【コラム】完全自律運転車の航続距離を伸ばす鍵は「光」だ

編集部注:本稿の著者Nick Harris(ニック・ハリス)氏は、科学者でエンジニア、そしてフォトニックプロセッサーを製造するLightmatterの創業者兼CEO。

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先進運転支援システム(ADAS)は計り知れない可能性を秘めたテクノロジーだ。ニュースの見出しを見ていると、自律運転車の将来は暗いのではないかと時折思うことがある。自律運転車に関する事故、規制、企業の過大な評価額が過大評価されているという意見るためだ。これらはどれもそれなりの根拠に基づく報道なのだが、自律運転車の世界が持つ驚くべき可能性を見えにくくしている。

自律運転車のメリットの1つが環境負荷の軽減であることは一般的に認められている。なぜなら、自律運転車のほとんどは電気自動車でもあるからだ。

業界アナリストによるレポートでは、2023年までに730万台(市場全体の7%)が自律運転機能を搭載するため、15億ドル(約1649億円)相当の自律運転専用プロセッサーが必要になると試算されている。さらに、2030年までに自動車販売台数の50%が米国家道路交通安全局(NHTSA)によって定義されたSAEレベル3またはそれ以上の自律運転機能を備えるようになった場合、必要とされる自律運転専用プロセッサーは140億ドル(約1兆5390億円)相当まで増加する見通しだという。

自律運転電気自動車(AEV)が消費者を満足させる航続距離、安全性、パフォーマンスを提供して期待に完全に応えるには、コンピューティングとバッテリーに関するテクノロジーを根本から革新することが必要かもしれない。

光チップの方が高速でエネルギー効率も高いため、SAEレベル3に達するのに必要なプロセッサーの数は少なくなる。しかし、光チップによるコンピューティング性能の向上がSAEレベル5の完全自律運転車の開発と実用化を加速させるだろう。そうなれば、2030年までに自律運転用の光チップの市場規模は、現在予測されている140億ドル(約1兆5390億円)をはるかに上回る可能性がある。

AEVは非常に幅広い用途で使用できる可能性がある。例えば、大都市でのタクシーサービスやその他のサービス、高速道路専用のクリーンな輸送車両などだ。このテクノロジーが、環境にすばやく大きな影響を及ぼし得ることを、我々は目にし始めている。実際に、このテクノロジーは今、人口密度も汚染度も非常に高い一部の都市で大気汚染の軽減に寄与している。

問題は、AEVが現在、サステナビリティ面での課題に直面しているということだ。

AEVが効率よく安全に走行するには、気が遠くなるような数のセンサーを駆使する必要がある。カメラ、LiDAR、超音波センサーなどはその一部にすぎない。それらのセンサーが連携して作動し、データを集めて、リアルタイムで検知、反応、予測することにより、いわば自動車の「目」になるのだ。

効果的かつ安全な自律運転に必要なセンサーの具体的な数についてはさまざまな意見があるが「自律運転車は膨大な量のデータを生成する」ということに異議を唱える者はいない。

それらのセンサーによって生成されたデータに対して反応するには、それがたとえシンプルな反応だとしても、多大なコンピューティング能力が必要とされるし、いうまでもなくセンサー本体を動かすためにもバッテリー電力が必要だ。さらに、データの処理と分析には、カーボンフットフリントがけた外れに大きいことで知られる深層学習アルゴリズムが使われる。

AEVがエネルギー効率の面でも経済的な面でも実現可能な代替輸送手段となるには、ガソリン車と同レベルの航続距離を実現する必要がある。しかし、AEVが走行中に使用するセンサーやアルゴリズムの数が増えれば増えるほど、バッテリーの持続時間、つまり航続距離は短くなる。

米エネルギー省によると、現在、電気自動車が充電なしで走れるのは300マイル(約483キロメートル)がやっとだ。一方、燃焼機関を搭載した従来型の自動車は、燃料タンクを1度満タンにすれば412マイル(約663キロメートル)走行できる。このうえ自律運転をするとなれば、航続距離の差はさらに広がり、バッテリーの劣化が加速する可能性もある。

Nature Energy(ネイチャー・エナジー)誌に最近掲載された論文によると、AEVの航続距離は都市部の走行時で10~15%短くなるという。

2019年にTeslaが開催したイベント「Tesla Autonomy Day」では、都市部の走行中にテスラの運転支援システムが作動すると航続距離が最大で25%短くなることが明らかになった。つまり、電気自動車の一般的な航続距離が300マイル(約483キロメートル)ではなく225マイル(約362キロメートル)になるということだ。これでは消費者が魅力を感じる航続距離に達しない。

第一原理解析を行うともっと詳しく理解できる。NVIDIA(エヌビディア)のロボタクシー向けAIコンピューティングソリューションであるDRIVEの消費電力量は800ワット、テスラのModel 3のエネルギー消費率は100キロメートルあたり11.9キロワットである。大抵の都市部で制限速度とされる時速50キロメートルで走行した場合、Model 3が消費するエネルギーは約6キロワットだ。つまり、AIコンピューティングだけで、自動車の走行に使われる総バッテリー電力の約13%を消費していることになる。

この例は、AEVに搭載されるコンピューティングエンジンを動かすには多大のエネルギーが必要であり、そのことが、バッテリー持続時間、航続距離、消費者に受け入れられるかどうか、という点を左右する非常に大きな問題になっていることを示している。

この問題は、現在の先進AIアルゴリズムに使われる電力大量消費型の現世代コンピューターチップを冷却するためにも電力が必要であるという事実によってさらに複雑化する。大量のAIワークロードを処理すると、半導体チップアーキテクチャは大量の熱を発生させるからだ。

このようなチップでAIワークロードを処理すると熱が発生し、その熱によってチップの温度が上がると、チップのパフォーマンスが下がる。そうすると、その熱を冷やすためにヒートシンク、ファン、その他の冷却機能が作動する頻度が増えて、そこでエネルギーが浪費され、バッテリー残量は減り、結果的に電気自動車の航続距離は短くなる。自律運転車の業界は進化を続けているが、AIコンピューティング用のチップが発する熱に関するこの問題を解決する新たなソリューションが緊急に必要とされている。

チップのアーキテクチャに関する問題

何十年もの間、我々はムーアの法則と、そこまで有名ではないスケーリング則であるデナード則を頼りに、フットプリント(専有面積)あたりのコンピューティング能力を毎年向上させてきた。現在、電子コンピューターのワットあたりの性能を大幅に向上させることはもう無理だということは広く知られており、世界中のデータセンターがオーバーヒートしている。

コンピューティング性能をもっとも大幅に向上させるには、チップのアーキテクチャから見直す必要がある。具体的には、特定のアプリケーションに特化してチップをカスタマイズする必要がある。しかし、アーキテクチャ面でのブレイクスルーは1回限りの手品のようなもので、コンピューティングの歴史においてブレイクスルーがいつ達成されるのかを予測するのはまったく不可能だ。

現在、AIアルゴリズムのトレーニングと、その結果として作られるモデルに基づく推論に必要とされるコンピューティング能力は、ムーアの法則下における増加率の5倍という指数関数的な速度で増加している。その結果、大きな経済的メリットがもたらされる程度までAEVを普及させるために必要なコンピューティング能力と、現在のコンピューティング能力との間に、巨大な差が生まれている。

AEVは、バッテリー航続距離と自律運転に必要なリアルタイムのコンピューティング能力とを両立させる点で苦戦を強いられている。

AEVのサステナビリティを向上させる「光コンピューティング」

AEVが消費者を満足させる航続距離、安全性、パフォーマンスを提供して期待に完全に応えるには、コンピューティングとバッテリーに関するテクノロジーを根本から革新することが必要かもしれない。量子コンピューターが近い将来に、あるいは中期的にでも、AEVが抱えるこの難題の解決策になるとは考えにくい。しかし、今すぐブレイクスルーを達成できる、もっと現実的な別の解決策がある。それは、光コンピューティングだ。

光コンピューティングでは、電気信号の代わりにレーザー光を使ってデータの計算と伝送を行う。その結果、電力消費量は劇的に減り、クロック速度やレイテンシーなどの重要な処理能力パラメータは向上する。

さらに、光コンピューティングでは、多数のセンサーからのインプットを同時に1つのプロセッサーコアで処理して推論タスクを実行できる(各インプットには一意の色によって記号化されている)。一方、従来のプロセッサーは一度に1つのタスクしか処理できない。

ハイブリッド型の光半導体が従来の半導体アーキテクチャと比べて優れている点は、光そのものが持つ特異な性質にある。各データインプットは異なる波長、つまり「色」でコード化され、同じ神経回路網モデルを通る。つまり光プロセッサーは電子プロセッサーに比べてスループットが高いだけでなく、エネルギー効率も大幅に良いということだ。

光コンピューティングは、極めて高いスループットを低いレイテンシーと比較的少ない電力消費量で実現することが求められる応用分野で力を発揮する。例えば、クラウドコンピューティングだ。将来的には自律運転で応用できる可能性もある。自律運転では、膨大な量のデータをリアルタイムで処理することが求められるからだ。

光コンピューティングは現在、商用化の一歩手前まで来ており、自律運転に関する今後の見通しをさらに有望なものに変え、同時にカーボンフットプリントを減らす可能性を秘めている。自律運転車のメリットがますます注目を集めており、消費者が間もなく自律運転車を求めるようになるのは明らかだ。

そのため、自律運転によって変容する業界や路上における安全性について検討するだけでなく、自律運転が環境面でサステナビリティを確実に実現できるように取り組む必要がある。つまり、今こそAEVに「光を当てる」べきだ。

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(文:Nick Harris、翻訳:Dragonfly)

急速充電が可能なKiaの電動クロスオーバーEV6が2022年初頭に米国に登場

Kia(起亜自動車)は米国時間5月18日の夜、内燃機関から電気自動車への構造的変化を目指す「プランS」戦略の一環として、全電動クロスオーバーのKia EV6を2022年初頭に米国で発売するとニューヨークで行われたライブストリーミングイベントで発表した。

EV6は現代自動車グループのHyundai(現代、ヒュンダイ)およびGenesis(ジェネシス)と共通のプラットフォームである新Electric-Global Modular Platoform(エレクトリック・グローバル・モジュラー・プラットフォーム、E-GMP)で構築された初のバッテリー電気自動車だ。E-GMPは新型コンパクトクロスオーバーHyundai Ioniq 5の基礎となったものである。EV6はKiaが2026年までに全世界で発売する予定の11種の電気自動車のうちの1つとなる。

同社によると、新型バッテリー電気自動車名の先頭にはすべて「EV」という称号が付き、それに続いてラインナップの中でのポジションを示す数字が付けられるという。つまりEV6は今後のラインナップの中でも中間あたりに位置することになる。

2021年初めのグローバルデビューの際にも詳細が多く発表されたが、今回さらに公開された情報によると、6月3日から1500台の初代EV6の予約が開始するという。なお、各種機能の価格は明らかにされていない。

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EV6 First Editionはベースモデルと同様に、ARヘッドアップディスプレイ、リモートスマートパーキングアシスト機能、14スピーカーのMeridian(メリディアン)製オーディオシステム、SiriusXMの2年間利用権など多くの技術的な付加価値を備えている。また、ワイドサンルーフ、20インチホイール、デュアルモーターAWD、77.4kWhのバッテリーなど、メカニカル面でもエクステリア面でも特筆すべきアップグレードが施されている。

