SaaS/Fintechに特化した「マネーフォワードファンド」立ち上げ——メルカリ、ウォンテッドリーに続き

2017年7月にメルカリが立ち上げた「メルカリファンド」に続き、ウォンテッドリーが「Wantedly AI/Robot Fund」を立ち上げたと今日報じたばかりだが、今度はFintechスタートアップの雄、マネーフォワードがファンドをスタートしたとのニュースが入ってきた。

1月15日、マネーフォワードはSaaS/Fintech領域に特化した「マネーフォワードファンド」の立ち上げを発表した。マネーフォワードファンドは、対象領域でビジネスを展開する企業への出資、事業拡大に必要なノウハウ共有、送客やAPIなどのサービス連携、パートナーとのネットワークを活用した協業支援などを行うことを目的とした、投資プロジェクト。メルカリ、ウォンテッドリーと同様に「ファンド」と呼称してはいるものの、子会社設立やファンドの組成を伴わない、出資プロジェクトとしての位置づけだ。

マネーフォワードは、2015年12月にお金のデザイン、2017年10月にはCAMPFIREおよびLIFULL Social Funding、そして2018年1月にBASEと、これまでに4社との資本業務提携の実施を発表している。

今回のファンド開始の発表と同時にマネーフォワードは、インドネシアでクラウド型の会計ソフト「Sleekr Accounting」とHRサービス「Sleekr HR」を提供するSLEEKRグループへの出資を、前述の4社に加えたファンドプロジェクトの取り組みとして新たに発表。マネーフォワードが海外企業へ出資するのは、これが初めてとなる。

マネーフォワードでは、今後も同ファンドを通じて、国内外でシナジーが期待できるSaaS/Fintech企業との出資を含めた提携を進めていく考えだ。

今年上場を果たしたFintechの雄、マネーフォワードの辻CEOがTechCrunch Tokyoに登壇決定

11月16日、17日の2日間にわたって渋谷・ヒカリエで開催予定のテック・イベント「TechCrunch Tokyo 2017」で、Fintechスタートアップのマネーフォワード共同創業者で代表取締役社長CEOの辻庸介氏に登壇頂けることとなったのでお知らせしたい。

マネーフォワードは今年(2017年)の9月に上場を果たしたFintechスタートアップ企業の雄だが、まだ恵比寿の小さなマンションの1室に入居していた2013年、初めて取材に訪れたときのことをぼくは昨日のことのように覚えている。辻CEO自らがスリッパを差し出して迎え入れてくれたのだった。下の写真は、その2013年の秋にTechCrunch Tokyo 2013のスタートアップバトルにご登壇いただいたときのもの。

マネーフォワード共同創業者で代表取締役社長CEOの辻庸介氏(2013年11月撮影)

 

あれから4年。

マネーフォワードは従業員数で200人を超え、時価総額も566億円(2017年10月26日終値ベース)と大きく成長。サービスも、当初提供していた個人向け家計・資産管理アプリ「マネーフォワード」に加えて、法人向けでは「MFクラウドシリーズ」としてMFクラウド会計、MFクラウド確定申告といったSaaSサービスを提供するなど力強く成長を続けている。

マネーフォワードは北風と太陽でいえば、太陽だと思う。

スタートアップ業界で「Fintech」とか「ナントカtech」といえば、テクノロジーでレバレッジをかけて既存産業をディスラプトするというニュアンスがある。ビジネスモデルを革新して旧勢力が思いもつかないアングルから市場にエントリーを果たし、気づけば大きな勢力になっているというようなニュアンスだ。PayPalなんかは金融業者が「インターネット上の決済」などセキュリティ的に実現が不可能で無視可能なニッチ市場だと相手にしなかったところで大きなポジションを確立した。ときには規制当局のレーダーに引っかかる前に既成事実として市場を獲得しているAirbnbやUberのようなものもある。

マネーフォワードが家計・資産管理アプリを引っさげて登場した当時、議論としては「日本では規制産業に切り込むのは難しくて、みんな本丸を攻めずにお堀の外でちょろちょろやってるだけ」と言われることがあった。既存の銀行や証券といった金融業を脅かしたり、少なともプレッシャーをかけるような存在になれないのならFintechなどと大げさな言葉に意味があるのだろうか、と。確かにその後の推移をみてみると、世界的にはPFM(Personal Financial Management)と呼ばれる市場は期待されたほど成長していない(日本はやや例外)。

しかし、太陽政策のマネーフォワードのその後は違った。金融庁に積極的に働きかけ、「既存勢力」を対立構図でみるのではなく次々と巻き込み、既存の銀行大手などと業務提携、システム連携を次々と進めている。世界的にも先進的な事例といえる銀行の更新系APIの開放を最初に実現させたマネーフォワードは、Fintechエコシステム醸成におけるキープレイヤーとなりつつあるように見える。

誰に対してもいつもにこやかな辻CEOの鷹揚な性格もあると思うが、マネーフォワードの太陽政策的な巻き込み力は今後も注目だと思う。何より「マネーフォワードが銀行免許を取って新興銀行にならないのだとしたら、日本のFintechって一体何なの?」というのが、ぼくの感じているところ。金融先進国イギリスでは既存の銀行に対して規模の小さな新興銀行サービスが「チャレンジャー・バンク」としてたくさん生まれている。

辻CEOには2012年の創業時の頃はもとより、起業にいたったキャリア上の経緯など起業家としてのパッションの源泉と、Fintechスタートアップとしてのマネーフォワードの今後の舵取りについてお話を聞ければと考えている。

辻さん、銀行はやらないんですか?w

TechCrunch Tokyo 2017は一般価格4万円のところ、10月末まで(来週火曜日まで!)は前売りチケットは割引価格3万円で販売している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。ぜひこの機会に検討いただければと思う。

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ついにメガバンクが「更新系API」を提供開始、マネーフォワードが経費精算振込で連携一番乗り

