米当局がテスラのオートパイロット機能を調査開始、駐車中の緊急車両との衝突事故受け

米国の自動車規制当局は、Tesla(テスラ)の先進運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」について予備調査を開始した。これは、同システムを作動させていた際に、駐車されていた救急車両に車両が衝突した11件の事故を理由としている。

米運輸省道路交通安全局(NHTSA)のウェブサイトに掲載された調査資料によると、衝突事故に関与したテスラ車は、オートパイロットまたは「Traffic Aware Cruise Control(トラフィックアウェア クルーズコントロール)」と呼ばれる機能を作動させていたことが確認されたという。事故の多くは日没後に発生しており、緊急車両のライトや道路のコーン、ドライバーに車線変更するよう知らせる照明付き矢印板などの「現場管理措置」にもかかわらず発生していた。

「今回の調査では、ダイナミックな運転タスクに対するドライバーのエンゲージメントをモニターし、支援し、強化するために使用される技術と方法を評価します」と資料には記載されている。

調査の対象となるのは、現在販売されているすべてのモデルを含む約76万5000台のテスラ車だ。14-21年型のTesla Model Y(モデルY)、Model X(モデルX)、Model S(モデルS)、Model 3(モデル3)が対象となる。11件の事故または火災により、17名の負傷者と1名の死亡者が発生した。これらの事故は2018年1月から2021年7月の間に発生した。

Teslaのオートパイロットが米国の自動車安全規制機関であるNHTSAの監視下に置かれたのは、今回が初めてではない。2017年、同局は2016年に起こった死亡事故を調査したが、その事故ではEVメーカーである同社に過失はないとされた。NHSTAはこれまで、TeslaのADAS(先進運転支援システム)が関与した事故をさらに25件調査していると、AP通信が米国時間8月16日に今回の調査に関する記事で報じた。

NHTSAは2021年6月、ADASまたはレベル3~5の自動運転システム搭載車の衝突事故の報告を自動車メーカーに義務付ける命令を出した。

「NHTSAは、現在市販されている自動車の中に自動運転が可能なものはないことをあらためて国民のみなさまに指摘します」と、NHTSAの広報担当者は16日にTechCrunchに語った。

TechCrunchは、メディアリレーション部門を解散したTeslaにコメントを求めた。同社から回答があれば記事を更新する。

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イーロン・マスク氏のLoopのドライバーには同社の「偉大なリーダー」に関する台本が渡される

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

イーロン・マスク氏のLoopのドライバーには同社の「偉大なリーダー」に関する台本が渡される

Elon Musk(イーロン・マスク)氏がラスベガスで展開している地下システム「Loop」のドライバーたちは、同社での運転歴を尋ねる乗客の質問をはぐらかしたり、衝突事故については知らないと宣言したり、マスク氏自身についての会話を遮断したりするよう指示されている。

TechCrunchは、公文書法を利用し、6月にオープンしたLoopの通常業務を詳細に記した文書を入手した。このLoopは、ラスベガス・コンベンション・センター(LVCC)の周辺で、改造したTesla(テスラ)車を使って参加者を輸送する。文書の中には、好奇心旺盛な乗客が質問してきたときに、新入社員が必ず従う「Ride Script(乗車に関する台本)」も含まれている。

この台本は、システムを構築・運営するThe Boring Company(TBC)が、新システムやその技術、特に創業者であるイーロン・マスクのパブリックイメージをコントロールすることにどれだけ真剣かを示している。

台本のアドバイスによれば「あなたの目的は、乗客に安全なドライブを提供することであり、楽しいドライブを提供することではありません。会話は最小限にして、道路に集中しましょう」「乗客はあなたに質問を投げかけてきます。質問される可能性のある内容と、推奨される回答がこちらです」。

乗客がドライバーに勤続年数を尋ねると、次のように答えるように指示される。「このトンネルをよく分かっているくらいには運転していますよ!」と答えるように指示されている。さらに「(何百回も運転しているとしても)1週間しか運転していないと思われると、お客様は安心できません。従って、勤務年数を話すのではなく、質問をかわすか、焦点をずらす方法を考えてください」とドライバーにアドバイスしている。

このシステムでどれくらいの衝突事故が発生したか(台本では「事故」という言葉を使っている)を聞かれたドライバーは、こう答えるように言われている。「非常に安全なシステムなので、よくわかりません。会社に問い合わせてみないとわからない」。TBCの従業員やドライバーの数、トンネルの掘削費用などを質問しても、同じように曖昧な答えが返ってくるはずだ(掘削費用は合計で約5300万ドル[約57億8800万円])。

