中国の教育弾圧の犠牲者たち。企業が閉鎖に追い込まれる中、何百万人もの学生、親、教師が前進への道を模索

中国のEdTech企業は、2021年の初めまではウォール街やベンチャーキャピタルの寵児となっていた。しかし今では、次の始まりを見据えるだけの支払い能力を持ち続けることができるだろうかと思案している。

一連の包括的な規制の中で、中央政府は何十億ドル(約何千億円)もの価値がある教育と試験準備産業に破壊的な打撃を与えた。この値は、国の都市部の中流家庭のスケジュールと財布の両方の総体価値である。

最もインパクトのある政策は2021年7月に導入されたものだ。そこには、国の中核的な公立学校のカリキュラムに特化し、成功を左右する高校や大学の入学試験に照準を合わせた営利目的の個別学習指導サービスの禁止が含まれている。また、生徒が授業に参加できる時間への制約も設けられており、平日の授業時間は午後9時までに制限され、週末は課外授業のみが認められるとしている。

この規制は、中国の大手EdTech企業に壊滅的な影響を及ぼしている。New Oriental Education and Technology Group(NYSE:EDU)の株価は前年同期比で86%下落し、ライバルのTAL Education Group(NYSE:TAL)の株価は、2月に史上最高値を付けて以来93%以上下落した。そうした企業の収益の50%から80%近くが個別学習指導、つまり現在は禁止されている活動からのものだ。その経営陣たちは、10億ドル(1000億円)規模のタイタニックを沈む前に立て直すという不本意な課題に直面している。

7月に打ち出された営利目的の個別学習指導の禁止措置は多くの注目を集めたが、世界で最も人口の多いこの国では、教育を受ける意味を再構築することを意図した政策が絶えず氾濫している。以前は大きな優先順位を与えられていた英語教育が、今では行政のカリキュラムの中で後回しにされている。オンラインでの外国人教師の雇用が禁止されたことで、国内で最も人気のあるEdTech企業の中でも、彼らがどうやって生き残るのかについて案じるところが出てきている。親と家庭教師が直接協力し合ってこの規則を回避しようとするケースに備えて、規制当局はオンラインやホテル、カフェ、個人宅などの未登録施設での個別指導も禁止した。

私たちが今、目にしているのは、関係者すべてにとっての広範な混乱の様相である。子どもの教育の未来のための計画を練り直す親たち、アンダーグラウンドに移動する教育者たち、そして限られた時間と資本を使い果たす前に企業のビジネスモデルを徹底的に見直すことに必死になっているEdTech起業家たち。教育をめぐる需要と供給の経済力はほとんど変わっていない。今問題となっているのは、規制がこれらの力をどのように振り向けようとしているかである。

中国語には無数にあると思われるような慣用句の組み合わせが存在するが「上有政策、下有对策」大まかに訳すと「統治者は規則を作り、臣下はその抜け道を見つける」という表現ほど、政治経済の議論に一貫して適用できるものはほとんどないだろう。最近の規制がこの国の教育産業を覆しつつある中、多くの人々が今問いかけているのは、その抜け道をどのような形で、どこで見つけることができるかということだ。

中国の子どもたちの競争の危機

今日の中国では一様に、取り締まり、抑圧、規制改革が継続的テーマとなっているが、最近の教育政策の大部分は、中国の人口危機のレンズを通して理解することができる。5月に発表された2020年の国勢調査データにより、多くの悲観論者が予想していた以上に出生率の低下が深刻であることが明らかになっており、家族への負担を取り除き、ベビーブームを促進することに対し、当局者たちの緊迫感が高まっているようだ。

すべての子どもたちが成功できるわけではない。それでもその親や、しばしば高齢の2組の祖父母を扶養することを期待されている子どもたちは、非常に競争の激しいシステムのなかに置かれている。多くの家族は、子どもたちがそのペースについていけるように、増え続ける時間とお金を投資しなければならないという義務感にとらわれ、身動きが取れないと感じるようになっている。北京に住む母親のYi(イー)氏(仮名)はこう説明する。「私は何百万という親の中の1人ですが、子どもが優秀になる助けになることを期待して、子どものための特別な教育に多額のお金を投じてきました。しかし、誰もがこうした教育を受けていれば、結果として以前と変わらないということになるでしょう。ただ家族の経済的負担が大きくなり、子どものストレスが増大するだけです。ですから、私はこれらの学校を閉鎖するという政府の決定を支持します」。

中国の人口危機はまた、同国の指導者たちに対し、職業的および技術的な熟練労働者が不足する可能性を示しており、世界で支配的地位にある製造業超大国の長期的な存続を脅かしている。教育政策の立案者たちは、この国のエリート大学における数少ない貴重な場所を確保しようと奮闘する親や子どもたちへの圧力を緩和することを追求しながら、教育制度の見過ごされがちな部分をより強調し、改革することによって、職業訓練や職業の魅力を高めることも目指している。

EdTech崩壊後の破片の拾い上げ

米国上場のEdTech大手企業の価値が一夜にして消えていくのを目の当たりにして、米国の金融メディアは当然のことながら業界の将来に関する問題に焦点を当ててきた。しかし、そのような企業とそこに留まっている従業員たちの運命は、他の企業よりも依然として楽観的に見える。

流動資産のライフラインにアクセスできないより小規模な企業にとっては、破綻が唯一の選択肢となっている。それは、かつて北京や上海の高級ショッピングモールの主軸を担っていた、高級語学研修センターWall Street Englishの中国子会社にも当てはまる。新型コロナウイルスの感染拡大、そして英語を母国語とする人々の採用と定着を難しくしている渡航制限といった継続的な衝撃に揺れる中、これらの新しい規制は救済資金を提供し得る顧客と投資家の両方に脅威を与えている。その余波を受けて、同社は突如として事業を閉鎖した。

このような突然の廃業は、特に経営破綻が絡んでいる場合、従業員にとって特に深刻な問題となる可能性がある。中国のホワイトカラー産業では、レイオフは実際のところ、中国の労働法のために退職した従業員にとっては小さな棚ぼたに等しい。ほとんどの場合、従業員は1カ月分の給与に、その従業員が当該企業で働いてきた各年の1カ月分の給与を上乗せした額の退職手当を受け取る。従業員を迅速かつ最小限の摩擦で解雇しようとして、企業がさらに寛大なパッケージを提供することは珍しくない。

しかし、企業が突然の崩壊に直面したとき、従業員も顧客も一様に責任を負わされることになる場合が多い。Wall Street Englishで10年以上営業の仕事をしてきたある女性は「船がゆっくり沈むときは、たくさんの救命ボートが利用できます。しかし時として、ボートがあまりにも速く沈むために、救命ボートに乗ることさえできないこともあります」と説明する。彼女のケースでは、会社の破産手続きが進む中で、自分の在職期間がささやかな支払いの最前線へと導くことを彼女は望んでいる。しかし、米国に上場しているあるEdTech企業の退職金は2000人民元(約3万4400円)にすぎないとうわさされており、自分が受け取るべき未払い賃金を受け取ることさえできたら自分は幸運だと思うだろう、と彼女は話している。

バーチャルで教えていた欧米の教育者にとっては、混乱が支配的なテーマになっているようだ。北京に拠点を置くオンライン教育のスタートアップ、Whales Englishで働いていたあるイギリス人教師(私たちは彼を「Ed(エド)」氏と呼ぶことにする)は、約3週間の不安の嵐のような状態を経験した。同社は、海外のフリーランスの教師を雇って中国の子どもたちにリモートの英語クラスを提供している多くの企業の1つだが、7月の規制はもはや法律に準拠していないことを物語っていた。

エド氏によるその出来事の説明によると、同社は7月28日まで拡大、広告、雇用を続けていたが、その後経営陣は新しい教師の雇用をすべて停止すると発表した。8月7日までに、Whales Englishはすべての新しいコースを中止し、すでに始まっていて支払い済みのものも終了することになると教師たちは知らされた。また、親たちは前払いしている授業をできる限り利用しようと急いだため、教師たちは自分たちのスケジュールを可能な限り解放するよう促された。

この頃、北京本社のスタッフの約3分の2近くがレイオフされたといううわさが流れ始め、会社の意向に反して、親や教師がWhalesのオンラインプラットフォームを迂回するための緊急時対策を講じ始めたとエド氏は話す。8月18日、エド氏が当局からの最新の命令があるのではないかと感じたことに呼応するように、すべての授業が直ちに中止されることがエド氏と他の教師たちに伝えられた。

会社の一貫性のない情報伝達に苛立ちを感じながらも、エド氏は自分の恩恵を尊重している。彼の報告では、自分の仕事に対して適時に全額が支払われ、すでに転職して日本の学校で教師の職に就いているとのことだ。

中国の有名なEdTech企業の1つであるVIPKidの教師向けの、1万4000人以上のメンバーからなるFacebookグループでは、エド氏のようなストーリーがありふれた光景となっている。しかし多くの教師にとって、中国のEdTechプラットフォームが提供する柔軟性と規則性は簡単には代替できない。新型コロナウイルスのパンデミックが親にさらなる育児のプレッシャーを与えていることから、教育や教職の経歴を持つ多くの人々は、こうしたプラットフォームを利用して生計を立て、子どもと一緒に家で過ごしてウイルスにさらされることを制限している。同等の仕事を見つけるのは難しいかもしれない。

だからといって、教師たちが何もしようとしていないわけではない。抜け穴がある一貫性のない執行は、不法な性売買や不法移民労働と違わず、個別指導や他の教育サービスのグレー市場を生み出している。需要は変化していないものの、規制によって大企業はこのようなビジネスに直接関与することを避けざるを得なくなった。そのため、取引はアンダーグラウンドで行われ、労働者(この場合は教師)には法の保護なしにフリーランスになる以外の選択肢はほとんどない。

親、行政そしてチャイニーズドリーム

教育弾圧に対する親たちの反応は、富と階級に沿ったものだった。以前と同じような課外補習を続けながら規則に公式的に準拠するために、教育技能と資格を持った在宅「ナニー」についての報道がすでに流れ始めており、月に3万人民元(約51万6500円)という額が支払われているという。例によって、新たな抜け道が見つかるのを待つだけということだ。

中国の裕福でつながりの深い家庭の多くにおいて、新しい規制は子どもたちの教育計画をほとんど変えてはいない。この記事のために話を聞いた何人かの親たちの間では、長い間、中国の教育制度を回避することが主な目的の1つとなっていた。これは中国に数多くあるインターナショナルスクールの1つに受け入れられることで達成され得るものだ。そこでは国際バカロレア(IB)カリキュラムが、国の厳しい入学試験を回避して海外の大学に入学するための準備を整えている。

成功と特権の恩恵により、子どもたちを海外の学校に行かせることができた人たちもいる。場合によっては、これは自分自身と彼らの富を移動させることも意味する。「より多くの親にとって、海外で勉強させることが最善、あるいは唯一の選択肢のようです」と引退した元企業幹部のGao(ガオ)氏(仮名)は説明する。同氏は現在米国に住んでおり、娘も米国で学んでいる。

最も裕福なエリート層から中産階級の層まで、共通のテーマがあるようだ。中国が歴史的に経済の奇跡を成し遂げた時代に成人した親たちにとって、社会的にも経済的にも進歩することは、可能であるとみなされるだけでなく、単に仲間と歩調を合わせるという観点から期待されるものでもあった。そして進歩が期待されるなら、停滞は失敗を意味する。停滞が失敗であれば、後退は破滅的である。

経済成長が鈍化し、習近平国家主席が「共同繁栄」を掲げ、高等教育より職業訓練と産業訓練が強調されている中、一部の親たちは、自分たちの夢が中国の新しい戦略に反することを認識しつつある。「行政の広範な目標があるにしても、自分の娘が高等教育を受けられなくてもいいと思えるでしょうか?答えはノーということになります」と上海在住の母親、Li(リー)氏(仮名)は率直に語った。「考え方を変えるには時間がかかります。少し利己的かもしれませんが、それは真実です。私は教育の平等を強く支持していますが、それは私の子どもが幸運な子どもの1人となる場合に限られます」。

