ビル・ゲーツ、マイクロソフト技術アドバイザーに「ステップ・アップ」。祭り上げられたのか、飛躍なのか?

Satya NadellaのMicrosoft次期CEO就任のニュースと共に、もう一つ大きく変ったのが、経営陣の階層だ。Microsoftの共同ファウンダー、Bill Gatesは、会長の座を退き、新たに「ファウンダー・技術顧問」の責務を担う。Microsoftはこの変更を、以前の職務からの「ステップ・アップ」と説明しており、Gatesが再び同社内で積極的役割を担うことを示唆した。

2012年2月に取締役に就任し、現在筆頭社外取締役であるJohn Thompsonが、新会長となる。

Microsoftは、Gatesが「これまで以上の時間を会社に注ぎ込み、テクノロジーおよび製品の方向付けでNadellaをサポートする」と言った。Gatesは引き続き取締役会に所属する。
「Microsoftにおけるチャンスは以前よりも大きい」と、今日公開されたビデオ・アナウンスメントでGatesは話した。

ビデオ中Gatesは、クラウドテクノロジー、モバイル等の分野を強調した。自分の時間の1/3は製品グループと話す時間に使う、と彼は言っている。「Satyaが私にステップ・アップするよう言ってくれたことを大変喜んでいる」とGatesは言い、「一緒に新しい製品を作るのは楽しい」と付け加えた。

Microsoftの事情を知る人にとって、Gatesの行動は驚きではない。新たな指導者への引き継ぎの一環として、つい昨日、社内でGatesが製品開発におけるより積極的役割を担うであろうと報じらていた。少なくとも週に1日はMicrosoftで過ごすが、経営業務に関わる時間は少なくなるという。

一方、Steve BallmerがCEO辞任を公表してから今日までの間に、Gatesは会長を退任し、Microsoftの開発体制から古いアイデアを一掃するべきだとする議論もあった。

明らかでないのは、果たしてGatesの新しい役職が、彼を会長から退かせようとする圧力の結果なのか、それとも、より積極的役割を与えることによって、彼に再び同社の未来戦略に関わらせようというGatesと会社の純粋な関心によるものなのかである。別の言い方をするなら、彼は祭り上げられたのか、それともチャンスに飛び乗ったのか。

私の分析結果は後者を支持している。われわれはGatesがここしらく、同社の製品およびM&Aに関する極めて戦略的な活動に関与していると聞いている。そして、Gatesの退任を求める人々がいた一方で、GatesをCEO候補にというアイデアを推進してきた人々もいる。

Microsoftで以前より積極的役割を果たすことは、同社の共同ファウンダーにとって興味深い転機となるだろう。

過去数年間、Gatesは多くの時間と努力と金銭を、妻メリンダと共に立ち上げた慈善ベンチャー、および関連する投資に注いできた。また彼は、維持可能エネルギーや医療技術等の分野に特化した投資ポートフォリオも持っている

Microsoft取締役会のメンバーは以下の通り:Satya Nadella; Steve Ballmer; Dina Dublon(元JPMorgan Chase CFO); Bill Gates; Maria M. Klawe(Harvey Mudd Collegeプレジデント); Stephen J. Luczo(Seagate Technology PLC会長兼CEO); David F. Marquardt(August Capitalジェネラルパートナー);Charles H. Noski(Bank of America Corp.元会長); Dr. Helmut Panke(BMW Bayerische Motoren Werke AG元経営委員会会長); およびJohn Thompson(Virtual Instruments CEO)。

取締役10名中、7名が外部であり、これは実質的過半数を外部とする同社のガバナンス・ガイドラインに沿っている。

GatesがNadella新CEOを推薦するビデオを下に貼った。

写真:Flickr

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サトヤ・ナデラ執行副社長がMicrosoftの新CEOに就任―ビル・ゲイツはテクノロジー・アドバイザーに

Microsoftは大方の予想どおり、スティーブ・バルマーの後任の新CEOにサトヤ・ナデラ(Satya Nadella)を任命したと公式に発表した。 NadellaはMicrosoftに過去22年間在籍し、これまでクラウドとエンタープライズ担当執行副社長を務めていた。ナデラは同時にMicrosoftの取締役会にも参加する。ファウンダーのビル・ゲイツはこれまでよりMicrosoftへの関与を強める

ナデラはMicrosoftのクラウドサービス事業の推進のカギを握る人物と認められてきた。ナデラはまたBing、Xbox 、Microsoft Officeの最高責任者でもある。ナデラはMicrosoftのビジネス・サービス事業をわずか5年間に15億ドルから50億ドルに急成長させた。

スティーブ・バルマー前CEOは全社員向けのメールでこのニュースを発表し、「Microsoftの将来に大いに興奮している」(バルマーらしい。この大男がいなくなると寂しい)と述べた。ナデラ自身も社員向けにメールを送り 、ゲイツにMicrosoftの業務に関与する時間を増やすよう頼んだことを明らかにした。ナデラはイノベーションの重要性を指摘し、特にモバイルとクラウドがMicrosoftの将来のカギとなる重要分野だと述べた。

私は今後10年間にコンピューティングがいっそうユビキタス化し、新しい知的環境を作り出すと考えている。ソフトウェアと新しいフォームファクターのハードウェアは手をたずさえて発展し、われわれのビジネス、生活、そして世界をさらにデジタル化することになるだろう。これを可能にするのは、ますますインターネットに密接に接続するようになるデバイス、クラウドの膨大なコンピューティング能力、ビッグデータをベースにした洞察、機械学習による知能だ。

ナデラはさらに将来のコンピューティング環境においてMicrosoftは独自の位置を占めているとして次のように述べている。

Microsoftは あらゆるデバイスを通じて、あらゆる人々、あらゆる組織にソフトウェアの力を届ける力をもった唯一の存在だ。巨大な可能性を持つプラットフォームとエコシステムの建設と発展の努力とその実績においてMicrosoftは比類ない会社だ。

ナデラのCEO就任はMicrosoftが現在190億ドルのサーバーおよびツール事業へさらに力を入れることを意味する。新CEOはXBox事業の責任者であり、知的所有権、対話的TVなどの分野にも手腕を発揮しそうだ。この点でもナデラは他の候補者よりはるかにCEOとして適任だ。ナデラ’はクラウドとモバイルの重要性を繰り返し強調したが、これはMicrosoftがハードウェア事業を軽視するようになることはないという決意の表明だろう。

MicrosoftはナデラのCEO任命と同時に、元CEOのビル・ゲイツがファウンダー・テクノロジー・アドバイザー(Founder and Technology Advisor)に就任することを発表した。これによってゲイツは現在よりも積極的にプロダクト開発に参加することになる。これはナデラがハードウェア事業に経験が不足しているとみられることに予め先手を打った動きだ。実際、ゲイツがベンチを出て打席に立つようになれば、チームは大いに強化されるだろう。新しい役職のもとでゲイツは時間の30%をMicrosoftの業務にあてることになる。

Microsoftの39年の歴史でナデラは3人目のCEOだ。その前はゲイツが1975年から2000年まで、バルマーが2000年から2014年1月までCEOを務めた。

Microsoftは今回の人事異動に関して太平洋時間午後12:00からウェブキャストを行うということなのでわれわれは引き続きフォローしていく。

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Dell、HDMI端子付テレビにつながる129ドルのAndroidスティックを発売

Dellの自社ラインアップにAndroidを導入する挑戦は続いている。この新しい129ドルのデバイスは、GoogleのモバイルOSをHDMI入力付のテレビやモニターに持ち込む。Dell Wyse Cloud Connectは、Android Jelly Beanを塔載し、MHL(モバイル・ハイデフィニション・リンク)接続をサポートしている他、Bluetoothおよびmini USB経由でマウス、キーボード等も接続できる。