家計簿アプリや法人向けクラウド会計を提供するマネーフォワードが「更新系API」と呼ばれる枠組みを使ってメガバンクの振り込みを外部サービスから行う機能を実装したことを発表した。

具体的には、みずほ銀行、三井住友銀行、住信SBIネット銀行の3行に対して、マネーフォワードが提供する「MFクラウド経費」から振込処理を完結する機能。これまでにもMFクラウド経費における経費精算のワークフローでは振込をまとめて指示するCSV形式の「電子オーダー」を作成し、これをネットバンキング側に手動でアップロードすることはできた。ここがAPI連携してリアルタイム化した形だ。経費精算の振込からスタートするAPI連携だが、2017年中にも法人間の買掛金振込にも対応していく計画という。

今回のAPI連携はネット系サービスの人なら「OAuth 2.0」を使った普通のAPIと言えばお分かりいただけると思う。ネットバンキングのIDやパスワードをマネーフォワード側に渡すことなく、ユーザーの明示的な許可アクション(OAuth用語では認可と呼ぶ。以下の画面)により、マネーフォワードはユーザーに代わって口座情報にアクセスができるようになる。ただ、これまで大手銀行が外部に開放してきたAPIは、口座残高を外部から調べるといった「参照系」だけに機能が限られていた。セキュリティー要件のハードルが上がることなどから踏み切れていなかった更新系APIが新たに開放された形だ。

MFクラウド会計と住信SBIネット銀行の連携の設定画面。FacebookやGoogleのアカウントを使ったログイン(認可)では見慣れた画面かもしない

2018年春にも施行される改正銀行法(概要PDF)で利用者保護の法的枠組みや、登録制度といった「お墨付き」が付くことで、さらにFintech企業と既存銀行の連携は加速することになりそうだ。すでに、MUFGも3月6日にはAPI開放を発表していて、クラウド会計のfreeeやOBCなどが連携する可能性のあるサービス事業者として名前が挙がっている。

マネーフォワード取締役の瀧俊雄氏によれば、これだけ大きな銀行においてサードパーティーのクラウド経由で経費精算ができる国は、Fintech先進国と言われるイギリスを含めて日本以外にないのだそうだ。更新系APIの利用により振込手数料が銀行側にとっても売上となるため、関係者の理解が得られやすかったということや、監督官庁と産業界が歩調を合わせたときには物事の展開が速いという日本社会の特性が背景にあるのでは、という。

API連携が意味するもの

銀行のもつ口座が「開かれた口座」になれば、その周辺に多くのサービスが出てくることが予想される。そして、その先にはさらに大きな変化が待っているのかもしれない。

マネーフォワード取締役の瀧俊雄氏

API連携でプロトコルが標準化されると、サービス間の結合度合いは下がる。このことは組み合わせの自由度があがることを意味している。企業にとって「メインバンクがいつでも簡単に変えられる」というようにポータビリティーが高まれば、銀行間の競争も起こるだろう。瀧取締役によれば、イギリスでは個人口座のポータビリティーが極めて高く、自動引落なども紐付けたまま簡単に個人が利用銀行を変更できるようになっているのだという。

もう1つ、起こり得る変化としてECサイトでのクレジットカード決済が銀行口座からの直接振込に変わることも考えられる、という。

「もともと取引自体に価値はないのです。何か決済をするときに決済手段として銀行に行っているだけ。取引動機はすべて銀行の外にあるのです。例えばオンラインで買い物するときには、そのECサービスに動機がある。だから、ECはAPIのメリットが現れやすい分野です」(瀧取締役)

さらに長い視点で考えると、「毎日関わるところ、収入が関わるところ、小売などに利用者の主観的価値が寄っていくので、そこにお金も寄っていくのでは」(瀧取締役)という予想もある、という。中国のモバイルアプリがあらゆる支払いや個人間決済に使われているように、LINEやメルカリ、Paymoといったところにお金をプールして出し入れするほうが、銀行経由よりも使い勝手が良く、経済的な合理性もあるかもしれない。すぐに起こる変化ではないだろうが、銀行が全銀ネットワークという高コストなレガシーシステムを使った振込手数料やATM利用料を取り続けることは、モバイル時代にはもうできなくなっていくということなのだろう。

freeeがマネーフォワードを提訴、勘定科目の自動仕訳特許侵害で

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注目を集めるFintech業界だが、スタートアップ企業が競合スタートアップ企業を提訴するというニュースが飛び込んできた。

クラウド会計を提供するfreeeが、同じく家計簿やクラウド会計を展開するマネーフォワードに対して特許権侵害を理由とした「MFクラウド会計」の差止請求訴訟を東京地方裁判所に提起したとことが明らかになった。freeeはマネーフォワードと協議を行ったものの進展が見られなかったことから止むを得ず今回の提訴に至ったとしている。

ここで問題となっている特許はfreee創業者で代表取締役の佐々木大輔氏らが2013年10月に出願して2014年3月に登録(成立)された、勘定科目の自動仕訳に関する特許「第5503795号」だ(参考リンク)。

この特許は「会計処理装置、会計処理方法及び会計処理プログラム」と名付けられたもので請求範囲は広い。まず各種金融機関やクレジットカード会社などからスクレイピングしてきた取引情報について、そこに含まれる文字列などから対応テーブルに基いて仕訳項目を自動判別する機能が含まれる。ほかに、中小企業や個人利用者の利用実体に即した機能についても言及がある。具体的には、企業会計の原則である「発生主義」について、個人事業主などでは時期的制約が緩やかであるという実情に沿ったプログラムを提供するとしている。freeeは2016年に入ってからもAIを用いた精度の高い自動仕訳機能で特許を取得したとしていて、TechCrunch Japanでも6月に記事にしている。一方マネーフォワードは8月末に「機械学習を活用した勘定科目提案機能」を発表している。

freeeは「企業が多くの試行錯誤を経ながら取り組んだ技術開発の成果は正当に保護され、尊重されるべきであり、スタートアップ業界においても各社が独自技術の開発に注力し、ユーザー便益を最大化するサービ スが淀みなく生まれていく環境を整えていく必要」とコメントしている。

