。これには家電業界の一部の大物が反対している。米議会図書館は最近、ユーザーによる修理を妨げるDMCA(デジタルミレニアム著作権法)の適用除外を承認した。「違法な修理制限に対処するために、FTC(米連邦取引委員会)は法的権限に基づいて、適切な法執行や規制、消費者教育などの選択肢を追求していく」と記されたFTCの5月の議会への書簡を受けて、大統領までもがこの問題に取り組んでいる。FTCはまた、消費者が購入・所有した製品を修理する際の選択肢を確保するために、州または連邦レベルで議員と協力する用意がある、としている。

修理できるようにすることを支持する人たちは、計画的な陳腐化による価格負担の軽減や、E-waste(廃棄物)に関する世界的な関心の高まりなど、多くの問題を挙げているが、後者は過去数年間にわたってAppleが取り組んできた問題でもある。スマートフォンの技術が高度化するにつれ、家庭での修理がますます困難になっている。バッテリー交換が可能だった時代からは程遠い状況だ。こうした中、ユーザーの修理性を前面に押し出したFairphoneのようなブティック系の製品が生まれた。

Appleの新しいプログラムは、2022年以降、さらに多くの国で展開される予定だ。それでも同社は明らかに、状況が許す限りユーザーに正規販売店での修理を奨励しているが(特にAppleCare+に加入している場合)、自分の手で解決したいと考える多くのユーザーにとっては、これはすばらしい一歩となる。

画像クレジット:Apple

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

窓型スマートディスプレイのアトモフがAtmoph Window 2向けに国際宇宙ステーション・ISSからの独自映像をリリース

窓型スマートディスプレイのアトモフが1.5億円を追加調達、CG制作や世界展開を加速

窓型スマートディスプレイのアトモフがAtmoph Window 2向けに国際宇宙ステーション・ISSからの独自映像をリリースアトモフ(Atmoph)は11月16日、国際宇宙ステーション(ISS)からの独自映像を撮影し、窓型スマートディスプレイ「Atmoph Window 2」の風景としてリリースを開始した。Space BD協力のもと、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の制度を利用して、アトモフのためだけに撮影された映像となっている。

ISSからの映像は、Atmoph Windowでも用意していたが、今回のAtmoph Window 2用映像は、ISSから見えるオーストラリア・ケアンズを定点で捉えた映像のため、まさに「窓から見える宇宙の風景」を再現しているという。

アトモフがこだわる、映画のような迫力のある構図でオリジナル撮影ができたことについて、同社代表の姜京日(かん きょうひ)氏は「SF映画の世界ではなく、もう人類の宇宙居住は始まっているということを感じてもらいたい」とコメントしている。窓型スマートディスプレイのアトモフがAtmoph Window 2向けに国際宇宙ステーション・ISSからの独自映像をリリース

Space BDは、日本の宇宙ビジネスを、世界を代表する産業に発展させることを目指す「宇宙商社」。創業以来、宇宙への豊富な輸送手段の提供とともにISSを初めとする宇宙空間の利活用において、ビジネスプランの検討から技術的な運用支援までをワンストップで取り組んでいる。またJAXAと複数のパートナーシップを組む唯一の民間事業者として、ISS「きぼう」日本実験棟からの衛星放出事業、船外プラットフォーム利用事業などを核に事業開発を推進している。

Atmoph Window 2は、アトモフが独⾃に4K/6K撮影した世界各地1000カ所以上の風景とリアルなサウンドを楽しめる、27インチ窓型スマートディスプレイ。Wi-Fi(11ac)、Bluetooth 4.0を利用可能で、3Wフルレンジスピーカー×2を搭載。Googleカレンダー連携や、スマートスピーカーからの音声操作などIFTTT連携機能も採用している。Basicタイプのサイズは638×372×57mm。3台をつなげることで、パノラマ表示も可能。

 

京都大学、高温超伝導線の交流損失を20分の1に低減しモーターなどの超伝導化に道を拓く

京都大学、高温超伝導線の交流損失を20分の1に低減しモーターなどの超伝導化に道を拓く京都大学は11月16日、高温超伝導線に交流の磁界中で発生する「交流損失」を1/20に抑えることに成功したことを発表した。液体水素や液体窒素などの比較的高い温度で超伝導状態になる高温超伝導線は、大量の電気を効率的に流すことができるため、モーターなどの電気機器の高効率化やコンパクト化に貢献すると期待されているが、交流損失の問題が実用化のハードルになっている。

この研究は、京都大学工学研究科の雨宮尚之教授と古河電工グループからなる研究グループによるもの。交流の磁界の中で高温超伝導線を使うと、細い磁束の線「磁束量子線」が超伝導体の中に浸入し、それが移動するときに摩擦熱のようなものが発生する。そして、交流の磁界内で交流損失と呼ばれる損失が生じる。また高温超伝導線は、局所的な不良や外からの干渉によって超伝導状態が破れたり、それによって線が損傷したりすることもある。そのため、超伝導状態を保つ「安定性」と破損を防ぐ「保護性」を備える必要があるのだが、これまで、交流損失の低減と、安定性と保護性の両立は難しいとされてきた。

京都大学、高温超伝導線の交流損失を20分の1に低減しモーターなどの超伝導化に道を拓く

そこで研究グループでは、高温超伝導線の薄膜状の超伝導体を細いフィラメントに分割(マルチフィラメント化)することで、磁束量子線の移動距離を短くして交流損失を小さくした。さらに、フィラメントに短い部分があるなどして超伝導状態が破られないよう、銅メッキを施して電流が問題部分を迂回できるようにした。こうすることにより、標準的な薄膜高温超伝導線に比べて交流損失は約1/20に抑えられた。

京都大学、高温超伝導線の交流損失を20分の1に低減しモーターなどの超伝導化に道を拓く京都大学、高温超伝導線の交流損失を20分の1に低減しモーターなどの超伝導化に道を拓く

現在、研究グループでは、この銅メッキした超伝導フィラメントを細い芯のまわりに螺旋状に巻きつけることで、数十mにもなるマルチフィラメント薄膜高温超伝導線「SCSC」(ダブルSC)ケーブルの開発を進めている。SCSCケーブルを使うことで、より高い密度で交流電流を流せるコイルが実現する。そうなれば、軽量コンパクトで大出力なモーターを作ることができるため、船舶や航空機の電動化や、風力発電機の軽量化による大容量化など、脱炭素に貢献できるとのことだ。

障がい者向け脳モニタリングヘッドセットを開発するCognixion、Alexaと統合しスマートデバイスのハブにもなる

身体障がい者向けの直感的な脳モニタリングヘッドセットとインターフェースを設計しているスタートアップCognixionが、アクセシビリティの向上を追求するため、1200万ドル(約13億8000万円)のAラウンドを実施した。今回の資金調達により、同社は医療機器や支援機器が広く普及するために必要な長い要件を満たすことができるはずだ。

5月に詳しく紹介したように、同社は脳波を検査して脳の活動パターンを見つける。そしてそれがカーソルをコントロールして、画面上を行き来するための完全なインターフェースを構成する。現在の対象機器はiPhoneとそのディスプレイだが、そこからさらにスピーカーやアクセシビリティデバイスに信号を送り、単一のUIで必要なことはすべてできる。

その基盤となっているのは、新しいタイプの(人体に傷を付けない)電極と、ヘッドセットに埋め込まれた電極から発生する信号をすばやく解釈する機械学習システムだ。脳波は有用ではあるが一般的には遅くてノイズが多いが、Cognixionのアプローチだと、脳を使って最新のUIを確実にナビゲートできるほど、迅速で比較的正確なものとなる。

この脳波によるUIコントロールシステムは、ジョイスティックや視線追跡デバイスといった従来から存在するアクセシビリティの手法が使えない人にも向いている。そんな状態の人のための選択肢はほとんどなく、あっても遅くて面倒なものばかりだ。

ステルス状態を脱してから以降のCognixionは、支援デバイスを市場に出すための、さまざまな困難な仕事に追われていた。アーリーアダプターたちによるパイロットテストは何度か行ったが、保険やメディケイドなどの対象になるためには、もっといろいろなことが必要だった。また支援者にとっても、使いやすく、人にすすめたくなるものでなければならない。

関連記事:考えるだけで操作できる脳モニタリングデバイス「Cognixion One」、重度障がい者の円滑な意思疎通をアシスト

CEOで共同創業者のAndreas Forsland(アンドレアス・フォースランド)氏によると「最近では臨床と規制という2つの方面で仕事が多く、最適化と効率アップが重要でした。開発に参加してくれたユーザーや医療関係者や支援要員は150名近くに達し、彼らを顧問としてとても充実したフィードバックが得られた。ハードウェアの改良は何度もやったのsで、そろそろ最終設計に近いといえるでしょう。今後は、ユーザーインターフェースと言語システムで細かい改良がたくさん必要になりそうです」という。

