死別の悲しみに暮れる家族のためのデジタルアシスタント「Empathy」が14億円調達

死は、人生において絶対に避けられない出来事であると同時に、非常に複雑で厄介な問題でもある。感情的あるいは宗教的な複雑で不安な気持ちに圧倒されるなか、多くの遺族はお金や、対処すべきさまざまな問題にも悩まされる。米国時間4月6日、Empathy(エンパシー)というスタートアップが、そうした課題に正面から取り組み、遺族の心の傷を部分的に肩代わりすることを目指して、ステルスモードから姿を現した。同社は、AIベースのプラットフォームを使い、亡くなった家族に関連して行うべき作業や手続きの取りまとめを行ってくれる(したがって、遺族による大変な事務手続きを間接的に支援できる)。

「遺族は、亡くした家族に関連するさまざまな作業に平均500時間を費やしています」と、Yonatan Bergman(ヨナタン・バーグマン)氏と同社を共同創設したCEOのRon Gura(ロン・グラ)氏は話す。「遺族を励ますためのネイティブアプリのかたちでデジタルコンパニオンを提供します」と同氏は述べ、Empathyを「家族を亡くしたばかりの遺族のためのGPS」だと説明した。

同社はイスラエルのスタートアップなのだが、VCs General CatalystとAlephが共同で主導した投資ラウンドで1300万ドル(約14億円)を調達し、まずは米国市場でローンチする。

米国では、平均して年間約300万人が亡くなっている。この数は、このところの新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で跳ね上がった。遅かれ早かれ誰もが遭遇する、ある意味最も自然で予測のつきやすい問題ではあるが、その準備を整えている人は少ない。その理由は、恐れであったり、宗教上の問題であったり、単にそうした不吉なことは考えたくないという感情によるものであったりする。皮肉なことにこの問題は、自身のためのものであれ、人に代わって提供するものであれ、それに対処すべく構築されたサービスが逆に激しく忌み嫌われるという事実によって、あまり改善されていない。

しかしスタートアップ企業にとってこれは、まさに教科書どおりの好機を意味する。

「数年間、私はこの話に取り憑かれてきました」とグラ氏はいう。同氏はバーマン氏とともにThe Gift Project(ザ・ギフト・プロジェクト)で働いていたが、この会社があるソーシャルギフトのスタートアップに買収された後は、イスラエルのeBay(イーベイ)に移った。「死は、イノベーションがまだ及んでいない最後の消費者セクターです。その原因は、技術的な問題でも、規制による障壁の問題でもありません。それは、私たちに内在する楽観主義と、死や死ぬことという避けられない事実を語りたがらない人類の本質によるものと思われます。そのため、今日では多くのセクターが取り組んでいるトランスフォーメーションに取り残された、暗黙のセクターでもあるのです」。

さらに、死は人々の心を大きく挫くため、それを商売とする企業は嫌われるという理由もあると私は推測する。

そこに手を貸そうというのがEmpathyのアプローチだ。そうした考え方の周囲に、できる限り透明なビジネスを構築しようとしている。同社は、最初の30日間は無料でサービスを提供する。それ以降は65ドル(約7100円)の料金を1度払えばずっと使えるようになる。5カ月、5年(もっと長くても)と長期に利用しても料金が上がることはない。

個人的な事情に関する詳細事項をいくつか書き込むと、人の死去にともなうさまざまな手続きや作業をステップ・バイ・ステップでガイドしてくれる。

これには、人々への告知の方法(および告知)、葬儀やその他の儀式の手配、必要な書類の入手、遺書の対応、故人の身元の保証、遺品整理、遺言検認の手配、福祉手当や銀行口座や請求書やその他の資産や税金に関連する決済、また必要ならば遺族のカウンセリングの手配など、まず早急にやらなければならないことも含まれる。多くの人は、気持ちが動転しているばかりでなく、このような手続きを行った経験を持たないため、すでに感情の位置エネルギーによるローラーコースターに乗っている人間がこれだけのことを熟すには、非現実的なカーブを描く学習曲線に立ち向かわなければならない。

Empathyの考え方は、一部にはユーザー自身で対処しなければならないものもあるが、プラットフォームが「デジタルアシスタント」の役割を果たして、次にするべきことを促し、それを乗り切るためのガイダンスを提供するというものだ。他の業者を紹介したり、他のサービスを宣伝したりすることはなく、今後そうする予定もない。プラットフォームにもたらされる個人データは、やるべきことを済ませるための作業の外では、一切使われないとグラ氏は話している。

Empathyは、この分野に興味を持ち、この分野に挑戦して少しずつ成長を見せているスタートアップの一団の中では、先発ではなく後発となる。同社の他には、自分で遺書を書きたい人を支援する英国のFarewill(フェアウィル)、死とその準備に関する話し合いを促すLantern(ランタン)、遺産計画のスタートアップTrust & Will(トラスト・アンド・ウィル)などがある。競争は起きるだろうが、少なくとも現段階では、これらのテクノロジーが、人生で最も難しいこの分野で役に立つことを示すものとなるだろう。

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「終末期業界は、他のあらゆる業界ではすでに起きているデジタルトランスフォーメーションが、未だに手をつけていない大きなセクターです」と、General Catalystの共同創設者で業務執行取締役のJoel Cutler(ジョエル・カトラー)氏は声明で述べている。「Empathyは、死別にともなう悲しみと複雑な事務処理の両面に対処する点がユニークです。このテクノロジーとエクスペリエンスは、すべての家族に恩恵をもたらすと私たちは確信します」。

「Empathyのスタッフは、消費者向けソフトウェアでの幅広い経験を駆使して、死にともなう膨大な負荷の対処方法を大幅に改善しています」と、Alephのパートナーであり共同創設者のMichael Eisenberg(マイケル・アイゼンバーグ)氏はいう。「悲しみに暮れる遺族に、数々の作業や事務手続きに対処する余裕などありません。金融テクノロジーと同情心を組み合わせることで、Empathyは、思いやりを柱とした近親者のための製品を構築しました」。

長期的には、このプロセスの別の面にもEmpathyで挑戦したいとグラ氏は話す。それは例えば愛する人が亡くなる前に物事を整えておくサービスだ。さらには、同様に事後に膨大な処理作業を残す離婚など、その他の問題にも同氏は目を向けている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Empathy資金調達DXイスラエルお葬式遺言資産管理終活プラットフォーム

画像クレジット:Dilettantiquity Flickr under a CC BY-SA 2.0 icense

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:金井哲夫)

インドのハイエンド層にフォーカスしたクレジットカードを提供するCREDが新規ラウンドで評価額2415億円に

創業2年のCRED(クレド)は評価額が20億ドル(約2195億円)を超える最も若いインドのスタートアップになった。

バンガロール拠点のCREDは現地時間4月6日、新規ラウンドのシリーズDで2億1500万ドル(約236億円)を調達し、ポストマネーの評価額は22億ドル(約2415億円)だと発表した。2021年1月に8100万ドル(約89億円)を調達したシリーズC時の評価額は約8億ドル(約878億円)だった。

新規投資家のFalcon Edge Capitalと既存投資家のCoatue Managementが新規ラウンドをリードした。Insight Partners、そして既存投資家のDST Global、RTP Global、Tiger Global、Greenoaks Capital、Dragoneer Investment Group、Sofinaも本ラウンドに参加し、CREDの累計調達額は4億4300万ドル(約486億円)となった。

TechCrunchは2021年3月、CREDが評価額20億ドルほどで約2億ドル(約219億円)を調達する交渉がかなり進んでいると報じた

CREDはクレジットカードの請求を期日までに支払う顧客にリワードを与え、クレジットや高級ブランド製品を集めたプレミアムカタログのようなさまざななサービスへのアクセスを提供するアプリを運営している。

クレジットスコアが少なくとも750以上の個人がCREDに申し込むことができる。ハードルを高く設定することで、人々が財務に関する行動を改善するよう動機付けされるようにしている、と同社は話す。

CREDは現在、顧客600万人超にサービスを提供しており、この数字は世界で2番目に大きいインターネットマーケットであるインドのクレジットカード保有者の22%にあたる。プレミアムなクレジットカード所有者に限ると全体の35%を占める。

CREDの創業者でCEOのKunal Shah(クナル・シャー)氏はTechCrunchとのインタビューで、インドの裕福な顧客のためのプラットフォームとなり、商品を金融サービス以外にも広げるつもりだと語った。

例えば前述のeコマースサービスが急成長してきた、とシャー氏は話した。そして、これまでの成功は顧客がCREDでアイテムのキュレーションを楽しみ、小売業者はCREDでの各取引の規模が大きくなる傾向にあるためにCREDを魅力的なプラットフォームととらえているからだとの考えを示した。

新たに調達した資金は、いくつかの売上チャンネルの拡大と、より多くの実験を行うのに使う計画だと同氏は話した。

いつの日かインドの全クレジットカードユーザーにサービスを提供したいかと尋ねると、一部の部門ではCREDはサービスを提供できないが、より多くのユーザーが将来クレジットスコアを改善することについては楽観的だと同氏は述べた。

インドの同業他社と異なり、CREDは普通のTAM(獲得可能な最大市場規模)、すなわち世界で2番目に人口が多いインドの数億ものユーザーにフォーカスしていない。その代わり、最もプレミアムなユーザーの一部に応じている。

インドのフィンテック企業にとっての消費者セグメンテーションと獲得可能な最大市場規模(BofA Research)

「インドで発行されているクレジットカードは5700万枚で(デビットカードは8億3000万枚)、主にハイエンドマーケット向けです。クレジットカード産業はトップ銀行4行(HDFC、SBI、ICICI、Axis)に集中しており、そうした銀行が全マーケットの70%を握っています。SBI CardsのIPOからわかるように、この分野はこうした銀行にとってかなり利益率が高いものとなっています」とBank of Americaのアナリストは顧客向けの最新レポートに書いた。

