毎秒1.7ペタビット、既存技術の7倍の容量を可能にするマルチコアファイバーによる光海底ケーブルの5つの基盤技術を確立

毎秒1.7ペタビット、既存技術の7倍の容量を可能にするマルチコアファイバーによる光海底ケーブルの5つの基盤技術を確立

KDDI総合研究所は3月28日、1本の光ファイバーの中に複数のコアを持つマルチコアファイバーで大容量化した光海底ケーブルの実用化に向けた各種技術の開発と実証を行い、基盤技術を確立したことを発表した。これにより、アジア域をカバーする3000km級の光海底ケーブルを、既存システムの7倍(毎秒1.7ペタビット程度)に容量を拡大できるという。2020年代半ばの実用化を目指す。

KDDI総合研究所、東北大学住友電気工業古河電気工業日本電気(NEC)、オプトクエストの6機関は、総務省の委託研究として大容量光海底ケーブルの研究開発を行っている。5Gサービスの普及に伴うモバイルデータ通信の増加やデータセンター間の通信需要の増大などを背景に、国際通信の回線需要が増大しているが、それに対応するためには海底ケーブルにより多くの光ファイバーを通す必要がある。しかし、光ファイバーの本数を増やせばケーブルの外径が大きくなり、敷設が困難になる。そこで、1本のファイバーで複数の通信が可能となるマルチコア(多芯)ファイバーを使い、外径はそのままで容量を増やす技術が求められてきた。上記の6機関は、世界に先駆けてその基盤技術を確立し、実証を行った。

このシステムは、5つの基盤技術で構成されている。その第1が4つのコアを持つ光ファイバーだ。2020年11月に古河電気工業とKDDI総合研究所が開発した技術で、コア間の信号干渉を抑えることで損失は世界最小級となる1kmあたり0.155dB(デシベル)を実現し、クロストーク(混線)は100kmでマイナス60dBを達成。毎秒109Tbit(テラビット)の信号を3120km以上伝送でき、毎秒56Tbitの信号を1万2000km以上伝送できることを実証した。

第2の技術は、このマルチコアファイバーを収容した光海底ケーブルだ。2021年10月、NEC、OCC、住友電気工業は、マルチコアファイバーを32芯収容した海底ケーブルを開発し、水中で長距離の伝送試験を行った。ケーブルにした状態でも、マルチコアファイバーの光学的特性に大きな変化はなく、良好な伝送性能を得ることができた。

第3は、マルチコアファイバーの統制評価技術。マルチコアファイバーの依存損失とクロスオーバーの評価を行う波長掃引法と、損失、クロストークの長手分布を評価するOTDR法という2つの技術を開発した。

第4は、空間多重型高密度光デバイス。4コアファイバー用アイソレーター内蔵Fan-in/Fan-out(ファンイン/ファンアウト)デバイス、4コアファイバー用Fan-out付きTAPモニターデバイス、4コアファイバー用O/E変換器付きTAPモニターデバイスの3種類の光増幅装置を開発し、1つの複合機能デバイスに集約した。これにより、世界最高水準の低損失と小型化を実現させた。

第5は、マルチコア光増幅中継方式。シングルコア光増幅器をベースに作られた従来のマルチコア光増幅器は、コアの数だけ増幅装置が必要であり、コア数が増えればそれだけ大型化するという課題があった。新しく開発されたマルチコア光増幅器は、1つの増幅装置で複数のコアを一括して増幅できるクラッド励起方式を採用し、体積を従来の半分程度に収めることに成功した。

これらを統合することで、既存システムの7倍となる毎秒1.7ペタビットほどの容量拡大が可能になることが確認されている。今後は、マルチコアファイバーの量産化技術の開発、長期信頼性の検証、運用保守技術の開発を進め、2020年代半ばの実用化を目指すとしている。

南紀白浜空港でHoloLens 2利用のスマートメンテナンスや複数ロボットの協調制御による来訪者案内などローカル5G活用実証

南紀白浜エアポート日本電気(NEC)、THKオリエンタルコンサルタンツは3月14日、和歌山県南紀白浜空港においてローカル5Gなどのテクノロジーを活用し様々な課題解決を図る実証実験を実施すると発表した。

また、日本マイクロソフト凸版印刷が協力し、MR(複合現実。Mixed Reality)やロボットによる新技術・新サービスを試行する。今回の実証実験により、地方の業務環境創出と来訪者増大を目指す。実証期間は2023年3月31日まで。

実験は3種類あり、南紀白浜空港の空港ターミナル内と航空機の駐機場所(エプロン)、滑走路周りの場周道路を対象に行われる。これらの場所において、4.8~4.9GHzを利用する固定型と可搬型のローカル5G基地局を活用し、高速大容量・低遅延なローカル5Gネットワークを構築する。

HoloLens 2を利用したスマートメンテナンス

Microsoft HoloLens 2、NECの点群データ活用侵入検知技術、ローカル5Gの大容量通信を組み合わせて制限表面を樹木などが超えていないか分析・検知し、点検者のHoloLens 2に表示を行い点検時の見落としを防ぐ。制限表面とは、航空機の安全な航行を目的として飛行場の周辺空間に設定される面のこと。また路面劣化などの点検時は、HoloLens 2上で現実空間に過去の点検記録を重ね合わせて表示し、目視よりも作業時間を短縮し確認の効率化を目指す。熟練労働者の技術力継承の一助とし、生産性が高い業務環境創出を実現する。

制限表面を超えた樹木を検知した際のHoloLens 2の映像

制限表面を超えた樹木を検知した際のHoloLens 2の映像

複数ロボット協調制御による来訪者案内・デジタルサイネージ広告

THKのサイネージロボットとNECの複数ロボット協調制御技術を活用し、空港内を2台のロボットが協調連携しながら分担して来訪者を目的地まで案内する。案内後は移動型デジタルサイネージによる宣伝広告に切り替わる。加えて、ローカル5Gネットワークを利用しロボット搭載カメラから映像を取得することで、オペレーターが遠隔地からロボットを操作し案内することも可能。これにより、案内スタッフのテレワークの実現と、省人化・無人化されたサービスや業務の柔軟かつスピーディーな開発・社会実装に大きな役割を果たすとのこと。

1台目のロボットから2台目のロボットに案内を引き継ぐ様子

1台目のロボットから2台目のロボットに案内を引き継ぐ様子

MR空間でペイントしたオリジナル飛行機の着陸見学

南紀白浜空港では、バックヤードツアーとして、滑走路の間近からの航空機の離発着見学など普段は立ち入ることのできない空港の裏側を巡る体験ツアーを実施している。このツアーのコンテンツ拡充を見据え、ローカル5Gの低遅延・リアルタイム伝送という特徴とMR技術とを活用し、新たな観光体験を提供する新サービスの実証を行う。

6社は、将来的にHoloLens 2などMRデバイスにおける現実空間とデジタル空間の位置を調整する方法の高度化や、複数ロボットの協調制御機能を空港・他業種のソリューションに応用するなど、今後もローカル5Gを活用し南紀白浜空港の魅力を向上させ、生産性が高く働きがいのある業務環境の創出、来訪者の増加という課題解決を目指す。

第3世代iPhone SE、ついに5G対応もミリ波がない理由―iPhone 14シリーズ、日本でミリ波対応はありえるのか

第3世代iPhone SE、ついに5G対応もミリ波がない理由―iPhone 14シリーズ、日本でミリ波対応はありえるのか5G対応のiPhone SE(第3世代)が、3月18日に発売となる。日本ではNTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルが取り扱うが、今回はUQモバイルやワイモバイルといったサブブランドも同時に発売する。

速報:新 iPhone SE (第三世代)発表。初の5G対応・A15で高速化・バッテリー駆動時間延長

各キャリアとって、5G対応のiPhone SE(第3世代)は待望といえるだろう。5Gにおいては日本は世界から普及が遅れていると指摘されている。

2020年3月に3キャリアで5Gが始まったものの、これまで特に盛り上がることなく2年が経過してしまった。5Gエリアは、4G周波数帯を転用することで、広がりを見せている。しかし、5G対応スマートフォンが爆発的に売れることもなく、地味に普及している状態に過ぎない。

菅政権の圧力により、料金値下げが注目され、オンライン専用プランなど小・中容量プランが世間の注目を浴びた。キャリアとしては5Gスマートフォンに乗り換えてもらい、データをバカスカ使ってもらうことで、ARPUをあげ、さらに使い放題プランへの乗り換えを促したいというのが本音だ。