2022 EV6(画像クレジット:Kia)

基本概要

広々としたスポーツカーのような外観と性能を目指してデザインされたこの4ドアクロスオーバーのEV6は、フロントエンドが低くルーフラインに向かって上がるクーペのような外形となっている。LEDヘッドライトにはセグメントパターンが採用され、また内燃機関車に見られる従来のグリルはなくなっている。

EV6のホイールベースはKia Tellurideと同じ114.2インチのためサイズ感は想像しやすいのではないだろうか。

EV6には58kWhと77.4kWhの2種類のニッケルコバルトマンガンバッテリーが搭載されており、77.4kWhのバッテリーで300マイル(約483km)の航続距離を目標としている。後輪駆動とAWDの2種を備え、電気モーターとバッテリーの構成により167~313馬力を発揮。EV6 GTはより大きなバッテリーと強力な前後の電気モーターを搭載したAWDモデルで、567馬力を発揮する。GTモデルは2022年後半まで発売されないが、0から60マイル(約97km)加速は3.5秒以内だという。

さらに重要なのは400ボルトと800ボルトのDC充電に対応していることだろう。Kiaは350kWの充電器からの800V DC急速充電により、18分以内に最大210マイル(約338km)の走行距離を追加できると説明している。

同社はあらゆる充電機能を搭載。EV6には11kWのレベル2充電器が搭載されており、約7時間でバッテリーを充電することが可能だ。また、EV6には「ビークル・トゥ・ロード機能」と呼ばれる機能が搭載されており、これはEV6が家電製品やパソコンなどのデバイスやツールの電源になり得ることを表現した言葉である。これはバッテリーから充電コントロールユニットに電気を取り込むことにより、1900Wの電力を供給する仕組みだ。

2列目のシートベース前部のソケットにある100Vコンセントを介してこの電源に接続することができ、バッテリーがフル充電されている場合36時間以上連続して電力を得ることができると同社はいう。また、110V充電器と同等の1.1kWというペースではあるものの、車から車への充電にも使用可能だ。

2022 EV6(画像クレジット:Kia)

その他にも運転支援、安全性機能、車載テクノロジーなど数多くの機能が搭載されている。車内にはカーブを描いた2つの12インチスクリーンディスプレイを備え、インストルメントクラスターとインフォテインメントセンターを完備。また、最近では定番となっているBluetooth機能やスマートフォンのワイヤレス充電機能も備えている。

追加料金を支払えばWi-Fiホットスポットのほか、地図やインフォテインメントシステムのソフトウェアをワイヤレスで更新する機能を追加することも可能だ。Kia Payと呼ばれる車載用コマース機能、盗難時のリカバリートラッカー、AppleやAndroidのスマートウォッチを利用してバッテリー状態や車両に関する通知、車両制御を表示するスマートウォッチアクセシビリティ、天気やルート案内などのコネクテッドカー機能なども備えている。

さらにスマートスピーカーと連携させることで、Amazon AlexaやGoogle Assistantを使ってリモートスタートなどの車両機能を遠隔操作することもできる。

車外に設置された4つのカメラが360度の視界を確保。駐車時に障害物を検知する他、ドライバーや同乗者がドアを開ける際に、何かが接近すると検知した場合に警告を発して退出させないようにする安全機能も搭載している。

また、前走車との距離を一定に保ち、車線内の中央を運転するようにする機能など、21種類の高度な運転支援システムを標準装備している。Kiaによると、同機能の新バージョンでは車線変更をサポートして車線内での車体の側方位置を調整することもできるようになるという。

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電気自動車のサウンドデザインをAIを駆使して行うPentagramのスズキユウリ氏
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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

電気自動車のサウンドデザインをAIを駆使して行うPentagramのスズキユウリ氏

電気自動車が0~60マイル(0〜96 km)まで加速した時、方向指示器を出した時、夜間にパワーを下げた時、どんな音がするだろうか?EVモーターの部品は少なく、そのため驚くほど静かなので、音でスピードを認識するドライバーや、近づいてくるクルマの音を聞くことのできない歩行者に、安全性の懸念をもたらしている。

2019年、欧州および米国の規制当局はEVの警告音義務化を開始したが、音の選択は自動車メーカーに任された。多くのメーカーが新たな規制をブランド付きサウンドを生み出すチャンスと捉えたが、有名ミュージシャンに電動エンジンのノイズを作曲させるマーケティング騒動も引き起こした。Hans Zimmer(ハンス・ジマー)氏はブレードランナー風のサウンドコンセプトをBMWの電動セダン、i4のために創作し、なぜかLinkin Park(リンキン・パーク)もBMWのEVサウンドを作っている。

関連記事:BMWの次世代電動コンセプトカーには特製のサウンドトラックがついている

デザインコンサルタント会社、Pentagram(ペンタグラム)のパートナーでサウンドデザイナーのYuri Suzuki(スズキ・ユウリ)氏は、電気自動車のサウンドがユーザーの安全、楽しさ、コミュニケーション、およびブランド認知に果たす重要な役割に関する研究プロジェクトを実施し、その中でさまざまなカーサウンドを開発した。スズキ氏は、自動車メーカーの中には美しくて興味を引くカーサウンドデザインを選ぶところもあるが、セレブの影響力に頼ることは、重大な機械に関わるサウンドをデザインするのに適した方法ではないと語った。

「デザインは人間への心理的影響に基づいて慎重に行うことが重要です」とスズキ氏は語る。「何よりも大切なのは人間と機械そのものとの関係です」。

優れたデザインは、人間と車に共通言語を与えることで両者の違いを緩和することができる、とスズキ氏はいう。自身が指揮をとった調査プロジェクトでスズキ氏は、2種類のスキューモーフィックな電動エンジン・サウンドと、運転している時間帯と場所を反映した適応サウンドを開発した。

彼のエンジン音はガソリンエンジンの回転を彷彿させ、スピードの増加と減少を認識できる特徴をドライバーにも歩行者にも与える。サウンドはさまざまな音程で使用され、宇宙船が飛び立つような低いものやホバークラフトが垂直上昇するような少し高いものもある。Audi(アウディ)、Ford(フォード)、Jaguar(ジャガー)、Land Rover(ランドローバー)の各社も、ガソリンエンジンの未来的模倣音を一部の新しい電気自動車に採用している。

スズキ氏のサウンドデザインには車内音、たとえば始動、方向指示器、クラクションなどもあり、AIを使って時間帯に適応させている。午前中は、高い音程と快活なエネルギーをサウンドに与え、時間とともに低い音程へと徐々に変化していく。

サウンドのカスタマイズを進めるするために、スズキ氏は機械学習を使って個人のカレンダーに統合することで、ユーザーが職場に向かっているのか、用事を足しに行くのか、ドライブを楽しんでいるのかに、サウンドを行動に適応させた。ドライバーが目的地に着いた時はいつでも、ビデオゲーム風のサウンドが鳴る

多くの自動車メーカーが、クルマの出す音をドライバーが選べるようにしているが、スズキ氏はそれを最善策ではないと考える。なぜなら人は自分にとって最もクールなサウンドを選びがちで、それが必ずしも有用なものとは限らないからだ。さらには、みんなが独自のサウンドを選べば、街中に耳障りな騒音が鳴り響くことになる。みんなが携帯電話で独自の着信音を選ぶようになった時と似ているが、もっと心配になるスケールだ。

「利用者の生活・行動パターンに合わせて徐々に変化していくプリセットサウンドをお薦めします」と彼は言った。「私たちのAIは、ドライバーの行動に合わせてゆっくりとサウンドを調節することができます」。

スズキ氏のAI利用カーサウンドは、繰り返しにならないように作られている。このため、長時間のドライブで同じ音がずっと聞こえることはない。スズキ氏のサウンドには、オーダーメイドのサウンドをリアルタイムで生成する機能があり、これは人間にはほぼ不可能だ。常時変化し続けるこのサウンドは、元のエンジン音と同じデータを使用しているが、繰り返すことなく何時間も続けることができる。

Pentagramは、スズキ氏のサウンドの商用アプリケーションをまだ作成していない。それは会社が研究成果をEVおよびサウンドデザイン業界と共有し、理想的な提携自動車メーカーを見つけてプロジェクトをさらに進めることに、より関心があるからだ。

「厳格なサウンドガイドラインが存在しないので、それを作ることにも興味があります」とスズキ氏は言った。「私たちにとっての第一歩は、AIとサウンドデザインで何ができるのかをみんなと共有することです」。

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タグ:電気自動車Pentagramサウンドデザイン

画像クレジット:Pentagram

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

スクーターの利便性を持つ無人配達用3輪EV展開を目指すFactionが約4.7億円調達

Faction Technology(ファクション・テクノロジー)の創業者でCEOのAin McKendrick(アン・マッケンドリック)氏には10億ドル(約1100億円)もなかったし、無人配達に使える電気自動車(EV)を設計・製造するために通常の自動車プログラムが必要とする時間もなかった。

そこで同氏はパワースポーツに目を向けた。無人配送に使用したり、人間がレンタルして街中を移動したりするマイクロロジスティクスサービスのビジョンを実現するためだ。現在、プロトタイプを開発し、規模を拡大するという野心を持つマッケンドリック氏は、Trucks VCとFifty Yearsがリードしたシードラウンドで430万ドル(約4億7300万円)を調達した。

「私たちは同じことを何度も何度も繰り返しています」と、今はなき自動運転トラックのスタートアップStarsky Roboticsのエンジニアリング担当副社長だったマッケンドリック氏は語った。「私たちはレガシー車両を採用し続け、それを無人技術向けに改造しようとしています。同じことを何度も繰り返すのではなく、少し違う方法でやってみてはと思いました」。

2020年創業し、この冬にY Combinatorアクセラレータープログラムを卒業したFactionは、3輪オートバイのプラットフォームから始めた。同社はシャシーを一から開発しているが、マッケンドリック氏によると、自動車開発の数分の1のコストでそれを実現できるという。車両の価格は全部で約3万ドル(約330万円)で、同氏によると、回収期間は2年だという。

これらはオートバイクラスの車両だ。つまり、市街地や高速道路では合法だが、乗用車と同じ規制は適用されない。

その車両で貨物を配送できる。これは、遠隔操作で支援するリモートワーカーと自動運転との組み合わせによって実現した。約10人のチームであるFactionは、他の企業と協業して自動運転車に取り組んでいる。ただし、自動システムが故障した場合に安全機能が作動するコアプラットフォームを開発した。

「私たちが車両向けに開発したコア技術は、会社が時間とともに成長するにつれ、他の形式の車にも適用しようと考えるようになりました」とマッケンドリック氏は話、デジタル車両アーキテクチャーと遠隔操作システムがともに機能するものを開発したと付け加えた。

画像クレジット:Faction Technology

配送、またはマッケンドリック氏が呼ぶところのマイクロロジスティクスは、同社が最初に注力したところだ。だが、創業者である同氏は、3輪の車両を開発し、都市周辺の3~5マイル(約4.8〜8km)の移動や、近郊都市へのより長い距離の移動に利用したい人々に貸す機会も視野に入れている。いずれの車も、人間オペレーターバージョンのガラスキャノピー(天蓋)など、いくつかの重要な違いはあるものの、ほぼ同じだと言える。配送車両には不透明なキャノピーが付いている。

マッケンドリック氏は、ユーザーがアプリで車を呼び出せる機能を考えている。呼び出すと、車は自身でユーザーの元に向かって運転を始める。ユーザーが中に入った後は、人間のドライバーが手動で操作する。

