古い家電もスマート化するIoTリモコン「Nature Remo」に低価格モデルが登場

家電をインターネットに接続してスマホアプリ経由で操作できる、Natureのスマートリモコン「Nature Remo(ネイチャー リモ)」。その機能を絞って価格を抑えた「Nature Remo mini(ネイチャー リモ ミニ)」が発表された。6月11日より予約受付を開始、正式発売は6月下旬〜7月上旬を予定している。

以前もTechCrunchで紹介した発売中の上位機種Nature Remoは、温度・湿度・照度・人感センサーを備えた家庭用のIoTプロダクトで、専用のスマホアプリを使って、エアコンをはじめとした家電のリモコン操作を戸外からも行える。また、Google HomeやAmazon Echoと連携して声で家電を操作することも可能だ(以前の記事ではIFTTTを利用する方法を紹介していたが、現在は直接設定ができるようになっている)。

新製品のNature Remo miniは、温度センサーのみを搭載することでコンパクトなサイズとなった。価格もNature Remoが1万3000円のところ、Nature Remo miniは8980円となっている。また現在は数量限定の特別価格、6980円で予約を受け付けている(価格はいずれも税抜)。

Nature Remo、Nature Remo miniでは、スマホアプリとのペアリング、Wi-Fi設定、リモコンの学習(製品に向けて家電の赤外線リモコンを発信し、信号を認識させる)といった設定をすれば、アプリ経由でリモコンの操作が可能になる。旧式のエアコンやテレビであっても、リモコンで動くものであれば「スマート家電」化することができる点がミソだ。

Natureではさらに、iOS版アプリのリニューアルを6月下旬に、Android版を7月中旬に予定している。リニューアル後は、Nature RemoやNature Remo miniのセンサーを使ったルールの設定が可能になるという。これにより例えば「温度が25度を超えたらエアコンをつける」といった自動制御もできるようになる。また複数家電を一括で操作する「シーン機能」も追加される予定だ。

介護施設探しを時短&最適化、介護・福祉の専門家が作った「KURASERU」運営が5000万円を資金調達

写真左端:500 Startups Japan代表 James Riney氏、左から3人目:KURASERU代表取締役CEO 川原大樹氏、4人目:取締役COO 平山流石氏

医療ソーシャルワーカーという職業をご存じだろうか。病院や診療所などの医療機関で、患者や家族の抱える経済的・身体的・社会的な問題に対し、社会福祉の立場から解決や調整をサポートする専門職だ。

医療ソーシャルワーカーの仕事は、療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援助や患者の社会復帰の援助など、厚生労働省により6つの業務範囲が指針として示されている。そのうちの1つが「退院援助」である。

退院できることになっても「体が不自由になってすぐに元の生活に戻れない」、「自宅に帰っても自力で生活することができない」。そうした在宅療養が困難な患者や家族の相談に応じて、症状や状況に合った適切なリハビリ専門病院や介護施設、在宅療養支援事業所などを紹介するのも、医療ソーシャルワーカーの大切な業務となっている。

だが、医療・介護業界のコミュニケーションツールの主流は今でも電話やFAXがほとんど。高齢化が進み、介護施設の空床確保はますます厳しくなっているなかで、医療ソーシャルワーカーが患者に最適な施設を探すには、大変な労力がかかっていた。

KURASERU(クラセル)」は、そんな医療ソーシャルワーカーの介護施設探しを支援するマッチングサービスだ。サービスを運営するKURASERUは6月11日、500 Startups Japanを引受先とする第三者割当増資により、5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

神戸市を拠点とするKURASERUの創業は2017年10月。代表取締役CEOの川原大樹氏は介護施設で介護職に従事した後、病院で医療ソーシャルワーカーに従事した介護・福祉のスペシャリストだ。IT業界数社で取締役・執行役員を歴任してきた取締役COOの平山流石氏とは大学時代の同級生。ITで医療介護の課題を解決したいとの思いから、ともに同社を立ち上げた。

在宅復帰が難しい患者に医療ソーシャルワーカーが介護施設を紹介するには、患者に合わせた看護・医療体制が整っているか、利用料金が患者や家族にとって経済面で適切か、といった多くの条件に沿った最適な施設を、少ない空床の中から選ぶ必要がある。

川原氏は、これまでの介護施設探しの状況を「どの施設が空いているかわからない状況で、空いている施設を探すために、60件電話をかけ続けるというようなことをやっていた」と話す。「医療ソーシャルワーカー、もしくは家族や患者の知識の中でしか介護施設を選べず、選択が属人的だった。本当にこれで良かったのか、悩んでいる姿も現場で数多く見ている」(川原氏)

一方、介護施設側も空床があれば早く患者を受け入れたいところだが、医療ソーシャルワーカーや家族からの連絡を待つしかなく、受け身の体勢しか取ることができなかった。営業するといっても病院へパンフレットを置くとか、空床状況をFAXで流すといった、レガシーな手法が大勢を占めている。

KURASERUでは、医療ソーシャルワーカーがエリア、月額利用金額、医療処置の範囲など、在宅復帰が難しい患者のニーズをヒアリングして情報を打ち込むと、空いている最適な介護施設情報をリアルタイムで検索することができる。このためスムーズな退院調整が可能となる。

また、医療ソーシャルワーカーが患者の医療情報なども入力して利用するので、退院期限管理や退院患者のデータ管理もKURASERU内で行うことができ、病院からのニーズが高まっているという。

介護施設のほうは、施設情報や空床状況をKURASERUに登録。病院の退院予定者リストを個人情報が判定できないレベルで閲覧できるため、施設から病院へ入所のオファーを出すことも可能となっている。

KURASERUは神戸市が主催するスタートアップコンテスト「KOBE Global Startup Gateway」の第5期に採択され、神戸市アクセラレーションプログラムにも参加。2018年1月のローンチ以降、神戸市内の46の病院と128の介護施設が利用しており、KURASERUを通して介護施設の入所を検討した患者は50名を超えたそうだ。

ローンチ後しばらくは、介護施設から紹介費用を受け取る課金モデルを採っていたKURASERUは、5月から病院にも施設側にもすべて無料でサービスを提供するようになった。

川原氏は「いまKURASERUの中で、病院と介護施設との間にコミュニケーションが生まれ、医療情報が集まっている。ここにコアな医療情報が集まり、共有できれば、より多くの病院や施設が参加して、さらに医療情報やコミュニケーションを生んでいくだろう」として「課金モデルから要介護に関する情報のプラットフォーム化へ方向転換した」と説明する。

「チャレンジングだが、高齢化社会が大きな問題となっている中で、医療、介護の状況を大きく変えるには、これぐらいの思い切りが必要だと考えた」(川原氏)

現在は神戸の介護施設を対象にサービスを提供するが、ゆくゆくは「病院・介護施設・在宅療養支援事業所をつなぐ医療情報のプラットフォーム」として世界を目指すというKURASERU。「まずは神戸でモデルケースを作る」と川原氏は述べている。エリア限定でサービスを磨いた後、1年以内に神戸で培ったモデルを6都市へ拡大、2年以内に全国への展開を目指す。

「介護施設の空床率は7%と言われていて、都市部では特に空いていないところが多い。しかし、このサービスでそれを埋めることができると考えている」(川原氏)

今回の調達資金は開発の強化、人材確保に充てる。「課金モデルからプラットフォームモデルに転換したことで、登録のスピードは上がるだろう。これからはアクティブユーザーを増やすために、時間とコストをかけてシステムづくりを進めていきたい」と川原氏は言う。

