生まれ変わったSoundCloudは多様なプレイリストで“私が最初に見つけた!”を強調

スタッフの40%をレイオフし、1億6900万ドルの緊急資金を確保したSoundCloudが最初に押すプロダクトは、待ちに待たれた正しい方向への第一歩だ。まずホームページにあるのは、フィードのような一般的なコンテンツではなく、個人化されたプレイリストと、上位ジャンルのベストコレクションだ。その願いは、SoundCloudを新しいユーザーにとっても気軽にアクセスできるようにすることと、前からのファンには新曲を発見できる確度の高い場所にすることだ。

ぼくが最近書いたSoundCloudの詳細な戦略論では、インディーミュージックや、法的にはグレーゾーンのリミックス、よそでは見つからないDJセットなどへの広告のないアクセスを提供する5ドルのプランにフォーカスして、Spotifyとの差別化を図れ、と主張した。またアーチストが販売もできるようにして、ロイヤリティ以外の収益が得られること。その戦略に沿った今日の新デザインによりSoundCloudは、ユーザーがアップロードする曲のユニークなアーカイブとして、魅力と輝きを増している。

SoundCloudの新CEO Kerry Trainorは曰く、“新しく生まれ変わったSoundCloudのホームは、人間の手が多く入っているし、すばらしいクリエイターを自分が最初に発見した気持ちになれるように、個人化されている。そう、メジャーのチャートに載る何年も前にね”。

リスナーを迎える特集プレイリストには、Hip Hop SupremeやDJミックスセットにフォーカスしたIn The Mix、SpotifyのDiscover Weekly的に毎週変わる個人化トラックリストThe Upload、アルゴリズムが作り出すMore Of What You Like(あなたの好きなのをもっと)やArtists You Should Know(あなたなら知ってるわね、この人たち)などがある。New & HotやTop 50など、ふつうのチャートのプレイリストもあり、Fresh Pressedはニューアルバムを紹介する。また、SoundCloudのエディターたちが選んだコレクション、SoundCloud Next WaveやPlaybackがある。

前から望まれていたホーム画面のリフレッシュが、やっと実装された。昨日SoundCloudを開いたら二つの大きな広告が画面を占領していたが、簡単にリフレッシュできる。

新しい資金と少人数化によって、SoundCloudには、これまでの停滞をぶち破る助走路が与えられたようだ。そこを走っていく走力は、新CEOの力量次第だ。インタフェイスの変更は容易なスタートだが、SoundCloudの他社にない売りはあくまでも、インディーのクリエイターたちの、よりディープな位置づけだ。そこが、多くの人の、わざわざSoundCloudに行きたくなる魅力だから。

Trainorはこう言う: “SoundCloudを差別化するものは、1億7000万曲もあるカタログだ。そして新しいホームがすばらしいアーチストたちに光を当て、SoundCloudの魅力を一層高める”。Spotify, Apple, GoogleのYouTube, Amazon, Pandoraなどなど、音楽の世界は混み合っているが、SoundCloudの成功は、よそでは得られない特長や魅力にかかっているね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Appleが曲名判別アプリのShazamを買収か?

Spotifyが上場に向けてゆっくりとした歩みを続ける中で、Appleは音楽サービスビジネスを強化するための独自の動きを見せている。複数の情報源によれば、同社は程なくShazamを買収するらしい。Shazamとはオーディオクリップを聞かせたり(広告の)ビジュアルの一部を見せることで、テレビ番組、映画、短いコマーシャルなどで流れている曲が何かを判定し、ユーザーがその対象にアクセスできるようにするアプリである。

私たちは、この取引が今週行われるという情報を掴んでおり、発表は月曜日に行われるらしい(とはいえこの手の予定は常に変動し得るが)。

ある情報源によれば、買収額は9桁(億ドル台)に達すると言われ、また他の情報源によれば、それは3億ポンド(4億100万どるドル)になると言われている。私たちは引き続き情報を探っている。しかし注目すべき点は、この数字は同社が2015年に資金調達ラウンドを行った際に耳にした、(PitchBookによる)評価額10億2000万ドルよりは低いということだ。

これまでのところ、Shazamは合計で、Kleiner Perkins、ロンドンのDN Capital、IVP、Sony Music、Universal Music、そしてAccess Industries(Warner Musicを所有)といった投資家たちから、合計1億4350万ドルを調達している。なおKleiner PerkinsはShazamのライバルであるSoundHoundにも投資している

Shazamは、2016年の9月にはアプリが1億ダウンロードを上回ったことを発表しているので、現在はそれ以上になっているものと思われる。

しかし、アプリの世界では、ダウンロード数の多さが必ずしも高収益につながるわけではない。2017年の9月には、Shazamは2016年会計年度に4030万ポンド(5400万ドル)の収益があったことを発表した。これは会計年度2014から2015にかけての落ち込みを、建て直すことができた結果だ。2016年の法定税引前損失としては400万ポンド(530万ドル)を計上している。損失は続いているものの、その額は2015年会計年度の1600万ポンド(2120万ドル)に比べれば、大幅に減少している。

とはいえ、今年の初めには同社のCEOのRich Rileyが、Shazamの成長が続いているため、利益が出ることが期待できると述べている。そして、その結果、同社が買収の対象となる可能性が高いことも示唆していた。

Shazamはアプリ時代のはるか前、1999年にSMSコードによって利用できるサービスとして登場した、そもそも当時の名前は2580であった。これは英国内で、サービスにアクセスするためにタイプする必要のあった番号から来たものだ。

そうしたごく初期のころから、同社は多くの関連サービスを立ち上げてきた。Shazamでアーティストたちにアクセスすることで、有名人たちをフォローすることが可能になり、彼らがどんな音楽を日々「Shazamしている」のかを知ることができる。

その拡張現実ブランドマーケティングサービスでは、アプリで撮影した写真に基づいてコンテンツを発見することができる。「音楽を始めとして、McDonaldのカラオケや、MTN Dew VR Racing、その他の体験がお待ちしています」というのが会社の売り文句だ。

またそれは、SnapchatやAppleのSiriなどの他のアプリも取り込んでいる。そして現在は、SpotifyやApple Musicなどの他の音楽アプリに多くのトラフィックを送り込んでいて、その先で購入が行われた場合に収益となるようになっている。

買収後にどのようになっていくのかは明らかではない。またどの部分が(どのように)Apple自身のビジネスに組み込まれていくのかもはっきりしていない。しかし、Shazamか行っていることの大部分は、Appleが既に行っていることの間にシナジー効果を生み出す筈だ。ARやその他の機能がより多くのユーザーをApple Musicプラットフォームに引きつけることだろう。

アップルはこれまで数十もの買収を行ってきた。その中で最大のものは音楽分野で行われている。それは2014年に30億ドルで行われたBeatsの買収で、現在のApple Musicの基礎となっている。このサービスには、今年の9月時点で約3000万人のユーザーがいる。比較として挙げるなら、Spotifyの総会員数は1億4000万人であり、そのうち6000万人以上が有料会員である。

現在私たちはShazamとAppleにコメントを求めている。より詳細が判明したらこの記事を更新する。

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(翻訳:sako)

Facebookからビデオ用無料Sound Collection登場――360ビデオのコミュニティーも

退屈なビデオクリップも適切なサウンドをつければ格段にグレードアップする。そこでFacebookはSound Collectionというビデオ編集ツールを発表した。これは多年にわかたレコードレーベルとの交渉の結果実現したものという。FacebookまたはInstagramにビデオクリップを投稿する際、ユーザーは簡単に曲、ボーカル、効果音、インストラメンタルを付加できる。

Facebookによれば、「音楽はヒップホップ、ポップス、ジャズ、カントリーなど幅広いジャンルから選ばれている」という。ただし耳に馴染んでいるような有名な楽曲は含まれていない。Sound Collectionのポテンシャルは大きいが、今のところプロダクトの使い勝手としては平均的なレベルだ。ユーザーがFacebookにビデオを投稿する際に勝手に(著作権を侵害して)有名な曲をBGMにつけるのを根絶するほどの効果はないかもしれない。