KDDI高橋誠社長は「5Gスマートフォンユーザーは4Gスマートフォンユーザーより2.5倍もデータトラフィックが多い」と語る。

iPhone SE(第3世代)が普及すれば、それだけデータ通信を多く使うユーザーが増え、結果として、キャリアの通信料収入の回復が見込まれるのだ。

今回のiPhone SE(第3世代)、5G対応と言ってもSub-6のみの対応となる。アメリカではiPhone 12シリーズ、さらにはiPhone 13シリーズはミリ波に対応していた。ベライゾンなどがミリ波の展開に積極的であったため、アップルとしてもiPhoneでミリ波の対応を余儀なくされたようだ。一方で日本で売られているiPhone 12シリーズやiPhone 13シリーズはSub-6のみの対応だ。

アメリカで売られるiPhone SE(第3世代)もSub-6のみであり、ミリ波には非対応だ。

第3世代iPhone SE、ついに5G対応もミリ波がない理由―iPhone 14シリーズ、日本でミリ波対応はありえるのか
画面サイズが4.7インチと筐体がコンパクトなiPhone SE(第3世代)であるため、ミリ波のアンテナなどが入れずらかったのかも知れない。また、本体が小さく手で全体を覆いやすくなりがちのため、ミリ波は受信しづらくなる可能性もある。

「なぜ、アップルはiPhone 12と13ではミリ波に対応したのにiPhone SE(第3世代)ではミリ波対応を見送ったのか」が気になって、取材を進めたところ、どうやら「アメリカでも4G周波数の転用が進んでいたり、Cバンド(3.7G~4.2GHz帯)の導入が見えてきたから」というのが理由にあるようだ。

ベライゾンは5Gスタート時には、ミリ波を中心にエリア展開を行っていた。しかし、その場合、5Gに期待される通信速度は出るものの、エリア展開の広がりは期待できない。そこで、ベライゾンではDSS(Dynamic Spectrum Sharing)という技術を投入し、4G周波数帯に5Gを混ぜるかたちでサービスを提供し、エリアを広げた。ミリ波の5Gほど通信速度は出なく、むしろ4Gよりも遅くなる傾向があるのだが、それでもエリアを広げたいという狙いがあった。

さらに昨年末から今年頭にかけて、一部報道で、アメリカのCバンド(3.7G~4.2GHz帯)が話題となった。

ベライゾンとAT&Tが共同でCバンド周波数の競売に共同で809億米ドルを出資。Cバンドによるサービスを開始しようとしたら、米国連邦航空局に警告を受けて、サービス開始時期の延期をせざるを得なくなったというものだ。Cバンドが民間航空会社の用いる高度計と干渉し、航空機運航に影響を及ぼす可能性を指摘されたのだ。

今後、Cバンドが本格運用できれば、そこそこ高速でありながら広いエリアで5Gサービスの提供が可能となる。

こうした背景からアップルとしてはiPhone SE(第3世代)で無理してミリ波に対応しなくてもいいという判断が下ったようだ。

ただ、先日、スペイン・バルセロナで行われたMWC22では、クアルコムのプレスカンファフェンスで「5G mmWave Accelerator Initiative」が紹介され、そこにはNTTドコモやVerizonの名前があった。世界的にミリ波の活用を盛り上げていこうというわけだ。

NTTドコモでは4Gユーザーが多く、4G周波数を5Gに転用するのが難しい。そのため、4G周波数帯の転用には消極的で、5G用に割り当てられた周波数帯でのサービス提供を重視している。また、楽天モバイルの三木谷浩史会長は「ミリ波は(日本で)うちだけががんばっているが、海外でミリ波を使っている人は本当にデータの使用量が多い」と語る。楽天モバイルのように従量制の料金プランを提供しているところは、一刻も早く5G、しかもミリ波で提供することでARPUをあげて収益を確保したいというのが本心だったりする。

メーカーとしてはミリ波対応といった面倒くさいことはせず、Sub-6だけで5G対応をしておきたい。一方で、キャリアとしてはミリ波対応であれば(ミリ波の基地局を設置しなくてはいけないが)ARPUの上昇が期待できる。

今秋、発表されるであろうiPhone 14シリーズは、日本でもミリ波対応はあり得るのか。アップルとキャリアの間で駆け引きが行われているかも知れない。

(石川温。Engadget日本版より転載)

アップルが「M1チップ」搭載のiPad Air 5を発表、ノートパソコンの代わりに

米国時間3月8日開催されたイベントで、Apple(アップル)はピカピカの新しいiPad Airを発表した。M1 Appleシリコンチップが、私たちがよく知るiPad Airのボディに収められている。

A15チップではなくM1チップを採用したことは、iPadが単に大きくなったiPhoneではなく、ノートパソコンの代替品としての志を持っていることを示している。これは、iPad Proに搭載されているのと同じ種類のチップだ。iPad Air 5には12メガピクセルの超広角カメラが搭載され、iPadの全ラインナップが、ビデオ通話にカメラオペレーターを加えるセンターフレームをサポートするようになったことを意味している。

iPadのエンジニアリングプログラムマネージャーであるAngelina Kyazike(アンジェリーナ・カイザイク)氏は「これはiPad Proに搭載したのと同じM1チップで、8コア設計のCPUは前世代のiPad AirのA14に比べて最大60%高速のパフォーマンスを実現します」と発表した。「8コアのGPUは驚くべきグラフィックス性能を発揮し、実際、最大2倍の速さを実現します。新しいiPad Airに搭載されたM1は、最も速い競合タブレットよりも速く、同価格帯のベストセラーWindowsノートパソコンよりも最大2倍速くなっています」。

新しいiPad Air 5を紹介するiPadのエンジニアリングプログラムマネージャー、アンジェリーナ・カイザイク氏

新しいiPadは5Gチップを搭載し、従来よりも高速なUSB-Cポートを備え、Apple Pencilをサポートする。より優れたマルチタスクを可能にするiOSのiPadOSバージョンを搭載し、驚くような価格のデバイスに、率直にいってとんでもないパワーを詰め込まれている。

IPad AirはSmart Keyboard FolioとMagic Keyboardをサポートしており、ユーザーがiPad Airを機能的なノートパソコンにするために必要な追加機能が追加されている。

気候変動に敏感な筆者としては、Appleが持続可能性に向けた取り組みを続けていることに勇気づけられる。新しいAirは、筐体に100%リサイクルされたアルミニウムを採用し、ロジックボードのはんだなどにも多くのリサイクル素材を使用している。どれも小さなことだが、違いを生む。

スペースグレイ、スターライト、ピンク、パープル、ブルーと虹のようなカラーバリエーションが用意されている。価格は従来のiPad Airと同じ599ドル(日本での価格は税込7万4800円)を維持し、3月11日から注文を受け付け、3月18日に出荷を開始する。

Read more about the Apple March 2022 event on TechCrunch

画像クレジット:Apple

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nariko Mizoguchi

東京都の5Gイノベーション街中実装・事業化アクセラレータープログラムにYper・サイトセンシング・シナスタジア・Placyが採択

GO BEYOND DIMENSIONS TOKYOに採択された4社とその街中実装パートナー各社の代表

GO BEYOND DIMENSIONS TOKYOに採択された4社とその街中実装パートナー各社の代表

東京都の「5G技術活用型開発等促進事業(Tokyo 5G Boosters Project)」において、スタートアップ支援の開発プロモーターとして採択されたサムライインキュベートは、5Gを活用したサービスなどの街中実装や事業化を支援するプログラム「GO BEYOND DIMENSIONS TOKYO」を実施している。

2月3日には、第1期として募集した中から4社が選定され、記者会見が開催された。採択されたのはYperサイトセンシングシナスタジアPlacyで、今後パートナーとなる大手企業や大学とともに、事業化を目指した実証実験などを行う。今夏には成果発表会も実施される予定だ。

採択された4社とその街中実装パートナー各社

採択された4社とその街中実装パートナー各社

夏までには一定の成果を上げ、発表を行う予定

夏までには一定の成果を上げ、発表を行う予定

東京都は、Tokyo 5G Boosters Projectとして20201年度から支援事業を開始。都が選定した「開発プロモーター」が主導してスタートアップなどの開発・事業化を支援するなどして、東京都が抱える課題を、5Gを活用することで解決しようという試みだ。2021年度にその1社に選定されたサムライインキュベートがオーガナイザーとして募集したのが今回のプログラムとなる。