2つの新しい機能にも取り組んでいる。1つは、予測的発話認識のアルゴリズムで、ユーザーの断片的な発話から完全な文を構成し、そのニーズに対応すること。もう1つは、Amazon Alexaとの直接的な統合だ。CognixionはAmazonと強力して、ヘッドセットに強化された真のスマートデバイスのハブを統合した。直接的な統合であるため、ヘッドセットからの脳波信号が言語に翻訳されてAlexaへ入力されるというわけではない。

画像クレジット:Cognixion

「この工程のサポートに関して、Amazon Alexaのチームにすごく感謝している。また企業としてのAmazonがこのような例外的な開発努力を認めてくれたことにも、深く感謝したい。重要なのは、そのコンテキストだ。現在、ホームオートメーションのシステムやツールはたくさんあるが、それらとのコミュニケーションを補助したり、それらに直接インターフェースする支援技術はほとんど存在しない。そのためAmazonの尽力は、アクセシビリティ業界にとって最初の大きな第1歩であり、ユニバーサルデザインにとっても初めてのことです」とフォースランド氏は語る。

1200万ドルのラウンドはPrime Movers Labが主導し、Northwell Health、Amazon Alexa Fund、Volta Circleが参加した。

Prime Movers LabのゼネラルパートナーであるAmy Kruse(エイミー・クルーゼ)氏は同社のプレスリリースで次のように述べている。「Cognixion ONEは、まだ存在していなければ、SFの世界のものだと思うでしょう。私たちは、脳性麻痺、脳幹の脳卒中、ALSをはじめとする言語障がいや運動障がいを抱えて生きるあらゆる年齢層の人々を支援するために、AIソフトウェアプラットフォームとハードウェアを融合させた、根本的に人生を変える不可欠なものになると信じています」。

ONEのヘッドセットが購入できるようになるまでには、まだ少し時間がかかりだが、フォースランド氏によると、ほぼすべての研究大学と提携しているリセラーとディストリビューターをすでに確保しているという。この革新的なアクセシビリティへの取り組みは順調に進んでおり、近い将来、必要とする人の頭に届いて欲しい。

画像クレジット:Cognixion

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

スーパーコンピューター「富岳」がTOP500・HPCG・HPL-AI・Graph500で4期連続の世界第1位を獲得

スーパーコンピューター「富岳」がTOP500・HPCG・HPL-AI・Graph500で4期連続の世界第1位を獲得富士通は11月16日、理化学研究所と共同開発したスーパーコンピューター「富岳」が、世界のスーパーコンピューターを順位付けした4つのランキングすべてで第1位を獲得したことを発表した。これで第1位は4期連続となった。

富岳が1位になった4つのランキングは、世界のスーパーコンピューターの性能ランキング「TOP500」、共役勾配法の処理速度の国際的なランキング「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」、人工知能の深層学習で用いられる単精度や半精度演算処理に関する性能ベンチマーク「HPL-AI」、大規模グラフ解析に関するスーパーコンピュータの国際的な性能ランキング「Graph500」となっている。

これは、富岳の総合的な性能の高さを示すものと富士通では話している。また、「超スマート社会の実現を目指すSociety 5.0において、シミュレーションによる社会的課題の解決やAI開発および情報の流通・処理に関する技術開発を加速するための情報基盤技術」として、富岳が十分に対応可能であるとも述べている。

富岳は2021年3月9日に本格稼働(共用)を開始した。文部科学省の成果創出加速プログラムでの本格利用、一般公募で採択された課題での利用、有償利用を含めた臨時利用の募集、国の重要課題である「政策的必要性」に基づく利用などが行われている。

スーパーコンピューター「富岳」がTOP500・HPCG・HPL-AI・Graph500で4期連続の世界第1位を獲得

世界のスーパーコンピューターの性能ランキング「TOP500

スーパーコンピューター「富岳」がTOP500・HPCG・HPL-AI・Graph500で4期連続の世界第1位を獲得

共役勾配法の処理速度の国際的なランキング「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」

スーパーコンピューター「富岳」がTOP500・HPCG・HPL-AI・Graph500で4期連続の世界第1位を獲得

人工知能の深層学習で用いられる単精度や半精度演算処理に関する性能ベンチマーク「HPL-AI

スーパーコンピューター「富岳」がTOP500・HPCG・HPL-AI・Graph500で4期連続の世界第1位を獲得

大規模グラフ解析に関するスーパーコンピュータの国際的な性能ランキング「Graph500

IBMが127量子ビット「Eagle」プロセッサー発表、「従来のコンピューターではシミュレートできない」

IPAが「量子コンピューティング技術実践講座(ゲート式)」の参加者募集を開始
IBMが127量子ビット「Eagle」プロセッサー発表、「従来のコンピューターではシミュレートできない」

IBM

IBMは16日から開催のQuantum Summit 2021に合わせて127量子ビット(qubit)の”Eagle”量子プロセッサーを発表し、次世代量子コンピューターシステム「IBM Quantum System Two」の概要をプレビューしました。IBMは、Eagleは従来のスーパーコンピューターでは完全にはシミュレートできない初めてのプロセッサーだと主張しています。

IBMの量子技術リーダー、ボブ・スーター氏は「Eagleは、量子コンピューティングの規模拡大に向けた大きな一歩であり、100を超える量子ビットを持つIBM初のプロセッサー。このプロセッサーは、我々がいま進歩過程のどこにいて、それが順調かどうかを示す区切りのようなものだ」とこのプロセッサーを説明しました。

また従来の量子プロセッサーとEagleの設計の違いとしては、制御部を複数の物理層で配置しつつ、量子ビットを1つの層に配置したことが挙げられ、これによって複雑さは増したもののより多くの量子ビットを扱えるようになり、性能も飛躍的に向上したとのこと。

IBMが127量子ビット「Eagle」プロセッサー発表、「従来のコンピューターではシミュレートできない」

IBM

IBMの量子ハードウェアシステム開発部門のディレクターであるジェリー・チョウ氏によるとEagleプロセッサーは12月より、IBM Cloud上のExploratoryシステムとして IBM Quantum Networkの一部メンバーにのみ提供されると述べています。ExploratoryシステムはIBMの最新技術への早期アクセスとして提供されており、稼働時間や、量子ボリュームで測定される特定レベルの再現性あるパフォーマンスは保証されません。

なおEagleプロセッサーは量子ボリュームという尺度を使って説明されておらず、また量子ビットだけではその性能を具体的に示すことができないため、他の量子コンピューターと単純に比較するのは困難です。

参考までに記せば、IBMは昨年27量子ビットのシステムを発表し、それが64QV(量子ボリューム)を達成したと説明していました。またHoneywellは昨年10月に10量子ビットながら128QVを主張するモデルH1と呼ばれるシステムを発表しています。

Eagleは127量子ビットをうたっており、この数字だけを見ればこれまでの量子コンピューターよりも高性能であることは想像できます。しかし、IBMはこのプロセッサーでも量子超越性を主張していません。量子超越性とは量子コンピューターが従来のコンピューターでは無限に近い時間を擁する、ほぼ実行不可能なタスクを実行できる能力を有することを示します。これについてIBMは「Eagleはまだ従来のコンピューターが解決できない問題を解決するほどの性能を得る段階には来ていない」としました。

量子超越性については、2019年にGoogleがSycamoreシステムでその偉業を達成したと主張したものの、それはあらかじめ用意された特定の問題を解くためだけに構築されたシステムでした。一方、中国では2020年に光学的量子技術を用いた光量子コンピューター「九章(Jiuzhang)」で量子超越性を達成したとしましたが、こちらもやはりあらかじめ用意された単一のタスクをこなすためだけのプロトタイプであり、汎用的な処理を実行する能力は備えていませんでした。

しかし、Eagleプロセッサーは上に述べたように限定的ながらクラウド経由でIBM Quantum Networkで利用可能になります。「実用面」で、Eagleは世界のトップを走る量子コンピューターということになるのかもしれません。

(Source:The Quantum DailyEngadget日本版より転載)

iPadで視線によるタイピング、会話、アプリ操作が可能になるケース「TD Pilot」をTobiiが発売

アイトラッキング(視線計測)技術を手がけるスウェーデンのTobii(トビー)は、その技術をApple(アップル)製のタブレットに導入し、iPadを身体障がい者のための強力なオールインワンツールにするためのケース「TD Pilot」を発表した。iPadにTD Pilotを装着したユーザーは、視線だけでアプリを起動したり、すばやくタイピングしたり、合成音声で話したりすることができる。

iPadOS 15では、iPadにアイトラッキング用ハードウェアをネイティブに統合することが可能になったが、Tobiiはおそらく、その分野で最も知られた名前だろう。