具体的にどの機能や、特許の請求範囲が侵害であるとしているのか現時点では不明だ。マネーフォワード側は「特許侵害の事実はないと考えています。裁判の手続きの中で明らかにしていきたい」としている。

freee、マネーフォワードともそれぞれ累計約約52億円、約48億円と大型資金調達をして急成長しているとはいえ訴訟はリソースを食う。クラウド会計サービス市場を牽引してきたスタートアップ企業2社による訴訟は業界で波紋を呼びそうだ。

【追記】2社で「協議を行った」というfreee側の主張について、マネーフォワード側は「協議の日程候補をご連絡いただきましたが直近であったため、別途当社から日程をお送りいたしました。弊社からの候補日を取り合っていただけず、その後訴状が届き本件訴訟へと至っております」とコメントしている。一方、TechCrunch Japanからfreeeに対して具体的な「協議」の時期や回数、方法、協議参加者について問い合わせたところ、「代理人を介しての協議となります」との回答を得た。

ヤマトがマネーフォワードと提携し、自社ポータルに請求業務支援サービスを追加

スタートアップ企業と大企業の提携は増えているが、多くはAPIによるつなぎ込みや、スタートアップ側が既存サービスをまるっとOEM提供するようなことが多い。今日ヤマト運輸とマネーフォワードが発表した提携は、もう少し互いに踏み込んだ共同開発による新サービスという意味でも興味深い「請求書業務支援サービス」だ。

ヤマト運輸は2012年から自社顧客向けに業務支援ポータルサイト「ヤマトビジネスメンバーズ」を提供している。送り状の発行や利用運賃履歴確認など、ヤマトの発送業務を支援する顧客向けポータルとして中小企業や個人事業主を中心に75万アカウントを持つサービスに成長している。

このヤマトビジネスメンバーズに新たに請求業務支援サービスとして「請求業務クラウドサポート」の提供を開始する。

サービスはフリーミアムモデルで提供し、見積書や納品書、請求書・領収書の発行などが無料でできる。月額980円の有料プランでは、さらにファクス送信(1通20円)や売上レポートなどの機能が利用できる。マネーフォワードは「MFクラウド請求書」のシステムを提供していて、要望の多かったファクス送信機能などは共同で開発したという。今も中小企業の物販の現場では請求書を手書きやExcelで作成してファクスで送受信する、煩雑で非効率的な作業が残っているという。

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ところでヤマト運輸はシステム開発や運用を行う子会社としてヤマトシステム開発をグループ企業に抱えている。だから今回のような機能開発を自社開発するという選択肢もあり得ただろう。あるいは他にも多くのソリューションがある。今回の提携を担当したヤマト運輸の中西優氏(営業推進部プロジェクトマネージャー)はTechCrunch Japanの取材に対して、請求書業務についてほかのソリューションやクラウドベースのプロダクトを比較したうえで、実績と実際に使ってみた印象からMFクラウド請求書に決めたという。

ヤマトではこれまでLINEで荷物問い合わせができるサービスや、メルカリでの自宅発送サービス、DeNAと自動運転による次世代物流サービスの実験など、B2C向けでスタートアップ企業と提携する例はあったが、今回のようなB2Bは初めて。

ヤマトでは今回の提携を機に自社顧客向けでスタートしていたヤマトビジネスメンバーズを広くヤマト非利用者にも開放。むしろ、「請求書業務もITで統合された宅配事業者」として同業他社と差別化、本業での新規顧客開拓という面でも期待しているそうだ。既存自社顧客向けサービスから、積極的なマーケティングツールへといったところだろう。「もともと請求関連業務をやってる人が、新たに宅配業務をやる、というときにヤマトを選んでもらうというのも考えている」。

最近でこそAPI利用が業務システムでも増えてきているが、かつてこうした業務システムや、その機能モジュールは、パッケージソフトウェアの納品やSIerの受託案件という形で提供されることも多かった。そう考えると、UI・UXに強くてスピード感のあるスタートアップ企業と提携して共同開発するというのは、ちょっと新しいソフトウェア流通のあり方と言えるかもしれない。

同様の取り組みとしてマネーフォワードはこれまでにも、2016年2月にアパート経営管理サービスを提供するインベスターズクラウド向けに確定申告機能を、3月にはアスクルが運営する日用品ECのLOHACOに対してEC連動型家計簿サービスを提供するなど、提携による外部へのサービス提供を加速している。

マネーフォワードが資金調達サービス開始へ、金融機関と提携して与信モデルも構築

中小企業の融資に関わる銀行業務で、マネーフォワードが与信サービス分野へ乗り出す一歩を踏み出した。

個人・法人向けのサービスを展開するFintechスタートアップのマネーフォワードは今日、新サービス「MFクラウドファイナンス」を夏に提供すると発表した。住信SBIネット銀行や静岡銀行など10行と資本業務提携(もしくは業務提携)し、ビジネス向けクラウド型会計ソフト「MFクラウド会計」などのデータを活用する。

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具体的にいうと、MFクラウド上の会計データを金融機関が閲覧できるようになるので、従来の書類審査に比べて大幅に効率化される。MFクラウドシリーズのユーザーは金融機関からの資金調達を従来よりも短期間で手間なく行える。マネーフォワードでは、データの信頼性向上のために会計事務所との連携も進めるという。

今回の資金調達サービスの対象利用ユーザー層は主に中小企業。企業規模は一概にいえないものの、マネーフォワードは「数百万円程度のトランザクションファイナンス」がターゲットとする層」となると説明している。

