リチャード・ブランソン、Virgin Hyperloop Onerの会長を辞任――サウジ公営ファンドの投資はキャンセル

Virginグループのファウンダー、リチャード・ブランソンがVirgin Hyperloop Oneの会長を辞任したことが報じられた。

Reutersが引用した声明によれば、ブランソンは、予想したより時間を必要とすることがわかったためだとして次のように述べている。

わが社の発展段階の現状からすると、ビジネスの詳細を知りチャンスを活用するためにさまざまな業務を自ら実行できる会長が必要だと感じた。私はすでに多くの時間をVirginグループの諸企業ならびにチャリティー事業の運営に費やしているため、これは私には困難な任務となる。

しかしここで述べられていない重要な問題は、サウジアラビアの公共ファンドからの資金提供の計画がキャンセルされた点だ。サウジのPIFは総額10億ドル前後をVirginグループの宇宙事業に投資する計画だったが、ブランソンがサウジを非難した後、交渉は中止されていた(TechCrunchはカショーギ殺害事件はシリコンバレーへの一時代の終焉となる可能性があると報じている)。

Washington Postのコラムニスト、ジャマル・カショーギがイスタンブールのサウジ領事館内で殺害され、遺体が切断されたとされる事件が発覚した後、ブランソン始め、多くのビジネスリーダーがサウジとの関係を絶った

Virgin Hyperloopの最大の投資家は UAE(アラブ首長国連邦)のロジスティクス企業、DP Worldだ。今年に入って、両社はハイパーループ・テクノロジーを用いて公共交通機関を建設するジョイント・ベンチャーを立ち上げた。 DP WorldがVirgin Hyperloopに最初の投資を行ったのは2016年だった。

今月、Virgin HyperloopはBlack & Veatchと共同で実施したミズーリのセントルイスとカンザスシティを結ぶ路線に関するフィージビリティスタディの結果を発表した。

グローバルなインフラに関して調査を行う独立企業であるBlack & Veatchのレポートは両都市を結ぶ主要な高速道路、 I-70に沿うルートの可能性について、安全性、サスティナビルティともに肯定的な評価を下した。同社のCEO、Rob Lloydは次のように述べていた。

今回のフィージビリティスタディはアメリカにおける旅客、貨物の輸送を行うフルスケールの商用ハイパーループ路線の実現に向けての第一歩だ。ミズーリ州が最初の高速道路の出発点となったというアメリカの運輸の歴史において占める栄えある地位を考えるとき、われわれはこのハイパーループ路線計画を特に誇りに思う。この路線はやがて全米を結ぶハイパーループ・ネットワークの礎となるに違いない。これによる社会的、経済的影響は計り知れない。

アメリカではコロラド州とオハイオ州もVirgin Hyperloopのテクノロジーの利用に関するフィージビリティスタディを実施しており、インドやUAEでも別個の計画が進行中だった。

Virgin Hyperloop OneもHyperloop Transportation Technologiesもともに、 イーロン・マスクのハイパーループ計画からインスピレーションを受けている。

ハイパーループは真空近くまで減圧されたトンネル中をカプセルが高速で移動する新しい交通システムで、イーロン・マスクの宇宙企業、SpaceXで開発されたテクノロジーや素材が多数用いられている。

われわれはVirgin Hyperloop Oneの広報担当者にコメントを求めており、回答があり次第、記事をアップデートするつもりだ。

画像: Axelle/Bauer-Griffin/FilmMagic / Getty Images

原文へ

滑川海彦@Facebook Google+

Hyperloopのチューブがゾエトロープ効果で乗客にとって透明になる

19世紀に人気があった視覚的イリュージョンがHyperloopにやってくると、それはまるで透明なチューブの中の旅になってしまうかもしれない。一定間隔で並べた狭い窓は、その一つ々々の視野は制限されるが、数十個ものそんな窓が毎秒目の前を通過すると、ゾエトロープのような効果が作り出され、乗客はチューブの壁が透明になって外の景色が見えるような錯覚をおぼえる。

