不動産スタートアップのiettyが東大とチャットAIの共同研究、人材会社との資本業務提携も

ietty代表取締役の小川泰平氏

ietty代表取締役の小川泰平氏

「最近チャットボットやチャットUIに関する話題が多いが、チャットを用いたサービスでもっとも実績のあるスタートアップは我々ではないだろうか」——そう語るのは不動産スタートアップのiettyだ。同社は5月13日、東京大学大学院 情報理工学系研究科電子情報学専攻・山崎研究室(山崎研究室)と共同での研究・サービス開発と、総合人材サービスを手がけるプロスとの資本業務提携を発表した。

iettyが提供するのは、オンライン接客型不動産仲介サービスの「ietty」だ。会員登録をし、希望の部屋の条件を登録すると、チャットを介してiettyから条件にマッチする物件の情報が送られてくる。ユーザーはその物件情報に興味を持ったかどうかを評価し、別の物件情報の提供を求めたり、内見の予約をしたりできる。

2015年10月に資金調達を発表した際、ietty代表取締役の小川泰平氏は「AIを使った物件紹介を試験的に開始している」と話していた。現状ではユーザーが希望する賃料や間取り、最寄り駅などの条件をフックにして物件を提案するようなものだそうだが、これを今回の山崎研究室との取り組みで本格化させる。「年内にも何かしらの結果を発表したい」(小川氏)

iettyでは提供された物件情報を評価できる

iettyでは提供された物件情報を評価できる

iettyでは現在、1日約5万件の物件情報をユーザーに配信しており、その半数にユーザーからの評価が付けられているのだという。ユーザー属性、物件情報、物件の評価情報、これらのデータを掛け合わせて分析することで、ビッグデータからユーザーに最適な物件を提案する仕組みを作れないか、という話だ。「今までの不動産仲介業は、ユーザーの希望条件に合わせて営業マンが『プロの勘』で物件情報を提供してきたが、データをもとにより最適な物件情報を提供できるようにしたい」(小川氏)

この施策の背景には、最近のチャットUI、チャットボットというトレンドへの警戒心があるようだ。もちろん店舗型の不動産仲介業者がいきなりチャット形式でオンライン仲介に参入、という話ではないかも知れないが、FacebookやLINEがプラットフォームを開放すれば、仲介業者は極論誰でもオンライン接客を行うことができるようになる。それに対して先行者としてサービスを展開するiettyでは、AIを使って業務を自動化しつつ、少ないリソースで多くの顧客に対応できる仕組みを作ろうとしている。

またこれに加えて、今回資本業務提携(資金調達については金額非公開だが、業務提携の意味合いが強く、少額だとしている)したプロスから内見対応を行う営業マンを派遣することで、リアルなオペレーション部分のリソースを確保する。不動産業界は繁忙期と閑散期の差が大きい。営業リソースを固定費にするのではなく、人材派遣で変動費化することにより、閑散期のコストを削減する狙いだ。

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同社は繁忙期である3月に単月黒字化を達成。ユーザー登録も月間6000〜7000人ペースで増えているという。「2年後にもネットでの不動産仲介が解禁される動きがあるが、まずはそこでナンバーワンになりたい。ただし賃貸不動産は入り口に過ぎない。管理や売買の市場を見ると60兆円の世界。不動産デベロッパー出身なので、その領域でビジネスを描いていきたい」(小川氏)

今後はLINEやFacebookなど各種メッセンジャープラットフォームにもサービスを対応させるほか(LINEについてはLINE@でサービスを試験運用しているが、実はアクセスの4分の1がLINE経由だそう)、大阪や神奈川でのサービスも開始する予定。

「起業家と伴走できる関係でありたい」グリーベンチャーズが70億円規模の新ファンド

左からグリーベンチャーズ代表取締役社長の天野雄介氏、パートナーの堤達生氏

左からグリーベンチャーズ代表取締役社長の天野雄介氏、パートナーの堤達生氏

グリーベンチャーズは5月12日、新ファンド「AT-II投資事業有限責任組合」(AT-II)を組成し、1次募集(ファーストクローズ)を完了したことを明らかにした。主な出資者は、グリー、みずほフィナンシャルグループ各社(みずほ銀行、みずほ証券プリンシパルインベストメント、みずほキャピタル)など。ファーストクローズ時のコミットメントは約40億円。12月末まで出資者を募集し、総額約70億円規模のファンド組成を目指す。

グリーベンチャーズは2011年12月の設立。名称から分かるように、グリー傘下の組織ではあるが、いわゆる本体との事業シナジーを狙ったCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは異なり、非常に独立性の高い投資活動を行っているのが特徴だ(むしろグリー本体の事業と関わるゲーム領域の投資は行わないというのが基本方針だ)。グリーベンチャーズ代表取締役社長の天野雄介氏、パートナーの堤達生氏ともに個人としてもGP(ジェネラルパートナー、無限責任を負う組合員)としてファンドに出資するというのも、いわゆるサラリーマン的なCVCとは異なる点だろう。

これまでの投資実績はBtoB領域を中心にした国内および東南アジアの約30社。バラマキでなく、ハンズオンでの投資を行うという。4月に朝日新聞社が買収したサムライトも同社の投資先だ。国内に加えてすでに東南アジアでのイグジット実績もある(東南アジアのスタートアップの場合IPOではなく現地大企業や現地に進出したい日本企業による買収が中心だそう)。「具体的数字は公開できないが、(前回のファンドは)2年で投資が完了して、すでにファンドサイズの半分近くの金額を回収している。結構なペースだ。(それを評価して)今回のファンドでも前回のファンドの投資家が積極的に投資してくれている」(天野氏)。

新ファンドでも引き続きこれまで投資してきた日本国内・東南アジア地域への投資を行うが、新たにインドでの投資も進める。新ファンド組成にあたり、インド出身者も含めたキャピタリストを複数人を採用した。投資の対象となるのはコンシューマーインターネット、モバイルサービス、マーケティングテクノロジーなどインターネット領域全般。引き続きBtoB領域を重視する。これら領域のシード・アーリーステージに対して原則リード投資家として1社あたり約1億〜3億円の投資を実施する予定。最近TechCrunchでも紹介したSORABITOookamiはこの新ファンドのそれぞれ1号、2号案件となる。

ちなみにGPでもある天野氏、堤氏に投資の際、最も重要視するポイントを聞いたところ、2人からそれぞれ「マーケット」だという回答が返ってきた。

「僕らはマーケットに対するこだわりがある。大きくて、かつすごく伸びるマーケットを狙っていく。建機も、スポーツも飲食メディア(それぞれ投資先のSORABITO、ookami、Rettyを指している)もまだまだビジネス化されていない領域。そこにちゃんと真剣に取り組むべきかどうか。経営者がシリアルアントレプレナーである必要はないし、シードの極めて早い段階で投資するケースが多いので、起業家と投資家としてではなく、(より近くで)起業家と伴走できる関係でありたいと思っている。あとは24時間とは言わずとも楽しく仕事できるかは重要だ」(堤氏)

「最終的には狙っているマーケットが重要。その市場に可能性があるのか、規模は大きいのか。もちろんマーケットへのアプローチは、挑戦していく中で変わっていく。だがそこでアベレージのパフォーマンスを出せるかどうか。マーケットが成長していればアベレージのパフォーマンスでもいいし、さらに伸びる可能性がある。だがマーケットを間違うとそうはならない」(天野氏)

スマホで楽しめるゲームカセット「ピコカセット」販売へ、Makuakeでプロジェクトを公開

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「ゲームをプレイする」と聞くと、スマホの画面からゲームアプリのアイコンをタップする、という動作を思い浮かべるんじゃないだろうか。

コンシューマーゲーム機もまだまだ健在だが、カートリッジやディスクといった物理メディアと並行して、ウェブ上で購入する「ダウンロード版」のゲームが増えている。

そんな時代に、30年ほど前に流通していたゲーム機の「カセット」(カートリッジ)を再現。スマートフォンのイヤフォンジャックに差し込むことでゲームをプレイできるのが「ピコカセット」だ。同社は東京ゲームショウ2015でこのガジェットのコンセプトとモックを発表していたが、いよいよ製品化に向けて動き出したという。同社は5月11日より、クラウドファンディングサービスのMakuakeにプロジェクトを公開した

このプロジェクトを手がけるのは「ピコカセ倶楽部」。Beatroboとシロクによる共同プロジェクトだ。Beatroboは、イヤホンプラグに差し込み、専用アプリを立ち上げることでコンテンツのダウンロードや音楽試聴などを実現する「PlugAir」と開発している。PlugAirはこれまで、米国の人気バンド「Linkin Park」をはじめとしたアーティストなどのツアーグッズやライブチケットの特典などに利用されてきた。ピコカセットはこのPlugAirの仕組みを転用したガジェットとなる。