お金の話ばかりしていると、ある言葉が表すものに対する子どもの機会を逃してしまうことを多くの親が心配していることは、あまり具体的に見えてこない。倫理、向上心、教育、社会階級を含む「素质(素養)」という言葉である。北京の教師Guo(クオ)氏(仮名)にとって、娘のために心配しているのはこの要素だ。「社会は職業労働者を必要としており、そうした人は大学に通う人よりも多くのお金を稼ぐことができることは承知しています。ですが、たとえ娘の収入が少なくなるとしても、私は彼女に大学に通って欲しいと思います」。彼にとって、自分の子どもが受ける教育や将来の収入は、彼女が成長する社会の中では副次的なものだ。「(専門学校生は)怠惰、喫煙、飲酒、不品行で知られています。娘が学校で作る友達は、彼女が一生持つ友達になります。私は娘に質の高い友達を持って欲しいのです」と彼は続けた。

中国の規制当局が教育だけでなく、国の最も困難な課題に対処するために多くの中心的な機関を見直す中、かつて抱いていた期待が今は根本的に変化する必要があることを多くが認識しつつある。しかし、あらゆる不確実性の中にあって、変化しそうにないことは、自分自身、家族、そして野望を前進させる意欲と工夫である。結局のところ、当局は絶えず規則を作り、国民は常にその抜け道を見いだすであろう。

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(文:Elliott Zaagman、翻訳:Dragonfly)

暗号資産と中国:なぜ中国はデジタル人民元を推進しているのか

暗号資産と中国:なぜ中国はデジタル人民元を推進しているのか

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編集部注:この原稿は、Chainalysis Japanのシニア・ソリューション・アーキテクトを務める重川隼飛(シゲカワ・ハヤト)氏による寄稿である。同氏は、2020年にブロックチェーン分析専門会社であるチェイナリシス(本社:米国)に入社。日本・アジアでの事業拡大に向けた営業活動や顧客サポートの提供とともに、講演やトレーニングを実施するなど、ブロックチェーン分析の知識・ノウハウの普及に従事している。

2020年4月、中国はデジタル人民元の実験を開始し、初めて中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行した政府の1つになりました。デジタル人民元のようなCBDCは、政府が発行するブロックチェーンベース版の国家通貨です。従来の暗号資産の多くと同様、通貨のブロックチェーンがあらゆる取引において永久で不変的な台帳として機能するため、CBDCは、市民の全体的な消費傾向について、より高い透明性を提供します。

中国は国有銀行やWeChat Pay、Alipayといったデジタル決済アプリを通じてデジタル人民元を展開していますが、これらのアプリは中国国内においては、欧米のものよりもはるかに広く利用されています。

現在、デジタル人民元の実証実験が進行中ですが、2022年の北京冬季オリンピックでは、訪中選手にデジタル人民元を発行することが予定されており、政府が新しいCBDCを世界に向けて発表する機会になると、多くの人が指摘しています。2021年7月の時点で、実証実験のユーザーは2000万件以上のデジタル人民元ウォレットを作成し、新しいCBDCで50億ドル(約5554億円)以上の取引を行っています。

特に、米国の経済的なライバルであり権威主義体制をとる現在の中国がCBDCを導入した場合には、国内政策と外交政策の両方に広範な影響を及ぼします。当社は、暗号資産投資会社Primitive Venturesの創業者でアジアの暗号資産市場の専門家でもあるDovey Wan(ドビー・ワン)氏に話を聞き、中国共産党がデジタル人民元で達成したいと考えていることについて尋ねました。Wan氏は重要な目標について説明しました。

その1つは、経済をより細かくコントロールするという、比較的穏やかなものです。現在すべての国で採用されている部分準備銀行制度の下では、中央銀行は金利の改定など、間接的にしか経済に影響を与えることができません。通貨供給がすべてCBDCの形で存在し、すべての取引が1つの中央台帳に記録されている場合、中央銀行は資金の流れをより細かくコントロールできます。「金融政策がプログラム可能になるのです」とWan氏は言います。

「たとえば、政府が株式市場の過熱を抑えたいと考える場合、数行のプログラムを書けば株式市場への資金の流入を阻止することができます」。

さらにWan氏は、現在一般的なモバイル決済アプリよりも、デジタル人民元は高齢者が使いやすいようになっていることを指摘し、CBDCがサードパーティーによる決済の必要性をなくすことで、小売業者にとって取引価格がより安くなる可能性があると述べました。

しかし中国共産党の手にかかれば、政府が所有する集約的な国民の取引台帳が、金融監視のツールになることは容易に想像がつきます。現在の銀行システムの下では、中国国民は金融面でのプライバシーを確保できていませんが、デジタル人民元が導入されれば、政府はいかなる違反行為に対しても、個人や企業を金融システムから排除することができるようになります。中国共産党がこの能力を使うかどうか、あるいはどの程度使うかはわかりませんが、デジタル人民元制度の下では「金融の死刑判決」が下される可能性があるでしょう。

また、デジタル人民元を研究し、2021年1月にこのプロジェクトに関する報告書を発表した、新アメリカ安全保障センター(CNAS)の非常勤シニアフェローであるYaya Fanusie(ヤヤ・ファヌシー)氏にも話を聞きました。Fanusie氏は、デジタル人民元が権威主義の道具になり得ることにはおおむね同意しましたが、中国共産党が持つ、国民のデータをできるだけ多く収集したいという広い願望のなかで、デジタル人民元が果たす役割をより強調しています。「政府がすべての国民の取引記録にアクセスできる集中型データベースは、これまで存在しませんでした」とFanusie氏は言います。

「確かに、中国はモバイル決済アプリにそのデータを要求することができますが、それには時間がかかりますし、時には反発されることもあります」。

またFanusie氏は、デジタル人民元によって生成される金融データを、中国の社会信用システムに組み込まれている他の種類のデータと組み合わせる方法についても説明しました。

「中国共産党は最近、国の制度に基づいた学校に子どもを通わせないモンゴルの家庭をブラックリストに載せるという通達を出しました。デジタル人民元があれば、政府は金融データとそのようなリストを組み合わせることができるのです」。

Fanusie氏は、中国共産党がすでにデジタル人民元を使って政府の腐敗を監視する意向を表明していることに触れました。妥当な目標ではありますが、こうした金融監視機能が一般市民に向けられる可能性があることは容易に想像できます。

デジタル人民元は米ドルの脅威となるか?

中国が米ドルとSWIFT取引システムへの依存度を下げるために、デジタル人民元の国際的な利用を促進するつもりではないかと多くの人が推測しています。実際、国有企業である中国グローバルテレビジョンネットワークが公開したビデオでは、制裁措置を回避し、世界貿易に対する米国の影響力を低下させる方法として、デジタル人民元を推進するという内容のものでした。

暗号資産と中国:なぜ中国はデジタル人民元を推進しているのか

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Yaya Fanusie氏に、デジタル人民元を米ドルに対する脅威と見なすかどうかを尋ねました。彼は、中国共産党が中国国外でのデジタル人民元の利用を促進するまでにはしばらく時間がかかると考えており、短期的にはその可能性は低いと述べています。しかし長期的には、デジタル人民元や他の国が将来導入するCBDCが、世界の金融システムにおけるドルの地位を低下させる可能性があると考えています。

「中国は、他の国ともCBDC同士の交換を可能にするような取り決めをするのではないでしょうか。CBDCのアトミックスワップと考えてください」。

このような取り決めの下では、中国の誰かがマレーシアの誰かにデジタル人民元を送ると、その間に自動的に通貨交換が行われ、マレーシアのユーザーは自国の通貨に触れることなく、デジタルマレーシアリンギットを受け取ることができます。このような取引は、SWIFTシステムに依存しません。それが当たり前になれば、米国以外の国の人が米ドルを持つ必要はなくなるでしょう。「これは2022年のリスクではなく、おそらく2032年以降のリスクだと思われます」とFanusie氏は言います。

また長期的には、デジタル人民元は、米国が遅れをとる恐れのある大規模なデータ運用戦争の一環となると、Fanusie氏は見ています。

「これまでのところ、フィンテックに関しては、米国よりも中国の方が革新的であると言われています。ブロックチェーン技術でも同じことが起きた場合、米国経済はデータ駆動型の次のイノベーションの波に乗り遅れるリスクがあります」。

今日、これらのイノベーションが具体的にどのようなものになるかの想像することは難しいですが、CBDCが生成する大量のデータや、政府がそのデータを使って経済をより効率的に管理することを考えると、それらのイノベーションは非常に重要なものになるでしょう。

しかしFanusie氏は、このリスクを軽減するために、米国の政策立案者が単に独自のCBDCを作るべきとは考えていません。また、CBDCプロジェクトを排除すべきではないものの、米国はデジタルドルの先を考え、ブロックチェーン、フィンテック、金融政策のイノベーションを全面的に推進する必要があると考えています。

「米国の連邦準備制度は革新的です。他国の中央銀行とは異なり、米国には100年以上にわたって中央銀行に抵抗してきた特質と歴史的経験があるからです」とFanusie氏は述べています。つまり、イノベーションは他国の事例を参考にするのではなく有機的に展開する必要があると考えているのです。

Fanusie氏は、そのようなイノベーションを促進する方法として、米国が大学と提携して、ブロックチェーンプロジェクトを開発するためのサンドボックスを作ることを提案しています。

「そうやって米国はインターネットの発展をリードしてきたのです。大学に対して、軍が使用できるコンピュータネットワークシステムを作るようにという指示がありました。このインフラは、その後より広範に民間で活用され、ビジネス革新をもたらしました」。

1つはっきりしているのは、中国はデジタル人民元を開発して、当面は国内で使用し、将来的には国際的に使用しようと意図していることです。このプロジェクトの短期的な目標は、金融政策の改善と中国国民の金融監視ですが、長期的には他のCBDCとともにデジタル人民元を普及させることであり、それは世界の準備通貨である米ドルの地位を危うくする可能性があります。このプロジェクトや類似のデジタルドルの立ち上げに対する米国のいかなる対応においても、金融データの問題を考慮し、国民のプライバシーを尊重しつつ、より強い経済を構築し、経済競争における国の地位を維持するために、どのようにデータを利用できるかを検討する必要があります。

  • 中国は暗号資産の最大市場の1つであり続ける
    ・2021年1月以降、中国のユーザーが管理していると推定されるアドレスには、米国に次ぐ1億5000万ドル(約167億円)以上の暗号資産が送られています
  • 暗号資産を使用した犯罪における中国の役割(下記に米英の比較表を添付)
    ・2019年4月から2021年6月の間に、中国のアドレスは、詐欺やダークネットマーケット操作などの不正行為に関連するアドレスに22億ドル(約2444億円)以上の暗号資産を送信し、20億ドル(約2223億円)以上を受信しました
    ・しかし、不正なアドレスとの取引額は、金額面でも他国との比較でも、調査期間中に大幅に減少しました

中国における暗号資産業界とユーザーベースは、世界で最も活発なマーケットの1つです。2021年1月以降、中国のユーザーが管理していると推定されるアドレスには、米国に次ぐ1億5000万ドル(約167億円)以上の暗号資産が送られています。

暗号資産と中国:なぜ中国はデジタル人民元を推進しているのか

画像クレジット: Chainalysis

また、中国はこれまでも暗号資産のマイニングを支配してきました。中国を拠点とするマイニング事業者が、ビットコイン(Bitcoin)の全世界のハッシュレート(ビットコインのマイニングに使われるコンピューティングパワーの大きさを示す指標)の65%を支配していたこともあり、中国やアジア全体にサービスを展開する暗号資産サービスの流動性が高まる一方で、中国共産党がこの支配力を利用してビットコインネットワークに悪影響を及ぼすことも懸念されています。また、過去の取引データによると、中国の一部の暗号資産事業者、特にOTCブローカーが、暗号資産を使った犯罪に関与している人々のマネーロンダリングを促進する上で、大きな役割を果たしていることが示唆されています。