「ITにもいろいろな分野があるが、社会問題としての高齢化や社会保障を扱うKURASERUは、ソーシャルインパクトがある事業としては、やりがいがある、壮大な分野。そういうところに興味がある人に来てほしいし、我々と組んでほしい」(川原氏)

義足テック、法律×IT、ランチの事前予約・決済——東大IPC起業支援プログラムの新たな支援先が決定

東京大学の投資事業会社としての活動を通じて、大学周辺でスタートアップ・エコシステムの構築を目指している東京大学協創プラットフォーム(東大IPC)。同社は6月11日、現役の東大生や卒業生などの大学関係者や、東大関連ベンチャーを支援する「東大IPC起業支援プログラム」の新たな支援先を決定したことを明らかにした。

2回目となる今回のプログラムで新たに支援先として選ばれたのは、3Dプリンティングと機械学習技術を活用した義足を手がけるインスタリム、自然言語処理技術に基づく法律業務の支援サービスを開発するLegalscape、ランチの事前予約・決済サービスを提供するダイニーの3社だ。

インスタリム : テクノロジーの活用で低価格・高品質な義足を開発

インスタリムは3Dプリンティングと機械学習テクノロジーを組み合わせることで、価格と納期を従来の約10分の1に抑えた新しい義足を開発するハードスタートアップだ。

代表取締役CEOの徳島泰氏は大手医療機器メーカーでAEDや医療系ソフトウェアの開発に従事した後、青年海外協力隊としてフィリピンに2年半滞在。そこで糖尿病が原因で足を切断し、義足を必要とする人が多いことを知ったという。

一般的な義足は職人が自身のノウハウを活用しながらアナログな手法で製作するため、1本あたり2〜3週間の時間がかかる上に費用も30万以上。お金に余裕がない家庭でないととても手に入らないものだった。

インスタリムの開発する仕組みでは3Dプリンタを活用することで材料費や設備費、制作納期を大幅に抑え、1本あたり3〜5万円で提供することが可能だという。また患部データの状態と、フィッティング後のデータを機械学習にかけることで、作れば作るほど高精度の義足を製作できる仕組みを構築している。

現在はフィリピンで実証実験を進めている段階。まずは発展途上国を中心に事業を展開する方針だ。

Legalscape : 自然言語処理技術を用いたリーガルテックサービスの開発

Legalscapeが取り組むのは、法律の専門家でなくても法的な問題に直面した際に解決の糸口を見つけられるようなサービスの開発だ。

代表取締役の八木田樹氏は東京大学でコンピュータサイエンスを先攻。そこで培った経験をビジネスに活用できないかと模索した結果、親族に法曹関係者がいて身近であり、IT化も進んでいなかった法律領域に的を絞ったのだという。

在学中の研究を生かした判例検索サービスが、2017年度の経済産業省IPAの未踏アドバンスト事業に採択。現在は実現可能性を調査しながら新たなプロダクトの開発も進めているそうだ。チームは八木田氏とマイクロソフト出身の2名によるエンジニア3人体制。自然言語処理技術を含めコンピュータサイエンスの技術を生かしたリーガルテックサービスを目指す。

ダイニー : ランチの事前予約・事前決済サービス

現役東大生4人が開発する「ダイニー」はランチを事前に予約、決済することで、列に並ぶ手間やレジで会計をする手間をなくすサービス。

ここ最近TechCrunchでも「PICKS」や「POTLUCK」といったテイクアウトの事前予約・決済サービスを紹介したけれど、ダイニーの場合は実際に店舗でランチを食べる際のストレスを減らしてくれるものだ。

2018年2月に本郷エリアでテスト版をリリース。現在はβ版という形で六本木エリアで9店舗、本郷エリアで13店舗の飲食店で利用できる。代表取締役の山田真央氏によると、まだ店舗が少ないため利用者の数は限られているが、一度使ったユーザーの継続率は高いという。今後は人気店を含めた飲食店の開拓が、事業を拡大していく上での鍵となりそうだ。

山田氏はメルカリやDeNAなどでインターンを経験した後、自らサービスを立ち上げた。一度は別のプロダクトを作っていたそうだが、リリース後ほとんど使われなかったため方向性を転換。あらためてチームで解決したい課題を約120個リストアップした結果、ダイニーの元となるランチタイムの問題に取り組むことを決めたという。

過去の採択チームからは2社が資金調達済み

東大IPCでは1号ファンドを通じてシード・アーリーステージの東大関連ベンチャーを支援する複数のVCへのLP出資に加え、ミドルステージ以降の東大関連ベンチャーへ直接投資もしてきた。

具体的には現時点でUTEC(東京大学エッジキャピタル)など6つのVCファンドへ出資、バイオベンチャーのタグシクス・バイオ資金調達時に紹介したスマートアパレルを展開するXenomaなど4社に投資しているという。

今回の東大IPC起業支援プログラムはこれらの投資活動を補完する取り組みのひとつという位置付け。VCなどから出資を受ける前のプレシード段階にあるスタートアップや、起業の前段階にあるグループに対して市場調査資金の提供や経営面のサポートをすることで、さらなる事業展開や資金調達の実現を目指している。

今回採択されたチーム以外にこれまでに3社が採択されていて、2017年12月に紹介したヒラソル・エナジーを含む2社はすでに資金調達を実施済みとのことだ。

Google I/O 2018 における Google 検索の発表内容をご紹介します

今年で 10 回目となる Google I/O(英語) が先日開催され、盛況のうちに終了しました。本日はそのハイライトを振り返ってみましょう。

I/O で検索チームが実施した内容

このイベントは、世界各地の様々なコミュニティの多数のユーザーと出会い、アイデアを交換し、意見を集める素晴らしい機会となりました。さまざまなウェブ セッション(英語)コードラボ(英語)、オフィスアワーに加えて、私たちは検索に関する 2 つのセッションでコミュニティと情報を共有しました。

これらのセッションでは、モバイル フレンドリー テスト ツールの JavaScript エラーレポートを発表し、ダイナミック レンダリングについて紹介し(これについては今後の投稿で詳しく取り上げる予定です)、CMS で Indexing API や Search Console API を利用してユーザーに情報を提供する仕組みについて説明しました。たとえば、Wix では、ユーザーがホームページをインデックスに送信(英語)すると、すぐに検索結果に反映されます。また、Squarespace では、見込みのあるユーザーが何を検索しているのかウェブマスターが理解するのに役立つ、Google 検索キーワード レポート(英語)を作成しました。

また、イベント開催中に、サンドボックス エリアで新しい Search Console を公開し、ユーザーに試していただきました。AMP ステータス レポートについて興味を持った方から、検索に適したコンテンツの改善方法を探している方まで、前向きなフィードバックを多数寄せていただき、嬉しく思います。

実践的なコードラボ、事例紹介など

構造化データの追加とテストを体験していただける構造化データ コードラボ(英語)を実施しました。I/O では完了回数の多かったコードラボのトップ 20 にランクインし、大変感謝しています。構造化データを使用するメリットについて詳しくは、事例紹介(英語)をご覧ください。

直接お会いするオフィスアワーでは、HTTPS、モバイル ファースト インデックス、AMP など、さまざまなトピックへの関心が高いことがわかりました。この形式のオフィスアワーは、毎月実施しているウェブマスター オフィスアワー ハングアウトに加えて、素晴らしい機会となっています。寄せられたご質問やご意見は、誰にとってもわかりやすく使いやすいようにドキュメントやツールを調整するために活用させていただきます。