サムライインキュベートのDirector Enterprise Groupの山中良太氏は、「5G普及による将来ビジョンは、AI・データ活用のケータイ化」と指摘。これはAIやデータ活用が「誰もが手軽に、いつでも利用できる」(山中氏)という意味だという。

例えば自動配送ロボットは、超高性能センサーや超高性能プロセッサを搭載するため、1大300~500万円とコスト高になる。しかし、5Gの特徴である高速・大容量、低遅延、多数接続といったメリットを生かし、クラウド側でデータを処理することでコスト低減に繋がる。これによって「サービスやソリューションが一気呵成に普及する可能性を秘めている」と山中氏。

5Gが目指す将来ビジョンとして、山中氏はエッジのシンクライアント化によるコスト低減などにより、AI・データ活用のケータイ化が起きる、としている

5Gが目指す将来ビジョンとして、山中氏はエッジのシンクライアント化によるコスト低減などにより、AI・データ活用のケータイ化が起きる、としている

これによって、自動運転車、ドローン配送、遠隔手術、xRといった社会課題を解決できるようになる。そんなポテンシャルを秘めていると山中氏は強調する。そうした世界を実現するために、スタートアップと街中実装パートナーによるタッグで、より確実に開発が進められることを狙ったのが今回のプロジェクトだ。

サムライインキュベートの山中良太氏

サムライインキュベートの山中良太氏

5Gの真価が現れる5G SAサービスが順次開始される2022年を「AI・データ活用元年」(山中氏)として、プロジェクトを推進し、実用化に繋げていきたいと意欲を見せていた。

「5G遠隔操作・監視でどこからでも配達員になれる自律走行ロボット」

採択されたYperは、もともと置き配バッグ「OKIPPA」を提供していたスタートアップ。物流のラストマイル配送を効率化するとしてOKIPPAを開発したが、加えて新たに開発しているのが自動配送ロボットの「LOMBY」だ。

OKIPPAのYperが開発している自動配送ロボットLOMBYが採択

OKIPPAのYperが開発している自動配送ロボットLOMBYが採択

Eコマースなどの通信販売やフードデリバリー、フリマアプリといったサービスの拡大で、「ラストマイル配送」の市場規模は2.5兆円に達していると同社代表取締役の内山智晴氏は指摘。宅配物の取扱量も2020年の約45億個から35年には88億個まで拡大すると予測されているが、国内労働人口は逆に約6400万人から5587万人に減少するとみられている。

宅配物の取扱量が急拡大するのに対して、労働人口が減少し、配達員が不足する懸念がある

宅配物の取扱量が急拡大するのに対して、労働人口が減少し、配達員が不足する懸念がある

結果として、物流は伸びても配送するための人員が不足することが懸念されており、「このギャップをどう埋めるか」(内山氏)ということから、今回の配送ロボットが開発されているという。

遠隔からロボットを操作することで、効率よく非対面の配送が可能になる

遠隔からロボットを操作することで、効率よく非対面の配送が可能になる

街中実装パートナーとしてJR東日本都市開発、東京都立大学、三菱地所が参画。飲食店からマンションへフードデリバリーをする実験や、都立大キャンパスでの宅配物配送や構内のフードデリバリー、東京の2つのビルにおける商業ビル内外での商品配送といった実験を計画している。

例えばフードデリバリーでは、店舗から300mほど離れたマンションへ遠隔操作で配達する

例えばフードデリバリーでは、店舗から300mほど離れたマンションへ遠隔操作で配達する

例えばフードデリバリーでは、店舗から300mほど離れたマンションへ遠隔操作で配達する

公道での配送においては、今後の法改正や警察などとの協議も必要になるが、5Gを使った映像伝送によって周囲を確認しながらの遠隔操作が可能。内山氏も、「遠隔操作では比較的技術的な課題が少ない」と話す。実証実験によって、それぞれの環境での商用利用ではどういった課題があるかを見極め、それをクリアしていきたい考えだ。

実験のプラン

実験のプラン

Yperの内山智晴氏

Yperの内山智晴氏

「減災初期対応に必要な災害時の被災状況のドローン生中継サービス」

産業技術研究所発のスタートアップであるサイトセンシングは、GPSなどの衛星測位システムの電波が届かないような地下、屋内、悪天候化の屋外などでも自律飛行ができるドローンを開発している。

サイドセンシングのドローン(画像中央)。屋内でGPS信号が届かなくても自律飛行が可能で、自動で撮影した画像を使って3Dモデルを作成する、といった開発が行われている

サイドセンシングのドローン(画像中央)。屋内でGPS信号が届かなくても自律飛行が可能で、自動で撮影した画像を使って3Dモデルを作成する、といった開発が行われている

サイドセンシングのドローン(画像中央)。屋内でGPS信号が届かなくても自律飛行が可能で、自動で撮影した画像を使って3Dモデルを作成する、といった開発が行われている

同社のドローンは、「移動体の動きにおける加速度の変化を積分して自己位置を求め、映像を使わずに自律航行ができる」(同社代表取締役の平林隆氏)という仕組みで、外部からの電波が不要で、映像も使わないので処理が軽く高速な位置測定が可能だという。

被災状況のリアルタイム把握を行うなど、様々な現場で活用できるとしている

被災状況のリアルタイム把握を行うなど、様々な現場で活用できるとしている

高精細映像が撮影できることで、そのデータを活用したサービスとの連携も可能になるとしている

高精細映像が撮影できることで、そのデータを活用したサービスとの連携も可能になるとしている

災害時にもいち早く現場で活動でき、現場の状況を素早く伝送できることにフォーカスしているそうで、その映像の伝送のために高速・大容量の5Gを生かす。ドローンからの映像を元に、災害時の避難民の数を数えたり、河川の決壊危険個所を映像から推定したり、といった外部のサービスとの連携において、映像がより高精細であるほど精度が高まるため、4Kや8Kの高精細映像を伝送できるよう、今回のプロジェクトで取り組む。

まずは開発の第1フェーズとして、小型のプロトタイプのドローンを開発。都立大のキャンパス内で自律飛行と撮影をして、5Gで映像を伝送する実験を行う。来年には大型ドローンで同様の実験を行い、24年3月には実用化に繋げたい考えだ。

今後のプラン

今後のプラン

サイドセンシングの平林隆氏

サイドセンシングの平林隆氏

「5Gによる大量普及型XR顧客体験価値向上サービス」

観光バスに乗り込んだ乗客がVRゴーグルを装着し、観光地の実際の景色と映像を組み合わせたXR周遊観光サービスなどを提供しているシナスタジアは、5Gによって機材の低コスト化と高リッチ化を実現して、サービス拡大に繋げたい考え。

VRゴーグルとリアルの観光を組み合わせたXR周遊観光サービス

VRゴーグルとリアルの観光を組み合わせたXR周遊観光サービス

現在は、京急電鉄の横浜バスツアーで導入されているがVRゴーグルに加えて処理するためのPCとバッテリーが必要で、バス1台に付き約2000万円のコストが掛かっているという。これを5Gの高速・低遅延の特徴を生かし、ネットワーク側でXR処理を行い、VRゴーグルに配信する仕組みによって、1台に付き400万円という大幅なコスト削減が可能になるという。

コストの重さが課題だったが、5Gの活用でシンクライアント化して安価に抑える

コストの重さが課題だったが、5Gの活用でシンクライアント化して安価に抑える

現在の仕組みでも、1人あたり4000円のチケットが即日完売で、利用者からも好評だという。ただ、オープントップバス1台で運用しており、これをさらに広げようとするには、現状の仕組みでは高コストだと京急側も判断。

それに対して、5Gを使ってデバイスをシンクライアント化することで、コストを削減し、今後はスマートフォン上でもXRコンテンツを配信できるようになり、幅広い環境にサービスが提供できるようになると期待する。

シナスタジアの代表取締役・有年亮博氏は、今回のプロジェクトを踏まえ、「来年度に実サービスを開発する」考えだ。

シナスタジアの有年亮介氏

シナスタジアの有年亮介氏

「オフィスにおける創造・共創を誘発するリアルワールド・メタバースサービス」「人と都市とのリアルなつながり・交流を創出するリアルワールド・メタバースサービス」

4社目のPlacyは、音楽を通じた感性解析AIを開発するスタートアップ。人の感性を推定するために音楽を活用すると精度が高くなることが「研究レベルでは出ている」と同社の代表取締役社長の鈴木綜真氏。Spotifyは、SNSで取得されるデータよりも音楽から得られたデータの方がより高精度にパーソナリティの推定が可能だとしているそうだ。