「CREDのような極めて少ないスタートアップがこのハイエンド層にフォーカスし、プラットフォームベースのアプローチ(顧客をまず獲得し、後に収益化を探る)を取っています。インドではクレジットカードは依然として憧れのプロダクトです。まだ浸透していないことは、今後引き続き力強く成長することを約束しています。今後、その形態は進化するでしょうが(たとえばプラスティックカードからバーチャルカードに移行するなど)、クレジットカードに対する需要は成長することが見込まれます」と付け加えた。

CREDはインドで最も話題の企業の1社になった。部分的にはこれは、資金調達のペース、大きくなるばかりの評価額、そして選ばれた顧客のみに対応しているという事実のためだ。

一部のユーザーはCREDが1年前ほど魅力的な特典を提供していないと指摘した。

インドで最も儲けているエンジェル投資家の1人で、以前経営していたベンチャーがインドにおいて稀なエグジットの1つとなったシャー氏は、CREDがすでにこうした懸念を解決していると話した。例えば顧客がCREDポイントを1000超の販売業者で使えるようにしている新機能はリワードをより魅力的なものにしたと述べ、CREDが徐々にこの機能を自社のeコマース店舗に組み込んでいるとも付け加えた。

「こうしたポイントは資産であり負債ではないことに顧客が気づくのに、そう時間はかからないでしょう。顧客は多くの場所でポイントのメリットを目にし始めるはずです」とシャー氏は述べ、さらにはパンデミックによりCREDが計画していたものの一部が妨げられたことにも言及した。

2021年1月に従業員から120万ドル(約1億3200万円)分の株を買い戻したCREDは4月6日の従業員への電子メールの中で、500万ドル(約5億4900万円)分の株を間もなく買い取ると伝えた。「資金調達はCREDが未来に投資するのをサポートし、株の買い戻しがみなさんの未来への投資をサポートすることを願っています」と電子メールにはある。

カテゴリー:フィンテック
タグ:CRED資金調達クレジットカードインド

画像クレジット:Manish Singh / TechCrunch

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

MessengerやWhatsAppに「会話型コマース」を導入するCharlesが8.3億円のシード資金を調達

WhatsApp(ワッツアップ)などのチャットアプリで製品を販売したい企業向けに「会話型コマース」のSaaSを提供するベルリンのスタートアップCharlesが640万ユーロ(約8億3000万円)の資金を調達した。

AccelとHV Capitalが主導した今回のシード資金は、同社の会話型コマースプラットフォームの規模拡大と既存の需要に対応するために使用される。

共同創業者のArtjem Weissbeck(アートジェム・ヴァイスベック)氏とAndreas Tussing(アンドレアス・タッシング)氏がWhatsApp内でストアを運営する実験を1年間行った後、2020年に立ち上げたCharlesは、企業がWhatsAppやその他のチャットアプリで商品やサービスを販売するのを可能にし、「コンバージョン率、顧客ロイヤルティそして最終的には収益を向上させる」ことを目的としている。

このSaaSは、WhatsAppやMessenger(メッセンジャー)などのチャットアプリのAPIと、Shopify(ショッピファイ)、SAP、HubSpot(ハブスポット)などのショップ / CRMシステムを接続し、ユーザーフレンドリーなインターフェイスで提供するものだ。これにより企業は、潜在顧客がすでに利用しているチャネルで顧客とより容易に出会うことができ、販売に関する問い合わせやサポートと、実際のコンバージョンとの間のギャップを埋めることができる。

「『トラフィック』とそれにともなう『コンバージョン』は、ストリート(小売店舗)やブラウザ / ネイティブアプリからチャットアプリへと急激に移行していくでしょう」とヴァイスベック氏は語る。「会話型コマースはコマースの第3の柱となり、すべてのチャネルを結びつけ、電話番号で顧客を識別することで、パーソナライゼーションの可能性を最大限に引き出すことができるようになるでしょう」。

この移行は、カスタマージャーニーの設計や、(アジアは別として)これまでのウェブショップや電子メールを中心とした技術スタックの観点から、企業に「大きなチャレンジとチャンス」をもたらすと同氏は主張する。

「究極的に当社の技術は、企業がこのチャレンジを克服するためのOSを提供します」とタッシング氏は付け加えた。「当社のソフトウェアのコアは、チャットアプリとショップ / CRMバックエンドを直感的なインターフェースで統合し、人間のチャット販売エージェントを中心に据えて、チャットボットとAIでサポートします」。

AccelのパートナーであるLuca Bocchio(ルカ・ボッキオ)氏は、会話型コマースが「ブランドにとって重要なチャネル」として台頭してきており、ブランドが顧客と接する方法を再構築するトレンドであると述べている。「これは、カテゴリーを定義する新たなツールが登場する可能性を示唆しています」と同氏は語り、Charlesがそのようなツールの1つになる可能性を秘めていると指摘した。

直接の競合相手を尋ねるとヴァイスベック氏は、「潜在的な顧客と話をすると、追加チャネルとしてチャットアプリを取り入れ始めているZendesk(ゼンデスク)のような既存のカスタマーサービスツールを使っていることがほとんどです」と答えた。「これらのツールは通常、『チケット発行(ticketing)』ロジックに基づいて構築されており、顧客からの問い合わせ(チケット)を可能な限り迅速に解決するよう最適化されていて、セールスにフォーカスしたものではありません」。

これに対し、Charlesは「フィード(feed)」ロジックで構築されており、顧客との対話を継続的な会話やエンド・ツー・エンドの関係として、顧客が見ているのと同じように表示することができるという。

「さらに、ショップ / CRMバックエンドと深く統合し、エージェントが商品を販売したり、カートや契約書を作成することを容易にしています。これらはすべて、非常にデザイン性に優れた直感的なインターフェースで、エージェントが楽しく使え、中心にいるようにしています」とタッシング氏はいう。「(エージェントは)チャットボットにサポートされていますが、置き換えられてはいません」。

一方、収益モデルはシンプルなものだ。企業はCharlesの固定費をカバーするために月額の基本料金を支払い、その上にコンバージョンが発生した場合に同社は収益を得る。「当社は売上高のわずかなシェアを受け取ることで、共同のインセンティブがあるように保証しています」とヴァイスベック氏は説明してくれた。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Charles資金調達ベルリン会話型コマース

画像クレジット:Charles

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Aya Nakazato)

シンガポール拠点のキャリアプラットフォームGlintsがシリーズCで約24億円を調達

シンガポールを拠点とするキャリアプラットフォームのGlintsは米国時間4月6日、日本の人事管理会社であるPERSOL HoldingsがリードするシリーズCラウンドで2250万ドル(約24億円)を調達したと発表した。今回調達した資金はGlintsのシンガポール、インドネシア、ベトナム、台湾における事業拡大と、同社の製品およびエンジニアリングチームの雇用に充てられる。

Glintの共同創業者でCEOのOswald Yeo(オズワルド・ヨウ)氏によると、今回の資金調達は東南アジアの人材プラットフォームとしてはこれまでで最大規模のものであり、同社の調達総額は3300万ドル(約36億円)に達したと述べている。その他の参加者には以前から投資しているMonk’s Hill Ventures、Fresco Capital、Mindworks Ventures、Wavemaker Partners、Flipkartの共同創業者であるBinny Bansal(ビニー・バンサル)氏、元Goldman Sachs TMT Chinaのトップでパートナーを務めるXiaoyin Zhang(シャウエン・ジャン)氏などがいる。

2013年に設立されたGlintsは150万人以上のプロフェッショナルとGojek、Tokopedia、Starbucks、Mediacorpを含む3万の組織で利用されている。ヨウ氏によると、現在のユーザーの大部分はテクノロジーと金融サービスの分野からのものだが、Glintsは 「若手から中堅までの専門家を幅広く対象としており、長期的な目標は分野にとらわれないことだ」 と述べている。

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LinkedIn、JobStreet、CakeResumeといった他の求人プラットフォームとGlintsとの違いは、キャリアアップを望む人たちのために 「フルスタック」 のサービスを構築していることだ。同社によると毎月7000件以上のリスティングがあり、400万人の訪問者があるジョブマーケットプレイスに加えて、Glintはコミュニティ機能やオンラインクラスなどのスキル教育も提供している。

Glintのバリュープロポジションの1つは企業、特にテクノロジー企業が地域の人材不足に対処するのを支援することだ。このテーマは最近、Monk’s Hill Venturesの総合レポートでも取り上げられた。

このレポートでは、シンガポールなど特定の市場での人材不足に対応するため、東南アジアの異なる国に拠点を置くチームを採用するというソリューションを紹介している。Glintsによると、同社の国境を越えたリモートワークハブであるTalentHubはパンデミックの影響もあり、雇用主がリモートでの雇用に前向きになったため、2020年には事業を倍増させたという。

カテゴリー:HRテック
タグ:Glints資金調達シンガポール

画像クレジット:Glints

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(文:Catherine Shu、翻訳:塚本直樹 / Twitter

とにかく時間がかかるAIモデルの構築とトレーニング、展開をサポートする台湾のMLOpsの「InfuseAI」が約4.7億円調達

AIモデルの構築とトレーニングには時間がかかり、さらに組織のワークフローへの展開にも時間がかかる。ここにMLOps(Machine Learning Operations、機械学習オペレーション)の企業が参入し、AIテクノロジーをスケールする顧客を支援するチャンスがある。米国時間4月5日、台湾を拠点とするMLOpsスタートアップのInfuseAIがシリーズAで430万ドル(約4億7000万円)を調達したと発表した。このラウンドを主導したのはODMメーカーのWistron Corporationで、Hive Ventures、Top Taiwan Venture Capital Group、Silicon Valley Taiwan Investmentsが参加した。