今回第1弾として提供されるのはジャレコ(現:ハムスター)が1985年に発売したファミリーコンピュータ向けタイトルの「忍者じゃじゃ丸くん」。Beatrobo CEOの浅枝大志氏に聞いたところだと、やはり今回のプロジェクトで一番苦労したのはライセンスまわりの調整だったのだそう。

「通常のIPものだと、『キャラクターライセンス』の提供などはよくある話。ライセンスを受けてゲームキャラのフィギュアを販売するようなモデルだ。次のステップとしては、キャラクターライセンスを使って新しいゲームを作るというのがある。例えばアニメのライセンスを押さえて、ゲームメーカーがゲームを作るというモデルだ」

「だが今回は過去のゲームの移植で、かつゲームそのものも昔のままという調整が必要だった。また当然だが、当時のゲームはスマートフォン対応でプログラミングされているわけでもないので、(開発面でも)ゼロベースでのスタート。ゲーム業界でも極めてユニークな座組みだと考えている」

ピコカセットの反響は海外でも大きいという。プロジェクトでは今後継続してレトロゲームの復刻を進めるだけでなく、新作の開発や一般流通での販売、世界でのヒット作を活用した海外展開などを検討していくとしている。

iemo創業期メンバーが立ち上げたのは“サッカー×VR”の新メディア「サカチャン」

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2016年は”VR元年”だなんて言われているが、その波はオンラインメディアにも押し寄せている。2015年11月設立のSkyballは5月11日、サッカー特化の動画メディア「サカチャン」を正式公開した。

サカチャンはサッカーに特化した動画メディアだ。Jリーグの各チーム(オープン時点では横浜F・マリノス、大宮アルティージャ、セレッソ大阪の3チーム)の練習風景を中心に取材。短い動画として編集して配信する。動画の一部は360度動画になっており、スマートフォンなどを使って、臨場感のあるコンテンツとして楽しむことができる。

Skyball代表取締役の熊谷祐二氏

Skyball代表取締役の熊谷祐二氏

基本的に配信するのは独自コンテンツだ。チームごとに週1回の取材を行い、毎回20本程度の動画を作成するという。ベータ版運用時に公開した横浜F・マリノスの中村俊輔選手の360度動画は、Facebookでのシェアのみで公開から48時間で20万人以上に視聴されたという。「練習風景の動画コンテンツは世に出回ってない。ヨーロッパのクラブチームならYouTubeの専門部隊などがある場合もあるが、日本ではほとんどなかった」(skyball代表取締役の熊谷祐二氏)

熊谷氏は2007年に起業。求人情報検索サイトやソーシャルゲームなどの領域を手がけた。その後2014年には4人目のメンバーとしてiemoに参画。おもに国内での経営、開発のマネジメントを行った。iemoは同年9月にディー・エヌ・エーに買収されるが、買収後に同社を退社。2014年末から世界一周の旅行に出かけたのちにSkyballを起業した。

「iemoでの経験はとてもエキサイティングだった。代表(の村田マリ氏)がシンガポールを拠点にしていたこともあり、国内を中心に様々な経験をさせてもらった。その一方で、自身が30歳を迎えるにあたってゼロイチでサービスをやりたいという思いが強くなっていた」

「そんなときに興味を持ったのが『SportTech』。自身が高校まで野球をしていたし、旅先ではプレミアリーグなどサッカーの試合がどこでも、みんなで盛り上がることができると知った。ITとスポーツ、どちらも人と人を繋げるもの。今では選手が自らメディアで発信もするし、ビッグデータだって活用されている」

「(FCバルセロナ所属でブラジル代表選手の)ネイマールのインタビュー記事で『子どもの時にネット上にあったブラジル代表の練習動画を観て、技術をマネしていた』という話があった。調べてみると今どきのサッカー少年は、親や自身のスマートフォンでゲームをするか、YouTubeでサッカー動画(好きな選手のハイライトやテクニック集)を観ていることが分かった。米国ではThe Player’s Tribuneuninterruptedなど新しいスポーツメディアも登場しており、この領域に挑戦しようと思った」

今後は取材範囲を拡大するほか。撮影スタッフやエンジニアなどの人材の採用強化を進める。現在は外部資本を入れていないが、資金調達も検討している。

熊谷氏は単純に動画メディアを成功する、というだけでなく「スポーツクラブの良きIT商社」になりたいと語る。「スポーツ業界にあらゆるITソリューションを提供していきたいし、クラブだけでは対応しきれないコンテンツを提供し、選手とファンの新たなコミュニケーションの場を作りたい」(熊谷氏)。また今後はVRやARを使うことでスポーツの新たな視聴体験を提供していくという。

Uber、全米規模の集団訴訟を起こされる

FILE - In this Dec. 16, 2015 file photo a man leaves the headquarters of Uber in San Francisco. Uber and advocates for the blind have reached a lawsuit settlement in which the ride-hailing company agrees to require that existing and new drivers confirm they understand their legal obligations to transport riders with guide dogs or other service animals. The National Federation of the Blind said Saturday, April 30, 2016, that Uber will also remove a driver from the platform after a single complaint if it determines the driver knowingly denied a person with a disability a ride because the person was traveling with a service animal. (AP Photo/Eric Risberg, File)

Uberは、カリフォルニア州とマサチューセッツ州の集団訴訟2件で和解してから一月もたたないうちに、別件が持ち上がった。今回の訴訟には、カリフォルニア州とマサチューセッツ州を除く全米の、現行および元Uberドライバー全員が関わる。

昨日(米国時間5/2)イリノイ北地区連邦地方裁判所シカゴ支部に提出された本訴訟は、Uberドライバーを独立契約者ではなく従業員として分類し、「未払い給与および補償の復活」、経費の精算、および「受け取ったがUberに搾取されれたりUberのポリシーによって失われたチップの支払い」を行うことを要求している。

この全米規模の訴訟は、カリフォルニア州とマサチューセッツ州で和解した2件と非常に似た内容だ。2件の訴訟では、これらの州のUberドライバーは独立契約者であり続けると裁定された。TechCrunchが以前報じたように、Uberは著しい譲歩を余儀なくされ、両訴訟合わせて38万5000人のドライバーに対して、1億ドルに上る支払いに応じた。

この米全集団訴訟はまだ始まったばかりだが、カリフォルニア州およびマサチューセッツ州と比較的似た結果が予想できる。カリフォルニアの訴訟は和解までに3年以上を要したが、最近前例ができたことによって今回はそれほど長くはかからないだろう。

「ドライバーの90%が、Uberを使う主な理由は自分がボスであることを気に入っているからだと言っている」と、Uberは訴訟についてTechCrunch宛の声明で語った。「従業員になると、ドライバーは決められたシフトで働き、固定時間給を得ると共に、他の乗り合いアプリで運転する機会を失う ― そして最も重要だと彼らが考えている個人としての柔軟度も。

[情報提供に感謝:@zerohedge

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Instagramで変わるソーシャルメディアのビジネス利用と「俺通信」な20代のコミュニケーション

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編集部注:この記事はカイユリコ氏による寄稿である。同氏は東南アジア向けアパレルコマース事業ANELAでCEOを務めた後、現在はFacebookグループの「Instagramマーケティング勉強会」を主催して情報交換をしつつ、自らInstagramマーケティングプラットフォームの「PONY」を開発している。本稿ではそんなカイ氏にInstagramのビジネス活用、そしてInstagramのメインユーザー層のオンラインコミュニケーションについて語ってもらった。

2010年にサービスを開始し、2012年にはFacebookが買収した写真・動画共有SNSの「Instagram(インスタグラム)」。今では全世界で何百万というブランドがこのサービスにアカウントを持ち、自社の商品に関わる情報を発信している。

広告ビジネスも好調だ。同社が2月に発表したところによると、グローバルで月間20万社がInstagramに広告を出稿しているという。これはTwitterの月間13万社を軽く超える数字だ。

この勢いは海外だけの話ではない。日本国内でもすでにMAU1200万人を突破。ビジネスユーザーは1万社を超えた。筆者らが運営しているInstagramマーケティング勉強会というFacebookグループは2015年1月末に運用をスタートしたが、すでに1500人近くが参加しており、Instagramのビジネス活用に注目する人が急増していることを感じる。

なぜInstagramへの注目が高まっているか? 一番大きな理由は、そのインタラクション(投稿を見たユーザーによるいいね!やコメント、シェアなどの行動)の多さである。米hootsuiteの調査データによれば、フォロワーに対するインタラクションはInstagramが4.21%であるのに対して、Facebookは0.07%、Twitterに至っては0.03%。つまり約60〜120倍の数字を出しているのだという。ファッションやフードなど、写真との相性が良い“インスタグッド”な業界の投稿であれば、より高い数字になっているのだという。例えばニューヨーク・コレクション(New York Fashion Week)においては、期間中に獲得した1300万件のインタラクション(いいね、コメント、シェア)のうち97%はInstagramで、残りはFacebookが2%、Twitterが1%という結果が出ている。