マッケンドリック氏の売り文句は、ユーザーはスクーターや自転車シェアが持つあらゆる利便性を享受できるが、耐候性と高速道路を走れる機能も備えているというものだ。

「つまり、たとえばサンフランシスコ市内からサンフランシスコ空港まで移動する必要がある場合、これは最適な形式の車両です。4ドアセダンや大型車を増やそうとするものではありません」。

無人配達アプリケーションでは、ユーザーはマイルごとに課金される。マッケンドリック氏は、レンタカーの料金を時間単位で請求する可能性があると語った。

同社は現在、運用する車両の規模を拡大するため、軽電気自動車メーカーとの提携に取り組んでいて、2021年後半に最初の顧客試験を発表する予定だ。マッケンドリック氏によると、目標はマイクロロジスティクスのパイロット向けに約50台の車両を配備し、第4四半期までに初期の乗車トライアルを開始することだ。

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タグ:Faction Technologyロボット配達EV資金調達電動バイク

画像クレジット:Faction Technology

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードが同社電気自動車計画の柱となるEVピックアップトラック「F-150ライトニング」を発表

米国自動車メーカーFord(フォード)の収益の柱となっているF-150に、電気自動車モデルが加わった。

米国時間5月19日に発表された完全電気ピックアップトラックF-150 Lightning(F-150ライトニング)は、フォードが220億ドル(約2兆4000億円)を投じて進めている電気自動車計画の柱だ。そして、フォードがこの1年の間に発表した3タイプの電気自動車のうちの1つでもある。また、収益の面では最も意味のあるものといえるだろう。フォードF-150ライトニングは、ミシガン州Dearborn(ディアボーン)にあるRouge(ルージュ)工場で生産され、電気自動車のMustang Mach-E(マスタング・マッハE)や、商用に特化し柔軟な構成が可能な電気カーゴバンE-Transit(Eトランジット)に続くモデルとなる。

F-150ライトニングは、フォードにとって挑戦的なプロジェクトだった。このピックアップトラックには、北米でベストセラーへと押し上げたガソリンエンジンモデルの特徴に加え、電気自動車ならではの新たなメリットが求められた。つまり、トルク、パフォーマンス、牽引力、そして全体的なレイアウトにおいて、その多くが商業目的で使用する顧客のニーズを満たす必要がある。仕様を見る限り、フォードはトルクとパワーを実現しながらも、キャビンと荷台はガソリンモデルと同じサイズを保っている。

これは重要なポイントだ。同じサイズにすることで、数千にもおよぶ既存のF-150トラックアクセサリーに対応することができるためだ。フォードが現在の顧客による買い替えを期待しているのであれば、今回のような判断は重要な意味を持つ。なお、今のところライトニングは、4ドアで5.5フィート(約1.68メートル)の荷台を持つスーパークルーのみが提供される予定だ。

F-150ライトニングは、ガソリンモデルの顧客による買い替えか、あるいはまったく新しい顧客層を獲得できるのか。この答えは、2022年春の発売を待たなければならない。

しかし、このライトニングはフォードのヒット商品になる可能性を秘めていると考えるアナリストもいる。

「フォードは、従来のF-150にバッテリーパックを搭載する以上のことをした」と、iSeeCars.com(アイ・シー・カーズ・ドットコム)のエグゼクティブアナリストであるKarl Brauer(カール・ブラウアー)氏は述べる。「ライトニングのデザイン、性能、先進的な機能に対する同社のアプローチによって、従来のエンジンでも魅力的なトラックになっていただろう。電気自動車のパワートレイン、瞬時トルク、積載量や牽引力の増強、さらには充電をシームレスに家への電力供給に切り替え、数日に渡って供給できる能力は、ライトニングの洗練されたスタイリング、すばやい加速、ハイテク設備に加えて、新たなメリットとなっている。フォードは、電気自動車へ移行することにともなうチャンスとリスクの両方を認識しており、F-150をバッテリー駆動の世界でも成長させると明確にコミットしている」。

ライトニングの基本仕様

F-150ライトニングには、トリムレベルが異なるベース、XLT、ラリアット、プラチナの4つのシリーズと、2つのバッテリーオプションが用意される。また、アルミ合金製のボディーに、2つのインボード電気モーターを搭載したこのトラックは、4輪駆動を標準装備し、独立型リアサスペンションを備えている。フォードは、現時点で2つの価格のみを公表している。ベースモデルは、連邦または州の税額控除前の価格で3万9974ドル(約434万円)、ミッドシリーズのXLTモデルは、5万2974ドル(約576万円)からとなる。予約サイトによると、フル装備のライトニングは9万474ドル(約983万円)となっている。なお、これらの価格には、デスティネーション料金(工場から販売店への配送料)と税金は含まれていない。

スタンダードレンジバッテリーモデル(他のトリムのスペックは未発表)のライトニングの全長は、232.7インチ(約5.91メートル)で、ガソリンエンジンのF-150よりも1インチ(2.54センチメートル)長い。ホイールベースは基本的に同じであり、ガソリンモデルやハイブリッドモデルとの差は、わずか10分の1インチ(2.54ミリメートル)だ。

F-150の4輪駆動タイプにおける、電気モーター車とガソリン車の大きな違いは、地上高だ。オリジナルのF-150の地上高が9.4インチ(約23.9センチメートル)だったのに対し、ライトニングでは8.9インチ(約22.6センチメートル)となっている。この0.5インチ(1.27センチメートル)の減少は、バッテリーやインボードモーターを地面の起伏から守るための金属製スキッドプレートによるものと考えられる。

スタンダードレンジバッテリーは、目標とする426 hp(約345kW)の出力と775 lb・ft(約1050 N・m)のトルクを実現した。また、エクステンデッドレンジバッテリーを搭載することにより、同じトルクで出力は563 hp(約420kW)まで向上する。フォードによると、これはF-150の中でも最も高い値だという。

バッテリーの目標航続距離は、スタンダードバッテリーで230マイル(約370キロメートル)、エクステンデッドバッテリーでは300マイル(約483キロメートル)にまで伸びる。しかし、ここで疑問が残る。ボートやトレーラーを牽引した場合、航続距離にどのような影響があるのだろうか。

フォードはその情報を提供しておらず、EPA(米国環境保護庁)が推定航続距離を発表し、ユーザーが車、ボート、スノーモービルなどを牽引するようになるまでは、はっきりしないかもしれない。

フォードは、ドライバーが充電する前に、あとどのくらいの距離を走行できるかを把握するための2つの機能を紹介している。1つ目の機能は「オンボード・スケール」と呼ばれるもので、トラックに搭載されたセンサーを使って積載量を推定し、ドライバーは自分の運ぶものの重さを知ることができるというものだ。ここで積載量、つまりトラックが積んで運ぶ重さは、牽引できる重さである牽引能力とは異なる。しかし、フォードによると「オンボード・スケール」は、牽引の情報、積載量、天候などを考慮した「インテリジェント・レンジ」という、さらに別の機能も使って情報を提供するという。

フォードは、積載量や牽引能力にも向き合っている。同社によると、ライトニングの新しいフレームには、F-150のフレームとしては最も強度の高いスチールが使用されており、最大2000ポンド(約907キログラム)の積載量と最大1万ポンド(約4536キログラム)の牽引力をサポートしているという。

ライトニングの車内

新しくモデルチェンジしたガソリンエンジンのF-150と同様に、ライトニングにもコネクテッドカー技術や先進のドライビングアシスト機能が惜しみなく搭載されている。ライトニングの上位モデルであるラリアットとプラチナには、フォードのSync 4A(シンク4A)インフォテイメントシステムが搭載されており、無線によるソフトウェアアップデートに対応している。つまり、ドライビングアシスト機能の追加や改善、地図を最新に保つなど、車の機能のアップグレードをシステムが行うということだ。Sync 4Aは、Sync AppLink(シンク・アプリンク)システムを介して、Waze(ウェイズ)やFord+Alexa(フォード・プラス・アレクサ)と呼ばれるAmazon Alexa(アマゾン・アレクサ)のフォード向けバージョンなど、サードパーティのアプリを提供する。

Sync 4Aシステムは、自然な音声コントロールとリアルタイムのマッピングを特徴とし、15.5インチ(約39.4センチメートル)のタッチスクリーンに表示される。このタッチスクリーンは、クロスオーバータイプの新しい電気自動車であるマスタング・マッハEに搭載されているものと同様のものだ。また、ドライバーの正面には、カスタマイズ可能な12インチ(約30.5センチメートル)のメーターパネルがある。このデジタルパネルは、バッテリーの動作状況、回生ブレーキ、先進的なドライビングアシスト機能など、ドライバーにとって重要な情報を提供する。

画像クレジット:Ford

「このクルマは、当社がこれまでに作った中で最もスマートなF-150だ」と、Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)のバッテリー電気自動車担当ゼネラルマネージャーであるDarren Palmer(ダレン・パーマー)氏はいう。そして「F-150ライトニングは、没入型タッチスクリーンを備えており、お客様が求めるすべての情報を瞬時に提供する。目的地、積載量、残りの航続距離などをリアルタイムで見ることができる。また、Ford Power-Up(フォード・パワーアップ)ソフトウェアアップデート機能により、この車をさらに気に入ってもらえるだろう」と続ける。

また、F-150ライトニングには、同社の新しいハンズフリー運転機能であるBlue Cruise(ブルークルーズ)が搭載される。この機能は、F-150エンジン車の2021年モデルとマスタング・マッハEの一部の2021年モデルにも搭載され、2021年後半のソフトウェアアップデートで利用可能になる。このハンズフリー運転機能は、カメラ、レーダーセンサー、ソフトウェアを使用して、アダプティブ・クルーズ・コントロール、車線中央維持、速度標識認識を統合することにより実現している。そして2021年4月の同社の発表では、約50万マイル(約80万キロメートル)の開発テストをパスしたことを公表している。また、このシステムでは、ドライバーの視線と頭の位置をモニタリングする車内カメラも実装され、視線を道路に集中させることができる。

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このハンズフリーシステムは、フォードのCo-Pilot360(コウパイロット360)テクノロジーを搭載した車両で利用可能であり、車線が分離された高速道路の特定区間でのみ機能する。このシステムは、2021年後半にソフトウェアアップデートにより展開され、まず北米の10万マイル(約16万キロメートル)以上の高速道路で利用可能となる予定だ。

充電と電源

電気自動車の運転には、もちろん充電が欠かせない。しかし、単にプラグインできるだけでは十分とはいえない。いつ、どこで、どのようにして充電できるのか把握できることが最も重要なポイントだ。フォードによると、トラックのバッテリー残量が総航続距離の3分の1を下回ると、顧客に通知されるという。このインテリジェントレンジは、前述した通り、牽引の情報、積載量、天候を考慮したもので、ドライバーにも通知される。また、付属のFordPass(フォードパス)アプリによって、充電可能な場所の情報も得られる。車内ではインフォテイメントシステムで充電ステーションを見つけてナビゲートすることができる。

ライトニングには車載電源も搭載されており、スタンダードモデルでは2.4kW、ラリアットモデルとプラチナモデルでは9.6kWの電力が供給できる。これは「メガパワーフランク」と呼ばれるボンネット下のトランクにあるアウトレットからの最大2.4kW、キャビンと荷台のアウトレットからの最大7.2kWを合わせたものだ。