InfuseAIは2018年に創業した。同社によれば台湾でのMLOpsソリューションの市場規模は年間3000万ドル(約33億円)で、調査会社のCognilyticaは2025年までにグローバルでおよそ40億ドル(約4400億円)の市場に成長すると予測している。InfuseAIの顧客には台湾最大クラスの銀行であるE.SUN(玉山銀行)やSinoPac Holdings、Chimeiなどがある。

InfuseAIは機械学習モデルのトレーニング環境、クラウドまたはオンプレミスのクラスタコンピューティング(Kubernetesのコンテナオーケストレーションなど)、チーム向けコラボレーションツールを含むプラットフォームであるPrimeHubというターンキーソリューションで、モデルの展開と管理を支援する。もう1つ別のプロダクトとして、AIモデルのトレーニング、展開、アップデート、監視ができるPrimeHub Deployがある。

Hive Venturesの創業者でマネージングパートナーのYan Lee(ヤン・リー)氏は報道発表で「製造業、ヘルスケア、金融などの企業がAIのオペレーションやモデルの展開をスケールしたいと考える中で、開発者とデータサイエンティストがシームレスにコラボレーションできるInfuseAIのようなプラットフォームが求められています。InfuseAIは、企業の採用サイクルの中で使われるプラットフォームとソフトウェアに力を入れるという我々の投資の方針にぴったりと一致しています」と述べた。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:InfuseAI資金調達機械学習台湾MLOps

画像クレジット: shulz / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

在宅・被災地などの医療現場でリアルタイム検査が可能な免疫センサー機器を開発するイムノセンスが1.3億円調達

在宅・被災地などの医療現場でリアルタイム検査が可能な免疫センサー機器を開発するイムノセンスが1.3億円調達

大阪大学発スタートアップ「イムノセンス」は4月5日、総額1億3000万円の資金調達を発表した。引受先はOUVC1号投資事業有限責任組合(大阪大学ベンチャーキャピタル。OUVC1号ファンド)、メハーゲングループ。

イムノセンスでは、2018年1月の創業以来、OUVCから調達した資金を活用して研究開発を進めた結果、同社が手がける免疫センサーの量産設計と上市に向けた薬事体制の構築が完了した。今回の調達資金により、医療機器(体外診断用医薬品)としての上市に向けた取り組みを一層加速する。

イムノセンスは、大阪大学産業科学研究所特任教授 民谷栄一氏が開発した「GLEIA法」という免疫反応と電気化学反応を組み合わせた独自の免疫測定技術を活用し、POCT(Point of care testing)向け免疫センサーデバイスの開発に取り組むスタートアップ企業。POCTとは、診療所・在宅・遠隔地・災害現場など様々な医療現場で行われるリアルタイム検査の総称という。

同社の開発する免疫センサーは、心不全や塞栓症など様々な疾患を迅速診断するための免疫検査デバイス。血糖値計のように一滴の血液から疾病マーカーを測定し、数分で検査が完了することから診療所などでの迅速診断に活用可能で、既存測定装置と比較して、小型・低価格・高感度という強みを有しているそうだ。

試作機では、手のひらサイズの測定器と使い捨て小型センサーを組み合わせ、大型の測定機器と同等の高感度であることが検証できているという。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:イムノセンス(企業)医療(用語)大阪大学(組織)血液検査(用語)資金調達(用語)ヘルスケア(用語)日本(国・地域)

「まごチャンネル」のチカクが5億円を調達、新サービス開発および事業提携を加速

「まごチャンネル」のチカクが5億円を新規調達、新サービス開発および事業提携を加速

スマホアプリで撮影した動画・写真を実家のテレビに直接送信できる「まごチャンネル」を手がけるチカクは4月6日、第三者割当増資および金融機関からの融資を受け、5億円を新規調達したと発表した。引受先は、ABCドリームベンチャーズ(朝日放送グループホールディングスCVC)、山口キャピタル(山口銀行CVC)、Aflac Ventures(アフラック・イノベーション・パートナーズ合同会社の支援による資本参画) 、既存株主のGMO VenturePartners、SMBCベンチャーキャピタル。累計調達額は約15億円となった。

調達した資金により、新サービス開発および事業提携の加速、採用・組織体制の強化を図る。

チカクは「シニア・ファースト」を掲げ、高齢者DXを推進するエイジテック企業。スマートフォンアプリで撮影した動画や写真を直接送信し、実家などテレビで視聴できるIoTデバイス「まごチャンネル」を展開している。コロナ禍において帰省が難しい中、50代から100歳を超える方まで支持され、この1年で3倍以上の成長を達成したという。

また、まごチャンネルを通じて培った高齢者へのデジタルサービスを届けるUI/UXの開発力、市場開拓力が評価され、セコムと新たな見守りサービス「まごチャンネル with SECOM」を開発。大阪府泉大津市や北海道小清水町など複数の自治体と新たなICT基盤の実証実験などを行っている。

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カテゴリー:IoT
タグ:資金調達(用語)チカク(企業)まごチャンネル(製品・サービス)日本(国・地域)

医療ICTのアルムが約56億円をシリーズA調達、コロナ禍拡大に対応するソリューション開発・研究開発に投資

医療ICTのアルムが約56億円をシリーズA調達、コロナ禍拡大に対応するソリューション開発・研究開発に投資

医療ICTベンチャーのアルムは4月5日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額約56億円の資金調達を完了したと発表した。引受先は、SOMPOホールディングス、三井物産、エーザイ、ロイヤル フィリップス、エヌアイデイ、CYBERDYNE、フィナンシャル・エージェンシー、ミクシィ、キャピタルメディカ、ベクトル、SBIインベストメント、Bonds Investment Group、みずほキャピタル、Asia Africa Investment and Consultingおよび個人株主。

調達した資金は、国内外における事業の拡大と成長に活用する。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に対応するためのソリューション開発を含む研究開発投資を積極的に実施することで、医療・ヘルスケア業界のニーズに素早く応え、急速に変革する社会にさらに貢献する。

アルムは、2021年について、東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う人の移動の増加により、新型コロナウイルス感染症の拡大が課題となる中で、ワクチン接種の開始をはじめとする「新型コロナウイルス感染症の制御が本格化する年」と捉えているという。

そこで、地域包括ケア推進ソリューション「Team」および救命・健康サポートアプリ「MySOS」を連携させた、自宅・宿泊施設療養者向けモニタリングシステムや、PCR検査の結果がいち早く届くサービスを強化し、より一層の安全・安心の提供や経済活動の両立を目指したソリューションの開発・提供を推進するとしている。

また、医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join」のネットワークを活用した治験サポートサービスの強化や、手術映像等を院外へ配信するストリーミングサービスを活用した教育・医療サポートサービスなどの新しい価値創造を加速。Joinのプラットフォーム化を強化し、医療AIサービスとの連携を強め、医療現場の働き方改革に貢献する。

さらに、医療データを活用した新型保険商品の開発など、新たな収益構造を構築するとしている。

Joinは、医療関係者がセキュアな環境でコミュニケーションをとれるアプリ。標準搭載のDICOMビューワーにより医用画像を閲覧、チャットに共有可能。夜間休日などに院外にいる医師へのコンサルテーションツールとしての活用や、救急患者の転院の際の病院間連携・情報共有などに利用できるという。日本で初めて保険収載されたプログラム医療機器(販売名は汎用画像診断装置用プログラム「Join」)。

Teamは、医療・介護サービスをシームレスにつなぎ、地域包括ケアシステムの推進をサポートするソリューション。介護事業所向けアプリ「Kaigo」や看護事業所向けアプリ「Kango」で記録した業務内容などを多職種間で情報共有・連携が可能。

MySOSは、患者自身や家族の健康・医療記録を行い、救急時などのいざという時にスムーズな対応をサポートするアプリ。健康診断結果やMRI・CTなどの医用画像をスマホで確認可能。PHR(Personal Health Record)としても活用でき日々の健康管理に役立てられる。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:アルム(企業)医療(用語)介護(用語)資金調達(用語)新型コロナウイルス(用語)ワクチン(用語)日本(国・地域)

インドのソーシャルコマースMeeshoが新たに330.3億円の資金を調達、評価額は約2312億円に

インドのソーシャルコマース系スタートアップMeeshoはインド時間4月5日「すべてのスモールビジネスがオンラインで成功できるようにする単一のエコシステム」になることを目指して、SoftBank Vision Fund 2(SVF2、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)が主導する新たな資金調達ラウンドで3億ドル(約330億3000万円)を調達したと発表した。

この新しいシリーズEラウンドにより、設立5年目の同スタートアップの評価額は21億ドル(約2312億円)となり、2019年に行われたシリーズD時点での約6億ドル~7億ドル(約661億円〜771億円)から上昇した。これまでに総額約4億9000万ドル(約539億5000万円)を調達している同社は、既存投資家であるFacebook(フェイスブック)、Prosus Ventures、Shunwei Capital、Venture Highway、Knollwood Investmentも新ラウンドに参加したと述べている。

今回の出資はShunwei Capitalにとって、約1年ぶりのインドのスタートアップへの投資となるようだ。インド政府は2020年、中国の投資家がインド企業に出資する際に、当局の承認を必要とする規則を導入した。

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バンガロールを拠点とするMeeshoは、WhatsApp、Facebook、Instagram(インスタグラム)などのソーシャルメディアプラットフォーム上で売り手と顧客をつなぐ、同名のオンラインマーケットプレイスを運営している。同社の提供するサービスには、注文管理、物流管理、オンライン決済、ショップのリアルタイム更新、顧客にサブスクライブしてもらうためのシステムなどが含まれる。