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TBCでは、Tesla(テスラ)の先進的な運転支援システムであるAutopilotの使用が明らかに弱点となっている。クラーク郡は現在、自動緊急ブレーキや障害物を認識しつつ車線内にとどまる技術を含むさまざまな運転支援機能の使用をLoopシステム内のいかなる場所でも許可していない。

群は、整備士にこれらが作動していないかどうかを確認することを義務付けているほどだ。

文書には「初期点検チェックリストに基づくアクションの完了に加えて、整備スタッフは、手動によるループ操作のため、ハンドル操作やブレーキ・加減速アシスト(通称Autopilot)などの車両の自動機能が無効化されていることを確認します」と書かれている。TechCrunchが閲覧した車両整備プランによると、その後の確認はCWPMの技術者によって毎日行われる。

万が一乗客が、Loopのテスラ車がAutopilotを使用しているかどうかを尋ねた場合は、ドライバーは回答するだろう。しかしこれに関する内容は、TechCrunchが入手した文書では「公共の安全に関わる機密事項」とされ、他の多くの技術的な詳細と同様に編集されていた。

この決定について、TechCrunchは関係者に何度も説明を求めたが、回答は得られなかった。

名前を言ってはいけないあの人

台本には、マスク氏自身に関する質問への回答も含まれている。「この種の質問は聞かれることが非常に多く、非常にデリケートな質問です。当社の創業者に対する世間の関心は必然的なものであり、会話の大部分を占める可能性があります。可能な限り簡潔に、そしてそのような会話を止めるために最善を尽くしてください。乗客がその話題を強要し続ける場合は、『申し訳ありませんが、本当にコメントできません』と丁寧に伝え、話題を変えてください」。

にもかかわらず、このスクリプトには、マスクのよくある質問に対する答えがいくつも用意されている。マスクはどんな人かと聞けば、こんな答えが返ってくるはずだ。「彼はすごい人です!刺激的 / やる気にさせてくれる、など」。

さらにこんな追い打ちをかける。「彼の元で働くのは好きですか?」と尋ねると、北朝鮮のような答えが返ってくる。「はい、彼はすばらしいリーダーです!私たちがすばらしい仕事ができるようにやる気を与えてくれます」。

乗客が、マスク氏がどのようにビジネスに関わっているのか疑問に思った場合、ドライバーは次のように答えるだろう。「彼は会社の創設者であり、非常に深く関与し、サポートしてくれています」。また、マスク氏の不規則なツイートについての質問は「イーロンは有名人なのです。私たちはただ、すばらしい移動体験を提供するためにここにいるのです!」と跳ねのけられる。

しかし、ある質問は、すべての人がマスクの下で働くことに満足しているわけではないことを示唆しているようだ。「新聞で読んだ彼についての記事で、彼は『意地悪な上司である/マリファナを吸う/従業員に休暇を取らせない / など』というのは本当ですか?」ドライバーはどちらかというと曖昧な返事をするだろう。「その記事は見ていませんが、私の経験ではそんなことはありません」。

余談だが、TechCrunchが入手した数百ページに及ぶトレーニング文書や業務マニュアルには、Loopでの薬物使用やハラスメントを防止する強いポリシーが詳細に記されているが「休暇」という言葉は出てこない。

認められている技術

クラーク郡は現在、Loop内での自動運転機能の使用を禁止しているため、しばらくは人間のドライバーがシステムの一部となる可能性がある。しかし、クラーク郡に提出された設計・運用文書によると、このシステムには他にも多くの先進技術が導入されている。地下のLoopに設置された62台のテスラには、非接触型決済システムに使用される固有のRFIDチップが搭載されており、車道、駅、駐車場に設置された55個のアンテナの上を通過すると、その位置が特定されるようになっている。

また、各車両は、速度、充電状態、乗車人数、シートベルト着用の有無などのデータを24のホットスポットに送信する。乗客が気を付けるべきなのは、車内に設置されたカメラからの映像も常時ストリーミングされていることだ。これらのデータは、Loop内に設置された81台の固定カメラの映像とともに、コンベンションセンターから数ブロック離れた場所にあるオペレーションコントロールセンター(OCC)に送られる。映像は最低でも2週間は録画・保存される。