Sound CollectionはFacebookの各種新しいビデオ・ツールの一環で、先月リリースされたウェブのインフルエンサー・ユーザー向けのFacebook Creatorアプリに続くものだ。Facebookはビデオ作成を助ける教育的素材のハブ、 360°カメラの無料貸し出しプログラム、360°ビデオ編集ツールなどを発表した。最終的な目的は「ビデオ・クリエーターのFacebook利用をさらに拡大することだ」と同社では述べている。

Sound Collection

Sound Collection(ここ数日でこのページから全ユーザーに公開される)は高品質の音源(楽曲と効果音)のセットで、ユーザーはFacebookとInstagramにビデオを投稿する際に無料で利用できる。Facebookがあらかじめ著作権者に料金を払ってライセンスを受けているためユーザーは著作権や使用料を気にする必要はない。Facebookによれば今後さらに楽曲や効果音の種類を増やしていくという。残念ながら現在は運営が終了しているが、Twitterが以前公開していたVineのSoundboardに少し似た仕組みだ。

ビデオのクリエーター向けに好みの音源を発見するのを助けるツールが用意されており、ジャンル、ボーカル、ムード、時間などで検索ができる。また気に入ったアーティストを見つけた場合、そのアーティストの他の楽曲を探索することもできる。今回利用できるようになったアーティストにはシンガーソングライターのKiri Tse、インドのパーカッション奏者、Jim Santi Owen、ギタリストで映画音楽作曲家のLyle Workmanなどが含まれる。

今年に入ってNew York TimesはFacebookが2015あたりから大手レーベルと交渉を続けていると報じた。現在Faebookビデオをモニターしており、違法なアップロードをブロックし、著作権を侵害するビデオを発見すると削除している。そこでiMovieでパパの誕生日のお祝いビデオを編集するときに、パパのお気に入りのボブ・ディランの曲を使ったりするとFacebookから削除されることになる。こうした事態を抑制するのもSound Collectionの狙いだという。

ただしレーベルとの交渉は中断されたか難航しているもようで、Sound Collectionのアーティストのリストにはトップ40クラスはいない。Sound Collectionの楽曲ではLyle Workmanがクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルのFortunate Sonをcアコースティックでカバーしているのがいちばんメジャータイトルに近いのではないか。

しかし今後Sound Collectionの利用が増え、Facebookがさらにライセンス料金を支払うようになればビッグネームの楽曲が含まれるようになる可能性はある。【略】

360°ビデオにも注力

一方、今日、Facebook 360という360ビデオのページも新しくオープンした。ここでは360°ビデオを制作するのを助けるツールが各種紹介されている。Facebookが360ビデオをスタートさせたのは2015年にさかのぼる。Facebookによれば、以来、100万本以上の360ビデオが投稿されているという。しかしこれまでは全周ビデオの制作には専用のカメラを用意することを始めとしてさまざまな準備が必要でそう簡単ではなかった。

新しい360ビデオのページにはチュートリアルが掲載されており、360°カメラの入手、360°ビデオの編集ワークフロー、専用のスペーシャル・オーディオなどが説明されている。【略】

ビデオクリーターはZCam S1を無料でレンタルできる

新しいコミュニティー・ページにはCamera Loanerプログラムも紹介されており、360カメラを無料でレンタルすることが可能だ。当初レンタルできるカメラはGoPro FusionとZCam S1だがこの数か月の間に他のカメラも追加される。カメラのレンタルが無料というのは魅力的だが、制作されたビデオはFacebookで共有される必要がある。

YouTubeも 2012年からビデオグラファー向け施設のYouTube Spacesをスタートさせているが、今回 Facebookがハードウェアの無料レンタルを始めたのはビデオ分野でもYouTubeのライバルとなるべく真剣に努力を始めたサインだ。【略】しかしFacebookがトップクラスのビデオクリエーターを集められるかどうかはFacoookビデオによって投資したリソースに見合う収益が得られるかどうかだ。この点は今後注目していく必要がある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Amazon EchoでU2の独占コンテンツ配信が決定――Appleとの関係に終止符か

前回U2が発表した独占コンテンツは、思ったような結果を出すことができなかった。当時Appleは、5年ぶりに発表されたU2のオリジナルアルバム『Songs of Innocence』の独占配信権を獲得するため、1億ドルもの資金を投じたと言われている。しかし、多くのiPhone・iPadユーザーは、同アルバムが強制的にiTunesライブラリに追加されたことに苛立ちを感じていた。

その影響もあってか、それ以降U2とAppleのコラボについての話は聞かなくなった。そしてこの度、Amazonが最新アルバム『Songs of Experience』に関連したコンテンツの独占配信を発表したことで、長きに渡って続いた両者の協力関係は、本当に終わりを迎えたようだ。

ちなみに今回は、無理やりユーザーにアルバムを押し付けるようなやり方ではなく、最新アルバムの発表を記念した「Amazon Music初のブロードキャスト型コンテンツ」が配信されるとのこと。『The U2 Experience』と名付けられたこのコンテンツは、ラジオ番組のようなもので、ユーザーはAmazon EchoをはじめとするAlexaデバイスを通して聴くことができる。

配信は11月30日(木)の一回限り。アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストリアのユーザーが対象となる。インタビューも放送予定で、「素晴らしいメロディーと歌詞で構成されたクラシックなロック曲ばかり」といった感じでアルバムの説明をするメンバーの声も聴けるだろう。

限定版のiPodを発売するまでにいたったU2とAppleの蜜月関係に、どちからが終止符をうったのかはわかっていない。恐らくお互いが自発的に距離をおくことにしたのだろう。いずれにせよ、以前U2のボーカルのボノは、ある記者会見で『Songs of Experience』について、彼らしい語り口で謝罪の言葉を述べていた。

「おっと、その件についてはすいませんでした。(無料配信という)素晴らしいアイディアに舞い上がってしまっていたのかもしれない。アーティストはこういうことをやりがちなんだ。ちょっとした誇大妄想、気前の良さ、自己顕示欲、さらには自分たちが数年間すべてをかけて作った音楽が聞いてもらえないかもしれないという大きな恐怖が相まってこのような結果になってしまった。世の中は雑音で溢れているが、それを乗り越えるために私たち自身が少し騒がしくなってしまったようだ」

しかし、今回はそのような事態になることはなさそうだ。最新アルバムを聞きたくない人は「Alexa, play “The U2 Experience”」と言わなければいいだけなのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

OK Goの新曲ビデオでは557台の(曲とシンクする)プリンターと一緒にダンス

バンドのOK Goは、異様なほどクリエイティブなミュージックビデオで知られている。彼らにかかると、スクーターも、も、飛行機も、そしてルームランナーさえも、アートのような振り付けの素材になる。でも今回の彼らは、ちょっと古めだ。

新曲“Obsession”のビデオでOK Goは557台のプリンターの壁を作り、ビデオ全体の背景にしている。Gizmodoは、紙の無駄遣いに意味があるのか、と言っているが、そう言いたくなるのも分かる。でもしかし、OK Goは答を持っている:

“あなたがこれを見るころには、すべての紙が再生紙だ。売上はGreenpeaceのものになってる”、というテキストをビデオの冒頭でプリンターが紙にプリントする。

これで、紙の無駄遣いの心配はなくなったと思うから、彼らのアートで週末を楽しもう。

でもその前に、バンドが一言言っている:

このビデオでは、いろんな色が激しく点滅する。発作を起こさないように、注意していただきたい。YouTubeの画面の解像度を1440pか2160pにすると、良い映像になる(デスクトップでは画面右下の歯車のアイコンをクリックする)。“自動 HD”のままだと、画像が歪む箇所がある。色やパターンの変化が、激しすぎるからだ。つまり情報が多すぎてYouTubeの通常のHDの圧縮では無理な部分がある。われわれは、そのマトリックスを破ったのだ。24時間前から、YouTubeの善人たちがわれわれと一緒に、問題解決に取り組んでいる(ビットレートの制約の問題だ)。でも、解決には時間がかかりそうだし、今は感謝祭だから、みんな実家へ帰らなくちゃね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

音楽ストリーミングでPandora健闘――アメリカのアプリ内購入、売上8000万ドルでトップに

音楽ストリーミングのPandoraはSpotifyとApple Musicと激しい競争を繰り広げながら売上を大きく拡大することに成功した。Sensor Towerの新しいデータによると、アメリカ市場の2017年第3四半期におけるアプリ内課金(ゲームを除く)でランキングのトップに立った。パンドラがアプリ内課金の1位になったのは2015年第3四半期四半期以来だ。