暗号資産を使用した犯罪における中国の役割

暗号資産エコシステム全体にとって重要な部分であったのと同様、中国はこれまでも暗号資産に関連する犯罪において大きな役割を担っていました。2019年4月から2021年6月の間に、中国のアドレスは、詐欺やダークネットマーケット操作などの不正行為に関連するアドレスに22億ドル(約2444億円)以上の暗号資産を送信し、20億ドル(約2223億円)以上を受信しました。

暗号資産と中国:なぜ中国はデジタル人民元を推進しているのか

画像クレジット: Chainalysis

注目すべきは、中国の不正アドレスとの取引額が、金額面でも他国との比較でも、調査期間中に大幅に減少していることです。その減少の原因の多くは、2019年に発生したプラストークン詐欺のような大規模な投資詐欺がなかったことにあります。この詐欺は主にアジア全域のユーザーを対象としており、収益の大部分が中国のサービスを通じてロンダリングされていました。中国は依然として不正取引額で上位の国の1つですが、かつては他の国に大差をつけていたことから、同国における暗号資産関連の犯罪は減少していると考えられます。

中国における不正な資金移動の大半は、暗号資産詐欺に関連しています。取引額の点で、暗号資産関連の犯罪のなかで圧倒的に多いのが詐欺であることを考えると当然ですが、ダークネットマーケットや盗まれた資金の移動も役割を担っています。

ZoomのカスタマーサービスソフトメーカーFive9買収が白紙になったいくつかの理由

ローラーコースターの乗車について話そう。

パンデミックの間に多くの人にとって仕事をする際の主要コミュニケーション手段となったビデオ会議のZoom (ズーム)が、クラウドベースのカスタマーサービスソフトウェアメーカーFive9(ファイブ9)を買収することはもはやない。2021年7月に発表された全額株式交換による取引でZoomは儲かるコンタクトセンターマーケットに参入するはずだったが、いくつかの大きな妨げが9月30日の結論につながった。

まず最初に、ここ数年ほぼ右肩上がりだったZoomの株価はこのところプレッシャーを受けていた。そのため、7月に147億ドル(約1兆6320億円)とFive9を評価したこの取引は、同社にとって現在はかなり少ない額となっている(取引が発表された日のZoom株は約360ドル[約4万円]で取引された。現在は260ドル[約2万9000円]ほどだ)

Zoomが中国に結びついているため、国家安全保障上のリスクを生じさせるかもしれないと懸念して米司法省が主導するパネルが調査していることをZoomが9月20日の週に明らかにしたとき、もちろんそれでは問題は解決しなかった。

創業者のEric Yuan(エリック・ユアン)氏は中国で生まれ、27歳だった1997年に米国に移住し、帰化した米市民だ(数年前にユアン氏はそこに至るまでにおびただしい数のハードルを乗り越えたことをTechCrunchに語った)。

Zoomはまた2020年に、一部のミーティングを中国のサーバーに誤ってルーティングし、そして中国の天安門事件を追悼するために同社のプラットフォームを使っていた活動家のアカウントを停止したことを明らかにした。開発チームの大部分は中国にいる(多くの多国籍企業と同じだ)と以前言っていた同社はその後、中国本土外にいる人に影響を及ぼそうとする中国政府からの要求は認めない、と発表した。

それでも命取りになったのは、議決権行使助言会社Institutional Shareholder Serviceによる、Zoomの成長が減速している懸念があり、買収に反対した方がいいというFive9株主への勧告だった。

勧告は聞き入れられたようだ。Five9は9月30日、合併計画は2社の「相互合意によって中止になった」というニュースリリースを出した。

それとは別にZoomも経緯全体を軽く扱う発表を出した。「Zoom:What’s Next」というタイトルの発表の中で、ユアン氏はFive9について「当社の顧客に統合されたコンタクトセンターを提供する魅力的な手段でした」と語り「とはいえ、当社のプラットフォームの成功の基礎となるものではなく、顧客に魅力的なコンタクトセンターのソリューションを提供する唯一の方法でもありませんでした」と付け加えた。

いずれにせよ、買収取引は明らかに期待されていた。買収が破談になったというニュースが発表されたとき、ZoomとFive9の株価はかろうじて変動しなかった。

画像クレジット:OLIVIER DOULIERY/AFP / Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

私の新しいNFTが4万円以上の価値を持つ理由、そしてハイテク業界の魅力的な1週間の考察

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

みなさん、こんにちは。先週はDisruptが開催されたので、いつもよりはゆったりとパネルやスタートアップのピッチを見る時間をとることができた。楽しい時間だったが、おかげで普段の週よりも電話の数が少なくなってしまった。だから、以下は報告というよりも観察に近い雰囲気の略式ニュースレターとなっていることをお断りしておく。では始めよう。

観察その1:NFT投機は楽しい。

私は最近NFTの世界に片方のつま先を突っ込んでみた。この分野を取り上げたので、実際にちょっとだけ実際に参加してみることにした、そうすることで単に読んでいるだけよりも多くのことを学ぶことができるからだ。もちろん、私はあらゆる倫理的な問題を避けようとしているが、低価格のJPEGを購入するために私が数十ドル(数千円)の暗号資産を所有しても破滅的なことは起きないだろう。

何もかもがうまく行かなかったが、親切なツイッターユーザーが送ってくれたNFTが現在値を上げている。まあ、特定のブロックチェーン上でデジタル署名を所有することになったこの特定の画像からは、他のほとんどのオンライン画像に比べて、より強い喜びを得ることはできなかったが、人々が私からそれを買おうとするのを見るのは楽しいことだった。

何百ドル(何万円)分に相当する入札があり(最新の入札額は382.94ドル[約4万2400円])、そのことで私は私の持つ画像を本当に欲しがっているのは誰だろうと考え込んでしまった。私はこうしたオファーの中に価値以上の投機を見ているのだと思うが、今ならNFTファンが彼らの家内工業に熱狂する理由がよくわかる。結局のところ、つい最近まで基本的に価値がゼロだった画像から、魔法のようにリアルな価値を生み出したいと思わない人はいないだろう。これはまやかしのように思える(はっきりさせておきたいが、自分のNFTを売らないのは、税金のことで煩わされることが嫌だからで、それを営利目的で売るのはとても倫理的に問題があるように思う。ということで、永遠に持ち続ける?)

観察その2:フィンテックのIPOには絶好の機会だ

ボストンを拠点とするフィンテックのユニコーンであるToastが今週、上場で熱狂的な支持を受けたことは、十分に速い成長率があれば、決済の売上に対してソフトウェア企業のような評価を得ることが可能であることを世界に示した。私たちは、Toastが株式市場に温かく迎えられたことは、フィンテックのユニコーンが現状を抜け出して株式を公開するのに最適な時期であることを示しているのだと思った。

私はそう考えている。しかし、おそらく私が見落としていたのは、どれだけの価値があるものが近くにあったのかということだ。それは評価額ではなく(それらについてはすでに知っている)、ユーザー数である。以下のツイートを見て欲しい。

私はChime(チャイム)が5位に入っているとは思っていなかったが、この数字は、最近見られるように、現在、金の川のように評価されている、単純に膨大な支払いの流れを意味している。だから、NuBank(ニューバンク)やChimeやDave(デイブ)たちも、公開を考えてもいいのでは。どうだろう?

観察3:中国の技術はますます問題に

Zoom(ズーム)によるFive9(ファイブ9)の買収は、買収企業Zoomのルーツが中国であることから、規制上の問題が発生する可能性があることが先に報じられた。もし、Zoomが中国で研究開発を行っていることで、Five9の大型買収が中止ということになれば、世界をリードする2つの経済圏の距離が広がるだけでなく、技術の流動性を生み出す可能性の扉が閉ざされることになる。

また今週、リトアニアは、中国のスマートフォン大手Xiaomi(シャオミ)のハードウェアが、中国政府が検閲を好む特定の用語を検出してブロックできると警告した。シャオミの携帯電話は、皆そのようにして作られているのかもしれないが、うれしい話ではない。The Times(タイムス)によれば、リトアニアは「中国製のスマートフォンに自動検閲ソフトなどを始めとするセキュリティ上の欠陥があることが専門家の調査で判明したために、公務員に対して中国製のスマートフォンを破棄するように指示した」という。

これもまた問題だ。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

GMも中国初の自動運転ユニコーンMomentaに約330億円投資

General Motors(GM、ゼネラル・モーターズ)は、トヨタや中国国有企業SAIC Motor(SAICモーター)、Mercedes-Benz AG(メルセデスベンツAG)などを含む、中国の自動運転スタートアップMomenta(モメンタ)を支援する多くの大手自動車メーカーの輪に加わった。

車両販売という点で米国最大の自動車メーカーであるGMは米国時間9月21日、今後中国でのGM車両の自動運転テックの開発を加速させるためにMomentaに3億ドル(約330億円)を投資すると明らかにした。GMの上級副社長でGM China社長であるJulian Blissett(ジュリアン・ブリセット)氏は、今回の投資が「中国における(GMの)消費者のために作られたソリューション」をもたらすのに役立つ、と声明で述べた。

このニュースは、Momentaが約5億ドル(約554億円)の資金調達ラウンドをクローズしてから6カ月も経たない中でのものだ。そのラウンドにはSAIC、トヨタ、 Mercedes-Benz AG、Bosch(ボッシュ)が参加した。TechCrunchのRita Liaoが指摘しているように「巨大な投資ラウンドは資本集約的な自動運転車両の業界では当たり前になった」。しかしMomentaは、ソフトウェアを搭載した車両を2021年末までに大量生産することを目指していて、商業化に近づきつつあるようだ。

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GMが3.8兆円をEV開発へ投資、従来の計画に8850億円上乗せ

この出資はGMが次世代のテクノロジーに積極的に投資する最新例だ。同社は6月、2025年までに電動とAVのベンチャーに350億ドル(約3兆8760億円)をあてる、と述べた。米国では、自動運転テクノロジーへのGMの関心は自動運転の子会社Cruise(クルーズ)を介してよく知られている。CruiseはこのほどGMの金融会社から50億ドル(約5540億円)の与信限度額を獲得した。

しかしGMはまた、世界最大のEVマーケットでの足がかりを模索する中で、中国でかなりの提携も行ってきた。中国で最も売れている電気小型車であるWuling Mini EVはSAIC-GM-Wulingが生産していて、社名からわかるように、GM、SAIC、Wuling Motors(ウーリンモーターズ)の合弁会社だ。SAIC-GM-Wulingは人気のブランドBaojunも手がけている。

中国の自動運転スタートアップの幹部が6月にあったTC Mobilityで指摘したように、同国の地方自治体もまた、自動運転に対して積極的だ。

「中国では、各地方自治体の政府が我々起業家のように行動するよう動機づけられています」とMomenta欧州のゼネラルマネジャーであるHuan Sun(フアン・サン)氏はイベントで述べた。「地方自治体は地域経済の発展でかなり進歩しています。我々が感じているのは、自動運転テクノロジーが(地方自治体の)経済ストラクチャーを改善し、アップグレードできるということです」。

GMは、Momentaの技術がいつGM車両に搭載されるのかについては明らかにしなかったが、広報担当は2社の提携が米国でのGM車両生産と販売にはつながらないことを認めた。

画像クレジット:Momenta

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国が暗号資産の取引は「違法」として全面禁止、海外取引所やマイニング企業も規制へ