場所に対して音楽を投稿し、投稿された音楽を聴いて自分の感性と合う場所を見つける、という感性マップを提供している

場所に対して音楽を投稿し、投稿された音楽を聴いて自分の感性と合う場所を見つける、という感性マップを提供している

今回のプロジェクトでは「感性」という観点から街やオフィスの魅力を高めるサービスを開発する

今回のプロジェクトでは「感性」という観点から街やオフィスの魅力を高めるサービスを開発する

こうした視点を応用してその人と感性の合う街を紹介するといったサービスを展開してきた同社だが、今回のプロジェクトではパートナーの清水建設のオフィス内で、従業員のオフィスに最適化されたBGMを再生する。三菱地所とは、NianticのAR技術を活用し、東京・丸の内の「感性マップ」を作成し、誘客・回遊を生み出すためのコンテンツを作成する。

丸の内では、メタバースと感性マップを使って街の感性を可視化し、人の回遊性を高める

丸の内では、メタバースと感性マップを使って街の感性を可視化し、人の回遊性を高める

NiantecのAR技術を使った街クエストを開発してゲーム性も備えるサービスにする計画

NiantecのAR技術を使った街クエストを開発してゲーム性も備えるサービスにする計画

オフィスの感性マップを作成し、感性に合う環境で仕事をすることで、新たな価値の創出を狙う

オフィスの感性マップを作成し、感性に合う環境で仕事をすることで、新たな価値の創出を狙う

Placyの鈴木綜真氏

Placyの鈴木綜真氏

米航空会社、Cバンド5Gが「壊滅的な混乱」を引き起こす可能性を警告

航空業界は、AT&TとVerizon(ベライゾン)が新しいCバンド5Gネットワークを起動する米国時間1月19日に「破局的な」危機をもたらす可能性があると主張している。ロイターが入手した書簡の中で、Delta(デルタ)航空、United(ユナイテッド)航空、Southwest(サウスウエスト)航空など、米国の主要な旅客・貨物航空会社数社のCEOは、5Gセルタワーからの干渉が、航空機に搭載されている繊細な安全装置に影響を与える可能性があると警告した。

この書簡は、ホワイトハウス国家経済会議、連邦航空局(FAA)、連邦通信委員会(FCC)、およびPete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)米運輸長官に送られたもので「主要なハブ空港が飛行可能な状態にならない限り、旅行者や輸送者の大部分が実質的に運行停止となる」と述べている。「航空旅客、荷主、サプライチェーン、必要な医療品の配送への重大な影響を避けるためには、早急な介入が必要」とも。

航空会社は、AT&TとVerizonに対し、米国で最も繁忙で重要な空港の2マイル(約3.2キロメートル)以内で5Gサービスを提供しないよう求めている。また、連邦政府に対しては「壊滅的な混乱を起こさずに安全にサービスを実施する方法をFAAが見極めるまで、タワーが空港の滑走路に近すぎる場合を除いて5Gを展開する」ことを求めている。連邦航空局は1月7日、50の空港で5Gバッファーゾーンを設定した。

今回の書簡は、航空業界とワイヤレス業界の間で続いている一進一退の攻防における最新の進展だ。AT&T、T-Mobile、Verizonの3社は、FCCがオークションにかけたCバンドの再利用周波数を確保するために、2021年初頭に約800億ドル(約9兆1700億円)を投じた。11月、AT&TとVerizonは、FAAが干渉の懸念に対処するために、Cバンドの展開を2022年1月5日に延期することに合意した。両社はその後、空港近くの電波塔の出力を制限することを提案し、1月4日にさらに2週間延期することで合意した。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Igor Bonifacic(イゴール・ボニファシッチ)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Aya Nakazato)

NTT・NTTドコモ・スカパーJSAT・エアバスがHAPS早期実用化の覚書締結、衛星も組み合わせた大規模ネットワーク構想

NTT・NTTドコモ・スカパーJSAT・エアバスがHAPS早期実用化の覚書締結、衛星とHAPSを組み合わせた大規模ネットワーク構想

NTTは1月17日、HAPS早期実用化に向けた研究開発、実証実験などの推進を検討する覚書を、NTTドコモスカパーJSATエアバスとの4社で締結したことを発表した。HAPSの接続性、HAPSを利用した通信システムの有用性の発見、技術やユースケースの開発を4社で進めるという。

HAPSとは、地上約2万mの成層圏を飛行する高高度プラットフォーム(中継基地局)のこと。昨年、NTTとエアバスは、エアバスが所有する高高度無人機「Zepher S」(ゼファーエス)を用いた実証実験を行い、通信サービスの実現可能性をすでに実証している。今回の覚書により4社は、5Gのさらなる高度化と6Gに向けた取り組みとして、空、海、宇宙を含むあらゆる場所への「カバレッジ拡大」を目指す。

さらにこの覚書には、静止軌道衛星(GEO)、低軌道衛星(LEO)も含めた非地上ネットワーク技術を用いたアクセスサービス「宇宙RAN(Radio Access Network)」事業の促進も含まれている。「宇宙RAN」が実現すれば、災害対応、離島やへき地へのサービス、飛行機や船舶などの通信環境の飛躍的改善が期待できるという。

宇宙RANシステム構成

宇宙RANシステム構成

今後は通信技術の開発のみならず、HAPSの機体開発や、HAPSの運用に向けた標準化と制度化への働きかけも行い、HAPSによるネットワークサービスの商用化に向けたビジネスモデルに関する検討も行う。さらに、HAPS、衛星、地上局の連携による「宇宙RAN」事業を促進し、NTTの技術を活用したネットワーク構築の実証実験を視野に入れた協力体制も構築してゆくとしている。

HoloeyesとDental Prediction、5GネットワークとVR空間を利用した国際間遠隔医療カンファレンスの実証実験

Holoeyes、5GネットワークとVR空間を利用した国際間遠隔医療カンファレンスの実証実験を実施

医療用画像処理ソフトウェアなどを提供するHoloeyes(ホロアイズ)と歯科医療スタートアップDental Prediction(デンタル・プレディクション)は1月17日、Holoeyesが提供する医療用画像表示サービス(非医療機器)「Holoeyes XR」とオンライン遠隔共有カンファレンスサービス「Holoeyes VS」を活用し、日本とシンガポールの医師が参加する国際間遠隔カンファレンスの実証実験を実施した。5Gネットワークを活用したVR空間での国際間遠隔医療カンファレンスは、世界初の試みとなる。

この実証実験では、シンガポールの大手通信会社Singtel(シングテル)の実験施設「5G Garage」とNTTドコモの「ドコモ5GオープンラボYotsuya」を利用し、NTT DOCOMO ASIAの現地サポートを受けて、日本とシンガポールを5Gでつなぎ、遠隔カンファレンスを2回行った。

1回目は、HoloeyesのCOO兼CMOである帝京大学冲永総合研究所教授の杉本真樹氏による、シンガポールの消化器外科医2名に対する肝臓の腫瘍切除の模擬カンファレンス。もう1回は、Dental Predictionの歯科医、宇野澤元春氏とニューヨーク大学歯学部准教授の岡崎勝至氏が、シンガポールの日本人歯科医師に対するインプラント治療や歯内療法、歯科器具に関する説明を、歯列の3DモデルをVR空間で操作しながら行うというものだった。HoloeyesとDental Prediction、5GネットワークとVR空間を利用した国際間遠隔医療カンファレンスの実証実験

この実験について、シンガポールの消化器外科医の1人によると、ストレスなくカンファレンスの体験ができたという。「患者への説明、若い外科医の教育、手術計画など意志決定のためのツールとして使用できる」と話している。

NTTドコモ、5Gミリ波で「緻密なエリア構築」を可能にする「置くだけアンテナ」開発

NTTドコモ、5Gミリ波で「緻密なエリア構築」を可能にする『置くだけアンテナ』開発

NTTドコモは、5Gで利用している28GHz帯(ミリ波)や、6Gに向けて開拓している、さらなる高周波数帯の電波において、きめ細やかなエリア構築を可能にするアンテナを開発しました。