インタラクションの高さは、Instagram経由でのアプリダウンロードやメディア訪問などのエンゲージメントにも繋がっている。親会社であるFacebookはInstagram広告の最適化を今後重視していくとしている。

Instagramをプロモーションに活用する2つの方法

では企業はInstagramをどのようにプロモーションに利用するのか?それは

  1. 自社アカウントを育てる(ルーティン型)
  2. インフルエンサーに依頼する(スポット型)

大きくこの二択しかない。もっと簡単に言えば、「自分で発信する」か「他者に発信してもらう」かである。それぞれの手法についてもう少し詳しく紹介する。

  1. 自社アカウントを育てる(ルーティン型)

Instagramを通じてファンとの関係を築き、継続的に運用するための基盤作りを目的にしている場合、企業のアカウントでは良い写真や動画を投稿することに注力するだろう。また、ハッシュタグを利用した写真コンテストなどを開催したりもする。

このように自社アカウントを販売・PRチャネルとして機能させるには、コンバージョン目標とエンゲージメントレートから逆算したフォロワー数(あるいは投稿が拡散した際の閲覧者数)が必要である。もちろん時間や運用する人のセンスが問われるが、ファンと継続的に関係を保つ上で有効な手法である。

こういった「ルーティン型」の運用を支援する国内のサービスの代表格は以下の通り。筆者も現在Instagram向けのマーケティングツールPONYのベータ版をローンチしたばかりだ。

マーケティングツール(無料):PONY

マーケティングツール(有料):Aista (notari)、 Social Insight (ユーザーローカル)、 hashlikes (ナナメウエ)

運用/キャンペーン代行:sharecoto(シェアコト)、monipla(アライドアーキテクツ)

  1. インフルエンサーを巻き込む(スポット型)

これも最終的に自社アカウントの育成に繋がるケースもあるが、基本的にはスポット的にキャンペーンを盛り上げたり話題を作ったりすることを目的としており、そのために有名人やフォロワーの多いユーザーに対して投稿やプロジェクト単位で広告を依頼するやり方である。国内のおもな関連サービスとしては以下がある。

インフルエンサーへの発注プラットフォーム:Instagrammer.jp(3MINUTE)、 Tagpic(タグピク)、Life-Instagrammer Network(トレンダーズ)、コムニコインスタグラマーズネットワーク(コムニコ)

1、2の施策ともに、どちらか一方のみ行うのが良いというわけではない。戦略と予算に応じて効率的に運用を行わなければユーザーを囲い込めない。前者はセンスと時間、後者はお金が必要である。

Instagramはプロモーションだけのチャネルか

前述のとおりで、そのエンゲージメントの高さからInstagramアカウントを運用してプロモーションに活用するという動きは多い。だがInstagramの底力はプロモーションだけではないと筆者は考えている。

あくまでファッション業界を中心とした動きではあるのだが、「インスタグラムは顧客との最初の接点として、製品がベストセラーになるかどうかを判断するのに使っている」という企業が増えているのだ。

例えばオンライン小売のエバーレーン(Everlane)は、2016年1月、Instagramで非公開のアカウント(@EverlaneStudio)を開設し、つながりの深い顧客で構成された一種のフォーカスグループをInstagram上に作り、新しい製品のデザインなどについて議論に関わってもらった。

オンラインファッション誌「フーホワットウェア(WhoWhatWear)」は2016年、米量販店のターゲット(Target)と協力して、はじめてのリテールブランドを立ち上げた。その際、彼ら短い動画を撮影し「@whowhatwear」のアカウントから160万人のフォロワーたちに、「クローゼットのなかにない服は何か」と尋ねた。 そのフィードバックから、若い女性にはファッショナブルで手ごろな値段のビジネスウェアの種類が少ないことを突き止め、その後の商品開発に生かしている。

ファッション業界をはじめとして、いくつかの業界において、顧客はすでにInstagram上に存在しており、コミュニケーションをとれる状態なのだ。上のように潜在的な顧客のニーズを聞いたり、商品デザインや画像のA/Bテストを行ったり、より良いものを作り伝えるためにもInstagramは使われている。

今後の国内Instagramマーケティングの動き

今後Instagramは、アートだけの世界ではなくなっていく。より多くの広告が入り、アルゴリズムによって表示順序が変わり、フォローしている人からは広告としての投稿が流れてくる。

ここで予測できることは2つある。ひとつは——もはや発生していることだが——InstagrammerがYoutuberのような「仕事」にもなるということ。たとえば海外だと、sponstaのような企業とInstagrammerのマッチングサイトがある。ここにはセレブリティだけでなく、数千人のフォロワーがいる一般人が登録しており、様々な広告案件を請け負っている。

また海外セレブリティについては、Instagramの投稿広告が高額で発注されている状況だ。ケンダル・ジェンナーカーラ・デルヴィーニュらのトップモデルのソーシャル上での一投稿の価値は約1530万円〜3700万円、カーリー・クロスミランダ・カーらの投稿は、約300万円〜615万円ほどの価値があることが判明した

国内においても、上記インスタグラマーネットワークではこうした投稿広告の発注が行われている。TechCrunch JapanでインスタグラマーであるGENKINGの記事が話題になったのも記憶に新しい。今後はセレブリティや著名人だけでなく数千、数万程度の一般ユーザーに対しても広がっていくだろう。

もうひとつは、Instagramの写真データとしての活用だ。

Instagram、あるいはInstagram APIを使うサードパーティが、写真という大量のデータの機械学習によって振り分けて最適化していく(これは写真・動画投稿SNSとしてユーザビリティを改善するだけでなく、ECサイトやメディアにおいてCVRの高い写真・動画素材としての活用かもしれない)ことが考えられる。FacebookはF8において、今後10年間で注力することのひとつにAI活用を挙げたが、もしかしたらこれにも関わってくる動きになるのではないか。

リテラシーの高い学生のコミュニケーションは“俺通信”が中心に

最後に、Instagramのメインユーザーでもある20歳前後の大学生たちに聞いた話を紹介したい。もちろんITリテラシーの高い人物が中心なので、これが「ごく一般的な大学生のリアル」とは言えない。しかしながら、10〜20代のコミュニケーションの質が変わり始めていることを感じられる体験だった。

これまでコミュニケーションアプリといえば、日本ならLINE、グローバルで見ればWhatsAppやViberなど、メッセージやスタンプを「送る」「受け取る」ことでやりとりをする、文字通り「コミュニケーションをとる」ためのアプリだった。

そのため、自分がメッセージを送ったときには相手からの返信を期待する。返信がなければ「既読スルー」に悩み、極端なところでは仲間内で作ったLINEのグループから外される「LINEいじめ」といわれるような現象が生まれるなど、コミュニケーションをとることの煩わしさも目立つようになった。

しかし筆者が話を聞いた学生のコミュニケーションは、その煩わしさからも解消されているというのだ。つまり、彼らのコミュニケーションは、もはや相手からの積極的なインタラクションすら期待していないというのだ。

彼らはFacebookやLINEで相手に連絡する手段は確保しつつも、日常ではInstagramやSnapChat、MSQRD(マスカレード)でただ自分の日常をアップデートするだけ。恋人でもない人やさほど興味のない相手が自分の報告を逐一メッセンジャーなどで送ってくることを「俺通信」と呼ぶことがあるそうだが、そんな俺通信と呼べるような発信こそがコミュニケーションの主軸になっているのだ。

俺通信を主軸にしたコミュニケーションとは具体的にはどんなものか? まず彼らは食事会や合コンで知り合った異性に対してLINEのID交換を求めるのではなく、Instagramのアカウントを教えあう。直接コミュニケーションを取るのではなく、Instagram上でお互いの発信する内容を見て人となりを知り、趣味を知り、話のネタを見つけて、仲良くなれるかを探る。そして 仲良くなれそうだと判断した時に初めてLINEやFacebookのアカウントを交換する。ここでやっと連絡手段を確保し、距離を縮めていくのだという。

そして何度か話したり、共通の友人が多いことが分かったりすると、今度はSnapChatアカウントを教え合うのだという。SnapChatのStory(Facebookのウォールのように、時系列で投稿を閲覧できる機能)で、近況をテキストやスタンプとともに投稿し、特定の友人とだけ共有したい話があるときだけ、直接メッセージを送り合う。

SnapChatやInstagramは、基本的に自分が送って相手が返信する、というコミュニケーションは求められていない。既読スルーもなければ、送受信の頻度も割合も気にかけなくて良い。全員が好きなタイミングで「俺通信」を送り、興味がある時にだけ連絡をする。それは「返信」ではなく「連絡」くらいの感覚だ。ITリテラシーの高い大学生にとっては、自分との関係を”推し量る”程度の距離感が心地いいようだ。