内蔵Bluetoothに加え、Dell Wyse Cloud Connectは、802.11n デュアルバンドWi-FiとGoogle Playストアを標準塔載している。これはエンタープライズおよびビジネスをターゲットにした商品だが、標準でインストールされているDellのWyse PocketCloudトソフトウェアによって、リモートコンピューターのバーチャル端末としても使える。

これは、事実上、長らく待望されてきた持ち歩き自由で自宅のファイルやソフトウェアやコミュニケーションも利用できるシン・クライアントPCだ。もちろん、出張者がエンターテイメントに利用できないという意味ではない。フルHDの出力を備えNetflixのAndroidアプリも容易に走るはずだからだ。

その「マルチコア」のCortest-A9 ARM SoCは、世界一強力なモバイルプロセッサーではないかもしれないが、Dellは、そのHDおよび3Dグラフィック能力を、特にスペックシートで謳っている。8GBのストレージ、RAM 1GBを内蔵し、micro SDスロットを使えば72GBの追加ストレージを得られる。

あくまでも表面的な印象からだが、出張の多いビジネスマンのつらい旅先には断然おすすめする。果たしDellがこの方向に進んでOuyaやGamestickなどの市場に参入し、ビジネス色に塗りかえることができるのかどうか、今後が楽しみだ。

妙な気分だが、過去少なくとも5年間で初めて、私はDellコンピューターを欲しいと思っている。信じられない。

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Google、Motorola Mobilityを29.1億ドルでLenovoに売却―特許の大部分を手元に残す

GoogleはMotorola MobilityをLenovoに29.1億ドルで売却した。2011年にGoogleがMotorolaの携帯電話事業を保有する特許を含めて買収したときの価格は125億ドルだった。

Motorola MobilityのCEO、Dennis Woodsideによれば、Googleは今後もMotorola Mobilityの特許ポートフォリオの「圧倒的部分を保有する」という。 Lenovoは現在Googleと結んでいる提携関係にもとづき、特許を含むMotorolaの膨大な知的財産の利用を続けることができる。Lenovoは約2000件の特許とMotorola Mobilityのブランド名を含む全資産を譲り受けた。

GoogleがMotorola Mobilityを買収した際に、これはハードウェア製造事業に乗り出すためなのか、特許紛争で自らを防衛するために特許権を取得することが目的だったのかと盛んに議論された。結局答えはその中間にあったようだ。Motorola特許はそれ自身ではGoogleの特許紛争で目覚ましい効果を挙げなかったものの、SamsungなどのハードウェアメーカーにクロスライセンスすることによってGoogleがAndroid陣営のリーダーとしての地位を強化することに貢献した。

同時にGoogleの買収と投資によってMotorolaの自己改革が大きく進んだ。同社は今や優れたスマートフォンを数機種市場に送り出し、好評を得ている。また最近ではDARPA(国防高等研究計画局)の長官を研究開発の責任者にスカウトして注目された。

GoogleはこれまでにケーブルTVのセットトップボックス事業などいくつかのMotorolaの資産を売却している。 その結果Motorolaの特許資産をGoogleは55億ドルで購入したことになる。それが高かったか安かったかの計算はともあれ、戦略的にはおおむねGoogleの勝利と見てよいだろう。アナリスストのBenedict Evansの試算によればGoogleのMotrola購入金額は実際には120億ドルではなく71.5億ドルだったという。そうだとすればGoogleがMotorolaの買収と売却で計上した損失は20億ドルにすぎないことになる。GoogleがMotorolaを再生させた結果、現在世界最大の消費者向けコンピュータ・メーカーであるLenovoの傘下に巨大なAndroidメーカーが生まれた。その一方、GoogleはNestやBoston Dynamicsのような有望なハードウェア・スタートアップを買収し、最高の人材を手に入れている。

GoogleのCEO、Larry Pageは今日(米国時間1/29)のプレスリリースで、 「(Motorolaの売却は)われわれの他のハードウェア事業に大きな路線の変更があることを意味するものではない。たとえばウェアラブルやホームオートメーション市場はまだ成熟しておらずダイナミックな発展の途上にある。これはモバイル事業とは大きく異る状況だ。われわれはこれらの新しいエコシステムの中で驚くべきプロダクトをユーザーに提供していくつもりだ」と述べた。

Motorolaの買収と売却は表面的な算術計算とは異なり、ジグソーパズルのさまざまなピースをしかるべき位置に収めていくと、単に持ち出しに終わったというわけではなさそうだ。

Image Credit: Hades2k

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Facebook、オープン・コンピュート・プロジェクトで10億ドル以上を節約

Facebookは独自に省エネ性能の高いサーバーを設計したことで莫大な利益を上げているようだ。

今日(米国時間1/28)、CEOのマーク・ザッカーバーグはOpen Computeサミットで「Open Computeデザインにもとづいてインフラを構築することにより、の3年間でわれわれは10億ドル以上の経費節減に成功している」と述べた。

Facebookは2011年4月にOpen Computeプロジェクトをスタートさせた。その後参加者はIT産業全体に広がり、サーバー、データセンターのグリーン化に大きく貢献するようになった。現在のメンバーにはIntel、AMD、Bloomberg、Box、Cumulus Networks、IBM、Microsoftなどが含まれる。

Open Computeプロジェクトは大量のエネルギー節約を実現しているが、それはとりも直さずFacebookが支払う電気料金の節約になっている。ザッカーバーグはサミットの壇上でティム・オライリーと対談し、「昨年だけで40万軒の家庭の年間使用電力、あるいは5万台の自動車に相当するエネルギーを節約できた」と誇らしげに明かした。

最近のアメリカの家庭の月平均間電力使用量は903kW/h、料金はkW/hあたり0.1209ドルということなので、Facebookは年間およそ5200万ドル前後の電力料金を節約できたことになる。

省エネが実現できただけでなく、Open ComputeプロジェクトのおかげFacebookは多数のベンダーから簡単に同一の機器を購入できるようになった。サプライチェーンの多様化はFacebookの調達コストを下げるのに寄与しているはずだ。また優秀なエンジニアをスカウトする際にも有利に働くだろう。

もっと広い観点から見れば、Open Computeはまだインターネットの恩恵に浴していない世界の50億人に安価なデータ・アクセスを提供しようとするInternet.orgのプロジェクトを助けるものだ。世界の人々を助けながらコストを削減し、さらに帝国を強化しようというのがFacebookの目論見だろう。

[画像 The Register, Karl Fruend]

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Dropbox、2.5億から4億ドルの巨額資金調達―エンタープライズ市場でライバルを先制攻撃へ

Dropboxは100億ドルの会社評価額で2.5億ドルから4億ドルの資金調達を行ったもようだ。Wall Street JournalRe / codeの記事によれば、 その理由として考えられるのは、Dropboxは昨年ビジネス向けにプロダクトを全面的に作り直しており、今年はこれを売っていく必要があるかという点だ。情報源によれば、Dropboxは現在の過熱気味のベンチャーキャピタル市場とDropboxへの高い関心から最大限有利な資金調達を試みたのだという。

調達した資金は他のテクノロジー企業からトップクラスの人材をスカウトしたり有力スタートアップを買収するのにも役立つ。しかし現在のDropboxにとってもっとも重要なのはBox、Google Drive、Microsoft SkyDrive、Amazon WorkSpacesといった強力なライバルに大企業ユーザーをさらわれる前に先制攻撃してシェアを確保することだ。