OCCでは、オペレーターがカメラの映像やその他のセンサーを監視し、セキュリティ上の脅威や、ドライバーの携帯電話の使用やスピード違反などの問題を発見する。OCCは、Bluetoothヘッドセットや車載用iPadを使ってドライバーと通信し、メッセージや警告、トンネル内の車両の位置を地図上に表示する。車両には、駅構内での時速16.09キロメートルからトンネルの直線区間の時速64.37キロメートルの範囲で厳しい速度制限があり、前の車と6秒以上の間隔を保たなければならない。

2021年の春に行われたテストでは、クラーク郡の職員が、一部のドライバーが規則を守っていないことを発見したことが文書に記されている。「速度制限について質問したところ、何人かのドライバーは、直線および / またはカーブしたトンネルの速度を間違って答えていた。駅、急行レーン、傾斜部の速度については誰も答えられなかった」とある文書には書かれている。「ドライバーは乗客にシートベルトを締めるようにアナウンスしておらず、質問されても、任意であるまたは必要ないと『答えていた者がいた』」。

また、何人かのドライバーは、前の車との安全のための距離を6秒維持できていなかった。TBCはクラーク郡に対し、これらの分野で再教育を行うと答えた。

TBC、クラーク郡、およびLVCCを管轄するラスベガスコンベンション・観光当局は、この件に関する複数のコメント要求に答えなかった。

LVCVAは最近、Alphabet(アルファベット)がスピンアウトした都市型広告代理店Intersection Media(インターセクション・メディア)とLoopシステムの命名権を販売する契約を結び、450万ドル(約4億9100万円)の利益を見込んでいる。

TBCは現在、近隣のホテルにサービスを提供するためLoopの2つの拡張工事を行っているが、最終的にはストリップとラスベガスのダウンタウンの大部分をカバーし、40以上の駅を持つ交通システムを構築したいと考えている。このシステムは、TBCが資金を提供し、チケット販売によってサポートされることになる。

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(文:Mark Harris、翻訳:Dragonfly)

【寄稿】自動運転関連技術のCOOが教える「契約策定と交渉のベストプラクティス」

2014年に設立されたStradVision, Inc.は、高度な運転支援システム(ADAS)向けの画像処理AI技術のパイオニア。現代自動車やLGエレクトロニクス、IDG Capital、アイシングループなどからの出資を受け、ソウル、サンノゼ、東京、ミュンヘンに拠点を構え、データアルゴリズムのエンジニアをはじめとする170名以上のチームによって、完全自律走行車両の実現を促進すべく事業を展開している。

自動車に関する技術は進歩を続けています。すでに一般の車両にはレーンキープアシストや、衝突軽減ブレーキといった機能が搭載されるようになりました。自動運転技術は特に日々ニュースでキーワードを耳にします。

このように自動車には非常に多くの要素、テクノロジーが詰まっています。本稿はそれらを提供する企業と企業で構成される経済圏、ビジネス展開についてお伝えしたいと思います。

自動車産業の経済圏は自動車産業を支えてきたいわゆる大手メーカーから、先端技術を研究・開発する私たちのようなスタートアップ、ベンチャー企業が参画し、拡大しています。

さまざまな立場で多くのプレイヤーが存在するとはいえ、私たちは自動車という1つの製品を作るため、ひいては安心で安全なモビリティサービスを消費者ならびに社会へ提供するため、友好的なパートナーシップに基づくビジネス関係の構築が求められます。