フォードはまた、9.6kWのバックアップ電源としての機能をアピールしている。停電の場合は3日間、配給制の場合は10日間、家庭に電力を供給できるとしている。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

テスラが「レストランサービス」用途として新たに商標を出願、食事をしながらEVを充電

Tesla(テスラ)は先日、レストランサービスの分野における自社ブランドの新しい商標を申請した。これは、Elon Musk(イーロン・マスク)CEOをはじめとする同社幹部たちが、少なくとも2017年から公に議論してきたアイデアを実現するために、いよいよ準備が整いつつある可能性を示している。

Electrek(エレクトレック)が最初に報じた5月27日付で米国特許商標庁へ出願された書類によると、テスラは「レストランサービス、ポップアップレストランサービス、セルフサービスレストランサービス、テイクアウトレストランサービス」のカテゴリーをカバーする3つの新しい商標を申請している。この出願は現在審査待ちの状態で、8月27日頃に弁護士による審査が行われる予定だ。

世界で最も影響力のある高級電気自動車会社とレストラン事業が、どのように結び付くのだろうかと、訝しむ人もいるかもしれない。話を2017年に戻そう。当時、テスラのCTOを務めていたJB Straubel(JB・ストラウベル)氏は、フードサービスとテクノロジーのイベント「FSTEC」で、同社がレストラン事業に進出する可能性があると発言した。そのアイデアは、EVの充電ステーションを、食事も提供するフルサービスのコンビニエンスストアにするというものだった。テスラは、このアイデアの縮小版として、カリフォルニア州ケトルマン・シティのSupercharger(スーパーチャージャー)ステーションにあるラウンジのようなものを作った。

イーロン・マスクCEOは2018年1月、このコンビニエンスストアのアイデアを発展させたレストランのコンセプトを、(いつものように)Twitter(ツイッター)で発表。「LAで新たなテスラ・スーパーチャージャーを設置する場所の1つに、昔風のドライブインにローラースケートとロックを組み合わせたようなレストランを併設するつもりです」とツイートした。

その数カ月後、テスラは実際にレストランとスーパーチャージャーステーションの申請を行ったが、それ以来、このビジネスベンチャーの可能性についてはほとんど沈黙を保ってきた。2020年、米国向け広報チームを解散させた同社は、テスラ自身が充電ステーション併設のレストランを開業するのか、それとも他のレストラン事業者がテスラのロゴを使用して同様のビジネスモデルを構築するのかなど、計画に関する情報を求められても答えなかった。

テスラは、レストランでの使用を目的とした商標として、同社のアイコンである「T」のロゴや「Tesla」という言葉そのもの、そしてその言葉をデザイン化したものを、米国特許商標庁に出願している。

テスラは、社名をデザイン化したものをレストランサービスの分野で商標登録出願した

テスラは今回の商標出願によって、食事と充電を行えるステーションを作るというマスク氏の計画を前進させるために必要なステップを踏むことになりそうだ。外食産業と自動車産業が交わるのは、これが初めてというわけではない。星の増減がレストランの明暗を分けるMichelin Guide(ミシュランガイド)は、もともと1900年にAndre(アンドレ)とEdouard(エドゥアール)のミシュラン兄弟が編纂したものだ。彼らは自動車の需要を喚起し、ひいては彼らが製造するタイヤの需要を喚起したいと考え、広範囲にわたるレストランやホテルとその道中にある整備工場やガソリンスタンドなどを網羅したガイドを作成した。これにより、人々は新発明の移動手段を使って、自分の味覚や世界を探求することができるようになったのだ。

テスラのスーパーチャージャーレストランは、そこまで革命的なものではないが、人々に新しいクルマを購入するための新たな誘引構造を提供し、EV業界の競争に創造性をもたらすものだ。たとえその誘引が、過去のノスタルジックな輝きに浸りながら、流行に乗っているように見せるというだけのものであっても。

そこではウェイターが電動ローラースケートでハンバーガーを運ぶようになるのかもしれない。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米セブン-イレブンが2022年末までに北米250店舗にEV充電ステーション500基を設置

コンビニエンスストアはユビキタスだ。米国の消費者が購入するガソリンの圧倒的大部分を販売している。しかし多くの米国人が電気自動車(EV)に移行するにつれ、人々がコンビニに立ち寄る大きな理由は消失する。

コンビニ大手の7-Eleven(セブン-イレブン)はこの成長しつつあるEVドライバーマーケットをつかもうとしている。同社は米国時間6月1日、2022年末までに北米の250店舗にDC急速充電ポート500基を設置すると発表した。サプライヤーから購入されなければならないガソリンスタンドの燃料とは対照的に、これらの充電ステーションはセブン-イレブンが所有・運営する。

EVgoやChargePoint、TeslaのSuperchargerネットワークのような米国最大のプロバイダーが展開している多くの充電ステーションは、ショッピングモールやTargetのような小売店に隣接している駐車場の寄せ集めに立地している。しかしセブン-イレブンのようなコンビニ店の大きな特徴は、高速道路や幹線道路に隣接したエリアにすでに立地していることであり、ドライバーを引きつけるという点で優位かもしれない。

充電スピードが遅いチャージャーではなくDC急速充電を選んだのも、もう1つの強みだ。コンビニ店の大半は、給油する時間で出たり入ったりする短時間のサービスのためのものだ。多くの店舗が室温が管理された座れる場所を提供しておらず、長い充電時間はドライバーにとって問題となる。古いEVモデルは受け入れられる充電キロワットに制限があるが(なので、バッテリーを充電するのにどれくらいの時間がかかるかという点で、チャージャーの出力レートは重要ではない)、比較的新しいEVはさまざまなレンジの出力を受け入れることができる。

充電インフラ、あるいはその不足はEV浸透にとって引き続き最大の障壁の1つであり、セブン-イレブンが発表したもののような主要小売店による設置計画は消費者のEV移行に関するためらいを減らすのに役立つかもしれない。

セブン-イレブンは現在4州の14店舗にステーション22基を展開していて、新たな充電ステーション500基はこの既存ネットワークに加わる。

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タグ:セブン-イレブン充電ステーションアメリカカナダコンビニエンスストア電気自動車

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

財政苦境に直面するイーロン・マスク氏のラスベガスループ地下輸送システム、The Boring Companyに賠償金数億円の可能性

米国ネバダ州の規制当局が課した制限により、イーロン・マスク氏のThe Boring Company(ザ・ボーリング・カンパニー、TBC)は、同氏初の地下交通システム「LVCC Loop(ラスベガス・コンベンションセンター・ループ)」の契約目標達成が困難になっている。

ラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)のLoopシステムは60台以上の完全自律型高速車両を使い、展示ホール間で毎時最大4400人の乗客を輸送することになっている。しかしTechCrunchの取材によると、クラーク郡の規制当局がこれまでに承認したのは人間が運転する車両わずか11台で、さらに厳しい速度制限を設け、Tesla(テスラ)の「完全自律走行」先進運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」の一部であるオンボード衝突回避技術の使用を禁止しているという。そのようにブランディングされているものの、TeslaのAutopilotシステムは技術的には完全自動運転のレベルには達していない。Teslaとカリフォルニア州の規制当局との間で交わされたやり取りによると、内部的にも、Autopilotは特定の機能を自動化できる先進的な運転支援システムと見なされている。

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LVCCの母体であるラスベガス観光局(LVCVA、Las Vegas Convention and Visitor’s Authority)は、マスク氏にインセンティブを与え、TBCが約束を確実に果たすように促す契約を結んだ。契約は固定価格で、TBCがすべての支払いを受けるためには、特定のマイルストーンを達成しなければならない。この契約では、トンネル掘削完了、全体の作業システムの完成、テスト期間の終了と安全レポート、そして乗客を輸送できるという証明など、プロセスのさまざまな段階で支払いが行われる。最後の3つのマイルストーンは、何人の乗客を輸送できるかに関するものだ。Loopが1時間に乗客2200人の輸送能力を示すことができれば、TBCは440万ドル(約4億8000万円)を受け取ることができ、3300人を達成すれば再び同じ額をもらえる。4400人を達成した場合も同様だ。これらの輸送能力に応じた支払いの総額は、固定契約金の30%に相当する。

1時間に4000人以上の乗客を運ぶどころか、制約されたシステムでは1000人以下のキャパシティに制限される可能性があり、TBCは契約目標を達成できなかった場合、多額の違約金を支払うことになる。TBCは乗客から料金を徴収して収益を得ることはない(乗車は無料)。

【更新】本記事の公開直後にラスベガス観光局のSteve Hill(スティーブ・ヒル)代表は、今週行われた数百人規模のLoop試験で、予定されていた1時間あたり4400人の乗客を輸送できるキャパシティが実証されたとツイートした。これにより、後述の追加建設資金が確保される可能性がある。TBCは罰金を避けるためには、今後数カ月の間に実際のカンファレンスでこの数字をまだ達成しなければならない。TechCrunchは記事公開に先立ち数週間にわたり、LVCVA、クラーク郡、そしてTBCと何度も報道内容を共有した。実質的な回答をしたのはLVCVAだけで、キャパシティの問題や、子どもやモビリティの問題を抱える乗客についての未解決の質問については回答を得られなかった。

例えばTechCrunchが新たに入手した管理契約によると、CESのような大規模なトレードショーの際には、LVCCはTBCがシステムを運営・管理する1日ごとに3万ドル(約330万円)を支払うことになっている。しかし、2019年にTBCが締結した当初の契約書には、TBCが1時間あたり約4000人を輸送できない大規模なイベントごとに、30万ドル(約3300万円)の賠償金が課されると明記されている。

つまり、3~4日間のイベントで、TBCはシステムの運営費に加え数十万ドル(約数千万円)の損失を被ることになるのだ。パンデミック前の通常の年であれば、LVCCではこのような大規模なイベントを年12回ほど開催している。なお、TBCが車内広告などによる別の収益手段を計画しているかどうかは不明だ。

このキャパシティの問題は、すでにTBCにコストをかけている。契約では、TBCがパフォーマンス目標を大幅に下回った場合、マスク氏の会社は建設予算のうち1300万ドル(約14億3000万円)以上を受け取ることができないとされている。LVCVAはTechCrunchの取材に対し、契約に基づきTBCが1時間に数千人を輸送できる能力を実証するまで、建設費を保留していることを確認した。

年間20回ほど開催されるより小規模なイベントの場合、キャパシティ賠償金は適用されないが、契約によればTBCに支払われる1日あたりの使用料は1万1500ドル(約126万円)へと激減する。また、コンベンションの数にかかわらず、TBCは毎月16万7000ドル(約1830万円)の支払いを受けてシステムの稼働を維持することになっている。

米国時間5月25日に行われたLoopのキャパシティテストに参加したのはわずか300人と報じられているが、LVCVAの担当者は、1時間あたり4400人という数字は「十分に達成可能な範囲」と述べた。

管理契約によると、TBCは人間のドライバーチームの他にも、オペレーションセンター、メンテナンス・充電施設にスタッフを配置し、制服を着たカスタマーサービススタッフ、セキュリティスタッフ、フルタイムのレジデントマネージャーを提供しなければならない。

この料金体系は「予想される自律走行への移行」を考慮して、2021年末までにおそらく下方修正されることになっている。

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衝突警告システムは使用不可

Loopの初期運用に関する制限事項のいくつかは、クラーク郡の建築消防局に提示されたものだ。その内容は、ルート全体での制限速度を時速40マイル(時速約64km)に抑える、Loopの3つの駅構内では時速10マイル(時速約16km)に減速する、車両を11台までに制限することなどである。