筆者はオールインワンのスクリーン型アイトラッカーや、独立型のPC用周辺機器など、同社の製品を数多くチェックしてきたが、いずれも非常にうまく機能した。しかし、Apple側の制限があったせいで、アイトラッキングは主にWindowsマシンで行われてきた。筆者は個人的には気にならないものの、iOSを好む人もいるだろう。今後はiOSでも同じようにアイトラッキングが利用できるようになる。

画像クレジット:Tobii

TD PilotはiPadに装着する大型のケースで、前面にはアイトラッキング装置(実際には驚くほど小さく、カメラが内蔵された小さな帯状のもの)、背面にはステレオスピーカーに加えて、テキストを表示するための小さなスクリーンが備わる。このデバイスのユーザーは、Tobii独自のテキスト音声変換アプリ「TD Talk(TDトーク)」または他の任意のアプリを使って、テキストまたは音声でコミュニケーションをとることができる(単に話すだけではなく、その気になればDJにだってなれる)。

このデバイスは、設定や記号コミュニケーションなど、Tobiiが用意する他の小さなアプリ群も利用できる。

「医学的にも認証されており、Appleの性能基準を満たしていると認定されています」と、Tobii Dynavox(トビー・ダイナヴォックス)のFredrik Ruben(フレドリック・ルーベン)CEOは述べている。「これにより、ユーザーは市場をリードするこの技術にアップデートとサポートが継続されると知ることができ、信頼して使うことができます。また、人気のある技術に向けて開発される可能性がある、安全ではない『ワンタイムハック』を避けることができます」。この発言は間違いなく、アイトラッキングをネイティブにサポートしていない以前のバージョンのOS用に作られた他社のソリューションを暗に示しているのだろう。

Tobiiのアイトラッキングデバイスは誰でも購入することができるが、同社の説明によると、個人のニーズに合わせたソリューション提供の一環として、医師やセラピストから指示されるケースが多いという。その場合は保険でカバーされるが、当然ながら個人によって異なる。筆者は具体的なコストを尋ねたが、Tobiiは回答を避けた。

願わくは、アイトラッキングソリューションによって最も力を得られる人たちが、保険やその他の方法でこの便利なガジェットを簡単に手に入れることができるようになって欲しいものだ。この製品はすでに出荷が始まっているので、発売を待つ必要はない。下の動画で、実際に使用している様子を見ることができる。

画像クレジット:Tobii

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

東北大学が擬似固体リチウムイオン電池の光造形3Dプリント製造技術を開発、室温・短時間でオンデマンド製造

東北大学が擬似固体リチウムイオン電池の光造形3Dプリント製造技術を開発、様々な基板上に室温・短時間でオンデマンド製造

東北大学は11月11日、インク化した正極、電解質、負極を光造形方式3Dプリンターで成型して固体リチウムイオン電池を製造する方法を開発した。燃えにくい擬似固体電解質膜を室温で、数分間で作れるため、車載用から体内埋め込み用まで、応用の幅が大きく広がる。

東北大学多元物質科学研究所の小林弘明助教と本間格教授らの研究グループが開発した方法は、擬似固体電解質材料となるリチウムイオン伝導性イオン液体と酸化物ナノ粒子の比率を調整し、ゲル状にしたものを紫外線効果樹脂に混ぜ、光造形3Dプリントで成型するというもの。これにより、室温でごく短時間で製造可能な、難燃性の電解質膜が生成できる。正極はコバルト酸リチウム、負極はチタン酸リチウムをそれぞれインク化してプリントする。

室温でプリントできることから、ポリマーなどの熱に弱い基板上にも直接プリントできるため、ウェアラブルデバイスへの応用も可能となる。また3Dプリントで製造できるため、医療用インプラント機器、生体適合性マイクロ電池のような小さなものから、車載用電池や設置型の電源などの大型のものまでオンデマンドで対応できる。

今後は、素材のインク化技術を活かして、マグネシウム蓄電池などの次世代、次々世代の二次電池への応用も期待されるとのことだ。

北海道大学、太陽電池とプラズモンを結合させ光学的変化を電気的に検出するバイオセンサーを開発

糖尿病患者・予備軍向けに低侵襲・低コストで簡便に利用可能なIoT血糖管理サービスを目指すProvigateが9.1億円調達
北海道大学、太陽電池とプラズモンを結合させ光学的変化を電気的に検出するバイオセンサーを開発

太陽電池-プラズモン結合型バイオセンサー略図。ある条件で表面プラズモンが誘起されるとシリコン膜内を光が往復しないために電流値は小さい。抗体に抗原の新型コロナウイルスのタンパク質が結合すると、屈折率が変化し表面プラズモンが誘起されなくなり、シリコン膜内を光が往復して強い光電流が流れる

北海道大学は11月11日、太陽電池とプラズモンを結合させて光学的変化を電気的に検出する新原理を開発し、バイオセンサーの大幅なコンパクト化と高感度化を同時に実現したと発表した。抗原検査、抗体検査の両方に対応でき、ウェアラブル・バイオセンサーへの応用が期待されるという。

北海道大学電子科学研究所の三澤弘明特任教授と、同大学大学院理学研究院の上野貢生教授らによる研究グループは、石油科学や医薬品などの研究開発を行うイムラ・ジャパンと共同で、シリコン薄膜太陽電池内に閉じ込めた光とプラズモンとの相互作用を利用して電子信号を変化させる原理を発見し、革新的なバイオセンサーを開発した。

プラズモンとは、金属中の自由電子が集団的に振動することで生じる電子の波のこと。金の薄膜に抗体を配置しておくと、光が当たったとき、抗体だけのときと抗体に抗原が結合したときとでは、光の反射率が変化する。この原理を利用した表面プラズモン共鳴(SPR)センサーは、アレルギーやインフルエンザの検査などに使われているが、装置が大型になるという課題点があった。研究グループは、プラズモンを太陽電池と結合させ、金の被膜に光が当たったときに生じる屈折率の違いを発電量の変化として捉えることに成功。そのため、コンパクトなバイオセンサーへの道が拓かれた。

このセンサーでは、SPRの励起(エネルギーを高めること)にプリズムを使っているが、「センサー表面に規則的に配列したナノグレーティング構造を配置」することでも励起が可能であることがわかり、将来的にはLEDによるSPR励起と集積可能な電気検出を組み合わせたウェアラブルなバイオセンサーも可能になると期待されている。

マイクロソフトが教育市場向けに安価なノートPC「Surface Laptop SE」とWindows 11 SEを発表

Microsoft(マイクロソフト)は、新型コロナウイルス流行によって変わった「新しい教室の形」に参入を図るため、Windows 11の縮小版と、Surface(サーフェイス)ブランドの他、いくつかの他メーカー製の安価なノートPCを用意した。同社がこの分野で人気の高いGoogleのChromebook(クロームブック)を視野に入れていることは明らかであり、パートナー企業もこれに賭けることにしたようだ。

詳しい紹介に入る前に、まず、このWindows 11 SEの「SE」が、Windows 98 SEの「second edition(第二版)」、iPhone SEの「special edition(特別版)」、Macintosh SEの「system expansion(システム拡張)」などと違い、特に何かを意味するものではないことを確認しておこう。このSEは「HomeやProなどの他のエディションと明確に区別するためのもの」であるとマイクロソフトはいうが、なぜそれがまったく意味のない頭文字ではなく「Students and Educators(学生および教育関係者)」の略だとはっきりいわないのか、私には理解できない(そう、誰かの真似でも問題ないと思うのだが)。

名前の由来はともかく、今回発表された「Surface Laptop SE(サーフェイス・ラップトップSE)」は、マイクロソフトがこの分野で実現したいと考えていることの観念的な形、あるいはリファレンスデザインと言えるかもしれない。これは基本的な機能を備えた250ドル(約2万8000円)のノートPCだが、リモート授業や修理しやすさを考慮して設計されている。

スペックは誰も驚くようなものではないが、これは4K VFXワークステーションではなく、宿題やリモート学習用のマシンを想定しているのだ。いくつか箇条書きにしてみよう。

Intel Celeron N4020またはN4120シリーズ(グラフィック統合型)

  • 4GBまたは8GBのRAM
  • 64GBまたは128GBのeMMC内蔵ストレージ(拡張不可)
  • 720pのウェブカメラ(「改良された顔認識」機能付き)
  • Wi-FiおよびBluetooth
  • USB-A×1、USB-C×1、3.5mmヘッドフォンジャック