メタップスとLOCUSが業務提携、ゲーム向けの動画制作から分析までをワンストップにした「LOOP」を提供

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アプリ収益化プラットフォームの「metaps」や手数料無料の決済サービス「SPIKE」などを提供するメタップスが、動画制作・マーケティング支援を行うLOCUSと業務提携を行うと発表した。4月26日より、企画や制作から解析、その後の評価までワンストップで提供する動画コンサルティングサービス「LOOP(ループ)」を共同で展開する。

メタップスではこれまで、アプリをはじめとしたウェブマーケティングを展開してきた。動画広告に関しても、広告配信から効果の分析までを行う「メタップスアナリティクス(ローンチ当時はMetaps Video Analytics)」を提供するなどしている。一方LOCUSでは、これまで採用動画やアプリ紹介動画などの制作、動画広告の制作、運用などで豊富な実績を持つという。

今回スタートしたLOOPは、そんな両者の強みを生かしたサービス。LOCUS側で動画の制作を行い、メタップスが解析ツールを提供。施策の評価やコンサルティングを行うという。料金は動画のタイプによるが1本25万円から。

LOOPではまず、「LOOP for GAME」としてゲームアプリに特化した施策を展開する。また今後は市場のニーズに合わせてゲーム以外の業界に向けて特化型のサービス提供・商品の拡充を進める予定だ。

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日本版Y Com目指す——YJキャピタルとEast Venturesが新アクセラレーター「コードリパブリック」立ち上げ

左からYJキャピタル代表取締役の平田竜氏とEast Ventures代表取締役の衛藤バタラ氏

左からYJキャピタル代表取締役の平田竜氏とEast Ventures代表取締役の衛藤バタラ氏

ヤフー傘下のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)であるYJキャピタルと、独立系VCのEast Venturesがタッグを組んで新たなアクセラレータープログラム「コードリパブリック」を開始する。4月25日から第1期参加者を募集する。プログラムの期間は3カ月。今後は年2回ペースで開催していく予定だ。

コードリパブリックは、YJキャピタルとEast Ventures共同で運営するアクセラレータープログラム。募集の対象となるのは「インターネットを使ったビジネスを検討しているベンチャー企業」となっており、国籍不問、法人化前のチームでもよいという。これだけ聞けば間口は広いようにも見えるが、「審査の敷居は高い。数を求めるのではなく、クオリティを重視したい」(YJキャピタル代表取締役の平田竜氏)という。また条件上はエンジニア必須となっていないが、「チームの中にいた方がいい。資金がない中での外注は難しい」(East Ventures代表取締役の衛藤バタラ氏)ということで、開発力のあるチームを求めているようだ。

審査を通過したスタートアップ(およびその準備を進めるチーム)には、East VenturesおよびYJキャピタルから合計700万円の出資(一律バリュエーション1億円で7%の第三者割当増資。必須)のほか、3カ月間のインターネットビジネス運営・企業経営向けの講座、1週1回のメンタリング、デモデイへの参加、オフィススペース(今春オープン予定のEast Venturesの新六本木オフィスの一部となるコワーキングスペースとのこと)の提供などが行われる。

プログラムのスケジュールは以下の通り。
2016年4月25日〜6月17日:第1期の募集期間
2016年6月下旬〜7月上旬:審査期間(1次:書類審査、2次:面接)
2016年8〜10月: 第1 期のプログラム期間
2016年10月31日: 「Demo Day」を開催
2016年11月中旬: 第2期の募集開始

メンターにはEast Ventures代表取締役の衛藤バタラ氏、同じくEast Ventures代表取締役の松山太河氏のほか、YJキャピタル代表取締役の平山竜氏、YJキャピタル取締役 兼 ヤフー執行役員ショッピングカンパニー長の小澤隆生氏、ヤフー上級執行役員 メディア・マーケティングソリューションズグループ長の宮澤弦氏、ヤフー執行役員パーソナルサービスカンパニー長の田中祐介氏、ヤフー執行役員CMOの村上臣氏、YJキャピタル パートナー CFOの戸祭陽介氏、YJキャピタル パートナー COOの堀新一郎氏が担当。今後は外部メンターの招聘も検討する。またゲストアドバイザーとして、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏、KAIZEN platformの代表取締役社長の須藤憲司氏、ラクスル代表取締役の松本恭攝氏、フリークアウト取締役COOの佐藤裕介氏が参加する。

2010年7月にスタートしたOpen Network Labをはじめとして、国内でもいくつかのインキュベーション・シードアクセラレーションプログラムが展開されてきた。これまでプログラムを持っていなかったYJキャピタルだが、「これまでYJキャピタルでも数千万円前半程度の小さいステージ(シード・アーリー期)への投資は行ってきたが、より少額の投資をどうやっていくべきかという議論があった」(YJキャピタル代表取締役の平田竜氏)と考えていたのだそう。

「日本のベンチャーを見たとき、経済規模を考えてもまだ伸びる余地はある。でも一番初め、創業期のところではまだ仕組みが少ない。Y Combinatorの日本版を作りたい。3カ月の期間で世に問えるプロダクトを作れる人達を求めている」(平山氏)

East Venturesでも一度プログラムを実施したがリソース不足もあって定常的に実施することが難しかった。また、シリアルアントレプレナーなどにはリーチできているが、「肌感覚でもデータで見ても、まだまだ起業家は少ない。1人ずつ声をかけるのにも限界がある。プログラムを通じてより起業家を支援していきたい」(衛藤氏)

コードリパブリックが重視するのはプログラム自体がコミュニティであり、エコシステムを作ることだという。まず、必須ではないが基本的にプログラム参加チームはコワーキングスペースでサービス開発を進めてもらうのだという。「ここはY Combinatorというより500 Startupsの考え方だが、彼らは(コワーキングスペースにプログラム参加者を入居させて)オフィスで切磋琢磨している。『ディナーでないと顔を合わせない』というのではなく、共同体になってほしい」(平山氏)

今後は外部からもメンターを招聘する予定。外部メンターに対しては、プログラム参加メンバーへの先行的な出資の交渉権などを付与することも検討しているという。「(Y Combinatorでは)デモデイが行われる頃には各社のバリュエーションが上がっている。なので『先に出資したいのであれば、先に彼らを鍛える』という仕組み自体ができている。それがシードのエコシステムになっている。あれ自体を実現したい」(平山氏)

「コオロギ粉末」でプロテインバー——電通ベンチャーズ、米国の食品スタートアップ・Exoに出資

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電通が手がけるCVCファンドの「電通ベンチャーズ1 号グローバルファンド(電通ベンチャーズ)」が4月25日、クリケットフラワー(コオロギ抽出タンパク)を使った健康食品を開発する米Exoへの出資を実行したことを明らかにした。出資額は非公開だが、Exoは今回のシリーズで合計400万ドルを調達している。

Exoは2014年の設立以降、独自技術でコオロギから高純度のタンパク質を抽出・精製・粉末化したクリケットフラワーを開発。そのクリケットフラワーを使用したプロテインバー「exo」をはじめとした健康食品・食品原材料を開発をしている。現在米国で、ココアナッツ、バナナブレッド、アップルシナモン、ブルーベリーバニラ、ピーナツバター&ゼリー、バーベキュー、マンゴーカレー、オリーブの全8種類のプロテインバーを販売している。

「コオロギから抽出したタンパク質」と聞くと——その栄養価などへの評価は別として(その詳細については過去にExoを紹介したこちらの記事を読んで欲しい)——正直なところ食べることに心理的な抵抗があるという人は少なくないだろう。Exoももちろんそういった課題は認識しており、プロテインバーのデザイン・クリエイティブにも注力、さらにミシュラン三つ星を獲得しているシェフの監修の下でクリケットフラワーを原材料とした食品を開発するなどしてブランドを意識したマーケティングを進めている。

このあたりのマーケティング、特に日本への進出については電通ベンチャーズでも積極的な支援を進めるという。「電通では過去にユーグレナに投資をしてビジネス開発を支援していた。そういったノウハウは使えるのでないか」(電通ベンチャーズの平山悠氏)

ニューヨークがテック企業をはじめるのに最適な街である3つの理由

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【編集部注】執筆者のMona Bijoor氏は、衣類のオンライン卸市場JOORの創設者兼CEO。

ベンチャーキャピタルによる投資額の観点から言えば、まだニューヨークはシリコンバレーには及ばない。ベイエリアの企業による調達額は、世界中のベンチャーキャピタルによる投資額の約15%にあたり、サンノゼとロサンゼルスを含めると、2015年の全民間企業による総調達額の3分の1にまで達する。

対照的に、サンフランシスコの8倍もの人口を誇り、世界最大級の銀行がその本社を置くニューヨークに位置する企業の調達額は、5%でしか無い。しかし、資金の調達額は諸刃の剣でもあるようだ。