Dropboxの急成長

Dropboxは当初個人ユーザー向けの手軽なクラウド・バックアップ・ツールとしてスタートした。「あなたのファイルをどこにでも」がそのキャッチフレーズだった。AK-47を構えた恐竜がサメにまたがり、その背中にハゲワシが止まっているイラストがマスコットだった。Dropboxはサンフランシスコの本社ロビーにわざわざそのTレックスの像を作って飾っていた。この時期のDropboxには企業向けにセキュリティやスケーラビリティーを真剣に売り込むつもりがあったようには見えない。

しかしユーザーにギガバイト単位で無料のストレージを提供する戦略が功を奏し、Dropboxは口コミでテクノロジーに強い個人ユーザーの圧倒的な支持を得るようになった。2012年12月にはユーザーが1億人を突破、その1年後には2億人となった。また明るい社風が幸いしてGoogleのPythonの父であるGoogleのGuido Van RossumFacebookのベテラン・デザイナー、Soleio Cuervo、Rasmus Anderssonなどのビッグネームのスカウトにも成功した。

しかしわれわれは1年前に企業ユーザーから 「Dropboxはにはビジネス利用に必要なアクセス管理やセキュリティ機能がない」という声を聞いていた。つまり社員の誰がどのファイルにアクセスし、ダウンロードしたのかなどを確実にモニタする機能などがまだ欠けていた。.

そこで1年前からDropboxはサービスのアーキテクチャをビジネス利用に耐えるように全面的にアップグレードするという野心的な試みに乗り出した。これはユーザーが同一アカウント内から新しいエンタープライズ向けサービスと従来の個人向けサービスの双方にアクセスできるようにすることを目的としていた。.

2013年11月に共同ファウンダー、CEOのDrew Houstonが新しいDropbox For Businessを発表した。Houstonはここで業務用ファイルとプライベートなファイルの双方に同一アカウントでアクセスできる点や強力なアクセス管理と共有管理機能をアピールした。また社員が辞めたり異動した場合にその社員がアクセスできるすべてのデバイスからファイルを一括削除できる機能も追加された。

このDropbox For Businessは今年前半には一般公開されるという。個人ユーザーには圧倒的な人気を誇るDropboxだが、何千人ものアカウントを必要とする大企業に1人年額175ドルで新サービスを売り込むのは大事業だ。大量のセールス部隊が必要になるだろうし、当然大量の資金が必要になる。

ベンチャーキャピタル市場は過熱状態

Dropboxにとって幸運なことに、PinterestUberの億単位の巨額資金調達をみてもわかるように現在の資金調達の環境はきわめて良いFacebookの株価が復調し、Twitterの大型上場が成功したことも資金市場を過熱させている。一方、Dropboxの内情に詳しい情報源によると、同社はエンタープライズ向けクラウドサービスのライバル、Boxの急成長に極めて警戒を強めており、「鉄は熱いうちに打て」とばかりにこのチャンスを生かして最大限の資金調達を試みたのだという。

Wall Street JournalのDouglas MacMillanRe / code’sの Liz GannesによればDropboxはBlackRockがリードし、既存投資家が参加したラウンドで2億5000万ドルの調達を完了したという。さらにDropboxは大手ミューチュアル・ファンドのFidelityとT.Rowe Pricemayから追加の1億ドルから1.5億ドルを引き出す可能性がある。

この一連の資金調達の結果、Dropbox の調達総額は5億700万ドルから6億57 00万ドルとなる。

金を稼ぐには金を使わねばならぬ

潤沢な資金の確保に成功した後、緊急に必要なのはセールス能力の拡充だ。

これには実績あるセールス担当幹部のスカウトが近道だ。すでに2012年にSalesforceの営業部隊を10年にわたって率いてきたKevin Eganをスカウトしている。また最近ではビジネスソフトの有力ベンダーなどサードパーティーとの提携を強めるためにビジネス開発チームを強化し、Facebookのモバイル提携の責任者、Henri Moissinac、Spotifyの提携業務担当幹部、Tom Hsiehを採用している。

また今回の資金は将軍を雇うだけでなく大量の歩兵を雇うためにも必要だった。Dropboxは2013年に200人から500人へと拡大した。今後はさらに拡大の速度を速めるだろう。

しかしエンタープライズ市場で成功するためには、前述のように、まずBoxとそのカリスマ的リーダー、Aaron Levieと戦わねばならない。Boxのビジネスユーザーはまだ20万社にとどまっているものの、Boxはセキュリティとアクセス管理の面でエンタープライズ・ユーザーから高く評価されている。それがBoxがProcter & Gamble、Nationwide Insurance, LinkedIn, MTVなどのビッグネームとの契約に成功した理由だ。Dropbox(上)とBox(下)のホームページを眺めただけでも両者がどのようなユーザーを主たるターゲットにしているか想像がつくだろう。

DropboxはまたGoogle Driveとも競争しなければならない。Googleは他のエンタープライズ向けサービスとの緊密な統合を約束できるという強みがある。またMicrosoft’s Officeを中心に業務が組み立てられている場合、SkyDriveはには優位性がある。Amazon WorkSpacesはAmazon Web Services(AWS)をバックにしている。Dropboxのような独立のサービスにとってはいずれも手強いライバルだ。

また先週起きたようなシステムダウンを防がなければはビジネスユーザーを遠ざけることになる。

DropboxのCEO、Drew Houston

DropboxはMailboxの買収を買収したが、同時にもっと小さいチームEndorseSnapjoySoldなども傘下に収めてきた。数億ドルの資金を得た以上、M&Aでも積極的な動きが予想される。Dropboxが現在のサービスの穴(たとえば複数ユーザーのリアルタイム共同作業)を企業買収で素早く埋めることができればユーザーにとっての魅力が増すだろう。

昨年われわれはDropboxが2014年に上場すると予測した。しかし上場は時間のかかるわずらわしい手続きであり、共同ファウンダーのHoustonとFerdowsiがニューヨーク証券取引所で取引開始の鐘を鳴らすときに株式市場の情勢がどうなっているかも分からない。Dropboxが現在できるだけ多額の資金を集めているのは賢明な戦略といえる。

[I画像:Ariel Zambelich/WiredJDLasica]

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大手スーパーのTarget、カード情報流出の賠償金額は最大36億ドル

Targetにとってはメリークリスマスどころではないようだ。先週同社は、顧客のクレジットカード情報4000万件が盗まれたことを公表した。その結果、小売業巨人の賠償額は最大36億ドルに上るようだ。

Targetは、データが流失したカード保有者一人につき90ドルの罰金を課される可能性があり、その場合総額は36億ドルに相当する、SuperMoneyのウェブサイトは書いている。

内訳はこうだ。すでにTargetは、あらゆる種類の訴訟に直面する可能性が高く、これに同社システム基盤のセキュリティーを全面的に見直すためのコストが加わる。ただし、それはごく一部にすぎない。去る2006年に、Visa、American Express、JCB、Discover、およびMasterCardは、PCIセキュリティー評議会を設立し、新たなカード情報セキュリティー標準(PCI DSS)を監視している。

このデータセキュリティー標準は、各組織がカード保有者情報を管理する方法を定めている。当然、この標準はカード詐欺を可能性を減らすことが目的だ。Target等の企業は、通常年に1回PCI評議会の審査を受け、正しい運用がなされているかどうかを確認する。PCI評議会としては、自らが承認したシステムが破られたことはないと言いたいところだが、実はそうでもない。評議議会は、企業に違反があった際遡及的に承認を取消すことがある。