USB-Cを充電に使用する機能が欠けているものの(昔ながらの円筒形の電源コネクター用ポートが別に備わる)、この価格のマシンに期待するような仕様としては過不足ない。

画像クレジット:Microsoft

ただし、画面解像度1366 × 768の11.6インチ・ディスプレイは別だ。もちろん、これは子ども向けを想定したものではあるが、それでもこの価格で買えるChromebookには、1080pのスクリーンを搭載する機種があり、文字の鮮明さと動画の質が大きく向上する。どちらもこのようなノートPCに最適化が求められるものだ。

マイクロソフトによると、高級ノートPCに搭載されている強固なキーボードを、このデバイスにも採用しているとのこと。これは良いニュースだ。また、修理性を重視している点も歓迎できる。「ディスプレイ、バッテリー、キーボード、さらにマザーボードまで、重要なコンポーネント現場で簡単に修理することができるため、IT管理者や学校にとって時間とコストの節約になります」と、マイクロソフトは記している。

マイクロソフトの他にも、Acer(エイサー)、ASUS(エイスース)、Dell(デル)、Dynabook(ダイナブック)、富士通、HP、JP-IK、Lenovo(レノボ)、Positivo(ポジティーボ)から、同様のデバイスが販売されるが、これらのマシンはIntelまたはAMDのチップを搭載しており、スペックにも多少の違いがあると思われる。すべてが新製品というわけではない(例えば、すでにDynabookのE10は2021年前半に発売されている)が、新しいOSに適合している。

これらのノートPCに搭載されるWindows 11 SEは、学校が大量に導入しやすいように設計されたOSだ。上述のハードウェアに最適化されており、Microsoft 365をはじめとする一般的なアプリやサービスがあらかじめインストールされているため、迅速かつ簡単にプロビジョニングできる。学校のIT部門だけがアプリの追加や削除をできるようにしたり、ウェブサイトの閲覧も制御できる。自動更新、クラウド管理といった機能も、すべて揃っている。

マイクロソフトのWindows 11 SEは、2つのアプリを横並びに固定できる。画像クレジット:Microsoft

マイクロソフトは発表文の中で、必ずしもすべての学生が自宅のインターネット環境に頼れるわけではないと指摘。そこで同社は、内蔵アプリがインターネットに接続できない環境でも動作するようにした。Microsoft 365アプリはオフラインでも使用でき、OneDriveは変更をローカルに保存しておき、Wi-Fiに接続した時点で自動的に同期する。

マイクロソフトは、主力OSの用途限定的な派生版では悲喜こもごもの思いをしてきた。Windows RTは最も有名な失敗作だったが、11 SEはそれとはまったく異なる。確かに、特定のハードウェアで動作するように作られており、多くの基本機能がロックされているものの、実際にそういうものを求める特定の市場を対象にしている。

かつて一時的に人気を博したネットブックも、ほとんど誰の役にも立たないものではあったが、今では必要最低限のPCとブラウザがあれば多くのことができるようになっている。願わくは、これらの控えめなノートPCが生徒たちの手に渡ることで、リモート学習の現状が少しでも改善されることを期待したい。

画像クレジット:Microsoft

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NVIDIAがエッジコンピューティング向け超小型AIスーパーコンピューター「Jetson AGX Orin」を発表

NVIDIAは11月9日、ロボットや医療機器などのAIエッジコンピューティング機器に組み込める超小型の「AIスーパーコンピューター」Jetson(ジェットソン)シリーズの新世代機種「AGX Orion」(オライオン)を発表した。

前世代のAGX Xavier(ゼイビアー)とフォームファクター(100x87mm)は同じながら処理速度は6倍、200TOPS(1秒間に200兆回の命令処理が可能)という性能を誇る。NVIDIA AmpereアーキテクチャーGPUとArm Cortex-A78AE CPU、次世代の深層学習セラレーター、ビジョンアクセラレーターを搭載し、複数の並列AIアプリケーション・パイプラインにフィードできるため、高速インターフェース、高速なメモリー帯域、多彩なセンサーのサポートが可能になっている。消費電力は15W。最大でも50Wとのこと。

ソフトウェアは、NVIDIA CUDA-Xアクセラレーテッド・コンピューティング・スタック、NVIDIA JetPack SDK、クラウドネイティブな開発ワークフローを含むアプリケーション開発と最適化のための最新のNVIDIAツールが利用できる。また、トレーニング済みのNVIDIA NGCカタログもある。

またJetsonには、85万人の開発者、Jetson搭載製品を製造する6000社以上の企業からなる巨大なエコシステムがあり、センサー、キャリアボード、ハードウェア設計サービス、AIおよびシステムソフトウェア、開発者ツール、カスタムソフトウェア開発といったサービスや製品が利用できる。これにより、「かつては不可能と思われていた自律動作マシンとエッジAIアプリケーションを開発および展開できるようになる」と、NVIDIAのバイスプレジデント、ディープゥ・タッラ氏は話している。

NVIDIA Jetson AGX Orinモジュールと開発者キットの発売は、2022年第1四半期を予定している。

Jeston AGX Orionモジュール仕様

  • AI性能: 200 TOPS (INT8)
  • GPU:2048基のNVIDIA CUDAコアと64基のTensorコア搭載、NVIDIA Ampereアーキテクチャー
  • GPUの最大周波数:1GHz
  • CPU:12コア Arm Cortex A78AE v8.2 64ビットCPU 3MB L2+6MB L3
  • CPUの最大周波数:2GHz
  • DLアクセラレータ−:NVDLA v2.0×2
  • ビジョンアクセラレーター:PVA v2.0
  • メモリー:32GB 256ビットLPDDR5 204.8GB/秒
  • ストレージ:64GB eMMC 5.1
  • CSIカメラ:最大6台のカメラ(仮想チャネル経由で16台)。16レーン MIPI CSI-2。D-PHY 1.2(最大40Gbps)| C-PHY 1.1(最大164Gbps)
  • ビデオエンコード:2x 4K60 | 4x 4K30 | 8x 1080p60 | 16x 1080p30(H.265)
  • ビデオデコード:1x 8K30 | 3x 4K60 | 6x 4K30 | 12x 1080p60| 24x 1080p30(H.265)
  • UPHY:2 x8(または 1×8+2×4)、1 x4、2 x1(PCIe Gen4、ルートポート&エンドポイント)。USB 3.2×3。シングルレーンUFS
  • ネットワーキング:1GbE×1、10GbE×4
  • ディスプレイ:1x 8K60 マルチモードDP 1.4a(+MST)/eDP 1.4a/HDMI 2.1
  • その他の I/O:USB 2.0×4、4×UART、3×SPI、4×I2S、8×I2C、2×CAN、DMIC&DSPK、GPIOs
  • 消費電力:15W | 30W | 50W
  • サイズとコネクタ−:100mm×87mm、699ピンMolex Mirror Mezzコネクター、一体型熱伝導プレート

台湾TSMCとソニーセミコンダクタソリューションズが熊本半導体工場設立を正式発表、22/28nmプロセス採用

ソニーのボードコンピューター「Spresense」向けに税別9980円のIoT/エッジAI開発用「ELTRESアドオンIoT開発キット」が提供開始
TSMCとソニーセミコンダクタソリューションズが熊本半導体工場設立を正式発表、22/28nmプロセス採用

FILE PHOTO: A man sits in front of the logo of Taiwan Semiconductor Manufacturing Co Ltd (TSMC) during an investors’ conference in Taipei


半導体大手のTSMC(台湾セミコンダクター)が、熊本県への半導体工場新設を正式発表しました。

発表によると、TSMCは22〜28nmプロセスを皮切りとした半導体の製造受託サービスを提供する子会社「Japan Advanced Semiconductor Manufacturing」(JASM)を設立し、熊本県に新工場を建設。このJASMにソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)が5億ドル(約570億円)を出資し、SSSが20%未満の株式を取得する少数株主となります。

同工場の建設開始は2022年を予定し、2024年末までの生産開始を目指します。約1500人の先端技術に通じた人材の雇用を創出し、月間生産能力は4万5000枚(300mmウェーハ)を見込んでいます。

当初の設備投資額は約70億ドル(約8000億円)となる見込みで、日本政府から強力な支援を受ける前提で検討しているとのこと。

(Source:TSMCソニーセミコンダクタソリューションズEngadget日本版より転載)

中国のコンピューター革命で徹底した改造が行われた経緯、常に「アルファベット」という限界に挑戦してきた中国の技術者たち

前回のエッセイでは、何万という中国語の漢字を、それよりはるかに小さいアルファベット記号システムを処理するために設計されたメモリシステムに収めようとするコンピューターエンジニアたちの前に立ちはだかったさまざまな奥深い問題について説明した。