クラーク郡消防局のWarren Whitney(ウォーレン・ホイットニー)副消防局長は、TBCからLoop内でTeslaの衝突警告システムを使用することは許可されていないと聞いている、と述べている。クラーク郡が米国時間5月27日に発行した交通システム運営ライセンスでは、Loopは「非自律走行」で「手動運転」の車両を使用しなければならないと規定されている。このライセンスは、計画されている62台の車両に対して発行された。クラーク郡当局およびTBCのいずれも、この運用制限に関する詳細な質問には回答しておらず、いつ、どのような場合に解除されるのかについても言及していない。

トヨタは以前、レーダーを使った衝突警告システムがトンネル内で正しく機能しない可能性があると警告していた。

衝突警告レーダーを欠いたTeslaが安全に「完全自律走行」できるかどうかは定かではないが、マスク氏は、車両からレーダーセンサーを取り除いてカメラのみを使用することを提案し、現在その計画を実行している。Teslaは2021年5月から、レーダーセンサーを搭載していない「Model 3(モデル3)」と「Model Y(モデルY)」の納車を開始した。レーダーセンサーがないことを受けて、米国道路交通安全局は、2021年4月27日以降に製造されたModel 3とModel Yには、自動緊急ブレーキ、前方衝突警告、車線逸脱警告、ダイナミックブレーキサポートについて、同局の認定がなくなると発表した。またこの決定を受け、Consumer Reports(コンシューマー・レポート)はModel 3をトップピックとして掲載しなくなり、米国道路安全保険協会はModel 3のトップセイフティピック+指定を外す予定だという。

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同消防局は他にも、何時間も続く可能性のあるバッテリー火災など、トンネル内での緊急事態への対応に懸念を抱いていた。ホイットニー氏はTechCrunchに次のように述べている。「電気自動車が事故を起こさずに炎上したケースは過去ありました。今のところ我々の計画は、まず人々を避難させ、その後、撤退して火が燃え続ける間待つことです」。

ホイットニー氏は、Loopシステムには多くのカメラや煙探知機が設置されていることに加え、毎分40万立方フィートの空気をトンネル内の両方向に移動させることができる「強力な」換気システムを備えていることを指摘した。これにより、乗客やドライバーは車の周りを歩いて脱出できるはずだという。TBCはそれほど深刻ではない事故のために、故障した車両を回収するための牽引車(これもTesla)を用意している。

TechCrunchの問い合わせに対し、TBCとクラーク郡はいずれも、Loopが車イス利用者、通常はチャイルドシートが必要な子どもや幼児、その他のモビリティの問題を抱えている人々、ペットや介助犬などの動物の輸送を許可するかどうかについては答えなかった。

消防隊員たちは、駅から遠く離れた場所で、2〜3台の他の車両が行く手を塞いでいるような事故を想定した地下システムでの訓練をすでに何度も行っている。ホイットニー氏は「11台であれば問題ありません」という。「しかし、クルマの数が増えてくるとそれは問題かもしれません。TBCは営利企業であり、効率を最大限に高めたいと考えていますから、キャパシティを増やそうとした時に、さらに議論が必要になるかもしれません」とも。

拡張計画

TBCは、既存のLoopでより多くの車両を使用したいと考えているだけでなく、すでにシステムの拡張を計画している。2021年3月末、TBCはクラーク郡に対し、LVCCの1駅から新しいResorts World(リゾート・ワールド・ラスベガス)ホテルまでの延長工事に着工したことを報告し、近くにあるEncore(アンコール・アット・ウィン・ラスベガス)までの同様の延長工事の許可も得ている。

さらにTBCは、ラスベガスのストリップやダウンタウンの大部分をカバーし、40以上の駅で数多くのホテルやアトラクション、そして最終的には空港を結ぶ交通システムを構築したいと考えている。そちらのシステムはTBCが資金を提供し、チケット販売によって支えられることになる。

このような拡張が可能かどうかは、TBCが比較的シンプルなLVCC Loopで約束した技術や運用をどれだけ早く実現できるか、また、トンネル内のタクシーがマスコミに書かれる量と同じくらい収益を上げられると実証できるかどうかにかかっている。

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(文:Mark Harris、翻訳:Aya Nakazato)

南アフリカの自動車サブスクリプション会社Planet42がカーボンニュートラルを目指す理由

UberやBoltのような配車サービス企業が交通業界の在り方を覆して以来、彼らの悩みの種となってきたのは交通渋滞と公害だ。調査によると、自家用車よりも配車車両による移動の方が排出量が多いことが示されている。

二酸化炭素排出量を削減して後者の問題を解決するべく、両社はライドシェアリングや、自転車やスクーターのシェアリングサービスといった他の交通モデルの構想を打ち出してきた。また、公共交通機関のスケジュールに合わせたサービス提供や、ドライバーに電気自動車への切り替えを促すインセンティブの提供などにも取り組んでいる。しかし、これらのモデルはほとんど成功していない。

2018年、Lyftはさらに一歩踏み込んで、カーボンニュートラルの実現を宣言した。Atlanticによると、Lyftはサンフランシスコに拠点を置くサステナビリティ企業3Degreesからカーボンクレジットを購入することで、その取り組みを実行する計画を立てた。

Lyftは2019年の一年間で、240万エーカーの木を植樹するのに匹敵する量の炭素を削減したと発表した。同社は206万2500トンのカーボンオフセットを購入してこれを達成したが、2020年には従来の路線に回帰している。

このプログラムによってLyftはカーボンニュートラルを実現したものの、これはコストのかかるプロセスだった。同社は、配車サービスによって排出される正味の炭素排出量は長期的に見て引き続き増加するだろうと主張した。そのためLyftは2030年までに乗車の提供を電気自動車に限定すると宣言した。これは世界中の大半の自動車会社と同じであり、各社とも将来的に電気自動車を通じてカーボンニュートラルを達成することを約束している。

一方、南アフリカに拠点を置く自動車会社Planet42は、カーボンニュートラルを将来的にではなく今現在達成することを目指している。だがPlanet42は配車サービス会社ではない。ディーラーから中古車を購入し、サブスクリプションモデルで顧客に貸し出すサブスクリプションサービスを展開している。

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Marten Orgna(マルテン・オルグナ)氏とEerik Oja(エリック・オジャ)氏によって設立されたPlanet42は、新興市場の個人をターゲットにしているが、その事業展開はアフリカに限定されている。同社はこれまでに南アフリカで3000台近くの車を調達しており、今後数年間で10万台に増やし、2025年までに全世界で100万台にする計画だ。

こうしたことからPlanet42は、配車サービスを提供しておらず、本来ならクルマを所有していない人々にクルマを提供するという点で社会的に大きなプラスの影響を与えているにもかかわらず、そのクルマから生じる排出ガスによって、限定的ではあるが環境上マイナスの影響をもたらしている。

多くの自動車会社はカーボンニュートラルになることに無気力になっているようだが、Planet42は間接的にどのように排出量に貢献するかを検証し、2020年行動に踏み切った。

「カーボンニュートラルになるという目標は価値がないと主張する人はほとんどいないと思いますが、世界はカーボンニュートラルに向けて十分な速さで進んでいないように感じました」とオジャ氏はTechCrunchに語った。「そこで私たちは、2040年までにカーボンニュートラルになるといった空虚な大構想を打ち出すのではなく、現時点でカーボンニュートラルを実現することを決断しました」。

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電気自動車はアフリカではほとんど普及しておらず、植林にはコストがかかるが、同社はどのように取り組んでいるのだろうか。

Lyftの植林プロジェクトを支援する前に、3Degreesはいくつかの風力発電所の事業に関わり、また埋立地プロジェクトから温室効果ガスを回収した。Planet 42は風力発電所事業によるカーボンニュートラルの実現を選んだが、この取り組みに向けては南アフリカの現地企業と協力している。

最初のプロジェクトは南アフリカのノーザンケープ州にある風力発電所で、カーボンオフセットクレジットからの資金により、Planet 42はこの発電所に何カ月にもわたって資金の提供をすることができた。風力タービンから発電される電力は、石炭を燃やしたり、低炭素世界経済を支えるなど、他のより有害なエネルギー生産方法を相殺する。

「当社が及ぼすマイナスの影響を相殺するため、当社が事業を展開している市場でカーボンオフセットプロジェクトに投資しています。言い換えれば、当社がカーボンニュートラルに投資することは、自ら課した税に相当します。当社が率先して取り組むことで、アフリカやその他の地域の企業が追随してくれることを願っています」。

融資と株式で2000万ドル(約22億円)を調達した同社が最初にローンチしたときは、カーボンニュートラルを達成することは将来的な構想でさえもなかった。しかし今では、Natural Capital Partnersによってカーボンニュートラル企業として認定されただけでなく、投資家たちがこのプロジェクトに大きな関心を寄せている。

オジャ氏によると、同社の次の目標は、究極的には電気自動車によってカーボンニュートラルを達成することだが、その実現性は十分にあるだろう。アフリカにおける電気自動車の導入は、米国、欧州、さらにはその他の新興市場が抱える問題とは異なる別の問題に直面している。まず電力料金が高く不安定な電力供給が行われているという深刻な燃料上の問題がある。さらに、税制上の優遇措置、補助金、政策が全般的に欠如しているということ、そして平均的なアフリカの自動車所有者には高価すぎるという事実があげられる。

例えば、米国では100万台以上英国では31万7000台以上の電気自動車が走っているが、Planet42の主要な市場であり、アフリカでトップの電気自動車市場である南アフリカではその数は約1000台にとどまっている。したがって、電気自動車が主流になるまでは、風力発電は同社のカーボンニュートラルへの取り組みに欠かせないものとなる。

「理想的には、私たちが実現を目指しているのは当社の車が電気自動車になることであり、それこそが私たちが将来に向けて計画していることです。そうすることで日々のオフセットは必要なくなりますが、私たちはまだそこに至っていません。最終的には電気自動車が理想的であることを誰もが理解しています。しかし、その未来は手元にあるものではないため、今すぐ行動していく必要があります」とCEOは語っている。

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タグ:南アフリカPlanet42カーボンニュートラル二酸化炭素中古車電気自動車

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

フォードが電動化への投資を3.3兆円に引き上げ自社バッテリー研究開発を加速、30年までにEV比率40%に

Ford(フォード)は、2023年までに220億ドル(約2兆4000億円)を予定していた車両電動化への投資額を、2025年までに300億ドル(約3兆3000億円)に引き上げた。同社は米国時間5月25日の投資家向け説明会で「Ford+」と呼ばれる電気自動車(EV)とEV用バッテリーの開発戦略に新たな資金を投入することを発表した。

フォードは、2030年までに世界での販売台数に占める完全電気自動車の比率が40%になると予想しているという。同社は第1四半期に米国で6614台のMustang Mach-E(マスタング・マッハE)を販売し、先週F-150 Lightning(F-150 ライトニング)を発表して以来、すでに7万件の購入予約を受け付けたとのこと。