以下では、多くの経験から、パートナーシップを締結する際、立場の異なる2社が双方にとって中長期的で包括的な成功を収められる交渉のポイントをお伝えしたいと思います。

    1. 目標を知る
      どのような契約でも、それぞれに達成したいことがあるはずです。ビジネスにおいて、どのフェーズにいるのかを認識し、契約に臨む目的と具体的な内容について、交渉前に詳細の考えを詰め、見通しを立てておきましょう。プロジェクトが完了するまでの期間内に達成すべきこと、そしてもちろん関連する金額などの問題は、パートナーシップを進める前にパートナー候補と解決しておく必要があります。
      双方にとって適切な目標を持つためには、交渉の前に適切なリサーチを行い、どこにシナジーがあるのか、お互いがパートナーシップに貢献できることは何かを知る必要があります。
    2. 妥協できるポイントを把握しておく
      理想の目標を念頭に置いて交渉に臨むべきですが、妥協が必要な場合もあることを理解し、交渉を始める前にどの程度の柔軟性を受け入れることができるかを決めておきましょう。また交渉中に、許容範囲に影響を与えるような新しい情報が明らかになることもあります。
      状況の変化に注意を向けつつ、常に現段階のベストはどこかを探っていきましょう。
    3. 柔軟性を持つ
      柔軟に、契約内容や提供するサービスなどを変更できることも重要です。ビジネスを成功させるためには、RFQ(見積もり依頼書)に記載されたクライアントの要件を満たす機能と性能に焦点を当てる必要があります。
      クライアントのさまざまな要求に応えるために、ソフトウェアのカスタマイズや最適化を提案し、期待を上回るパフォーマンスを提供することに細心の注意を払いましょう。
    4. 成功を示し、データを提供する
      OEMやTier1サプライヤーなどの大手企業との交渉では、自社のビジネスのユニークな点や競合他社との違いを示すことが重要です。自分の専門分野で何が優れているのかをアピールしましょう。公開された特許の数や、特許発行までの時間の短さなど、パートナー候補との信頼関係を築くために重要な成功事例などが挙げられますが、このように過去に達成した成果と経験が、新しいパートナーシップの成功にどのようにつながるのかを、具体的にデータで示しましょう。
      1でも触れましたが、それらがどのようにシナジーを生むのかも整理して伝えることが重要です。
    5. 相手のニーズ、情報に耳を傾ける
      基本的なことかもしれませんが、交渉時には不可欠な要素です。相手の話に耳を傾けることは、自社の情報を相手に伝えることと同じくらい重要です。よくよく話を聞いてみると、予想していなかった形で交渉の流れが変わるかもしれません。
    6. リスクを軽減する
      交渉中に対処すべき重要事項のチェックリストを作成し、重要なトピックを忘れないようにしましょう。
      また、交渉中に契約内容が変更された場合は、何かあったときのためにすべてのバージョンを記録しておきましょう。たとえ暗黙の了解だと思っていても、重要な点を契約書から外してはいけません。複雑な問題を引き起こすだけです。法的な根拠を網羅し、機密性を確保します。
      このような細かい配慮は、双方が同じ見解を持ち、将来的に誤解が生じないようにするために不可欠です。
    7. 契約テンプレートと確立された言語
      契約書やパートナーシップの作成や承認が遅れる要因の1つに、技術的な言葉や詳細、プライバシーや機密性を確保するために盛り込まなければならない法的な言葉に囚われてしまう状況があります。
      このような遅延を避けるためには、使う言葉を標準化し、契約ごとに書き直す必要がないようにするのが重要です。技術的・法的な文言を都度考えずに済む分、パートナー候補との信頼関係の構築に集中できる時間が増えます。
    8. ワークフロープロセスの確立
      契約書のレビューや承認の遅れは、契約に関するワークフローが確立されていないことにも起因します。法務担当者や経営陣など、各パートナー企業で契約書を確認する必要がある人は、承認の順番や、フィードバックを受けてからの変更方法など、確立された手順が必要です。
      特にスタートアップ、ベンチャーにおいてはワークフロープロセスが確立されていないことが多いものです。特に優先度の高い契約前においては、早めに社内で調整を行いましょう。プロセスが確立されておらず、契約締結が遅れる危険性があります。
      ただ、すべての契約において同じフローをとる必要はないでしょう。リスクが少ない案件では、契約のワークフローを簡略化したり、半自動化してスムーズに進めることもできます。
    9. 既存の契約を更新または拡大する
      新規のクライアントを獲得するだけでなく、契約のライフサイクル管理の重要性も認識しておきましょう。既存の契約の状況を認識し、既存のパートナーとの強固な関係を維持し、将来の機会に基づいてパートナーシップを拡大できるかどうかを検討することが重要です。
      契約期間の終了前から数カ月前には遅くともパートナーシップの見直しを行い、プロジェクトの契約継続や終了について話し合いを行いましょう。パートナーシップの定期的な見直しが、関係性の安定につながります。

機密性が高く、かつ企業ごとに個別のシーンが想定できるため、具体的すぎるアドバイスは書ききれませんが、基本的に上記9つに気を遣いながら交渉を進められれば、少なくとも、両社にとって、大きなダメージを与えるような契約を交わしてしまうことはないでしょう。ぜひ参考に交渉を進めてみてください。