今回は、漢字の出力、つまり、モニター、プリンター、および関連周辺機器に関する問題に目を向ける。欧米で製造されたパソコンやコンピューター周辺機器に中国語のテキストを表示させようとするエンジニアの前にさらなる問題が立ちはだかった。

関連記事:中国語パソコン1号機を実現した技術者魂、限られたメモリに数千の漢字を詰め込むためSinotype IIIの発明者は限界に挑む

「周辺機器」というと一種の脇役的な機能を提供するものと思われがちだが、実は中国では、周辺機器はコンピューティングの中心的な存在であり続けた。それは、1970~80年代に中国語コンピューティングが直面した厳しい制約の時代から、1990年代以降の大幅な進歩と成功の時代まで、すべての時代に当てはまる。

1980年代に消費者向けPCが普及し始めた頃には、欧米製のPC、プリンター、モニター、オペレーティングシステム、その他の周辺機器は、少なくともそのままでは、漢字での入出力を処理できなかった。それどころか、筆者が行った別の調査によると、こうしたすべての装置には、初期の頃の電信符号や機械式タイプライターなどに見られるような英語とラテン語のアルファベットを偏重する傾向があった。

その後、1980年代後半には、中国および中国語を話す地域では、徹底的にハッキングと改造が行われた。中国およびその他の地域のエンジニアたちは、欧米で製造されたコンピューティングハードウェアおよびソフトウェアを要素ごとに中国語対応に改造した。この時期は、誰かが管理するでもなく乱雑に、そして多くの場合すばらしい実験とイノベーションが行われた。

中国語コンピューティングシリーズの第2回である本稿では、広範なコンピューティング環境、すなわち、プリンター、モニター、その他コンピューティングを機能させるために必要なあらゆるモノに注目しつつ、次の2点にスポットを当てる。

1つは、アルファベットを基盤としたコンピューティング(これを「アルファベット様式」と呼ぶことにする)の優位性は、キーボードやメモリなどの問題に留まらず、極めて広範に及んでいたという点だ。コンピューターが登場する前のタイプライターと同じように、コンピューティングに使用される装置、言語、プロトコルは大体、最初に英語のコンテキストで発明され、その後、他の言語およびラテン語アルファベット以外の書記体系に「拡張」される。中国のエンジニアたちは、基本的な機能を実現する場合でさえ、市販のコンピューティング周辺機器、ハードウェア、ソフトウェアの境界を押し広げる必要があった。

次に、1970年代後半から1980年代の重要な時期に、中国のコンピューティングに関して欧米で支配的だった「模造」や「海賊行為」といったワンパターン思考(これは今でも変わらない)を解体してみる。「中国語DOS」などのプログラムに出くわすと、欧米では条件反射的にまた「中国製コピーだな」と片付けられてきた。しかし、この単純な反応は重要な事実を見落としている。それは、本稿で説明するこうした「偽造品」が存在していなかったら、欧米で設計されたどのソフトウェアスイートも漢字コンピューティングのコンテキストではまったく動作しなかっただろうという点だ。

ドットマトリックス印刷と冶金レベルで実装されていたアルファベット様式

最初に取り上げる周辺機器はプリンター、具体的には、ドットマトリックスプリンターだ。中国語コンピューティングの観点からすると、ドットマトリックスプリンターで当時支配的だった業界標準のプリンターヘッドの構成がすでに問題だった。1970年代に大量生産された事実上すべてのドットマトリックスプリンターには9ピンのプリンターヘッドが搭載されていたのだ。

これらの市販のドットマトリックスプリンターは、低解像度のラテン語アルファベットのビットマップをプリンターヘッドを1回通過させるだけで印刷できた。これはもちろん、偶然ではない。9ピンのヘッドは、低解像度のラテン語アルファベットを印刷するというニーズに合わせて「調整」されたものだった。

しかし、9ピンのプリンターヘッドでは、ヘッドを2回通過させても低解像度の漢字ビットマップさえ印刷できなかった。ヘッドを2回通過させると英語に比べて中国語の印刷スピードが著しく低下するだけでなく、印刷された文字も不正確だった。これはローラーの進み具合の不安定さ、インクの重ね合わせの不均等、紙詰まりなどが原因と考えられる。

見た目の美しさという点でも、ヘッドを2回通過させると、文字の上半分と下半分でインクの濃度が異なるという結果を招くことがあった。さらに悪いことに、欧米製プリンターを改造せずにそのまま使用すると、フォントサイズに関係なく、すべての漢字の高さが英単語の2倍以上になってしまう。このため、印刷結果は、英単語が簡素で効率的であるのに対して漢字は大き過ぎてグロテスクに感じられ、ゆがんだ滑稽なものになってしまう。このような印刷出力では多くの紙が無駄になり、すべての文書が文字の大きな児童書のような不格好な見栄えになってしまう。

これらのプリンターヘッドの動作の仕組みを説明する動画(本記事の筆者のご厚意により掲載)

ラテン語アルファベット中心主義は一般に想像されているよりも根深い、と初期の漢字コンピューティングのパイオニアであるChan Yeh(チャン・イエ)氏はその著作で述べている。漢字のデジタル化と、18×22のビットマップグリッドを基盤とするシステムの開発に乗り出したイエ氏の当初の考えは、ピンの直径サイズを小さくして、プリンターヘッドに収容できるピン数を増やすという単純なものだった。しかし、同氏は、この解決策はそう簡単ではないことに気づくことになる。

チャン・イエ氏とIdeographix Corporationによって発明されたIPXマシンのインターフェイス(画像クレジット:Thomas S. Mullaney、スタンフォード大学東アジアIT歴史コレクション)

イエ氏は、インパクト印刷におけるラテン語アルファベットへの偏重は、プリンター部品の冶金学的特性に組み込まれていることに気づいた。簡単にいうと、プリンターピンの製造に使用されている金属合金自体が、9ピンのラテン語アルファベットの印刷に合わせてキャリブレーションされていたのだ。このため、中国語に必要なサイズに合わせてピンの直径を小さくすると、ピンの変形や破損を招くことになる。

そうした影響をなくすため、エンジニアたちは欧米製プリンターに手を入れて、通常の9ドット間隔と同じ縦スペース内に18ドットが収まるように改造を施した。

この手法は独創的でシンプルなものだった。標準の2 Pass印刷に従い、1列目の各ドットはヘッドの1回目の通過時に沈着する。しかし、2列目のドットを1列目の下に沈着させるのではなく、プリンターをうまくだまして、あたかもファスナーが噛み合うように最初の9ドットの間に入れるようにしたのだ。

この効果を実現するため、エンジニアたちはプリンターのドライバーを書き換えて、プリンターの用紙送りのメカニズムをハッキングし、(1インチの216分の1という)極めて小さな間隔でローラーを回転させるよう調整した。

難しいのはピンの構成だけではなかった。市販されているドットマトリクスプリンターはASCII文字エンコード体系にも合わせて調整されていたため、漢字のテキストをテキストとして処理することができなかった。英単語を印刷する場合には、ラスターイメージをプリンターに送っているわけではなく、英語のテキストをプリンタードライバーを介してASCIIコードとして直接送っている。これにより、印刷速度が格段に速くなる。

しかし、欧米製のドットマトリクスプリンターで漢字を印刷するには、こうしたプリンターの「テキスト」モードを使うことはできない。そこで、プリンターを再度だまして、今度は、通常ラスターイメージ用に予約されているグラフィックモードを使用して漢字を印刷する必要がある。

これが、中国語を学ぶ学生たちにとって皮肉であることは明らかだ。欧米で製造された初期のドットマトリックスプリンターで漢字を処理させるには、漢字を絵または象形文字として扱う必要があったからだ。実際、欧米人は長い間、漢字を象形文字とみなしてきた。実際にはそうではないが(ただし例外はある)。しかし、ドットマトリックスプリンターのコンテキストでは、象形文字として扱うしかなかったのだ。

結局、新しいタイプのインパクトプリンターが商業市場に出回り始めた。ピンの直径が0.2ミリの24ピンドットマトリックスプリンターだ(9ピンタイプでは0.34ミリだった)。当然ながら、これらの新しいタイプのプリンターの主なメーカーの大半は、パナソニック、NEC、東芝、沖データなどの日本の企業だった。日本語に必要な文字を印刷するというニーズに応えるため、日本のエンジニアも中国のエンジニアと同じような問題を解決する必要があったのだ。