Pandoraアプリの拡大を今年に入って後押ししたのはPremium契約の導入だ。このサービスは3月に「招待オンリー」で開始された後、4月には広く一般公開された。

Pandora PremiumはPandoraを特長づける音楽ラジオ番組的サービスに加えて好みの楽曲を検索してストリーミング再生し、プレイリストに追加するサービスとを追加したオンデマンド音楽ストリーミングとなっている。料金は月額9.99ドルでPandoraのライバル、SpotifyとApple
Musicの料金と等しい。

Pandoraではこのフラグシップ・サービスに加えて、Pandora Plusというミドルクラスのサービスも用意されている。こちらは2016年の秋にスタートしており、料金は月に4.99ドルだ。この有料サービスに加入すると広告が挿入されず、楽曲のスキップやオフラインでの再生などの快適なオプションが提供される。

Pandoraはアメリカの第3四半期のアプリ内課金で8000万ドルを売上げ Netflixを押しのけて1位となった。

Netflixはアプリア内課金でここ1年ほど首位をキープしていた。ただしNetflixは全世界ベースの売上では第3四半期も依然トップだ(ゲームを除く)。

Pandoraの(推定)売上8000万ドルは前年同期の3500万ドルから142%のアップだ。ただしSensor Towerのデータはアプリ・ストアに関するデータなので、ここで捕捉されている売上はアプリ内課金の分だけだ。Pandoraのビジネス全体については別の視点が必要になる。サブスクリプション契約はアプリ内だけでなくウェブからも可能だし、無料版は広告収入を得ている。Pandoraの7月の決算報告によれば、広告売上の伸びは対前年比5%だったものの、サブスクリプション売上の伸びは25%にもなっていた。

Pandoraは今年に入ってかなりの混乱を経験し、CEOのTim Westergrenの辞任などトップの入れ替えもあったが、7月の決算はアナリストの予想を上回った。会社売却が検討されたこともあったが、Pandoraは別の道を選び、SiriusXMから4億8000万ドルの資金を引き出した。

Pandoraは今日(米国時間11/2)、新しいCEO、Roger Lynchの下での第3四半期の決算を発表する予定だ。これにはPandoraがラジオ・ビジネスに一層注力するという方針の発表も含まれるだろうとBarron’sは予測している。

またこの記事によれば、アナリストはPandoraの損失を1株あたり8セント、売上を3億8000万ドルと予想しているという。

非ゲームアプリでの売上増が見られたのはPandoraのみではない。 Sensor Towerによれば、世界ベースでのアプリ内売上は 2016年第3四半期の17億ドルから2017年第3四半期には28億ドルに増加している(Google PlayとiOS App Storeの合算)。

App Annieも世界のアプリ売上の増大のトレンドを報じていた。ゲームを含むアプリ売上の総額は170億ドル弱だという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Amazon MusicがAlexaの機能を搭載

Amazonが、Amazon MusicにAlexaの機能を組み込んだ。iOS版およびAndroid版の双方に実装され、音声コントロールが行えるようになったのだ。Amazonの発表によれば、使えるのはアメリカ、イギリス、ドイツ、およびオーストラリアだとのこと。音声コマンドで実施できるのは、再生する曲、アーティストの指示であったり、あるいはドライブ、ランニングなどといったシチュエーションに応じた曲をリクエストすることだ。EchoスピーカーでAlexaを利用していた人にとっては馴染み深い機能だろう。

やはりEchoで利用できる機能だが、歌詞はわかるが曲名がわからないといった曲をリクエストすることもできる。

Echoスピーカーでは、天気予報やニュースの問い合わせだとか、あるいはタイマーやリマインダーの設定に並んで、音楽再生も代表的ユースケースとなっている。そのような状況の中、音楽アプリケーションにAlexaを導入するのは当然の選択といえるだろう。

今回のAlexa導入により、SpotifyやApple Musicとの差別化を行なって、第3位のポジションからの脱却を目指す意味もある。なるほどApple MusicはSiri対応ではある。ただしそれはAppleユーザーに対してのみの話だ。Siriと連携したApple Musicを楽しめるのは、iPhone利用者に限られているのだ。

Amazonは、Alexaのモバイルアプリケーション対応を徐々に進めつつあるようだ。

今年になって、まずはiOS版のショッピングアプリケーションにAlexaを導入し、夏にはAndroid版でも対応した。

Amazonとしては、Echoデバイスを使っていない人々にもAlexaおよび音声アシスタントの便利さを感じてもらい、そして自らの商機を広げようとする意図があるのだろう。Echoの購入を考えている利用者に対して、さまざまなアプリケーションを通じてAlexaの魅力を伝えようとしているわけだ。Amazon Musicの利用者がAlexaの便利さを感じてくれれば、Google HomeやAppleのHomePodではなくてEchoを選択する可能性も高まることになる。

Alexaと連携するのはAmazon Musicの最新版での話だ。旧版を持っている場合には最新版にアップデートする必要がある(訳注:日本では未対応です)。

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(翻訳:Maeda, H

Soundchartsは音楽アーティストとレーベルのための分析ツール

フランスのスタートアップSoundchartsは、音楽アーティストのためのApp Annieのようなものを構築している。このサービスは、世界中のラジオで何が再生されているか、Spotifyプレイリストなどで何が人気があるのかなどのデータを、大量に提供してくれる。同社はAlven CapitalKima Ventures、そしてGlobal Founders Capitalから、310万ドル(265万ユーロ)を調達したばかりだ。

多くの大手ミュージックレーベルは既に、多くの企業と協力してラジオ放送に関する洞察は得ている。彼らは、例えば、こうしたデータにアクセスするために、ニールセンに大金を支払っている。

Soundchartsが狙うのは、この世界を平等にしてより多くのデータを追加することだ。多くの人は新しい音楽を見つけるためにラジオを聴くことはしない。彼らはSpotifyで人気のあるプレイリストを購読し、Facebookやその他のでアーティストをフォローする。もしゲームに先行したいなら、放送だけでは十分ではない、少なくとも最早十分ではないのだ。

「私たちは音楽の世界のブルームバーグになりたいのです」と、創業者でCEOのDavid Weiszfeldは語った。「あるいはApp Annieがアプリケーションのためにやっていることをしたいと思います」。

Soundchartsは世界中にサーバーを設置し、同時に何百ものラジオを聴いている。これらのサーバーは、Shazamのような音楽認識技術を使用して、オーディオ信号を構造化データに変換している。

この方法で、国別、放送局別、アーティスト別、または曲別にブラウジングし、誰が何を再生しているのかを見ることができる。自分のところのアーティストを競合相手と比較することができ、何が人気があるのかを始めとする多くのものを知ることができる。音楽フェスティバルのプログラム担当者にとっても良いツールである。

SoundchartsはSpotifyのAPIを使用して、すべての公開プレイリストのインデックスを作成し、その変更を追跡している。という訳で、チャーチズの曲がSpotifyの公式プレイリストに追加されると、Soundchartsの中でそれを見ることができる。また、一般的なトレンドを探している場合には、このサービスはプレイリストの伸びも追跡している。ダブステップが復活しているかどうかを、すぐ知ることができるようになる。

そして、SoundchartsはFacebookの「いいね!」を追跡し、国ごとに集計し、その成長について教える。世の中にはソーシャルメディア分析サービスは数多く存在するが、これはSoundchartをワンストップショップにする良い方法だ。誰もがすべてのデータにアクセスできるため、これは自分のところのアーティストに限定されない。

これまでのところ、250社が既に提携していて、その中には独立系レーベル、出版社、マネジメント会社はもちろん、ユニバーサルミュージック、ソニーミュージック、ワーナーミュージックに勤務する従業員なども含まれている。これらの企業は、継続的にサブスクリプションを支払ってSoundchartsにアクセスしている。

  1. dashboard_airplay.png

  2. dashboard_playlists.png

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: ANNETTE SHAFF/SHUTTERSTOCK

Monsterが音楽専用の音声アシスタントをヘッドフォーンの新製品に搭載、Siriの音楽無能が契機

Monsterは必ずしも革新的なテクノロジー企業ではないけど、でも同社製のヘッドフォーンにMelodyと呼ばれるヘルパーアプリを載せることによって、今大流行の音声アシスタントの世界へ足を踏み入れた。

