好調の外国語eラーニングサービス「Duolingo」が10億円超を調達した理由

SEC(米証券取引委員会)への提出書類によれば、外国語のeラーニングを提供するユニコーン企業(10億ドル企業)であるDuolingo(デュオリンゴ)は2020年4月初めにベンチャーキャピタルのGeneral Atlanticから1000万ドル(約10億7000万円)の資金を調達している。好調を伝えられるオンライン言語学習プラットフォームとしては、ほぼ3年ぶりの外部投資の受け入れとなった。これにともないGeneral AtlanticはDuolingoに取締役の席を1名分確保した。

Duolingoの最近の会社評価額は15億ドル(約1605億3000万円)だったが、「今回のラウンドにより評価が増加した」と述べている。ただし具体的な額についてはコメントを避けた。

General AtlanticはOpenClassroomsRuangguruUnacademyなど世界で多数エドテック企業に投資している。Duolingoは「General Atlanticのグローバルなプラットフォーム、アジアでのオンライン教育の経験は、特にこの地域におけるDuolingoの英語試験を拡大する計画に大いに役立ち、同社の成長を加速させる」と述べた。

Duolingoは2019年12月に15億ドルの会社評価額で3000万ドル(約32億1000万円)を調達している。こうした資金調達の数カ月後にそれより小さい額の資金調達を行うのは異例だ。 過去の例をみると、そうした資金調達は次のようないくつかの理由で起きている。1つは後の投資が同じ資金調達ラウンドの一部だった場合だ。もう1つの可能性はなんらかの理由で企業がさらに現金を必要とする事情があり、単にそれを調達した場合だ。あるいは新しいラウンドでも多額の資金を調達しようとしたそれができなかった場合もある。

ではDuolingoはどれだったのか?

Duolingoは、新しい投資家を獲得したかったが、多額の資金は必要なかったため1000万ドルとなったとしている。同社はキャッシュフローには余裕があると述べている。

過去数週間で、Duolingoは子供たちが読み書きを教えるアプリをリリースした。このDuolingo Plusの有料サブスクリプションは100万を超え、収入は通年換算で1億4000万ドル(約149億8000万円)となったとしている。また同社は最近、最初の最高財務責任者と顧問弁護士を採用した。

DuolingoはTechCrunchの取材に対して次にようにコメントしている。

「我々のビジネスはとても急速に成長しており、資金も十分以上にある。自己資本を拡大するために資金調達を行う必要性は少なかった。しかし、我々は2019年にGeneral Atlanticとの提携関係を強化してきた」。

他方でGeneral AtlanticのマネージングディレクターのTanzeen Syed(タンジーン・サイード)氏は「Duolingoは外国語学習では市場リーダーだ。急速な成長を維持しながら事業は利益を上げており、ビジネスモデルも効果的だ」と述べている。

もう1つの興味深い事実は、1000万ドルの調達と同時に二次市場における発行済株式の売買があったことだ。こうした取引は株主が持ち株を売却したり、会社が自社株買いを実施した場合などに起きる。

Duolingoの場合は、General Atlanticの所有率を押し上げるために既存投資家が持ち株の一部を同社に売却した。General Atlanticはこの取引の詳細を明かすことを避けている。

この情報に照らしてみると、常に大量の英語学習者を抱える有望市場であるアジア地域へのDuolingoの進出をGeneral Atlantiは歓迎しており、他の投資家は株式売却によって負担を減らしたようだ。

つまり公開株式市場が厳しさを増し、未公開株の市場も事実上停止している状況でDuolingoの既存投資家の一部は株式の現金化を図ったのだろう。現在、スタートアップが未公開のまま留まる期間がこれまで以上に長期化しているため、二次市場における取引はまったく普通のことになっている。

二次市場における売却は既存株主が投資先企業の方向性に対して懸念を抱いていることを示す場合ももちろんある。

しかしDuolingoはこの分野の世界制覇という大きな目標に向けて全力で前進しており、金庫にキャッシュを加え、取締役会にこの提携先の代表も加えた。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Y Combinator 2019年冬クラス、Demo Day 1日目のスタートアップ(2)

Y Combinator(YC)の企業を抱えた2019年の冬クラスは200社以上が参加し、これまでのYCで最大の規模になった。私たちはその場に参加し、それぞれのクラスの話を聞きながら、見たもののメモを持ち寄った。以下に紹介するのは米国時間3月18日にピッチが行われた86社のスタートアップだ。

Y Combinator 2019年冬クラス、Demo Day 1日目のスタートアップ
・Part 1:パイオニアステージ(1)
・Part 2:パイオニアステージ(2)※この記事
・Part 3:パイオニアステージ(3)
・Part 4:パイオニアステージ(4)
・Part 5:ミッションステージ(1)
・Part 6:ミッションステージ(2)
・Part 7:ミッションステージ(3)
・Part 8:ミッションステージ(4)