提携金融機関からみると、クラウド上に蓄積された日次の財務データ、入出金データ、請求データなどのリアルタイム性の高いデータを活用した新しい審査が可能となる。つまり、最初の一歩こそ審査処理にかかわる事務処理のオンライン化ということになるが、まず年内をめどに与信審査の自動化を目指すという。さらに、従来と異なる審査モデルの開発を進めれば、従来の与信の枠組みで貸付を行えなかったような中小企業などへの貸付など、金融機関から見た場合には資金提供先の拡大を期待できるだろう。

マネーフォワードと競合するクラウド会計の「freee」も銀行との連携は進めているし、銀行API開放の機運も高まっている。こうした企業の会計を可視化したプラットフォーム上での付加価値サービスは今後も増えそうだ。

今回、資本業務提携を発表したのは以下の金融機関:

静岡銀行/山口銀行/もみじ銀行/北九州銀行/東邦銀行/クレディセゾン

同じく業務提携を発表したのは以下:

住信SBIネット銀行/群馬銀行/滋賀銀行

連携する金融機関は以下:

みずほ銀行/GMOペイメントゲートウェイ

マネーフォワードが連携強化、他社お金関連サービスを集めてプラットフォームへ一歩

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個人・法人向けに家計簿や資産、経費管理サービスを展開するマネーフォワードが今日、個人向けアプリで新施策「マネーフォワード Apps」を開始した。まずはAndroid版を提供し、4月にはiOS版でもリリースする。

マネーフォワード Appsは、自社だけでなくパートナー企業など他社が開発した貯金、節約、投資に関するアプリを掲載する施策。すでに掲載しているアプリは以下。

・株価・為替の総合アプリ「Yahoo!ファイナンス」
・関西電力の電気代や使用料チェックアプリ「はぴ e みる電」

今後掲載を予定しているのはアプリは以下。

・NTTドコモがトライアル提供するレシートリワードを使ったマネーフォワードのアプリ
・カカクコムとの「お金のサービスランキング」連携
・お金のデザインのロボアドバイザー「THEO」
・電力比較のエネチェンジのアプリ

これ以外にもライフプラン関連などのアプリ提供を検討しているという。

マネーフォワードでは「掲載」という言葉を使っているが、これはデバイス上で別アプリを呼び出すようになっていて、未インストールの場合はGoogle PlayやApp Storeに誘導する形だ。以下の図をみると、各社アプリへの集客や開発支援をマネーフォワードが行うというふうになっていて、実際マネーフォワードAPIにあるOAuth認証を使ってアプリが開発できるという。他社アプリというのがWebアプリの場合には認証がラクになりそうだ。

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OAuth認証ということは、つまり事業者間とユーザーのコンセンサスさえあれば、技術的には各種データを企業間で共有する土台ができたわけだ。マネーフォワードは、各ユーザーごとの貯蓄額はもちろん、年収やお金の使い方について相当なデータを蓄積している。家計を見れば家族構成や年に何度旅行に行くか、なんかも分かる。これは他社からすればマーケティングデータとして欲しいところだろう。「カウント方式は非公開」ということで数字通りには受け取れないものの、マネーフォワードはユーザー数の参考値として「350万人が選んだ家計簿」という数字を出している。まだ大きいとは言えない規模だが、これまで口座アグリゲーションで自動分類をしてきた個人の家計データとなると利用価値は大きいと考えられる。そういう意味で、これまで自社を「お金のプラットフォーム」と規定してきたマネーフォワードとしては、エコシステム醸成とプラットフォーム化への一歩を踏み出すアプリだと言えそうだし、銀行のような既存プレイヤーに対してAPI公開を迫るプレッシャーとなるようであれば、消費者としては大いに歓迎したいね。

追記:記事初出時に新アプリとお伝えしましたが、正しくは既存アプリの新施策です。訂正してお詫びします。

マネーフォワードがRuby言語(オープンソース)の「パトロン」に

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Ruby言語のコア開発、卜部昌平氏(左)とマネーフォワード代表の辻庸介氏(右)

個人・法人向けの資産管理サービスを提供するマネーフォワードが今日、「フルタイムRubyコミッター職」として、Rubyコア開発者の卜部昌平氏(うらべ・しょうへい)を迎え入れたことを発表した。オープンソース開発者2人を「技術顧問」「Rubyコミッター職」として採用するということは、すでに2015年12月に発表済みで、TechCrunch Japanでも記事にしている。今回はRubyコミッター職に就任するとしていたのが卜部氏で、正式に3月本日付けで入社したという発表だ。

Rubyは日本生まれのプログラミング言語として、特にネット系企業で世界的にも人気が高い。卜部氏はこれまで過去に各Rubyのバージョンごとに選任される「リリースマネージャー」を担当するなどRuby開発チームの中では広く知られたベテランのソフトウェア・エンジニアだ。直近はDeNAでエンジニアをしていて、空き時間にボランティアでRubyの開発やRubyKaigiなどRuby関連イベントの開催に携わってきた。

そんな卜部氏は今後、マネーフォワードのプロダクト開発には関わらず、Ruby言語の開発に専念するという。

日本企業、それもリソースに余裕のないスタートアップ企業が本業に関わらなくて良いから基盤技術であるプログラミング言語の開発だけに専念してくれ、というのは、かなり思い切った施策と言って良いだろう。マネーフォワードは何を期待しているのだろうか? マネーフォワード代表取締役社長CEO 辻庸介はTechCrunchの取材に対して、以下のように話した。

「当社の直接的な業務に携わるわけではありませんが、社内のエンジニアとのコミュニケーションは大事だと思っています。基本的には社内に来て頂いて、(社内)勉強会とかにも、どんどん入っていただきたいなと思っています」

「すでに技術顧問として入っていただいた松田氏には技術的なところはアドバイスをしてもらっています。メンタリングのようなこともやっていただければと考えています。弊社のエンジニアと一緒にそのまま飲みに行ったりしていますし、開発の最前線の人と話をするのは健全なことだと思っています」

やはり今後のエンジニア採用にプラスの施策という認識だろうか?