Ford+の計画は、自動車メーカー各社がEVの未来に対応するために必要な新しい道筋を示している。歴史的には、中国、日本、韓国が世界の電池製造の大部分を担ってきたが、大手OEMメーカーがEVの製造を開始すると、需要が供給をはるかに上回り、自動車メーカーは自社のリソースを開発に投入せざるを得なくなる。General Motors(GM、ゼネラルモーターズ)はLGと共同でオハイオ州に電池工場を建設中であり、BMWはフォードと共同で固体電池スタートアップのSolid Power(ソリッドパワー)に出資した。

関連記事:GMとLG化学の2つめのEVバッテリー工場は2023年後半開所予定

フォードとBMWが全固体電池のSolid Powerに142.2億円を投入

今回の投資は「生産可能な固体電池がこの10年の終わりまでに実現する範囲にあるという当社の信念を裏づけるものです」と、フォードの最高製品プラットフォームおよびオペレーション責任者であるHau Thai-Tang(ハウ・タイ・タン)氏は投資家説明会で述べた。「Solid Powerの硫化物ベースの固体電解質とシリコンベースの負極化学は、航続距離の増加、コスト削減、車内スペースの拡大、そしてお客様にとっての価値と安全性の向上など、バッテリーのパフォーマンスを大きく向上させます」とも。

固体電池の製造プロセスは、既存のリチウムイオン電池の製造プロセスとあまり変わらないため、フォードは製造ラインや設備投資の約70%を再利用できるとタイ・タン氏は述べている。

フォードがミシガン州に建設中のバッテリー研究開発センター「Ion Park」では、150人の専門家が集まり、次世代のリチウムイオン化学物質と同社の新しいエネルギー密度の高いバッテリー技術「Ion Boost +」の研究、そして戦略的プランの作成を行っている。

「当社の最終的な目標は、サービスを含む総合的なエコシステムを提供し、BEV(バッテリー式電動自動車)でICE(内燃エンジン)車よりも高い収益性を実現することです」とタイ・タン氏は語った。

「Ion Boost +」のユニークなセルパウチ形式は、フォードの大型車に最適なだけでなく、2020年代半ばまでにバッテリーコストを40%削減することができるという。

「このセルのタイプと、高精度なセンシング技術を用いたフォード独自のバッテリー制御アルゴリズムの組み合わせにより、お客様により高い効率と航続距離を提供します」とタイ・タン氏は述べている。

また、フォードは商用車向けにリン酸リチウムイオンを用いたバッテリーセルを開発しており「Ion Boost Pro」と呼んでいる。そちらはより安価で、より少ない航続距離を必要とするデューティサイクルに適しているとのこと。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Aya Nakazato)

Rivianの電動ピックアップトラックR1Tの納車が1カ月後ろ倒し、チップ不足などが影響

Rivian(リビアン)は同社の「電動アドベンチャー車両」第1弾の限定版であるR1Tローンチエディションの納車が1カ月後ろ倒しになるとウェブサイトで明らかにした。

プレオーダーした顧客は2021年6月ではなく7月にピックアップトラックを受け取り、ローンチエディションの納車は2022年春までに完了する見込みだ。この変更はRivian Forumが最初に気づいた。1カ月の後ろ倒しは、出荷コンテナの遅れや現在も続くチップ不足、それから整備部品がきちんとセットアップされているかの確認など、小さな問題が重なったためだとRivianの広報担当は話している。

Amazon(アマゾン)から出資を受けているRivianは2020年7月、ピックアップトラックの納車が2021年6月に、R1S電動SUVの納車はその2カ月後の8月になるとプレオーダーした顧客に伝えた。そのタイムラインは、新型コロナウイルスパンデミックによる工場の建設工事中断で、すでに一度後ろ倒しになっていた。

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電気自動車メーカーのRivanが新型コロナで全施設を閉鎖

RivianはR1Sの8月納車を維持すべく取り組んでいる、と広報担当は述べた。

納車遅れにもかかわらずRivianは、この業界への新規参入企業、そして既存の自動車メーカーの中でマーケットに電動トラックを持ち込む初のメーカーとなるようだ。Lordstown Motors(ローズタウン・モーターズ)のCEOであるSteve Burns(スティーブ・バーンズ)氏は先にあった投資家への説明会で、同社の「Endurance」トラックの納車はまだ予定通りで、9月になると述べた(生産台数を半分に減らしているにもかかわらずだ)。Ford(フォード)の電動版ピックアップトラックF-150 Lightingは2022年発売予定だ。そしてTesla(テスラ)は、Cybertruckの生産が2021年後半に始まるとこのほど明らかにした。

Rivianはまた、顧客がドライブテストやツアーイベントへの出席をスケジュールできるドライブプログラムを8月に開始すると述べた。プログラム開始日やツアーイベント予約などの詳細は数週間内に発表する。ツアー第1弾の実施都市として同社はロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク、シカゴ、デトロイト、シアトルを選んだ。

加えて同社はいくつかのプロダクトアップデートも発表した。顧客は車両のコンフィギュレーションにOff-Road Upgradeを2000ドル(約22万円)で追加できる。全Rivian車両には、これまでオフロードアップグレードでのみ提供されていた空気圧縮機が搭載されるようになっている。

顧客はまた、コンフィギュレーションにRivian Adventure Gearを加えることも可能だ。ここにはルーフトップテント、荷物バー、キャンプキッチン(キッチン用具30点)が含まれる。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

EV急速充電開発のオーストラリアのTritiumが約1310億円の評価額でSPAC上場へ

また1つ、モビリティ業界でのSPAC取引だ。今回はオーストラリア・ブリスベン拠点のDC急速EV充電デベロッパー兼プロデューサーのTritium(トリティウム)だ。同社は12億ドル(約1310億円)という評価額でのSPAC(特別買収目的会社)合併で上場する。

Tritiumは現地時間5月26日、SPACのDecarbonization Plus Acquisition Corp. II(DCRN)との合併を通じてNASDAQに上場すると明らかにしたが、この取引がいつ完了するのかタイムラインは示さなかった。合併により総収入は最大4億300万ドル(約440億円)となることが見込まれている。Tritiumはティッカーシンボル「DCFC」で取引される。

この取引は通常合併の際に行われる新会社への資本注入、PIPE(上場企業の私募増資)を含まないという点で珍しい。

「我々はPIPEを必要としていません。というのも、DCRNは4億ドル(約440億円)超のSPACであり、当社の株主たちはわずか2億ドル(約220億円)のキャッシュクロージングに同意したからです。これは償還のリスクを大幅に減らします」とTritiumのCEOであるJane Hunter(ジェーン・ハンター)氏はTechCrunchに語った 。「また、当社の売上高は2016年以来、年平均成長率(CAGR)56%で成長していて、当社がかなりのマーケットシェアを握っている米国や欧州など主要マーケットでプレゼンスを拡大しています。売上高の成長は成長戦略を実行するのに必要な新たな資金への依存を減らすのに役立っています」。

2001年創業のTritiumはDC急速充電のためのチャージャーのハードウェアとソフトウェアを手がけている。同社のプロダクトでは、1分で20マイル(約32km)走行分、あるいは5分で100マイル(約160km)走行分のEVバッテリー充電ができる、とDPAC IIの会長Robert Tichio(ロバート・ティキオ)氏は5月26日の投資家説明会で述べた。DCチャージャーはACチャージャーよりも高価だが、すばやく車両に給電できる。通常、ACチャージャーは家庭に設置されており、ドライバーが夜間に車両を充電するためにプラグをつなぐ。一方のDCチャージャーは公共の充電ステーションに設置されていることが多い。

「ドライバーは公共充電のエクスペリエンスを、その日走る距離に必要なガソリンを数分でまかなえる現在のガソリンスタンドでの給油と同じようなものに可能な限り近づけたいはずです」とハンター氏は述べた。

Tritiumの最大のマーケットは欧州で、同社の売上高の70%を占める。北米が20%、アジアが10%だと同氏は投資家らに説明した。同社は合併取引で獲得する資金を製造能力の拡大と販売の成長に使う。

EVのマーケットシェアが拡大するにつれ、公共のEVチャージャーステーションに対する需要は今後20年で急激に増えると見込まれている。分析会社Grandview Researchによると、EV充電インフラマーケットの規模は2020年に20億ドル(約2180億円)で、2028年までに39%近く成長すると予想されている。ジョー・バイデン大統領は全国のEV充電網は2兆ドル(約218兆円)のインフラ投資計画で最優先事項だと述べた。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

ヒュンダイの全電動車IONIQ 5は決済システムを搭載

Hyundai(ヒュンダイ)が開発した車載決済システムは、次期電動クロスオーバー「IONIQ(アイオニック) 5」に搭載され、EVの充電や食事、駐車場などの料金を払えるようになる。これは、自動車メーカーが収益を上げるための新しい方法として、通常はスマートフォンに付随する機能を顧客に提供していうる最新の例だ。

IONIQ 5の北米地区発売は2021年秋を予定しているが、米国時間5月24日に行われた同社発表によると、決済システムに最初から登録されているマーチャントはDominoes(ドミノ・ピザ)と電子駐車サービスのParkWhizと充電サービスのChargehubだ。IONIQ 5の北米デビューではさまざまな機能が搭載されるが、車載決済もその1つとなる。

決済システムはヒュンダイ自身の車載インターネット接続システムBluelinkから利用する。Bluelinkからさまざまなクルマの機能やサービスをコントロールできるが、サブスクリプション契約が必要だ。3種類のパッケージがあり、それぞれクルマのメンテナンスとアラート、リモート天気予報、アンロックとロック、目的地検索などのサービスにアクセスできるようになる。またBluelinkでユーザーのスマートフォン上のGoogleアシスタントの機能にリンクして、情報をクルマに送ることもできる。

この車載決済システムは今後、課金をともなうその他の企業にも拡張される。ドライブスルーの食べ物やコーヒー、駐車などがその候補だ。ヒュンダイの広報担当者によると、新しいマーチャントの登録はXevo Marketplaceから今後定期的に行われるという。

IONIQ 5は、E-GMP (Electric-Global Modular Platform) という新プラットフォーム上に構築された同社初のバッテリー電気自動車だ。このプラットフォームはKia(起亜自動車)と共有されており、新しいEV 6のプラットフォームにもなっている。

聞いたことがある名前だ、と思う方もいるかもしれないが、それは「IONIQ」という名称が以前から存在するからだ。ヒュンダイは2016年に、IIONIQと名づけたハッチバックを、ハイブリッド、プラグインハイブリッドそして電気自動車という3つの型式で発売した。この韓国の自動車メーカーは、その車種を新たなEVブランドへの跳躍台として使っていた。

今後IONIQブランドの車種はすべて、E-GMPのプラットフォームが使われる。IONIQ 5はヒュンダイのConcept 45がベースで、それは同社が2019年にフランクフルトの国際モーターショーで公開されたモノコック風ボディのクロスオーバーだ。コンセプト45のデザイナーは「ヒュンダイの最初のコンセプトである1974年の『Pony Coupe(ポニー・クーペ)』のラインや特徴の一部を参考にしました。『45』という名称は、車両のフロントとリアの角度が45度であることにも由来しています」と語っている。

ヒュンダイはまだ、IONIQ 5の価格を発表していない。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

テスラがノルウェーでの判決を受け最大約243億円の補償金支払いに直面

ノルウェーの調停委員会は、Tesla(テスラ)の電気自動車「Model S(モデルS)」がソフトウェアのアップデートによって充電時間が長くなったことが判明したため、テスラに対しモデルSの所有者に1人あたり200万円を超える補償金を支払うように命じたと、ノルウェーのオンライン新聞「Nettavisen(ネッタビースン)」が報じた。この判決により補償の対象となったオーナーは、各々13万6000クローネ(約243万円)を受け取ることになる。

