Dropboxは100億ドルの会社評価額で2.5億ドルから4億ドルの資金調達を行ったもようだ。Wall Street JournalやRe / codeの記事によれば、 その理由として考えられるのは、Dropboxは昨年ビジネス向けにプロダクトを全面的に作り直しており、今年はこれを売っていく必要があるかという点だ。情報源によれば、Dropboxは現在の過熱気味のベンチャーキャピタル市場とDropboxへの高い関心から最大限有利な資金調達を試みたのだという。
調達した資金は他のテクノロジー企業からトップクラスの人材をスカウトしたり有力スタートアップを買収するのにも役立つ。しかし現在のDropboxにとってもっとも重要なのはBox、Google Drive、Microsoft SkyDrive、Amazon WorkSpacesといった強力なライバルに大企業ユーザーをさらわれる前に先制攻撃してシェアを確保することだ。
Dropboxの急成長
Dropboxは当初個人ユーザー向けの手軽なクラウド・バックアップ・ツールとしてスタートした。「あなたのファイルをどこにでも」がそのキャッチフレーズだった。AK-47を構えた恐竜がサメにまたがり、その背中にハゲワシが止まっているイラストがマスコットだった。Dropboxはサンフランシスコの本社ロビーにわざわざそのTレックスの像を作って飾っていた。この時期のDropboxには企業向けにセキュリティやスケーラビリティーを真剣に売り込むつもりがあったようには見えない。
しかしユーザーにギガバイト単位で無料のストレージを提供する戦略が功を奏し、Dropboxは口コミでテクノロジーに強い個人ユーザーの圧倒的な支持を得るようになった。2012年12月にはユーザーが1億人を突破、その1年後には2億人となった。また明るい社風が幸いしてGoogleのPythonの父であるGoogleのGuido Van RossumやFacebookのベテラン・デザイナー、Soleio Cuervo、Rasmus Anderssonなどのビッグネームのスカウトにも成功した。
しかしわれわれは1年前に企業ユーザーから 「Dropboxはにはビジネス利用に必要なアクセス管理やセキュリティ機能がない」という声を聞いていた。つまり社員の誰がどのファイルにアクセスし、ダウンロードしたのかなどを確実にモニタする機能などがまだ欠けていた。.
そこで1年前からDropboxはサービスのアーキテクチャをビジネス利用に耐えるように全面的にアップグレードするという野心的な試みに乗り出した。これはユーザーが同一アカウント内から新しいエンタープライズ向けサービスと従来の個人向けサービスの双方にアクセスできるようにすることを目的としていた。.
2013年11月に共同ファウンダー、CEOのDrew Houstonが新しいDropbox For Businessを発表した。Houstonはここで業務用ファイルとプライベートなファイルの双方に同一アカウントでアクセスできる点や強力なアクセス管理と共有管理機能をアピールした。また社員が辞めたり異動した場合にその社員がアクセスできるすべてのデバイスからファイルを一括削除できる機能も追加された。
このDropbox For Businessは今年前半には一般公開されるという。個人ユーザーには圧倒的な人気を誇るDropboxだが、何千人ものアカウントを必要とする大企業に1人年額175ドルで新サービスを売り込むのは大事業だ。大量のセールス部隊が必要になるだろうし、当然大量の資金が必要になる。
ベンチャーキャピタル市場は過熱状態
Dropboxにとって幸運なことに、Pinterest、Uberの億単位の巨額資金調達をみてもわかるように現在の資金調達の環境はきわめて良い。Facebookの株価が復調し、Twitterの大型上場が成功したことも資金市場を過熱させている。一方、Dropboxの内情に詳しい情報源によると、同社はエンタープライズ向けクラウドサービスのライバル、Boxの急成長に極めて警戒を強めており、「鉄は熱いうちに打て」とばかりにこのチャンスを生かして最大限の資金調達を試みたのだという。
Wall Street JournalのDouglas MacMillanとRe / code’sの Liz GannesによればDropboxはBlackRockがリードし、既存投資家が参加したラウンドで2億5000万ドルの調達を完了したという。さらにDropboxは大手ミューチュアル・ファンドのFidelityとT.Rowe Pricemayから追加の1億ドルから1.5億ドルを引き出す可能性がある。
この一連の資金調達の結果、Dropbox の調達総額は5億700万ドルから6億57 00万ドルとなる。
金を稼ぐには金を使わねばならぬ
潤沢な資金の確保に成功した後、緊急に必要なのはセールス能力の拡充だ。
これには実績あるセールス担当幹部のスカウトが近道だ。すでに2012年にSalesforceの営業部隊を10年にわたって率いてきたKevin Eganをスカウトしている。また最近ではビジネスソフトの有力ベンダーなどサードパーティーとの提携を強めるためにビジネス開発チームを強化し、Facebookのモバイル提携の責任者、Henri Moissinac、Spotifyの提携業務担当幹部、Tom Hsiehを採用している。
また今回の資金は将軍を雇うだけでなく大量の歩兵を雇うためにも必要だった。Dropboxは2013年に200人から500人へと拡大した。今後はさらに拡大の速度を速めるだろう。
しかしエンタープライズ市場で成功するためには、前述のように、まずBoxとそのカリスマ的リーダー、Aaron Levieと戦わねばならない。Boxのビジネスユーザーはまだ20万社にとどまっているものの、Boxはセキュリティとアクセス管理の面でエンタープライズ・ユーザーから高く評価されている。それがBoxがProcter & Gamble、Nationwide Insurance, LinkedIn, MTVなどのビッグネームとの契約に成功した理由だ。Dropbox(上)とBox(下)のホームページを眺めただけでも両者がどのようなユーザーを主たるターゲットにしているか想像がつくだろう。
DropboxはまたGoogle Driveとも競争しなければならない。Googleは他のエンタープライズ向けサービスとの緊密な統合を約束できるという強みがある。またMicrosoft’s Officeを中心に業務が組み立てられている場合、SkyDriveはには優位性がある。Amazon WorkSpacesはAmazon Web Services(AWS)をバックにしている。Dropboxのような独立のサービスにとってはいずれも手強いライバルだ。
また先週起きたようなシステムダウンを防がなければはビジネスユーザーを遠ざけることになる。
DropboxはMailboxの買収を買収したが、同時にもっと小さいチーム、Endorse、Snapjoy、Soldなども傘下に収めてきた。数億ドルの資金を得た以上、M&Aでも積極的な動きが予想される。Dropboxが現在のサービスの穴(たとえば複数ユーザーのリアルタイム共同作業)を企業買収で素早く埋めることができればユーザーにとっての魅力が増すだろう。
昨年われわれはDropboxが2014年に上場すると予測した。しかし上場は時間のかかるわずらわしい手続きであり、共同ファウンダーのHoustonとFerdowsiがニューヨーク証券取引所で取引開始の鐘を鳴らすときに株式市場の情勢がどうなっているかも分からない。Dropboxが現在できるだけ多額の資金を集めているのは賢明な戦略といえる。
[I画像:Ariel Zambelich/Wired, JDLasica]
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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)