著者Sunny Leeについて:
 ペンシルベニア大学ウォートンスクールを卒業し、MBAを取得。先進運転支援システム(ADAS)向けのAIベースのカメラ認識ソフトウェアのパイオニアである韓国のテクノロジー企業StradVisionのCOOを務めている。現在Sunnyは韓国、米国、中国、インド、ドイツ、および日本での事業開発とグローバルオペレーションを担当しています。
 以前は、 NaverLabsのモビリティ製品のオーナーだった。彼女の以前の役割には、シカゴを拠点とする経営コンサルティングリーダーであるATカーニーのシニアビジネスアナリスト、およびエンタープライズソリューション部門のLGエレクトロニクスのサンディエゴオフィスのシニアマネージャーも含まれる。また彼女はFlex-KPMG AutomotiveSummitAutotechCouncilなど、数多くの自動車および技術イベントで講演および発表を行ってきた 。

 

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【コラム】自動運転車の普及にはまず運転支援システムが消費者に信頼されることが必要

編集部注:本稿の著者Tarik Bolat(タリック・ボラット)氏はWaveSenseのCEO兼共同設立者。

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この1年間で交わされてきた自動運転車(AV)に関する議論の多くが「いつ自動運転車が公道で標準になるのか」という同じ疑問を中心に展開された。

業界のリーダーたちは2016年に、AVが路上を支配するというビッグゲームを論じていたが、今日では、一部の専門家たちはレベル4の広範な普及を10年以上先に考えている。しかしながら、そのようなタイムラインであっても、自動車メーカーが技術的にも行動的にも大きな障壁を乗り越えなければうまくいかない。AVを消費者に届けるという取り組みは予想以上に困難であり、その中核を担うのは大衆の信頼を得ることだ。

消費者の信頼度とAVの大規模な普及は密接に関係している。予測タイムラインの達成を目指し、この不可欠となる信頼の構築をすぐにも開始するために、自動車メーカーは先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)への自動運転機能の導入を加速すべきである。

現行のADAS技術が直面している課題

実際、消費者はまだ自分たちのクルマのADAS機能に信頼を置いていない。全米自動車協会(AAA)交通安全財団が2021年に実施した調査によると、ドライバーの80%が自動緊急ブレーキや車線維持補助などの現行の車両安全システムについて機能改善を望んでおり、現在提供されているシステムに対する消費者の信頼感の欠如が指摘されている。

Cruiseがカリフォルニア州で無人運転のテスト車両による乗客輸送の許可を取得するなど、業界における最近の顕著な進展にもかかわらず、AAAの調査によると、自動運転車に乗ることに抵抗を感じないのはドライバーの10人に1人程度だという。消費者はAV技術の急速な進歩を認識していると思われるが、こうしたユーザーからの信頼の欠如は完全な普及に対する大きな障害となり、技術がどれほど発展しようと、業界に脅威をもたらし得るものとなるだろう。

消費者の信頼の醸成を促進するために、業界は消費者の需要を満たすより高度で信頼性の高いADASの実現に目下注力する必要がある。しかし現行のオファリングは、多くの消費者が参加する前に解決すべき大きな課題に直面している。

  1. 一般的な悪条件下での信頼性の欠如:LiDARやカメラのような技術の範囲は、周囲を「見る」ことができるものに限定される。これらのシステムは、車両のセンサーが雪、土、漂積物などで覆われてしまうことで、容易に妨害される可能性がある。さらに、雪や大雨、オフロード条件により車線表示が不鮮明になったり、GPS信号の強度が不足したりすると、車両の位置を追跡する一般的なセンサーが正しく機能しないことが懸念される。
  2. 検知不良:劣化した車線表示、歩行者、他の車両、または一般的な路上物をADAS技術が検知できず、運転者や歩行者が負傷したり死亡したりした事例がいくつか発生している。
  3. 一般大衆からの理解が低い:独立して動作するように設計されたADASの機能がある一方で、システムの能力を最大限に活用して安全性を最大化する方法の理解に関して、一般大衆の知識における一貫した欠如が依然として存在する。この認識の欠如により、不注意にこの技術を誤用する運転者だけでなく、道路を共有する運転者にも不必要な脅威がもたらされる。

これらの課題に対処し、消費者に向けたより良い自動運転エクスペリエンスを創出することは、将来のAV技術の大規模普及に向けた必須のステップである。この領域で消費者の支持を得て変化を起こすための最も即時の機会は、信頼性とユーザーエクスペリエンスの向上を図ることにあり、特に動的な車両安全システムに関してはそれが重要となる。その目的において自動運転車に求められるのは、現行のシステムを強化し、その結果として自動化機能の安全性に対する消費者の信頼を高める、センサーとソフトウェアの改良である。