ハイライトと主なポイント

ウェブ デベロッパーの皆様にウェブサイトを構築する際に注意していただきたい主なポイントもお伝えしました。

  • インデックス登録とレンダリングは同時には行われません。レンダリングは後に延期される場合があります。
  • 検索に表示したいコンテンツに、メタデータ、正しい HTTP ステータス、想定どおりの canonical タグが存在することを確認してください。
  • シングルページ アプリ ルーティング向けの JavaScript History API を採用するため、ハッシュベースのルーティング(「#」を含む URL)はサポートを終了する必要があります。
  • Googlebot がリンクを適切にたどれるように、リンクには URL を指す href 属性を指定してください。

サイトのインデックス登録、ダイナミック レンダリング、トラブルシューティングについて詳しくは、こちらのトーク セッション(英語)をご覧ください。CMS やテーマ作成者としてできることや構造化データについて詳しくは、こちらのトーク セッション(英語)をご覧ください。

今回の I/O や世界中で開催された I/O Extended(英語)で皆様とお会いし、検索に関する最新情報を共有できて嬉しく思います。今後の最新情報を入手するには、ウェブマスター フォーラムに参加してください。また、TwitterGoogle+YouTube で Google ウェブマスター チームをフォローしてください。

飲食店の経営をデジタル化し、ECのように効果測定できる環境へ——「favy」が5億円を調達

favyの役員と株主一同。写真中央が代表取締役社長の髙梨巧氏

「どうやって飲食店というビジネスとデジタルを融合していくか、『飲食店の経営のデジタル化』をテーマに事業を進めてきた。特に正確な経営判断に必要なデータ基盤を作るというのは創業時から決めていたこと。ようやく、やりたかったことの本丸の領域に入っていける段階になった」——favy代表取締役社長の髙梨巧氏は、同社の現状についてそう話す。

グルメメディアや飲食店向けツールなど、食の領域で複数の事業を展開してきたfavy。同社は6月11日、Draper Nexus Ventures、アプリコット・ベンチャーズ、みずほキャピタルを引受先とした第三者割当増資と、日本政策金融公庫の資本性ローンに基づく融資により、総額約5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

favyでは調達した資金をもとに新規事業となる飲食店向けMA(マーケティング・オートメーション)ツールの開発のほか、グルメメディア「favy」やサービスEC事業「ReDINE」 の拡充に向けて組織体制を強化する。

同社は2017年3月に環境エネルギー投資、サイバーエージェント・ベンチャーズ、みずほキャピタル、個人投資家より総額約3.3億円を、2016年4月にみずほキャピタルとサイバーエージェント・ベンチャーズから総額1億円を調達している。

飲食店がデータを収集し、有効活用できるシステムを作る

favyはちょっと変わったスタートアップかもしれない。

グルメ領域のメディアや飲食店向けのサイト作成ツール「favyページ」など複数のWebサービスを展開する一方で、「飲食店ABテスト」というリサーチサービスを作ったと思いきや、完全会員制の焼肉屋定額制のコーヒースタンドなど、新しいモデルの飲食店を立ち上げたりもしている。

もちろん各取り組みごとに狙いや役割はあるのだろうけど、創業時から髙梨氏がやりたかったことは変わらないという。それがこれから始める飲食店のMAツールも含め、冒頭で紹介した「飲食店の経営のデジタル化」の実現であり、そのために不可欠な基盤作りだ。

「レジの情報や予約の情報も有用だが、多くの飲食店にとってそれだけでは基盤としては物足りないと考えていた。売り上げが増えたとしても『それがどんな顧客なのか、何の影響で来店したのか』と言ったことがわからなければ次に繋がらない。何に投資をしたらどれだけのリターンがあったのか、きちんと効果測定できるようなデータとシステムが必要だ」(髙梨氏)

たとえばfavyが運営する焼肉屋「29ON(ニクオン)」では完全会員制とすることで、1人あたりの来店率やLTV(顧客生涯価値 : 1人の顧客が生涯に渡ってどれくらいの利益をもたらすかを算出した数値)がわかる。これによって「飲食店でも健康食品や単品通販と同じようなマーケティング手法が使える」(高梨氏)という。

「自社店舗で試すうちに必要なデータをトラッキングさえできれば、それを活用することで売り上げを伸ばしていけるという手応えをつかめた。さらに言えば、どのようなデータをトラッキングするべきか、どういった形でデータが取れれば使いやすいかもわかってきている。これらの仕組みを他の飲食店でも使えるようにシステム化したのが、飲食店向けのMAツールだ」(髙梨氏)

高梨氏はもともとネット広告代理店のアイレップ出身。同社ではSEO、SEM分野の立ち上げを担っていた。「Google アナリティクスの登場でWebサイトの効果測定や改善が簡単になった」ように、飲食店にも同様の仕組みが必要だという。

月間閲覧者6000万人超えのメディアfavyと連動

現在開発を進めるMAツール(飲食店向けには顧客管理ツールと紹介しているそう)は、favyの直営店で約1年前からテストを重ねてきたもの。2018年夏頃のリリースを目処に、5月にはテスト版をリリースしている。

開発中のMAツール。画像はテスト版のTOP画面

このツールでは顧客の予約経路やグルメメディアfavy内における行動データなどから、マーケティングに必要な情報を自動で収集、分析。店舗への来店誘導、集客施策に活かせるほか、予約管理や顧客管理に関する業務を効率化する機能、無断キャンセルを防ぐための前日確認を自動化する機能なども備える。

興味深いのは月間閲覧者が6000万人を超えるfavyで蓄積されたデータと連携している点だろうか。

高梨氏の話では、このデータを活用することで「来店したことのないユーザーも含めて、お店の見込み客が見える化できる」という。たとえばラーメン屋の記事に興味を持っているユーザーのデータとエリアのデータを組み合わせ、「新宿のラーメン屋だと、これくらいの見込み客がいる」と把握できるようなイメージだ。

テスト版の顧客管理画面

もちろん飲食店向けのMAツールと言っているように、来店頻度が下がっているユーザーへ広告やはがきを自動で送ったりなど、見込み客に対する集客施策を自動化することもできる。

飲食店向けのSaaSとしてさらなる進化を

今回の資金調達を踏まえ、favyでは組織体制を強化しMAツールや既存事業の開発、機能拡充を進める方針。MAツールに関しては他サービスとの連携にも取り組んでいくという。

また高梨氏によると、今後目指しているのは飲食店向けSaaSとしての展開。詳しくはまだ言えないとのことだが「集客の機能をより掘り下げていく深さの部分と、それ以外の領域へラインナップを広げていく幅の部分」の2軸でサービスを拡張していく計画のようだ。

「飲食店の経営のデジタル化を通じてやりたいのは、飲食店が簡単にはつぶれない世界を作ること。『デジタル化』というのは、広告手段が増えるとか、効果測定ができるというだけでなく、考え方がアップデートされるという意味もある。自社でも直営店を経営していて飲食店の仕組みとデジタルなマインドを融合することの大変さを痛感しているが、(favyの事業を通じて)飲食店の経営をサポートしていきたい」(高梨氏)

Uber、自転車シェアサービスのMotivateを買収か

Uberは、自転車シェアサービス会社、Motivateの買収を目論んでいると報じられている。サンフランシスコでFord GoBikeを、東海岸ではCiti Bikeを運営する企業だ。直前にはライバルのLyft がMotivateを2.5億ドルで買収間近と報道されていた。