世界の誰もがうらやむような企業で給料の良い仕事につける可能性がありながら、サンフランシスコ市民の半数近くは、街が誤った方向へ向かっていると考えている。その多くが正式な形で公開書簡を提出し、その中で良い仕事についたとしても家賃すら払えないような現状を踏まえ、テック業界に蔓延しているバブルが少しだけ萎むのも悪くないのではないかと述べている。

一方で、ニューヨークは急成長の真っ只中にいる。家賃は一般的に言って決して安くはないものの、それでもサンフランシスコに比べるとずっと安い。また、多くの人が現市長は前市長よりビジネスを優遇しないだろうと考えているが、そんな中でも求人数や給与はニューヨーク史上最も早いスピードで増加している。以下が、ニューヨークが起業に最適な街である(更に今後良くなっていく一方である)と、私が自信をもっている3つの理由だ。

ハイフンテック

前述のとおり、純粋な調達額としてはシリコンバレーに及ばないものの、市場シェアという意味では、ニューヨークは現在急成長を遂げている。その背景には、ニューヨークが自らを、いわゆる「ハイフンテック(Hyphen Tech)」の首都と名付けたブランディングの成功にある。ハイフンテックとは、スタートアップというカテゴリー下にある膨大な数のサブカテゴリーを指し、他の業界と手を組んで事業を行う事を特徴とする。フィンテックや、ファッションテック、メディアテックはそのほんの一例だ。

ニューヨーク市内に溢れるようなエネルギーは、他の街では味わえない。

ハイフンテックの事業では、各業界にいるプレーヤーとの距離の近さが重要になってくる。私の会社はその競争優位性に関する良い例で、我々は仲介業者として、各ブランドとそのお客さんにあたる大手小売店の間に入っている。ニューヨークには、Bloomingdale’sやMacy’s、Coach、Ann Taylor等、数えきれないくらいのグローバルファッション企業の本社がある。このような有名企業と同じ街で暮らし、仕事をしていけるということが、極めて専門性の高い製品を生み出しやすくなることに繋がっている。

多様性

ニューヨークのテック業界が持つもう一つの大きな特長は、その多様性にある。完璧とは到底いえないものの、ニューヨークにある企業は、シリコンバレーにある企業にくらべてずっと多様性に富んでおり、ニューヨークのテック企業で働く社員の40%が女性で、20%が有色人種である。これは、単純に市民が多様性に富んでいるいうわけではなく、ひとつにはニューヨークのテック企業では西海岸に比べて、様々な職種の人材が求められるということが挙げられる。また、雇用の多様性は配当金支払にも影響を及ぼす可能性がある。マッキンゼーの調査によると、多様性のある企業は、一旦上場すると業界標準を大きくこえる売上を記録する可能性が35%高いのだ。

エネルギー

ニューヨーク市内に溢れるようなエネルギーは、他の街では味わえない。街自体が、クリエイティブな人達や、自由な考えを持つ人達、はたまた現体制に不満を抱く人達が自由に生きていくための燃料として機能しており、素晴らしい企業をつくるのに必要な力を与えている。ニューヨークは、学生人口や文化的イベントの数、外国人コミュニティのサイズにおいて全米一であり、どのような人材でも惹きつける力をもっている。(開発者は現在特にその数が増えている

また、海外発で活躍中のスタートアップのほとんどが、ニューヨークに全米もしくは北米本社をおいており、国際的なバックグラウンドや視野を持つ優秀な人材が街に流れ込んでいる。豊富な人材とアイディアが、シリコンバレーにはないエネルギーを生み出し、そのエネルギーがイノベーションを促進するとともに、週60時間の労働をこなすためのやる気を与えてくれる。

欧州からニューヨークへの最初の入植者は、オランダ東インド会社からの偵察者たちだった。その後アメリカ革命中には、その主要港またビジネス街としての魅力から、イギリスがあらゆる手段を尽くしてニューヨークをまもろうとした。また、ニューヨーク出身でアメリカ合衆国建国の父とされるメンバーの中でも最も有名な、Alexander Hamilton氏は、アメリカで最初の銀行家でもあった。ニューヨークで生み出されたお金によって、パナマ運河がつくられ、マーシャル・プランが実施されたのだ。テックコミュニティが成長するにつれて、急成長を遂げる企業のインキュベーターとしてのニューヨークの力が、そのうちサンフランシスコと肩を並べる可能性もある。

前市長のMichael Bloomberg氏による、ニューヨークに新設される工業学校が、設立から30年の間に400もの企業を新たに生み出すことができるだろうという予測は非現実的ではなく、ニューヨークの学生人口が、ボストンの総人口よりも多いというのは言うまでもない。その一方で、ニューヨークの地下鉄に乗ったことがある人であれば誰でも、ニューヨーカーが待ち時間の有効活用の仕方を熟知していることを知っているだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake 500px, Twitter

ソーシャルギフトのgifteeが三越伊勢丹と資本業務提携、法人向け事業に活路

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国内ソーシャルギフトサービスの先駆けである「Giftee」。運営元のギフティが三越伊勢丹グループのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)である三越伊勢丹イノベーションズを引受先とした第三者割当増資を実施したことをあきらかにした。金額は非公開だが、関係者によると数千万円規模だという。三越伊勢丹イノベーションズは2016年1月にできたばかりのCVC。ギフティへの投資が第1号案件となる。

ギフティはOpen Network LabのSeed Acceleratior Programの第1期、KDDI ∞ Labo (ムゲンラボ)」の第1期にそれぞれ参加した経験のある、2010年スタートのスタートアップだ。gifteeはソーシャルメディアを通じてスターバックスやローソン、上島珈琲店などで利用できる電子ギフトチケットを送るサービス。会員数は47万人。ギフトの取扱店舗は全国2万5000店に上る。

リリース当初からコンシュマー向けにサービスを展開してきたgifteeだが、オペレーションやPOS対応などの課題も多く、店舗側の導入が難しいというケースがあったのだという。また同時に、「個人間でのギフトの送付だけでなく、マーケティングツールやカタログギフトの置き換えといったかたちで法人利用できないか?」といった問い合わせが増えてきた。

そこで同社は2014年から法人向けに「giftee e-Gift System」の提供を開始した。これを利用すれば、企業は店頭利用できるギフトチケットを生成、自社サイト上でも販売できるようになる。サービスを導入するのはミニストップやローソンなど大手11ブランドまで拡大した。またこのサービスに乗ることで、企業はgiftee上でもチケットの販売が可能になる。

「giftee e-Gift System」のイメージ

「giftee e-Gift System」のイメージ

ギフティでは今回の資金調達をもとに、法人向けを中心にしたサービスの強化を進める。三越伊勢丹グループと連携した新サービスの開発も検討中だ。「僕らは1000円未満のカジュアルなギフトを手がけてきた。一方で三越伊勢丹グループは『(高額な)包み紙に包まれたギフト』に価値を置くという対極にいた。今後は彼らが持つギフトのアセットと僕らの技術を掛け合わせていきたい」(ギフティ代表取締役の太田睦氏)。具体的なサービスについてはまだ公開できる状態ではないとのことだったが、百貨店商品券やカタログギフトなどを置き換えるサービスなどを検討中なのだという。

 

ニューヨークのランチデリバリー競争が激化。Postmatesが15分配達サービスをスタート

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オンデマンドデリバリーのスタートアップ、Postmatesが、15分以内に食料を配達するサービス、Popを明日(米国時間4/20)11 am ETにニユーヨークで開始する。昨年10月にサンフランシスコでスタートしたPopを利用すると、ランチの食べ物を15分以内に受け取ることができる。ニューヨーク市の34番街からバワリーまでの地域で利用可能。スタート当初は配達料金を取らない。

この数週間前、PostmatesはAmazonプライムライクの定期利用サービスをスタートし、一週間前にはロサンゼルスでPopを提供開始した。そして2日前にはUberがニューヨークでUberEatsのインスタントオプションを中止した。

「最高のセレクションと最高品質の料理を最速で届けるために、焦点を絞ることにした」とUberはニューヨークのUberEatsユーザーに今週メールで伝えた。

Uberはインスタントオプションを廃止したが、UberEatsのニューヨークでのサービスは続いている。おそらくその理由は、フードデリバリービジネスは成長中で、Business Insiderによると先月にはユーザー数が倍増しているからに違いない。

UberEatsのインスタントオプションが、実質的にPostmates Popと同じであることを考えると ― ただしUberは10分、PoPは15分 ― Uberがニューヨークでインスタントオプションを中止したことには疑問が残る。ニューヨークの配達事情に問題があるのか? Uberはニューヨークの店から仕入れすぎたのか?ニューヨークには食料を配達するUberドライバーが不足していたのか?