「進んでる会社とか、スタートアップのように先を行ってる会社ではRubyエンジニア獲得は激戦になっています。エンジニアが働きたいと思う会社ってお金とかじゃないと思うんですよね。サービスを通して世界を良くできるのか、どういうメンバーが働いているか、自分はそこにいることでスキルが上がっていくのか。卜部さんとか松田さんが来るのはエンジニアにとって魅力的」

トップエンジニアがいる会社には良い人材が集まる。そうだとしてもリソースの限られたスタートアップ企業で、オープンソースプロジェクトの「パトロン」となるのは厳しいのではないか。マネーフォワードは社員数135人、エンジニア比率は4割程度だ。どうやってステークホルダーを説得したのだろう。

「ペイするかというと分かりません。コスト負担は大きいです。ただ、これはきれいごとかもしれませんけど、タダ乗りってフェアじゃないよねと思っているんです。アメリカにMBAを取りに行っていたときにコントリビューションということを、すごく言われたんです。自分が所属する世界に対して何を貢献するのか、と。コミュニティーに協力して貢献する。青臭いかもしれませんけど、そこの思いから始めています。もちろんVCや株主から出資してもらっているので取締役会でも議論しました。思いと狙いのバランス、実利と両方です」

フルタイムでRuby開発に携わっているのは、Rubyの生みの親であるまつもとゆきひろ氏のほかに、Salesforce傘下のHerokuが抱える笹田耕一氏、中田伸悦氏がいる。今回卜部氏がフルタイムとなることで、Ruby開発は加速するのだろうか? 卜部氏はTechCrunchの取材に対して「Rubyの開発はもちろん加速すると思います」と明言した上で、今回の「フルタイムコミッター職」というパトロン形式での採用について以下のように話した。

「開発者を丸ごとパトロンするという認識だと、(世界的にも)珍しいと思います。ただ研究開発職と考えるとどうでしょうか。最近でこそ不景気な話も聞きますが、昔から大手企業にはプログラミングに限らずいろいろな分野の研究所で開発する研究者などがいるかと思います。そう思えばさほど違わない境遇の人は、知られていないだけで案外いたかもしれません。今回の場合は研究職との違いはオープンソースにコミットすること、だと思います。インパクトのある仕事をすることが求められているという点では一緒でしょう。自分の場合はインパクトファクターのような指標ではなく、実際のコードで、ということですね」

「最近はオープンソース開発がただの一過性の流行などではなく、企業の競争力の源泉として認識されてきているかと思います。最近でもMicrosoftが.NET CLRをオープンソースにしていたり、あるいはAppleがSwiftをオープンソースにしていたりします。このように、企業がコアコンピタンスとしてオープンソースを位置づけることはもはや珍しくないし、その中で開発力をどのように得ていくかということで、オープンソースを常時開発して、企業に貢献していく開発者という働き方が、以前よりは増えているのではないでしょうか。一般的とまで言えるかは分かりませんが」

「いま、国内でもオープンソースを技術力の源泉として『利用』している企業は、結構増えてきてると思います。これからはさらに一歩先、オープンソース『開発』を自社の技術力の源泉としていく企業が増えてほしいです。望む未来を実現するには発明してしまうのが一番早いとも言います。企業の側からのメリットはそこにあると思います」

「今回は自分としてもチャレンジングな仕事をオファーしていただいたと思っています。働き方のモデルケースとなれるように頑張っていきたいです。後に続く人が増えてほしいと思います」

マネーフォワード、フルタイムのRuby開発者を「Rubyコミッター職」で採用へ

日本のオープンソース開発者に明るいニュースが入ってきた。Fintechスタートアップのマネーフォワードが日本で有数のオープンソース開発者2人に「技術顧問」「Rubyコミッター職」というポジションを用意して、国産プログラミング言語のRubyの発展に貢献すると発表した

技術顧問に就任したのはRuby言語と、Rubyを使ったWeb開発フレームワーク「Ruby on Rails」の両方のコミッターである松田明氏。「コミッター」とは、オープンソースのプロジェクトにおいて直接ソースコードに改変を加える権限のあるコア開発メンバーのことだ。

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マネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介氏(左)と、技術顧問に就任した松田明氏(右)

モバイル時代とはいえ、サーバ側のバックエンドにビジネスロジックを組み入れるとなると、PaaSやBaaSで済まない。今でもスタートアップ企業の多くがRuby on RailsやNode.jsを使っていることだろう。松田明氏は、日本人で唯一のRuby on Railsのコミッターとして知られていて、クックパッドやForkwellなど各社サービスのバックエンドの開発においてフリーランス的な立場から技術支援してきた経歴がある。

松田氏はマネーフォワードの技術顧問に就任したと発表があったが、もう1人、Ruby開発者がマネーフォワードに参画するという発表があった。こちらはまだ名前は伏せられているものの、フルタイムの「Rubyコミッター職」というポジションで、来年初旬の入社を予定しているという。これまでセールスフォース傘下のHerokuが、日本人のRubyコミッターをフルタイム採用するという例はあったが、日本企業の、しかもスタートアップ企業が採用するのは聞いたことがない。このコミッター職というのは、その名が示す通りRuby言語の開発が主な業務であって直接はサービス開発に関わらない。これは、かなり思い切った採用だ。

Rubyはまつもとゆきひろ氏によって生み出されたオープンソースのプログラミング言語として1995年から徐々に国内で、そしてRuby on Railsの登場で2000年代半ばからはアメリカを始めとする世界中で人気となった。一方で、Ruby言語については開発の中心メンバーは日本人の有志だけという状態が長く続いていた。2011年にHerokuがRuby開発のキーパーソンである笹田耕一氏や中田伸悦氏を雇い入れるまでは、Ruby言語を開発し、改善していたコア開発者たちは、Ruby創始者のまつもと氏をのぞいては本業のあるエンジニアが空き時間を使うケースがほとんどだった。