同アンテナは、高周波数帯の電波を伝搬するケーブル(誘電体導波路)に、プラスチック小片を接触させると、接触箇所から電波が漏洩するという物理現象を活用したもの。

同実験では、60GHz帯の電波を伝搬するケーブル(誘電導波路)を埋め込んだ板に、プラスチック小片(アンテナ)を置くことで、その周辺に通信エリアを構築できることを確認しました。

さらに、複数の箇所に同時にアンテナを置くことで、複数の場所で同時にエリアを構築することや、アンテナの大きさや配置方法を変えることで、構築する通信エリアの範囲や方向をコントロールできることを確認したといいます。

NTTドコモは、2022年度上期から、5Gサービスで利用している28GHz帯(ミリ波)で本アンテナによる通信エリア構築の検証を開始し、実用化をめざす方針です。

(Source:NTTドコモEngadget日本版より転載)

コトバデザイン、5Gとドコモオープンイノベーションクラウドを活用した低遅延通話サービスCOTOBA Talkの招待制試験開始

コトバデザイン、5Gとドコモオープンイノベーションクラウドを活用した低遅延通話サービスCOTOBA Talkの招待制試験開始

対話型AIの開発を行うコトバデザインは1月13日、NTTドコモの提供する5Gサービスおよびドコモオープンイノベーションクラウドを活用した「超」低遅延通話サービス「COTOBA Talk」の招待制試験サービスのエントリー受付開始を発表した。COTOBA Talk紹介サイトよりエントリーできる。

同招待制試験サービスにより得られたフィードバックを基に、通話体験のさらなる向上と作業現場で求められる機能拡張を進める。特に音声アシスタントを中心とする音声によるVUI(Voice User Interface)の高度化により、ハンズフリー通話およびITシステム利用の充実を図り、商用サービス化を加速する。

COTOBA Talkは、PC操作環境が得られないデスクレスワーカー向けに作られた、低遅延・高品質で安全なコミュニケーションを実現するクラウド型通話サービス。スマートフォンアプリとして提供しており、ヘッドセットを使用すれば複数人で映像付きのハンズフリー通話が可能となる。

 

特徴としては、まず5Gの高速通信と通話処理の最適化により200msを切る低遅延通話の実現がある。またドコモ5G網とドコモイノベーションクラウドに閉じた形のサービスとなっているため、インターネット経由の通話よりも高いセキュリティを保てる。さらに、音声指示を理解する音声アシスタントを搭載していることから、様々な外部ITシステムの音声操作が可能にになっており、端末(スマートフォン)を取り出す必要をなくしているという。この音声アシスタントは、コトバデザインが開発した、対話インターフェースを構築・運用するためのクラウドサービス「COTOBA Agent」を利用して実装している。

コトバデザイン、5Gとドコモオープンイノベーションクラウドを活用した低遅延通話サービスCOTOBA Talkの招待制試験開始

COTOBA Talk サービス構成

 

利用シーンとしては、工事・小売店舗・介護など複数人で連携して作業を行う現場を想定。COTOBA Talkでは、各端末のカメラ映像付きで低遅延通話が行えるため、現場の映像を共有しながら快適に利用できるとしている。特に、骨伝導型ヘッドセットを装着すると、周囲音を遮断せず、騒音環境でもクリアな音声で通話できるようになり、長時間の使用にもストレスがないとしている。

2017年8月設立のコトバデザインは、「ヒトに寄りそう、 対話インタフェースの創造と解放」をミッションとして掲げるスタートアップ。世界中のクリエイターがAIを対話インタフェースとして自由にコンテンツ開発できる世界を作ること、またヒトが対話インタフェースを通じてより豊かな生活が可能となることを目指して、対話システムおよびコンテンツの企画・開発・販売・運用を主事業としている。

【コラム】屋上レンタル、米国の不動産所有者は5Gキャリアと手を結ぶべきだ

5Gインフラを敷設する動きが活発になり各社の競争が激しくなるに連れ、レストラン、ホテル、住居用建物、さらには病院や教会の屋上までもがインフラ敷設場所として注目されている。5Gテクノロジーを人口密度の高い地域に確立したいと考えるテレコミュニケーション会社にとって、こうした屋上は急速に重要な不動産ターゲットとなりつつある。

事実、次世代のワイヤレス展開から得られるリース収入は、今後5年間で、米国内のリース収入の大きな部分を占めると考えられており、不動産所有者や事業主にとって大きなチャンスとなる。

バイデン政権は、5Gインフラの拡大を国の主要課題として位置付けている。1.2兆ドル(約137兆円)のインフラ投資法では、農村部やサービスが十分行き届いていない地域でも高速回線を利用できるようにするための財源として650億ドル(約7兆4000億円) が確保されている。5Gは他のワイヤレステクノロジーと比べて高速で大容量のデータを処理できるが、カバーできる範囲は最大で 約1500フィート(約457メートル)と、ぐっと狭い。

5G テクノロジーは、次世代ワイヤレスネットワークとしてはアンテナが短いため、既存の建物の屋上に敷設するのに非常に適している。

大手ワイヤレス通信プロバイダーに加え、5Gの展開競争には新たにケーブル会社やビックテック企業も含まれている。これらの企業は、5Gマクロおよびスモールセルサイトを配備するために、合わせて2750億ドル(約31兆円)を投資すると予測されている。必要な量の配備を効果的かつ効率的に行う唯一の方法は、既存の建物を利用することである。言い換えれば、5G競争を乗り切るには、屋上配備戦略の採用が鍵になるのだ。

歴史的に言って、ワイヤレス通信市場は不動産所有者やその他の事業主にとっては厳しい市場だった。ワイヤレスキャリアとタワー企業が長期契約を結んでおり、不動産所有者にとって有利とはいえない状況になっていたのだ。

多くの地域では、新しいタワーを立てることに強い反対の声があり、さらに建設、ゾーニング、許可プロセスには時間がかかる。しかし、5G テクノロジーは、次世代ワイヤレスネットワークとしてはアンテナが短く、既存の建物の屋上に敷設するのに非常に適している。現在5Gキャリアにとって、ワイヤレスに関する不動産要件を満たすには、タワー企業より大手不動産業者のほうが、迅速に効率よくソリューションを提供してくれる相手となっている。

屋上配備戦略は、5Gキャリアにとっても不動産所有者にとっても互いにメリットがある。キャリアは使用量の多い地域でできる限り迅速にインフラを配備するという目的を達成することが可能であり、一方不動産所有者は、屋上からリース料を得、すでに所有する不動産を新たな方法で収益化するという経済的利益を得ることができる。

不動産所有者の経常利益に与える影響と、30年リースで生み出されるであろう利益は相当なものであり、不動産所有者は資本へアクセスしやすくなる。さらに不動産所有者は、5Gキャリアに屋上を貸すことで使用料を得ることができるだけでなく、高速回線への接続という意味で、テナントにより質の高いサービスを提供することもできる。

5G展開競争で問題になっている事柄

米国にとって、競争に遅れを取らず国際的な競争力を保つためにも5Gインフラの展開は非常に重要である。5Gは高速での接続、キャパシティの増加、ゼロ遅延をもたらすが、5Gにより期待されるのは、自動運転車や遠隔医療の拡大、製造や農業の効率化、サプライチェーン管理の改善まで、さまざまな事業サービスを可能にするイノベーションの推進である。

これらのイノベーションから生み出される利益すべてを考慮すると、5Gは2025年までに米国のGDPのうち、1兆5000億ドル(約170兆円)以上をもたらすと予測される。

またバイデン政権は、5Gテクノロジーとユニバーサルブロードバンドを、地方に暮らす人々に経済的な平等もたらす手段と考えている。政策声明によると、農村部では都市部と比較して信頼のおけるインターネットの利用が10分の1に限られているとのことである。

最近バイデン大統領が署名したインフラ投資法においては、大統領も国会も農村部におけるブロードバンドインフラへの投資を優先し、十分サービスが提供されていない地域でのインターネットへのアクセスを拡大し、デジタル上の分断を是正したい考えだ。このため、農村部の不動産所有者は5Gインフラの展開からより多くの利益を得ることができるだろう。

強力な5Gネットワークを米国内に確立するには時間がかかるだろう。5Gプロバイダーやワイヤレスキャリアと手を結ぶ不動産所有者は、5Gテクノロジーのサイバーセキュリティにまつわる考慮事項について、しっかり情報提供を受け、それを理解しなければならない(これらの考慮事項が、提携の足かせになると考える必要はない)。というのも不動産所有者は5Gインフラを自身の不動産に配備し、そこからのワイヤレスネットワークを入居者に提供することになるからである。