車両ポジショニングに関する新たな視点

この10年間で、業界はポジショニングシステムにおいて多様な進歩を遂げてきた。ポジショニングシステムとは、車道上でセンチ単位まで車両の位置を特定するシステムであり、従来のハードウェアスタックにとって極めて重要な追加機能である。そのため専門家たちは、堅牢な車両測位の最後の未完成要素として、地中レーダー(GPR、Ground Penetrating Radar)や新しいマッピング技法などの技術に賭けている。過酷な運転条件における操作や、高度に動的な環境のナビゲーションを行う能力に期待を寄せるものだ。

AVの信頼性向上にはさまざまな手段があることは明らかだが、自動車メーカーは依然として、広範な普及に必要な性能の進化を実現するアプローチを模索している。

これらの技術を傑出させる差別化要因を詳しく考察すると、次の3つの重要な問題にどのように対処するかが共通の論旨として見えてくる。オープンハイウェイや駐車場内、あるいはクルマがトラックに囲まれて視界が遮られている場合などにおける路側機能の不足、明確で一貫性のある車線表示が前提となるカメラベースシステムへの依存、そして地表のシーンが刻々と変化し、HDマップが途端に使用できなくなるような急激な環境の変化、である。こうした共通に見られる課題により、消費者は一貫性のない、信頼性の低いADAS機能に不満を抱いている。

これらの重要なギャップを克服する1つの方法として、信頼性の高い車両ポジショニングを確保するための別の手段を模索することが挙げられる。例えば、地中レーダー(GPR)は、今日の自動化システムが直面しているGPSの可用性の不足やその他の一般的な障害がある中で、悪天候や悪路での正確な位置を車両が特定できるようにする。自律性向上の実現性を示すことが肝要である。自動車メーカーは、これらの新しいアプローチを車両に追加することで、より信頼性が高く精度の高いADAS機能を生成し、自動運転エクスペリエンスを保護することができるだろう。

消費者の信頼と大規模なAV普及の足がかりとしてADASに傾注

Partners for Automated Vehicle Education(PAVE)の最近の調査によると、ADAS技術に詳しい消費者は自動運転車に肯定的な傾向があり、その75%は現在ADAS機能を持つクルマを所有し、将来の安全技術に期待を寄せている。これは、現行のADAS機能への消費者のエンゲージメントが、将来のAV普及に対するより肯定的な態度につながる可能性があることを示している。

業界として、私たちはどこに向かうのか。現在のADASシステムにおいて、自動運転の将来の課題に正面から取り組むことで解決すべき唯一の機会が存在することに、多くの人が気づいている。そうでなければ、自動運転は、大量普及を妨げる将来の難題となってしまう。

私たちは、ADAS技術を用いてこれらの重要な課題に取り組み、より優れた運転エクスペリエンスを創造して、大衆の信頼を得る必要がある。高性能なADASを大規模AV普及への経路として用いることにより、目的地に安全に到達できるであろう。

業界は、消費者と歩調を合わせながら、安全で自律的な未来を築くことができるはずだ。

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(文:Tarik Bolat、翻訳:Dragonfly)

【コラム】完全自律運転車の航続距離を伸ばす鍵は「光」だ

編集部注:本稿の著者Nick Harris(ニック・ハリス)氏は、科学者でエンジニア、そしてフォトニックプロセッサーを製造するLightmatterの創業者兼CEO。

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先進運転支援システム(ADAS)は計り知れない可能性を秘めたテクノロジーだ。ニュースの見出しを見ていると、自律運転車の将来は暗いのではないかと時折思うことがある。自律運転車に関する事故、規制、企業の過大な評価額が過大評価されているという意見るためだ。これらはどれもそれなりの根拠に基づく報道なのだが、自律運転車の世界が持つ驚くべき可能性を見えにくくしている。

自律運転車のメリットの1つが環境負荷の軽減であることは一般的に認められている。なぜなら、自律運転車のほとんどは電気自動車でもあるからだ。

業界アナリストによるレポートでは、2023年までに730万台(市場全体の7%)が自律運転機能を搭載するため、15億ドル(約1649億円)相当の自律運転専用プロセッサーが必要になると試算されている。さらに、2030年までに自動車販売台数の50%が米国家道路交通安全局(NHTSA)によって定義されたSAEレベル3またはそれ以上の自律運転機能を備えるようになった場合、必要とされる自律運転専用プロセッサーは140億ドル(約1兆5390億円)相当まで増加する見通しだという。