Uberは自転車シェアのスタートアップ、JUMPを今年2.5億ドルで買収した。ドック不要の電動自転車を使うサービスだ。 Motivateはサンフランシスコで電動自転車サービスを展開している。JUMPの18か月間のパイロットプログラムが6月に終了すれば、Motivate、Limeその他のサービスも同市に許可申請すると思われる。

Uberは本件に関するコメントを拒否している

UberとLyftはつい先日、電動スクーターの運行許可申請をサンフランシスコ市に提出した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

マイクロソフト、Xboxのゲーム会社4社を一挙に買収

Microsoft のゲームに関する発表が続いている。Xbox E3プレスカンファレンスで発表した一連のゲーム会社買収は、同社オリジナルゲームコンテンツの強化を目的としている。

日曜日(米国時間6/10)、Xbox責任者のPhil Spencerは、Ninja Theory、Playground Games、Undead Labs、およびCompulsion Gamesの各社を買収したことを発表した。4社の加入は、Microsoftの自社ゲーム開発を大きく推進するものだ。同社は特にゲームダウンロードのサブスクリプションサービスであるXbox Game Passの強化をはかっている。

2010年創業のPlayground Gamesは、レーシングゲームのForzaなどを開発する長年のXboxパートナーだ。今回の発表とともに、最新タイトルのForza Horizon 4を発表した。

Ninja TheoryはHellbladeを、Undead LabsはState of Decayシリーズをそれぞれ開発しており、Compulsion Gamesは現在開発中の新タイトル、We Happy Fewを年内に発売する予定だ。

新たに加わった各社はMicrosfot Studiosブランドあるいは以前Crystal Dynamicsの前代表、Darrell Gallagher率いる新ベンチャー、The Initiativeの傘下に入る。Microsoft Studiosには、Haloを開発した343 Industriesや、Microsoftが2014年に25億ドルで買収したMinecraftの開発グループなどがすでに所属している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

10年務めたサイバーエージェントを離れ、7億円規模のファンド組成——アプリコット・ベンチャーズの挑戦

アプリコット・ベンチャーズ代表取締役の白川智樹氏

「社会人で独立して起業する人、特に大手企業や事業会社からスピンアウトしてスタートアップする起業家を積極的に応援したい。自分自身も同じような境遇だったからこそ、気持ちが理解しやすい部分もある」——関連子会社も含め約10年間務めたサイバーエージェントを退職し、2018年1月に独立系VC「アプリコット・ベンチャーズ」を設立した白川智樹氏は、今後の目標についてそう話す。

同社は6月11日、約7億円規模の1号ファンド「Apricot Venture Fund 1号投資事業有限責任組合」を組成したことを明らかにした。

ファンドの主な出資者はインキュベイトファンドLP投資事業有限責任組合マイナビ東急不動産Mistletoe Venture Partners、個人投資家など。今後も2018年秋を目途に引き続き出資者の募集を行い、総額で10億円のファンドを目指すという。

よりリスクをとって起業家をサポートしたい

白川氏は2008年に新卒でサイバーエージェントに入社。広告部門やゲーム関連子会社で約5年間働いたのち、2013年からサイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)に参画し、創業期のスタートアップ20社へ投資をしてきた。

「もともとは自分で起業することを考えていたが、当時CAVの代表だった田島さん(現在はジェネシア・ベンチャーズの代表を務める田島聡一氏)に声をかけられたのをきっかけにVCの道へ進んだ。もちろん主役は起業家だけど、その側にいながらたくさんの課題解決を応援できるVCの仕事にどんどんハマっていった」(白川氏)

CAV時代は当初こそ自身のバックグラウンドを生かした広告やゲーム関連のスタートアップへ投資をしていたそうだが、その後は領域を拡大。先日新たに9億円を調達したシナモンのほか、グルメ領域のfavyやインフルエンサーマーケティングのVAZ、語学学習サービスのLang-8、マッチングアプリのDine(Mrk&Co)などを担当した。

引き続きCAVに所属し、さらに多くの起業家をサポートするという選択肢もあっただろう。ただ業界が少しずつ変化していく中で、白川氏も徐々に独立を考えるようになっていったという。

「ここ数年で独立系VCやエンジェル投資家も増えてくる中で、『どうやって素敵な起業家から選んでもらえるようなVCになるか』をずっと考えていた。今後もこの業界でやっていきたいと思った時に、自分自身もさらにリスクをとるべきではとないかと決断した」(白川氏)

投資家側の変化だけでなく、起業家側の変化もある。TechCrunchでも度々紹介しているように、最近は実際にレガシーな業界で職務経験を積んだ起業家が、その業界の課題をITで解決するべくスタートアップするような事例が増えた。

「わかりやすいコンシューマー向けのサービスがだいぶ飽和してきた一方で、業界の知見がある方が独立し、その業界向けのサービスを立ち上げるケースが増えている。大企業で活躍した人材が起業する時代になってきているが、社会人は独立するまでに時間がかかる場合も多い。(彼ら彼女らを)会社設立前からサポートする仕組みを作りたい」(白川氏)

スピンアウトした起業家を後押しできる環境を

運営するコワーキングスペース「GUILD SHIBUYA」

アプリコット・ベンチャーズでは日本を中心とするシードステージのスタートアップに対して、1社あたり平均で2000〜3000万円を出資する予定。上述したとおり、特に大手企業や事業会社から独立した起業家を積極的にサポートしていく。

白川氏によるとすでに3社へ投資済み。CAV時代から担当していたfavyや、ウェブペイ・ホールディングスをLINEに売却した経験を持つ、連続起業家の久保渓氏が新たに立ち上げた600が含まれる(もう1社は非公開)。

アプリコット・ベンチャーズの方針としては「これまでの活動を通してできたネットワークも活かしながら、同年代の起業家同士や先輩経営者、各分野のプロフェッショナルのコミュニティを通じて起業家を応援していきたい」と話す白川氏。投資先が入居できるコワーキングスペース「GUILD SHIBUYA」を渋谷で運営し、気軽に相談できる機会を設けていくという。

ちなみに割とアンズが好きな僕としては、なぜアプリコット・ベンチャーズなのかどうしても気になったので尋ねてみたところ「もともとはオレンジ色のロゴにしたいと思ったこと」がきっかけとのこと。

世界のVCのロゴを調べてみると比較的クールな色やかっこいい雰囲気のロゴが多かったが、白川氏のバックグランド的にもサービスっぽい雰囲気にしたかったのと、そこまでガツガツいくタイプではないので、少しゆるさもあるふんわりとしたオレンジがよかったのだという。

白川氏によると「アンズはアジアだと『サポートする、お手伝いをする』といったニュアンスのある果物」らしく、起業家を常にサポートし続けるVCでありたい、ということでアプリコットになったそうだ。

Airbnb、緊急時に備えた宿泊提供ボランティア登録を受付へ

宿泊先を探している人に個人が自分の家や部屋を貸し出すことができる旅行スタートアップAirbnbには、オープンハウスプログラムというものがあり、これまで1万7000日分もの宿泊を提供してきた。これはAirbnbホストのボランティアプログラムで、ハリケーンや洪水、その他の自然災害などで避難を余儀なくされた人や、災害に遭った家族をサポートするために他の都市から来た人に、家や部屋を無料で提供するというものだ。