近代化されたポップアップ:漢字モニター

漢字のビットマップラスターへの変換を説明する特許文書の画像(画像クレジット:Thomas S. Mullaney、スタンフォード大学東アジアIT歴史コレクション)

中国語コンピューティング環境におけるもう1つの領域として、量産型のコンピューターモニターがある。ある意味、モニターの方向性はプリンターと似ている。特に、文字のひずみの問題はプリンターと同じだ。仕方のないことだが、漢字のビットマップは低解像度であっても縦横のサイズがラテン語文字と比較して2倍以上になる。このため、アルファベットと漢字が混在するテキストでは、漢字のサイズが大き過ぎて不格好になる(本記事の冒頭の画像をご覧いただきたい)。

標準の欧米製コンピューターモニターでは、行長(行あたりの文字数)と行高(画面あたりの行数)の両方において、ラテン文字にくらべて漢字のほうが表示可能な文字数ははるかに少なくなる。このため中国語を使う人は、一度に画面に表示できるテキストの量が非常に少なくなる。

それだけではない。漢字ディスプレイ特有の問題としてポップアップメニューがある。漢字の入力プロセスは本質的に対話型で行われるため(ユーザーが叩いたキーに応じて漢字が次々に表示される)、中国語コンピューティングにはユーザーが漢字の候補を確認するための「ウィンドウ」(ソフトウェアベースのものとハードウェアベースのものがある)が欠かせない。

ポップアップメニューは、1980年代以降、中国語コンピューティングの至るところで目にする機能となっているが、このフィードバック手法の起源は1940年代に遡る。1947年、Lin Yutang(リン・ユタン)氏によって設計された中国語タイプライターの試作機には、同氏が「マジックアイ」と呼んだ重要な部品があった。これこそ、歴史上最初の「ポップアップメニュー」だ(もちろん機械式ではあったが)。

パソコンの出現にともない、MingKwai、Sinotype、Sinowriterなどの中文タイプライターの機械式ウインドウはコンピューターのメインディスプレイに組み込まれた。別個の物理的な装置ではなく、画面上でソフトウェアによって制御される「ウィンドウ」(またはバー)となったのだ。

ところが、このポップアップメニューのせいで、ただでさえ貴重なモニター画面のスペースにさらなる制約が課されることになった。いわゆる「ポップアップメニューデザイン」は、中国語パソコンが登場したときから研究およびイノベーションの対象として極めて重要な分野となった。各社がさまざまなスタイル、形式、動作を試して、入力、画面サイズ、ユーザーの好みの各要件のバランスを取ろうと試みた。

しかし、これらの各要件はトレードオフの関係にあった。より多くの漢字候補を一度にメニューに表示すると、目的の文字が早く見つかる可能性が高くなるが、貴重な画面スペースを消費することになる。ウィンドウを小さくすると、画面スペースは節約できるが、使いたい文字が最初の候補群の中に見つからないと、文字候補ページをスクロールする必要がある。

こうした厳しい制約があるため、中国のエンジニアと企業は常に次世代モニターを求めていた。こうした動きはおそらく中国に限らずグローバルな市場でも同じだった。というのは、高解像度モニターは消費者にとって「本質的に良いこと」だからだ。それでも、高解像度を強く求める動機は中国語市場では大きく異なっていた。

結論:改造しか道はなかった

雑誌「Chinese Computing」創刊号(画像クレジット:Thomas S. Mullaney、スタンフォード大学東アジアIT歴史コレクション)

こうした改造はそれぞれにすばらしいものだったが、所詮修正に過ぎない。結局、オリジナルのシステム(つまり、後で修正する必要があるシステム)を作成する自律性と信頼性のあるところにパワーは集中した。

改造の慣習により幅広いシステムが実現される傾向はあるものの、改造によって互換性が犠牲になることが多かった。その上、改造後も常に変更に目を光らせておく必要があった。「一度設定すればそれで終わり」というソリューションは不可能だった。

新しいコンピュータープログラムがリリースされるたびに、またプログラムがバージョンアップされるたびに、中国のプログラマーは行単位のデバッグを行う必要があった。プログラム自体にコンピューターモニターのパラメーターを設定またはリセットする可能性のあるコードが含まれていたからだ。

大半の英語のワープロソフトでは、プログラムに基本的な前提として25×80の文字表示フォーマットが固定で埋め込まれていた(zifu fangshi xianshi)。このフォーマットは漢字ディスプレイでは使えなかったため、エンジニアたちはこの25×80のフォーマットが設定されているプログラム内のすべてのカ所を手動で変更する必要があった。彼らは、この作業を標準仕様の「DEBUG」ソフトウェアを使って効率的に行った。そして、経験を積み重ねるうち、主要なプログラムのアセンブリコードの中身まで着実に覚えてしまった。

また、改造したとしても、基盤となるオペレーティング・システムとプログラムは常に変更される可能性がある。例えばCCDOSやその他のシステムを開発してまもなく、IBMは新しいオペレーティング・システムPS/2への移行を発表した。「中国と中国語は混乱に陥る」と題する1987年のある記事には、台湾であれ中国本土であれ既存の中国語システムはまだ新システムに対応していないと説明し「IBMのMS/DOSと相性の良いやり方を考える開発者たちのレースが始まった」と書かれている。

歴史的観点からすると、改造者たちは間違って認識されたり、存在自体を消し去られたりしがちだ。彼らの活躍した時代と場所では、その仕事は単なる窃盗または海賊行為として認識されることが多かった。中国語非互換のマシンを中国語互換マシンにするために必要なリエンジニアリング行為とはみなされなかった。例えばPC Magazineの1987年1月号では、ある漫画家が中国化されたオペレーティング・システムを風刺している。その漫画のキャプションには「MSG-DOS上で動くんだ」とある。

欧米のメーカーは、こうした中国語対応(および日本語やその他の非欧米言語対応)の修正の多くを自社システムのアーキテクチャーのコア部分に徐々に組み込んでいった。そのため、こうした変更が実は中国や非欧米諸国のエンジニアたちの仕事に触発されたものであることは忘れ去られがちである。要するに、欧米製のコンピューターは、昔から、常に言語に依存せず、中立的で、あらゆる人たちを歓迎してきたと(その影に非ラテン語圏のエンジニアたちの苦労があったことなど忘れて)考えてしまいがちだということだ。

コンピューティングの歴史上重要なこの時期はまったく文書に残されていない。その理由は簡単だ。米国、およびより広く西側世界では、こうした改造が「実験」、ましてや「イノベーション」として理解されることは皆無だった。その代わりに彼らの仕事に対して使われたのは、今でもそうだが「コピー行為」「模倣」「海賊行為」といった言葉だった。中国のエンジニアたちが欧米製のドットマトリックスプリンターをリバースエンジニアリングして漢字を印刷できるようにしたり、欧米で設計されたオペレーティング・システムを中国語入力方式エディターが使えるように改良しても、大半の欧米人のオブザーバーの目には単なる「窃盗行為」としか映らなかった。

画像クレジット:Louis Rosenblum Papers, Stanford University Special Collections

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(文:Tom Mullaney、翻訳:Dragonfly)

インテルの第12世代CoreプロセッサーはアップルM1 Maxより性能も消費電力も高いと明らかに

インテルの第12世代Coreプロセッサー「Alder Lake」はアップルM1 Maxより性能も消費電力も高いと明らかに

Intel

今年10月、アップルは新型14インチとおよび16インチMacBook Proとともに、最新AppleシリコンのM1 ProとM1 Maxを発表しました。ほどなくインテルが第12世代Coreプロセッサ「Alder Lake」を正式発表しましたが、その性能がM1 ProとM1 Maxをはるかに凌駕しながらも、代償として消費電力が高くなっているとのベンチマーク結果が公開されています。

第12世代Coreプロセッサの中で注目が集まっているのは、最上位モデルのCore i9-12900Kです。これには8基のPコア(高性能コア)と8基のEコア(省電力コア)が搭載され、高いパフォーマンスと電力効率の両立がうたわれています。

第12世代Coreプロセッサはデスクトップ向けですが、アップルのM1 ProおよびM1 Maxも今後27インチの新型iMacへの採用が噂されており、これらの性能を比較するのは興味深いことと言えます。

さて最初に登場したCore i9-12900Kのベンチマーク結果は、定番テストアプリGeekbenchの公式集計サイトGeekbench Browserに投稿されたものです。それによると同プロセッサの平均マルチコアスコアは約1万8500に対して、M1 ProおよびM1 Maxの平均マルチコアスコアは約1万2500であり、約1.5倍の数値となっています。