中国人民銀行(中央銀行)は現地時間9月24日、国家安全保障と「国民の資産の安全」に関する懸念を理由に、すべての暗号資産(仮想通貨)関連の取引は国内では違法であり、全面的に禁止すると発表した。また、世界一の人口を抱える同国は、海外の取引所が国内のユーザーにサービスを提供することも禁止すると表明した。

中国の10の政府機関は、共同声明の中で、国内での暗号資産の取引を「高圧的に」取り締まるために緊密に協力する意向を表明。また人民銀は、インターネット企業、金融企業、決済企業に対し別途、自社プラットフォーム上で暗号通貨取引を促進しないよう命じた。

人民銀は、Bitcoin(ビットコイン)やTether(テザー)を含む暗号資産は不換紙幣ではないため、市場に流通させることはできないとしている。暗号資産の利用が急増したことで、「経済・金融秩序」が乱れ、「マネーロンダリング、違法な資金調達、詐欺、ネズミ講、その他の違法・犯罪行為」が急増しているという。

違反者は「法律に基づいて刑事責任を追及される」と人民銀は警告している。

中国政府は「国民の財産を保護し、経済・金融・社会の秩序を維持するために、仮想通貨の投機、および関連する金融活動、不正行為を断固として取り締まる」と人民銀は声明で述べた。

この動きは、すでに一部の暗号資産トレーダーの間でパニックを引き起こし始めており、Bitcoinをはじめとするいくつかの通貨の価格を下落させている。Bitcoinは記事公開時点で5.5%下落していた。

世界最大級の暗号マイニングサービスが複数ある中国は、それらのビジネスも追いかけていく。国家発展改革委員会は、暗号資産マイニングの全国的な一掃に着手すると表明し、これは「必須」の作業だとしている。

中国が暗号資産関連の活動の取り締まりを宣言したのは今回が初めてではないが、これまでは多くの政府機関がこのような取り組みに協力姿勢を示していなかった。

中国の規制当局は、数年前から暗号マイニングの禁止を検討してきた。しかし、最近の四半期では、いくつかの地元企業が暗号資産を採用し始めている。中国のアプリメーカーであるMeitu(メイツ、美图)は、3月に4000万ドル(約44億3000万円)相当のBitcoinとEthereum(イーサリアム)を購入した。

楽観的な意見もある。シンガポールの暗号資産取引所Luno(ルノ)でアジア太平洋地域の事業責任者を務めるVijay Ayyar(ビジェイ・アイヤー)氏は、こうツイートしている。「中国はこれまで数え切れないほど、暗号資産の禁止を叫んできた」。

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画像クレジット:Chesnot / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

中国版TikTokの「抖音」が14歳以下の利用を1日40分に制限・22時から6時まで利用できなくする青少年モード追加

中国版TikTokの「抖音」が14歳以下の利用を1日40分に制限・22時から6時までは利用できなくする青少年モード追加

China Stringer Network / Reuters

TikTokを運営する中国ByteDanceが、中国版TikTokである「抖音(Douyin)」について14歳以下のユーザー向けに青少年モード(Youth Mode)を追加すると発表しました。このモードではまた、1日の利用時間が40分までに制限されるほか、22時から6時までは利用できなくなります。

青少年モードでは、面白い科学実験や博物館や美術館のコンテンツ、全国の美しい風景に歴史的な知識の解説など、教育向けコンテンツも追加されるとのこと。

なお、Bloombergによると、Douyinとは別にXiao Qu XingあるいはLittle Fun Starという新しいアプリの提供も開始されたとしており、こちらも1日40分などの制限は同じですが、教育向けコンテンツのみを提供しているようです。

中国では、2018年に習近平主席が子供の近視率の増加を憂慮したことから、未成年者のゲーム・インターネット利用を規制する動きが強まっており、直近では、18歳未満のゲーム利用を週に3時間までに制限したばかりです。

週に3時間までの制限と比べれば、1日40分というのは大分軽い制限のようにも思えますが、香港で発行されているSouth China Morning Postによれば、Douyinユーザーのうち、12歳未満は0.34%、13~19歳が4.18%に過ぎず、それほど多くのユーザーには影響しないようです。ただし、Douyinはユーザーの統計データを公開していないため、この数値が正確である保証はありません。

なお、Douyinは、14歳以下のユーザーがこの規制を回避することができるかもしれないと認めており、ログインプロセスの抜け穴を探すバグ発見キャンペーン「DOU to find bugs」も実施しています。

(Source:ByteDanceEngadget日本版より転載)

アマゾンが600以上の中国ブランドを不正レビュー理由に永久追放、ただし早くも取締りをかいくぐり戻る可能性

アマゾンが600以上の中国ブランドを不正レビュー悪用により永久追放、ただし早くも取締りをかいくぐっている可能性も

REUTERS/Dado Ruvic

米アマゾンが600以上の中国ブランド(約3000もの業者アカウントにまたがる)をレビューでの不正行為を理由として永久追放したと発表しました。

はじめ香港のThe South China Morning Postが中央電視台(中国国営放送局)でのアマゾン・アジア担当副社長のインタビューを引用して報じ、これをアマゾンがThe Vergeに対して事実だと認めたかっこうです。

アマゾン広報によると、これは世界的な取締りを始めてから5ヶ月後の集計結果とのこと。これら600超のブランドは、アマゾンのポリシー、特にレビューの濫用に関する規則に故意に、繰り返し、かつ著しく違反したために追放されたと述べられています。

アマゾンの取り締まりは、RavPower社のような企業がレビューと引き換えにギフトカードを提供しているとThe Wall Street Journalが報じたことをきっかけに始まりました。

こうした行為をアマゾンは2016年に禁止しましたが、VIPテストプログラムや延長保証を装ったものもあったとのこと。またネガティブなレビューを削除してくれれば、返品不要で無料の商品を提供したり、「返金」を提案する場合もあったと伝えられています。

アマゾンが具体的にどの中国ブランドを追放したのかは明らかにされていませんが、The Vergeは追放された製品の一部が取締りの網をかいくぐって戻ってくる可能性も十分にあるとコメントしています。

たとえばAukey社は5月に取り締まり対象となった最初の有名企業の1つだったものの、9月現在でもAmazonでサブブランド(Key Seriesなど)が販売中です。ほかにもChoetech社のワイヤレス充電パッドや、RavPower社のバッテリーも見つかったとして、The Vergeはアマゾンに禁止の回避に関する方針を問い合わせており、回答待ちとのことです。

最近のアマゾンは偽造品についてもGoProと共同で訴訟を起こすなど、ストアを不正使用させないよう取り締まりを強化しています。不正レビューは「悪貨が良貨を駆逐する」的に公正な出品をしているセラーを苦しめていると以前から指摘されており、かなり遅きに失した感もありますが、今後の展開を見守りたいところです。

(Source:The VergeSouth China Morning PostEngadget日本版より転載)

テスラが規制当局の監視下にある中国でイーロン・マスク氏は同国自動車メーカーを称賛

中国で開催されたWorld New Energy Vehicle Congress(WNEVC)に事前収録で参加したElon Musk(イーロン・マスク)氏は、珍しく原稿どおりのスピーチの中で、中国の自動車メーカーに対して融和的かつ賛辞的なコメントを述べ、米国での発言スタイルとは一線を画した態度を取った。

「中国の多くの自動車メーカーがこのような(EVやAV)技術を牽引していることに大きな敬意を表します」と、後ろの窓にリングライトが映り込んでいる部屋から同氏は語った。もしかしたらクライシスコミュニケーションの専門家がフレームの外にいて、彼に準備した発言を続けるように促しているのではないかと疑ってしまいそうな光景だった。

しかし、おそらくマスク氏に外からの働きかけは必要ないだろう。中国は電気自動車においては世界で最も収益性の高い市場の1つであり、2020年のTesla(テスラ)の売上高全体の約5分の1(66億6000万ドル、約7321億円)を占めている(規制当局への提出書類による)。

米国は引き続きTeslaの最大の市場のひとつだが、同社は2019年に上海ギガファクトリーを開設して「Model 3(モデル3)」と「Model Y(モデルY)」を製造するなど、中国での事業拡大を積極的に進めている。Teslaは、EVスタートアップ企業であるXpengXpeng(シャオペン、小鵬汽車)や、検索大手企業のBaidu(バイドゥ、百度)など、中国の自動車メーカーとの競争に直面している。

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「私の率直な見解は、中国の自動車メーカーは世界で最も競争力があるということです。ソフトウェアを得意とする企業が揃っており、設計から製造、そして特に自律走行まで、自動車産業の未来を最も形作るのはソフトウェアです」とマスク氏はメッセージの中で述べた。

世界で最も人口の多い国のEV市場への参入は最初は波乱含みだったが、Teslaはそれを好転させることに成功した。2020年、Tesla Model 3は中国で最も売れたEVとなった。また、Teslaは中国以外の自動車メーカーで唯一、現地法人の完全所有を認められており、同国では前例のない自治権を得ている。それは、マスク氏が過去に公の場で指摘した事実だ。

2020年のBattery Dayイベントで、マスク氏はこう述べていた。「中国に100%自社工場を持つ唯一の外資系メーカーであることは、非常に注目に値すると思います。このことはあまりよく理解されず、評価もされないことが多いのですが、中国に唯一の100%出資の外資系工場を持つことは本当に大きな意味があり、それが多大な利益をもたらしているのです」。

そうは言っても、すべてがバラ色というわけではない。2021年に入ってからは、消費者と規制当局の両方から否定的な報道が相次ぎ、2月には中国政府当局が車両の安全性に関する懸念から同社の幹部を召喚して会議を開いたこともあった(これに対してテスラは「政府部門の指導を真摯に受け止め、事業運営上の欠点を深く反省している」と述べた)。

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その後、4月に開催された上海モーターショーで、Tesla車のオーナーだという女性が同社に抗議する事件が起きた。Bloombergはその数ヵ月後、Teslaがさまざまな悪いPRと闘うために、中国のソーシャルメディアのインフルエンサーや自動車業界の出版物と関係を築こうとしていると報じた。

また、マスク氏はこの事前に録画された挨拶の中で、自動運転車とデータセキュリティに関する質問に答え、それは「一企業の責任だけでなく、業界全体の発展の礎となるもの」だと述べた。この問題は、中国軍がその施設にTesla車を駐車することをドライバーに禁止したというニュースが出た後、特にセンシティブな話題となっている。Tech Wire Asiaが報じたところによると、中国は8月、コネクテッドカーにおけるデータセキュリティの強化を目的とした新しい規制を発表した。Teslaをはじめ、Ford(フォード)やBMWなどの自動車メーカーは、中国国内に現地データストレージセンターを設立する動きを見せた。

「Teslaは、インテリジェントなコネクテッドカーのデータセキュリティを確保するために、すべての国の国家当局と協力していきます」と同氏は付け加えた。

画像クレジット:JayInShanghai

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

中国の検索エンジン大手Baiduが上海でApollo Goロボタクシーのテストを開始

中国の検索エンジン大手Baidu(バイドゥ、百度)は、上海でApollo Go(アポロ・ゴー)ロボタクシーモバイルプラットフォームの公的なテストを開始し、中国における勢力の継続的な拡大を続ける。

Baiduは、そのロボタクシーがレベル4の能力を達成したと述べているが、地域の規制に準拠するために、現地時間9月12日の時点で一般公開されたすべての運行に人間の安全オペレーターが同乗する。米国自動車技術者協会(SAE)は、レベル4の自動運転車の定義を、ほとんどの場合人間の相互作用を必要とせず、限られた地域だけで運用することができるものとしている。Waymo(ウェイモ)、Cruise(クルーズ)、Motional(モーショナル)、Pony.AI(ポニーAI)、Yandex(ヤンデックス)などの企業はすべて、レベル4の自律性を備えた車両の頭脳を構築するために、LiDAR(ライダー)、レーダー、カメラ、GPSの同様の組み合わせを使用している。