そして今、Airbnbはこのプログラムをより多くの人が参加できるようなものにするため、新バージョンを試行しようとしている。その新バージョンでは、Airbnbのホスト、そしてホストではなくても困っている人に宿を提供したいと思う人なら誰でも“スタンバイ”リストに登録できるというものだ。

今夏に試験開始を見込む今回の取り組みは、まずカリフォルニア州サンノゼで実施する。その後、年内にいくつかの都市に広げ、最終的にはグローバル展開する予定だ。

オープンホームの拡大は、このプログラムを災害などの緊急時にいかに素早く役立てられるようにするか、というところからきている。Airbnbはこれまで90件超の災害時に9000軒の家(部屋)での宿泊を提供した。その中で、時間的ギャップが課題として浮かび上がった。というのも、家や部屋を貸し出すボランティアを募るのに数日かかるからだ。必要な時にすぐにサービスを提供できるよう、前もって準備できることがある、ということで今回の取り組みに至っている。

サンノゼがプログラムの試験を行う初の都市に選ばれたのには2つ理由がある。2017年の大規模な洪水では、同市は1万4000世帯を避難させなけれなならず、そうした人たちの宿泊場所を用意するのにAirbnbに頼ったという経緯がある。それだけに、サンノゼはこのプログラムの意義を理解しているのだ。またサンノゼはシリコンバレーの中心地に位置するだけあって、テック企業主導のサービスを積極的に受け入れる素地がある。

「想像がつくかと思うが、シリコンバレーにおける最大の都市として、テック企業とのコラボレーションはいいことだと思っている」とサンノゼ市長のSam Liccardoはインタビューでこう答えている。「テクノロジーは私たちの経済を一変させた。と同時に、コラボレーション的なアプローチをとることも可能なはずだ」と話した。

これまでにもサンノゼとAirbnbは協力したことがある。ホテルに宿泊する人が払う宿泊税を、Airbnbのホストが自分の部屋に泊まる客から集め、市がホストに課税するというスキームをつくった。これについてLiccardoは、このスキームがAirbnbが他都市で同様の税金に対応する際のテンプレートとなった、と指摘する。

Airbnbがサンノゼでオープンホームを展開したのは洪水がきっかけだったが、Liccardoによるとサンノゼが洪水よりも懸念している自然災害は地震であり、それに十分に備えたいという考えだ。

Airbnbの災害対応・救援の責任者Kellie Bentzは、Airbnbはこれまで救援団体と宿のコーディネートで協力してきた、と語る。オープンホームの次の段階では、このプログラムを拡充するために市当局と緊密に連携を取ることになる。

詳細は今後詰められることになるが、このプログラムはAirbnbのホスト登録をしていない人にもアピールするものとなるため、Airbnbとサンノゼ市が共同で社会に向けて発信するとことになりそうだ。これには、公共サービスでの告知や、災害時に宿を提供することについてその詳細を直接聞くことができるセッションも含まれる。災害時の宿の提供では、ホストはおそらく収入を得ることはできないが、Airbnbがある程度のコストを負担することはあり得る。宿を提供してもいいと考える人のネットワークをあらかじめ築くことで、Airbnbは各ホストがどんな宿を提供できるのか、あるいはどんな制限があるのかといった、より包括的なデータを集めることができる。

このプログラムの趣旨について、Bentzはサンノゼ市に取り入るものでもなければ、Airbnbのホストを増やすこともでもないと断言する。しかし想像するに、この2つは(意図していないとしても)おおいに起こりうる副作用だろう。サンノゼ市はこれまでAirbnbとずっとうまくやってきたというわけではない。Airbnbはホテル向けの規則に違反し、いくつかのケースではまだAirbnbの宿に修正を加えている最中だ。今回の取り組みにより、Airbnbは、崩壊的な侵略者ではなく頼れる存在になる、という社会的信用を得られる。一方、ホストについてだが、これまでAirbnbの宿を何回も利用したことはあっても自分の住まいを誰かに貸すことに消極的という人に対し、このプログラムは少なくともコンセプトをアピールするチャンスになる(厳密に言うと、Airbnbはそうした理由でこのプログラムを拡大するわけではない、としている。このプログラムに誠実さがなければ、私は今ここにいないだろう、とBentzは語った)。

緊急時の宿泊提供者になるというのは、Airbnb以外のところでもできることだが、Airbnbはこれまでのところ、バケーションレンタルのHomeAwayのような家を貸し出す他のプラットフォームと特に協力していない。Bentzは「他社との協力について我々には話し合う用意がある。しかし今のところ、どこかが興味をもっているというような話は聞いていない」と述べている。

 イメージクレジット:Radius Images

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(翻訳:Mizoguchi)

Microsoft、E3開幕を控えてHalo Infiniteの予告編発表――マスターチーフが帰ってくる

MicrosoftはE3の開幕を控えてプレスイベントを開催した。同社は今年のE3カンファレンスでHaloの新しいタイトルを登場させるのではないかという噂は流れていた。 実際、このSF一人称シューティングゲームなしにはXboxイベントは気の抜けたものになっていただろう。

今年、Microsoftはもったいをつけずにいきなり勝負に出てきた。Xboxの責任者、Phil Spencerがステージに登壇するのを待たずにHaloの新タイトルの予告編が流れた。

このトレーラーは具体的なゲーム内容についてはほとんど触れていない。野生動物が疾走し、数人の兵士がさまようところが映った後、伝説のヘルメットによってマスターチーフの帰還が示唆される。

#HaloInfiniteでマスターチーフが帰ってくる。新しいSlipspace Engineのデモで伝説のヒーローが活躍するシリーズの新作予告編をいち早く見ることができる。

Schillerはその後、ステージでXboxゲームを代表するキャラクターが「人類を救うための最大の試練」のために帰還することを確認した。 Halo Infiniteは新しい独自のゲームエンジン、Slipspace Engine上で作動する。 このタイトルの位置づけは「伝説的シリーズの次の1章」ということなので2015年のHalo 5: Guardians(そこそこの成功に留まった)の世界を引き継いだ続編になるようだ。

E3は6月12日(日本時間6月13日)に公式に開幕する。さらに新しい情報が得られ次第アップデートする。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

マイクロソフトが海中にデータセンターを設置する理由とは

今週初め、マイクロソフトはプロジェクトNatickの第二段階を実行した。これは、海中に大規模なデータセンターを設置し、そのメリットや問題を検証するという実験だ。チームは、サーバーがぎっしり詰まった輸送コンテナほどのサイズのタンクをオークニー諸島沖に沈めた。今後数年間そのままにして、果たして将来のデータセンターとして有効な手段となるかどうかを見極める。

もし水をラップトップPCにこぼしたことがあるのならわかるかと思うが、当然ながらコンピューターと水というのは相容れない。だからサーバーの列を水中に置くというのは、奇妙なアイデアのように思える。しかし、マイクロソフトリサーチのBen Cutlerが、サーバーを設置するのに海底がうってつけの場所である理由を説明してくれた。

Cutlerいわく、ほとんどの人が海から200キロ以内の場所に住んでいる。そしてマイクロソフトはこれまで、多くの人が住んでいるところの近くにデータセンターを設置するというクラウド戦略をとってきた。再生可能エネルギーを作り出す大規模な風力発電施設が近くにあり、海中に設置することで冷却面で明らかにメリットがある(冷却コストはデータセンターを維持する上で大きなものだ)今回の取り組みは、理にかなっている。