それはVirgin Hyperloop OneとデザインハウスBjarke Ingels Group(BIG)の公式のコンセプトで、2016年にデモしたこともある。今度彼らが共有したビデオでは、その動的構造と、乗客が実際に目にする光景を見せている。実現可能性については、触れていないけど。

元々のゾエトロープは、〔上記Wikipediaの図にあるように〕側面にスリットのあるシリンダーと、その中壁に描かれた一連のコマ撮り画像〔アニメ数コマぶん〕から成る。シリンダーを回転させるとスリットの向こう側の画像が人間の目には連続した画像(動画)のように錯視され、素朴なアニメーションになる。

その例として下図は、PixarがディズニーのCalifornia Adventureのために作ったゾエトロープだ:

Hyperloopのデザインコンセプトでは、それはリニアーな(線形の)ゾエトロープだ。つまり画像が回転するシリンダーの内壁上のループではなく、横に長い帯だ。地下鉄の窓から見えるアニメ広告に、そんなのがあったよね。

Hyperloopの場合は、客車がその中を移動していくチューブの壁に10メートル間隔で船の舷窓のようなスリット状の窓があり、そこから外界が見える。低速では数秒ごとにその窓が見えて、そのストロボ効果で不愉快かもしれない。でも、目標の時速1200キロメートルに達すると、なめらかな像になる。

彼らのシミュレーションでは、こうだ:

それは、本当に必要だろうか? 外界の擬似画像を見せることが目的なら、液晶ディスプレイで“舷窓”を作ればよいし、飛行機の席のように小型テレビでもよい。でもそれでは、ゾエトほどクールでないだろう。でも今あるテスト用路線でも、点検や避難用にそんな窓がチューブの壁にあるから、意外と楽に実装できるかもしれない。

しかし現状は、Hyperloopそのものがまだプロトタイプだし、今行われている開発努力が実を結ばない可能性もある。でも、人びとが、自分は今狭いチューブの中をめちゃくちゃ不条理なスピードで通過中なんだ、と思わずにすむためには、有効な気晴らしかもしれない。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Hyperloop One、Virginグループ入り――高速ポッド輸送システムはVirgin Hyperloop Oneに改名

Virginグループはイーロン・マスクのHyperloop Oneに大規模な投資を行った。投資額は明らかにされていないが、真空トンネル内を高速で移動するポッドのネットワークを世界各地に張り巡らそうとしているスタートアップの名称を変更させる額であったことは間違いない。Virgin Hyperloop Oneが新しい名称jだ。

Virgin Hyperloop Oneが誕生した原動力はVirginグループのファウンダー、リチャード・ブランソンのハイテク高速輸送システム愛好だろう。ブランソンはこれまでもVirgin Galacticを始め宇宙飛行のための会社を創立してきた。 Virginグループに加わったことでHyperloop Oneが目指す次世代輸送システムは実現に向けて一歩前進した。Hyperloopは最新のテクノロジーを用いて準真空チューブ内に高速でポッドを走らせ、これまで数時間かかっていた距離を数十分で走破させようという野心的なプロジェクトだ。

Hyperloop OneとVirginとの関係は単に金だけではない。Hyperloopのエンジニアリング担当プレジデント、Josh Giegelは、以前はVirginグループのエンジニアだった。ブランソンはブログで「私はこの夏、Hyperloop Oneを訪問し、 ネバダ州ラスベガス近郊のDevLoopテストコースでこのテクノロジーを直接見てきた」と書いている〔トップ写真中央がブランソン〕。

Hyperloop One(正しくはVirgin Hyperloop Oneだった。長い名前なので慣れるのに苦労しそうだ)は最適な建設ルートを決定するためのコンペのファイナリストを決定し、またプロジェクトの実現可能性を研究する提携先として企業や政府を選定したことを発表している。

当面、Hyperloop Oneのビジネスは改名も含めて順調に進んでいるようだ。スピード好きのビリオネアが親しい友人であるというのは次世代の高速地上輸送システムの実現を目指しているイーロン・マスクにとって大いに役立つことになったようだ。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+