一般にスタートアップ企業はリソースに余裕がなく、オープンソースを利用することはあっても積極的に貢献することができないケースが多い。オープンソース開発者の中には、「使うだけ使って何の貢献もフィードバックもしないフリーライダーが多すぎる」と苦言を呈する人もいる。ある程度の売上規模になれば、バグ修正や、ちょっとしたライブラリの公開くらいできるはずなのに、それすらやらないのはイケてないということだ。逆に、今回のマネーフォワードのようにサービスを支える基盤技術と、それを陰で支えている人材に投資をしてコミットメントを示すのは、今後のエンジニア採用という面でも良い方向に働くだろう。エンジニアリングの価値を評価しているという強いシグナルになるし、著名開発者を引き入れることでエンジニアが働きやすい環境であると示すことができるからだ。いずれにしても、日本発のプログラミング言語Rubyに対して国内企業が踏み込んで支援するというのはすばらしいことだと思う。

(情報開示:この記事の著者、TechCrunch Japan編集長の西村賢は、松田明氏とは地域Rubyコミュニティーを通した数年来の友人)

マネーフォワードが15億円調達、事業パートナー出資で着々と足場拡大へ

家計簿アプリとクラウド会計ソフトを手がけるマネーフォワードは19日、総額約15億円の資金調達を実施することを明らかにした。引受先は既存株主のジャフコに加えて、クレディセゾンやソースネクスト、三井住友海上キャピタル、電通デジタル・ホールディングスといった事業会社。マネーフォワードの辻庸介社長は、「各ジャンルのナンバーワンプレイヤーに出資してもらえたことで事業拡大を加速できる」とシナジー効果を期待している。

マネーフォワードは、約180万人が利用する個人向け家計簿アプリ「マネーフォワード」と、法人向けクラウド会計サービス「MFクラウド会計」を提供するスタートアップ。個人向けでは9月、家計・資産データの活用を可能にするAPI連携を開始。これまでにヤフーやグノシーと業務提携し、各サービス経由でユーザーを獲得している。法人向けの利用者数は明かしていないが、ウェブ経由では中小企業や個人事業主、全国各地で開催するセミナーを通じて大手の税理士法人を取り込んでいる。機能面では確定申告や請求書サービスも投入した。

引受先のクレディセゾンとは、個人および法人の顧客を相互送客してユーザー拡大を図る。両社は5月に業務提携しており、クレディセゾンが発行するセゾン・UCカードの利用明細データをマネーフォワード上に自動保存するサービスを提供している。今後はMFクラウド請求書とクレディセゾンのカード決済の連携や、MFクラウド会計利用者向けの金融商品も開発していく。

ソースネクストとの資本提携では販路の拡大を見込んでいる。両社は3月に業務提携し、ソースネクストを通して、NTTドコモが提供する「スゴ得コンテンツ」、KDDIが手がける「auスマートパス」、ソースネクストの「アプリ超放題」といった月額定額のアプリ使い放題サービスにマネーフォワードのコンテンツを提供している。ソースネクストの量販店チャネルも活用し、確定シーズンに向けてパッケージ版の販売も強化する。

三井住友海上キャピタルとは顧客や提携先の紹介、電通デジタル・ホールディングスとは広告事業の拡大やPR戦略の策定のサポートをしてもらう。同じく引受先であるGMO VenturePartnersは中小企業へのネットワークを持つベンチャーキャピタルで、マネーフォワードの事業拡大に向けて連携する。辻社長は「個人と中小向けサービスで国内ナンバーワンを取り、決済が盛り上がっている東南アジアに進出したい」と青写真を描いている。

今回調達した15億円では、プロダクト強化やサポート体制の充実に向けた人材を採用するほか、マーケティングも加速する。3月下旬には、給与計算業務を効率化する「MFクラウド給与」をリリースする。MFクラウド給与では、基本的な給与計算やウェブ給与明細の機能を搭載。その後は、経費精算を行う「MFクラウド経費」も投入する予定だ。

ところで、スマートニュースやグノシー、メルカリ、sansan、ラクスルなど、10億円以上調達したスタートアップの多くがテレビCMを展開しているが、マネーフォワードはどうなのか? 辻社長は「検討はしたが、当面はやらない結論に至った。現状でやっても砂に水を撒く感じになりそう」と否定し、事業会社と提携して着々とチャネルを拡大する考えを示した。

マネーフォワードは、2013年10月に調達した5億円を含めると、これまでに合計20億円以上を調達したことになる。ちなみに、クラウド会計分野で競合となるfreeeは、これまでに合計17億5000万円を調達している。


マネーフォワード、クラウド型でも郵送に対応する請求書管理サービス

基幹システムを導入する予算がない個人事業主や中小企業にとって、請求業務は一銭の利益も生み出さないにもかかわらず、毎月多くの時間を費やさなければならないルーチンワークだ。国内には、クラウドを使って請求業務を効率化するサービスとして「MakeLeaps」「Misoca」があるけれど、クラウド会計ソフトのマネーフォワードが20日、同分野に参入した。

請求書といえば手入力で作成してから、印刷・捺印した上で郵送するのが一般的。これに対してマネーフォワードが開始した「MFクラウド請求書」は、クラウド上でロゴや社印付きの請求書を作成・送付できる。取引先を一度登録すれば、それ以降は選択するだけで請求書の作成が可能だ。請求書をPDF化してメール送信する機能も備える。

既存のサービスとの違いは、クラウド会計ソフト「マネーフォワード For BUSINESS」の会計データと連携している点だ。例えば、請求書を送付すると自動的に会計ソフトで売掛金の仕訳を作成したり、入金時に会計ソフト側で消し込み処理を行うと請求書サービスのステータスも自動的に入金済みにな