いずれにせよ、Targetは極めて厳しい状況にある。彼らは、民事制裁金、クレジットカード会社による取扱中止、会社にとって重大な顧客からの信用を失墜など様々な困難に直面することになる。すでに4州が、集団訴訟に関する質問をTargetに寄せている。同社の大きなターゲット(標的)のロゴが突如として全く新しい意味を持ち始めた。

しかし、本当の損害が明らかになるのは、カード保有者当たりの罰金が累績した時だ。仮に企業が100%PCIに準拠していたとしても、「カード情報の流出は起こり得る。データを盗まれたカード保有者当たりの罰金は50~90ドルに上る」とFocus On PCIのウェブサイトは言っている。T.J. Maxxは、2007年に9000万件のカード情報が盗まれた際、同様の窮地に陥った。 

今回の流出が起きた原因には、数多くの説がある。しかし最悪なのは、これがわれわれ一般人に影響を及ぼしていることだ。ここアメリカでわれわれが使っているクレジットカードには、すべて磁気ストライプが付いている。盗まれたデータはすべてカードから読み込まれたものであり、偽造カードに書き込まれてブラックマーケットに売られる、とセキュリティー専門家のBrian Krebsは指摘し、本誌のJohn Biggsも解説している。

すべての責任をTargetに帰すること簡単だ。しかし昔ながらの磁気ストライプは、詐欺師たちによる偽造を著しく容易にする。ICチップによるデータ暗号化はヨーロッパをはじめ世界各所で何年も前から使われているが、米国は大きく出遅れており、ブラックマーケットのハッカーにとって安住の地となっている。ICチップは万能ではないが、この巨大な混乱の中で最も弱い立場にある消費者を保護することに関しては大いに役に立つ。

(トップ画像:via Flickr)

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


ソーシャルネットワークへの投稿をスケジューリングするBuffer、β段階から好調のBuffer for Businessを正式リリース

サンフランシスコに拠点をおくBufferがBuffer for Businessを正式にリリースした。BufferはFacebook、Twitter、その他のソーシャルチャネルへの投稿をスケジューリングすることのできるサービスだ。ソーシャルメディアへのプレゼンスをコントロールしようとする多くのブランドが利用している。今回正式リリースとなったBuffer for Businessは、これまでの数ヶ月間の間、小規模なプライベートベータとしてテストを行っていたものだ。記したように、これまでもブランドにとっては便利なサービスだったわけだが、ビジネス版では詳細な分析機能、チームでの利用を考えたコラボレーション機能、データを再利用するためのエクポート機能などが備えられている。

これまでがクローズドなベータ版運用であったにも関わらず、Buffer for Businessは既に経営面で無視できない存在となりつつあるそうだ。共同ファウンダーのLeo Widrichによると、ベータ期間中だけで400社が有料利用を開始しており、1ヵ月の売上げに換算すれば2万3000ドルになるのだそうだ。これは全売上げの10%を占める数値になるとのこと。個人利用者と比べてより大きな予算を持つ企業を相手にすることにより、Buffer for Businessは売上面でかなり貢献してくれそうな見込みが感じられる。

ちなみにBufferは、昨年から個人利用者にとっての使い勝手の向上も行ってきていた。そうしてプロダクトの魅力を高めることで、FeedlyやEchofonなどとの提携を行うようにもなっている。これもBufferにとってはそれなりの成果をもたらしているのだが(かなりの利用者獲得に成功している)、企業ユーザー獲得による収益ベースの確立についても力を注いでいこうという狙いなのだろう。

Buffer for Businessで使えるツール群も7月より提供されている。アクセス状況を見て投稿のスケジューリングが行えるのはもちろん、エンゲージメント、リツイート、お気に入り登録、1日あたりの投稿数による各種データの推移などについて詳細に分析することのできる各種ツール類が利用可能となっている。こうしたツール群はすべて各利用者毎に準備されたダッシュボードから操作することができる。データはもちろん見やすい表やグラフなどで表示され、いろいろなケースを比較表示するようなこともできる。

利用開始にあたっては無料のトライアルも用意されている。正式な利用にあたっては5名までのチームで利用する場合は月額50ドルからとなっており、利用するサービスなどに応じて最高で月額250ドルとなっている。各種サービスメニューを整えることによって、Bufferの訴求範囲は大きくなっていくことになる。しかし企業向けということになれば、Hootsuiteのような大規模プロダクトが地盤を築いているところでもあり、Bufferの今後についてはさらに様子を見ていく必要があるだろう。

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(翻訳:Maeda, H


クラウドストレージのSugarSync、フリーミアムを捨て有料アカウントモデルへ

SugarSync。クラウドストレージに長く厳しい戦いを続けた剣闘士は、金に走る決断を下した。同社は今日(米国時間12/10)、「有料のみ」のサービスモデルに移行し、無料ストレージを廃止すると発表した。現行ユーザーは引き続きファイルのアクセスが可能で、料金の大幅なディスカウント ― 条件によって最大75% ― が受けられる。

「今後無料ストレージは永久に提供しない」とCEO Mike Grossmanは言った。「SugarSyncはこの分野の他社とは異なり、単なるファイルストレージ以上のことを数多くやっている。今後は、プロシューマーやスモールビジネス向けに、当社独自のマルチ同期機能を通じて過去に類を見ないデータの制御と柔軟性をもったプレミアムサービスを提供する」

これは要するに、ビジネス顧客を増やしたいという意味だ。ライバルのBoxやDropboxGoogle Driveは言うに及ばず ― らは間違いなく一般クラウド市場を埋めつくしている。 SugarSyncがピボットするのはそれが理由だ。

無料アカウントは2014年2月8日に終了するが、ユーザーは90日間5GBまたは30日間60GBのトライアルに登録することができる。しかし、無料ストレージを使い続けさせるのではなく、SugarSyncはできるだけ早くユーザーを収益化しようとしている。

「この分野には無料ストレージを配っている会社がたくさんいるが、殆どの会社は存続できないだろう。われわれはすでに堅牢な財務状態を確保しており、今回の変更は当社の事業をさらに強化するものだ」とGrossmanは言った。数十GBが無料で使えるのが当たり前の時代に、主要プレーヤーによるこの行動は実に興味深い。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


Amazonの新しいデスクトップ・クラウド・コンピューティング、WorkSpacesがiPadにやって来た

Amazonが最近リリースしたAmazon WorkSpacesはVMware的なバーチャル・デスクトップ・サービスだが、このほどiOSプラットフォームに対応し、iPadから利用できるようになった。

現在WorkSpaceの限定プレビュー版にアクセスできるユーザーは新しいアプリを利用してiPadを一種のクラウドデスクトップに変えることができる。文書の編集、ウェブアプリの利用、社内メールの送受信など多くの日常業務がWindowsのUIを通じて実行できる。

この多機能デスクトップ・クラウド・コンピューティング・サービスは11月のre:Inventカンファレンスで発表された。ターゲットは企業ユーザーで、IT部門がデスクトップのカスタマイズし、ノートパソコン、Androidタブレット、Kindle Fire、iPadなどのデバイスから社内資源へのアクセスも管理できる。

他方、AWSはユーザーのためにコンピューティングのインフラとOSを提供し、ネットワークの設定と運営を管理を行う。サービスにはバーチャル・マシン、クラウドストレージ、ActiveDirectoryの統合、ユーザー認証などが含まれる。ハードウェアやストレージに障害が発生した場合でも一切ユーザーを煩わせることなく自動的に復旧が行われる。ユーザーはWindowsOSサーバ互換であればローカルに持つディスク・イメージをAWS上に移して稼働させることも可能だ。

