米国時間9月30日、Twilioは毎年恒例のSignalカンファレンスを開催した。いつものように同社はこのイベントを利用して、多数の新製品や新機能を発表した。大部分の内容は、特にウェブやモバイル開発者にとっては画期的な新機能は披露されなかった。Twilioのコアサービスは、何と言ってもウェブサービスAPIを利用して電話の発着信やテキストメッセージの送受信などを実現する機能だ。本日の発表は、Twilioのプロダクトエコシステム全体のエッジ部分を強化する内容だった。
少なくともほとんどの開発者の視点での最も興味深いローンチは、おそらく「TwilioのVideo Web RTC Go」の一般公開だろう。この無料のビデオサービスを利用すれば、ウェブやモバイルアプリケーションに1対1のビデオチャットを追加することができる。
Twilioによると、これは無料トライアルではなく、Twilioのリレーを経由して月25GBの帯域幅、つまり約10万人ぶんの参加者に制限されているという。ロギングや診断機能も利用できる。フリーミアムモデルだが始める際にはさまざまな制限がある。帯域がもっと必要な場合は、もちろん有料プランアップグレードすることも可能だ。
Twilioのプラットフォームおよび開発者エクスペリエンス担当シニアディレクターのQuinton Wall(クイントン・ウォール)氏は「Twilio Video WebRTC Goは無料サービスで、開発者がが遠隔学習などのために1対1のビデオ接続を構築するための無料サービスです。クライアントは、新型コロナウイルスの感染蔓延によって加速した新しいユースケースに必要なものをすべて相談できます」と語り。そして「私たちが本当にやりたかったことは、すべての障壁を取り除き、WebRTCの上に構築するために必要なすべてのツールを提供する無料の層、そして永遠に無料の層を作ることです」と続けた。
2つ目の大きな発表は、Twilioの最新IoTサービスであるMicrovisor IoTプラットフォームの提供が開始された点だ。Twilioは今年初めにIoTハードウェアとソフトウェアのスペシャリストであるElectric Impを買収(未訳記事)しており、IoTへの取り組みを開始した当初は、Electric ImpのSuper SIM(世界174カ国344のネットワークに接続できるSIM)製品(未訳記事)によるセルラー接続からスタートしていた。Microvisor IoTプラットフォームの背後にある考え方は、組み込み開発者がコネクテッドデバイスを構築するために必要なすべてのツールと、それらをアップデートして安全に保つためのライフサイクル管理ツールを提供することだ。
Twilio IoTのGMであるEvan Cummack(エバン・カマック)氏は「TwilioがIoT市場を深く掘り下げていくと、各社の多くのプロジェクトが失敗に終わっていることがわかりました」と語る。「顧客の状況を個別に調べたところ、多くの失敗の原因が見えてきました。エンドユーザーが何を求めているのか、エンドユーザーの体験、価値やビジネスモデルなど、根本的な判断ミスが原因であることもありますが、多くの場合は技術的な問題であったり、技術的な課題があまりにも急峻であったためにROI(投資利益率)の方程式が崩れてしまったことが原因でした。必要な技術的努力を正当化するために十分な価値を提供できなかったのです」と説明する。
Electric Impの買収によって、Twilioはフルスタックプラットフォームを手に入れた。しかし、カマック氏が指摘するように、ほとんどの企業はこれらのプラットフォームを購入しない。その代わりに、ゼロからソリューションを構築しようとしている。Twilioの仮説では「これらのデバイス用のネイティブコードを書けるようにしたいと考えているため、そうしているのだ」という。これをフルスタックプラットフォームの利便性と組み合わせるのは難しい。
そこでTwilioチームが考え出したソリューションは、この新しいソフトウェアプラットフォームとArmの最近のハードウェア技術革新であるArm TrustZone Technology(Armサイト)を組み合わせたものだ。ArmのTrustZoneハードウェア分離機能をコアに据えることで、Microvisorプラットフォームは最新のCortex Mベースのプロセッサを使用するデバイス上でのみ動作する。その見返りとしてユーザーは、リモートデバッグ機能に加えて、セキュアなブート機能、無線でのファームウェアアップデート、デバイスに接続するためのセキュアなトンネルを得ることができる。
これは開発者が、音声、SMS、Super SIM、TaskRouterなどを介したワイヤレス接続など、Twilioを利用したすべてのエクスペリエンスからデータを集約するのに役立つ新しいAPIとなる。これは、ユーザーがこれらのチャネルがどのように利用されているかをよりよく理解できるようにすることを目的としたもので、請求書を理解するためのものではなく、ビジネスが顧客とどのようにやり取りしているかを分析するツールを構築するためのものだ。
そして最後にTwilio Frontlineだ。これは開発者向けの製品ではないが、顧客とコミュニケーションを取る必要があるかもしれないフロントラインワーカー(エッセンシャルワーカー)のためのReact Nativeベースのアプリとなる。
外で待っている顧客と話をする必要がある店舗の従業員のことを考えてみてほしい。このアプリはチャットに特化しており、SMS、WhatsApp、ウェブベースおよびアプリ内チャットクライアントをサポートしている。Frontlineは、既存の企業認証やCRMシステムと統合することも可能だ。
画像クレジット:Robert Alexander/Getty Images / Getty Images
カテゴリー:IoT
タグ:Twilio、Web RTC
[原文へ]
(翻訳:TechCrunch Japan)