上海で展開する車両群は、中国第一汽车(FAW)によって生産されるBaiduの第4世代自動運転車「紅旗EV」で編成される。同社は最初に稼働する車両の数を明らかにしなかったが、Baiduの広報担当者はTechCrunchに対して、目標は上海で約200台の車両を展開することだと語った。Baiduによれば、30の都市で約500台の自動運転車をテストまたは公に運用しているという。

Baiduはカリフォルニアで無人運転技術をテストする認可を得ているが、まだカリフォルニアでは何のサービスも展開しておらず、代わりにそのリソースのほとんどを中国でのスケールアップに振り向けている。同社の広報担当者によれば、中国でのロボタクシーサービスの需要が大幅に増大しているために、Baiduはテクノロジーの改善、多数の車両の製造、優れたユーザーエクスペリエンスの確保に注力しているのだ。上海は長沙、滄州、北京、広州にならび、Apollo Go ロボットタクシーサービスが一般に公開される5番目の都市だ。

ほんの数週間前に、Baiduは北京の通州区にApollo Goサービスを拡大した。通州区は、北京の東の玄関口と見なされており、31マイル(約49.9km)以上にわたって22の新しい駅が追加されている。2021年4月には、同社は北京の首鋼公園で10台の完全自動運転ロボタクシーを運行した。首鋼公園は1.2平方マイル(3.11平方km)のエリアであり、今回中国で最初の商業化されたロボタクシー運用の試験場となった。これらのクルマのハンドルの後ろには人間の安全オペレーターは座っておらず、乗客に安心感を与えるために同乗しているのは助手席の安全スタッフだけだ。1回の乗車料金は30元(約512.5円)で、18〜60歳の乗客が利用できる。サービスはまだ試験段階にあるため、上海を含む他のすべての場所では、乗車は無料だ。

上海の乗客は、Apollo Goアプリを使用して、午前9時30分から午後11時までの間にロボタクシーを呼んで、上海大学、上海インターナショナルサーキットや多くの観光アトラクションが集まる江京地区の150の駅の1つで乗降することができる。

上海はまた、自動運転車のための運用、テスト、研究開発施設が置かれたBaiduのApollo Park(アポロパーク)のある場所だ。1万平方メートルのスペースは、Baiduが市内に持ち込むことを計画する200台の自動運転車が収容される、中国東部で最大の自動運転車両群のサイトとなる。

Baiduの長期的計画は、中国の30の都市に今後2〜3年で3000台の自動運転車を展開することだ。同社は2013年から自動運転技術の研究開発に投資しており、2017年からApolloプロジェクトを推進していることを考えると、Baiduはまさにそれを実行する準備ができているのだろう。6月、BaiduとBAIC Group(北汽集団)は、Apollo Moon(アポロ・ムーン)の計画を発表した。Apollo Moonは、1台あたりの製造価格が48万元(約819万円)で大量生産される設定になっている。さまざまなことを考慮するとこれは本当に安いといえるだろう。Baiduは、成長する車両群に追加を行うために、今後2、3年のうちに1000台のApollo Moobと、まだ発表されていないさまざまなモデルも生産すると述べている。

インフラストラクチャは、ApolloGoを拡張するというBaiduの目標の中の、大きな部分を占めている。Baiduの広報担当者は、同社は中国の主要都市のたくさんの交差点での、5Gを利用したV2X(車対何か)インフラストラクチャの構築にも投資していると語った。Baiduは、交通渋滞を軽減するために道路情報を自動運転システム転送できるエッジコンピューティングシステムを、カメラやLiDARなどのセンサーと組み合わせてすでにインストールしている。同社によれば、長期的には、スマートインフラストラクチャは、自動運転車のパフォーマンスを向上させ、車載センサーとコンピューティングパワーに必要な莫大なコストの一部を相殺するのに役立つという。

Baiduは、現在ロボタクシーはレベル4の自律性を実現するために車載機能に依存しているものの、大規模な展開を行うためにはV2Xが鍵だと考えている。

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クラウド市場の成長を脅かす中国によるテック巨人への弾圧、BATHの中での位置づけは
画像クレジット:Baidu

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

クラウド市場の成長を脅かす中国によるテック巨人への弾圧、BATHの中での位置づけは

中国のテック企業が国内の規制当局の監視下に置かれる中、投資家や中国の4大クラウド企業であるBATH(Baidu AI、Alibaba Cloud[アリババクラウド、阿里雲]、Tencent Cloud[テンセントクラウド]、Huawei Cloud[ファーウェイ・クラウド])を含む国内のハイテク企業の間で、懸念やプレッシャーが高まっているとアナリストが報告している。

一連の独占禁止法やインターネット関連規制の取り締まりにもかかわらず、大手クラウド企業4社は着実に成長している。現在の精査は特にクラウド分野に集中しているわけではなく、デジタルトランスフォーメーション、人工知能、スマートインダストリーへの需要が堅調に推移していることから、中国のクラウドインフラ市場規模は、2021年第2四半期に前年比54%増の66億ドル(約7261億円)となった。

それでもなお、Baidu(バイドゥ、百度)、Alibaba(アリババ)、Tencent(テンセント)の3社の株価はこの半年間で18%から30%下落しており、投資家は中国のテック企業に賭けることに慎重になる可能性がある。

「中国のテック企業は、有利な欧米市場へのアクセスが妨げられていたときには特に、常に国内市場に頼ることができました。しかし、過去9カ月間に国内の規制圧力が高まったことで、過去数年間にクラウド事業を大きく成長させてきた企業にとっては、苛立たしい逆風となっています」とCanalysのバイスプレジデント、Alex Smith(アレックス・スミス)氏は語る。

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中国のクラウド市場では、4大クラウド企業がクラウド支出総額の80%を占め、圧倒的な強さを誇っている。Alibaba Cloudは、2021年の第2四半期に33.8%の市場シェアを獲得し、トップランナーの地位を維持している。同じ第2四半期に中国の市場規模の19.3%を占めていたHuaweiは、これまで規制措置を回避してきた存在だ。

CanalysのチーフアナリストであるMatthew Ball(マシュー・ボール)氏はこう語る。「Huaweiはたまたま強力なクラウドビジネスも展開している、インフラとデバイスの会社です。クラウドインフラに関しては、BATだけでなく、BATH企業に注目しています。Huaweiは、特に同社が政府との良好で長期的な関係を持つ公共セクターにおいて、成長を促進するのに強い立場にあります」。

中国の規制当局が自国のテック企業への監視を強化する一方で、弾圧は中国の市場や同国に拠点を置く企業の株式に大打撃を与えている。

中国では、国家安全保障に関わる重要データの保護を目的としたデータセキュリティ法が6月に成立し、9月上旬から施行されている。また、8月下旬には、ByteDance(バイトダンス)、Alibaba Group(アリババグループ)、Tencent、DiDi(ディディ、滴滴出行)などを対象としたアルゴリズム企業の規制に関するガイドライン案が発表された。

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【中国】Tencentが年齢制限を回避するサイトに対抗策

画像クレジット:Alex Tai / SOPA Images / LightRocket / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

【中国】Tencentが年齢制限を回避するサイトに対抗策

TechCrunchチャイナ・ラウンドアップへようこそ&おかえりなさい。今週も中国テック業界の近況と世界の人々に与える影響ついてお送りする。

中国政府による新たなゲーム規制の執行はイタチごっこの様相を見せている。同国のインターネット巨人と若きプレイヤーたちは常に相手を出し抜こうと伺っている。Didi(ディディ、滴滴出行)アプリが禁止された後、中小ライドシェアリング・アプリ各社は市場の真空地帯を狙っている。

Tencentと若きゲーマーたち

中国のことわざ「ポリシーのあるところに対抗策あり」は、この国のビデオゲーム環境の規制強化で今起きていることをうまく言い表している。2021年9月、中国は低年齢ユーザーのゲーム時間に関して過去に類を見ない最も厳格なルールを制定した。18歳未満のプレイヤーたちは騒然となり、週3時間の割当てを打開する方法を必死に探し始めた。

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数日のうちに、ゲーミングの巨人、Tencent(テンセント、騰訊)は、一連の回避策を一掃する行動を起こした。同社は未成年プレイヤーへの成人アカウントの販売あるいは取引を行う20以上のオンライン・サービスに対して訴訟あるいは声明を発行したことを、今週同社のゲーミング部門がWeibo(微博)に関する発表の中で語った

子どもたちはそのアカウントを2時間当たり数ドルで借りることで通常の年齢確認を行わずにゲームをプレイできる。この手のサービスは「実名ゲーミング・システムと未成年保護の仕組みにとって深刻な脅威」であるとTencentは語り、一連の慣行を中止するよう要請した。

教育的ゲーム

中国政府は中毒を誘発するゲームや、未成年者にとって「身体的および精神的に有害」と考えられるゲームを主な標的としている。しかし「子どもたちにとって良い」ゲームはどうなのか?

TencentとRoblox(ロブロックス)が2019年に中国でジョイントベンチャーを設立した時世間は、クリエイターに焦点を絞ったゲーミングプラットフォームがTencentが教育ゲームを制作して創造性をかきたてたり、テクノロジーをもっと社会を良くするために使うように、という政府の要請との整合性を高める後押しになるだろうと推測した。TechCrunchは以下のように報じている。

Robloxの「創造性」の奨励に焦点を当てたマーケティングは、テック企業は「良いことを行うべし」というTencentが応じた中国政府の要請と調和していると考えられる。Robloxの中国語ウェブサイトは、同社のビジネスには学習とSTEMツールがあり、地域の学校と教育者との協調も計画していると謳っている。

もしRobloxが、若き中国人たちに世界的な人気ゲームをデザインするよう喚起することができるなら、中国当局は同社を中国文化とソフトパワーの輸出ルートとみなすようになるかもしれない。ゲーミング業界は、政府の関心と一致することが国の支援を受けるために必要であることを十分認識している。実際、ゲーム業界を始めとする非政治的団体による政治的、社会的な重要問題に関する提案を支援をするための組織である中国人民政治協商会議のあるメンバーは、ビデオゲームは中国文化輸出の有効な手段であると6月に語った。

Robloxのこの事例は、ゲームの教育および輸出目的利用に対する中国政府の姿勢の変化を見る興味深い題材だ。

Didiへの挑戦

Didiには数年来多くのライバルがいるが、中国ライドシェアリング業界における同社の支配を脅かすものは現れていない。しかし最近、一部のライバルたちは、当局がサイバーセキュリティの懸念からDidiアプリの新規ダウンロードを禁止した後、新たなチャンスを見出そうとしている。Cao Cao Mobility(曹操出行)はその1つだ。

Cao Caoは中国の自動車メーカー、Geely(吉利汽車)傘下の高級ライドシェアリングサービスで、今週5億8900万ドル(約647億6000万円)のシリーズB調達ラウンドを発表した。このラウンドは、Cao Caoがドライバーと乗客の支持を得るための武器を与えるはずだ。しかし、政府による反競争取締りが強化される中、昨今のインターネットプラットフォームは、2015年頃のDidiほど資本注入による成長フェーズに熱心ではないかもしれない。

アプリの禁止がDidiに与えた影響は今のところ限定的だ。むしろアプリによる注文は7月に13%増加したことを運輸局のデータが示している。新たにスマートフォンを手に入れた人はDidiをダウンロードできないが、それでもWeChatで動くミニアプリを使うことができる。WeChatは中国で広く普及しておりサードパーティーアプリのエコシステムを広げている。Didiがアクティブユーザーを何人失ったのかはわかっていないが、同社のライバルが巨人のドライバーと乗客を誘う多額のインセンティブを払うわなくてはならないことは間違いない。