MonsterのElementsヘッドフォーンに搭載されているMelody音声アシスタントを作っているSpeak Musicは、基本的にその機能を、Siriが音楽サービスをApple Musicしかサポートしていない、という音楽的欠点を補うために設計した。Siriは、そのApple Musicのサポートすら、そもそも十分ではない。Speak Musicの財務のトップは、Monsterのプロダクト担当VPだった人だから、その御縁で二社はパートナーしたのかもしれない。

Melodyは、ヘッドフォーンに限らず、スタンドアローンのオーディオ製品に組み込むのに適している。いきなりAmazonのAlexaやMicrosoftのCortanaなどに飛びつくと、今の音声アシスタント製品にはびこる数々の愚かさから、逃げれなくなってしまう。少なくとも理論的には、ユーザーはオーディオ製品に音楽の機能だけを期待するだろうから、ほかの低能な音声アシスタント機能で彼らをがっかりさせるおそれはなくなる。Bluetoothスピーカーならまだしも、ヘッドフォーンが、Siriなどスマートフォンのアプリに依存していたら、相当売りにくいだろう。

Melodyも、スマホのアプリとしてダウンロードできるが、でも音声アシスタント機能は即座に簡単に使えるべきだから、(このヘッドフォーンの場合のように)ハードウェアに最初から統合されていることが必須だ。たかがヘッドフォーンのメーカーがここまでやる、ということは、2017年という今における、音声アシスタントのみすぼらしい状況を示唆している。しかもそれらの機能の制約は、現状ではプラットホームごとにまちまちだから、ますます、今回のような本体搭載に拍車をかける。

MonsterのワイヤレスヘッドフォーンElementsは、色が“ブラックスレート”、“ブラックプラチナ”、“ローズゴールド”の三種あり、今月末から350ドルで発売される。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

SoundCloudに土壇場で救いの手――LjungはCEOから退く

ユーザー生成音楽のストリーミングサービス、SoundCloudは運営を継続するための資金調達ラウンド完了した。共同ファウンダーのAlex LjungはCEOを辞任するが会長には残る見込み。

新CEOにはVimeoの元CEO、Kerry Trainorが就任する。Mike WeissmanがCOOに就任し、SoundCloudの共同ファウンダーでCTOのEric Wahlforssは最高プロダクト責任者に留まる。ニューヨークの投資銀行、Raine Groupとシンガポールの国営ファンド、TemasekがシリーズFの資金調達に応じ、1億6950万ドルを出資した。

SoundCloudは先月、コスト削減のためとして社員の40%にあたる173人を突如解雇した。このときCEOのAlex Ljungは「運営資金が第4四半期の開始までしかない」と発表し、同社は瀬戸際状態にあることが明らかとなった。土壇場での資金調達に成功したことで、SoundCloudは新たな航海に出発する準備を整えるか、あるいは買収によって大企業の傘下という安全な港に停泊するか選ぶ余裕を得た。

SoundCloudは今回のラウンドについて会社評価額などの具体的な数値を明かすことを避けている。昨日(米国時間8/10)のAxiosの記事によれば、SoundCloudは投資前会社評価額1億5000万ドルで1億6950 万ドルのラウンドを実施したという。この会社評価額は前回のラウンドの会社評価額が7億ドルだったことからすると暴落といっていい。 今回のシリーズFでRaineとTemasekは清算の際の残余財産分配優先権(liquidation preference)を得たものとみられる。これは他の残余財産分配優先権すべてに優先し、シリーズEの投資家の優先権は40%減額された。他の投資家はこれで満足しているわけはないが、投資が紙くずになるよりはましだろう。

SoundCloudを崖っぷちから引き上げるのと引き換えにRaineは取締役会に2人分の席を得た。元音楽業界の弁護士でRaineのパートナーのFred Davis、同グループで音楽関係の投資を担当してきた副社長、Joe Puthenveetilの2人がRaineが取締役に就任する。

CEOから退くことになったのはLjungには不本意だろうが、取締役会の会長として会社の運営に関与を続けることができた。Ljungは「(この資金調達の成功は)SoundCloudが独立企業として力強く前進することを保証するものだ」と書いている。

SoundCloudでは、通年換算の売上高は1億ドルあるとしている。この売上高を確保できるのであれば、コストを低く抑えることで最終的にはブレークイーブンを達成できるかもしれない。そうなれば今回のような外部からの緊急投資に頼る必要はなくなる。

TechCrunchはSoundCloudの危機について先月報じた。【略】この報道を受けて、ファンやアーティストからSoundCloudを守ろうとする声が多数上がった。これはTwitterがビジネス上の理由からビデオサービスのVineを終了したときを思わせた。有名ミュージシャンのChance The Rapperは自らSoundCloudを援助する道を探った。Chanceや他の多くのインディーのミュージシャンはこのプラットフォームからデビューし名声を勝ち得ている。結局Vineとは異なり、SoundCloudは救われたわけだ。【略】

2011年にハリウッドのHollywood Hotelで開催された2011 TVサミットに参加したKerry Trainor。当時AOLのエンタテインメント担当上級副社長 (写真 Todd Williamson/WireImage)

Featured Image: TechCrunch

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Spotify、Appleを突き放し登録者6000万人を突破――ダイレクト・リスティングでの上場は依然検討中か

Spotifyの登録者数は音楽にひたむきな同社の姿勢もあり、iPhone製造の片手間にストリーミングサービスを提供しているどこかの企業よりも勢いよく伸びている。Spotifyが1年未満で2000万人もの有料会員を獲得した一方、Apple Musicは同じ数の会員を増やすのに1年半以上もかかった。その結果、両サービスの登録者数は、Spotifyが6000万人、Apple Musicが(2017年6月時点で)2700万人となった。

世界でもっとも強力な企業と言われるAppleと競合関係にありながら、Spotifyがここまでの勢いで登録者数を伸ばせたのは、同社がこれまでに築き上げてきたプロダクトとコミュニティのおかげだ。

Apple Musicは3か月の無料トライアルを提供しており、iPhoneには同アプリが出荷時点でインストールされているほか、同社は人気アルバムを早期リリースするためにレコード会社に大金まで支払っている。そのおかげで特定のアーティストのファンや、MP3からストリーミングサービスへようやく移行しようとしている一般消費者の中には、Apple Musicを選ぶ人もいるかもしれない。そうは言っても、音楽通が選ぶストリーミングサービスといえばSpotify、という状況は変わらない。

Spotifyはいわゆる「ダイレクト・リスティング」という道を進み、IPOなしで上場を果たそうとしている。つまり、(同社ではなく)関係者が市場で株式を売却するというやり方だ。

これはかなり珍しい動きで、それゆえSpotifyの上場にはさまざまな憶測が飛び交っている。証券会社が機関投資家をまとめ上げて売値を決めるという一連のプロセスに恐れを感じる企業も多いが、IPOは多額の資金を調達するチャンスでもある。

そんなIPOをスキップするということは、何億ドルという資金をみすみす見逃すことと同じだとも言えるが、上場後に増資もしくは売り出しという手もある。先日のWall Street Journalの報道によれば、Spotifyは今年中に上場を果たそうとしているようだ。

そもそもSpotifyの成長には、以下の重要なステップが大きく関係している。

Discover Weeklyのローンチユーザーの好みに基いて毎週アップデートされるDiscover Weeklyというプレイリストは、新しい曲やアーティストを求める音楽ファンの間で大人気となった。初年度で4000万人もの登録者を獲得したこのプレイリストに続き、Spotifyは新曲にのみフォーカスしたRelease Radarをローンチ。AppleSoundCloudといった競合サービスもDiscover Weeklyの類似機能を導入したが、Spotifyは流行の最先端にいる人たち向けの本格派ストリーミングサービスとしての地位を確立しようとしている。