自律運転電気自動車(AEV)が消費者を満足させる航続距離、安全性、パフォーマンスを提供して期待に完全に応えるには、コンピューティングとバッテリーに関するテクノロジーを根本から革新することが必要かもしれない。

光チップの方が高速でエネルギー効率も高いため、SAEレベル3に達するのに必要なプロセッサーの数は少なくなる。しかし、光チップによるコンピューティング性能の向上がSAEレベル5の完全自律運転車の開発と実用化を加速させるだろう。そうなれば、2030年までに自律運転用の光チップの市場規模は、現在予測されている140億ドル(約1兆5390億円)をはるかに上回る可能性がある。

AEVは非常に幅広い用途で使用できる可能性がある。例えば、大都市でのタクシーサービスやその他のサービス、高速道路専用のクリーンな輸送車両などだ。このテクノロジーが、環境にすばやく大きな影響を及ぼし得ることを、我々は目にし始めている。実際に、このテクノロジーは今、人口密度も汚染度も非常に高い一部の都市で大気汚染の軽減に寄与している。

問題は、AEVが現在、サステナビリティ面での課題に直面しているということだ。

AEVが効率よく安全に走行するには、気が遠くなるような数のセンサーを駆使する必要がある。カメラ、LiDAR、超音波センサーなどはその一部にすぎない。それらのセンサーが連携して作動し、データを集めて、リアルタイムで検知、反応、予測することにより、いわば自動車の「目」になるのだ。

効果的かつ安全な自律運転に必要なセンサーの具体的な数についてはさまざまな意見があるが「自律運転車は膨大な量のデータを生成する」ということに異議を唱える者はいない。

それらのセンサーによって生成されたデータに対して反応するには、それがたとえシンプルな反応だとしても、多大なコンピューティング能力が必要とされるし、いうまでもなくセンサー本体を動かすためにもバッテリー電力が必要だ。さらに、データの処理と分析には、カーボンフットフリントがけた外れに大きいことで知られる深層学習アルゴリズムが使われる。

AEVがエネルギー効率の面でも経済的な面でも実現可能な代替輸送手段となるには、ガソリン車と同レベルの航続距離を実現する必要がある。しかし、AEVが走行中に使用するセンサーやアルゴリズムの数が増えれば増えるほど、バッテリーの持続時間、つまり航続距離は短くなる。

米エネルギー省によると、現在、電気自動車が充電なしで走れるのは300マイル(約483キロメートル)がやっとだ。一方、燃焼機関を搭載した従来型の自動車は、燃料タンクを1度満タンにすれば412マイル(約663キロメートル)走行できる。このうえ自律運転をするとなれば、航続距離の差はさらに広がり、バッテリーの劣化が加速する可能性もある。

Nature Energy(ネイチャー・エナジー)誌に最近掲載された論文によると、AEVの航続距離は都市部の走行時で10~15%短くなるという。

2019年にTeslaが開催したイベント「Tesla Autonomy Day」では、都市部の走行中にテスラの運転支援システムが作動すると航続距離が最大で25%短くなることが明らかになった。つまり、電気自動車の一般的な航続距離が300マイル(約483キロメートル)ではなく225マイル(約362キロメートル)になるということだ。これでは消費者が魅力を感じる航続距離に達しない。

第一原理解析を行うともっと詳しく理解できる。NVIDIA(エヌビディア)のロボタクシー向けAIコンピューティングソリューションであるDRIVEの消費電力量は800ワット、テスラのModel 3のエネルギー消費率は100キロメートルあたり11.9キロワットである。大抵の都市部で制限速度とされる時速50キロメートルで走行した場合、Model 3が消費するエネルギーは約6キロワットだ。つまり、AIコンピューティングだけで、自動車の走行に使われる総バッテリー電力の約13%を消費していることになる。

この例は、AEVに搭載されるコンピューティングエンジンを動かすには多大のエネルギーが必要であり、そのことが、バッテリー持続時間、航続距離、消費者に受け入れられるかどうか、という点を左右する非常に大きな問題になっていることを示している。