Uberがインスタントオプションを廃止したのはニューヨークだけで、シカゴ、ヒューストン、ロサンゼルス、サンフランシスコを始めとする他の都市では継続しているのは興味深い。

「UberEATSの専用アプリを先月公開して以来、驚くほどの反響がありユーザー数は2倍以上になった」とUberEVERYTHING NYCのゼネラルマネージャー、Michael ContiがTechCrunch宛の声明で言った。「専用アプリによってマンハッタン中のレストランがリーチと顧客ベースを広げることが可能になった。今回の小さな変更によって、ユーザーにもレストランオーナーにも、配達員にも最高の体験を確実に提供できる」。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

東大卒中心のFinTechスタートアップのFinatext、日本IBMと組んでロボアドバイザーを提供へ

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数あるFinTech系サービスの中でも、この1年弱という短期間で注目を集めているのが「ロボアドバイザー」という領域。コンピュータを使うことで最適な資産運用(やその助言)を行うプロダクトの総称で、米国ではWealthfrontやBettermentを始めとして数多くのサービスが登場。日本でもお金のデザインの「THEO(テオ)」やウェルスナビの「WealthNavi」など、徐々にサービスが立ち上がりつつある。

2014年にスタートしたFinatextもそんなスタートアップの1社。同社は4月18日、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)と協業し、ロボアドバイザーのエンジンを金融機関向けに提供することを明らかにした。

Finatextはこれまで、株式市場の予想アプリ「あすかぶ!」や仮想通貨を使ったFXの予想アプリ「かるFX」といったコンシューマー向けのアプリを提供してきた。またこれと並行して、金融機関向けの投信データ配信サービスなども開発している。同社は東京大学経済学部の卒業生らが中心となって設立されたスタートアップ。現在個人投資家からマイナー出資を受けているが、ベンチャーキャピタルなどの資本は入っていない。

同社はアルバイト、インターンを含めて24人のチームで、そのうち8割が東京大学の出身者および在学生だそう。エンジニアの多くは東大大学院で金融工学を研究したり、経済学部に所属したりしているという。同社は、4月に入って以降、トムソン・ロイターと提携した市場動向解析コンテンツの共同開発を開始したほか、カブドットコムと協業して独自の注目株シグナルを提供するなどしている。

今回の日本IBMとの協業では、Finatextが投信のデータ(API)、ロボットアドバイザーのロジックエンジンと総合的なデザインブランディングを担当。IBMは営業やサイト構築のサポートを担当する予定。5月をめどに開発を進め、7月からの導入を目指す。詳細についてはまだ公開されていないが、導入金融機関のユーザーは、投資のスタンスに関する10個程度の質問に回答することで、最適な投資のポートフォリオの提案を受けることができるようになるという。

ウォンテッドリーがポートフォリオサービス「CASE」を公開、まずは国内10社300作品を掲載

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ビジネスSNS「Wantedly」を展開するウォンテッドリー。これまでも主力事業であるWantedlyに加えて、ビジネスメッセンジャーの「Sync」など“仕事”に関わるサービスを複数提供している同社だが、また新たなサービスをリリースしたようだ。同社は4月18日、ポートフォリオサービス「CASE」の提供を開始した。

CASEは「Behance」や「Dribbble」などに代表されるクリエーター向けのポートフォリオサービス。さまざまな企業やクリエーターが制作したデザイン作品、アプリ、動画など様々なプロジェクトを閲覧し、「Like」の評価やコメントを付けることができる。サービス開始時点では、PARTYやバスキュールをはじめとして、10社300作品以上のポートフォリオを掲載している。サービスの利用は無料。ただしウォンテッドリーのサービスを利用するためのID取得が必要だ。

CASEの機能は——(1)プロジェクト一覧の閲覧(オススメ順、Like順、コメント数順などで並べ替えするほか、タグを使った検索などが可能)、(2)クレジットの閲覧(プロジェクトの関係者を「CREDITS」として掲載可能。デザイナーやクリエーターだけでなく、エンジニアなども登録できる。クレジットの情報はWantedlyと連携する)、(3)企業ページの閲覧(企業の投稿したプロジェクトを一覧表示可能)——の3つ。作品を見て直接企業やクリエーターへ連絡する機能は「現状だとサービス自体がどう使われるのかまだ分からない」(同社)ということから備えていないが、今後はこのあたりをマネタイズのポイントにも考えているという。

サービスは2015年新卒のエンジニアが中心となり、2ヶ月半・5人のチームで開発した。プロジェクトマネジメントを行ったエンジニアの南直氏は、「Behanceなど先行するサービスはあるが、国内の企業・クリエーターの作品が集まっている場所がなかった。初期に掲載する作品はリレーションがある国内の企業が中心だが、国内の著名クリエーターにも参加してもらっている」と開発の経緯を語る。

今後は創作機会の多いクリエイターをターゲットに利用者を拡大し、数カ月を目処に2000作品を集める予定だという。またWantedlyがインドネシアなど海外展開を進めているのにあわせて、海外ユーザーへ日本の作品を紹介したり、海外ユーザーの作品も投稿したりといった利用を検討していく。

会員制宿泊予約サイトの「relux」、運営元がKDDIから5億円を調達——訪日対応さらに強化

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会員制宿泊予約サイト「relux」を運営するLoco Partners。3月にサービス開始から3周年を迎え、同時にミクシィ元代表取締役の朝倉祐介氏を社外取締役として迎えたという発表があったが、今度は大型の資金調達を実施したという。同社は4月18日、KDDIがグローバル・ブレインと運営する「KDDI Open Innovation Fund」を引受先とした5億円の第三者割当増資を実施したことをあきらかにした。

先日の記事でも紹介したとおりだが、relux は同社のスタッフや全国の旅館・ホテルに精通した審査委員会のメンバーが厳選した一流旅館・ホテルを紹介する会員制の宿泊予約サイト。満足度保証や宿泊プランの最低価格保証、relux会員限定の特別プランを提供してきた。

KDDIが提供する定額制スマートフォン向けサービスの「au スマートパス」においても、2012年3月からクーポン配布などを実施。現在では、au スマートパス会員向けの優待プログラムを提供しており、今後さらなる旅行サービス拡充を目的として、より広範な業務提携を進めるとしている。ただし今後の具体的な提携については「現在検討中。reluxのリソースをうまく用いた形で、KDDI国内4000万会員に旅行商品を何らか訴求できればと考えている」(Loco Partners執行役員の酒井俊祐氏)とのこと。

また3月時点でもインバウンド需要が急増している(訪日旅行売上比率は10%近くまで増加)と語っていたが、その割合はひと月でさらに増加して現在15%近くまで伸びているという。KDDIとの提携に加えて「さらに伸ばしていくポテンシャルがある。海外事業へも投資し、訪日旅行事業の成長を加速させる。国の訪日外国人数の政策目標(2020年に4000万人)にも乗っかっていければ」(酒井氏)

グルメ情報まとめサイトなど展開するfavyが1億円を調達、飲食店を使った“リアルABテスト”を展開

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飲食店向けのウェブサイト作成サービス「favyページ」、そしてMAU(月間アクティブユーザー)150万人グルメ情報のまとめサイト「favyまとめ」、さらには飲食店の「C by favy」を展開するFavyは4月18日、みずほキャピタルおよびサイバーエージェント・ベンチャーズが運営するファンドを引受先とした総額約1億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。今回調達した資金をもとに経営基盤の強化を図るとともに、新サービス「飲食店ABテスト」の提供を開始する。

飲食店ABテストとは、いわばオンラインのABテストのリアル版とも言えるサービスだ。飲食店に来店したユーザーに対して、クライアントの商品や原料を利用した料理などを複数体験してもらった上でアンケートに答えてもらい、商品名の是非や品質・強みの把握、適性価格を探ることができるマーケティングリサーチサービス。

これまで生産者・産地・メーカーによる商品テストでは、実店舗でリアルな消費者の意見を集めることは難しかったとfavyでは説明する。また一方で、飲食店は収益を営業収益(つまり飲食の提供)に頼っており、曜日や天候によって差が生まれて安定した収益の確保が難しい状況だったという。

だがこの飲食ABテストでは、生産者・産地・メーカーの商品を提携する飲食店に提供。favyが商品企画・開発、商品テスト、宣伝・拡販などで支援を行いつつ、来店したユーザーに対してABテストとして料理を提供する。その後アンケートを回収。消費者の声を元に商品の戦略を練り、販売時にはfavyページなどでネットワークを持つ飲食店に商品の提案などを行う。また飲食店ではタイアップ商品のアンケートを行うことで、営業外の収益を得ることが可能になるという。

冒頭にあるようにfavyでは東京・新宿に飲食店も展開していることから、2月から試験的に取り組みを進めていた。C by favyではこれまでに、生パスタと乾麺の比較や、国産ワインと通常の海外産ワインの訴求力の違いなど、いくつかのテストを行っている。

「ABテストの狙いは、飲食店に営業外収益的な新たなキャッシュポイントを作ること。そのために飲食店という場を他のビジネスに活用できないか検討した結果、行動観察型のリサーチの場として転用できることに気付いた。それを飲食ABテストというサービスメニューとして磨いてきた」(favy代表取締役の高梨巧氏)。favyでは年内に提携100店舗でのアンケート調査の実現を目指す。

テック業界の女性雇用をめぐる本当の問題とは?