DTCファストファッション

ベンチャーキャピタリストたちは中国のDTC(消費者直接販売)ブランドに資金を注入しており、この国のサプライチェーンの優位性と抜け目ないマーケター集団が欧米消費者を取り込むことに期待している。7月に、ベビー服ブランドのPatPat(パットパット)は5億1000万ドル(約560億7000万円)の大型調達を完了した。2021年9月、Z世代ファストファッションを中国で生産して米国で販売している新進気鋭のDTCブランド、Cider(サイダー)が、シリーズBラウンドで1億3000万ドル(約142億9000万円)を調達し、企業価値は10億ドル(約1099億5000万円)以上だったというニュースがやってきた。中国のテックニュースサイトである36Krが最初に報じ、TechCrunchも独自に確認した。

DST GlobalがCiderの最新ラウンドをリードし、既存の出資者であるA16Z(アンドリーセン・ホロウィッツ)とGreenoaks Capital(グリーンオークス・キャピタル)も参加した。投資家たちはShein(シェイン)の世界中での勢いにはっきり勇気づけられている。同社の新規ダウンロード数は数十の国々でAmazonを超え、業界の巨人Zara(ザラ)と比較されることも多い。純粋なインターネット企業と異なり、輸出志向のEコマースには、デザインから、製造、マーケティング、出荷からアフターサービスまで長くて複雑なバリューチェーン(価値連鎖)があることで知られている。Sheinの物語は多くのフォロワーを元気づけるだろうが、簡単には真似できない。

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画像クレジット:Visual China Group / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国政府が新作オンラインゲームの認可を8月から一切停止中、未成年ゲーマー関連規制の成功のため

中国政府が新作オンラインゲームへの認可を8月から一切停止中、未成年ゲーマー関連規制の成功のため

Reuters/Kim Kyung-Hoon

中国では18才未満が週に3時間以上ゲームをプレイするのを禁じられたばかりですが、それに続いてApp Storeを含むオンラインゲームの新作リリースが1本も許可されなくなっていると報じられています。

香港メディアThe South China Morning Post(SCMP)によると、中国規制当局はテンセントやネットイースといった大手ゲーム開発企業との会議を行い、そこで新作ゲームのライセンス発行を停止する決定を下したとのことです。その会議には出席していないが説明を受けた関係者が「すべてが保留になっている」と述べています。

別の関係者によると、この発行停止は「しばらくの間」続くとのこと。規制当局は、2021年前半にライセンス発行を「少し積極的に行いすぎた」と考えているそうです。その目的は「新作ゲームの本数を削減する」ことにあり、それにより中国政府の「ゲームの追加を減らす」意図を助けるつもりだと伝えられています。

この会議に参加していた別の関係者は、「発行を凍結する」と具体的に決められたわけではないとも語っています。むしろ、ゲーム依存症を減らす計画を「円滑かつ成功裏に展開する」ために、認可プロセスを遅らせると議論されたとのこと。つまり、今後は新作のリリースを一切認めないわけではなく、ペースに歯止めを掛けることが狙いと示唆されている模様です。

この会議は水曜日(9月8日)に行われたと報じられてはいますが、SCMPは今年8月にはライセンスが承認されなかったとも伝えています。新作ゲームに対する締め付けは、もっと早くから始まっていた可能性があるわけです。

中国が新作ゲームのライセンス発行を停止したことは、今回が初めてではありません。まず2018年3月~12月にかけて停止され、中国ゲーム市場の成長が大幅に鈍化したこともありました。

もともと中国では2016年以降、有料またはアプリ内購入を提供しているゲームはすべて事前に規制当局に提出し、公開前にライセンスの取得が義務づけられています。それがアップルのApp Storeでは数年にわたってお目こぼしされていましたが、2020年には厳密に実施されるようになりました

中国でのライセンス取得の義務化は、これまでもApp Storeの収益に大きな影響を与えてきました。ティム・クックCEOとルカ・マエストリCFO(最高財務責任者)は、2018年のライセンス発行停止の際に、App Storeにとって財務上の逆風の原因になっていると述べていたことがあります。

すでに中国は世界最大のゲーム市場となっており、App Storeにおいてもゲームの収益は66%を占め、iOS用ゲームで最も稼いでいるのは中国企業テンセントの『王者栄耀』という調査結果もあります。今回のライセンス発行“保留”は、アップルにとって大きな痛手となるのかもしれません。

(Source:The South China Morning Post。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

中国WeRideが同社初の自動走行の電動貨物バンを発表、運送会社と提携も

中国の自動運転会社WeRide(ウィーライド)が同社初の貨物バンを発表した。この車両は都市ロジスティクス業界に自動運転を持ち込むものだ。同社は、初の自動運転バンを大規模に商業展開するために中国の自動車メーカーJiangling Motors (江鈴汽車、JMC)、速配会社ZTO Express(ZTOエキスプレス)と協業する。

9月8日に開かれた「The Next」というWeRideのオンライン記者会見で、WeRideの創業者でCEOのTony Han(トニー・ハン)氏、JMCの代表取締役副社長Wenhui Jin(ウェンフイ・ジン)氏、ZTOの副社長Renqun Jin(レンクン・ジン)氏が業務提携に署名した。取引の一環として、WeRideとJMCは、JMCの組立ラインで大量生産するRobovan専用モデルを共同でデザインする。そしてZTOの声明文によると、同社はRobovanを自社の都市ロジスティクスサービスで活用する。WeRideの広報担当は、Robovanが非常に充実している車両プラットフォームを備えるJMCのバッテリー電動車両モデルをベースにし、WeRideのフルスタックソフトウェア、ハードウェア自動運転ソリューションと組み合わせる、とTechCrunchに語った。

WeRideは2020年に商業展開に向けて現金をかき集めた。5カ月の間隔を空けてシリーズBとシリーズCラウンドで6億ドル(約658億円)を調達し、現在のバリュエーションは33億ドル(約3618億円)だ。6月に同社は広州拠点の自動運転トラック会社であるMoonX.AIを買収したが、同分野における商業プロダクトの開発にはまだ取り組んでいない。いずれにしても、配車サービスや自動運転バス、都市ロジスティクスの展開、そして自動運転トラックのほんの少しの準備は、WeRideの自動運転ポートフォリオを多様化する動きが競争で優位性を確保していることを意味する。

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中国の検索エンジンBaiduの自動運転部門は2021年4月時点では主にロボタクシーとバスに注力している。Pony.AI はロボタクシーに加え、少なくともラストマイルロジスティクスを試験し、このほど中国でトラックのテストも許可されたばかりだが、これまでのところバスは対象としていない。Waymo Viaはラストマイルとトラックは対象としておらず自動運転タクシーが同社の看板だが、自動運転バスについては何も情報を出していない。GMが出資するCruiseは小型車両に注力しているようで、同社が展開している車両サービスにはライドシェア配達がある。

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WeRideのバンはすでにレベル4の自動運転能力を持つ、と同社はいう。レベル4車両はハンドル操作ができ、大半の場合において人間の介入を必要としてないが、人間がマニュアルで操作する選択肢を持っている車、と米自動車技術者協会は定義している。レベル4車両は限定的な環境で走行でき、だからこそ直近ではライドシェアで使われている。しかし配達車両もおそらく同様にジオフェンス内で自動走行できる。

WeRideはすでに一般向けのRobotaxiサービスのテストを2年展開しており、Robovanが都心からトンネル、高速に至るまでZTOのネットワーク内のさまざまな交通状況に対応することができると確信している、と話す。ZTOによると、同社のネットワークは中国の都市・郡の99%超をカバーしている。

WeRideの広報担当は、Robovanがすでに生産され、人知れず中国内でしばらくの間テストされてきた、と話す。いつWeRideとJMCが大量生産を始めるのか、詳細なタイムラインを発表するのは時期尚早だが、WeRideの次のステップは車両とシステムの安定性を立証するパイロット試験を行う場所を1〜3カ所選ぶことになる、と広報担当は語った。

「そのすぐ後に当社はいくつかのエリアで真のドライバーレスを目指し、都市ロジスティクスへの応用でRobovans運用のノウハウを構築します」とTechCrunchに述べた。「RobovanとRobotaxiがどちらも都市部で展開されていることを考えると、RobovanにはRobotaxiと同じような規制が適用されます。中国の規制は、自動運転テクノロジーの開発に追いつくために一歩ずつ進化しています。3〜5年以内に真のドライバーレスRobovanの応用を目にするでしょう」。

画像クレジット:WeRide

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国Geelyの配車サービスCao Caoが事業拡大へ約650億円調達、ライバルDidiはトラブルまっただ中

中国の自動車メーカーGeely Automobile Holdings(浙江吉利控股集団)の配車部門であるCao Cao Mobilityは38億人民元(約650億円)のシリーズBラウンドを発表した。同社が出した声明文(中国語)によると、調達した資金はテクノロジーのアップグレードと車両の拡充に使う。

現地時間9月6日に発表した新たな資金調達により、Cao Caoの累計調達額は約50億人民元(約850億円)になった。蘇州市相城区が出資する投資会社Suzhou Xiangcheng Financial Holding GroupがシリーズBラウンドをリードし、Suzhou High-Speed Rail New City Group、その他国営企業3社も参加した。

今回の資金調達はCao Caoの最大のライバルであるDidi Globalがトラブルのまっただ中にある中でのものだ。中国の配車アプリDidi Globalは現在、中国政府によるサイバーセキュリティ調査を受けている。そして、一時的に中国のアプリストアから削除されていて、これは同社の株価の急落を引き起こした。Didiは中国で定番の配車サービスであり、同社の挫折は同業他社がその穴を埋める乗っ取りを生み出す。

現在、国内62都市で利用可能なCao Caoの2021年7月の乗車は32%増えた。同月、Didiは中国のアプリストアから排除された。運輸省によると、eコマース大企業Meituanの乗車も7月に24%増えた。しかし、MeituanとAlibabaの配車・ナビゲーション部門のAmapはDidi同様、中国政府に「公正な競争を歪め、ドライバーと乗客に不利益をもたらしている」と非難されているとBloombergは報じている。

配車サービス業界の他のすべての事業者も政府の調査に苦慮しており、Cao Caoは公正に事業を行う限り、さらに成長してマーケットシェアを広げられる立場にある。

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画像クレジット:Cao Cao Mobility

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

【レビュー】Booxタブレットは拡大する電子書籍リーダー市場で歓迎される選択肢

電子ペーパーデバイスに関して言えば、Kindleはもちろん人々が最初に思い浮かべるブランドだが、筆者はKoboやreMarkableのゴスペルも広めるよう全力を尽くしてきた。中国の電子書籍端末メーカーBooxは、この分野への比較的新しい参入者であり、そのデバイスは実験的だが、モノクロタブレットというニッチ市場では有用な選択肢だ。実際、筆者のお気に入りの小型デバイスが作られている。

関連記事:あらゆる面で初代を上回りニッチを貫くE Inkタブレット「reMarkable 2」

親会社のOnyxのブランドであるBooxは、ポケットサイズから中型サイズの電子書籍リーダー、A4サイズのタブレットまで、あまりにも幅が広すぎるという人もいるかもしれないが、さまざまなデバイスを提供している。そのブランディングは特に記憶に残るものではなく、わずかにアップデートされたバージョンがかなり定期的に出てくる。筆者が試してみたいと思っていたデバイスが、実際にはこの記事を執筆するまでの間に置き換わっていた。

統合された側面はOSで、Android 10の修正版であり、読み込みと生産性のための専用アプリがいくつか搭載されている。中国の消費者を念頭に置いて作られたこのサービスは、おそらくTechCrunch読者の方でも聞いたことのないものになるだろう。

Booxのいくつかのデバイスを試したが、最もシンプルなのは電子書籍リーダーPoke 3、より大きく複雑なNote 2、そしてスリムなNote Airと巨大なMax Lumiという具合だ。最近筆者は、eインクの最新カラースクリーンKaleido Plusを採用したNova 3 Colorに注目している。

実際には、電源を入れていないと、おそらくこれらのデバイスがすべて同じ会社のものであることはわからないだろう。ハードウェアスタイルはかなり異なるが、もちろん、グレーがかった色味でスクリーンを囲んでいる黒いタブレットには、表現の余地があまりない。