同社はインドの約5千市町村に広がる、女性を中心とした1300万人以上の起業家と、10万以上のサプライヤーからなるネットワークを有しており、主に食料品、アパレル、家電、電子機器などを取り扱っているという。

Meeshoのミッションを短い言葉で表現するとすれば「女性の経済的自立」です。

ですから、@meeshoappがGoogle Indiaの女性デーにPlay Storeでフィーチャーされ、今度は独立記念日にスポットライトを浴びるのはふさわしいことだと思います。

大規模な真のインパクトが認められたのです! pic.twitter.com/jcFz2ZOrDA
– スダンシュ・シェカール (@sdhskr) 2019年8月10日

Meeshoはこの新たな資本を、国内で1億人いる個人事業主や中小企業のオンライン販売を支援するために投入するとのこと。Meeshoの共同設立者兼CEOであるVidit Aatrey(ヴィディット・アートレイ)氏は、声明の中で「この1年間で、オンラインでのビジネス展開を目指す中小企業や起業家が非常に増えました」と述べている。

インド政府が数カ月間のロックダウンを余儀なくされたパンデミックの中で、Meeshoは誰もがゼロ投資でオンラインの食料品店を始めることができる製品「Farmiso」をローンチした。アートレイ氏は5日に、FarmisoはMeeshoで最も急成長している事業に浮上したと述べている(パンデミック以前、Meeshoは東南アジアでの展開も始めていたが、ここ数カ月はその取り組みを縮小している)。

SVF2を運営するソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズのパートナーであるSumer Juneja(スマー・ジューンジャ)氏は、声明でこう述べた。「当社は過去18カ月間にわたりMeeshoを注意深く追跡してきましたが、その成長、日々のエンゲージメント指標、ユニットエコノミクスへの注力、そして強力なチームを作る能力を高く評価しています。Meeshoは、中小規模のサプライヤーやソーシャルリセラーがインドのeコマース革命に加わるための効率的なプラットフォームを提供し、彼らが消費者にパーソナライズされた体験を提供するのに役立つと考えています」。

UBSのアナリストは最近のレポートの中で、ソーシャルコマースやB2Bマーケットプレイスが、インドにおいてはAmazon(アマゾン)やFlipkart(フリップカート)などのeコマース企業に対する潜在的な競争要因であると指摘している。

画像クレジット:Meesho

ソーシャルコマースは、AmazonやFlipkartが何十億ドル(何千億円)も投じたにもかかわらず、インドではなかなか浸透しなかった近代的なeコマースに対抗するための有力な賭けの1つだ。もう1つの賭けは、インドの何万もの町や都市、村に点在する、ソーシャルな要素をあまり含まない近隣店舗のデジタル化だ。世界的な大企業であるFacebookとGoogle(グーグル)は、これら両方の馬に賭けている

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ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズのマネージングパートナーであるMunish Varma(ムニッシュ・ヴァルマ)氏は、声明の中で次のように述べた。「ソフトバンクは、世界各地の市場に独自のソリューションを提供するファウンダーを支援してきました。MeeshoはAIと機械学習の力を利用して、多くの中小企業オーナーが次世代ネットユーザーに販売するためのプラットフォームを構築しました。当社は、この旅の一部になれることを楽しみにしています」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:MeeshoインドSoftBank Vision Fund資金調達ソーシャルコマースeコマース

画像クレジット:Meesho

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

社員のアクセスリクエストの審査を自動化するConductorOneがシードで5.5億円調達

Alex Bovee(アレックス・ボビー)氏とPaul Querna(ポール・ケルナ)氏は、これまでの経験からSaaSアプリケーションとクラウドインフラストラクチャーの利用が爆発的に普及しているものの、従業員にそれらの利用を許可するプロセスが遅れていることに気づいた。

2人はアイデンティティ管理のOktaでプロダクトを担当し、ゼロトラストの戦略を率先していたため、体験的にその問題をよく知っていた。ゼロトラストとは、企業の外部だけでなく内部も、これまでのように惰性的に信用してはいけない、システムのアクセスを認める前には、相手が誰でも検査が必要である、というセキュリティのコンセプトだ。

ボビー氏とケルナ氏は、ゼロトラスト戦略を採用する企業は増えているが、そこに特権の管理がないことに気づいていた。そしてそのために、従業員のアプリケーションへのアクセスを認める手続きが遅れたり、従業員に最初から特権を与え過ぎたりしていた。

2020年夏、ボビー氏はOktaを辞めてVC企業Accelの初めての仮想的社員起業家になった。彼とAccelのパートナーであるPing Li(ピン・リー)氏は、クラウドアプリケーションのユーザーへの特権の許可を、もっと迅速かつ安全に認める方法が必要だ、という考えで意見が一致した。

リー氏は当時のことを「実際にはそれは、一種の偶然でした。2人ともこの問題に目をつけていたし、私は相談相手を求めていました。そして、アレックス(・ボビー)こそが求めていたエキスパートだとわかったのです」と回想する。

そのときボビー氏はリー氏に、実はこの問題を解決するために会社を作ることを考えている、と述べた。そして、リー氏もそうだった。それから数カ月後にケルナ氏がOktaを辞めて、ボビー氏の起業に参加した。そして米国時間4月5日、ConductorOneはAccelがリードしFuel CapitalとFathom CapitalとActive Capitalが参加したシードラウンドで500万ドル(約5億5000万円)を調達したことを発表した。

ConductorOneはこの新たな資本を、同社が「世界で初めてのアイデンティティオーケストレーションと自動化のためのプラットフォーム」と呼ぶものの構築に用いる計画だ。その目標は、ITとアイデンティティの管理者が、最小特権の許可を維持しながら、従業員にクラウドアプリケーションとインフラストラクチャーへのアクセスを認める処理を、自動化して実行できることだ。

「この問題が難しいのは、こちらにアイデンティティがあり、向こうに従業員や契約社員がいて、さらにもう1つの側にはすべてのSaaSのインフラストラクチャーがあり、その役割とパーミッション、それらのインフラストラクチャー置かれているさまざまな状況の中で何ができるのか、ということに関してはほとんど無限の組み合わせがあることだ」とボビー氏はいう。

企業には、大小を問わず、アプリケーションとインフラストラクチャのプロバイダーが往々にして何百もいる。ITのヘルプデスクの問いの20%以上がアクセスリクエストであることも、特別なことではない。ボビー氏によると、社員たちはSalesforceやAWS、GitHubなどなどへの緊急のアクセスを求めている。しかし、それぞれのリクエストは手作業で審査して、その社員たちに正しいレベルのパーミッションがあるか確認しなければならない。

「しかし、そのアクセスが取り消されることは絶対にない。実際に使われないアクセスであってもです。認証をオーケストレーションして自動化する中央的な層がない限り、パーミッションや職掌や在籍の有無などのすべてを処理することは不可能ですし、ましてや監査やアナリティクスなど無理です」とボビー氏はいう。

ConductorOneは「世界で最良のアクセスリクエスト体験」を、自動化を鍵として実現しようとしている。

「特権の管理とガバナンスを自動化することが、クラウドのアイデンティティ管理における次の大きな柱だ」とAccelのリー氏は述べている。

ボビー氏とケルナ氏は、この分野のエキスパートだ。Oktaの前にボビー氏は、Lookoutでエンタープライズのモバイルセキュリティプロダクト開発を率いた。ケルナ氏はScaleFTの共同創業者でCTOだったが、同社は2018年にOktaが買収している。彼はまた、RackspaceとCloudkickで技術と戦略のチームを率い、オープンソースの熱心な唱道者であり実践者だ。

同社の本社はオレゴン州ポートランドにあるが、現在は社員数10名のリモート優先の企業だ。

「今は製品開発が主な仕事だが、顧客開拓努力にも多くの時間を割き、問題の理解を深めようとしています。次の段階では、初期の顧客の獲得に注力するでしょう」とボビー氏は語る。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:ConductorOne資金調達

画像クレジット:Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ブラジルの無料クレジットマーケットプレイス「FinanZero」が7.7億円を追加調達

ブラジルのオンラインクレジットマーケットプレイスであるFinanZero(フィナンゼロ)は、700万ドル(約7億7000万円)の調達ラウンドを完了したことを現地時間4月5日に発表した。2016年の設立以来4回目の資金調達だ。これで調達総額は2285万ドル(約25億2000万円)になった。

リアルタイムオンラインローンブローカー(融資仲介業)の同社は、利用者が個人ローン、自動車担保ローン、住宅担保ローンなどの申し込みを無料で行い、数分以内に回答が返ってくる。FinanZeroの成功のカギは、融資自体は行わず、代わりに融資を提供する銀行やフィンテック約51社と提携していることだ。

FinanZeroはブラジルの金融中心街であるサンパウロを拠点とし、52名の従業員がいる。

「私たちは初日からこう言っていました、『成功報酬だけで商売する』つまり利用者が融資契約に署名したときにだけ手数料を受け取ります」と共同ファウンダーでCEOのOlle Widen(オル・ウィデン)氏はいう。利用者からお金を取るのではなく、FinanZeroは提携パートナーから手数料を受け取る。そして増え続ける融資申し込み(月間平均75万件)のおかげで、会社は2019年から2020年の間に売上を61%伸ばした。

FinanZeroの共同ファウンダーでCEOのオル・ウィデン氏(画像クレジット:FinanZero)