最近2,300人以上のリスク管理者および他の責任者を対象にAonが行った調査では、サイバーリスクは現在のそして将来予想される世界的リスクの第一位として位置付けられた。5Gが普及し接続性が高まることは確実である。つまり、サイバーセキュリティ業界は機械学習や人工知能を改善しそれを広く活用し防御を強化する必要があるのである。

また最近では、不動産業界におけるサイバーセキュリティ強化を促進するためのガイダンスやフレームワークを提供する Building Cyber Securityといった組織も立ち上げられている。

不動産所有者が効率よく屋上を収益化し5G競争に参画するには、政府や民間企業が5G敷設要件の審査をタイムリーに行うことも含め、引き続き迅速な5Gインフラの配備に向け協力して作業を進めていく必要がある。

これに加えて、州や地域レベルでも、5Gアンテナの敷設に関するゾーニングや認可プロセスを改善する作業をもっと進める必要がある。多くの州議会がすでに州民の利益になる5G戦略を策定するための法案を検討中であり、これにより、不動産所有者にも新たな機会が提供されることが見込まれる。

5Gの競争を促進するためは、より多くの政策や技術的な作業が必要だが、不動産所有者が利益を手にする機会は、目の前に手に取れる形で存在している。新型コロナウイルス感染症によって経済的打撃を受けたレストラン経営者やホテル業者が立ち直ろうとする中、屋上の収益化は、店を閉じるしか選択肢がなかった状態との違いを生み出すことになるだろう。

編集部注:本稿の執筆者James Trainor(ジェームズ・トレーナー)氏は、FBIのサイバー部門の元アシスタントディレクターで、Aonのシニアバイスプレジデント。Rick Varnell(リック・ヴァーネル)氏とMatt Davis(マット・デイビス)氏は、いずれも5G LLCの創設者であり、プリンシパル・パートナー。

画像クレジット:skaman306 / Getty Images

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(文:James Trainor、Rick Varnell、Matt Davis、翻訳:Dragonfly)

5Gネットワーク上で動作するアプリの開発を容易にするプラットフォーム「Shabodi」

市場の多くが5Gインフラストラクチャの構築と販売に注力している一方、見落とされている重要な部分として、5Gネットワーク上で動作するアプリケーションの開発があると、SineWave Ventures(サインウェーブ・ベンチャーズ)のゼネラルパートナーであるVivek Ladsariya(ヴィヴェック・ラドサリヤ)氏は述べている。だからこそ、Shabodi(シャボディ)のような企業を支援することに興奮していると同氏はいう。

「アプリケーション開発者は常にネットワークの複雑さを取り除きたいと考えており、Shabodiはそんなニーズに応えるための準備を整えています」と、ラドサリヤ氏はメールで語っている。

Shabodiは、企業やシステムインテグレーター、通信事業者が5G上での次世代アプリケーションの開発・展開を加速できるようにするために、シード資金として337万5000ドル(約3億8000万円)を調達した。

トロントを拠点とするこの会社は、通信業界のベテランであるVikram Chopra(ヴィクラム・チョプラ)氏とHarpreet Geekee(ハープリート・ギーキー)氏によって2020年に設立され、まずはそのアプリケーション・イネーブルメント・プラットフォームによる5Gの展開に注力している。2人が一緒に働くのはこれが二度目になる。

Shabodiはすでに顧客と協力し、5Gの展開を収益化して投資収益率を高め、そのネットワークの可能性を最大限に活用している。

「5Gはすべての人にとっては2〜3年先の話ですが、事業としては今、機が熟しています」と、チョプラ氏はTechCrunchに語った。「企業は複数の拠点に5Gを展開していますが、その上でアプリケーションを構築するには新たなスキルセットが必要であり、今のところ当社はそれに対応している数少ない企業の1つです」。

Shabodiでは、決済の分野でSquare(スクウェア)がやったことになぞらえて、シンプルなAPIを提供することで5Gを解きほぐし、開発者が予想外のコストや複雑さ、ドメインの格差なしに、インダストリー4.0のアプリケーションを構築できるようにすることを目指していると、チョプラ氏は述べている。

今回のシードラウンドは、Blumberg Capital(ブラムバーグ・キャピタル)が主導し、Counterview Capital(カウンタービュー・キャピタル)、Shasta Ventures(シャスタ・ベンチャーズ)、SineWave Ventures、MAVA Ventures(マヴァ・ベンチャーズ)、Green Egg Ventures(グリーン・エッグ・ベンチャーズ)、Maccabee Ventures(マカビー・ベンチャーズ)、CEAS Investments(シアス・インベストメント)、Supernode Ventures(スーパーノード・ベンチャーズ)、Lorimer Ventures(ロリマー・ベンチャーズ)が参加した。Shabodiは2021年初め、 Forum Ventures(フォーラム・ベンチャーズ)とCisco(シスコ)やYahoo(ヤフー)の元幹部が主導するプレシードラウンドを実施し、20万ドル(約2300万円)を調達している。

同社は15人の従業員と2つの特許を有しており、2022年には3つ目の特許を取得する予定だ。

チョプラ氏は、他の顧客については明らかにできないとのことだが、約10社ほどの企業と交渉中であると述べている。同氏によれば、今回の資金調達によって製品チームと営業チームを強化し、年内にはShabodiの最初の製品を公開する予定だという。

「この10年で最も影響力のある開発の1つである5Gの展開を加速させるために、業界の専門家からなるShabodiの先見性のあるチームに協力できることを誇らしく思います」と、Blumberg Capitalのマネージング・ディレクター、Bruce Taragin(ブルース・タラギン)氏はメールで語っている。「5Gはエンタープライズ・テクノロジーの多くの側面を崩壊させるでしょう。Shabodiのプラットフォームは、アプリケーション開発者、組織、業界全体が5Gを実現する方法を大幅に改善する可能性を有しています」。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

情報通信研究機構が生活環境における携帯電話基地局からの電波曝露レベルを大規模測定、上昇傾向ながら低いレベルと判明

情報通信研究機構が生活環境における携帯電話基地局からの電波曝露レベルを大規模測定、上昇傾向ながら低いレベルと判明

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、この10年間の市街地・郊外・地下街の携帯電話基地局などからの電波強度を調査し、その変動傾向を明らかにした。約10年前と比較したところ、同一地域における電波曝露レベルは上昇傾向にあるが、国が定めた電波防護指針よりも十分に低いレベルであることがわかった。

日本では、携帯電話や無線LANなどの電波は、電波防護指針に基づいて人体に悪影響がない範囲で利用されているが、目に見えない電波への健康不安は残る。そこでNICTでは、2019年度に生活環境における電波曝露レベルの大規模な想定を開始した。市街地・郊外・地下街の500以上の地点で定点測定しているほか、携帯型測定器や測定器搭載自動車などを使った広域測定も組み合わせている。電波曝露レベルの情報を広く共有することが狙いだ。

NICTは、500箇所以上に接地した測定装置「電界プローブ」からのデータを統計処理し、地域の差異や過去の測定結果から変動などを解析した。地域別では、市街地が郊外よりも電波曝露レベルが高く(4倍程度)、この傾向は約10年間変わっていない。地下街は、郊外よりもやや高い結果となった。また市街地と郊外では、10年前と比べて電波曝露レベルは約3倍に上昇しており、地下街においては約100倍も上昇していた。これは、10年前は未整備だった地下街での携帯電話サービスが改善されたためだとNICTでは考えている。

電波曝露レベルの地域ごとのカラーマップ

情報通信研究機構が生活環境における携帯電話基地局からの電波曝露レベルを大規模測定、上昇傾向ながら低いレベルと判明

市街地・郊外・地下街の電波ばく露レベルの統計分布

全体に上昇しているとはいえ、電波防護指針からは、中央値で1万分の1以下と十分に低いレベルであった。またこのレベルは、海外の最近の測定結果と比較しても15分の1と低かった。

この調査結果は5Gサービスが始まる前のものであるため、これから5Gが本格的に普及するようになったときに電波曝露レベルがどう変化するかを知るための参照データになるという。今後は、少なくとも2040年までは測定を継続し、結果を公表するとしている。