私がCutlerに今回のプロジェクトの発端について尋ねると、彼は「マイクロソフトは、クラウドにかなりのエネルギーと時間、そしてもちろんお金も費やしてきた」と語り、「我々は常に刷新的な手法を探している。今回のアイデアはもともと、米国海軍の潜水艦で働いた経験があり、そしてテクノロジーについての知識も持ち合わせていた社員から生まれた。このアイデアをデータセンターに活用できるかもしれないということになったわけだ」と説明した。

そこでチームは2013年に第一段階の実験を実行した。それは、いくつかのサーバーを入れた小さな圧力容器を太平洋に沈めるというものだった。この実験では極めて良い結果が得られ、また周囲の海中生物にとって容器は好ましいものだったようだ。まず、この容器が周囲の水の温度を上げていないことが確認された。容器から数フィート離れたところの水の温度は数千分の1度(摂氏)高かっただけだった。それから騒音も、取るに足りないものだった。「容器から数メートルも離れると、海中でよく聞こえるテッポウエビの音など、周囲の音に囲まれることがわかった」とCutlerは語り、海というのは非常に影響を受けやすい環境であるために、こうした影響を測定するのがチームの仕事だったと強調した。「この容器が自然環境に受け入れられ、そして周辺に生息するカニやタコといった生物の住処となったこともわかった」。

今回の第二段階の実験を、チームはスコットランドで実施することにした。というのもスコットランドは欧州海洋エネルギーセンターの本拠地であり、陸と海で発電された再生可能エネルギーをサーバーを入れた容器に供給する設備がすでにあったからだ。

一度容器を水中に入れると、その後のメンテナンスはほぼ不可能だ。つまり、失敗するかもしれない、取り替えがきかないということを覚悟しなければならない。計画では、数年後に容器を回収し、新しいマシーンに取り替えて再び海中に設置する。

一方で、この実験の一環として、チームはどうやればサーバーを可能なかぎり長持ちさせられるかも検討した。というのも、容器の中のハードドライブが故障しても取り替えに行くことはできないからだ。その結果、腐食などを防ぐためにチームは容器の中に窒素を充填することにした。この影響を分析するため、マイクロソフトは同様の容器を陸上にも設置し、どれくらいシステムがうまくいくかを比べることにしている。

今回の実験では最先端のテクノロジーは使われていない、とCutlerは強調する。特殊なサーバーを使っているわけではなく、海中ケーブルや容器もごく普通のものだ。

今後について、Cutlerはこれらの容器を工場で組み立て式につくり、必要なところに送るという青写真を描いている。だからこそ、この容器は輸送コンテナサイズなのだ。チームは実際、ロジスティックチェーンをテストするために、容器をフランスで製造し、トラックに乗せて英国まで海上輸送した。

もちろん、これらがうまくいくかどうかはわからない。目下、チームはNatickの経済面を分析中で、これを本格採用するかどうかの判断はマイクロソフトAzureチームに委ねられる。Cutlerは「我々のゴールは、この手法が経済的に優れ、なおかつ望ましいものである、という状態にもっていくこと。それが達成されて初めて、製品チームがこの手法を使うべきか、どこで活用するかを決めることになる」と語った。

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(翻訳:Mizoguchi)

製薬企業のサプライチェーンからにせ薬を撃退するTraceLinkがさらに$60Mを調達

このお天気の良い金曜日(米国時間6/8)の午後、SECが処理したばかりのTraceLinkは、薬を調べて偽薬(にせぐすり)をの処方を根絶やしにしようと努力しているSaaSだ。同社はこのほど、シリーズDで6000万ドルを調達した。

SECのファイルによると、参加した投資家は18社で、そこにはたぶんGoldman Sachsもいる…同社の成長資金部門は約18か月前にTraceLinkのシリーズC 5150万ドルをリードしている。この9歳になるスタートアップの初期の投資家には、ほかにFirstMark Capital, Volition Capital, F-Prime Capitalらがいた。

本誌TechCrunchのライターJordan Crookがそのときに書いているが、TraceLinkは製薬企業のサプライチェーンを、各国のコンプライアンス要件に応じて調べる。これはとくにアメリカでは、2013年のDrug Supply Chain Security Act(薬剤サプライチェーン安全法)によって重要性を増している。この消費者保護法は、消費者を偽薬や盗品薬、汚損薬などから守ることがそのねらいだ。

この法律が施行されたときには、業界は今後10年以内に最小単位レベルのトレーサビリティを確立することが、義務化された。その期限が5年後に迫っている。

さらにTraceLinkにとって追い風になっているのは、麻薬だ。その拡大は90年代の後半以降とくに激しく、薬剤のサプライチェーンにおいてそれに対する脆弱性を摘出すべし、という圧力がますます強くなっている。

同社が今、上場に備えて四半期ごとの売上や顧客数の伸びを報告するようになったのも、不思議ではない。まさに、2週間前の同社の“成長ハイライト”によれば、同社の2018Q1の売上は前年同期比で69%も伸びたのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Hyperloopのチューブがゾエトロープ効果で乗客にとって透明になる

19世紀に人気があった視覚的イリュージョンがHyperloopにやってくると、それはまるで透明なチューブの中の旅になってしまうかもしれない。一定間隔で並べた狭い窓は、その一つ々々の視野は制限されるが、数十個ものそんな窓が毎秒目の前を通過すると、ゾエトロープのような効果が作り出され、乗客はチューブの壁が透明になって外の景色が見えるような錯覚をおぼえる。

それはVirgin Hyperloop OneとデザインハウスBjarke Ingels Group(BIG)の公式のコンセプトで、2016年にデモしたこともある。今度彼らが共有したビデオでは、その動的構造と、乗客が実際に目にする光景を見せている。実現可能性については、触れていないけど。

元々のゾエトロープは、〔上記Wikipediaの図にあるように〕側面にスリットのあるシリンダーと、その中壁に描かれた一連のコマ撮り画像〔アニメ数コマぶん〕から成る。シリンダーを回転させるとスリットの向こう側の画像が人間の目には連続した画像(動画)のように錯視され、素朴なアニメーションになる。

その例として下図は、PixarがディズニーのCalifornia Adventureのために作ったゾエトロープだ:

Hyperloopのデザインコンセプトでは、それはリニアーな(線形の)ゾエトロープだ。つまり画像が回転するシリンダーの内壁上のループではなく、横に長い帯だ。地下鉄の窓から見えるアニメ広告に、そんなのがあったよね。

Hyperloopの場合は、客車がその中を移動していくチューブの壁に10メートル間隔で船の舷窓のようなスリット状の窓があり、そこから外界が見える。低速では数秒ごとにその窓が見えて、そのストロボ効果で不愉快かもしれない。でも、目標の時速1200キロメートルに達すると、なめらかな像になる。

彼らのシミュレーションでは、こうだ:

それは、本当に必要だろうか? 外界の擬似画像を見せることが目的なら、液晶ディスプレイで“舷窓”を作ればよいし、飛行機の席のように小型テレビでもよい。でもそれでは、ゾエトほどクールでないだろう。でも今あるテスト用路線でも、点検や避難用にそんな窓がチューブの壁にあるから、意外と楽に実装できるかもしれない。

しかし現状は、Hyperloopそのものがまだプロトタイプだし、今行われている開発努力が実を結ばない可能性もある。でも、人びとが、自分は今狭いチューブの中をめちゃくちゃ不条理なスピードで通過中なんだ、と思わずにすむためには、有効な気晴らしかもしれない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Airbnbが日本の旅館業法の改正で予約をキャンセルされたユーザーのため$10Mのファンドを設立