AndroidベースのAmazon WorkSpacesアプリはAmazonのAppstore(Google Playストアではない)ですでに公開されている。iPad versionがリリースされたのは昨夜(米国時間12/3)だが、大きなPRは行われなかった。

例によって料金には競争力がある。実際、上級副社長のAndy Jassyは11月のre:Inventで「Workspacesは既存のプロバイダーが提供するオンプレミスのバーチャル・デスクトップ・ソリューションに比べて半額ですむ」と述べている。

標準パッケージはCPUが1つ、50GBのストレージが提供され1ユーザー当たり月額35ドルだ。パフォーマンス・パッケージは1ユーザー月額60ドルでCPUが2つと100GBが提供される。Amazonの既存のユーザーがWorkspacesにアップグレードする場合は15ドルのライセンス料がかかる。またMicrosoftOffice、Trend Microのアンチウィールスなどの追加アプリを利用するユーザー向けにStandard Plus、PerformancePlusというオプションが用意されている。

Workspacesはまだ限定評価版として公開されており、ユーザーは評価版の利用をAmazonに申し込み、招待を受ける必要がある。ただし申込者の全員がすぐに招待を受けられるわけではない。順番待ちのリストの登録され、空きができた時点で招待が送られてくるという仕組みだ。

Amazon自身は最近Kindle Fireに企業向け機能をいろいろ追加して企業向けにも売り込みを図っているものの、WorkSpacesのiPad版を待望していたユーザーは多かったはずだ。なにせAppleによればFortune500の企業の94%、Global 500の企業の85%がiPadを利用ないしテストしているという。

iPad向けWorkSpacesアプリはこちらから。.

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


データといえばExcelばっかしの企業に朗報, Host Analyticsが高度なクラウドアプリケーションへの変換をサービス

Host Analyticsがローンチした新しいプラットホームは、これを利用すると、Excelなどのスプレッドシートの形で大量のデータを保有するユーザ企業が、データの取り出しとか加工などの作業がいっさい不要で、スプレッドシートそのままの形でデータをほかの目的やほかのアプリケーションで使えるようにする。

この新しいプラットホームはAirliftXLと呼ばれ、その内部では同社がApplication Transformation Engine(ATE, アプリケーション変換エンジン)とよぶソフトウェアが仕事をする。ATEは、スプレッドシートの複雑なデータを解析して、その公式やフォーマットやデータ構造などをユーザが捕捉してそれらを再利用できるようにする。またデータをそうやって変換する時に起きるエラーを、予防する機能もある。

たとえば顧客企業は、このクラウドサービスを利用してスプレッドシートのデータを、まずAirliftXLのテンプレートとして保存する。次に顧客はそのテンプレートを、元のスプレッドシートのフォーマットを失うことなく、利用できる。Craigslistの競合企業であるOLXは、AirliftXLを使ってExcelのデータから同社の国際展開のための予算計画書のプロトタイプを作っている。そしてOLXは、そのプロトタイプをHost AnalyticsのEPM(Enterprise project management, 企業のプロジェクト管理)スイートに投じて、全社的な会計財務管理業務を一点集中型で行っている(ExcelからEPMへのアプリケーション変換)。

クラウドサービスには柔軟性があるので、Host Analyticsではモデルのアップデートや変更も、ユーザ自身がプログラマを必要とせずにできる。従来、経理や財務の人たちは、Excelからの原始データをほかのアプリケーションで利用しようとして、データの喪失などの問題に悩まされてきた。また、ほかのアプリケーションとの統合を社内でやろうとすると、手作業の部分が多くなり、費用も期間も大きかった。これに対しAirliftXLはExcelのモデルを抽象化することによって、顧客がExcel上で築いてきた公式やフォーマットをそのまま生かそうとする。

Hosted Analyticsのユーザは医療法人が多く、彼らはこのサービスを利用して雑多な報告文書を統合化し、タイミング良く財務情報や経営情報を得ている。今後はAirliftXLを使って(事後報告文書だけでなく)Excelによる企画~計画文書も統合化して、財務計画づくりに活用することも、彼らは考えている。

Host Analyticsは2001年に創業されたが、Excelデータの再利用というサービスは、OracleやSAPといった強敵がいる市場だ。

またHost Analyticsのようなサービスにとっては、モバイル対応化も大きな課題だ。将来的にこれらのサービスは、タブレットを使って…主に外回りで…仕事をしている社員たちのニーズに応える形に、変わらなければならない。一方では、経理、財務、営業日報などの世界は今後も依然としてスプレッドシートを使いつづけるだろう。タブレットではなく、パソコンやラップトップの上で。したがって両社の連携を図るこのようなサービスのニーズは、これからも大きい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


パーソナル・モバイル・セキュリティーのLookoutが企業向けサービスを開始―1ユーザー当たり月5ドル

今年の9月にに発表されたされたとおり、パーソナル・モバイル・セキュリティーのLookoutは、今日(米国時間11/19)、Lookout for Businessと呼ばれるビジネス・ユーザー向けの新しいサービスをローンチした。

これはLookoutとして、アメリカ企業社会に広がるBYOD (bring-your-own-device = 私用デバイスの持ち込み自由)のトレンドに対応する最初のプロダクトだ。企業IT部門は、私用を含め、ますます他種類のデバイスが自社ネットワークに接続するようになり、セキュリティー上の困難を抱えるようになっている。

Lookoutは従来、アンチ・マルウェアやプライバシー保護、紛失、盗難などの際のリモートデータ消去など一般の個人ユーザー向けセキュリティー・プロダクトに特化していた。しかしこれらはそのまま企業ユーザーにとっても必要な機能だ。

今回のLookout for Businessは社員の私物、企業所有双方のさまざまなスマートフォンやタブレットをマルウェアや不審なアプリなど多様な脅威から保護する。また紛失、盗難に対しても一般ユーザー版と同様、位置追跡やリモートデータ消去機能を提供する。デバイスの所有者と企業のシステム管理者の双方がデバイスのロック、データ消去をオンラインで実行できる。またデバイス所有者を保護するため、システム管理者がリモートデータ消去を行おうとする場合、デバイス所有者にも通知が行われる。

Lookout for Businessは従来のMDM(モバイル・デバイス管理)システムに比べて、セルフサービス的傾向が強い。たとえば従業員が新しいアプリをダウンロードしてデバイスにインストールすることができる。これは従来のMDMでは考えられなかった自由さだ。

このプロダクトの機能は基本的に個人版と変わらず、ただIT部門が管理者として全体を管理できる権能を与えられている点が新しい。システム管理者はダッシュボードから何台のデバイスがこのプロダクトの保護下にあるのか、どのような脅威がブロックされたか、現在どのようなプロセスが実行されているかなどをリアルタイムで把握できる。また管理者は所有者名、種類、機種などによってデバイスを検索できる。

ウェブサイトでは料金の詳細が分からなかったので取材したところ、「1ユーザーあたり月間5ドル」だという答えだった。

Lookout for Businessはローンチ時点で20社が利用している。個々の社名は明らかにされなかったが、地域の店舗からFortune1000の大企業まで含まれており、最大のユーザーは300台のデバイスを登録しているという。

Lookoutはビジネス市場に参入するにあたって、企業ITのコンシューマライゼーションに賭けるという大胆な戦略を取った。つまり 多くの企業で社員の半分がLookoutを利用するようになるまで待ち、それからIT部門による管理機能を追加することでビジネス版を開発した。これはIT部門による管理機能をまず作るトップダウン方式の従来のMDMシステムとは正反対の生き方だ。

Good、MobileIron、AirWatch、Zenprise、Symantecなど何年も先行して地盤を固めた既存のMDMサービスに対してLookoutがどこまでシェアを伸ばせるか注目だ。