2020年12月、テスラの車両を所有する30人のドライバーが、同年のソフトウェアアップデート後に充電速度が遅くなったとして、調停委員会に苦情を申し立てた。この性能低下は、2013年から2015年に製造されたテスラ モデルSに生じている。

テスラはこの期間に、ノルウェーで約1万台のモデルSを販売した。これはつまり、テスラが全体で最大13億6000万クローネ(約243億円)の支払いに直面することを意味する、とNettavisenは述べている。

テスラは判決が出る前にはこの苦情に応じていなかった。罰金の支払期限は5月30日までとなっている。同社は6月17日までに、判決を不服としてオスロ調停委員会に訴えることができる。

テスラが充電速度に関する苦情で訴えられたことは、今回が初めてではない。2019年には米国のあるテスラ車オーナーが、ソフトウェアのアップデート後に航続距離の減少や詐欺行為があったとして、カリフォルニア州北部地区の連邦裁判所にこのEVメーカーを提訴した。

ノルウェー道路交通情報評議会(Opplysningsradet for Veitrafikken)によると、新車販売台数に占めるEVの割合がノルウェーは欧州で最も多く、2020年に同国で販売された全新車のうち、54.3%がバッテリー電気自動車だったという。販売台数が最も多かったのはAudi(アウディ)の「e-tron(eトロン)」で、2番目がテスラの「Model 3(モデル3)」だった。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

EVや蓄電システムに搭載したままバッテリーの状態や劣化度合をシミュレートできるTWAICEの分析ツール

すべてのバッテリーは時間とともに劣化していく。電気自動車メーカーや車両運行管理会社にとって、それがいつ、どのくらい劣化するのかを知ることは重要であり、収益に関わる鍵にもなる。

しかし、バッテリーの健康状態を把握することは、大がかりで高額な検査を行わなければ意外と難しく、車両に搭載された状態では不可能な場合も少なくない。ドイツのバッテリー分析ソフトウェア企業であるTWAICE(トワイス)は、2018年の創業以来、この問題に取り組んできた。同社は米国時間5月19日、シカゴに拠点を置くEnergize Ventures(エナジャイズ・ベンチャーズ)が主導したシリーズBラウンドで、2600万ドル(約28億3000万円)を調達したことを発表した。主にモビリティやエネルギー貯蔵の分野で活躍する同社は、これで資金調達総額が4500万ドル(約49億円)に達したことになる。

TWAICEの開発や運営面について共同設立者のStephan Rohr(ステファン・ロア)氏にインタビューした際「私たちは、バッテリーシステムのライフサイクル全体を本当にカバーできるバッテリー分析プラットフォームを構築することに焦点を当ててTWAICEを起ち上げました」と語った。この会社は、実際にバッテリーが車両やエネルギー貯蔵システムに搭載されている状態で、開発や設計を行うために適したツールを提供している。Audi(アウディ)やDaimler(ダイムラー)、インドのHero Motors(ヒーロー・モーターズ)などが同社の顧客だ。

今回の資金調達により、TWAICEは欧州での事業展開を拡大し、さらに米国進出の可能性も探っていくという。また、製造会社だけでなく、物流や旅客輸送業者との連携なども含め、同社の分析プラットフォームをもとに、さらに多くのユースケースを構築したいと考えている。

同社の革新的な技術の1つに「デジタルツイン」という概念がある。これはTWAICEのクラウドプラットフォーム上で動作するバッテリーシステムのシミュレーションモデルで、バッテリーの熱特性や電気的挙動、劣化などのパラメーターを連続的に更新していくことによって、実際のバッテリーの状態がこの「デジタルな双子」に反映されるというものだ。つまり、EVバスを運行している企業は、それぞれの車両のバッテリーパックの状態を、このデジタルツインを通してモニターすることができる。

「バッテリーシステムの現在の健康状態をモニターするだけでなく、将来のシミュレーションや予測も可能になります」と、ロア氏はいう。

TWAICEはまた、バッテリーが自動車やエネルギー貯蔵システムに搭載される前の段階にもソリューションを提供している。「バッテリーの設計エンジニアは、当社のシミュレー ションを利用することで、充電戦略,放電深度,異なる電池化学の評価などのテスト作業を軽減することができます」と、ロア氏は説明する。

TWAICEのソフトウェアの主な使用例の1つは、保証追跡や安全性リスクに関するものだ。同社のバッテリー分析を利用することで、製造メーカーはバッテリーがセルやモジュールなどのどこで故障したのかを正確に把握することができ、将来の保証請求に対して過去のデータに基づく貴重なデータを得ることができる。TWAICEの営業担当責任者を務めるLennart Hinrichs(レッナールト・ヒンリクス)氏は、製造メーカーにとって保証は大きなリスクであると説明する。その理由の1つは、バッテリーが非常に複雑で、車両に搭載されてしまうと、状態を理解することが非常に難しいからだという。

しかし、バッテリーの寿命を把握することは、消費者にとっても有益だ。ドイツの試験・認証機関であるTÜV Rheinlandは、民間市場におけるEVの中古車販売に関してTWAICEと提携し、中古車市場のEVが搭載するバッテリーの標準的な評価プロセスの確立を目指している。

EVの車載バッテリーが長期的な使用を経て本来の用途に適さない状態にまで劣化した後、自動車メーカーはTWAICEのソフトウェアを使って、バッテリーシステムの健康状態と残りの寿命を評価し、例えばエネルギー貯蔵などのセカンドライフに再利用するか、あるいはそのままリサイクルに回すべきかを判断することができる。

2020年3月に行われたTWAICEの前回の資金調達ラウンドでは、アーリーステージ専門ベンチャーキャピタルのCreandum(クリーンダム)が主導し、既存の投資家であるUVC Partners(UVCパートナーズ)、Cherry Ventures(チェリー・ベンチャーズ)、Speedinvest(スピードインベスト)が追加投資を行った。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:EVバッテリーTWAICE資金調達エネルギー貯蔵

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ローマ教皇専用車「パパモビル」もEVに、FiskerのOcean SUVを改造中

EVのスタートアップから上場企業になったFisker Inc.は現在、同社の電動SUV「Ocean」を、ローマ教皇フランシスコのために改造している。

米国時間5月21日の発表によると、同社の計画では2022年後半に、近く発売されるSUV「Fisker Ocean」を改造したローマ教皇専用車(パパモビル)をバチカンに納車する。5月20日にフランシスコ教皇とFiskerの共同創業者であるHenrik Fisker(ヘンリック・フィスカー)氏およびGeeta Gupta-Fisker(ギータ・グプタ-フィッシャー)博士との会談で、最初の合意に達した。ヘンリック・フィスカー氏はさまざまなスケッチを見せ、その1つにフランシスコ教皇がサインした。新たなパパモビルに関する詳報はあまりないが、改造後のFisker Ocean SUVの画像には、全ガラス製のキューポラがある。

合意は、50年以上の歴史がある自動車メーカーがバチカンと協力して教皇を運ぶクルマを開発し、届けることを意味している。1965年のパウロ六世のニューヨーク訪問では、Ford(フォード)製の1964年型Lehmann-Peterson特別仕様が使われた。「パパモビル」という言葉は、教皇ヨハネ・パウロ二世の就任まではよく使われていた。自動車メーカーのDacia、StellantisのFiat、Jeepブランド、Mercedes-Benz、そしてRenaultなどがさまざまなローマ教皇にクルマを用意した。フランシスコ教皇は、バチカン市国の中ではドライブにFord Focusを使っていることが知られている。

「フランシスコ教皇が環境とその次世代への影響をとても気にしている、という記事を読んだことがきっかけです。教皇が乗るFisker Oceanのインテリアには、海から回収したプラスチックボトルをリサイクルして作った素材のカーペットなど、さまざまな持続可能素材が使われています」とヘンリック・フィスカー氏は語る。

Ocean SUVは基本価格3万7499ドル(約410万円)で2022年11月17日に生産を開始する。パパモビルのバージョンもほぼ同時期とされているが、具体的な日程に関する発表はない。

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タグ:Fisker Inc.ローマ教皇電気自動車

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フォードの電気自動車F-150 Lightningは、停電時には家庭に電力を供給

ピックアップトラックのパワーは、トルクや馬力、牽引力や運搬力だけではない。米国時間5月19日に発表されたFord(フォード)の最新電気自動車「F-150 Lightning」は、停電時に顧客の家屋にエネルギーを供給できるシステムを搭載し、トラックのパワーに新たな意味を与えようとしている。

このような電気自動車ならではのメリットを消費者に伝えようとしているのは、フォードだけではない。Lucid Motors(ルーシッド・モーターズ)などの企業も、この機能をアピールしている。

2月にテキサス州で発生した大規模な停電では、数日間にわたって450万戸以上の家庭や企業で電力供給が停止し、結果として151人が命を落とすことになった。F-150 Lightningに搭載されている「Ford Intelligent Backup Power(フォード・インテリジェント・バックアップ・パワー)」は、車載バッテリーをフル充電した状態から最大3日間、家庭に9.6kWの電力を供給することができる。

フォードの電動車戦略を率いるRyan O’Gorman(ライアン・オゴーマン)氏は、実車公開に先立つビデオブリーフィングで、「F-150 Lightningのプラグが接続されていれば、停電時にIntelligent Backup Powerが自動的に作動し、家庭の電力を供給します」と語った。「電力が回復すると、トラックは自動的にバッテリーの充電に戻ります」。

太陽光発電、蓄電池、エネルギーサービスを提供するSunrun(サンラン)はフォードと提携し、オーナーの自宅に80アンペアのFord Charge Station Pro(フォード・チャージ・ステーション・プロ)と呼ばれる充電器と家庭用統合システムの設置を支援する。F-150 Lightningのエクステンデッド・レンジ・バッテリー仕様に標準で付くこれらの設備が、Intelligent Backup Powerシステムを介し、充電時には車載バッテリーに電力を供給し、停電時は逆に車載バッテリーの電力を家庭に供給する。Sunrunは、顧客に自宅用の太陽光発電と蓄電システムを設置するオプションも提供する。

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家から離れた場所で過ごしたい人は、F-150ハイブリッドの7.2kWから9.6kWへパワーアップした「Pro Power Onboard(プロ・パワー・オンボード)」を使えば、野外でもスピーカーやテレビから電動ダートバイク、丸ノコ、ジャックハンマーまで、あらゆるものに電力を供給することができる。このピックアップトラックは、荷台、車内、フランク(フロントのトランク)に、全部で11個のコンセントが装備されている。

Pro Power Onboardシステムはバッテリーの電力をインテリジェントに分配する。ドライバーが作業現場で電動工具を使っている時に、車載バッテリーの残量が3分の1以下になると、ドライバーのスマートフォンに通知が送られるので、そのまま作業を続けるか、それとも帰りの運転のためにバッテリーを節約するかを判断できる。

ただ、ドライバーは最寄りの充電スタンドまでの距離をあまり気にする必要はない。バッテリー残量で走行可能な距離が、最寄りの充電スタンドまでの距離に近づくと、Pro Power Onboardは自動的にオフになる。Intelligent Backup PowerやPro Power Onboardで消費したバッテリーの電力に関する情報は、フォードの専用アプリと車載インフォテインメント・スクリーンに表示される。