この問題は、現在の先進AIアルゴリズムに使われる電力大量消費型の現世代コンピューターチップを冷却するためにも電力が必要であるという事実によってさらに複雑化する。大量のAIワークロードを処理すると、半導体チップアーキテクチャは大量の熱を発生させるからだ。

このようなチップでAIワークロードを処理すると熱が発生し、その熱によってチップの温度が上がると、チップのパフォーマンスが下がる。そうすると、その熱を冷やすためにヒートシンク、ファン、その他の冷却機能が作動する頻度が増えて、そこでエネルギーが浪費され、バッテリー残量は減り、結果的に電気自動車の航続距離は短くなる。自律運転車の業界は進化を続けているが、AIコンピューティング用のチップが発する熱に関するこの問題を解決する新たなソリューションが緊急に必要とされている。

チップのアーキテクチャに関する問題

何十年もの間、我々はムーアの法則と、そこまで有名ではないスケーリング則であるデナード則を頼りに、フットプリント(専有面積)あたりのコンピューティング能力を毎年向上させてきた。現在、電子コンピューターのワットあたりの性能を大幅に向上させることはもう無理だということは広く知られており、世界中のデータセンターがオーバーヒートしている。

コンピューティング性能をもっとも大幅に向上させるには、チップのアーキテクチャから見直す必要がある。具体的には、特定のアプリケーションに特化してチップをカスタマイズする必要がある。しかし、アーキテクチャ面でのブレイクスルーは1回限りの手品のようなもので、コンピューティングの歴史においてブレイクスルーがいつ達成されるのかを予測するのはまったく不可能だ。

現在、AIアルゴリズムのトレーニングと、その結果として作られるモデルに基づく推論に必要とされるコンピューティング能力は、ムーアの法則下における増加率の5倍という指数関数的な速度で増加している。その結果、大きな経済的メリットがもたらされる程度までAEVを普及させるために必要なコンピューティング能力と、現在のコンピューティング能力との間に、巨大な差が生まれている。

AEVは、バッテリー航続距離と自律運転に必要なリアルタイムのコンピューティング能力とを両立させる点で苦戦を強いられている。

AEVのサステナビリティを向上させる「光コンピューティング」

AEVが消費者を満足させる航続距離、安全性、パフォーマンスを提供して期待に完全に応えるには、コンピューティングとバッテリーに関するテクノロジーを根本から革新することが必要かもしれない。量子コンピューターが近い将来に、あるいは中期的にでも、AEVが抱えるこの難題の解決策になるとは考えにくい。しかし、今すぐブレイクスルーを達成できる、もっと現実的な別の解決策がある。それは、光コンピューティングだ。

光コンピューティングでは、電気信号の代わりにレーザー光を使ってデータの計算と伝送を行う。その結果、電力消費量は劇的に減り、クロック速度やレイテンシーなどの重要な処理能力パラメータは向上する。

さらに、光コンピューティングでは、多数のセンサーからのインプットを同時に1つのプロセッサーコアで処理して推論タスクを実行できる(各インプットには一意の色によって記号化されている)。一方、従来のプロセッサーは一度に1つのタスクしか処理できない。

ハイブリッド型の光半導体が従来の半導体アーキテクチャと比べて優れている点は、光そのものが持つ特異な性質にある。各データインプットは異なる波長、つまり「色」でコード化され、同じ神経回路網モデルを通る。つまり光プロセッサーは電子プロセッサーに比べてスループットが高いだけでなく、エネルギー効率も大幅に良いということだ。

光コンピューティングは、極めて高いスループットを低いレイテンシーと比較的少ない電力消費量で実現することが求められる応用分野で力を発揮する。例えば、クラウドコンピューティングだ。将来的には自律運転で応用できる可能性もある。自律運転では、膨大な量のデータをリアルタイムで処理することが求められるからだ。

光コンピューティングは現在、商用化の一歩手前まで来ており、自律運転に関する今後の見通しをさらに有望なものに変え、同時にカーボンフットプリントを減らす可能性を秘めている。自律運転車のメリットがますます注目を集めており、消費者が間もなく自律運転車を求めるようになるのは明らかだ。

そのため、自律運転によって変容する業界や路上における安全性について検討するだけでなく、自律運転が環境面でサステナビリティを確実に実現できるように取り組む必要がある。つまり、今こそAEVに「光を当てる」べきだ。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:自律運転先進運転支援システム(ADAS)EVロボタクシーコラム

画像クレジット:5m3photos / Getty Images

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(文:Nick Harris、翻訳:Dragonfly)