ブラジルの金融・バンキング市場は崩壊が近づいており、伝統的に富裕層を優遇してきた。

低所得の人々、すなわちブラジル国民の大半にとって、融資の選択肢はほとんどなくその結果負債の悪循環から逃れることができない。ブラジルの若者は結婚するまで家族と暮らすのが伝統的であり、そこには文化的側面もあるが、つまるところ住宅ローンの承認を得ることが極めて難しいからだ。

FinanZeroや、ラテンアメリカ最大のデジタルバンクであるNubankのようなサービスによって、ブラジル人はこれまで自分たちの生活を支配してきた旧態依然の金融機関から離れ、自立した経済活動が可能になりつつある。

スウェーデン出身のウィデン氏は、約10年前に個人的事情でブラジルに渡り、そこで北欧のイノベーションをブラジルにもたらすことに焦点を絞った投資会社であるWebrodk VenturesにFinanZeroのアイデアを売り込んだ。

当時FinanZeroの先駆けとなったスウェーデンのスタートアップLendoはスウェーデンで大ヒットしており、ブラジルでも同じようなモデルが成功するとチームは考えた。官僚主義とお役所仕事で知られるこの国で、合理的で手間いらずの融資アプローチの機は熟していた。

最初のアイデアは単なるLendoのコピーだったが、やがて外部からの指摘を受け、サービスとユーザー体験の「トロピカル化」が必要だと気づいた。つまり、ブラジルの市場と人々に合わせたカスタムソリューションを作らなければならなかった。

「Lendoのファウンダーは私の幼なじみでした」と、ウィデン氏がスウェーデンフィッテックとの絆について話した。

FinanZeroで融資を申し込むために自分のクレジット(信用)スコアを提示する必要はない。必要なのは公共料金の請求書(住所の証明)と収入の証明、政府IDだけだ。手続きは簡単で、92%のローン申請はスマートフォンから行われているとウィデン氏はいう。

「私たちのビジネスモデルは、銀行のリスク選好度に強く依存しており、2019~2020年で60%成長しました。月間300万近いアクセスがあり、ユニークユーザーは約150万で、2021年3月には80万人が申し込みフォームに記入しました。全サービスを通じて承認率は約10%です」とウィデン氏は述べた。

今回のラウンドをリードしたのはスウェーデンの投資家であるVEF、Dunross & CoおよびAtlant Fonderで、いずれも同社の既存出資者だ。資金はマーケティング(ほとんどがテレビCM)、プロダクト開発、および人材獲得に使用される。

カテゴリー:フィンテック
タグ:FinanZero資金調達ブラジル

画像クレジット:FinanZero

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Nob Takahashi / facebook

不妊治療のための装着型基礎体温デバイスの研究開発を手がけるHERBIOがNEDO STSで採択

不妊治療のための装着型基礎体温デバイスの研究開発を手がけるHERBIOがNEDO STSで採択

HERBIO(ハービオ)は4月2日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)が実施した、2020年度「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援」(NEDO STS。最大7000万円の助成金)にかかる第3回公募において採択されたと発表した。

HERBIOは、直腸温(深部体温)と臍部周辺温度の相関性を確認し、同社開発中のウェアラブルデバイスで取得したデータを基に、体温変動の研究・解析を実施する研究開発型スタートアップ。

妊娠を望んでいる女性・将来的に妊娠を望む女性は、妊活の第一歩として基礎体温の継続的な計測を行う必要がある。ただし毎朝安静状態で計測する必要があり、社会進出が進み、様々なライフスタイルの中で生きる女性にとって難しい状況にある。

HERBIOは、独自技術を活用したウェアラブルデバイスにより、取得した体温の変動データを研究することで、より精度高く妊活に貢献できるサービスの提供を目指している。また、研究により体内時計や現代女性の生活様式に適した行動変容システムをあわせて開発し、早期の社会実装を加速させる。

HERBIOは、研究開発型スタートアップとして、2017年の創立以来「体温」を軸とした事業展開を行い、ウェアラブルデバイスの開発、体温データの変動に関する研究・解析を進めている。従来取得が難しかったデータを同社独自技術を活用することで、現在製薬会社との治験や、教育機関との共同研究がスタートしているという。

同社は、「生きるに寄り添うテクノロジー」というミッションを掲げ、今までにない発見と課題の解決手法を確立し、研究成果による社会課題の解決を目指す。また、世界中の誰もが安心して医療を受けることができ、医療と健康に隔たりがなく健やかに生きることができる状態を実現するとしている。

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カテゴリー:フェムテック
タグ:医療(用語)ウェアラブル(用語)資金調達(用語)妊娠(用語)NEDO(組織)HERBIO(企業)日本(国・地域)

猫の見守りと健康管理に、猫用ロギングデバイス「Catlog」開発のRABOが総額6億円を調達

2021年4月6日、猫用のログインデバイス「Catlog」を展開するRABOはシリーズAラウンドにおいて、総額約6億円の資金調達を発表した。引受先はSTRIVE、XTech Ventures、W ventures、三⽣キャピタル、みずほキャピタル。

RABOは2018年2⽉22⽇の猫の⽇に設立。「Catlogシリーズ」として猫の生活を見守るIoTプロダクトを展開している。主力プロダクトは首輪型のロギングデバイス「Catlog」で、これを愛猫に装着することで24時間365日、猫の行動をCatlogの専用アプリから確認できるようになる。

第2弾プロダクトは2020年10月に発表した、猫トイレの計量デバイス「Catlog Board」(キャトログボード)。これを猫トイレの下に設置すると猫の体重、尿量、回数などをアプリで確認できるようになる。首輪型のCatlogと計量デバイスCatlog Boardのデータは、いずれも1つのアプリで確認できる仕組みだ。Catlog Boardはクラウドファンディング・テストマーケティングサイトの「Makuake」にてプロジェクトを実施したところ、開始4分で目標額の30万円を突破、最終的に1549万円が集まった。現在はRABOの自社サイトで販売の予約を受け付けていて、2021年夏頃から発送を開始する予定だ。

Catlog Board

カメラでは不十分なペットの見守り

ペットの見守りというと、自宅にカメラを設置して見守るタイプのプロダクトが多い。ただ、実際に愛猫たちの見守りに使ってみたところ、それだけでは不十分に感じたのがCatlogを開発したきっかけとRABOの代表取締役社⻑を務める伊豫愉芸⼦氏は話す。

「見守り用のペットカメラを出しているメーカーは多数あります。私もCatlogを開発する前はカメラを活用していました。ただ、カメラを設置したとしてもすべてが追尾して撮るタイプではないので、動き回る猫様の様子を捉えきれないし、1日中カメラを見ているわけにもいかないので、なにか異変があったときに気づけないという課題があります。カメラを設置したとしても見守りとしては不十分で、健康管理に関しては不可能であると、飼い主としては思っていました」。

そこで伊豫氏は大学院で専攻していた「バイオロギング」の技術を猫の見守りに応用することを考えた。バイオロギングとは動物の体に小型のセンサーを装着し、データを解析することで人間が普段観察できない動物の行動を明らかにする研究手法のこと。Catlogはこの技術を応用し、猫の行動を24時間365日トラッキングできているそうだ。

愛猫の実況中継

2019年9⽉にサービスを開始して以来、Catlogには現在7000匹の猫が登録しているという。ユーザーにはこれまで見えなかった猫の行動がリアルタイムでわかり、離れている間も愛猫の存在が近くに感じられることがCatlogの魅力と伊豫氏は説明する。

「見えないデータが見えることで、より愛しく感じるポイントが増えたという声を多くいただいています。Catlogのアイコンがアバターのような役割になって猫様が自分の行動を実況中継してくれているので、それを見て『こんなにたくさん寝ててかわいいい』とか、自分が帰宅した時間に走っていますと出ると『迎えにきてくれていてかわいい』とか、飼い主さんたちが各々の解釈で愛でるポイントを発見しています」。

また、猫は体調が悪いことを言葉で教えてくれることはないし、もともと群れで生きる生き物ではないめ体調が悪いことを隠す傾向にある。飼い主は愛猫の体調の変化に注意しなければならないが、Catlogなら体調に関わるデータが確認できるという点もユーザーに評価されているという。

「猫様は泌尿器系のトラブルにかかることが多くて、水を飲むのが大事と多くの飼い主さんも理解しています。ご飯は、飼い主があげたときに食べるので、いつ食べているかはわかりますが、留守中に水を飲んでいるかはわからないので、そういった水飲みといった行動を確認できる点も、高く評価をいただいているポイントです」。

今後、Catlogでは病気の早期発見と早期治療ができるようにしていく考えという。すでにRABOは2021年1月、複数の動物病院との連携し、猫の疾病の兆候や症状を検知するための機能の開発に取り組むことを発表している。近々、猫の嘔吐を検知できる機能を実装する予定だが、他にも例えば、かかりつけの動物病院とも連携し、猫たちを診る獣医にとっても使いやすくなるような機能などを開発していく予定だそうだ。

RABO 

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:CatlogRABOペットネコ資金調達日本

新型コロナ後の成長加速へ向けインドのフードデリバリーSwiggyが約880億円調達

インドのフードデリバリースタートアップSwiggy(スウィギー)は現地時間4月5日、新規ラウンドで約8億ドル(約880億円)を調達したと従業員に伝えた。同社は数四半期前にパンデミックを乗り切るために従業員を解雇していたが、インドで事業を拡大するようだ。

従業員への電子メールの中で、Swiggyの共同創業者でCEOのSriharsha Majety(シュリハルシャ・マジェティ)氏は、同社が新規投資家のFalcon Edge Capital、Goldman Sachs、Think Capital、Amansa Capital、Carmignac、そして既存投資家のProsus VenturesとAccelから約8億ドルを調達したと述べた。このニュースはTimes of IndiaのジャーナリストDigbijay Mishra氏が最初に報じた