情報通信研究機構が生活環境における携帯電話基地局からの電波曝露レベルを大規模測定、上昇傾向ながら低いレベルと判明

市街地・郊外・地下街における電波防護指針値と電波ばく露レベルの比

アマゾンが数日でプライベートモバイルネットワークの設置・拡張できるAWS Private 5Gのプレビュー版公開

米国時間11月30日午前、Amazon(アマゾン)のAWS re:Inventカンファレンスで、同社はAWS Private 5G(AWSプライベート5G)のプレビューを発表した。ユーザーが独自のプライベートネットワークを容易に展開、管理するサービスだ。新機能の狙いは、現在多くの企業が直面している5Gの活用という課題に対応することだ。AWSのCEOであるAdam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏は、AWS Private 5Gを使えば、プライベートモバイルネットワークの設置と拡張が数カ月ではなく数日でできるようになる、と語った。

「モバイル・テクノロジーの利点を、長い計画サイクルや複雑な統合、高額の初期費用といった障壁なく享受することができます」とセリプスキー氏が基調講演で述べた。「ネットワークをどこに作りたいのか、ネットワーク容量をどうしたいのかを当社に知らせていただければ、必要なハードウェアとソフトウェアにSIMカードをお送りします」。

画像クレジット:AWS

セリプスキー氏は、AWS Private 5Gがネットワークの設定、展開を自動的に行い、デバイスの追加やネットワークトラフィックの増加に合わせて、容量をオンデマンドで拡張できることを説明した。初期費用やデバイス当たりのコストはかからず、顧客は要求したネットワーク容量とスループットに対してのみ料金を支払う。

「多くのお客様が、さまざまな制約に対応するために独自のプライベート5Gネットワーク構築を望んでいますが、プライベートモバイルネットワークの展開には、多くの時間と費用、予測されるピーク容量に合わせたネットワーク設計が必要になり、複数ベンダーのソフトウェアとハードウェアのコンポーネントを購入、統合しなくてはなりません。また、お客様自身でネットワークを構築できたとしても、現在のプライベートモバイルネットワーキングの価格モデルでは接続デバイスごとに課金されるため、数千台のデバイスを利用するケースでは価格的に利用が困難です」と新サービスを紹介するブログで会社は述べた。

Amazonは、AWS Private 5Gは展開を簡易化することで、顧客が独自の4G/LTEあるいは5Gのネットワークを迅速に展開し、接続デバイス数を容易に増減できること、使い慣れたオンデマンドクラウドの価格モデルを利用できることなどを説明している。

AWS Private 5Gのプレビュー版は米国で公開される。利用するためには、ここで申し込みができる。

画像クレジット:AWS

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ドコモとエアバスが高高度無人機Zephyr Sを使い高度約2万メートルの成層圏から電波伝搬測定実験を実施

ドコモとエアバスが高高度無人機Zephyr Sを使い高度約2万メートルの成層圏から電波伝搬測定実験を実施

高高度無人機(HAPS)「Zephyr S」(ゼファーエス)離陸時の様子

NTTドコモは11月15日、エアバスの高高度無人機(HAPS)「Zephyr S」(ゼファーエス)を使った高度約2万mの成層圏から地上の受信アンテナへのUHF帯電波伝搬測定実験を実施し、成層圏から地上のスマートフォンなどへの通信サービスの実現可能性が実証されたことを発表した。

実験は、2021年8月25日から9月13日までの20日間、アメリカのアリゾナ州ユマにて行われた。飛行中のゼファーから地上のアンテナに向けてUHF帯の電波を送信するというものだが、距離、天候、ゼファーの飛行パターンなどさまざまな条件下で測定が行われた。また、高高度無人機1機に対して接続するユーザー数が増えれば、それだけ帯域幅が狭くなりスループットが低くなることから、スループットを3段階に変えて汎用性の検証も行った。

さらに、通常は2GHzなのに対して、速度は落ちるが長距離の通信が可能な450MHzの電波を使った実験も行われ、約140kmの長距離接続も試みられ、成功した。これらの実験により、UHF帯の電波を使う高高度無人機と地上のスマートフォンの直接通信において、十分な通信品質が実現可能であることがわかった。

ドコモとエアバスが高高度無人機Zephyr Sを使い高度約2万メートルの成層圏から電波伝搬測定実験を実施

山間部、離島、海上など、地上にはまだネットワーク接続が困難な地域がある。また、災害対策、イベントなど人が密集する場所での通信容量の確保、建設現場での重機の遠隔操作などにも非地上ネットワーク技術への期待が集まっているが、この実証実験の成功により、そうした地域への通信サービス提供への可能性が広がった。

ちなみにこの実験で、ゼファーは最高到達高度7万6100フィート(約2万3195km)を記録し、国際航空連盟(FAI)公式の世界記録を樹立した。この記録も含め今回の飛行により、成層圏の極低温環境でも持続的なネットワーク提供が可能であることが実証された。

ソフトバンクがプライベート5G商用化のための研究施設「AI-on-5G Lab.」をNVIDIAと合同で開設

集英社がXR事業開発課を新設し「集英社 XR」開始、NianticとLightship ARDKでパートナーシップも

ソフトバンクは11月10日、5Gの仮想化無線ネットワークvRANとMECが融合した環境でAI技術などのソリューションの実証や技術応用を行う研究施設「AI-on-5G Lab.」を、NVIDIAと合同で開設すると発表した。これより、プライベート5G向けのソリューション開発や、完全仮想化されたプライベート5Gの商用化を推進するという。

vRAN(virtualized Radio Access Network)とは、モバイル機器とインターネットとをつなぐ親局の専用ハードウェアの仕事を汎用コンピューター内のソフトウェアで仮想的に行う仕組み。MEC(Multi-access Edge Computing)は、マルチアクセス・エッジコンピューティングの略で、端末の近くにサーバーを分散配置するネットワーク技法のことをいう。これらを利用することで、事業所などが独自の5Gネットワーク、つまりプライベート5Gを構築できるようになる。「AI-on-5G Labs.」は、そうしたシステムをAIで最適化・自動化し、普及を目指そうとしている。

またvRAN普及のメリットとして、通信機器を汎用サーバー上にソフトウエアで構成することによるコストダウンをはじめ、通信以外の様々なアプリケーションを構成する役割を同時に提供可能な点を挙げている。例えばプライベート5Gを導入している工場において、通信を行っていない夜間帯に、MECに集積された情報をAI学習するための資源として活用することで、工場の生産性向上を図れるという。

この研究施設では、ソフトバンクが2018年から共同研究を行ってきたNVIDIAのGPUなどのハードウェアが使われ、それを用いてvRANとMECの機能を統合し、さまざまな検証が行われる。具体的には、ソフトバンクが提供するプライベート5G上で、NVIDIAのハードウェア、基地局の仮想化、AI処理のミドルウェア、アメリカのネットワークソフトウエアプロバイダーMavenirが提供する仮想化無線信号処理ソフトウェアとコアネットワークのソフトウェア、台湾のFoxconnの物理的アンテナを用いて完全仮想化プラットフォームを構築する。これを使って、プライベート5Gのユースケースの商用化に向けた検証を行うとのことだ。

またソフトバンクは、「6Gに向けた12の挑戦」として、ベストエフォートからの脱却、モバイルのウェブ化、電波による充電などといった目標を示しているが、その中の「AIのネットワーク」の開発検証を「AI-on-5G Labs.」で行うと話している。

KDDI総合研究所が共通鍵暗号アルゴリズム「Rocca」開発、256ビット暗号で100Gbps超の処理性能

空中親機ドローンと子機水中ドローンを合体させた世界初の「水空合体ドローン」が開発、2022年度の商用化目指す

KDDI総合研究所は11月9日、Beyond 5G/6Gから先の時代に求められる共通鍵暗号アルゴリズム「Rocca」の開発を発表した。256ビットの鍵長に対応する認証付きストリーム暗号であり、世界最速となる138Gbpsを達成した(ソフトウェア実装された256ビットの鍵長に対応する認証付き暗号アルゴリズムとして。Intel Core i7-1068NG7での計測結果。2021年11月9日時点、KDDI総合研究所調べ)。

これは、KDDI総合研究所と兵庫県立大学大学院情報科学研究科の五十部孝典准教授との共同研究によるもの。5G、6Gのさらに先となる、いわゆるbeyond 5G/6Gの時代には100Gbpsの通信速度が実現するといわれているが(5Gは10Gbps)、それにともない、安全で高速な暗号化の方法も必要となる。研究グループでは、この時代の共通鍵暗号技術の要件を、「通信速度のボトルネックとならない100Gbpsを超える処理速度」「量子コンピューターによる解読に対抗できる256ビットの鍵長」「暗号化と認証機能を統合し、データが改ざんされていないことを保証できるアルゴリズム(認証付き暗号)」の3つとしている。Roccaは、これらを満たしている。