パイオニアステージ

Ravn
歩兵にとって戦場で最も危険な行為の1つが、角で見回すことだ。Ravnは、銃、ドローン、または他の場所に設置されたカメラを使って、兵士や警察などが角の向こうを見回せるようにする。遮蔽に隠れながら敵を見ることができれば、命を守ることができる。Ravnは既に海軍と空軍に対して、40万ドルの契約を結んでいる。かつてネイビーシール(米海軍特殊部隊)の一員だった同社のCEOは、コンピューターサイエンスの勉強を行って拡張現実の専門家となり、国防総省にハードウェアを販売していた。Ravnは未来の兵士にとって不可欠なヘッドアップディスプレイを提供できるだろう。

54gene
54geneはアフリカ大陸の23andMeを目指している。同社によれば、競合他社のデータはユーザーの大部分が白人であるたに、限界があると言う。アフリカに焦点を当てることで、同社は、そうでなければ見過ごされる可能性があるDNAマーカーの検出と識別を支援することができる。共同創業者のAbasi Ene-Obong氏は、ロンドン大学で癌生物学の博士号を取得してる。

Slapdash
エンタープライズアプリケーションは動作が遅く、ファイルやメッセージを横断して特定のものを見つけるのは難しい仕事だ。Slapdashは、Slack、Dropbox、Asana、Salesforce、そしてGoogleなどのオフィスソフトウェアをすべて実行できる、デスクトップ上のソフトウェアスピードコンテナを提供する。ユーザーはすべてのアプリを横断して検索し、生産性を高めることができるので、その雇用主にSaaSサブスクリプションを促すことができる。

YourChoice
これは男性用避妊薬だ。YourChoiceは「世界でも有数の精子生理学者2名」とともに、精子中のABHD2およびANT4タンパク質を標的として、「副作用なし」で100%有効な飲み薬を作成したと述べている。彼らはまた、女性のためのホルモンを含まない避妊薬にも取り組んでいる。

AccioJob
インドの大学卒業生のうち就職できるものは3分の1に過ぎない。これは卒業する学校が、彼らを地元の採用者にしか紹介しないためだ。AccioJobは、学生を就職させる活動のために、年間1万ドルを大学に請求し、就職1件ごとに雇用主に対して請求を行う。同社は学生の連絡先情報と成績を所有しているので、登録する学生が増えて行くことでAccioJobはインドの最も優秀な大学卒業生たちへの窓口になりえるのだ。

CentaurLabs
医者を雇用して医療画像を大量にラベル付けしている。これらの画像はAIを訓練するために利用することができる。彼らの目標は医師と患者のためのセカンドオピニオンシステムを開発することである。

Travelchime
旅行を計画するには、Googleドキュメント、地図、ブログ、友達のおすすめ、インスピレーションを与えてくれるアプリ、そして予約サイトを一緒にまとめて使用する必要がある。Travelchimeは、旅行計画ツール群を、Google Docスタイルのインターフェイスの中に組み合わせたものである。そのインターフェイスは文脈情報に従った推薦を行い、すでに収集済みの人気のある旅行情報を取り込むことができる。その後ユーザーは、Travelchimeから予約を行うことができる。同社が狙っているのはより便利なTripAdvisorである。

Seawise Capital
インドの輸出業者のための貿易融資。創業者によれば、各ローンから10%の利益を得ており、過去6週間で55万ドルの融資残高を達成したと言う。2019年第3四半期までに500万ドル、2020年第1四半期までには2500万ドルの融資残高を達成する予定である。

PerShop
オンラインでのショッピングには欲求不満が溜まりがちだ。なぜなら見て歩いている個々の商品の価格の比較を行えなかったり、サイトにあまりにも多くの無関係な商品があったり、あるいはソーシャルアプリ上で購入できなかったりするからだ。PerShopは自分の好きなブランド、自分のサイズ、自分の払える価格帯に収まるアイテムだけを推奨してくれるパーソナライズされたショッピングサイトである。同社は最終的には、パーソナライズされて、ターゲットを絞ったeコマース広告を、販売する予定である。PerShopは、利用者たちが購入または娯楽目的で利用するにつれてよりスマートになっていく。

Prometheus
空気からCO2を取り出してガソリンを作る。彼らは1ガロン(3.79リットル)あたり約3ドルでガソリンを生産できると言う(1ドル110円として、87.07円/リットル)。過去の試行では、大規模な蒸留塔が必要だったが、創業者のRob McGinnis氏は、カーボンナノチューブ膜を利用することで、安価でかつはるかに場所をとらない手段を発見したと語る。

Unicorn
1分単位でレンタルする電動スクーター企業は、毎日そのスクーターの2%が、壊れるか盗難にあっている。すなわち顧客が必要になったときに安全なスクーターが存在していないということだ。Unicornはスクーターを週または月単位でレンタルする企業だが、すでに利益を出している。車両は夜中に外に置かれることはなく、より多くの時間をレンタルされた状態で過ごすことになる。一方顧客はスクーターを買い上げずとも、使えるスクーターを手に入れることができる。Unicornの創業者はTileを始めた人物だが、現在はLimeやBirdよりも優れたユニットエコノミクスビジネスを作り上げたいと考えている。

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[原文へ]

(翻訳:sako)

UnileverがDollar Shave Clubを$1Bで買収か、たかがカミソリの刃とあなどるなかれ!