クラウド型の請求書作成サービスは紙でやりとりするのに比べ、作業時間が短くなるだけでなく、紛失リスクもなくなる。とはいえ、いきなりクラウド化するのは「商習慣的に抵抗がある」という声もあるかもしれない。そんな企業に対しては、6月上旬をめどに請求書の印刷・封入・郵送を有償で代行するサービスを開始する。当面はベータ版として、代行サービスを除く全機能を無料で提供する。


自動家計簿「マネーフォワード」のユーザーはカード利用回数が増えるらしい

自動家計簿サービス「マネーフォワード」を使ってみると、クレジットカードや電子マネーの出金履歴を自動入力してくれる便利さのあまり、極力現金払いを避けたくなるほどだ。うちの編集部の西村賢にいたっては、外出先ではドコモの電子マネー「id」しか使いたくないと言い張っている。我々以外にもこうした人は多いようで、カードの利用回数が月間10回未満のユーザーの場合、マネーフォワードにクレジットカードを登録した後は、カードの利用回数が平均1.7倍に増えるなど、日頃の現金支払いをカードに切り替える傾向があるのだという。さて、そんなマネーフォワードが16日、クレディセゾンとの業務提携を発表した。

これに伴い、クレディセゾンが発行するセゾン・UCカードの利用明細データをマネーフォワード上に自動保存するサービスを開始する。セゾン・UCカードの確定済みのウェブ利用明細は過去3カ月分のみ閲覧可能だが、マネーフォワード上では1年間閲覧でき、月額500円のプレミアム会員であれば無期限で閲覧できる。明細の閲覧期間が短すぎて気づいたら消えていた、なんてこともなくなりそうだ。7月には、クレディセゾンのネット会員IDでマネーフォワードにログインできるようにする。クレディセゾンのサイトで最も閲覧数が多い「カード利用明細ページ」では、「過去1年分のカード利用がチェックできる家計簿サービス」というキャッチコピーを掲げてマネーフォワードに誘導している。

金融機関のサービスといえば、各社が独自開発したものをユーザーに届けているわけだけれど、マネーフォワードのような専業ベンチャーと提携することで、サービスレベルと開発スピードが上がるメリットがありそう。クレディセゾンとしては、こうしたサービスが充実することで、紙の明細書をウェブに切り替える会員が増え、紙や郵送コストを削減することも見込んでいるようだ。クレディセゾンから「お墨付き」をもらったかたちのマネーフォワードだが、今後は他のクレジットカード会社や銀行、電子マネーとの提携も視野に入れている。

マネーフォワードは銀行や証券、クレジットカード、電子マネーなどのサイトにログインするIDとパスワードを登録するだけで、自動的に入出金情報を入力してくれるサービス。入出金情報は「食費」「日用品」「交通費」といった項目に自動で分類される。現金払いのぶんは別途、手入力が必要になるけれども、対応している約1400社の金融機関の入出金履歴をマネーフォワード上で一括管理でき、家計簿を付けるのが楽になる。

5月12日にはiPhoneアプリをフルリニューアルしている。デザインを一新し、従来は10個以上に分かれていたメイン機能を4つのタブにまとめて見やすくしたり、面倒な手入力についてもタブからすぐに使えるようにした。通信面ではバックグラウンドで処理する割合を増やすことで、体感速度を大幅にアップさせたという。Android版のリニューアルは未定。現在のユーザー数は明らかにしていないが、夏までに100万ユーザーを目指す。


データ自動取得で火花を散らすクラウド会計、freeeとマネーフォワードが立て続けにレジ勢と提携

簿記の知識がなくても確定申告や会計処理を可能にするクラウド型会計ソフト。国内ではfreeeマネーフォワードの2社が競合。どちらも顧客となる中小企業や個人事業主を取り込むために、機能強化を図りつつ、銀行やクレジットカード、ECサイトなど各種サービスのデータを自動取得するための提携を進めている。こうした施策の一環として、freeeが19日にリクルートライフスタイルの無料POSレジアプリ「Airレジ」、マネーフォワードが20日にスマートフォンやタブレットを使った決済サービス「Coiney(コイニー)」との提携を発表した。

freeeとAirレジの提携は、Airレジを利用する店舗の売上データを自動でfreeeに取り込めるようにするもの。Airレジで集計した売上のデータは1日1回、freeeに自動で取り込まれ、freee上で複式簿記の仕訳として反映される。現金だけでなく、クレジットカードやリクルートポイントでの支払いも区別して自動で取り込めるようになっている。従来のレジを使った場合、レジに売上データが入っていても、日々の締め作業でレシートを再度印刷し、会計ソフトにその内容を手入力する作業が必要だった。

マネーフォワードとCoineyの提携は、Coineyを導入している店舗の売上データを毎日マネーフォワードに取り込むことで、マネーフォワードへの売上データの手入力を省けるようにするもの。クラウド型会計ソフトでスマホ向け決済と提携するのは国内初といい、Square楽天スマートペイPaypal Hereといった同様のサービスともデータ連携に向けて協議を進めているそうだ。

マネーフォワードは2月17日、ECサイト構築サービス「BASE」、タブレット型POSシステム「EC-Orange POS」、クラウドソーシングサービス「クラウドワークス」とのデータ連携を開始。現時点では銀行1351サイト、クレジットカード51サイト、電子マネー6サイト、通販2サイトなど合計1420サイトから、自動的に売上データを取得することが可能となっている。

3月25日には、マネーフォワードにメールで請求書を送信する機能を追加する。これまでも請求書PDFをダウンロードすることは可能だったが、メール送信機能によって請求書を相手が受け取ったかどうか確認できるようになる。

freeeは、元グーグル社員の佐々木大輔氏が2012年7月に設立。2013年3月のサービス開始から1年で6万以上の事業者が利用しており、特に2014年以降はユーザー登録のペースが年末の5倍に達する勢いなのだという。その背景には、4月にWindows XPのサポート期間が終了し、インストール型の会計ソフトから乗り換るユーザーが増えていることや、消費税率の変更によって既存アプリのアップデートの波が来ていることがあるそうだ。