Airbnbは、シリコンバレーで生まれた共有経済ブームの口火を切った企業のひとつで、その旅行者向けサービスプラットホームは現在の評価額が300億ドルに達する。それは、人びとがプライベートな家を宿泊などのために予約できるサービスだが、国によっては厳しい規制にぶつかることもある。

Airbnbは日本で、法律の改正でホストに免許を義務付けることになったため、大量の予約をキャンセルしなければならなくなった。期日までに免許を取得できなかったホストも、かなりいたからだ。

その影響を受けた旅客やホストの数は不明だし、ホストが免許を取得するとその数も変わっていくが、Airbnbは法の改正により追ん出された旅客への返金に備えて1000万ドルのファンドを立ち上げた。一部の推計によると、予約の80%が法改正の影響を受けた、という。

Airbnbの説明では、予約のキャンセルとそこから生じた結果は、日本の旅館業法の昨年の改定によるものだ。それによると、プライベートな家を1年に180日以上旅客の宿泊用に供する者は登録を要し、サービスの表示等にあたっては登録番号を併記しなければならない。旅行に関する主管局である観光庁は、その期日を6月15日までとし、6月1日までに免許を得なかった者は6月15日までの予約をキャンセルしなければならない、とした。Airbnbは、旅客が対応を取るために要する時間も考慮して、日限に幅を持たせた:

“日本におけるゲストの到着予定が6月15日から19日までで、ホストが免許を有しない場合、その予約はキャンセルされる。今後、政府が方針を変えないかぎり、日本で掲載されているいかなる予約も、ホストがゲスト到着の10日前までに免許を取得しなかった場合、われわれはそれを自動的にキャンセルし、全額を返金する”。

Airbnbによると、その1000万ドルのファンドは、キャンセルによって旅先の日本で生じた付加的支出(予期せざる支出)もカバーする。免許をめぐる状況により6月15日以降の予約をキャンセルされた者は、“予約額の少なくとも100%の”返金をクーポンで受け取り、将来のAirbnbの旅でそれを使用できる。またそのほかに彼らは、Airbnbで利用できる100ドルのクーポンを受け取る。

Airbnbの代替ホストは見つからなかったが予定の旅を続けたい者には、日本の旅行代理店JTBが紹介される。

このニュースの影響を受けた者に、Airbnbは次に何をすべきかを一歩々々記したインストラクションを提供する。それらはここで見つかる。

Airbnbが規制に躓いて転んだのは、これが初めてではない。アムステルダムでは規制当局が、民家を宿泊に提供してもよい日数をこれまでの年60泊から、2019年以降その半分の30泊にしようとしている。ベルリンバルセロナも、独自の規制でこのプラットホームの成長を制限しようとしている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

UberとLyft、サンフランシスコでの電動キックスクーターシェアリング事業を申請

UberとLyftが正式に電動キックスクーターのシェアリング事業認可取得に名乗りをあげた。両社を含む計11社がサンフランシスコでの電動キックスクーターシェアリングサービスに申し込んだ。しかし、これは1年の試験プログラムで、市当局は5社にのみ事業を認可する。

Uberはコメントを拒否したが、同社が4月に2億ドルで買収した自転車シェアリングスタートアップのJUMPを通して申し込んだ。もし、電動キックスクーターシェアリングの認可を得られれば、そのサービスはUberのアプリに統合され、UberのCEO、Dara Khosrowshahiが描く、充実したマルチ交通手段プラットフォームというビジョンに近づく。

またLyftはTechCrunchに対して申請したことは認めたものの、詳細についてはノーコメントとした。SFMTA(サンフランシスコ市営鉄道)が明らかにした申請企業の一覧は以下の通りだ。

1 Bird

2 CycleHop

3 JUMP via Uber

4 Lime

5 Lyft

6 ofo

7 Razor(そう、あのRazorだ)

8 Ridecell

9 Scoot

10 Skip

11 Spin

12 USSCooter

今回、サンフランシスコ市が認可制を導入したのは、BirdとLimeSpinが3月に許可を得ずに同市で電動キックスクーター事業を展開したことがきっかけだ。6月4日に施行された新条例では、企業はサンフランシスコ市では認可なしに電動キックスクーター事業を展開することはできないと定めている。SFMTAは今月末までに認可についての結果を各企業に知らせるとしている。

サンフランシスコ市の電動キックスクーター条例についての詳しい情報は、私が以前書いた記事をチェックしてほしい。

Image Credits: Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

乾燥した砂漠の空気から水を集めるボックス…エネルギーや消耗品不要、キーワードは‘MOF’

私たちにとっては、きれいな飲用水は水道の蛇口から出てくる。でも世界にはそうでない人たちが何十億もいて、研究者たちがその対策を探している。たとえばカリフォルニア大学バークリー校ではあるチームが、電力不要で砂漠の乾燥した空気からでも水を採取できる器具を開発している。サボテンにそれができるのなら、人間にだってできるだろう。

空気から水を集める方法は、従来からいろいろあるが、電気や交換部品(〜消耗品)を必要とするものが多い。でもOmar Yaghi教授が開発した方法は、どちらも要らない。

その秘密は巧妙なソーラー集光集熱器でも、摩擦係数の低いファンによる風力利用でもない。素材がすべてだ。化学者のYaghiは、金属有機構造体(metal-organic framework, MOF)と呼ばれるものを作った。その多孔質の物質は、水を熱心に集めて、それらを放出する。

彼のMOFは小さな結晶の粉末で、気温が下がると水の分子を捕らまえる。そして気温が上がると、その水を空中に放出する。

Yaghiは昨年小規模なデモを行ったが、今回彼とチームは実用量の水が得られる現場テストの結果を発表した

彼らは一辺が約2フィートの箱の中にMOFを敷き詰め、外気にさらした。毎晩、気温が下がると湿度が上がり、水がMOFの中へ捕捉された。朝になると太陽の熱が水を粉末から追い出し、それが箱の側面にたまり、一種のカバーのようなものによって冷水が保存された。その結果、1ポンドのMOFで一晩に3オンス(85グラム)の水が得られた。

それはまだとても少ない量だが、改良は進んでいる。現在のMOFはジルコニウムを使っているが、今テスト中のアルミニウムのMOFはその1/100の費用で倍の水が得られる。

新しい粉末といくつかの箱を使えば、電力も消耗材も使わずに一人の人間の飲用水をまかなえる。水を集めて保存する仕組みが完成したら、上水道システムに依存しないポータブルな給水装置ができるだろう。

バークリー校のニュースリリースでYaghiは説明している: “これまで、このようなものはなかった。それは常温で晴天の環境でも使用でき、エネルギー不要で砂漠で水を集められる。アルミニウムのMOFは安いので、十分に実用性がある”。

彼によると、すでに商用製品を開発中だ。今後さらにテストを行い、機構を改良し、新しいMOFを試して、暑い夏に間に合う製品が完成するだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

アリババ傘下の金融Ant、海外開拓へ140億ドル資金調達

モバイル決済サービスAlipayを展開するアリババグループの金融サービス会社Ant Financialは、投資ラウンドシリーズCを締め切り、累計140億ドルもの資金を調達したことを明らかにした。

この巨額調達に関しては、いくつかのメディアがAntを取り上げるなど、この1、2カ月噂が飛び交っていた。それはIPOと関連づけられていて、少なくとも90億ドルの資金を調達し、評価額は1000億ドル超となるというものだった。しかし、実際の数字はそれを上回るものだった。