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【編集部注】この記事の執筆者、June Sugiyama氏はVodafone Americas FoundationのDirectorを務めている。

私は20年以上をテック業界で過ごし、現在はシリコンバレーで新たなイノベーションを促進すべく、ある財団法人に所属している。これまでの活動の中で、多くの起業家との協業や社会的貢献を目指すいくつものスタートアップの成長促進をサポートする機会があったが、女性として今もテック業界で働いていること、更には指導的立場にいることの意味が、私にはよくわかる。

今では、紅一点であることに慣れてさえきた。そして、設立間もないスタートアップや、巨大なハイテク企業に入った際に、受付の女性を見て、彼女がオフィスで唯一の女性であると気付ことにも違和感を抱かなくなった。これまで訪れた交流会やネットワーキングイベントのいくつかは、志を同じくする技術者の集まりというよりも、男子学生の社交クラブのように感じた事もある。誤解しないで頂きたいのは、優秀なスタートアップは存在し、製品やサービスはマーケットの要望に応え、世界をより良いものにしているという意味で、成すべきことは成されている。ただ、もっと業界を良くすることができるのではないだろうか。

何がシリコンバレーから、またテック業界全体から女性を遠ざけているのだろうか?男性優位の環境に、有能な女性が威圧されてしまっているのか?米国における大学卒業生のうち、半数以上を女性が占めているにも関わらず、大手テック企業における女性社員の割合は30%でしかない。

広く報道されている、雇用をめぐった「タレント争奪戦争」や、法的措置につながってしまうような採用プロセスが蔓延する業界において、この事実は警告として捉えられるべきだ。一方で、大手テック企業が女性求職者を締出したり、無視したりしているという訴訟さえ起きているなど、かなりの二極化が見られる。

この問題は複雑で、答えが一つにまとまらないのは目に見えているが、テック業界で働く女性の数を増やすためには、短期・長期の両時間軸から問題をみつめ、制度的に女性の締出しを生じさせている壁を打破する必要がある。

テック業界における問題

最初のステップは、問題があるという事実を認めることだ。シリコンバレーの大企業の一部は、雇用における多様性の欠如の責任を負うべき立場にありながらも、そのうちの多くは、未だに採用方針は公平で、労働環境も女性にとって問題ないものであると考えている。しかし、驚くべきスピードで女性の流出が起きている事が数字からわかる。実際にハーバード・ビジネス・レビューよれば、STEM分野(理数工系分野)で働く女性の50%が、将来的には不利な労働環境を理由に職場を去ることとなる。

ほとんどの女性が、性別によるあからさまな差別を受けることはないものの、その代わりに、表面には現れない女性軽視への直面から孤独を感じることがある。全てのテック企業にとって、この問題を認め、真正面から取り組む時が来たのだ。女性に対してオープンな文化を作り、彼女たちのキャリア形成のサポートができるような採用方針を、男性も一緒になって実施していくべきだ。

これまで訪れた交流会やネットワーキングイベントのいくつかは、志を同じくする技術者の集まりというよりも、男子学生の社交クラブのように感じた事もある。

 

仕事への柔軟な復帰ができるような、画期的な産休制度を提供することで、優秀な女性を社内に留めることができる。また、これによって産休からの復帰後や、キャリアか子供かの選択に迫られた女性たちのバーンアウトを抑制することもできる。更に、より女性に優しい環境づくりに向けて、意識的に女性を指導的立場に置くという努力も必要だ。様々な人がその設計に関わってこそ、全ての人にとってより良いテクノロジーが生まれるというのは言うまでもない。(テック企業の皆さん、マーケットの半分は女性ですよ!)。

VCサイクル改革の必要性

女性起業家にとって、ベンチャーキャピタルからの資金調達は頭痛の種となっており、このままでは女性が次世代のテック企業を率いていくのは難しい。ベンチャーキャピタルのパートナーのうち、わずか9.7%が女性で構成されていることを考えると、2014年に設立されたベンチャーキャピタルが出資する米国のハイテクベンチャーのうち、わずか8.3%にしか女性CEOがいないというPitchBookの調査結果も不思議ではない。

民間VCの出資プロセスにおける男性優位の構図は、様々な話題が飛び交うテック業界でもあまり話されることのないトピックの一つだ。男性のベンチャー投資家は、男性主導のスタートアップに投資し、その取締役に名を連ねる。更には、投資を受けたスタートアップが、男性主導の一大テック企業へと成長していくのだ。男性優位のテック企業の悪循環を断ち切るためには、この男性優位のVCサイクルにも目を向ける必要がある。女性を加入させることで、VCは人口の残り半分に役立つよう投資先を多様化することができるのだ。

若者をターゲットに

人材のパイプラインにより多くの、才能ある若い女性を送りこむことが我々には必要であり、そうすることで業界に対して長期的かつ大きな影響を与えるチャンスが生まれる。Girls Who Codeによれば、女子中学生のうち74%がSTEM科目への興味を示しているにも関わらず、大学での専攻を決める際、コンピュータサイエンスを選択する女子高校生の数は0.4%しかいない。では、なぜこの変化が中学校と高校の間に始まるのだろうか?その答えの一部は、中等教育におけるテクノロジーという選択肢の欠如のほか、女生徒が持つ理数工系分野へのイメージの問題に起因する。

我々は、女生徒に対して科学や数学等の分野で活躍する女性のロールモデルを提示するとともに、テクノロジーに関する様々な実地体験をさせることで、科学や数学が男性向けの分野だというイメージを払拭しなければなならないのだ。Girls Who CodeやTechGirlzといった素晴らしい組織は、既に上記の問題に対しての取り組みを行っており、将来のテック企業はその利益を享受することができる。

STEM教育は、女性に活躍の場を準備するためだけの手段として必要なわけではない。拡大を続ける労働力の需要に対して、単純に男性だけでは数が足りないのだ。米国労働省は、2020年までにコンピュータ技術者の求人数が140万件に及ぶと予測しているが、現状を変えない限り、その頃には米国内の大学の卒業生でこれらの求人に適う人の数は、求人数の29%にしかならないだろう。

私からの簡単なアドバイスは、部屋の中に誰がいて、そのうち何人が女性かということに気づきはじめるということだ。まずは、今自分のいる職場から観察し始めるのも良いだろう。テクノロジーは、我々の職場を多様化するために重要な役割を担っている。

最近、私があるイベントで目にしたKapor Cpitalの取り組みは良い例だ。そのイベント内でKapor Capitalは、アーリーステージのベンチャー企業数社を紹介しており、彼らは、人材開発や人事管理、生産性向上のプロセスにおける一部に改革を起こすことで、テクノロジーをテコに、大規模な人事面でのバイアス軽減に取り組んでいた。そこでは、求人から面接、業務割当、人事評価、昇進、報酬、苦情処理、トレーニング等のプロセス全てについての議論がなされていたのだ。このような考え方に沿った形で、企業は女性参画に向けた数値目標を掲げ始めており、これによって我々も本当に変化が起きているのかというのを測定し、確認することができるようになる。

テック業界における女性の必要性は上記のとおりだが、問題は各企業が女性獲得に必要な改革に取り組む気があるかということだ。変化の波は、徐々に確実に押し寄せている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake 500px

 

運送業向けサービス開発のhacobuが業務・運行管理クラウドを提供——7月にはデジタコも販売

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「コネクテッドカー」なんてキーワードがこの1、2年で広がったが、内蔵するセンサーや外付けのIoT機器で車のデータを取得し、そのデータをクラウド上にアップするなどしてさまざまな用途に利用するという動きが進んできている。コンシューマー向けの動きであれば、以前に紹介したSmartDriveの車両診断デバイスだってその1つの事例だろう。

ではビジネス向けの動きはどうだろうかというと、運送業向けのクラウドサービスやIoT機器を開発するHacobuがおもしろいプロダクトを手がけている。同社は4月14日、運送業支援向けのクラウドシステム「MOVO クラウド」およびスマートフォンアプリ「MOVO App」の提供を開始した。

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MOVO クラウドは、運送業(ここで指すのは事業用貨物自動車、つまり緑色地に白文字のナンバープレートを付けた事業用自動車による運送業務)向けの業務・運行管理システムをクラウド化したもの。利用は無料。運送業の多くは、案件ごとに「どこからどこまで、何時間で運送したか」「何時間で何キロ走ったか」などをドライバーが紙で申請し、管理者が100万円近い業務パッケージを利用して入力・運賃などを計算する…というのがまだ主流だそう。MOVO クラウドは案件の入力から請求書発行まで、つまり紙と業務パッケージで行っていた機能をクラウドサービスで提供することで、手入力の作業を大幅に削減するという。

hacobu代表取締役の佐々木太郎氏

hacobu代表取締役の佐々木太郎氏

またMOVO Appでは、スマートフォンのGPSなどを活用し、リアルタイムな位置情報や走行状況を取得。さらに荷積み・荷下ろしといったステータスの管理などを行う。アプリとクラウドサービスは連携しており、アプリのログをもとにして、クラウド上にドライバーの日報が自動生成される。アプリは月額960円だが、当面は無料で提供する。