これだけ見ればCore i9-12900Kの性能は圧倒的ですが、ハードウェア情報サイトAnandTechは追加のベンチマークを公開しています。そちらでもCore i9プロセッサがM1 ProおよびM1 Maxよりもかなり高速であるには違いありませんが、同時にはるかに多くの電力を消費していると確認できます。インテルはこのチップにつきベース周波数で最大125W、Turbo Boost時には最大241Wの電力を使用すると記載しています。

また下位モデルの第12世代Core i7-12700Kも、Geekbench 5の結果ではM1 ProおよびM1 Maxよりも高速ではあるものの、やはり電力を多く消費しています。

デスクトップならば無制限に電力を使っても問題がなさそうではありますが、より小さな電力かつ発熱の低さ(およびファンが回らないこと)や、モバイルで使うときのバッテリー駆動での効率を重視する人には、M1 ProおよびM1 Maxが用途に合っていると言えそうです。

アップルは2020年6月にMacをAppleシリコンに移行すると発表したさい、自社のチップが市場で最も高速になるとは言わず「ワット当たりのパフォーマンス」が業界最高になると約束していました。最新のM1 ProとM1 Maxも確かに公約を達成しており、デスクトップ向けとしても性能のために電力消費を(ある程度は)度外視するインテル製チップとは上手く棲み分けできるかもしれません。

(Source:Geekbench BrowserAnandTech。Via MacRumorsEngadget日本版より転載)

建設現場での床面への位置出し作業を省力化する自動墨出しロボットシステム「SumiROBO」が商用化

自動墨出しロボットシステム「SumiROBO」(画像左奥の測量機はトプコンの製品)

自動墨出しロボットシステム「SumiROBO」(画像左奥の測量機はトプコンの製品)

日立チャネルソリューションズは11月8日、建設現場での設備工事などにおける床面への位置出し作業を省力化する自動墨出し(すみだし)ロボットシステム「SumiROBO」(スミロボ)の本格提供を開始すると発表した。研究開発や自社利用以外で墨出し作業を自動化するロボットの商用化は国内初という。今後は、設計データと現場の状況から経路生成し自律走行と位置情報の高精度化を実現するなど、データを活用したソリューションの強化にも取り組む。

墨出しとは、建築・建設工事現場において設計図などに基づき工事に必要な基準線などを明示する(書き出す)作業のこと。同社は、長年培ったセンシング技術やメカトロ技術を建設現場における自動化に応用しSumiROBOを開発。同製品は、測量機と連携して高い精度の墨出しを実現するとともに、特別な知識が不要な簡単操作と、各種センサーによる安全性を兼ね備えた建設業向け位置出し作業ロボットシステムとしている。

同社によると、2021年春にプロトタイプを開発して以降、オフィスビル、商業施設、学校、研究所、工場、倉庫、店舗など多様な条件下の建設現場、数十カ所で試行を重ねたという。これにより様々なノウハウを獲得し、簡単に利用できる運用手順や基本的なサポート内容を構築でき、商用化に至ったとしている。

墨出しロボットシステムの特徴

  • ヒューマンエラーのない高精度墨出し:墨出しロボットシステムに指示を入れるだけで図面に基づいた墨出しポイントに、位置・文字・マークなどの情報を正確に印字可能。測量機と連携した自動での高精度な位置決め作業により、計測ミスなどを防止できる
  • 省力化を実現する連続自動運転:タブレットから墨出し作業範囲やロボットの進入禁止範囲を指定できる。障害物を検知時は、回避ルートを自動探索して作業継続を行う機能を採用
  • 導入を容易化するスキルフリーな運用:測量機の操作はタブレットから行え、作業者に測量機の専門知識がなくても設定可能なため、墨出し経験がない場合でも利用できる。墨出しデータの作成は、ツールによりCADデータ(DXF形式)から自動変換可能

Tencentのチップ開発進出はまったく驚くべきことではない

Tencentは今週初めて、チップ開発の進捗を公開し、その結果、同社の株価はわずかながら上昇している。ゲームやソーシャルネットワークで稼ぐ大企業であるTencentの主要分野からシリコンは遠い存在のように思えるが、観測筋によると、Tencentのこの動きは、半導体を自主開発するという中国の長期的目標に同社も一枚噛んでいることを示すものだ。しかもちょうど現在、ゲーム部門は規制当局から一連の攻撃を受けている。AlibabaやBaidu、Huaweiなどのテクノロジー大手も北京のシリコン推進に自社製チップで応えている。

その一方で、Tencentのようにデータの処理量が極めて多い企業は、もっと早く半導体の自社生産に取り組んでいてもおかしくなかった。

米国時間11月5日にTencentが発表した3つのチップはすべて自社製で、1つはAIの推論用、1つはビデオのコード変換用、そしてもう1つはネットワークインターフェース用だ。

巨大インターネット企業が自らの事業を強化するために専用のハードウェアを開発し始める例は、数え切れないほどある。2018年に、FacebookはAIチップの設計者を雇って、その途方もない量のユーザーデータを処理し、偽情報の問題を解決しようとしていた。

Tencentも、稼ぎ頭のアプリであるWeChatメッセンジャーの毎月のユーザー数は10億を超えており、処理すべきデジタルの足跡は大量だ。

しかしWeChatの管理者であるAllen Zhang(アレン・チャン)氏は、個人データを企業の私的目標に資することに消極的なことで有名だ。これまで、WeChatのユーザーフィードはただ時間順に並んでいるだけで、たまに自社広告が出るぐらいのものだ。

2020年のWeChatの年次大会でチャン氏は「ユーザーのチャットの履歴を分析すれば、巨額の広告収入が得られるだろう。しかし私たちはそれを行わず、WeChatはユーザーのプライバシーを非常に重視している」と述べている。彼が望んでいるのはWeChatが便利な使い捨てのツールであることであり、ユーザーの時間をアルゴリズムが生成する中毒性のあるリコメンデーション漬けにすることではない。

しかしチャン氏は、譲歩したようにも見える。最近のWeChatには、TikTokの最小限の機能を搭載したような短編動画もある。TikTokと同じくWeChatのビデオ機能も、ユーザーの好みを予測してコンテンツを提供している。

Tencentには、機械学習の高性能化が有利に働き、収益が増えそうな事業もたくさんある。たとえばニュースアグリゲーターのTencent Newsや、Netflixに似たTencent Videoなどだ。中国は検閲が厳しいため、コンテンツプロバイダーは、引っかかりそうなテキストやオーディオやビデオを事前に排除するためにより強力なコンピューターの力を必要としているだろう。

Tencentの上級副社長であるDowson Tong(ダウソン・トン)氏によると、同社のAI推論チップは主に、画像と動画の処理、自然言語処理、検索などに使われる。動画のコード変換用チップは、その名のとおりの仕事をしてTencentの膨大な量の動画処理に滑らかさと低レイテンシーを確保する。そしてスマートネットワークのインターフェースカード(SmartNIC)は、CPUサーバーのオフロードに利用される。

Tencentは、チップの開発だけに取り組んでいるのではない。トン氏によると、同社は今後、国内と海外のチップ企業が「深い戦略的なコラボレーション」を維持できるようなエコシステムを作っていく。たとえばTencentは4回の投資ラウンドで上海のEnflameを支援したが、同社はAIの訓練用チップを開発しており、Tencentもすでにそれを自らの事業に利用している

画像クレジット: Visual China Group / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ワイヤフリー防犯カメラ「Arlo Go 2」はバッテリー駆動とモバイルデータ接続を追加

建設現場や別荘など、アクセスしにくい場所に設置することを想定したArloの新製品「Arlo Go 2 LTE/Wi-Fi Security Camera」は、空き巣や泥棒などの悪人を監視するために、いつでもどこでも使用することができる。

また、同社はArlo Secureサブスクリプションサービスを販売している。このサービスでは、30日分のクラウド録画ライブラリを利用できる他、映像をコンピュータビジョンで解析し、人物、動物、車両、荷物を個別に検出することができる。また、このサービスには、ボタンを押すだけでカメラのある場所に緊急サービスを派遣することができる緊急時対応機能も含まれている。

カメラは風雨に耐える堅牢な設計で、microSDカードへの安全なローカルストレージを提供し、接続機能を内蔵している。カメラは、利用可能な場合はWi-Fi接続を利用して同社のサーバーに電話をかけることができる。また、お気に入りのテレビ番組の最新エピソードがちょうどおもしろくなってきた瞬間にまたしてもWi-Fiがダウンした場合には、LTEネットワークをプライマリまたは代替オプションとして利用することも可能だ。