小さいながら大物

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

最もシンプルでなじみのある6インチの電子書籍リーダーから始めよう。このカテゴリーにはKindle PaperwhiteとKobo Clara HDがあり、前者はおそらくAmazonが作っている最高の製品だが、筆者は正直なところ、品質は劣るものの後者の方が好みだ。

この分野でBooxは、(数ある中で)取り立ててキャッチーな名前というほどではないPoke 3を持っているが、フォームファクターでそれを補っている。このような小さなリーダーにとってはかなりプラトン的に理想的だ。とても気に入ったので別のレビューにまとめているが、基本的なことをここで紹介しよう。

6インチ、300ppiのスクリーンはKindleやKoboと同等の品質で、Clara HDと同様にフロントライトの色温度調節が可能だ。デバイスの前面は完全に平らになっており、筆者の好みにぴったり合っている。ベゼルの幅も広すぎず狭すぎず、持ちやすい。ポケットに入れて持ち運べるシームレスなデザインで、粉粒や水こぼれにも強い(耐水性は主張していない)。上部に電源ボタン(ありがとう)、下部にUSB-Cポートが1つある。

ハードウェアに関しては、まったく批判はない。それはもっと薄くなるかもしれないが、その寸法は、人間工学に悪影響を与えることなしにこれより小さくすることはできなかったのだと思う。その厚さを1ミリ削ることも考えられるが、そうしてもほとんど気づかないだろう。

OSはAndroidの高度にカスタマイズされたバージョンで、付属するすべての長所と短所が備わっている。筆者はKoboのインターフェースのシンプルさの恩恵を常に享受してきたが、それを複雑にしようとしているかのようだ。BooxのOSはパワフルだが、入り組み過ぎていて、どのオプションを利用可能にし、ユーザーにとってわかりやすくするかを決めるのが難しい。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

リーダーアプリのNeoReaderは、膨大なファイルフォーマットをサポートしており、ビューの変更、ブックやPDFのハイライトやメモなどを行うための巨大なコントロールセットを備えている。これは、フォントの調整やその他の基本的なことしか必要としない小型のデバイスよりも、大型のデバイスに適している。

すでに自分のコンピューター上に置かれている電子書籍を読むだけなら、デバイスのストレージ上の「Books」フォルダにドラッグするだけで済む。このタブはデバイスの電源を入れると表示され、いつでも簡単にアクセスできる。米国では利用できないが、すべてのタブに対応したビルトインストアがあり、ディレクトリを検索するためのファイルマネージャータブと、アプリと設定のためのタブがある。

アプリは別のカスタム状況だ。これは中国のデバイスであり、最近では何と呼ばれているかはともかく、一般的なGoogle認証のあるアプリストアはない。その代わり、PocketやGoodReader、KoboやKindleアプリなど、最も利用されている多数のリーディングアプリを独自のストアで提供している。しかし、これらは本質的にサイドロードされている。例えば、Kindleアプリは数カ月古い。これは決して大問題というわけではないが、このデバイスをそのまま使うには、Booxとそのプロキシアプリストアにある程度の信頼を置く必要がある。

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もちろん、設定でGoogle Playサービスを有効にすることもでき、そこに公式ストアが追加される。しかしほとんどの人にとって、これはすでに過度の作業だ。私たちは電子書籍リーダーの選択において、一般的にシンプルで極めて簡単に使える、という点で甘やかされていると同時に恵まれていない。Androidに詳しくない人は、このデバイスを使ってKoboやKindle、おそらく後者の中から読むものを選ぶだろう。

それでも思い切った行動を取ることを望む人々にとっては可能性が豊富にある。筆者としては、Poke 3のフォームファクターが非常に気に入っているので、どのOSを使っても構わない。それに、普通は時間の99%が本の中のことに費やされるだろうから、その部分がうまく機能すれば、残りは単にケーキの上にアイシングするようなものである。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

6インチのスケールでは、それはあまりにも多すぎるように思える。ただしBooxの大型デバイスでは、柔軟性はより意味を持ち始める。Note 2(現在は3)、Note Air、Max Lumiのアイデアは、Androidタブレットのほぼすべての機能を、電子ペーパースクリーンの利点とともに提供することだ。そのため、レーシングゲームをするのは簡単ではないが、iPadよりもreMarkableを使っている人にとっては魅力的だろう。

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多くの文書を読む場合、明るいタブレットスクリーンで読むのは、あるいはもっと言えば暗いスクリーンで読むのはいただけない。電子ペーパーのスクリーンの方が作業には適しているが、それに向けた最良のデバイスであるreMarkableは、会社の哲学全体がフォーカスを中心に回っていることから、達成できることが極めて意図的に制限されている。そのため、電子ペーパーのように読みやすいAndroid端末の機能を求める人がいるのは間違いない。いずれにせよ、Booxはそう考えている。

Note 2とMax Lumiは関連しているように見える。印象的な大きさの目立たない黒いタブレットであり、筆者の限られたハードウェアの探求の中では優れた品質だと思われた。Note Airは特筆すべきものではないと言わざるを得ず、実際にそれを見たとき、reMarkable 2のクローンだと思ってしまった。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

その第一印象は、筆者にとってあまり寛容なものではなかった。この2つはいくつかの重要なデザイン要素を共有しているが、実際にはかなり異なっており、Boox自身の他のデバイスを作る能力が疑わしい点を好意的に解釈するように導いてくれた。青とオレンジのモチーフは秀逸というほどではないが、他のデバイスとの違いを際立たせるのに効果的で、すべてのデバイス(特にAir)は薄くてよくデザインされている。

すべてのタブレットにはフロントライトが搭載されており、このような大きなスクリーンで実現できるかどうかについて懐疑的な見方をしていたが、それは不要なことだった。Poke 3と同様、ライトは明るさと色温度の両方を調節できる(少々微妙ではあるが)。

カラー電子ペーパーは依然として十分とはいえない

画像クレジット:Devin Coldewey

Nova 3 Colorは、eインクの最新カラー電子ペーパー技術を採用した7.8インチスクリーンを搭載している。筆者は常にこの技術の可能性に期待してきたが、カラー電子ペーパースクリーンのコントラストの悪さ、リフレッシュ速度の低さ、ゴーストなどの欠点に悩まされてきた。今回の最新版は、修正に向けてある程度の動きを見せているが(ソフトウェアのアップデートもそれを後押ししている)、残念ながら妥協点は多すぎる。

ハードウェアは他のBooxデバイスと似ており、しっかりしていて控えめだ。違いはすべてスクリーンにあり、デバイスがオフのときでもカラーで表示されている。カラー電子ペーパーは、画像を形成する微小な白黒のビーズと、変更可能なカラーフィルターの層を組み合わせることで機能する。これは他のものと同様にフロントライトが付いていて、色をポップにするのに大いに役立つ。

まだゴーストの問題は残っているが、例えばコミックを読んでいるときは、すべてのページをリフレッシュするように設定することで(ほんの数秒しかかからない)問題は解消される。ウェブページのような動的なコンテンツを使ってこれを行うのは容易なことではないが、もちろん電子リーダー上でウェブをナビゲートすることはすでに目新しいものだ。

カラー電子ペーパーは、コントラストとは言わないまでも彩度が不足している(画像クレジット:Devin Coldewey)

さらに気になるのは、カラーレイヤーがもたらすコントラストの低下と解像度の顕著な低下である。カラーコンテンツを表示すると、通常のLCDエイリアシングとは異なるが、依然として視認可能な明確なスクリーンドア効果が現れる。グレースケールのコンテンツでは、モアレなどの干渉パターンが中間調になることがある。

ブックは問題ないように見えるが、普通のモノクロeインクディスプレイほど鮮明ではないスクリーンドア効果が常に存在し、コントラストが低下している。それでもかなり読みやすいが、安価なデバイスの方がうまく機能するなら、これを正当化するのは難しい。

カラースクリーンのテキストは、モノクロスクリーンのテキストよりも鮮明さとコントラストが低い(画像クレジット:Devin Coldewey)

Booxがeインクの最新スクリーンを提供してくれたことには感謝しているし、電子書籍リーダーにもう少しタブレットのDNAを入れたい人には有益かもしれない(現時点では2つのカテゴリーはあまり区別されていない)。しかし、カラーはほとんどの場合、十分に加算されず、過度に減算されてしまう。

それですべてか、それとも薄く引き伸ばしすぎか

OSは筆者の知る限り、これらすべてで同じだが、これらのデバイスでは単に読むだけでなくインタラクティブ性に焦点が移っている。BooxはWacomのようなペンを作っていて、それを使って大きなタブレットの表面に文字を書くことができるが、reMarkableのような応答性や精度には遠く及ばない。

とはいえ、スケッチやライティングの最終的な仕上がりは満足のいくものだった。ただしOSが追いついてその文字にアンチエイリアスを施すまでには少し時間がかかるだろう。特にブラシについてはグラデーションに優れていると感じた。

Booxタブレットが他の同種のタブレット(つまりreMarkable、旧Sony Digital Paper Tabletおよびその他いくつかのニッチなデバイス)の上に持っているものの1つは、PDF処理に関するものだ。Booxデバイスでは、PDFを簡単にナビゲートしてマークアップすることができ、元のファイルは単に落書きやメモが追加されたような状態で保存される。reMarkableで書類をマークアップするのは簡単だが、やや使いにくいアプリのために共有やソートが少々面倒になっている。筆者は、元のファイル(常にどこかにコピーがある)を修正して、デバイスから直接メールするというシンプルなアプローチを好む。Booxデバイスはまさにそのようなシンプルさだ。

リーダーやノートブックの他にも、タブレットユーザーにとって便利なアプリがいくつか含まれている。期待通りの機能を備えたブラウザがある。Chromiumベースで、レンダリングは良好だが、ゴーストはひどい。そしてボイスレコーダー、ミュージックプレイヤー、カレンダーなど、もちろんGoogleアプリストアやビルトインストアからもダウンロードできるものも他にたくさんある。もし望むのであれば、こうしたとても包括的なデバイスを作ることもできる。

この種の電子ペーパータブレットの市場がどれだけ大きいのか、筆者にはよくわからない。しかし、これらのデバイスは何か興味深くてユニークなものを提供していると感じている、とはいえ、iPadが大型のBooxタブレットの半分の価格で手に入り、ほとんど同じことができる、という事実を回避するのは難しいだろうと思うが。

ただし、これらの電子ペーパーデバイスにはそれなりの魅力があり、長い文書を読んだり、校正したりするつもりなら、いくつかの理由からiPadよりもこれらのデバイスの方が優れている。Booxのラインナップにはこれまで以上に多くの選択肢が用意されており、それは間違いなく良いことである。

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画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

【中国】政府はテック巨人にもっと社会的責任を負わせたい

TechCrunchチャイナ・ラウンドアップへようこそ&おかえりなさい。中国テック業界の近況と、それが世界の人々に与える影響ついてまとめてみた。

先週、中国ゲーム業界は再び政府の標的となり、未成年プレイヤーに対する世界で最も厳格と思われるルールが施行された。また、中国のテック巨人たちは、社会的責任を取り、束縛のない拡大にブレーキをかけるようにという政府の要請に急いで答えている。

ゲーム制限令

中国政府はこの国の若きゲーマーたちに爆弾を落とした。現地時間9月1日以降、18歳未満のユーザーはゲーム時間が1日当たりのわずか1時間、金曜、土曜、日曜日の午後8時~9時のみに制限される。

この厳格なルールは、未成年に対するすでに締め付けの強いゲームポリシーに輪をかけるもので、政府はビデオゲームが近視の原因であり、精神と肉体両方の健康を害していると信じている。中国が最近、一連の校外学習の制限を発表したことを思い出して欲しい。働く親たちは子どもたちを忙しくさせるのがますます難しくなるというジョークが出回っている。