一方のマネーフォワードは、ソニーやマネックス証券に勤めていた辻庸介氏が2012年5月に設立。もともとは、銀行やクレジットカードなどの複数口座を一括で管理し、入出金情報を自動入力してくれる家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」を手がけていたが、2013年11月にクラウド会計ソフト事業にも参入。2014年1月の正式ローンチ時には、月額料金をfreeeの980円より低い800円に設定するなど攻勢をかけている。現在の利用者数は「数万人」だという。


クラウド会計のマネーフォワード、ECやPOS、クラウドソーシングの売上データを自動取得

クラウド型会計ソフトのマネーフォワードは17日、ECサイト構築サービス「BASE」、タブレット型POSシステム「EC-Orange POS」、クラウドソーシングサービス「クラウドワークス」とデータ連携を開始。3つのサービスの売上データを毎日自動できるようにした。BASEでネットショップを開設するオーナー、EC-Orange POSを利用する販売店、クラウドワークスを利用するフリーランスは、確定申告や経理・会計業務の手間が大幅に削減しそうだ。

マネーフォワードのクラウド会計ソフトは、確定申告や会計・経理業務を可能な限り自動化するのが特徴。銀行やクレジットカードなど1400以上の金融機関から入出金データを自動取得したり、学習機能で仕訳のルールを作成したり、仕訳データをもとにキャッシュフロー計算書や決算・税務申告関連のレポートを作成するなど、手入力の手間が大幅に省けるという。1月27日に正式版サービスを開始したばかりだ(関連記事:専門知識いらずのクラウド会計「マネーフォワード」正式版、価格優位でシェアトップ狙う)。

仕訳画面のイメージ図

今回データ連携したBASEは初期費用、月額費用、販売手数料が不要のECサイト構築サービスで、出店数は7万店を超える。EC-Orange POSはタブレットをベースとすることで導入コストを抑えるPOSシステムで、2500店舗以上に導入されている。クラウドワークスは発注者数2万3000社、登録会員は12万人を超えるクラウドソーシングサービス。

クラウドワークス会員に対しては2月3日より、月額800円の「マネーフォワード 確定申告」プレミアムプランを45日間無償で提供するキャンペーンを開始。今後は、BASEとEC-Orange POSのユーザーにも同様の優待特典を提供する。

話は変わるが、マネーフォワードはクラウドワークスにおいて、マネーフォワード 確定申告のキャッチコピーを募集している。採用作品には商品10万円と、プレミアムプランを1年間無料で使える権利がプレゼントされる。募集期間は3月7日までだ。


専門知識いらずのクラウド会計「マネーフォワード」正式版、価格優位でシェアトップ狙う

専門知識がなくても確定申告や会計処理を可能にするクラウド型会計ソフトといえば、2012年のTechCrunch Tokyo(TC Tokyo)でデビューを果たし、翌年3月にローンチした「freee」がある。その対抗馬と目されるのが2013年のTC Tokyoでお披露目となった「マネーフォワード 確定申告」および「マネーフォワード For BUSINESS」だ。1月27日に正式版サービスを開始した。料金プランは個人版で無料プランを用意したり、法人版ではfreeeを意識して安めに設定し、一気にシェアトップを狙う考えだ。

トップ画面のイメージ図

マネーフォワード 確定申告/マネーフォワード For BUSINESSは、確定申告や会計・経理業務を可能な限り自動化するクラウド型会計ソフト。銀行やクレジットカードなど1400以上の金融機関から入出金データを自動取得したり、学習機能で仕訳のルールを作成したり、仕訳データをもとにキャッシュフロー計算書や決算・税務申告関連のレポートを作成するなど、手入力の手間が大幅に省けるという。クラウド型サービスであるため、会計ソフトが少ないMacやiPadなど端末を選ばず、ブラウザー経由で使用できるのも特徴だ。

仕訳画面のイメージ図

料金プランは個人向けのマネーフォワード 確定申告が、基本機能無料のフリーミアムモデル。無料版は仕訳登録数が月間15件まで、仕訳の精度を高めるための学習ルールを登録できるのが月間5件までという制限がある。月額800円のプレミアムプランに加入すれば、これらの制限がなくなるとともに、帳簿データを他社ソフトの形式でエクスポートしたり、同時に閲覧・編集するユーザーを最大3名まで招待する機能なども利用できる。法人会計向けのマネーフォワード For BUSINESS(法人会計)は45日間無料で利用可能で、その後は月額1800円。

マネーフォワードは2013年11月にベータ版を公開(関連記事:マネーフォワードがクラウド会計に参入、専門知識不要の自動入力サービス)。正式版開始に伴い、青色申告・白色申告用の申告書の作成、家族や社員、税理士などと共同でデータを閲覧・編集するためのユーザー招待機能、「弥生」「会計王」「勘定奉行」など他社会計ソフトのデータのインポート機能などを追加した。また、領収書やレシートをスマートフォンで撮影し、データを自動で取り込む無料アプリも公開。レシートを読み取るアプリは数多くあるが、形式が複数ある領収書を読み取れるアプリは日本初だという。

実はベータ版公開時、料金プランはfreeeと同じで個人向けが980円、法人向けが1980円と発表していたが、正式版のリリースにあたって価格を下げたかたちだ。以前、マネーフォワードの辻庸介CEOにインタビューした際には「競合との価格競争は避けたい」と漏らしていたが、なぜ価格を下げたのか。

改めて聞いてみたところ、「今年中にクラウド会計ソフトのナンバーワンシェアを取る意気込みの表れ。今後もお金のプラットフォームになるための機能やサービスを追加する予定で、お金を払ってGmailも使えばカレンダーも使うGoogle Apps for businessのような存在になりたい。そのためには(値段を下げてでも)使ってもらわなければ」と話している。

マネーフォワードの辻庸介社長