楽曲を共有しやすくするため、Spotifyは最近QRコード機能をローンチした

ストリーミングに難色を示すアーティストの獲得:当初アーティストに十分なロイヤルティを支払っていないということで悪評が広まったSpotifyだが、登録者数が増えるにつれてこの問題もかなり改善してきた。しっかりお金が支払われるようになったことと、アーティストがヒットを狙うならば必ず抑えなければいけないチャンネルとしての地位が確立されたことにより、Spotifyはテイラー・スウィフトをはじめとする反ストリーミング派との契約をも勝ち取ることに成功した。ここに上場が加われば、音楽業界におけるSpotifyのポジションは盤石なものとなり、ストリーミングサービスに懐疑的なアーティストとファンも説得できるようになるかもしれない。

Google Home + Spotify VS Amazon Alexa:音楽を声でコントロールする魅力にひかれ、AmazonやGoogleのスマートスピーカーを購入する人が増えている。そんな中、Amazon AlexaではAmazon Prime Musicが押されている一方で、Google HomeはSpotifyをプレミアパートナーの1社に選んだ。PandoraやGoogle Musicにも勝る人気を受けて、Google HomeはSpotifyの広告入り無料プランのサポートを決めたのだAppleのHomePodの販売が始まれば、Google Homeとのパートナーシップの重要性はさらに増していくだろう。

IPOなしの上場

Spotifyはダイレクト・リスティングの可能性について公式には語っていないが、同社に近い関係者の情報によれば、上場直後の株価の大きな変動を避けるためにダイレクト・リスティングを選ぶ可能性もあるとのこと。引受人は取引初日の株価急騰を狙って公募価格を低めに設定するよう勧めることが多いが、上昇後の株価を保てない企業もかなり存在するため、ダイレクトリスティングがその対策に成りえると考える人もいる。

フランス・カンヌ―6月22日:SpotifyのファウンダーでCEOのDaniel Ek。2016年6月22日にフランスのカンヌで開催されたカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルにて(写真:Antoine Antoniol/Getty Images)

さらにダイレクトリスティングの道を選ぶことで、上場後に関係者が株式を売却できない「ロックアップ期間」の問題も解消できる。Snapの株価は本日(現地時間7月31日)ロックアップ期間が終了することもあり、最近値を下げていた。

もしもSpotifyのダイレクト・リスティングがうまくいけば、他社もその後を追うことになるかもしれない。

その一方で、ダイレクト・リスティングによってSpotifyの株価のボラティリティがさらに高まる可能性も十分ある。まだ同社は具体的な計画を発表していないが、IPOで機関投資家に株式が売却される理由のひとつは、彼らが長期的にポジションを保有すると考えられているからだ。

それでもダイレクト・リスティングを選ぶとなれば、Spotifyは株価を保ってApple Musicの侵攻を防ぐために、これまで築き上げてきたユーザーベースに頼らざるを得なくなるかもしれない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

音楽サービスは“個人化”ブーム、Google Play Musicが新譜紹介プレイリストNew Release Radioを開始

今や数が多くなった音楽ストリーミングサービスは、音楽をオンデマンドで提供するだけでは顧客の心をつかむことができなくなった。新曲を見つける機能が必要だし、リコメンデーションもしなければならない。プレイリストの選曲に人気がある点でSpotifyは確かに市場のリーダーだが、Apple MusicやGoogle Play Musicをはじめ、ライバルたちも負けてはいない。今週はそのGPMが、自分たちでキュレートしたミックス、New Release Radioの提供を開始した。GPMはそれについて、各リスナーの好みに合わせた選曲だ、と言っている。

この機能は4月に、Samsungとのグローバルなパートナーシップでテストされた。当時のGoogleは、Samsungのスマートフォンやタブレットの新機種の上ではGPMをデフォルトの音楽プレーヤーにするつもりだった。Samsung自身のMilk Musicの、アメリカにおける閉鎖を引き継いで。

GoogleはそれによってSamsungのユーザーからのフィードバックを集めることができ、その成果としてこのたび、Google Play Musicの全ユーザーにNew Release Radioを提供できることになった。

個人化されたミックスには、好きなアーチストの新曲を紹介する機能もある。というか、Googleが、こいつはこれが好きだと信じたアーチストのね。この、ラジオ放送の形をしているサービスは、機械学習の技術を利用して過去二週間のニューシングルやニューアルバムから曲を拾う。同社の発表によれば、その際、ユーザーのGPMでの視聴履歴や、もっと幅広い音楽の好みを参考にする。

このようにエンドユーザーの好みに合わせて音楽サービスを個人化する能力は、たしかに今日のストリーミング音楽の市場競争で優位に立つための重要な要素であり、とくにSpotifyが、その能力に秀でている。そのDiscover Weeklyプレイリストは、初期における強力な差別化要因となり、昨年の総リスナー数は4000万に達した。その後Spotifyはその勢いに乗って、ユーザーが好むと思われる新譜の提案、Release Radarなどの、個人化プロダクトを展開した。Radarは昨年の夏だったが、同じ年の秋には、お気に入り曲とリコメンデーションを組み合わせたDaily Mixが登場した。

Apple Musicもプレイリストの個人化には熱心で、“My New Music Mix”や“My Favorites Mix”などを立て続けにリリースし、いちばん最近では、チル(chill)系の曲だけを集めたプレイリストの提供を開始した。

GoogleのNew Release Radioは無料のラジオリスナーにも提供され、そのときそのときの新曲によって継続的にアップデートされていく、とGoogleは言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

SoundCloudが深刻な危機に――ユーザー生成音楽のストリーミング事業に残された時間は50日

ユーザーが生成した音楽をストリーミング配信するサービスの大手、SoundCloudは深刻な状況を迎えている。昨日(米国時間7/11)、同社では全社員集会を開き、先週突然に40%の社員のレイオフを行った理由を説明した。

残留組はなぜ事前に経営悪化に関して何も知らせがなかったのか、またこのコスト削減がSoundCloudの経営を長期にわたって保証するものなのか知りたがっていた。

しかしベルリン本社からビデオキャストが放映される際、世界中のSoundCloudの会議室には警備員が溢れており、社員は望んでいた答えが得られそうな状況ではないと悟ったようだ。SoundCloud社員の一部はTechCrunchに対し、共同ファウンダーのAlex LjungとEric Wahlforssは「レイオフはコストを減らすことで第4四半期まで時間を稼ぐためだった」と告白したと述べた。しかし第4四半期までわずか50日しかない。

Ljungはレイオフの発表に当って、「長期的計画を練り直し厳しい決定をすることになった」という声明を発表していた。しかし手持ち資金が尽きるのがそれほど差し迫っていることにはまったく触れていない。

TechCrunchが取材した別のSoundCloud社員は、別のオフィスで全社員ミーティングのビデオを見たが、「(その際の雰囲気は)ひどいものだった。優秀な人間はみな辞めると思う。Eric
[Wahlforss]はSoundCloudのファミリーがどうとか言ったが、そこで部屋中に失笑が起きた。たった今173人も首にしておいて何がファミリーだ?」と述べた。

SoundCloudの共同ファウンダー、CTOのEric Wahlforss

SoundCloudは音楽ストリーミング・サービスの中でも独特の位置を占めてきた。楽曲はセミプロ・ミュージシャンであるユーザーが製作してアップロードしたものだ。この中には非公式のカバー曲、長時間のDJパフォーマンスなどSpotifyやAppleなどメインストリームの音楽サービスでは配信されないような楽曲が多数含まれていた。こうした楽曲はSoundCloundの人気を支える一方で著作権問題に付きまとわれる原因となっていた。

【略】

クラウド上の楽曲はどうなる?