処理速度では、広く使われているアメリカの標準暗号アルゴリズム「AES」に比べ、AESが高速化命令セット「AES-NI」を利用しない場合100倍以上となった。また、AES-NIを利用した場合と比べても、4.5倍という性能を示した。256ビットの鍵長に対応する認証付き暗号アルゴリズムとしては、世界で初めて100Gbpsを超える138Gbpsを実現。ソフトウェア実装された256ビット鍵長に対応した認証付き暗号として世界最速を記録している。

今後は、アルゴリズムのさらなる高速化をはかり、外部機関と連携した安全性評価を実施するとのことだ。

KDDI総合研究所が共通鍵暗号アルゴリズム「Rocca」開発、256ビット暗号で100Gbps超の処理性能

Intel Core i7-1068NG7での計測結果。AESはOpenSSLの実装を利用して計測。Roccaも同様にOpen SSLに組み込み計測を実施

バーチャル渋谷の知見活用、都市連動型メタバースのガイドラインを策定する「バーチャルシティコンソーシアム」発足

渋谷区公認「バーチャル渋谷」の知見活用、都市連動型メタバースのガイドラインを策定する「バーチャルシティコンソーシアム」発足

バーチャルシティコンソーシアム

KDDI、東急、みずほリサーチ&テクノロジー、渋谷未来デザインの4社は11月9日、バーチャルシティコンソーシアムの発足を発表しました。KDDIが2022年春に展開予定のプラットフォーム構想「バーチャルシティ」などでの利活用に向けて、オープンな議論や調査研究を行い、ガイドラインの策定や情報発信に取り組むとしています。

同コンソーシアムでは、都市連動型メタバースをバーチャルシティと定義。「昨今、メタバースと呼ばれるインターネット上に構成される仮想空間での生活やビジネスが注目されており、バーチャルシティにおいては、実在都市と仮想空間が連動し、ともに発展していく新たなまちづくりを目指しています」とバーチャルシティ構想をアピール。一方で「バーチャル空間と実在都市の両方の視点から、ステークホルダー間の諸権利の整理やコンプライアンス指針の策定など、課題解決のための仕組みづくりが必要になります」とコンソーシアムの目的を説明しています。

なお、コンソーシアムの参加メンバーは、すでに渋谷区公認の配信プラットフォーム「バーチャル渋谷」の運営にかかわっており、ここで得られた知見をもとに、今後の他都市や類似モデル展開などに向けて活動していくとのことです。

一定の成功を収めているバーチャル渋谷の事例を他の都市にも展開しやすくなるのであれば、今後メタバースを盛り上げていく一助となる可能性はありそうです。バーチャル渋谷の知見活用、都市連動型メタバースのガイドラインを策定する「バーチャルシティコンソーシアム」発足

策定計画(予定)

  • 2021年11月:「バーチャルシティ」への期待感へ応える取り組みの構想。これまでの「バーチャル渋谷」の取り組みのスタディ。「バーチャル渋谷」におけるステークホルダーや法規制・権利などの整理。実在都市におけるステークホルダーや法規制・権利などの整理
  • 2021年12月:バーチャルシティ」と実在都市が連携するメリット・デメリット。「バーチャルシティ」上のコンプライアンスのあり方
  • 2022年1月:「バーチャルシティ」上のコンプライアンスのあり方(続き)。他都市展開にあたっての留意事項の整理。ガイドラインの骨子
  • 2022年3月:ガイドライン案

(Source:KDDIバーチャルシティコンソーシアムEngadget日本版より転載)

国立がん研究センターが8K腹腔鏡手術システムによる遠隔手術支援の有用性を確認

高度医療ロボのリバーフィールドが約30億円調達、執刀医にリアルタイムで力覚を伝える空気圧精密駆動手術支援ロボの上市加速

国立がん研究センターは11月2日、8K映像システムを使った腹腔鏡手術のリアルタイム映像を送受信して手術指導を行う世界初の実証事件により、その医学的有用性が確認されたことを発表した。また、遠隔支援(指導)により外科医の内視鏡技術が向上し、手術時間が短縮されることも確認できた。

これは、日本医療研究開発機構(AMED)「8K等高精細映像データ利活用研究事業」の支援による、国立がん研究センターとNHKエンジニアリングシステムなどによる共同研究。実験では、NHKエンジニアリングシステムと池上通信機が共同開発した小型の8K内視鏡カメラと、オリンパスが開発した8K腹腔鏡手術システムが使われた。手術室を想定した千葉県の実験サイトで、動物の直腸切除手術を行い、その様子を光ファイバーや5Gなどによるブロードバンドで京都府の京阪奈オープンイノベーションセンターに送信。外科医3名で手術を行ったが、遠隔支援がある場合とない場合との手術技術の改善度を評価した。

超高精細映像の「本物に迫る立体感」で、遠隔地でも手術状況を詳細に把握でき、質の高い手術支援が提供できたことで、外科医の内視鏡技術が向上し、手術時間が短縮された。また、映像伝送においては、転送レート80Mbps、遅延時間約600ミリ秒を達成し、十分な性能を確認できた。

これにより、少数の医師での治療が可能になり、若手育成、外科医の偏在の解消などが期待される。今後は、外科医を1名減らした場合の評価、「4K8K高度映像配信システム」への手術映像のアーカイブの開発などを進め、近い将来の社会実装に向けた具体的な計画を策定するとのことだ。

ドコモから重量1キロ以下の5G対応モバイルPC「ThinkPad X1 Nano」登場、月額1100円から維持可能

月額1100円から維持可能、ドコモから5G対応モバイルPC「ThinkPad X1 Nano」登場

NTTドコモ(以下、ドコモ)が5G対応PCとして「ThinkPad X1 Nano」を2021年10月6日に発売します。販路はドコモオンラインショップ、全国のドコモショップ、家電量販店。

本製品はTiger Lakeこと第11世代インテル Core i7(またはCore i5)を搭載した13インチのモバイルノート。ドコモに先んじてレノボが2020年12月08日に発売しましたが、今回、新たにキャリア版が追加された格好です。

特徴は何といっても1キログラムを切る軽さです。構成によって若干変わりますが、実測で905グラム(公称の最低値は907グラム)となっており、モバイル性を重視した1台となっています。もちろん打ちやすさで定評のキーボード(US・JIS配列を選択可能)に加え、トラックポイントとトラックパッド、それにドルビー・ビジョン対応のスピーカーを搭載しているなど、テレワーカーに適した製品といえます。

描画性能とAI処理能力が向上したハイエンド仕様で、メモリは8GB or 16GB、ストレージ(SSD)は256GB or 512GB or 1TBから選択できます。本体サイズは292.8×207.7×16.75ミリ。内蔵バッテリーはType-Cケーブルと65W出力のACアダプターを用いて充電できます。月額1100円から維持可能、ドコモから5G対応モバイルPC「ThinkPad X1 Nano」登場月額1100円から維持可能、ドコモから5G対応モバイルPC「ThinkPad X1 Nano」登場月額1100円から維持可能、ドコモから5G対応モバイルPC「ThinkPad X1 Nano」登場月額1100円から維持可能、ドコモから5G対応モバイルPC「ThinkPad X1 Nano」登場月額1100円から維持可能、ドコモから5G対応モバイルPC「ThinkPad X1 Nano」登場月額1100円から維持可能、ドコモから5G対応モバイルPC「ThinkPad X1 Nano」登場月額1100円から維持可能、ドコモから5G対応モバイルPC「ThinkPad X1 Nano」登場

製品概要の詳細は既出の速報やレビューをご覧ください。

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ドコモ版 ThinkPad X1 Nano の注意点

ドコモ版は5G対応かつnano SIM(eSIMは非搭載)を1枚挿せます。回線契約なしで購入でき、端末の返却を前提とした割引きプログラム「いつでもかえどきプログラム」を適用することも可能です。

本製品で契約可能な料金プランは5Gギガホ、5Gギガライト、データプラス、ahamo。なお、ドコモによれば、ギガプランの契約があれば月額1100円から維持できるとのことです。また、サポートに関しては、レノボが用意する保守・サポートを受けることが可能ですが、ドコモの「ケータイ保障サービス」への加入はできません。

(Source:NTTドコモEngadget日本版より転載)