さらにhacobuでは、7月をめどにしてクラウドサービスと連携するデジタルタコグラフ(デジタコ:車載の運行記録計。走行の速度や時間を記録し、外部メモリに保存する)「MOVO Hub」を提供する予定だ。

国土交通省は交通事故削減の観点から事業用貨物自動車へのデジタコ導入を進めており、2015年4月以降、総重量7トン以上の新車に対しての導入が義務化された(以前は総重量8トン以上)。また2017年4月以降、対象範囲はさらに広がる予定だ。

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MOVO Hub

このデジタコ導入、運送業者にとっては悩みの種になっているのだという。まず端末自体が、オプションや取り付け費用込みで10万〜20万円代(端末が5〜6万円でも、解析用のソフトが数十万円なんてことになるものもある)と高価なこと、また一部の端末はMOVOシリーズのようにクラウド対応しているものの、多くの端末はSDカードなど外部メモリにデータを保存しており、手動で業務システムに連携する必要があることなどがあり、導入のハードルは高い。これに対してMOVO Hubは3万円程度の価格で提供する予定だという。さらに、安価かつ通信機能のついた温度センサーも将来的に提供していく予定だという。

hacobuは2015年6月の設立。代表取締役の佐々木太郎氏は外資系コンサルなどを経て、サブスクリプションECの「GLOSSYBOX(現:BLOOMBOX by @cosme)」を手がけるビューティー・トレンド・ジャパンの代表に就任。同社は2014年7月にアイスタイルが買収。佐々木氏はその後hacobuを立ち上げた。現在チームは嘱託のスタッフを含めて7人で、大手メーカーでカーナビの開発統括部長を経験したメンバーもいるという。また同社は2015年10月にベンチャーユナイテッドおよびYJキャピタル、オージス総研から合計数千万円の資金を調達している。

朝日新聞社がオウンドメディア運用支援を手がけるサムライトを買収

朝日新聞社は4月14日、サムライトの全株式を取得することで合意したことを明らかにした。買収額は非公開。

4月下旬に開催する臨時役員総会を経て創業者で取締役会長の柴田泰成氏、現在代表取締役COOを務める池戸聡氏が再任され、引き続き経営を担当する予定だ。加えて朝日新聞社からは1人取締役が派遣される。サムライトは今後社名変更などを行う予定はないという。サムライトは朝日新聞傘下で既存事業を行うほか、共同での営業・商品企画なども進める。つまり朝日新聞社がグループとして本格的にオウンドメディア分野に参入するということだ。

サムライトは2013年9月の設立。柴田氏は楽天の広告事業の出身。また池戸氏はネット広告のセプテーニの出身で、楽天時代の柴田氏の業務上のパートナーだった人物。なお柴田氏はインキュベイトファンドが開催するインキュベーションプログラム「Incubate Camp 5th」(2013年開催)で優勝。現在はインキュベイトファンドのFoF(Fund on Funds)の1つ、ソラシード・スタートアップスで投資も手がけている。

現在サムライトの社員数は50人。インターンも少なくないようだが、それも含めて(クラウドソーシングなどではない、という意味で)「内製」でのコンテンツ制作に注力することで、コンテンツの品質向上に努めているという。これまでに累計で約100社のオウンドメディアの企画や運用支援を行ってきた。その中にはサッポロビールやアデコといった大手企業も名を連ねる。

このほかネイティブ広告の企画や制作、自社開発したオウンドメディアのネイティブ広告ネットワーク「somewrite ad」をコンテンツ制作とセットで提供。支援するオウンドメディアの価値向上に努めてきた。同社はすでに単月黒字化を達成しているという。

朝日新聞社によると、両社は朝日新聞社が2015年秋に開催したプレゼンテーションイベントで出会ったという。そこから朝日新聞社の新規事業・投資部門である「朝日新聞メディアラボ」を通じて提携や買収までの道を模索した中で100%子会社として買収するに至った。

(追記:4月14日14時10分)なお複数関係者によると、買収額については非公開ではあるものの、投資サイドにもファイナンシャルなリターンのある、かつ気鋭のメディア運用支援の会社と歴史ある大手メディアが連携する非常に好い事例だという話を聞いた(金額は出せないが、スタートアップにありがちな「うまくいかなかった事業を手放す」という救済的な買収ではないということだ)。大手メディアと新興メディアの組み合わせというと、まれに文化面の違いなどで苦労するなんて話もあると聞くが、両社ははたしてどのようなシナジーを生み出していくのだろうか。

高級飲食店予約の「ポケットコンシェルジュ」、運営元が500 Startups Japanなどから資金調達——訪日外国人旅行者に照準

ポケットメニューのメンバーら。2列目中央が代表取締役社長の戸門慶氏、その右が500 Startups Japanのジェームズ・ライニー氏と澤山陽平氏

ポケットメニューのメンバーら。2列目中央が代表取締役社長の戸門慶氏、その右が500 Startups Japanのジェームズ・ライニー氏と澤山陽平氏

高級飲食店に特化した飲食店予約サービス「ポケットコンシェルジュ」。サービスを運営するポケットメニューは4月13日、アイ・マーキュリーキャピタル、アドウェイズ、マネックスベンチャーズ、アライドアーキテクツおよび500 Startups Japanが運営するファンドから資金調達を実施したことをあきらかにした。金額や出資比率は非公開だが、合計で数億円に上るという。今回の調達をもとに採用を進め、開発、営業、マーケティングを強化するとしている。ポケットメニューは2013年にフジ・スタートアップ・ベンチャーズと日本ベンチャーキャピタルから、2015年2月にLINEから資金調達を実施している。

なお今回の投資は、2015年9月に立ち上がった500 Startups Japanの投資第1号案件となる(500 Startups Japanは同時にもう1社スペイシーへの投資を実行しており、厳密にはこの2社が最初の投資案件となる)。500 Startups Japanは2月にファンドのファーストクローズ(最終的な規模は3000万ドルを予定。現在1500万ドル規模だという)を終えたばかり。今後積極的に投資を行うとしている。

ポケットメニューは2011年の創業で、2013年からポケットコンシェルジュを展開してきた。代表取締役である戸門慶氏は元料理人で飲食店のプロデュースなどを手がけてきた人物。これまでのキャリアも生かし、高級飲食店を中心に予約可能な店舗を拡大。また2014年には予約に加えて決済サービスも開始した。現在の会員数は12万人、300店舗以上を掲載している。

ポケットコンシェルジュは東京を中心に横浜、京都の店舗を掲載しているが、最近ではインバウンド、つまり訪日外国人旅行者のニーズが急増しているのだという。「訪日旅行者の予約は月次で20〜30%ずつ伸び、日本人の予約と半々というところまで伸びている。現在はFacebook広告や一部の英語メディアでの露出などをしているが、調達を契機により積極的なマーケティングを進める」(ポケットメニューCFOの小山達郎氏)という。

ちなみにポケットコンシェルジュにおける1件の予約(平均2.2人)あたりの平均単価は国内ユーザーで3万円、訪日旅行者のユーザーで6万円。僕らだって旅先ではいつも以上にいいモノを食べたいのだから単価も高くなることが多いが、一方で店舗からすれば、外国人の旅行者に対して言語の問題を感じたり、ドタキャン(直前の予約キャンセル)やノーショウ(連絡もなく、来店もしないこと)のリスクを感じたりするケースもあるそう。昨年ミシュランの2つ星を獲得した寿司屋が外国人の予約を断るという対応をしたとして賛否があったが、その背景には「旅行者のドタキャンが多い」という問題があったと言われている。ポケットコンシェルジュはコース料理の予約が中心となっていること、決済機能も提供することで、こういった店舗側の課題を解決する一助にもなっているという。

自身もポケットコンシェルジュのユーザーであるという500 Startups Japanの澤山陽平氏は「苦しい時期もあったが、現在はトラクションも非常に好調で、インバウンド需要なども増えるため、さらに伸ばせるサービス」だと語る。OpenTableのような競合サービスもあるが、ポケットコンシェルジュが掲載するのは、高級店や伝統のある店などが多く、実は参入障壁の高いサービスとも言える。こういった点でも元料理人である戸門氏、そして同社の強みがあるとしている。500 Startupsとしては、将来的には海外のパートナー紹介なども行っていく考え。

政府では2020年に訪日旅行者4000万人という目標を掲げている。ポケットメニューでは今後、彼らのニーズを満たすべく、さまざまな施策を行っていく予定だという。