創立後10年間に2億ドルの資金を集めながらSoundCloudは「音楽のYouTube」となることに失敗した。SoundCloudの経営はもやは多少の経費削減くらいではどうにもならないところに来ているようだ。SoundCloudが生き延びるためには維持可能なビジネスモデルを構築することができる買い手を探すしかないだろう。たしかにYouTubeはストリーミング・ビデオの世界で巨大な存在となったが、初期の段階でGoogleの傘下に入らなかったらそれが達成できたかは疑わしい。SoundCloudには大きな力のある援助者が必要だ。【略】

ホームメイド・リミックスやガレージ・バンドの楽曲の世界最大のコレクションは危機に瀕している。もしSoundCloudがこのまま運営を停止するならそれでなくても綱渡りを強いられているインディー・ミュージシャンたちにとって深刻な打撃となるだろう。

それだけにSoundCloudの社員がTechCrunchに語った一言が重く感じられる―「戦略がゼロだった」 。

〔日本版〕SoundCloudはTechCrunchでもSony Musicとの契約が成立したという記事やビジネスモデルを解説した投稿を掲載していた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

オーディオストリーミングの週間再生回数が過去最高の70億回を突破――総再生数は前年比で62.4%の伸び

先週公開されたNielsenの最新のレポートを見ると、オーディオストリーミングサービスの盛り上がり具合がよくわかる。ストリーミングサービスの普及率が大幅に上がっただけでなく、合計再生回数も過去最高を記録しているのだ。アメリカ市場を対象にした同レポートによれば、今年の3月にはオーディオストリーミングの週間再生回数が初めて70億回を突破した。

念のためだが、これはあくまで”オーディオ”ストリーミングであって、ここには音楽以外のものも含まれる。

”オーディオ”というカテゴリーには、スポークンワードやポッドキャストも含まれており、特にポッドキャストの再生回数は急激な伸びを見せた。Nieslsenは音楽とそれ以外のコンテンツの再生回数に関する詳細はレポートに明記していないものの、同社が以前発表した情報では、成人ユーザーのポッドキャストの月間消費量は過去5年間で倍増したとされている。

その一方で、SpotifyやApple Musicをはじめとする音楽ストリーミングサービスが70億再生というマイルストーンへの到達に大きく貢献していることは間違いない。

2017年3月3〜9日には、オーディオストリーミングの再生回数が過去最高値となる75億回を記録したとNieslsenは記している。再生回数が70億回を超えたのは今回が初めてだ。

さらに、2017年上半期の総再生回数も1840億回を突破しており、前年比で62.4%も増加している(2017年の1月1日から6月29日までの6か月間のデータをまとめたNielsenの中間レポート)。

ここに動画ストリーミングの数値を加えると、再生回数は前年比で36.4%増の2840億回以上になる。

どうやらこの再生回数の伸びの裏で、アルバム(デジタル、物理的なメディア両方)売上は落ち込んでいるようだ。

物理的なアルバムの売上は17%、デジタルは20%減少しており、TEA(Track Equivalent Albums、10トラックを1アルバムとしてカウントした数値)も同様に20%減った。つまり、ストリーミングでひとつひとつの楽曲を聞けるようになった今、音楽を購入して”保有”することへの需要が減ってきているのだ。

また、Nielsenのレポートではアーティストごとの数値も集計されており、調査期間中にストリーミング再生(オーディオ、動画を合わせた数値)された回数が1番多かったのはEd Sheeranの『Shape of You』だということがわかった。同楽曲のダウンロード売上数は200万枚で、ユニット数(ストリーミング回数)は453万単位だった。

Ed Sheeranの後には、Migos feat. Lil Uzi Vertの『Bad and Boujee』とFonsi & Daddy Yankee feat. Justin Bieberの『Despacito』が続いた。

さらにアルバム単位では、Kendrick Lamarの『DAMN』が1位を獲得し、ユニット数(アルバム・ETA売上、ストリーミングETAの合計)は177万枚だった。ちなみに、2位と3位はそれぞれEd Sheeranの『÷(Divide)』(ユニット数:174万枚)と、Drakeの『More Life』(ユニット数:169万枚)だった。

アーティストごとの詳細が知りたい方は、こちらのページからレポート全文をダウンロードできる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Spotifyからショーン・パーカーが去る――上場を控えて取締役会を一新

今やユーザー1億4000万人を擁する音楽ストリーミングの有力企業Spotifyは上場に向けて準備を進めているところだ。ここで取締役会に大きな変化があった。初期からの投資家でありデジタル音楽サービスのパイオニア、NapsterのファウンダーでFacebookの立ち上げにも大きな役割を果たしたショーン・パーカーがSpotifyの取締役会から離れた。もうひとりの初期からの投資家でヨーロッパを代表するエンジェル投資家のクラウス・ホメルズも取締役会を辞任した。

同時にSpotifyは業界の著名人4人を新たに取締役に任命した。Padmasree WarriorはCiscoの元CTO、CSOで現在、中国の電気自動車メーカーNIOのCEOを務めている。Thomas StaggsはDisneyの元COO、Shishir Mehrotraは元YouTube幹部、Cristina Stenbeckは投資家だ。

この4人以外の既存のSpotify取締役はDaniel Ek、Christopher Marshall、Martin Lorentzon、Pär-Jörgen Pärsson、Ted Sarandosの5人だ。

現在Spotifyの企業価値は130億ドル前後と評価されており、これまでに総額15億6000万ドルの資金を調達している。同社はTechCrunchの取材に対して、ショーン・パーカーらが取締役会を離れ、ほぼ同時に4人の新たな取締役が任命されたことを確認した。情報源によれば、パーカー、ホメルズともSpotifyに対する投資家であり、友人であることに変化はないという。

新取締役の変更は先月から噂が流れていたが、今回、ルクセンブルクにおける登記書類によって確認された(スウェーデンのサイト、Breakitが発見した)。

パーカーホメルズは共に2009年からSpotifyの取締役を務めていた。特にパーカーは単なる出資者という以上にSpotifyのビジネスの立ち上げに重要な役割を果たした。上の写真は2010年ごろ、パーカーがパートナーを務めたピーター・ティールのFounders FundがシリーズCでSpotifyの資金調達に加わったときのものだ。

Napsterが海賊版音楽サイトとして悪名を轟かせたことを考えれば皮肉ともいえるが、パーカーはSpotifyを助けてレーベルと交渉に当たり、リスナーがストリーミング再生した回数に合わせてライセンス料金を支払う交渉をまとめた(この契約によってSpotifyは音楽ストリーミングを始めることができたが、ビジネスとしては決して有利な内容ではなかった。Spotifyは現在レーベルと契約の再交渉を進めている)。

パーカーはまたヨーロッパ生まれのSpotifyをアメリカに導入する上でも重要な役割を果たした。アメリカ上陸は同社の成長にとって決定的な段階となった。こうした努力の結果、Spotifyは音楽ストリーミング・サービスにおいてユーザー数でも売上でも世界最大の企業となっている。

新取締役

新メンバーは上場IT企業となることを念頭に選ばれたようだ。Spotifyの上場は今年にも行われるという情報が流れていたが、むしろ2018年になる公算が高い。上場先はニューヨーク証券取引所となる模様だ。

Padmasree WarriorはCiscoの幹部として長く務め、テクノロジーだけでなくビジネスにも経験が深い。これはクラウドベースのテクノロジー企業であると同時にサードパーティーと複雑な権利関係をさばく必要があるSpotifyの取締役として重要な資質だろう。【略】

StaggsはDisneyのベテラン(1990年に加わった)で、2016年に同社を去る前はCOOを務めていた。報道によれば、CEOに昇格する可能性がなくなったためにDisneyを離れたのだという。Staggsはメディア界で契約をまとめた経験が豊富だ。これはSpotifyにとって今後必要性を増す分野だ。【略】

YouTubeで長年エンジニアリングと収益化のために働いてきたShishir Mehrotraについても同じことがいえる。またSpotifyは今後ビデオに注力していくという。ライバルのAppleもデジタル音楽を出発点としてビデオ・ストリーミングにビジネスを拡大した。こうした面からもMehrotraの果たす役割は重要だろう。またMehrotraはこれまでもSpotifyと密接な関係があった。2014年以来同社のスペシャル・アドバイザーとなっている。【略】

Christina Stenbeckはスウェーデンのストックホルムを拠点とする投資会社Kinnevikの会長であり、原動力だ。多くのビジネスに関与しているが、Rocket Internet出身の多くのスタートアップの主要投資家でもある。KinnevikはこれまでSpotifyに出資していないが、われわれが以前報じたとおり、Spotifyはスウェーデン発でもっとも成功したテクノロジー企業であり、スウェーデンを代表する投資家を取締役に加えることを有利とみたのだろう。Stenbeckの取締役就任は上場を控えたSpotifyとしてスウェーデンの投資家に対するプロモーションの一環でもあるだろう。

画像: BillBoardBiz

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Facebook Messenger上で友だちとSpotifyのプレイリストが作れるように

今年に入ってから、Spotifyは友だちと楽曲がシェアできるFacebook Messenger用のボットを発表した。そして本日、同ボットに新たな機能が追加され、ユーザーはMessenger上で友だちと一緒にプレイリストを作れるようになった。しかも、グループ内の全員がSpotifyのアカウントを持っていなくてもこの機能は利用可能だ。