Arloの製品担当SVP兼CIO(最高情報責任者)であるTejas Shah(テジャス・シャー)氏は、次のように述べている。「Arlo Go 2は、前作Arlo Goの成功を受けて開発されたもので、アクセスしにくい場所でワイヤフリーのセキュリティを求める人にとって、最も汎用性の高いソリューションとなっています。Arlo Go 2は、モバイルネットワークとWi-Fiのどちらでも動作するため、ユーザーは用途に応じて最適な接続方法を選ぶことができます」。

Arlo Go 2にはGPS機能が搭載されているため、複数のデバイスを広い範囲でモニターすることが可能だ。また、皮肉な状況が発生し、泥棒が家には入らずカメラだけを持って行ってしまった場合でも、カメラを探しに行くことができる。また、スピーカーとマイクを使った双方向通信機能を搭載しているので、安全な距離から泥棒に呼びかけることもできる。さらに、侵入者に監視されていることを知らせるサイレンを内蔵している。

価格は250ドル(約2万8000円)で、Verizon(ベライゾン)から米国時間11月4日発売され、2022年には他のキャリアからも発売される予定だ。

画像クレジット:Arlo

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

ネコ車電動化キット「E-cat kit」・動力内蔵クローラ「CuGo」など手がけるCuboRexが約7500万円調達

タイヤ交換だけで農業用一輪車「ねこ車」を電動化するE-Cat Kitが広島県JA尾道市で販売開始

不整地で使える乗り物や運搬器具を製造開発するハードウェアスタートアップCuboRex(キューボレックス)は11月4日、プレシリーズAラウンドにて第三者割当増資による約7500万円の資金調達を完了させたことを発表した。引受先は、Open Network Lab、DRONE FUND、個人投資家らとなっている。これにより、シードラウンド以来の累計調達額は1億3000万円となった。

CuboRexは、ミカン農家や工事現場などで使用される一輪車、いわゆるネコ車を電動化するキット「E-cat kit」(イーキャット・キット)や、移動ロボットの開発を支援する動力内蔵クローラユニット「CuGo」を開発製造して販売しているが、こうした不整地に対応した機器による「不整地産業の課題解決」や、不整地対応ロボットの市場拡大を目指している。

今回調達した資金は、産業用サービスロボット事業の拡大、「E-cat kit」と「CuGo」の市場拡大と体制強化、研究開発においては資金不足になりがちな経営を安定させるキャッシュフロー基盤整備に充てられるという。現在、サービスロボット分野では、除草剤散布を自動で行う「除草剤サービスロボット」やプラント施設管理を省力化する「プラント施設管理ロボット」などのプロジェクトが進行している。

ドイツの義肢装具メーカーOttobockが外骨格ロボットスーツのSuitXを買収へ

ドイツに本社をおく医療機器メーカーOttobock(オットーボック)は、ベイエリアを拠点とする外骨格スタートアップのSuitXを買収する契約を締結したと米国時間11月2日に発表した。今回の買収は、義肢・装具とともに独自の外骨格を製造しているOttobockにとって、理にかなったものだ。

SuitXは、カリフォルニア大学バークレー校の機械工学教授であるHomayoon Kazerooni(ホマユーン・カゼローニ)博士が設立した、バークレーロボティクスおよび人間工学研究所のスピンアウトベンチャーだ。同社を設立し、2012年にCEOに就任する前、カゼローニ教授は2005年にもEkso Bionicsを設立している。その会社は2014年に上場した。

OttobockとSuitXは同じカテゴリーで、作業支援と健康管理という2つの異なる目的のために設計されたロボット外骨格を製造している。SuitXは現在、3種類の作業用外骨格(腰、肩、脚)と、歩行補助用の「Phoenix」、医療スタッフが重い鉛エプロンを着用する際のストレスを軽減する「ShieldX」という2種類の医療関連システムを製造している。また、最近では「Boost Knee」と呼ばれるロボット膝装具の試験を開始した。

カゼローニ教授とOttobockのサミュエル・ライマー氏(画像クレジット:SuitX)

カゼローニ教授は、今回の発表に関連したリリースでこう述べている。「私は今、我々の人生を豊かにする医療用および産業用外骨格製品をグローバルに提供する立場に置かれており、大変幸運と感じています。この一歩は、SuitXだけでなく、世界中の人類のために起業家精神を最大限に育むカリフォルニア大学バークレー校にとっても成功だといえます。QOL(生活の質)の向上のために、Ottobockとともに我々の技術を国際的なコミュニティに提供することを楽しみにしています」。

Ottobockは、頭上での作業時に首、腰、肩をサポートするように設計されたPaexo Shoulderなどの外骨格を自社で製造している。外骨格デバイス(エクソスケルトン)は、2021年初めにSPAC経由で上場したSarcosの製品を含め、最近ホットな話題となっている。

今回の取引では、OttobockがSuitXの株式を100%取得する。なお、買収条件の詳細については公表されていない。

画像クレジット:Ottobock

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

手首に着けて音楽を奏でるウェアラブル「テルミン」のMicticが約2.8億円調達

中国Mooer Audioがエフェクト・ドラムマシン・ルーパー内蔵のエレキギターを開発中

スイスを拠点とするMicticが、何もないところをコンサートホールにする2個1組のウェアラブルデバイスを開発した。本体のないテルミンで、スマートなループステーションと接続されていると想像すれば、だいたい合っている。デモと説明文からすると、CESで長い1日を過ごした後にバーで感想をしゃべって、その後はも話を聞くこともなくなってしまうスタートアップのようだ。しかしMicticはギミックの域を超え、PTK Capitalが主導したシードラウンドで250万ドル(約2億8000万円)を調達した。さらに音楽界の大スターであるMoby(モービー)氏も資本政策に加わっている。

Micticのデバイスは2個1組のリストバンドで、動きを計測するセンサーが付属している。これをスマートフォンに接続すると、アプリの力を借りて音楽のスキルがまったくない初心者も演奏を存分に楽しむことができる。発売時には、さまざまなスタイルやジャンルにわたる15種類のサウンドやサウンドスケープがアプリに内蔵されている。

Micticの創業にはちょっと珍しい話がある。それは、バドミントンから始まった。創業者たちはテニスをしに行ったのだが雨でできなくなり、代わりに室内でできるバドミントンになったのだ。彼らは盛り上がらないゲームについて聴覚の楽しみという観点から話をした。そしてバドミントンのシャトルを打つ音の1つ1つを迫力のある爆発音などの効果音に変えるプロダクトをハックした。そこから彼らはサウンドスケープをさらに追加し、インターフェイスを変え、ついにフル装備の楽器を作り上げた。

あらかじめ用意されているサウンドスケープだけでなく、きちんとした楽器としてのプロダクトの可能性に創業者たちは心をかきたてられている。

同社CTOのMatthias Frey(マティアス・フライ)氏は次のように述べている。「Abletonと接続し、MicticをMIDIコントローラと同じように使うことができます。我々は、ユーザーにこのプロダクトの新しい使い方を見つけて欲しいと思っています。プラットフォームビジネスをまもなく拡大する計画もあります。プロダクトの販売を開始した後、次のステップの1つとしてユーザーがオリジナルのサウンドスケープを簡単に作れるようにします」。

資金を調達して同社はこれから成長し、市場でプロダクトをテストする。同社のメンバーは現在10人で、さらに増やしたいと考えている。

MicticのCEOであるMershad Javan(マーシャド・ジャワン)氏は「我々はしばらくブートストラップでやっていかなくてはならなかったのですが、その後、今回の資金調達ラウンドを実施しました。次のステップはプロダクトを少しでも早く市場に出すことです。我々はプロダクトに自信があり、ユーザーの使い方を知るのを楽しみにしています」と述べている。同氏は250万ドル(約2億8000万円)では夢をすべて叶えるには足りないことを認めた。「十分な金額ではありませんが、我々にとってはプロダクトをお客様に届け、できればそこから生産を増やしていくことが課題です。重要なデータとビジネスのインサイトを実際に得ることができれば、さらに成長し、おそらく次の資金調達ラウンドもすぐに実施できるでしょう」(同氏)

Micticはプレス用の資料でモービー氏が同社の資金政策に加わっていることを大きく取り上げ、コラボレーションやアドバイザーとしての可能性に期待している。ただしモービー氏は今回のラウンドでは大きな投資をしたわけではなく、250万ドル(約2億8000万円)の1割未満であることも同社は認めている。モービー氏はMicticに直接投資しているだけでなく、Micticのラウンドを主導したベンチャーファーム、PTK Capitalのリミテッド・パートナー(つまり投資家)でもある。

Micticはすでに予約注文を開始しており、奇妙で楽しい楽器が119ドル(約1万3000円)で手に入る。12月ごろには出荷を開始する見込みだ。

画像クレジット:Mictic

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Kaori Koyama)