フォードの広報担当者によると、将来的には夜間の電気料金が安い時間帯に電気自動車のバッテリーを充電しておき、電力消費がピークになる電気料金が高い時間帯には車載バッテリーから家庭に電力を供給することで、電気代を節約できるようにすることも目指しているという。

「F-150 Lightningは、自動車のパワーという概念を再定義します」と、オゴーマン氏は語った。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォードと韓国SK Innovationが米国でのEVバッテリー量産に向け合弁会社BlueOvalSKを発表

Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)と韓国・ソウルに本社を置くSK Innovation(SKイノベーション)は米国時間5月20日、電気自動車用のバッテリーを米国内で製造する合弁法人を設立する了解覚書(MOU)を締結したと発表した。この合弁会社はBlueOvalSK(ブルーオーバルSK)と呼ばれ、2020年代半ばから年間約60GWhを生産する予定。今回のMOUは、Fordが電池生産能力を垂直的に発展させようとしている最新の兆候だ。

Fordの最高製品プラットフォームおよびオペレーション責任者であるHau Thai-Tang(ハウ・タイ・タン)氏は、20日に次のように述べた。「当初はMustang Mach-E(マスタング・マッハE)だけだったので、電池を供給元から購入するのが最も効率的だと考えていましたが、普及率が上がっていき、アーリーアダプタからアーリーマジョリティへと移行していくにつれて、このレベルの投資を正当化するのに十分な(生産)量を確保できるようになり、このパートナーシップを追求することになりました」。

FordのLisa Drake(リサ・ドレイク)COOは、20日に記者団に対し、所有構造は今後検討されていくと述べた。60GWhの生産能力は、おそらく2つの製造拠点にまたがることになると思われるが、北米の工場の場所を含め、両社はまだその計画を決定していないとドレイク氏は付け加えた。60GWhは、およそ60万台のEVを製造するのに十分なバッテリ容量に相当すると、タイ・タン氏は述べた。

Fordはここ数カ月、バッテリセルを大規模に製造する垂直統合型の能力を構築するために前進してきた。2021年4月、ミシガン州ディアボーンに本社を置く同社は、ミシガン州にバッテリー技術開発センターを開設することを発表した。また、BMWと共同で、ソリッドステート式バッテリ(全固体電池)開発企業であるSolid Power(ソリッドパワー)の1億3000万ドル(約141億5000万円)のシリーズBラウンドをリードした。

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しかしFordはこれまで、電池の自社生産にはあまり積極的ではなかった。タイ・タン氏は「当社の製品計画は大きく変わりました」と述べている。

このニュースは、フォードが同社の象徴的な車であり、米国で最も売れているトラックのEVバージョンとなる「F-150 Lightning(F-150 ライトニング)」を発表してから24時間も経っていないタイミングで届いた。ライトニングは、フォードが過去1年間にデビューさせた3台のEVのうちの1台で、2025年までに220億ドル(約2兆4000億円)をEVに投資するという同社の計画の礎となるものだ。

SK Innovationは、すでにジョージア州で26億ドル(約2830億円)を投じて2カ所のEV用バッテリー工場を建設中だ。そのうち1工場はすでにバッテリーを生産しており、もう1つの工場は2023年に操業を開始する予定。また、フォルクスワーゲン社を顧客として、テネシー州にも別の工場を建設中だ。FordとSK Innovationの関係は長年にわたっており、前者は2018年にSK Innovationをライトニングのバッテリーサプライヤーに選定していた。

最近では、ライバル企業であるLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)との企業秘密に関する紛争をめぐり、2021年4月に18億ドル(約1960億円)の和解が成立した。これは、SK Innovationがジョージア州での事業を停止することになりかねなかった2年間の紛争の末の和解だ。

韓国の2つのコングロマリットは、それぞれの自動車メーカーパートナーとともに、米国のバッテリー製造に数十億ドルを投資している。LG Energyは、GMとの合弁会社であるUltium Cells LLCのもと、オハイオ州とテネシー州に製造施設を建設している。

「スケールが意味を成すようになりました」とドレイク氏はいう。「動き出すには絶好のタイミングです」。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

スマホが自動車のキーになるAndroid 12の新機能をグーグルが発表

Google(グーグル)は、BMWをはじめとする自動車メーカーと協力して、Androidスマートフォンから車両の施錠 / 解錠やエンジン始動ができるデジタルキーを開発中であることを、米国時間5月18日に行われた開発者向けイベント「Google I/O」で発表した。

このデジタルカーキーは、同社のモバイルOSの最新版であるAndroid 12で採用される数多くの新機能の1つ。Android & Google Playのプロダクト・マネジメント担当バイス・プレジデントであるSameer Samat(サミア・サマット)氏によると、デジタルカーキーは2021年後半に一部のPixel(ピクセル)およびSamsung Galaxy(サムスン・ギャラクシー)のスマートフォンで利用可能になるという。対応する車両は、BMWを含む2022年モデルの新型車と一部の2021年モデルとのことだが、具体的な車名やBMW以外のメーカー名はまだ明らかにされていない(発表で例として提示された画像は、BMWが2021年内に発売する新型電気自動車「i4」だった)。

このデジタルカーキーには、UWB(Ultra Wideband、超広帯域無線)と呼ばれる無線通信技術が使われている。これは、センサーが信号の方向を知ることができる、小さなレーダーのようなものだ。この技術によって携帯電話に内蔵されたアンテナは、UWB送信機を備えた物体の位置を特定し、識別することができる。UWB技術を利用するため、Androidユーザーは携帯電話を取り出さなくても、車両の施錠 / 解錠が可能になる。

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NFC(近距離無線通信)技術を搭載した車種を所有するユーザーは、携帯電話をクルマのドアにかざすことでロックを解除できるようになる。通常はクルマのドアハンドル内に搭載されているNFCリーダーが、ユーザーの携帯電話と通信を行う仕組みだ。Googleによると、ユーザーはクルマの貸し借りをする場合にも、友人や家族とクルマのキーを安全かつ遠隔で共有することが可能になるとのこと。

Googleが今回の発表を行う前に、Apple(アップル)も2020年、iPhoneやApple Watchに同様のデジタルカーキー機能を追加すると発表している。iOS 14で導入されたこの機能は、NFCを介して動作する仕組みで、2021年モデルのBMW 5シリーズで初めて利用可能になった。

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最近では、独自にアプリを開発する自動車メーカーも増えており、それらを使えばユーザーはスマートフォンからリモートロック / アンロックなど、特定の機能を制御することもできるようになっている。GoogleやAppleの側から見た大きなメリットは、モバイルOSにデジタルキー機能を統合することで、ユーザーがアプリをダウンロードする必要がないということだ。

その意図は、面倒な体験を減らすことにある。そしてさらに、これをシームレスにしようという動きもある。Apple、Google、Samsung、そしてBMW、GM、Honda(ホンダ)、Hyundai(ヒュンダイ)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)といった自動車メーカーが加盟するCar Connectivity Consortium(カー・コネクティビティ・コンソーシアム)は、メーカーの枠を超えて容易にスマートフォンを自動車のキーとして使用できるデジタルキーの標準規格を策定するために、数年を費やしてきた。

デジタルカーキーの開発は、スマートフォンが消費者の生活の中心になることを目指すGoogleの活動の一環だ。そしてその目標は、自動車抜きには達成できない。

「最近では、携帯電話を購入する際には、電話機のみならず、テレビ、ノートパソコン、自動車、スマートウォッチやフィットネストラッカーなどのウェアラブルなど、連携が求められる機器のエコシステム全体を購入することになります」と、Googleのエンジニアリング担当バイス・プレジデントを務めるErik Kay(エリック・ケイ)氏は、今回のイベントにおける発表にともなうブログ記事の中で書いている。「北米では現在、1人あたり平均約8台のコネクテッド・デバイスを所有しており、2022年にはこれが13台に増えると予測されています」。

Googleは、ユーザーがワンタップするだけでデバイスをBluetoothを介してペアリングできる「Fast Pair(ファストペア)」機能を、自動車を含む他の製品にも拡大すると言っている。

ケイ氏によると、現在までに消費者は3600万回を超える「Fast Pair」を利用して、Sony(ソニー)、Microsoft(マイクロソフト)、JBL、Philips(フィリップス)、Google、その他多くの人気ブランドを含むBluetooth機器とAndroidスマートフォンを接続しているという。

このFast Pair機能は、今後数カ月のうちに、Beats(ビーツ)のヘッドホンやBMW、Ford(フォード)の自動車など、さらに多くのデバイスに導入される予定だと、サマット氏はGoogle I/Oで語った。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グーグルが自動車用Androidアプリの開発にライブラリの提供などで便宜強化

2021年中に、Volvo(ボルボ)とGMとRenault(ルノー)およびPolestar(ポールスター)の計10車種以上にAndroid Automotiveオペレーティングシステムが搭載され、内蔵のGoogle(グーグル)アプリとサービスのすべてを利用できるようになる。今後同社は、サードパーティの開発者が、ナビゲーションやEVの充電、駐車、メディアなどのアプリを車のスクリーン上にもっと容易かつ直接的に実装できるよう図っていく。

Googleは米国時間5月18日に行われたデベロッパーカンファレンスで、Android for Cars App Libraryの拡張を発表した。ライブラリスイートAndroid Jetpackに含まれ、Android Automotiveオペレーティングシステムをサポートする。これにより開発者は、Android OSとAndroid Autoという、2つの異なる(ただし重複部分もある)プラットフォームに対応したアプリを開発できるため、良いニュースでもある。また開発者は、アプリを1つ開発したらそれが複数の車種で問題なく動くという状態を維持確保できる。

Googleの発表によると、同社はすでに初期パートナーたちとの共同事業を開始しており、ParkwhizやPlugshare、Sygic、ChargePoint、Flitsmeister、SpotHeroらの開発者とともにAndroid Automotive OSで動く各種車載アプリの開発を進めている。

画像クレジット:Google

Android Automotive OSとAndroid Autoを混同しないように。後者はオペレーティングシステムの上に来る二次的なインタフェイスだ。Android Autoは、ユーザーのスマートフォンで動くアプリで、クルマのインフォテインメントシステムとワイヤレスで通信する。一方、Android Automotive OSはLinuxの上で動くオープンソースのモバイルオペレーティングシステムAndroidがその基本形だ。ただしAndroidであってもスマートフォンやタブレットで動くのではなく、自動車メーカーが車載用に使えるよう、Googleが変更を加えている。GoogleはこのOSのオープンソースバージョンを自動車メーカーにしばらく提供していたが、しかし最近では自動車メーカーがテクノロジー企業と共同で、Google AssistantやGoogle Maps、Google Play StoreなどGoogleのアプリとサービスをすべて内蔵するAndroid OSをネイティブで作り込んでいる。

Spotifyなど多くのサードパーティ開発者がAndroid for Cars App Libraryを使って独自のAndroid Autoアプリを開発し、Play Storeへ出している。Cars AppをOSの拡張とすることにより開発者は、アプリを1度だけビルドすればよい。

2年前にGoogleは、Android Automotiveオペレーティングシステムをサードパーティの開発者に公開して、音楽などのエンターテインメントアプリをクルマのインフォテインメントシステム用に作らせようとした。それが最初に実現したのが、Volvoが電動車専門のパフォーマンスブランドとして誕生したPolestarの、Polestar 2だ。その後のVolvo XC40 Rechargeなども、この方式を採用している。

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画像クレジット:Volvo

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)