「この調達では、現在の業務のために計画していた投資よりもさらに多くの資金を獲得します。ただ、我々の野心は果てしなく、後に投資の準備が整うかもしれない将来のために引き続き新たなサービスのタネを撒いたり実験などをします。我々は今、インドから永続するアイコン的企業を生み出すために、今後数年にわたって絶えず考案して実行する必要があります」とマジェティ氏は電子メールに書いた。TechCrunchはこの電子メールを入手した。

マジェティ氏はSwiggyの新たな評価額を明らかにしなかったが「投資家らはSwiggyに対してポジティブな感情を持っており、新規ラウンドは既存投資家からの出資がかなり多かった」と述べた。この件に詳しい人物によると、新たな評価額は49億ドル(約5395億円)を超えた。同社の累計調達額は約22億ドル(約2422億円)となった。

Swiggyは2020年、約37億ドル(約4074億円)の評価額で1億5700万ドル(約172億円)を調達した。この調達は今回の新規ラウンドには含まれないと情報筋はTechCrunchに語った。

情報筋によると、かなりの資金を調達しているZomato(ゾマト)、そして新規参入者のAmazon(アマゾン)と競合しているSwiggyの長期的な目標は今後10〜15年でユーザー5億人にサービスを提供することだ。情報筋は2020年取引したユーザー数が5億人となり、評価額が1000億ドル(約11兆109億円)を超えた中国のフード大手Meituan(美団)を例に挙げた。

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「2020年の新型コロナウイルスによる非常に厳しい局面から我々は脱しつつあり、嵐は乗り越えました。しかしここから取り組むすべてのことは長期的に成功するチャンスを最大化する必要があります」とマジェティ氏は電子メールに書いた。

Swiggyは2020年いくつかの業務を削減し(Zomatoも同様)、インド政府が数カ月にわたるロックダウンを命令することになったパンデミックをしのごうとクラウドキッチン事業を縮小した

4月5日の資金調達の伝達は、グルがオン拠点のZomatoが2021年のIPOに向けてここ数カ月で9億1000万ドル(約1002億円)を調達した中でのものだ。直近の調達でZomatoの評価額は54億ドル(約5946億円)だった。資金調達の際、Zomatoは部分的には「自社の事業のさまざまなエリアにおける競合他社からの攻撃や価格競争」を退けるために資金を調達していると述べた。

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3番目のプレイヤーであるAmazonはインドのフードデリバリー分野に2020年参入した。ただし、事業はまだバンガロールの特定地域に限定されている。

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インドのフードデリバリーマーケットは2022年までに120億ドル(約1兆3213億円)に膨張するとBernsteinのアナリストは2021年初めの顧客向けレポートに書いた。そしてZomatoが現在マーケットをリードしていて、シェアは約50%だと指摘している。

「インドのフードテック産業はユニットエコノミクスを改善することで成長を維持します。テイクレート(取り分の割合)は20〜25%とインドでは最高の部類で、消費者の取り込みは増えています。マーケットは ZomatoとSwiggyが寡占していて2社でシェア80%超を占めます」とBank of Americaのアナリストは最近のレポートに書いた。TechCrunchはこのレポートを確認した。

「フードデリバリービジネスはかつてなく勢いがあります。そしていま、我々は今後10年で継続的な成長を推進するところにまできています。加えて、(グローサリー配達)Instamartのような新規事業のいくつかはかなり将来性があり、その一方で我々は間もなく展開する他の事業の準備を着々と進めてきました」とマジェティ氏は述べた。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Swiggyインド資金調達フードデリバリー

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

多拠点データの一元管理・AI解析プラットフォーム「Wisbrain」を提供するUltimatrustが3.4億円調達

多拠点データの一元管理・AI解析プラットフォーム「Wisbrain」を提供するUltimatrustが3.4億円調達

多拠点データの一元管理・AI解析プラットフォーム「Wisbain」を開発・提供するUltimatrust(アルティマトラスト。旧ジーマックスメディアソリューション)は4月5日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額3億4000万円の資金調達の実施を発表した。引受先は、リードインベスターのAbies Ventures Fund I、大日本印刷、山田俊一氏。

調達した資金により、工場・物流・鉄道・空港・農業など様々な分野において、高セキュリティかつ高精度のAI解析が可能な多拠点一元管理「Wisbrain AI監視カメラ」、より導入しやすい「AI-SHOT」を販売するとともに、初期投資を抑えた月額課金型料金プランの導入を促進する。1兆円近い市場規模の監視カメラ市場をターゲットに展開するという。また販売チャネル強化を目的に販売代理店の増強も目指す。

多拠点データの一元管理・AI解析プラットフォーム「Wisbrain」を提供するUltimatrustが3.4億円調達

Ultimatrustは、2015年設立以来「IoTからIoFへ~モノが繋がる時代から機能が繋がる時代へ~」をミッションとし、Wisbainを開発してきた。Wisbrainは、監視カメラなど多拠点・多デバイスからのデータを一元的に管理し、高精度AIにより解析が可能なシステムを短期間で構築できる、汎用的かつ拡張性のあるプラットフォームという。

例えば、空港や交通インフラ、複合商業施設、河川・沿岸監視、工場などの大規模施設や、拠点数やデバイス数が多く、正確性や精度が求められるような様々な分野に利用可能としている。また、各用途別のソリューションの拡充を図っているそうだ。

今回発売するWisbrain AI監視カメラは、Wisbrainプラットフォーム上で、監視カメラシステムを短期間・低価格で導入することを可能にし、導入後の保守も容易にするシステムという。

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カテゴリー:IoT
タグ:Ultimatrust(企業)AI / 人工知能(用語)エッジAI(用語)エッジコンピューティング(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

「聞こえ」の課題に取り組み、日米韓で展開するデジタルヘルス領域スタートアップOlive Unionが7億円調達

「聞こえ」の課題に取り組み、日米韓で展開するデジタルヘルス領域スタートアップOlive Unionが7億円調達

テクノロジーで「聞こえ」の課題に取り組み、スマートフォンアプリで「音の最適化」が行える聴覚サポートイヤフォン「Olive Smart Ear」(オリーブスマートイヤー)を開発・販売するOlive Unionは4月5日、シリーズBにおいて、第三者割当増資と金融機関からの融資による総額約7億円の資金調達を発表した。引受先は、Beyond Next Ventures、Bonds Investment Groupが運営または関与するファンド。借入先は日本政策金融公庫など。累計調達額は約20億円となった。

調達した資金は、「聞こえ」に課題を持つ方をはじめ耳鳴りなどの耳鼻領域における新製品の研究開発および既存製品のマーケティング費用、デジタルヘルス領域で注目されているデジタルセラピューティクス(DTx。Digital Therapeutics / デジタル治療)を見据えたソフトウェア・アプリの研究開発および調査にあてる。DTxとは、デジタル技術を用いて、疾病の予防・診断・治療などの医療行為を支援するソフトウェア(SaMD: Software as a Medical Device)を指す。

なおOlive Unionは、現行製品ではカバーしていない、「聞こえ」に関してより重い課題を抱えている方向けに、2021年9月以降の新製品リリースを予定しているという。

2016年創業のOlive Unionは、デジタルヘルス領域における耳領域のひとつ、「聞こえ」に課題を持つ方と潜在的社会課題に向けて、Olive Smart Earの開発・発売に取り組むスタートアップ。同製品は、独自開発のサウンドアルゴリズムを搭載したアプリにより、人の手を介さず自動で音の調整が可能だ。

日本における「聞こえ」に課題を持つ人口は1500万人超とされ(日本補聴器工業会「JapanTrak 2018調査報告」)、高齢化とともに増加が進んでいるものの、補聴器普及率は約14%と主要各国における使用率の半分にも満たない状況という。

Olive Unionはこの課題の解決を図るべく、DTxを見据えたアプリ・サービス開発に取り組み、自宅にいながらにして耳領域におけるDTxが実現する未来をミッションのひとつとして研究・開発を進めているという。

使い心地やデザインを理由に、叔父が使用を止めたことがきっかけ

Olive Unionの創業は、創業者兼代表取締役Owen Song(オーウェン・ソン)氏が、叔父の家で高額な補聴器がごみ箱に捨てられていることに気が付いたのがきっかけという。叔父は難聴を患っていたものの、補聴器の使い心地やデザインなどを理由に、1週間程度で使用を止めたそうだ。

そこで、ソン氏が補聴器を分解したところ、要素技術や部品などで改善の余地が多いことがわかったという。「メガネをかけるように、自然に『聞こえ』をサポートする製品を作れないか」というアイデアが浮かび、プロダクトデザインこそ「聞こえ」の課題解決を実現できると確信した。

実はソン氏は、学生時代はサムスン直下のSamsung Art & Design Institute(SADI。サムスン アート&デザイン インスティテュート)でプロダクトデザインを専攻し学んでおり、日常生活での鍵の締め忘れを防止するプロダクトを手がけ、世界三大デザインアワードのひとつ「Red Dot Design Award」で「Best of Best」を受賞(2008年)したという経歴の持ち主。その知見が活きた形だ。

補聴器の世界では、開発から販売まですべてを一貫して手がけている企業がないため製品化プロセスの様々な面でコストが膨れ上がりやすく、開発側の観点では性能上大差がない場合でも高額になる傾向にあるという。

また補聴器は、他人から見えないように耳穴に入れる、また肌色にするといった「隠す」デザインが主流だったそうだ。これら複数の要因により、ソン氏は「聞こえ」に関連する市場、イメージなどについて閉鎖的な印象を受けた。