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新たな規制のいくつかは分析する価値がある。まず、新しいルールを策定したのは国家新聞出版署(NPPA)。同署は中国国内のゲームを承認する規制機関であり、2019年には9カ月間認可を凍結してTencent(テンセント、騰訊)などでゲームの在庫が底をつくことにつながった。

プレイタイムの指針が、ゲームコンテンツの審査と出版ライセンスを発行しているNPPAから出てきたことは興味深い。中国の他の業界と同じく、ビデオゲームは複数の規制機関による承認の対象となっている。NPPAの他、国の最高のインターネット監視機関であるサイバースペース管理局(CAC)、業界標準と通信インフラを司る中華人民共和国工業情報化部がある。

アナリストらは、習近平主席が長を務める中央サイバースペース管理局配下で強大な力を持つCACが、権利を手放したくない他の省庁との官僚的闘争に直面しているところを長年見てきた。これは、裕福なゲーム業界の規制にも当てはまる可能性が高い。

Tencentをはじめとする主要ゲーム会社にとって、新ルールが会社のバランスシートに与える影響は取るに足らない。ニュースが報じられた直後、NetEase(ネットイース)や 37 Games(サーティーセブン・ゲームズ)をはじめとする中国上場ゲーム会社は、未成年プレイヤーは会社売上の1%以下しか寄与していないことをすかさず発表した。

Tencentはこの変更を見越して「中国におけるゲーム売上において16歳未満の占める割合はわずか2.6%、12歳未満はわずか0.3%」であると第2四半期決算で公表している。

こうした数字が現実を反映しているかどうかはわからない。なぜなら子どもたちは、ユーザー登録に大人のIDを使うなどしてゲーム制限を回避する方法を以前から知っているからだ(前の世代が成人の友人からIDを借りてインターネットカフェに潜り込んだのと同様だ)。Tencentや他のゲーム会社は、これらの回避方法を遮断することを約束して、子どもたちにVPNを使って海外版のゲームタイトルを利用するなど高度な技の追求を強いようとしている。いたちごっこは終わらない。

ともに繁栄を

中国はテック巨人の力を削ぎ落とすだけでなく、社会的責任を果たすよう圧力をかけている。ギグワーカーの権利尊重もその1つだ。

先週、中国最高人民法院は「996」と呼ばれる午前9時から午後9時まで週6日働く長時間労働を違法と判断した。この決定は、テック業界のバーンアウト・カルチャーに対する労働者の数年にわたる抗議活動を受けたもので、「996」を実行している企業を列挙するGitHub(ギットハブ)プロジェクトなどが行われてきた。

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一方、勤勉で従順な従業員は、中国テック業界の競争優位性であると言われることも多い。それは、シリコンバレー企業、特に中国をよく知る人々が経営する企業が、この国に支社を設置してテック人材を活用している理由の一部だ。

残業が称賛、許容されていた日々は終わろうとしている。ByteDance(バイトダンス、字節跳動)と同社のショートビデオのライバルであるKuaishou(クアイショウ、快手)は、最近それぞれの週末残業ポリシーを廃止した

同様に、Meituan(メイトゥアン、美団)はフードデリバリー配達員のために強制休憩時間を導入することを発表した。オンデマンドサービスの巨人は、ライダーに過酷な労働時間や危険運転を強要する「非人間的」アルゴリズムで非難を浴びていた。

画期的な試みとして、ライドシェアリングの巨人、Didi(ディディ、滴滴出行)とAlibaba(阿里巴巴集団)のeコマースのライバル、JD.com(ジェイディードットコム、京東集団)は、社員のために労働組合を設置した。ただし、新たな組織が従業員の権利を守るために意味のある影響を持つかどうかは不明だ。

TencentとAlibabaも動いた。8月17日、習近平主席は「共同繁栄」を求める演説を行い、この国の大富豪たちから大きな注目を集めた。

「中国が2度目の100年目標に向かって進むにあたり、人民の幸福は、共同繁栄を促進して党の長期支配の基盤を強化することによって実現すべきです」。

今週TencentとAlibabaの両社は「共同繁栄」を支援するために1000億人民元(155億ドル)を拠出することを宣言した。資金の目的は、地方経済の成長から医療システムの改善まで、中国政府の国家開発目標とよく似ていてうまく連携している。

画像クレジット:Photo by Lintao Zhang/Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国当局が米国在住のウイグル人をハッキングしているとFBIが警告、一般にも捜査協力求める

FBIは、中国政府が直接訪問とデジタル戦略両方の手法を使って、米国在住のウイグル人イスラム教徒を脅迫し、口を封じ、嫌がらせ行為を行っていると警告を発している。

中国政府は、中国の新疆ウイグル自治区に住むウイグル人やその他の主にイスラム教徒の民族に対する扱いについて、長年にわたり人権侵害を指摘されてきた。国連の人権委員会によると、これまで100万人以上のウイグル人が収容所に拘留されており、その他多くのウイグル人が国家に支援されたサイバー攻撃によって標的にされ、ハッキングされているという。中国はこの主張を繰り返し否定している。

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ここ数カ月、中国政府は、米国をはじめとする西側民主主義諸国に拠点を置く海外の政府批判者を封じ込めるための活動をますます積極的に行っている。これらの取り組みが、FBIの目に留まった。

FBIは非機密の公報の中で、中国政府関係者が「transnational repression(トランスナショナルリプレッション、国境を越えた抑圧)」を行っていると警告している。これは、外国政府が国境を越えて、物理的、デジタル的な手段でディアスポラや亡命コミュニティのメンバーを脅したり、口止めすることを指す言葉だ。米国在住のウイグル人をはじめ、チベット人、法輪功修練者、台湾・香港の活動家など、中国人難民や反体制派の人々に中国政府への服従を強要しようとしているという。

「従わなかった場合の脅しとしては、米国在住者の家族や友人の中国国内での拘束、中国国内の資産の差し押さえ、継続的なデジタルおよび対面での嫌がらせ、中国政府による強制送還の試み、コンピュータのハッキングやデジタル攻撃、オンラインID乗っ取りなどが日常的に行われています」とFBIは警告している。

この公報は、ビデオサーベイランスニュースサイト「IPVM」が報じた。

FBIは、米国在住の個人がハラスメントに直面している4つの事例を取り上げた。2021年6月の1件では、中国政府は、米国政府が出資するニュースサービス「Radio Free Asia」で中国とウイグル人への抑圧について報道を続けたことへの報復として、米国在住のウイグル人ジャーナリスト6人の家族数十人を拘禁した。公報によると、2019年から2021年3月にかけて、中国当局はWeChat(ウィーチャット)を使って米国在住のウイグル人に電話したりメールを送り、ウイグル人の虐待について公に議論することを禁じたという。この人物の家族複数人はその後、新疆ウイグル自治区の収容所に拘束された。

「中国政府は、米国政府が2020年、新疆における中国の人権と民主主義の侵害に対抗するため、中国政府関係者を制裁し、公的・外交的なメッセージを増やしたにもかかわらず、このような活動を続けています」とFBIは述べている。「このような国境を越えた抑圧活動は、米国の法律や個人の権利を侵害するものです」とも。

FBIは、米国の法執行機関職員および一般市民に対し、中国政府による嫌がらせの疑いがある事件を報告するよう求めている。

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画像クレジット:Greg Baker / AFP / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

中国政府が子どものオンラインゲームを週末3時間のみに制限、健康懸念で

中国の国家新聞出版広電総局は子どものオンラインゲームに制限を設ける通知を出した。現地時間9月1日からビデオゲーム会社はゲーム時間を金曜、土曜、日曜日の午後8〜9時、週3時間に制限しなければならない。

この新たな規制で中国当局はオンラインゲーム中毒に取り組もうとしている。国家新聞出版広電総局によると、オンラインゲーミングは子どもの肉体的、精神的健康に影響を及ぼしている。

ゲーム時間制限を実施するために、ゲーム会社は実名ベースの登録システムを活用しなければならない。2018年にTencent(テンセント)は人気を博したモバイルゲーム「Honor of Kings」のプレイタイムを制限するためにこのシステムを使い始めた

当時、12歳までの子どものゲームは1日に1時間、13〜18歳は1日に2時間となっていたが、規制はそれほど厳しくなかった。当局は子どもの近視が悪化することを懸念していた。

登録手続きではユーザーはID認証システムを経なければならない。つまり、実名でのアカウント1つだけしか持てない。規制当局はゲーム会社が地方の条例に則っているか定期的にチェックする。

新規制がビデオゲーム全体に今後どのように影響するのか、興味深いところだ。オンラインゲーミングが具体的に言及されていて、これは各ゲームが制限されることはないことを意味するかもしれない。同様に、コンソールゲームと外国のゲームが実名に基づく登録システムを導入しなければならないのかも不明だ。

一部の若いゲーマーは外国のサーバーに申し込むことで規制を回避したいだろう。大人のゲーマーはこれまで通り好きなだけプレイできる点も注目に値する。

今回のニュースを受け、Tencentは声明文を出した。「Tencentは強く賛同し、可能な限り早期に通知の関連要件を満たすようあらゆる努力をします」としている。

Bloomberg(ブルームバーグ)が報じたように、NetEase(ネットイーズ)の株価は8月29日の終値に比べて現在8%下げている。NetEaseも中国の人気のゲーム開発会社で、Tencentほど事業は多角化していない。

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画像クレジット:VCG / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国政府が推奨アルゴリズムの厳格な管理を提案、アリババとテンセントの株価わずかに下落

中国は、世界最大の人口を擁する市場である同国において、地元のインターネットサービスが持つ影響力にさらに歯止めをかけようとしている。ここ数カ月の間に拡大した一連の規制強化に続き、同国は中国時間8月27日、企業がユーザーにレコメンデーションを提示するために実行するアルゴリズムを規制するガイドライン案を発表した。

中国サイバースペース管理局(CAC)は、27日に発表した30項目のガイドライン案の中で、企業が「中毒や大量消費を助長する」アルゴリズムを展開し、国家安全保障を危険にさらしたり、公共秩序を乱したりすることを禁止することを提案している。

習近平国家主席が議長を務める中央指導部に直属するインターネット監視当局のガイドラインによると、サービス各社はビジネス倫理と公平性の原則を遵守しなければならず、そのアルゴリズムが偽のユーザーアカウントの作成やその他の誤った印象を与えるために使用されてはならないとある。同監視局は、新ガイドラインに対する一般からのフィードバックを1カ月間(9月26日まで)受け付けるとしている。

また、このガイドラインでは、アルゴリズムのレコメンデーションを簡単にオフにできる機能をユーザーに提供することを提案している。世論に影響を与えたり、市民を動員する力を持つアルゴリズム提供者は、CACの承認を得る必要がある。

27日の提案は、同国政府が消費者データの扱い方や国内での独占的な立場を理由に、企業を標的とする傾向がますます強まっている中で行われた。

2021年初め、政府が支援する中国消費者協会は、現地のインターネット企業がユーザーを購入やプロモーションに「追い込み」、プライバシー権を蝕んでいると指摘した。

中国政府による最近のデータセキュリティの取り締まりや家庭教師サービスに対する規制強化は、投資家を不安に陥れ、数千億ドル(数十兆円)の損失につながった。

今回のガイドラインは、ByteDance(バイトダンス)、Alibaba Group(アリババグループ)、Tencent(テンセント)、Didi(ディディ、滴滴出行)など、独自アルゴリズムを基盤としてサービスを構築している企業を対象としているようだ。このニュースを受けて、AlibabaとTencentの株価はわずかに下落した。

近年、米国やインドをはじめとする数カ国の政府が、これらの大手テック企業のアルゴリズムがどのように機能しているかをより明確にし、悪用を防ぐためのチェック体制を整えようと試みてきたが、成果はほとんど上がっていない

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)