Lookoutは最近5500万ドルの資金調達に成功し、国際展開、キャリヤやデバイスメーカーとの提携に力を入れていく方針だ。同社はSamsung、AT&T、Orangeなどと提携している。

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Amazon、新しいバーチャルデスクトップサービス、WorkSpacesをスタート―「料金はライバルの半額」

Amazonは今日(米国時間11/13)開催されたAWS re:Inventカンファレンスで Amazon WorkSpacesという新しいバーチャル・デスクトップ・サービスを発表した。Amazonによれば、従来の同種のサービスに比べて料金は半額だという。

このサービスは本日から利用可能で、デスクトップ、ノートパソコン、スマートフォン、タブレットその他あらゆるデバイスからアクセス可能で、すべてのデバイスで同期する。ユーザーはたとえばノートパソコンでセッションを閉じた後スマートフォンでセッションを開いてシームレスに作業を続けることができる。バーチャル・デスクトップは本質的にはWindows Serverだが、UIはWindows 7的に改造してある。

上級副社長のAndy Jassyによれば、Amazon WorkSpacesは従来のオンプレミスの有料バーチャル・デスクトップ・サービスに比べて半額程度の負担ですむという。

料金体系は2種類ある。標準パッケージではバーチャルCPU x 1と50GBのストレージが提供される。パフォーマンス・パッケージはバーチャ CPUx 2と100GBのストレージとなる。標準パッケージは1ユーザーあたり月額35ドル、パフォーマンス・パッケージは1ユーザー当たり月額60ドルとなる。AWSの既存のユーザーがバーチャル・デスクトップに移行を希望する場合は15ドルのライセンス料がかかる。

下の表は、ユーザー1000人の場合、オン・プレミスのバーチャル・デスクトップ環境の運用経費とAmazon Workspaceを利用した場合の経費を比較したものだ。Workspaceの場合ハードウェア、ソフトウェアのコストはゼロ、利用料金とバーチャル・デスクトップの管理経費のみがかかるという計算で、約6割の経費削減が可能になるとしている。

イベントのキーノートでJassyは「これまでのバーチャル・デスクトップはアプリケーションの開発や複雑なシステムを運用する管理者向けが主だった。しかし今後は外出中もオンラインで作業を続ける必要がある何百万というホワイトカラー労働者に対してコンピューティングのインフラを提供するサービスとななっていくだろう」と述べた。

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Dropboxのユーザーが2億人―新しいビジネス・クライアントを発表してエンタープライズ市場に本格参入へ

今日(米国時間11/13)、DropboxのCEO、Drew Houstonはユーザー数が7月の1億7500万から2億にまで増加したことを明らかにした。またユーザー個人のプライベートなファイルと業務で使用するファイルを単一のインタフェースか利用できるDropbox For Businessという新サービスを発表した。

新プロダクトはDropboxが個人ユーザー向けの便利なツールであるだけでなく、共有範囲の制限やモニタ機能など強固なセキュリティーを提供することによって本格的なエンタープライズ・サービスであることをアピールするものだ。Dropboxにはすでに400万のビジネス・ユーザーがおり、Fortune500の大企業の97%がユーザーであるという。

今回のプレス発表はビジネス・ユーザー志向だったが、前回のイベントはデベロッパー向けのプロダクトのリリースが中心だった。この際、2012年の11月に1億人だったユーザーが1億7500万に増加したことを発表した。このイベントでローンチされたDatastore APIはアプリのデベロッパーがメタデータ(ゲームのユーザーがクリアしたステージの数など)をクラウドに保存することを可能にした。またサードパーティーのアプリがユーザーのDropboxファイルにアクセスできるようにするDrop-Ins APIも発表された。

業務とプライベートの使い分けが面倒だった

Houstonは今日のイベントでDropboxをスタートさせるきっかけとなった出来事を語った。ある日、Houstonバスの中で仕事をしようとしてUSBドライブを忘れてきたことに気づいた。そこでUSBドライブを持ち歩くのを忘れないようにしたり、バックアップのためにファイルのコピーを取ったりする作業がいかに多いかに気づいたという

続いてHoustonはファッション企業のBCBGのCIO、Nader Karimiを壇上に呼び出し、Dropboxなしにデータを管理するのがいかに難しいかを説明させた。Karimiは法的文書を確実に共有するためにDropboxを利用する方法について詳しく語った。

Houstonは続いて、個人的な文書と業務上の文書を同一のユーザーが管理する場合のわずわらしさについて述べた。当初Dropboxではそういう場合には簡単にアカウントを切り替える機能を提供すればよいと考えていた。しかしアカウントの切り替えに15秒かかるとすれば、2億人のユーザーが1回アカウントを切り替えるだけで1000年分の時間がサーバー上で消費されてしまう。

「これまではユーザーは個人ユースのDropboxと業務ユースのDropboxを使い分けていた。これは馬鹿げている。一つのクライアントでどちらも処理できるようにするべきだ。しかしそうするにはDropboxを事実上、一から作り直す必要があった。しかし考えてみれば、われわれのところには世界的にトップクラスの人材がいる。それならやらせてみようじゃないか。そして今日、まったく新しいDropboxfor Businessを発表することできて大いに興奮している。われわれはすべてを作り直した」とHoustonは述べた。

Dropbox For Business

この新しいDropbox For Businessのユーザー・クライアントは来年早々に公開予定だ。現在すでに企業の早期予約を受け付けている。料金については5ユーザーあたり年間795ドル、追加1ユーザーごとに年間125ドルという現行体系を変更するという発表はなかった。

Dropbox For Businessを利用すると、ユーザーはプライベートなファイルのタブと業務用のファイルのタブを同じウィンドウで見ることができる。ユーザーがビジネス・アカウントとプライベートで使う個人アカウントを持っている場合、この新しいクライアントを使ってそれらを統合することができる。HoustonとCTOのArashFerdowsiはブログ記事で「いってみれば職場の鍵と家の鍵を同じキーリングにつけて持ち歩けるようになったわけだ」と説明している。

新しい通知バーはプライベートと業務の両方のアラート受け取るようにも、一方だけを選んで受け取るようにも設定できる。モバイル版のビジネス版Dropboxもウェブ版と一貫性を保つようアップデートされた。デベロッパー向けにはChooserとSaver APIが新設され、サードパーティー・アプリ内から両方のカテゴリーのファイルにアクセスができるようになっている。

また今回のアップデートではCIOとIT部門がDropboxの利用を厳密に管理できる能力が追加された。新しい共有監査ログを利用すると管理者はどのファイルを誰がいつ誰と共有したかを詳細にモニタできる。セキュリティ上の必要に応じて、特定のファイルの共有範囲を制限したり禁止したりできる。また従業員が個人のプライベートなファイルに会社のコンピュータからアクセスするのを禁止することもできる。

さらにもうひとつ管理機能にアカウント移動ツールが加わった。このAccount Transferを利用すると、社員が退職したり別組織に異動した場合に簡単にアクセスを取り消すことができる。また管理者は後任の社員を選んで、前任者のすべてのファイルを託すこともできる。 Remote Wipeはデバイスが盗難にあったり社員が退職したりした場合にデバイス上のデータを確実に消去する。

現在のDropboxに欠けているのは他のサービスで提供されているような共同作業のためのツールだが、モバイルおよびビジネス・プロダクトの責任者のIlyaFushmanは「われわれはまさにその点をロードマップに載せている」として現在対応中であると述べた。