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巨大グローバル企業Unileverが、会員にカミソリの刃を定期的に郵送するだけ、というサービスDollar Shave Club買収することによって、一挙にユニコーンを作り、それを自分のものにしようとしている。

今夜(米国時間7/19)の発表(Fortune誌の記事)によると、売上1300億ドルの多国籍消費者製品企業Unileverは、このスタートアップに、全額キャッシュで10億ドルを払うことを考えている、という。

このお値段が真実なら、eコマーススタートアップの買収としてはzulilyとWayfairに次いで三番目に大きい。

eコマースは投資家が尻込みしがちな分野だが、Dollar Shave Clubに投資し、ロックフェラー系VC Venrockの取締役でもあるDavid Pakmanによると、今この分野はきわめて活況だそうだ。

Venrockおよびその他大勢の投資家たちは、この買収により、ベンチャーとしての正当なリターンを獲得する。‘その他’の中の著名な投資家としては、Andreessen Horowitz, Battery Ventures, KPCBなどがいる。彼らは、今年のQ3で買収が認められたら、Dollar Shave Club(DSC)のこれまでの急速な成長(創業2012年)を支えたことの正当な報酬として、投資額の10倍のリターンを得ることになるだろう。

Unileverは数年前にDSCとのパートナーシップを求めたが、そのときは買収の意図はなかった。話がエスカレートして交渉がまとまったのは、突然である。UnileverはDSCに、同社の国際的な市場と流通チャネルへのアクセスを与える。

DSCは2012年の創業以来、男性用身づくろいビジネスでトップ企業への道を驀進し、昨年の売上は1億5300万ドル、来年は2億を計画していた。買収額の売上に対する倍率という点では、これはeコマースの買収史上、最大である。

Unilieverにとっては、DSCの320万の会員が魅力であり、同社はいわば、成長著しい顧客層への露出を増すことになる。

DSCは髭剃り用品があまりにも有名だが、ほかに男性用の洗顔、スキンケア、整髪製品も扱っている。

Unileverにとっては、DSCが抱える顧客データも価値がある。買収後もDSCのCEO Michael Durbinの地位はそのままにして、特別の役員人事は行わない模様だ。

DurbinはいわばDSCの顔、ブランドイメージそのものであって、広告にも出演している。買収後も、彼らはロサンゼルスのDSC本社に居続ける。

今、関係各社に対して取材中なので、もうすぐこの記事をアップデートしたい。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ソフトウェアエンジニアにもっとも高い給与を払っているユニコーン企業上位20社を一覧

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【抄訳】
先週は全社員の年俸のメジアンがもっとも高いユニコーン20社をご紹介したが、今回はプログラマの報酬がもっとも多いユニコーン20社を調べよう。

CrunchBaseのUnicorn Leaderboardには153社*が載っていて、それらを求職サイトGlassdoorのデータで調べると、ソフトウェアエンジニアにもっとも高い給与を払っている20社が分かる。〔*: 最新(11/24現在)データでは156社。〕

この前の記事では、クラウドベースのビッグデータ企業Clouderaが、(全社員の年俸のメジアンが)もっとも高かった。今回、対象をソフトウェアエンジニア社員に限定すると、年俸のメジアンの最高額はDropboxの14万4573ドル、次位がJawboneの14万1224ドル、三位がClouderaの13万9217ドルだった。

*この記事はCrunchBaseのリストに載っているユニコーン企業のうち、Glassdoorの11月13日現在のデータで15名以上のソフトウェアエンジニアの給与情報のあるものを取り上げた。基本給年額は、正社員の年俸をUSドルで表した額である。

【以下抄訳(社名と金額のみ)】

  1. Dropbox基本給年額のメジアン$144,573
  2. Jawbone基本給年額のメジアン$141,224
  3. Cloudera給与のメジアン$139,217
  4. Medallia 基本給年額のメジアン$138,680
  5. ZScaler基本給年額のメジアン$133,071
  6. Airbnb基本給年額のメジアン$131,612
  7. Uber基本給年額のメジアン$130,000
  8. DocuSign基本給年額のメジアン$129,453
  9. AppDynamics基本給年額のメジアン$128,905
  10. Okta基本給年額のメジアン$127,931
  11. Spotify基本給年額のメジアン$127,695
  12. Tango基本給年額のメジアン$126,348
  13. Gilt Groupe基本給年額のメジアン$124,500
  14. Twilio基本給年額のメジアン$123,749
  15. Pinterest基本給年額のメジアン$121,920
  16. AppNexus基本給年額のメジアン$119,762
  17. Kabam基本給年額のメジアン$115,829
  18. Glassdoor基本給年額のメジアン$115,000 –
  19. Credit Karma基本給年額のメジアン$115,00
  20. ZocDoc基本給年額のメジアン$114,134

SquareとAtlassianもCrunchBaseのユニコーンリストに載っていたが、Squareはその後上場し、Atlassianも上場の計画を発表しているので除外した。どちらも、この記事のリスト(上表)で20位以内に入りうる高給企業だ。

[原文へ]。
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。