今回の資金は、地元の投資家による米国ドルと中国人民元での分割発行だ。投資家には、シンガポールの政府系ソブリンファンドであるGICとTemasek、マレーシア政府系ソブリンファンドのKhazanah Nasional Berhad、米国のプライベートエクイティWarburg Pincus、カナダ年金基金投資委員会、Silver Lake and General Atlanticが含まれる。

Antは調達した資金でグローバル展開し(すでに進出している中国外マーケットでのプレゼンスを高める)、テクノロジーの開発や雇用にも注入する。

Ant FinancialのCEOで経営執行役会長のEric Jingは「私たちのビジョンとミッションを共有する投資家を迎えられることを嬉しく思う。今後、我々は共に包括的な金融サービスをグローバルで展開し、平等な機会を世界にもたらす。我々は過去14年間、人々の暮らしや小規模事業者に貢献してきた。そのことを誇りに思うし、その事実は我々を勇気付けるものだ」とコメントした。

Antは、アリババが2014年に米国で大規模な新規株式公開をする直前にスピンオフした企業で、アリババはAntに出資していない。しかしアリババは最近、Antの株式の33%を取得している。

Antは長い間、株式公開すると予想されてきた。2016年に45億ドルを調達した時には、株式公開を検討していると報道されたが、その代わり資本金を600億ドルにすることを選択した。

今回もそれに似ているが、額が大きい。Bloombergの報道によると、今回のシリーズCラウンドで企業価値を1000億ドル増やした(Antは企業価値についてコメントしていない)。このような飛躍を成し遂げるのに、Antは過去2年で一体どんなことをしたのだろう。

Antは、5億人の顧客に、デジタルバンキングや投資サービスなどを行うAlipayを提供していており、中国における主要なフィンテック企業の1社だ。しかし近年は海外で同様のビジネスの展開を始めている。特に、インド、タイ、韓国、インドネシア、香港、マレーシア、フィリピン、パキスタン、バングラデシュといったアジアの国々で投資を行ったり、ジョイントベンチャーを立ち上げたり、そして新事業を展開したりしている。

しかしながら、米国で企てたMoneyGramの買収は、米国政府がこの12億ドルの案件を阻止し、失敗に終わっている。

経営面に目を向けると、Antは昨年14億ドルの利益を計上したとされる。株式を公開すればこの数字はさらに大きなものとなることは明らかだ。

米国での買収は成功しなかったにもかかわらず、今日のAntの発表によると同社が抱える顧客はグローバルで8億7000万人にものぼるという。しかし、中国以外でのビジネスはまだ初期段階にあり、現時点では、私はこの数字については半信半疑だ。しかしながら、今後、中国と同じくらいの規模のビジネスをアジア各国で展開するというのは大いにあり得る。世界のほとんどのIPOを上回るほどの大規模な資金調達を1回のラウンドで行ったことで、海外展開のプランは強固なものとなる。

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(翻訳:Mizoguchi)

AppleはWWDCで拡張現実の大きなアップデートを発表した、Googleとの技術競争がおもしろい

Appleは今年のWWDCの冒頭で、同社の拡張現実プラットホームのアップデートを強調し、iOS 12におけるARKit 2を紹介した。それには重要な技術的アップグレードがいくつか含まれている。

ARKitに新たに加わるもののすべてをデモすることはできなかったが、取り上げた重要な新機軸は、顔認識の改良やリアルなレンダリング、3Dオブジェクトの検出、持続的ユーザー体験や共有ユーザー体験などだ(上図)。

マルチプレーヤーはAppleのARの大きなアップデートだ。とくにゲームにとって重要だが、そのほかのカテゴリーにも今後利用していくだろう。

・関連記事: Apple’s AR bet still has a lot to prove(未訳)

Google I/Oでは、Cloud Anchorsという新しい技術を見せられた。それは二人のスマートフォンユーザーがクラウドで見ているものを同期してマルチプレーヤーを実現する。Appleがこれをどうやるか、まだ不明だが、Googleのこの方法ではCloud Anchorsによるマルチプレーヤーが複数のプラットホームを横断するから、AndroidユーザーとiOSユーザーの両方が参加できる。その点が、おもしろい。

AppleはARKitを1年前にリリースした。その開発プラットホームは複数のAppleデバイスの慣性センサー間の関係を合成する技術がベースで、カメラが空間内のそれらの位置を追う。この位置トラッキングによりユーザーはデジタルオブジェクトのまわりを動けるだけでなく、それらのオブジェクトを環境内の物理的なスペースに固定できる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

VTuberになれるアプリ「ホロライブ」提供元が2億円を調達、今後はVTuber版「SHOWROOM」の開発も

バーチャルYouTuber(VTuber)向け配信サービス「ホロライブ」を提供するカバーは6月8日、グリーベンチャーズ、オー・エル・エム・ベンチャーズ、みずほキャピタル、個人投資家の千葉功太郎氏を引受先とした第三者割当増資により総額約2億円を調達したことを明らかにした。

同社では調達した資金をもとに専属VTuberのマネージメント体制の強化、ホロライブの開発強化を進める方針。なお今回のリード投資家であるグリーベンチャーズの堤達生氏がカバーの社外取締役に就任する。

もともとホロライブはVRデバイスを用いて3Dキャラクターを自由に操作し、インタラクティブな番組を配信できるライブ配信サービスとして2017年12月にリリースされたサービス。当時TechCrunchでも紹介している。

カバー代表取締役の谷郷元昭氏も「(サービスローンチ前は)VTuberの流れがまだできていなかったので、サービスの説明をしてもIT業界の人はポカーンとしていた」と話すように、2017年末から2018年にかけて日本国内でVTuberがトレンドに。

カバーでは当初LINE LIVEや17 Liveでのライブ配信をメインにしていたが、徐々に録画したコンテンツをYouTubeに配信するなどしながら事業を拡大してきた。

ホロライブのアプリ自体もスマホやPC、HTC Viveを使ってキャラクター(Live2Dと3Dに対応)になりきり、動画やライブを配信できるVTuber向け配信サービスとしてアップデートしている。

「ブログが普及して『出版革命』が起き、一般の人でも自分の文章やコンテンツを発信できるようになった。同じようにこれまで3DCGのアニメーションを作るのは難しかったが、それが簡単になり誰でもキャラクターになりきって動画やライブ配信ができるようになってきている」(谷郷氏)

またカバーではホロライブの開発に加えて、専属のVTuberをマネージメントする「VTuber事務所」のような機能も持つ。現在は約15万人のチャンネル登録者をかかえる「ときのそら」や「ロボ子さん」を展開するほか、6月1日には6人の専属バーチャルYouTuber「ホロライブ一期生」がデビューしている。

引き続き配信プラットフォームであるホロライブと専属VTuberのマネージメントがカバーの軸となるが、VTuberとして活動したい個人を支援するプラットフォームとして、今後は自社でコンテンツの視聴までできる仕組みも作っていきたいという。

「それこそVTuber版の『SHOWROOM』のようなプラットフォームを作れないかなと考えている。(カバーでは)今まで配信する仕組みだけを作っていたので、視聴まで完結できるような環境を整えたい」(谷郷氏)

カバーは2016年6月の設立。これまでも2017年8月にみずほキャピタル、TLMおよび個人投資家数人を引き受け先とした総額約3000万円の資金調達を実施している。