Dropboxのエンタープライズ版のライバルはMicrosoft、Google、Boxなどだが、今日はAmazonが新しいWorkSpacesというバーチャル・デスクトップで新たに参入してきた。これまでDropboxには消費者向けプロダクトというイメージが強かった。しかし今日のDropbox For Businessの発表で、セキュリティーや共有範囲の厳密なコントロールなどエンタープライズ利用に必須の機能が整備された。

エンタープライズ・クラウド市場における主導権争いはますます興味深くなったといえるだろう。

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Virgin Americaが制作した機内安全(ダンス)ビデオがYouTubeで人気上昇中

Virgin Americaの「仕掛け」が投入されたのは先週のことだった。機内安全ビデオをヒップに仕上げたものだが、これが400万以上の視聴回数を稼ぐビッグヒットとなった。シートベルトを締めることがまるで楽しいことであるかのように見せるミュージカルビデオに仕上がっている。安全性を強調しながら、飛行機の旅行をある種の記念として楽しんでもらおうという、Virginらしい配慮に富んだ作品になっていると思う。

搭乗者に機内安全についての説明(ビデオ)を見せるのは規則で定まっていることだ。しかしそれが、形ばかりをなぞった機械的なものでなければならないとは、さすがのFederal Aviation(FAA)も定めてはいない。Virginはそこに目をつけた(?)わけだ。みんなでダンスをして、子供は酸素マスクでラップして、修道女は使い方を間違える。メイキングビデオも公開されている。

すべての会社がVirginのような音楽的バックグラウンドを持つわけでもない。自らの出自を最大限に活かして、今回のビデオ作成に至ったとみることもできよう。しかしもちろんそれだけではなく、顧客にできる限り楽しんでもらおうという企業姿勢を表したものであるともいえる。他の航空会社からは得ることのできないエクスペリエンスを提供したいという、積極的な姿勢の現れでもあるわけだ。

ミュージカルビデオが即ち顧客サービスのレベルの高さを意味するわけではない。しかし乗客を単に利益をもたらすものと考えていて出てくる発想でないことは確かだろう。

Virginのやり方は、顧客との新たな関係性を求める企業の動きの一例と考えることができる。同様の動きを見せている企業としてはTesla Motorsがある。IT技術を独自の視点から活用して、他者では成し得ないサービスを実現しようと奮闘している。それにより、人々が求める車を生み出すことに成功しているのだ。Teslaは第一に「人々が運転したくなる車」の実現を目指している。何よりも「顧客へのアピール」を最重要課題として考えているのだ。

身の回りを見渡してみると、企業が顧客を扱うやり方には面白みなど全くなく、不愉快に感じてしまうこともあるほどだ。「ビッグデータ」は「見込み客の取り扱い」や「ソリューション」の提供には役立つ。また「ソーシャルメディア」は万能薬であり、「プライベートクラウド」も世の中に存在するデータを活用するためのハードウェアを売り込むのに役だっている。

何か役に立っているのかもしれないけれど、まずともかく括弧でくくったテクニカルターム群の存在が、顧客の役に立つわけではないのだ。専門家らしい言葉を並び立てて何かしらの効果がありそうだというような「取り組み」は誰のためにもならないことも多い。立ち上がってただダンスする。それこそがより効果的な企業努力として実を結ぶこともあるという好例を示してくれたとも言えそうだ。

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(翻訳:Maeda, H


社内日報共有サービスのgamba、Skyland Venturesから2000万円を調達

社内の日報共有を効率化するためのサービス「gamba!」を提供するgambaがSkyland Venturesから2,000万円の資金を調達した。gambaは昨年12月にβ版を公開し、これまでに1,500社が登録しているという。

日報は今でも手書きで紙に書いて提出していたり、社内のメールで情報を共有していたりする企業も多いそうだ。書いても部署内で情報が共有しきれずに、ムダになってしまうこともあり、単に面倒な作業と感じている方も居る。

gamba!はこのような問題を解決するためにソーシャルネットワークベースの社内日報共有サービスを提供している。サービス内では同じグループ内のユーザーが書いた日報などがタイムライン形式で表示され、それぞれにコメントをしてフィードバックすることもできる。

ユーザーの職種としては営業が一番多いそうだが、エンジニアの数も多くの割合を占めている。というのも、GitHubやBitbucketといったサービスと連携して、レポジトリのコミット履歴を1クリックで日報に読み込むといったエンジニア向けの機能なんかも備えられているからだ。この他、Googleカレンダーからの予定取り込みなども用意されている。

gamba!のような、いわゆるソーシャルエンタープライズと呼ばれる分野では昨年6月にMicrosoftが企業内版TwitterのYammerを12億ドルで買収したことが記憶に新しい(Yammerは2008年のTechCrunch50カンファレンスでデビュー)。

アメリカでFacebookが誕生したのは2004年、Twitterは2006年で、Yammerは2008年だ。日本でもここ数年の間にさらにソーシャルネットワークのユーザーが増えた。ソーシャルエンタープライズのサービスのインターフェイスはこれらと似ている。森田氏によれば、今のタイミングなら多くの人がこういったサービスのインターフェイスに慣れているから、初期の段階でも迷わずに使えるのではないかという。


苦闘するIBM―もはやクラウドのキングではない

先週発表された第3四半期の決算報告によれば、IBMはレガシー・ハードウェア事業の不振とクラウド・サービス戦略の迷走に苦しめられているようだ。

ハードウェア事業の売上は17%ダウンし、売上は10億ドル減少した。2013年に入ってから9ヶ月の売上は721億ドルと2012年同期の752億ドルから4%のダウンだ。ソフトウェア事業も絶好調とはいえない。今期、ソフトウェア事業の売上高は1%アップしただけだった。株価も2年ぶりの安値を付けた。

ハードウェアを売りながら同時にクラウド・コンピューティング事業を続けようとするところにIBMの抱える問題がある。この戦略を取る限り、IBMはオンデマンドでセルフサービスのソリューションを提供することはできない。Amazon Web Servces (AWS)はハードウェアを売らないことによって成功を収めている。もちろんオンプレミスのインフラにはまだ莫大な需要があり、IBM、Cisco、Dell、HPその他の企業を潤している。

IBMはこの5年ほど、大企業向けに「プライベート・クラウド」を提唱してきた。このシステムにはオンプレミスで垂直統合タイプのソフトウェアが搭載される。こうしたプライベート・クラウドはマルチテナントで経済性、柔軟性が高く、クラウドサービスのあらゆる利点を享受できるというのがセールストークだ。しかし実態はというと、ユーザーはこのシステムを購入し、データセンターにインストールし、IT部門がメンテナンスしなければならない。要するに今までの社内データセンターを模様替えするに過ぎない。

Charles FitzgeraldのIBM評が的確な描写だ。

IBMの根本的な問題は、ディスラプト〔現状を破壊〕するテクノロジーではなく、ディスラプトされたテクノロジーばかり提供しているところにある。IBMへの依存は致命的な危険を招きかねない。

分散インフラストラクチャーの場合、ユーザーは自前で、多くの場合IT部門の助けなしでクラウド・コンピューティング上でビジネス・システムを稼働させることができる。しかしIBMのテクノロジーでそういうことができそうには思えない。ユーザーは自分でマシンを購入するか、どこかのホスティング・サービスと契約する必要がある。それからIBMからソフトウェアを購入しなければならない。そして運用のためにIT部門が必要だ。

一部の超巨大企業を除いて、クラウドサービスの方が安くつくのは明白だ。ユーザーは毎月従量制の料金を支払うだけでよい。インフラへの投資はクラウドサービスのプロバイダが負担する。この方式は以前から存在するが、価格の低下は破壊的なペースだ。スタートアップやデベロッパーはAWSのようなサービスをベースに次々に新たなサービスを生み出している。それに反してIBMが惹きつけているのはデベロッパーではなく企業内IT部門だ。