Group Playlists for Messengerというそのままの名前がついたこの機能には、既存のMessenger用のSpotifyアプリからアクセスできる。実際のFacebook Messengerのインターフェース上では、まずチャット画面を表示し、入力欄の左側にある青いプラスサインが書かれたボタンをタップする。するとMessengerアプリのリストが表示されるので、その中からSpotifyを選ぶ。

そこから、プレイリストの作成者(この人はSpotifyのアカウントを持っていないといけない)は、スクリーン下部にある”Create”ボタンを押して名前を付ければ、すぐにグループチャット内でプレイリストを共有できる。プレイストを共有すると表れるサムネイルには、プレイリストの名前と曲を追加するためのボタンが表示されるようになっている。

そして、この段階でグループチャットに参加している人であれば、誰でも好きな曲をプレイリストに追加することができるのだ。しかも、Spotifyによれば、プレイリストの作成者以外はSpotifyのアカウントを持っていなくてもこの機能を利用できるということだ。

しかし、非SpotifyユーザーはMessenger上でプレイリストの中身を見ることしかできず、実際に曲を聞くためにはSpotifyにサインアップして、アプリをダウンロードしなければならない。既にSpotifyのアカウントを持っているがFacebookとは接続していないという人は、MessengerのSpotifyアプリから両アカウントを紐付けられるようだ。

これまでにもSpotifyはデスクトップ版、iPhone版、iPad版、Android版の全てでコラボプレイリストをサポートしており、Spotifyからソーシャルサイトやさまざまなメッセージングアプリにプレイリストを直接共有できるようにもなっていた。

しかし、今回の機能追加により、ユーザーはMessenger上で直接プレイリストを作れるようになったのだ。

SpotifyはどのくらいのユーザーがMessengerアプリを使っているかについてはコメントを避けたが、同アプリを通じて「何百万曲」もの楽曲がこれまでに共有されていると語った。

なお、同様の機能が他のチャットプラットフォームでも公開されるのかについては、今のところわかっていない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Spotify、2016年度のユーザー1億4000万、売上50%アップ――レーベルとの交渉力もアップ

Spotifyのビジネスは順調だ。昨年は売上を50%もアップさせている。同社のミュージック・ストリーミングは総額で33億ドルを稼ぎ出した。これは木曜日にRecodeが報じた決算書類〔PDF〕で確認された。Spotifyのユーザー数も有料、無料合計して昨年の1億2600万人から1億4000万人に成長している。

しかし良いニュースの陰には悪いニュース、というよりむしろSpotifyは今後も成長を続ける必要があることを示すニュースもあった。同社は今後数年の間に少なくとも20億ドルをレコード・レーベルに支払う必要がある。この金額はユーザーが実際に音楽を聞いたときに支払われる曲単位のライセンス料とは別個で、レーベルが今後もSpotifyに協力していくとことを保証するものだ。

売上が大きい割合にSpotifyが確保した利益が比較的少ないのは主としてこの巨額の支払いがあるためだ。レーベルを始めとする著作権者の協力を確保するために、売上の大部分は用いられている。われわれのJosh Constine記者が指摘したとおり、Spotifyは最近著作権者に対する交渉力を強めつつある。しかし急に利益率をアップさせるようなものではない。

Spotifyが5000万の有料ユーザー(これは3月の数字で、その後アップデートされていない)を確保したことはたしかにレーベルに対する立場を強化したはずだ。しかし今日明日にも力関係に劇的な変化が起こると期待すべきではないだろう。

e画像: Thomas Trutschel/Photothek/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

テイラー・スウィフトとSpotifyが復縁――全楽曲が主要サービスで聞けるように

2014年の別れからしばらくが経ち、テイラー・スウィフトとSpotifyが再び手を結ぼうとしている。アルバム『1989』の販売枚数が1000万枚を突破し、個々の楽曲の販売数も合計1億曲に達したことを記念し、テイラー・スウィフトは、6月8日の深夜よりこれまでに発表された全音源が全ての音楽配信サービスで聞けるようになるとTwitter上で発表した

この発表以前にも、Apple Musicではテイラー・スウィフトの楽曲が配信されていたが、今回の決定によりSpotifyやAmazon Music Unlimited、Amazon Prime Music、Tidal、Pandora Premiumなどでも彼女の曲を聞けるようになる。業界筋によれば、Spotifyでは広告付きの無料プランと有料プランの両方が配信対象となる。

音楽配信サービスに抵抗しているアーティストの中でも特に名の通った彼女が方針を変更したことから、これまで制作者に十分な対価を支払っていないと批判されてきた音楽配信サービスに対するアーティストの見方が変わってきたのかもしれない。最近では、SpotifyとApple Musicの有料登録者数がそれぞれ5000万人と2700万人を超えたこともあり、アーティストの音楽配信サービスからの収益が増加し、物理的なメディアの売上の穴を埋め始めている。

テイラー・スウィフトは、無料プランでも彼女の曲が聞けることに納得できず、Spotifyとは2014年に決別した。当時彼女はTimeに対して「芸術作品は固有の価値があるものとして扱われるべきだと思っています」と語り、Spotifyと他社との違いについては「Beats MusicやRhapsodyでは、私のアルバムを聞くためには有料プランに加入しなければいけません。そのおかげで、私のつくったものに価値があると認識できるのです」と説明した。

テイラー・スウィフトとSpotifyが復縁。

その頃Spotifyは、ユーザーの混乱を避けるために、有料プランと無料プランで聞ける楽曲に差をつけないようにしていた。そのため、テイラー・スウィフトはほぼ全ての楽曲をSpotifyから引き上げることに(今年の4月、Spotifyは複数のレーベルと新たな契約を結び、無料プランでの売れ筋アルバムの配信を有料プランから2週間遅らせる代わりに、レーベルに支払われるロイヤルティーを下げることを決めた)。

しかし、同社に近い情報筋によれば、メディア各社がこの件を一斉に取り上げた結果、Spotifyの新規ユーザー数は急増したとのこと。「テイラー・スウィフトの曲以外ならSpotifyで全部無料で聞けるの?じゃあ登録しよ」という人がたくさんいたようだ。

その後彼女は、3か月間の無料トライアル期間中はアーティストへロイヤルティーを支払わないと決めたApple Musicと対立することに。当然ながらこの仕組みの下では、Appleのマーケティングのために、アーティストが不利益を被ることになるとテイラー・スウィフトは考えたのだ。最終的にAppleが折れ、トライアル期間中もアーティストにお金が支払われるようになった。また、Apple Musicは広告付きの無料プランを提供していなかったので、テイラー・スウィフトの楽曲を配信しているというのが彼らにとっての売りになった。

しかし最近アーティスト側も、基本的に音楽配信というのは、コンサートやグッズといった主要な収益源のための販促手段なのだということに気づき始めた。Spotifyで楽曲が配信されていれば、テイラー・スウィフトの曲をラジオでしか聞いたことがなかったという人が、コンサートチケットやTシャツにお金をかける熱心なファンへと変わっていく可能性がある。さらに音楽配信サービスの現在の成長率を考えると、ロイヤルティーの金額はこれから段々と全盛期のCDの売上に近づいていくだろう。

いずれにせよ、音楽配信サービスはなくならない。アーティストはこの仕組みを利用しなければ、ファン(既存・見込み共に)を失うだけだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

アーティスト向け収益管理プラットフォームのStem――運営元が800万ドルを調達

音楽配信サービスが一般に広がり、SpotifyやYouTube、Apple Musicなど、楽曲の流通チャンネルも増えてきたが、アーティストへの支払いプロセスにはまだ問題が残っている。

同じ曲に複数人のアーティストが関わっていると状況はさらに複雑化し、それぞれのプラットフォームでの収益から、誰にいくら支払うべきなのかというのがわかりづらくなってしまう。さらにアーティストは収入が予測しづらいという問題を抱えており、Milana RabkinをはじめとするStemの共同ファウンダーはそこに商機を見出した。そして同社は、アーティスト向け収益管理プラットフォームの更なる改善を目指し、この度Evolution MediaとAspect Venturesが中心となったラウンドで800万ドルを調達した。今回のラウンドには、他にも複数の戦略的投資家と既存株主のUpfront Venturesが参加していた。