そこで「従来の聴覚サポートの概念を覆す製品をつくる」というコンセプトを掲げ、まず開発を始めたのがソフトウェアの開発。Bluetooth接続機能を搭載した聴覚サポートデバイスに、ユーザー自らが「聞こえ」の調整が行えるイコライジング機能を搭載した。Olive Smart Earは、音響工学とデザイン設計による聴覚サポート機能とサウンドを楽しめる製品として、2016年に米クラウドファンディング「Indigog」で予約を実施。開始1カ月で約1億円の資金調達を達成した。

ファッショナブルなメガネのように、プロダクトデザインで「聞こえ」の課題、社会課題を解決する

そして、2019年に発売を開始した製品が2代目Olive Smart Earだ。Olive Smart Earのデザインは一般的なイヤフォンと変わりなく、外観だけでは聴覚サポートイヤフォンなのかどうか区別がつかない。「聞こえ」に課題がある方が装着しても、第三者にはまったくわからないはずだ。

ユーザーは、Olive Smart Earを初めて装着した際に、専用アプリにより高音・低音が聞こえる状態について確認される。ここでは特定の音が聞こえるかどうかに対してタップ操作を行うだけでよく、面倒な設定などは必要ない。

「聞こえ」の課題に取り組み、日米韓で展開するデジタルヘルス領域スタートアップOlive Unionが7億円調達

Olive Smart Earを初めて装着した際には、専用アプリにより高音・低音が聞こえる状態についてユーザーに対して確認を行う(画面写真左)。この調整は、いつでもやり直せる(画面写真右)

「聞こえ」の課題に取り組み、日米韓で展開するデジタルヘルス領域スタートアップOlive Unionが7億円調達

Olive Smart Ear用アプリのホーム画面(画面写真左)。環境モードの変更、音量調整などが可能。イコライザー設定では聞こえる周波数の微調整が行える(画面写真右)

この調整アルゴリズムはOlive Unionが独自開発したもので、世界初という。補聴器の場合専門店などで定期的な調整が必要になるが、Olive Smart Earではアプリによりユーザー自身が調整可能とすることで、聴覚サポートに必要な人件費の抑制にも成功した。

またOliveUnionが強調している点に、「なぜ聴覚サポートデバイスはファッショナブルでないのか?」がある。視覚の課題を解決するメガネはファッション性に富み、身に着ける楽しみがあるように、同社は耳の領域における研究開発とともにプロダクトデザインの多様性を追求しているという。

「聞こえ」の課題に取り組み、日米韓で展開するデジタルヘルス領域スタートアップOlive Unionが7億円調達

この取り組みの理由は、ソン氏の開発における出発点のひとつに「着用を恥ずかしく感じさせない、格好良くしよう」という思いがあるからという。同氏は、「デザインが社会課題を抜本的に解決する」と信じているとした。

同氏は、人の心理にある「補聴器を身に着けることへの恥じらい」に答えがあると感じているという。補聴器のデザイン開発は、耳の中に隠すという流れが主流となっており、これに応える形で大きさやデザインが発展を遂げてきた。ただ小型デバイスは装着を隠す代わりに性能を低下させざるをえないことがあり、利用者の満足度が低くなる可能性があるという。この課題を突き詰めて、プロダクトデザインから「聞こえ」の可能性を最大化することに取り組んだそうだ。

アメリカでは、食品医薬品局(FDA)から医療機器認定を取得

Olive Smart Earは、すでに公式サイトや家電量販店などで販売しており、ユーザーのボリュームゾーンは40~60代という(男性が7割)。同社は、「聞こえ」に課題がある方にとって、デザイン面や価格面で手に取りやすいとしている。

ただOlive Smart Earは、米国では食品医薬品局(FDA)から補聴器として医療機器認定を取得しているものの、日本では医療機器関連の認証を得ていない。この点は、同社公式サイトの「よくある質問」でも明示している。

日本での取得の計画があるか確認したところ、まずはデザインや機能、価格の点でブレイクスルーを起こし聴覚サポート機器の普及率を向上させることを目指しており、マーケティング上日本では認定取得は最適ではないと考えているという。

同社はFDAからの医療機器認定取得という実績・ノウハウから、日本で申請した場合も数カ月で取得できるものと考えており、むしろ日本では(同社調査によると)補聴器・医療機器に対するイメージや補聴器の価格に関する印象について懸念しているそうだ。医療機器に関する認定の重要さは認めるものの、「聞こえ」に関する課題を抱える方に気軽に利用してもらう上で制約になる可能性を考慮しているとした。

「聞こえ」に課題を持つ方とともに、愚直に解決に取り組む

Olive Unionは、「聞こえ」に課題がある方に使ってもらうことに注力しており、日本においては3年以内に10万人ユーザーの獲得を目指しているという。世界マーケットではすでに2万台を販売しており、やがては5000万ユーザーを獲得したいとしていた。

ソン氏は、シリコンバレーに由来するスタートアップのトレンドなどは理解しているものの、本当にそれらが人々の生活に必要なのか疑問に考えており、必要性を問いかけたいという。同氏は「聞こえ」に課題を持つ方とともに、愚直にその課題解決に邁進したいとのことだ。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Olive Union(企業)資金調達(用語)デジタルセラピューティクス日本(国・地域)

法務部門に契約書作成ワークフローのサービスを提供するフランスの「Leeway」

Leeway(リーウェイ)は、契約書に関するエンド・ツー・エンドのSaaSソリューションを構築しているフランスのスタートアップ企業だ。Leewayを利用すれば、すべての契約書を1つのリポジトリに集中させ、複数の交渉ステップを経て、1つのDocuSign(ドキュサイン)イベントで電子署名を行うことができる。

同社は先ごろ、HenQ(ヘンク)やKima Ventures(キマ・ベンチャーズ)といった投資会社や、Algolia(アルゴリア)、Eventbrite(イベントブライト)、Spendesk(スペンデスク)、MeilleursAgents(メイユールエージェンツ)、Livestorm(ライブストーム)、Luko(ルコ)の創業者などのビジネスエンジェルから、420万ドル(約4億6400万円)のシードラウンド資金を調達した。

法務部門で働いている人ならば、おそらく複数のツールを使っていることだろう。契約書を作成するためにMicrosoft Word(マイクロソフト・ワード)を使い、契約書を保存してチームメイトやビジネスパートナーと共有するためにクラウドサービスを使い、さらに電子署名やアーカイブサービスを使用しているのではないだろうか。

Leewayは、このワークフローをすべてのステップで最適化する。まず、すべての契約書はLeewayに保存することができる。これによって後で契約書を探すのが容易になるだけでなく、契約の期限が近づくとリマインダーを受け取ることができるので、契約を更新することができる。

2つ目として、Leewayから直接契約書を編集できる。例えば、マネージャーは契約書を確認し、変更点をLeewayのインターフェイスに書き込むことができる。社員は修正を施して、完了したら契約書の新しいバージョンをそのまま保存すればよい。

その後、同じインターフェイスから契約書を送信することも可能だ。契約書に署名される前に複数の人が承認する必要がある場合、管理者はその承認ワークフローを設定できる。すべてが一元化されているので、現在進行中のすべての契約書の概要を把握することができる。

画像クレジット:Leeway

Leewayは次の段階として、条件付きの条項を製品の中に組み込むことを考えている。通常、大企業では、同じ条項でも、非常に有利な条件、有利な条件、あまり有利でない条件など、いくつかのバージョンを持っている。Leewayの顧客は交渉する際に、例えば、非常に有利な条件から有利な条件に、切り替えることができるようになる。

現在、約30社が契約書の管理にLeewayを利用している。クライアントには、Voodoo(ブードゥー)、Evaneo(エバネオ)、IFOP(フランス世論研究所)、Fitness Park(フィットネスパーク)などがある。同社の共同設立者であるAntoine Fabre(アントワーヌ・ファーブル)CEOは「私たちは、従業員数100人から500人の企業の法務部という、非常に特殊な顧客層を持っています」と、筆者に語った。

それより小規模な企業や大規模な企業がLeewayを使うべきではないという意味ではない。しかし、従業員が100人未満の企業には、必ずしも本格的な法務部門があるとは限らない。営業チームや財務部門が、法務的なチームとして機能することもあるだろう。しかし、Leewayには、まだまだ成長の余地がありそうだ。

画像クレジット:Leeway

カテゴリー:リーガルテック
タグ:Leeway契約書SaaSフランス法務資金調達

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

最短60秒で資材発注可能、平均20%のコストダウンを実現するshizaiが1.2億円調達

ECやD2C事業者向けにオリジナルパッケージの制作などを手がけるshizaiは4月5日、第三者割当増資と日本政策金融公庫からの融資を合わせて総額1億2000万円を調達したと発表した。第三者割当増資の引受先は、ANRIグローバル・ブレイン、名称非公開の個人投資家となっている。

shizaiは、数百の資材メーカーや印刷会社などをネットワーク化することで、従来よりも簡単でスピーディーなオリジナルパッケージの発注を可能にした「shizai」を提供している。パッケージ制作の工程をソフトウェアで標準化することにより、従来ではデザインの決定から発注まで数カ月かかることも多かった工程を、最短60秒で完了する。また、中間業者を介さないため、平均して20%のコストダウンを実現した。

shizaiと同様に、資材の購買サービスを手がける企業にダンボールワンがある。2020年11月にはラクスルが資本参加し、TVCMなども積極的に展開するなど、その名を聞いたことがある読者も多いだろう。そのダンボールワンとshizaiとの違いは、資材の発注だけでなく、その前後にあるデザインの提案、倉庫の選定、資材の管理などにおけるサポートを一気通貫で提供している点だ。

「資材を購入すれば、次はその会社にとって最適な倉庫はどこか、どのように資材を管理するのかなど、顧客が抱える課題は多い。shizaiでは資材メーカーだけではなく、複数の倉庫運営業者とも連携しており、資材購買後のオペレーションまで一気通貫でサポートを提供している」とshizai代表取締役の鈴木暢之氏は語る。

また、shizaiは顧客と話し合いながらパッケージのデザインをイチから開発することにも取り組んでいる。EC事業者にとって、商品を包むパッケージは顧客との「最初のリアルな接点」(鈴木氏)であることが多い。その接点において、顧客に対して何かしらの驚きを提供したり、パッケージにプロダクトの理念や細やかな気遣いを反映するのは重要だと鈴木氏は話す。実際、TechCrunch Japan読者のみなさんの中にも、最新のガジェットなどの「開封動画」をワクワクしながら視聴したことがある人も多いのではないだろうか。そこでの「Wow!」はユーザーの心をつかみ、彼らが投稿するコンテンツに乗って広がることで、間接的なプロモーションとして機能する。

このような取り組みで生まれたのが、子どもの成長に合わせたおもちゃの定額制レンタルサービス「Toysub!(トイサブ)」のパッケージだ。Toysub!のパッケージは、目で見て楽しいパッケージデザインであることはもちろん、おもちゃの返送が簡単にできるように返送の手順をわかりやすく箱に記載する、パッケージをおもちゃ箱としてそのまま使えるようにダンボールの強度を高める、子どもが手を切りにくいようにダンボールの端を加工するなどの工夫がなされている。

鈴木氏は、「顧客の要望を取り込んだパッケージデザインの開発は、ある種のR&Dという位置づけで今後も取り組みたい。そうやって生まれたパッケージデザインから、要素を抜き出して標準化することとで、shizaiで発注できるパッケージの種類を増やしていく」と話している。

shizaiは今回調達した資金を利用して、プロダクト開発のための人材採用やマーケティングへの投資を進める予定だ。

shizaiのチームと今回のラウンドで出資した投資家。写真中央が代表の鈴木氏

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:資金調達日本

「ダークストア」から食料雑貨を20分以下で届ける英ZappがLightspeedとAtomicoに支援されシリーズA調達

現在ロンドンを中心に、食料雑貨をオンデマンドで注文できる宅配サービス専用店舗(ダークストア)を展開している数多くのスタートアップの1つであるZapp(ザップ)が、大手VCから新たな資金調達を行ったことがTechCrunchの取材で明らかになった。

複数の情報筋によると、シリコンバレーのLightspeedとヨーロッパのAtomico(Skypeの創業者Niklas Zennström〔ニクラス・ゼンストローム〕氏が立ち上げたVC)が、Zappの未発表のシリーズAに投資したという。同じ情報源から、Zappが初期のシードラウンドを含めて総額約1億ドル(約110億7000万円)を調達したことも確認されている。

今回のラウンドにはLightspeedとAtomicoに加え、468 Capital、Burda、さらにはMPGIのCEOであるMato Peric(マト・ペリク)氏、元Amazon UKのCEOであるChristopher North(クリストファー・ノース)氏、WestwingのCEOであるStefan Smalla(ステファン・スマラ)氏などの著名なエンジェルが出資している。ある情報筋によると、ZappのシリーズAは、Atomicoのコンシューマー向け事業パートナーであるSasha Astafyeva(サーシャ・アスタフィエバ)氏が、同VCに加わってから初めて担当した案件だという。

TechCrunchがシリーズAと投資家のリストについて取材を求めたところ、Zappは声明でこう述べた。「当社はお客様に喜んでいただくことに絶え間なく注力しており、通常、資本構造についてはコメントしません。2021年、ロンドンをはじめとする何百万人ものお客様にZappをお届けできることをうれしく思います」。

2020年夏に設立されたZappの創設者は、Jumia(ジュミア)の創設チームの一員としてオンデマンドサービス事業をIPOまで導いたJoe Falter(ジョー・ファルター)氏と、Amazon(アマゾン)のシアトル本社でプロダクトリーダーを務めた後、GoButlerを創設し、Rocket Internetでいくつかのベンチャー企業のスケーリングを手がけたNavid Hadzaad(ナヴィド・ハドザード)氏だ。リーダーシップチームには他にも、Deliveroo、Just Eat、Domino’s(ドミノ・ピザ)、Tescoなどの出身者が名を連ねている。

Zappは独自の小規模なフルフィルメントセンターを設置することで、垂直型の「ダークストア」モデルを展開している。ロンドンには、すでにいくつかの拠点がある。Kensington、Chelsea、Fulham、Notting Hill、Hammersmith、Shepherd’s Bush、Shoreditch、Islington, Angelなどだ。

Zappは、Deliverooのようなギグエコノミーモデルを採用せず、配達要員を直接雇用している。また、持続可能性を重視しており、すべて電気車両を使用している。

オンラインの情報や関係者の話を総合すると、Zappは生鮮食品や食料品よりも米国のgoPuffのような利便性を重視しており、従来の食料品店を駆逐するというよりも、衝動的な購入をターゲットにしているようだ。これは他の多くのダークストアとは対照的だが、複数のプレイヤーが提供する商品は明らかにクロスオーバーしているのも確かだ。

ロンドンではZappの他に、Getir(ゲッティアー)、Gorillas(ゴリラズ)、Jiffy(ジフィー)、Dija(ディジャ)、Weezy(ウィージー)、などのダークストア事業者がしのぎを削っている。また、陣取りが加速する中で、場合によっては大幅なディスカウントを行うなど、調達した多額の資金を投じて展開しているところもある。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Zappロンドン資金調達フードデリバリーダークストア

画像クレジット:Social media

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Aya Nakazato)

中小企業向け保険テックのNext Insuranceが276.8億円を調達、1年足らずで評価額を4428億円超に倍増

Next Insurance(ネクストインシュアランス)は先日、2億5000万ドル(約276億8000万円)の資金調達ラウンドを実施したと発表し、SMB(中小企業)に特化した保険プロバイダーの評価額は40億ドル(約4428億2000万円)となった。同社は前回、2020年9月にも2億5000万ドル(約276億8000万円)を調達しており、その時の評価額は20億ドル(約2214億1000万円)だった。今回の資金調達は、Next Insuranceが2020年12月にJuniper Labsを買収し、さらに最近では2021年3月初めにAP Integoを買収した後のことだ。

Next Insuranceは、さまざまなクラスの労働者を対象に、多数のカテゴリー(労災、商用自動車、一般賠償責任など)にまたがる中小企業向けの保険を販売している。例えば、フィットネス企業や建設関係などを考えてみて欲しい。つまり同社の狙いは、異なるカテゴリーや業界に対応した保険料を設定できるモデルで無数の中小企業を取り込み、時間をかけて他の商品にアップセルすることで、総収入保険料(GWP:gross written premium)をスケールすることにある。

Next Insuranceの新ラウンドと新しい評価額は、インシュアテック分野全体にとって興味深い時期に来ている。テクノロジーを駆使した次世代保険のニッチ分野で早期に公開されたレンタル保険のユニコーン、Lemonade(レモネード)の株価は当初に比べ落ち着いてきた。

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Lemonadeのデビュー以来、Root Insurance(ルートインシュアランス)のIPOも我々は見てきた。この自動車保険スタートアップの場合は、投資家の予想を上回る成長を遂げたにもかかわらず株価が下落し、訴訟を起こされるなど、デビュー以来苦戦を強いられている。MetroMile(メトロマイル)も自動車保険に特化したネオ保険会社で、SPAC主導の組み合わせで上場したが、取引を開始してから若干の不調が続いている。住宅保険に特化したHippo(ヒッポ)は、50億ドル(約5535億3000万円)の評価額でSPACを介して上場する意向だ

これらの数字の中には、オプティミズムもあれば、精彩を欠いた取引結果もある。どのように捉えるかは、人によって異なるだろう。

しかし、Next Insuranceの投資家たちはゴーサインを出している。そして、同社の市場全体が多少混乱していたとしても、彼らの熱意は見当違いではないと信じられる理由がある。

Nextは、前回のラウンド後の半年間でGWPが2倍になったと述べている。それを踏まえると、評価額が2倍になったのはある程度妥当に思われる。個人投資家がGWPの倍率で株を買ってくれたのなら、倍の価格で再調達し、会社が継続的に成長している間にGWPをさらに倍にしない理由があるだろうか。

では現在のNextの規模はどのくらいなのだろうか?2020年2月に同社のGWPランレートは1億ドル(約110億7000万円)に達した。そして2021年の2月には、GWPランレートが2億ドル(約221億4000万円)に達している。つまり、Next Insuranceとの買収取引が発表された時点で約1億8500万ドル(約204億8000万)の有効保険料を計上していたAP Integoの事業を除き、それより数カ月ぶん大きくなっているということだ。

この数字を明確にするために、TechCrunchはNext Insuranceに連絡を取り、GWPを2倍にした時期と、AP Integoとの契約が数字にカウントされるようになった時期の詳細を聞いた。CEOのGuy Goldstein(ガイ・ゴールドスタイン)氏からのメールによると、GWPの2倍という指標は「2020年の数字に関連しており、AP Integoの買収前に算出されたもの」とのこと。つまり現時点で同社は、以前に発表した2億ドル(約221億4000万円)のGWPランレートをはるかに超えていると推測される。

さらにTechCrunchはSPACブームについて触れ、そのような公開市場への急速な道筋を避けるつもりがあるのかどうか質問した。ゴールドスタイン氏はそれに対し「当社は常に選択肢を検討していますが、今のところはビジネスの成長に主眼を置いています」と答えた。

答えは「ノー」ということか。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Next Insurance資金調達保険

画像クレジット:PeopleImages / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Aya Nakazato)