ただしIBMはある分野では依然としてリーダーだ。 調査会社のIDCによれば、IBMはクラウド・ソリューションの専門的インテグレーション・サービスとしてはナンバーワンだという(下図)。

IBMのある広報担当者は「この分野ではAWSはIDCのランキングに入ってさえいません!」と勢いこんでメールしてきた。それはそのとおりだが、AWSはインテグレーション・サービスのリストに入らないように全力を尽くしてきたからだ。そもそもオンデマンドのセルフサービスをモットーとするのだから当然のことだ。AWSはシステム・インテグレーションはユーザー自身、あるいはユーザーのコンサルタントに任せている。

IDCの図とは対照的に、Gartnerの図ではAWSが突出した市場リーダーであり、IBMはその対極にいる。

もっとも来年はIBMの位置は上の図より改善されているだろう。この夏、SoftLayerを20億ドルで買収したからだ。SoftLayerはIBM Smart Cloudに統合されるはずだ。第3四半期にIBMはクラウドサービスで4億6000万ドルの売上を記録している。このうちSoftLayeの分がどれほどになるかは分からないが、.現在すでに相当の寄与をしていると思われる。

IBMは来年もSoftLayerに独自に事業を実施させる方針だというが、451 Researchの調査ディレクター、 Michael Cotéは「これは賢明だ」としている。SoftLayerはHadoopやVMwareのみを作動させるサーバーなどを提供しており、人気がある。しかし問題はIBM自身が新しい、長期的に有効なクラウドサービス戦略を立てられるかどうかだ。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


Google App EngineでのPHP利用がオープン化

Google App EngineにおけるPHPの扱いが「プレビュー」となった。招待制であったのが、完全にオープンとなったのだ。これにともなってPHPアプリケーションについても直ちに公開できるようになる。

Googleが4番めのランタイム限後としてPHPに対応したのは今年のGoogle I/Oにおいてのことだった。PHPは世界中で広く利用されており、Facebook、WordPress、そしてDrupalなどでも利用されている言語だ。

PHPへの対応を初めて以来、Googleではplug-in for WordPressや、またPHPを使ったファイルの読み書きの機能などを追加してきている。

PHP対応がオープンになったことで、開発者はGoogle App Engineを通じてPHPアプリケーションの開発、テスト、デプロイができるようになる。別の選択しとしては、これまでも使っていた人がいるであろうDevTableCodeEnvyを使い続けるという手もある。どちらも統合開発環境だ。また自前の開発環境があるのなら、ビルド、実行、デバッグまでを行ったのち、JetBrainのPHPStorm IDEを使ってGAEへのデプロイを行うこともできる。

Google I/OでPHPへの対応が発表されるまで、このPHP対応が最も多くリクエストされる機能だった。今回の「プレビュー」化も多くの人から歓迎されるアップデートとなるに違いない。

Web Technology Surveysによると、全ウェブサイトの81.2%でPHPが用いられているのだそうだ。但し、現在は急速な「モバイル化」ないし「クラウド化」などへ、さらなる真価を遂げつつある時期だとも言える。最近行われたZend PHP ConferenceにおいてもAPIモデル、ダイナミックなデータ構造、モバイル対応、クラウド内で完結する動作するアプリケーションについてに注目が集まっていた。

PHPに対応している他のPaaS環境としてはZendのPHP CloudJelastic、およびEngineYardなどがある。

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(翻訳:Maeda, H


鮮魚流通のAmazonを目指す八面六臂が1.5億円の資金調達を実施

鮮魚の流通はIT化が遅れている巨大な市場の1つだ。漁師から産地市場へ、そして納品業者、飲食店にというように鮮魚の流通には多くのプロセスが発生するが、このプロセス間では未だに電話やFAXなどの通信手段が多く用いられている。

八面六臂(ハチメンロッピ)はこの市場を効率化すべく、流通のITソリューションを提供している。そして本日、同社がバリュークリエイト、ベクトル、ウインローダーの3社から総額1億5,000万円の資金を調達した。

八面六臂は飲食店に対してiPadアプリを提供しており、このアプリには日々の鮮魚情報が入力されている。飲食店側はこのアプリを通じて、欲しい魚の種類、サイズ、産地、価格をチェックし、簡単に注文することができる。

このサービスが特徴的なのはマーケットプレイスではない点だ。漁師らが直接アプリに出荷できる商品を入力し、それを飲食店が買うというようなサービスではなく、商品は八面六臂が自身らで調達して販売しているのだという。だから、立ち位置としては納品業者ということになる。

年内には取引先の飲食店は300店舗程度になる予定で、現在は都内近郊を中心に展開しているが今後対応地域を拡大していく予定だという。

これまでの鮮魚流通は冒頭で述べた通り、手間が多いため人件費が高くついていた。松田氏によるとその約50%がムダなコストであり、IT化を進めることで大幅にコストを削減できるのだという。鮮魚流通は3兆円の市場規模があるそうで、八面六臂は2016年までにこの市場の0.1%のシェア(30億円)を取りにいくと語る。

現在のアプリは商品の受発注が主で、松田氏が実現したいものの10%程度しか完成されていない。今後は受発注以外にもどんな商品がいいのかなど、今後は飲食店により役立つ機能も開発を考えているという。

生鮮流通市場では八面六臂のようにBtoBではないが、Amaoznがシアトル地区で長年Amazon Freshという宅配サービスを実験しており、本格事業化されるのではないかという報道もあるなど、密かにこの業界が盛上がってきている。


名古屋を拠点とするクラウド請求管理「Misoca」のスタンドファームが3,000万円の資金調達を実施

TechCrunch Tokyo 2011にも出場した名古屋のスタートアップであるスタンドファームがインキュベイトファンドから第三者割当増資で3,000万円を調達した。スタンドファームが運営するのはクラウド請求管理の「Misoca」というサービスだ。

Misocaはオンライン上で請求書や見積書を作成・編集することはもちろん、これらを紙に印刷して郵送してくれる。郵送システムは自動化されているので、請求書の中身が人の目に触れることはないそうだ。

また、請求書の管理やPDFの作成・ダウンロードなどの機能は無料で利用でき、書類の検索や納品書の発行といったものは有料プランのみの利用となっている。郵送には1通あたり160円から210円ほどかかる。

Misocaには2011年11月のローンチ以降、約8,000の事業者が登録しており、今では毎月700以上の事業者が登録しているという。今月からはGMOペイメントゲートウェイと提携し、口座振替による代金回収サービスなどにも力を入れている。

今回調達した資金は開発力をあげるためにエンジニアを増やすことはもちろんだが、エンジニアのみのチームで運営しているため、マーケティングの人材も採用していくという。さらに、請求書だけではなく支払い明細書や領収書といった文章類を電子配信する「MisocaのWeb請求書」というサービスもクローズドで運営し始めており、こちらも強化していくようだ。

冒頭でも述べたようにスタンドファームは名古屋に拠点を置くスタートアップで、どうしても東京と比べると先輩の起業家に会ってアドバイスをもらう回数や自社にジョインしてくれそうな人達と出会う回数は減ってしまうだろう(スタートアップは開発だけに専念すればよいという意見もあるが)。

この点に関してスタンドファーム代表取締役の豊吉隆一郎氏は「地方でスタートアップすることにデメリットは多いと感じる」としているものの、「今ぐらいの規模まで持って来れたのなら地方でも特に問題はない」と考え、来月末に予定しているオフィスの移転先も名古屋で検討しているようだ。