Stemでは、各音楽配信サービスからの収益がエスクロー口座のようなものに一旦集められるようになっている。その後、事前に決められた割合に応じて、それぞれのアーティストに収益が分配される。Rabkinによれば、ある楽曲の制作に関わった全てのアーティストや共同制作者は、予めそれぞれが受け取る収益の割合に合意しなければならない。その後楽曲がアップロードされ、代表となるアーティストがそれぞれの分け前をプラットフォーム上で設定すると、従来のプロセスよりもかなり速く支払いが行われる。作品の公開後、だいたい30〜60日程度で収益データを確認できるようになるとRabkinは話す。

「これまでに誕生したフィンテック関連のツールは、小規模事業者のビジネスを支えるようなものばかりでした」とRabkinは語る。「アーティストやクリエイターも彼らと何ら変わりないはずなのですが、クリエイティブな人たちのニーズに合ったツールはこれまで存在しませんでした。IntuitはMintで小規模事業者の手助けをしていますが、収入が不安定で収益源の追跡が難しいアーティストの状況は彼らとは違うのです。Mintのアカウントに銀行口座を紐付けるだけであれば簡単なことですが、iTunesやYouTube、Spotifyといったサービスとの連携となると話は別です」

Stemが取り組もうとしている別の問題が、発表したコンテンツから収益をあげられない可能性のある共同制作者への支払いの徹底だ。業界経験の少ない人たちをはじめに、アーティストの中には純粋に販促やマーケティングの目的でコンテンツを公開する人たちもいるのだ。彼らがツアー資金を貯めるので手一杯にならなくてもいいように、Stemは新人アーティストも最初から収益を得られるような仕組みを構築しようとしているのだとRabkinは言う。

それぞれのプラットフォームからStemが収集するデータ自体に価値を見出す人もいるかもしれない。アーティストであれば、当該データからファンの情報を調べ、ターゲットの好みにあった楽曲制作に取り組むことができる。ツアーの計画や他のマーケティング施策に役立つ情報が得られる可能性もある。しかし、ここに収益関連の情報が加わることで、これまでよりもハッキリとファンのエンゲージメント度合いを掴めるようになるだろう。

「サプライチェーンと深く関係しているロイヤルティーの問題は、音楽業界の中でもなかなか解決の目処が立っていませんでした」とRabkinは話す。「しかし、新たなフレームワークや関係データベース内のデータを正規化するための素晴らしいツールが最近誕生しました。そのおかげで、昔は不可能だった方法で支払いに関する情報を簡単に追跡できるようになったのです」

また、Stemはアーティストへの支払いを管理するためにデータやお金を一か所に集めているだけなので、音楽配信サービスとは競合しないと彼女は言う。今のところは同社がこの収集プロセスを担当しているが、今回調達した資金を使って、Stemは既存のツールを音楽配信サービスの運営企業が使えるような形に変えていこうとしている。

そうは言っても、この業界でも今後競争の激化が予想されている。Kobaltも先月、7億7500万ドルの評価額で7500万ドルを調達したばかりだ。さらに、iTunesやSpotifyといったサービスが将来的にアーティスト向けのツールを簡略化することで、Stemのようなサービスがなくても各アーティストにきちんと支払いが行われるようになるかもしれない。しかし、シームレスなツールを構築することで、Frank OceanやChildish Gambino、DJ Jazzy Jeff、Anna Wise、Chromatics、Poolsideなど、さまざまなアーティストを顧客に迎えられることをRabkinは祈っている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Fenderの新製品はWi-Fi内蔵のIoTギターアンプ――人気アーティストの音色を再現したプリセットも

Fenderにとって2つ目となるアプリ「Tone」は、前作よりもかなり野心的だ。私が知る限りでは、Toneのように3種の新しいアンプと同時にリリースされたスマートフォンアプリというのはこれまでに存在しない。もちろん新しいアンプを使う上でこのアプリは必須ではないが、間違いなく大きな魅力のひとつではあるし、スマートフォンならではのやり方で、新しいアンプでは尽きることのないほどさまざまなギターの音色を再現できる。

新発売のMustang GTシリーズは、待ちに待ったWiFi・Bluetooth標準装備のコネクテッドアンプ。全てがインターネットに繋がっている2017年の今、このようなスマート機能を備えたアンプの登場は当然の結果とも言える。みんなIoTの世界に生きているということだ。しかし、Fenderはこの機能を本当にユーザーにとってプラスになるような形で導入しており、その点は何でもかんでもインターネットに繋げておけばいいと言わんばかりのプロダクトとは違う。

Fenderは数年前より先進的なテクノロジーの採用に力を入れてきたが、未だにかなり慎重なスタンスをとっている。昨年にはカナル型モニターを発表し、ギターやアンプを中心とした同社にとってのコンフォートゾーンからようやく飛び出したが、彼らにとって初となるチューニングアプリFender Tuneからは、まだまだ守りに入っているという印象を受けた。

Fenderほどの企業であれば、新しいテクノロジーの導入にあたって、あまり大きく賭けたくないのもわかる。Mustang GTのような機能を全てのアンプに採用するなどもってのほかだ。一方で、Fenderが長くユーザーに愛される理由のひとつは、そもそも彼らを人気ギターメーカーの地位に押し上げた、同社のテクノロジーに対する姿勢でもある。

Mustangラインは、Fenderが新たな道を進む上では最適なスタート地点だと言える。このデジタルアンプは、従来の真空管アンプからの脱却を意味し、今後ユーザーはエフェクターといった周辺機器なしで幅広い音色を再現できるようになる。デフォルトでもかなりの数のプリセットが準備されており、コントロールノブの横に搭載された小さなカラーディスプレイ上に全てが表示されるようになっている。

そしてユーザーは、Fender製のさまざまなアンプの音を再現したプリセットから好みのものを選ぶことができる。オンラインポータルには標準装備されているもの以外のプリセットも準備されているので、ユーザーは全てを携帯電話上で行わなくても済むが、モバイルアプリがあってこそ、このアンプの真価が発揮される。中にはRed Hot Chili PeppersやAnthraxといった有名どころから、Death Cab For CutieやBest Coastなどのインディー系を含め、多様なジャンルのアーティストの音色を再現したものも含まれている。

またFenderにとってのモバイルアプリの利点は、ユーザーに継続的にアップデート版を提供できることだ(そして将来的には有料のプレミアムラインも販売されることだろう)。

テーブル上におけるくらいのサイズの、1番小さなモデルでも249ドルと値段も手頃だ。価格設定や表現できる音の多様さを考えると、初心者にはかなり魅力的な商品として映るだろう。ギターをはじめたばかりの人にとって、エフェクターのツマミをあれこれいじることが、どれだけ難しくてや苛立つことかというのを、永遠のギター初心者である私はよく知っている。しかし、このアンプとアプリがあれば、駆け出しのギタープレイヤーでも自分が求めるサウンドにグッと近づくことができるだろう。私も今週デモ機を実際に触ってみたが、正直いってかなりいい音が鳴っていた。

当然のことながら、Fenderの売上の大部分は初心者から成り立っている。というのも、楽器を買ってそのうち触らなくなってしまうというのは、通過儀礼のようなものだからだ。

さらに、これはプロ向けの製品ではないし、本物の真空管アンプとエフェクターを組み合わせたようなリッチな音はしない。そのため、Mustangは基本的には練習用のアンプの部類に入るだろう。その一方で準備されているプリセットの数を考えると、サイズの大きなモデルあればバーで行われるライブくらいであれば使えるかもしれない。また、各アンプにはUSB端子も搭載されているので、直接GarageBandでギターを録音してデモを作ることもできる。

正直言って、ギターメーカーとして世界的に有名なブランドの1つがIoTの分野に進出しようとしていると聞いたとき、私はかなり疑ってかかっていた。しかしMustangシリーズは、ただ流行りにのって新しいテクノロジーに手を出してみようという類のものではなく、きちんとテクノロジーを使って利便性を向上させ、さらには小型アンプの利点を上手く伸ばしているような商品だ。

モバイルアプリは既に無料で公開されており、Mustangアンプは(アメリカ国内では)今週中には大手楽器店の店頭に並ぶ予定だ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter