新しい企業ITの形: モバイル-クラウドエンタプライズ

[筆者: Sravish Sridhar]

編集者注記: Sravish Sridharは、KinveyのファウンダでCEOだ。

エンタプライズITは今、Webベースのクライアント/サーバシステムからモバイル-クラウドへ、というプラットホームシフトを経験しつつある。大手のテクベンダたち全員が、このシフトを機会としてとらえ、Platform as a Service(PaaS)やBackend as a Service(BaaS)の技術を立ち上げ、あるいは買収して、その機に乗じようとしている。

FacebookはParseを買収し、PayPalはStackMobを買収、SalesforceはSalesforce Platform Mobile Servicesをローンチ、AWSは独自のモバイルツールのスイートをリリース、PivotalはPivotal CF Mobile Servicesをローンチ、そしてRed Hatはごく最近FeedHenryを買収。…と数えていけばきりがない。

長年PaaSは、アプリケーション開発の未来だ、と喧伝されていた。デベロッパはアプリケーションサーバとスケーラブルなインフラストラクチャにセルフサービスで自由にアクセスでき、自分のところのインフラチームから解放される。そしてBaaSは、アクセルをさらに一段踏み込み、コンテキストと抽象化を伴うモバイル固有の機能、たとえばプッシュ通知のアプリへの簡単な組み込み、などバックエンド機能の使いやすい抽象化を提供する。

そのほかBaaSは、アイデンティティデータベースや、データとファイルの保存、ユーザ独自のビジネスロジックを動かせる環境、なども提供する。つまりBaaSは、企業のクラウドコンピューティングの一環として、デベロッパがモバイルやタブレットやWebのアプリ/アプリケーションを動かすために必要とするクラウド上のバックエンドを、容易にセットアップ/使用/そして運用できるようにする。

では一体、何が変化を引き起こしたのか? エンタプライズにおける、このような変化の動因は何か? 今その界隈の動きが活発なのはなぜか? 二つの(互いに関連した)理由を思いつく: PaaSはデベロッパサービスとして不完全であり、しかも今ではコモディティ化している。そして、モバイルツールセットのプロバイダは、顧客がどんなクラウドを利用するかに関して、影響を及ぼしうる(後述)。

PaaSは不完全なサービス

PaaSはそのままでは何もない地盤であり、エンタプライズITが次世代のアプリケーションを構築できるためには、そこにモバイル機能…内製またはベンダから購入…の層を加えなければならない。

しかしBaaSのプラットホームなら、上記の‘加える’の部分を省略していきなり開発を始められる。BaaSは、クライアントデバイスのモバイル機能の完全なワンセットを提供する(キャッシング、データのシンク、暗号化、位置対応機能、などなど)。さらにBaaSは、次世代アプリケーションのすべてが必要とするモバイルバックエンド機能も提供する: アイデンティティ管理、データサービス、エンゲージメントサービス(プッシュ通知、アクセス解析など)、そしてビジネスロジック。提供されるこれらの機能の一つ一つは、完全なSaaS形式であり、それらをコンテキストで結びつけることにより、良質なユーザ体験を作り出す。

第一世代のモバイルツール…各種のMEAPやモバイルSDK…は、企業がそれぞれ一回かぎりのアプリケーションをローンチするためのツールやサービスを提供した。しかし今日のエンタプライズITは、今および今後、どんなユースケースのためのどんなアプリケーションでも動かせるための…一回かぎりではない…標準化されたプラットホームがほしい、と思い始めている。そういう標準的汎用的なプラットホームがあれば、個々のビジネスラインがセルフサービス方式でそれを自主的に使えるのだ。

PaaSのコモディティ化

モバイルはエンタプライズにおけるクラウドの採用に拍車をかけている。この二者は理想のカップルだ。企業は革新的なモバイルアプリとユースケースで競争に勝ちたいし、それと同時にモバイルの世界の激しい変化のペースに取り残されたくない。そしてこの二つの望みを共に満たすものは、クラウドベースのモバイルサービスプロバイダしかない。だからクラウドとモバイルは、もはや切り離せない。

それと同時に、インフラやプラットホームのプロバイダたちは、自分たちの提供物がますますコモディティ化してきたことに気づいている。OpenShiftがオープンソースで入手できるし、Google App Engineは無料、それに、いつも派手に報道されるGoogleとAmazonの価格戦争が、インフラストラクチャの料金を信じがたいほど低く押し下げている。さらに、この状況にプラスして、クラウドプロバイダは他社製品への移行が簡単にできる、他社製品に移行するのがやさしいし、トラブルもほとんどない。そこでPaaSプロバイダの多くは、独自のモバイル付加価値サービスをセットすることによって、自社製品の現在の顧客が浮気をしないように努力する。買収が盛んに行われるのも、今やほとんどのプラットホームが実質的に標準的なコモディティになっていて、A社からB社への移行に苦労が伴わないからだ。とくにBaaS専業の独立系プラットホームは、買った側が簡単に構成して、自分の環境でその日から動かせる。俺はどこにも買われたくない、と思っているのは大手のPaaSだけだ。

これからどうなる?

BaaSの連中は今後もモバイルのツールセットを作り続けるだろう。企業のいろんなユースケースに対応して、自社製品の魅力を高めるためだ。またデベロッパ向けには使いやすさとエレガンスを増し、企業ITのためにはセキュリティとスケーラビリティとコントロールを確保する。BaaSを兼ねているようなPaaSプロバイダは、企業が自分たちのクラウドを使うよう努力するが、BaaS専業のところは、クライアントのニーズにもっとも合ったクラウドプロバイダを選ぶ。

BaaSを利用してバックエンドの苦労から解放されると、エンタプライズITでは内部開発のエコシステムが再興する。そのエコシステムには、Jenkinsのような継続的インテグレーション、Gitのようなソースコントロール管理、Jiraのような問題追跡サービスなどが含まれるようになる。重要な違いは、これまでのようにIBMやSAPなどから一つの全体的なアプリケーション開発スイートを買うのではなく、現代的で開発効果の高いモバイルエンタプライズは、目的に合った個別のベストソリューションをいろいろ選び、自分たち独自のニーズに合った環境を構成することだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


MicrosoftがDockerをWindows Serverでサポート…Docke社にとっても大きな商機

コンテナ技術のDockerは最近のもっともホットなデベロッパ向け技術のひとつで、今では大手のクラウドベンダのすべてが、何らかの形でサポートしている。しかし本来、DockerはLinuxのコンテナをベースとする技術だ。言い換えると、Linuxサーバ上の技術。しかしMicrosoftは今日(米国時間10/15)、Windows Serverの今後のリリースでDockerをサポートする、と発表した

Microsoftのエンタプライズ向けクラウドサービス担当EVP Scott Guthrieが今日の発表声明の中で、“顧客が今日のモバイルファーストでクラウドファーストな世界でイノベーションを志向するとき、そのために必要な柔軟性を提供して行くことはきわめて重要である”、と言っている。

Microsoftの発表によると、Windows Serverの次のリリースでDocker Engineをサポートし、それがコンテナの作成、稼働、およびオーケストレーションを担う。そのDocker Engine for Windows Serverは、Dockerのオープンソースコミュニティが協力して開発され、Microsoft自身も一コミュニティメンバとして参加する。このエンジンのイメージ(バイナリ)もDocker Hub(Dockerのイメージのコミュニティによるメインのリポジトリ)から入手できる。

Microsoftはこれよりも前に、クラウドコンピューティングサービスAzureでDockerのサポートを始めているし、DockerとMicrosoftはAzure上のコンテナオーケストレーションをDockerの次のリリースに統合する作業を進めている。また今日のMicrosoftの発表では、Docker HubがいずれAzure Management PortalとAzure Galleryに直接統合され、“ISVたちとクラウドデベロッパから成るMicrosoftの大きなコミュニティがDockerのコミュニティの最良の成果にアクセスでき、Windows ServerとLinuxの両方で迅速なイノベーションを実現できるようにする”、のだそうだ。

Microsoftが今明らかに気にしているのは、コンテナとポータビリティと、ソフトウェアを複数のマイクロサービスで配布するという、最新のトレンドだ。エンタプライズにおけるWindows Serverのシェアはまだまだ大きいが、バスに乗り遅れるわけにはいかない。Microsoftは”Drawbridge“と呼ばれる独自のコンテナ技術を最近の数年間で開発し、このところ、その名をちらほらと、あちこちで見かけるようになった。今日発表されたDocker移植の件と、このコンテナプロジェクトとの関係は不明だが、 Microsoftは当面、Dockerに賭けることに決めたのだ。その大きな勢いを、無視することはできなかった。

Dockerにとって今日の発表は、Windows Serverを使っている大きなエンタプライズへの今後の進出を意味する。DockerのファウンダでCTOのSolomon Hykesは今日の声明で、“エンタプライズ市場におけるWindows Serverの強さと、それがDockerのプロジェクトに加わることは、Dockerのコミュニティとエコシステムにとって大きな転機となる”、と述べている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


動画マーケ=テレビCMは古い、ウェブで成長の映像制作「LOCUS」が1.8億円調達

去年も聞いたかもしれないが、2014年は「動画元年」と言われる。調査会社のシード・プランニングによれば、2013年の国内ネット動画広告市場は、前年比329%の132億円に成長しているのだとか。いつが動画元年かはさておき、日本では広告以外にもサービスやアプリの紹介、求人、展示会などで動画の採用が進んでいるは確かだ。こうした動画マーケティングの波を受けてか、映像制作を手がけるLOCUS(ローカス)が15日、ニッセイ・キャピタルとみずほキャピタルから1億8000万円の資金調達を実施した。

クラウドソーシング×受託制作で競合優位

LOCUSの特徴は、審査を通過したフリーランス映像クリエイター400人超に制作を依頼できる「クラウドソーシング機能」と、従来型の「受託制作機能」のいいとこ取りをしていることだ。

実写やCG、アニメーションなど幅広い表現が可能なクリエイター、クライアントとの直接取引による中間マージンの排除、社員によるクライアントのヒアリングやクリエイターの品質管理――こうした強みで、競合となる制作会社や広告代理店、クラウドソーシングに優位点を出そうとしている。

8月には、ランサーズがパートナー企業向けに自社会員のデータベースを公開する「Lancers Open Platform」を発表するのに伴い業務提携。ランサーズに寄せられる動画制作依頼に対して、LOCUSが企画や要件定義、クリエイターのアサイン、ディレクションを行う取り組みも開始している。

制作の流れはまず、営業担当が映像を作る目的をヒアリングし、ぼやっとした要望を具現化して映像の企画概要を提案する。企画概要と見積りにOKが出たら、実際にLOCUSの営業とディレクター、フリーランスのクリエイター、クライアントがミーティングを実施。映像のシナリオ、スケジュール、役割分担、キャスティングなどをすり合わせた上で、撮影と編集に入る。

映像の初稿はクライアントと一緒に確認しながら修正し、その後はメールか電話でやりとりをして完成となる。映像修正のやりとりもオンラインでできれば便利そうだが、この点については今回調達した資金でシステムを強化する。具体的には、クライアントとクリエイターが同じ画面で動画を共有し、修正点をテキストで動画にかぶせることができる。当事者限定のニコニコ動画のようなイメージだという。

「動画マーケティング=テレビCM」の固定概念は崩れ始めている

サービスプランは映像編集やナレーションなどの限られた工程のみを請け負うパッケージ(19万円〜)とオーダーメイドがあり、2013年の制作実績は1000件以上。受注件数の6割以上を占めるオーダーメイドの料金は2万円〜1000万円とピンキリだが、発注件数ベースでは50万円〜60万円がボリュームゾーンだ。

これまでに、日本生命やすかいらーく、LINEといった大手企業から中小ベンチャーまで600社以上と直接取引。売上は2013年度が2億1000万円、今期はその倍近くの約4億円を見込んでいる。LOCUS代表取締役の瀧良太によれば、最近では初めてウェブ動画を作る大手企業からの引き合いが多いのだという。

「例えば、消費財メーカーが新商品を出すときに、反響が読めないテレビCMの予算枠を抑えるのはなかなか難しい。だったら、ウェブ広告の反応を見てからテレビCMを流すか決めよう、というメーカーが増えてきました。テレビ以外に動画を流せる面(ウェブ)が整ったことで、『動画マーケティング=テレビCM=高価』といった固定概念は崩れつつあります。」

入社1年目に社内ベンチャーで映像事業→黒字化→事業撤退→MBOで会社設立

2010年4月に設立したLOCUSは、映像制作に特化したクラウドソーシング「Viibar」の競合と言える。LOCUSもスタートアップのように見えるが、その歴史は少し長い。

瀧は人材派遣のビー・スタイルに新卒入社した2006年、社内ベンチャーとして映像制作の受託事業を発足。自社の顧客から採用に使う動画の受注が相次ぎ、その後は企業紹介や研修用の動画に横展開して黒字化を達成した。しかし、リーマンショックの煽りで新規事業を撤退することが決定。そこで瀧が自らMBOを行い、LOCUSを設立するに至った。

今回調達した資金では、先述したクライアントとクリエイター間で動画データの授受を行うシステムの強化に加えて、営業人材を増員。さらには、
動画コマースや動画クリエイター育成などの新規事業開発も進め、2019年までにIPOを目指すそうだ。


Amazon、DynamoDBでJSONをサポート―無料枠を25GB、2億リクエストに一挙拡大


今日(米国時間10/9)、AmazonはDynamoDB NoSQLデータベースサービスにメジャー・アップデートを実施したことを発表した。これによって無料で利用枠が大幅に拡大され、JSONフォーマットの文書をデータベースの単一アイテムとして格納することが可能になった。

他のAmazonのクラウド・サービスと同様、これまでもDynamoDBはトライアル用の無料版を提供してきた。DynamoDBの無料版の制限はかなり厳しく、記憶容量は100MB、読み出し10ユニット、書き込み5ユニットとなっていた。試用には使えるが、意味のあるアプリケーションを動かすことは不可能だった(無料枠はもちろん試用に設けられているのだが)。しかし今日からその制限は大幅に緩和される。なんとデータ容量は25GB、月間2億リクエストまでが無料で利用できるようになった。

AmazonのCTO、 Werner Vogelsによれば、これだけの能力があれば、月間アクティブ・ユーザーが1万5000人あるゲーム・サイトや月間50万インプレッションの広告プラットフォームを運営することが可能だという。

これに対してGoogleのNoSQLデータベース・サービスCloud Datastoreの無料データ容量は1GBだ。またMicrosoftのJSONベースのDocumentDBサービス(現在プレビュー版)はオープンソース・デベロッパーのみに無料版を提供している。

Vogelsはまた今回のアップデートについて次のように説明している。最近、多くのNoSQL、リレーショナル・データベースが(MicrosoftのDocumentDBのように)JSONスタイルのドキュメントを扱えるようになった。これまでもDynamoDBにJSON文書を格納することは可能だったものの、デベロッパーは格納された文書の内容を直接操作することができなかった。その点が今日から変わる。

今回のアップデートで、デベロッパーはAWS SDKのJava、.NET、Ruby、JavaScriptを用いてJSONデータをDynamoDBの固有データ・タイプにマップすることができるようになり、DynamoDBはフル機能を備えた本格的ドキュメントDBに生まれ変わった。これによってデベロッパーの負担は大幅に軽減されることになる。JSONオブジェクトのサイズは大きくなりがちなので、 AWSは1レコードのサイズの上限を400KBに引き上げた。

今回のアップデートはJSONオブジェクトのサポートが目立つが、Vogelsは「DynamoDBは新しいトランスレーション・レイヤーを介してデータ・タイプとしてHTMLとXML文書をサポートするようになった」と強調した。技術的詳細についてはこちらを参照

新機能はAmazonのUS East (北バージニア)、US West(オレゴン)、Asia Pacific(東京)、EU(アイルランド)の各リージョンで直ちに利用可能。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Dockerが人材獲得を目的としてKoalityを買収…ハイブリッドクラウド技術を充実

【抄訳】

最近4000万ドルの資金を獲得したDockerが、最初の大きな買い物としてKoalityの買収を決定した。買収の価額は公表されていない。

2012年にローンチしたKoalityは、一つのビルドの複数のインスタンスを迅速にセットアップできる技術により、ソフトウェアの試験をより効率化する。つまり、プロダクションというよりテスト方面の技術だ。実は同社は昨年のTechCrunch Disrupt San Franciscoで、Peter Thielなどの名士たちの支援により180万ドルのシード資金を獲得している。したがって同社の将来性は明るいように思えたが、突然、Dockerに吸収されることになってしまった。

DockerのCEO Ben Golubは、買収の目的はKoalityの技術ではなく、同社の4名の社員と彼らがデベロッパをよく理解していることだ、と述べている。“人材獲得が主な目的だ。彼らはデベロッパに対する直観が優れているし、デベロッパのライフサイクルを熟知している。クラウドとオンプレミス両方の経験知識があるが、うちが彼らのプロダクトを統合するつもりはない。統合するのは、チームだ”、とGolubは説明している。

そしてそのチームは、特別なスキルをDockerにもたらす。Golubは曰く、“デベロッパがコードを試験、ステージング、プロダクションと移行させていくときに必要となる課題やインタフェイス、それに配布や展開をホスティングされる部分とオンプレミスの部分に分けて行うハイブリッド方式の実践的なスキル、うちが欲しかったのは、この二つのスキル集合だ”。とくにプロプライエタリなリソースの多い金融や医療分野では、このハイブリッド方式の実装が多いのだ。従来のDockerは、それらへの対応が十分でなかった。

【後略】

写真: (c) Can Stock Photo

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


AdobeのCreative SDKがiOS向けで公開ベータへ、Androidももうすぐ

Adobeは、今日ロサンゼルスで行われた同社のMAXカンファレンスで、Creative SDKの公開ベータのローンチを発表した。同社が数か月前に披露したCreative SDKは、Photoshopのエディティング機能の一部、PSDファイルの操作、Adobeが最近開設したCreative Marketへのアクセス、そして同社が新たにローンチしたハードウェア製品の利用を、サードパーティのモバイルデベロッパに提供する。

このSDKは発表から今日まで少数のデベロッパを対象に非公開ベータをやっていた。今日のバージョン1.0の公開ローンチにより、多くのデベロッパが自分のアプリケーションからAdobeのCreative Cloudの機能集合にアクセスできるようになる。

すでにこのSDKを使っているアプリケーションの例として、動的描画エンジンFabrikaやプレゼンテーションアプリFlowboard、それにAdobe自身のモバイルアプリの数々が挙げられる。

Adobeとモバイルアプリと来れば、記者会見などでいつも、Androidバージョンはいつになるか、と質問が飛ぶ。同社のアプリケーションの新しいスイートに関してはそれはまだまだだろうが、このCreative SDKに関してはAndroidバージョンが今、非公開ベータまで来ているらしい。Adobeとしては今回の公開ベータにAndroidアプリも含めたいようだ。

Creative SDKは、パッケージ商品としてのソフトウェアからオンラインのサービスへ移行しつつあるAdobeの姿勢の好例だ。エンドユーザや消費者だけでなく、デベロッパが使用するツールも、そっちへ移行していく。Creative SDKに関して残る疑問は、その、今後の課金の方式だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


クラウドの価格競争に勝者なし

今週初めにGoogleは、Google Compute Engineの料金を一律に10%値下げした。費用はきわめて低くなり、ほとんど誰にとっても、インフラをクラウドで動かすためのコストは些細なものとなった。でもクラウドの価格競争がこれ以上続けば、最終的にどこまで安くなり、そして実際にどこかが最終的な勝者になるのだろうか?

最低の料金とはもちろんゼロだが、しかしこれらの企業には経費が発生するし、クラウドコンピューティングのビッグスリー、Google、Amazon、MicrosoftにとってIaaSは副業だが、サービスを無料にすれば株主が黙っていないだろう。今それは、ゼロに急速に近づいているとはいえ。

そして今週は、OracleがそのDatabase as a Serviceの料金をAmazonと同程度まで値下げすると発表して、世間を(少なくともぼくを)驚かせた。長年、料金が高いことで有名だったOracleが、価格戦争に加わるというのだ。ビッグスリーにはそれなりの来歴と状況があるが、Oracleはエンタプライズソフトウェア(およびハードウェア)で高い利益を得てきた企業だから、おどろきだ。

でもこれが、今日のクラウドの料金の現状だ。SalesforceやBox、Zendesk、WorkdayなどのSaaSたちはこのような値下げ競争に走らないようだが、インフラ屋さんたちはこぞって値下げ合戦に参加し、下向きのプレッシャーが今も続いている。そのうち、店をたたんでしまう企業も、出現するのだろうか。

どれだけ料金が安くなっても、今だにクラウドを疑問視する企業は少なくない。でもそんなCIOたちも、どこまで、クラウドの低料金を無視できるのか? 今や、インフラの自前化にこだわることは、良い経営判断とは言えないし、大企業がクラウドサービスに対してどれだけ不安を抱いていても、その低料金は無視できないだろう。

しかし、悪魔は細部に宿るとも言う。インフラの一部をビッグスリーに移行すると、テレビのケーブル企業と同じく、最初はお試し料金だ。お試し期間が終わり、なかなかいいから使い続けようとすると、料金の高いプランを押し付けられる、という定石がある。

今後クラウドベンダが全員この手を使う、という兆しはもちろんない。むしろ今は価格競争が激しいから、それはできない。他社が値下げに走っているときに、高料金のサービスを顧客に押し付けるなんて。

でも、ここがベンダにとって難しいところだ。これ以上の価格競争は、もうそれほどの営業効果を上げないかもしれない。しかも計算機使用の料金は、定額制ではない。彼らが料金を下げ続ける理由は、実際の料金が動く標的だからだ。コンピューティングのコストは、ハードウェアと電力が無料にならないかぎりゼロにはならない。ビッグスリーはある時点で、この危険なゲームをこれ以上続けるのか、決断しなければならないだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


SSDベースの仮想サーバを月額$0.99で提供するホスティングの老舗Atlantic.Net、DigitalOceanの人気に対抗

クラウドホスティングのお値段はどんどん下がっているが、そのいちばん最近の例がAtlantic.Netかもしれない。この1994年からホスティングサービスをやっている老舗が今日(米国時間9/30)から、RAM 256MB、SSD 10GB、アウトバウンド帯域1TBで月額0.99ドルというVPSサービスを開始する。オペレーティングシステムはLinuxかFreeBSDのどちらかを選ぶ。それまで同社のこのレベルのサービスは、月額4ドルだった。

Atlantic.Netによると、このサービスのターゲットは、頼りになる安価な開発用サーバを求めている初期段階で自己資本のみのスタートアップだ。RAMが256MBあれば、ベーシックな開発環境や会社のブログぐらいなら動かせるが、Atlantic.Netの本当のねらいは宣伝効果と、この入門的なプランのユーザになった人たちの今後のアップグレードだ。

最近この世界で人気者になりつつあるDigitalOceanには、これのほぼ倍の容量で月額5ドルのプランがある。

Atlantic.Netの利用プランはどれも秒単位で課金され、新たなサービスの立ち上げに要する時間はおよそ30秒、容量増大などのアップグレードは数クリックですむという。同社のサーバファームは今、ダラスとトロントとオーランドにあるが、近くヨーロッパとアジアにも開設する。

Atlantic.NetのファウンダでCEOのMarty Puranikは、今日の声明文の中で、“弊社は顧客に投資することによってそのアイデアの開花を助け、それと同時にクラウドの市場を今の10倍ぐらいにまで育ててグローバル化したい”、と言っている。

今回の超目玉商品の経済効果について尋ねてみると、同社のスポークスパーソンは、“このような形で顧客に投資すれば、顧客のプロダクトが軌道に乗り、黒字化したりプロダクションサーバが必要になったときに、今度はうちが利益を出せるようなプランを選んでくれる。目標はマーケットシェアの拡大ではなく、マーケットを今の10倍に広げることだ。テクノロジのコストが十分に安くなれば、その利用も目に見えて増大するはずだ”、と語った。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Adobe、ChromebookおよびChrome上で動作するPhotoshopの提供を開始

Photoshopのような複雑なアプリケーションを動かすことができないので、GoogleのChromebookは実用的ではないという意見もあった。しかし、これからは非実用性を訴えるのには、別の例を探す必要がある。そう、PhotoshopがChrome OSおよびChrome for Windows上で動作するようになったのだ(まずは米国内の教育機関向けサブスクリプションに登録している利用者向け)。

まずはAdobeの教育機関向けCreative Cloudに登録している人に向けての提供となる。プロダクトのベータテストとしての役割も持つわけだ。サービスの一般提供開始がいつになるのかはまだ明らかになっていない。来週にはMAXカンファレンスが開かれ、これは発表の舞台としてはふさわしいものではある。但し、そこで一般公開となると、ベータテスト期間があまりに短いものとなってしまう。Adobeは今のところ、教育機関向けサービスの利用者は、少なくとも6ヶ月間はストリーミング版Photoshopを提供するとしている。

Adobeによると、提供するストリーミング版はPhotoshopの機能をほぼすべて備えたものであるとのこと。ネットワーク上で動作するため、ローカルデバイスへのインストールなどは一切必要ない。また、ファイル操作はすべてGoogle Driveを使って行われることになる。GPUを使った機能と、印刷機能については省かれている。

現在流通しているPCおよびChromebookであれば、このPhotoshopを動作させることができるそうだ。ただし回線速度は5Mbps以上を推奨するとのこと。ダイアルアップではさすがに使えないようだ。利用中に接続が切れてしまったような場合、Google Driveのリカバリフォルダに最終段階のものが保存されるようになっている。

今年になって、AdobeはPhotoshopの一部機能を利用できるようにするCreative SDKをモバイル開発者向けに提供開始していた。しかし今回実現されたストリーミング版Photoshopは、そのSDKを用いたものとは全く別モノだ。Adobeがアプリケーションの配布手段としてだけでなくクラウドを使ったサービスに広く取り組んでいることの証と捉えることもできよう。今後は、ストリーミング版に以前買収したAviaryの技術を統合してくることになるのかもしれない。

ストリーミング版を、まずPhotoshopから始めたのは当然のことと言えるだろう。フル機能のビデオ編集アプリケーションをストリーミング可するというのは現実的ではないかもしれない。しかしDreamweaverや、あるいはIllustratorなどであればストリーミング可もできよう。但し、利用者数でみればPhotoshopよりはるかに少なく、マーケットの反応を十分に得ることができにくいわけだ。

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(翻訳:Maeda, H


クラウド会計「freee」、シンガポールの投資会社とリクルートから6.3億円調達

クラウド会計ソフトのfreeeは25日、第三者割当増資を実施し、総額6億3000万円を調達することを明らかにした。引受先はシンガポール政府が所有する投資会社Temasek傘下のPavilion Capitalとリクルート投資子会社の2社。freeeはシードラウンドから数えて4度目の増資。これまでに合計17億5000万円を調達したことになる。

シンガポールの投資会社を選んだ理由

過去の資金調達ではシリコンバレーに拠点を置くDCMから出資を受けていたfreeeだが、なぜシンガポールの投資会社なのか? この点についてfreee代表取締役の佐々木大輔は、次のように説明する。

「すでにSaaSのビジネスモデルに親しみがあるため話が早く、サービス展開の建設的な話もできる。投資サイズも大きい。将来的な海外展開を考えるとアジアが主戦場になるので、アジアに強い知見を持つ投資家がベストという結論になった。」

シンガポールは、GoogleやFacebookがアジアのヘッドクォーターを構えるなど、アジアの中心地としての意味合いもある。freeeはこの地にアンテナを張ることで、ビジネス上に大きなメリットがあると見ているようだ。

freee代表取締役の佐々木大輔

リクルートとはプロダクトと営業面で協業

リクルートとは既に、リクルートライフスタイルが提供するPOSレジアプリ「Airレジ」に入力した売上実績を、freeeに自動的に会計データとして取り込むなどの連携を実施。今回の出資に伴い、リクルートグループ横断でプロダクトや営業面での積極的な協業も検討する。

あわせて同日、クラウド会計ソフトのfreeeに経費精算機能を追加した。freeeを導入する会社の従業員はどこからでも経費精算の申請ができ、会計ソフトへの仕訳もシームレスに登録できる。経費精算はiPhoneアプリからのレシート写真登録にも対応している。

調達した資金では、中小企業を中心とする法人向けの開発・サポート体制を強化する。5月にベータ版としてリリースした「クラウド給与計算ソフトfreee」もまもなく本格的に事業化する。


Red Hatが企業向けモバイルアプリ開発プラットホームFeedHenryを$82Mで買収…企業ITのモバイル化というビッグトレンドに対応

【一部要訳】

企業向けのLinuxディストリビューションを軸に、企業のITのためのサービス(とくにクラウドサービス)やデベロッパのための開発プラットホームも提供しているRed Hatが、アイルランドのこれまた企業向けのモバイルアプリ開発プラットホームFeedHenryを買収した。この買収に関する声明文の中でRed Hatは、6350ユーロ(8200万ドル)のキャッシュをFeedHenryに払う、と述べている。今日(米国時間9/18)はRed Hatの2015会計年度第二四半期の決算報告が行われる日なので、この買収の完了は第三四半期へ持ち込まれるものと思われる。同社は、買収の結果としてガイダンスを更新する、と述べている。

スマートフォンの今年の売上台数は120億台に達すると言われているので、Red Hatにかぎらず今やどの企業も、モバイルを無視できない。企業も、大企業も小企業もスマートフォンやタブレット、あるいはローミングするPCのためのアプリケーション開発やセキュリティ対策にこぞって取り組んでいる。IDCの調査によると、モバイルのアプリケーションプラットホーム(開発プラットホーム)の市場規模は2013年で14億ドル、2017年には48億ドルになる、という。

Red Hatのアプリケーションプラットホーム事業担当SVP Craig Muzillaは、声明文の中で、“モバイルのアプリケーションプラットホームは企業向けのソフトウェア市場において最速で成長している分野の一つだ”、と言っている。“今では企業のコンピューティングのあらゆる部分にモバイルが浸透しているので、企業向けアプリケーションのデベロッパたちも、これまでの企業向けアプリケーションの能力を拡張するようなモバイルアプリケーションを効率的に開発する方法を求めている。FeedHenryにより弊社の顧客は、Red Hatのエンタプライズソフトウェアが持つセキュリティとスケーラビリティおよび信頼性にモバイルの能力が持つアドバンテージを組み合わせて利用できる”。

エンタプライズサービスの分野ではかねてからヨーロッパのスタートアップが強くて、FeedHenryもその好個の例である。2010年に創業した同社は、昨年のシリーズAラウンドの一回だけで900万ドルを調達している。投資家はIntel CapitalやVMWareなどだ。FeedHenryのこれまでの顧客には、Aer Lingus、Baystate Health、アイルランド政府などがいる。

FeedHenryのCEO Cathal McGloinは声明の中で、“弊社は創業時から、オープンな技術とクラウドをモバイル開発とその管理の中軸に据えている。オープンソースのエンタプライズソリューションにおけるリーダーであるRed Hatの一員になることを嬉しく感じており、これはモバイルとクラウドの組み合わせが強力であることの、ひとつの証拠だと見ている。今やモバイルアプリケーションとMBaaSプラットホームはマスマーケットが採用するところとなっており、そしてNode.jsの人気も拡大している。Red Hatに加わったことによって、弊社の優れたモバイルアプリケーションプラットホームを、グローバルな顧客とパートナーから成るより広いオーディエンスに提供でき、彼らによるモバイルファーストの世界の最適化努力を支援できる”。

FeedHenryはRed Hatが2013年9月に発表したJBoss xPaaS for OpenShiftの取り組みを一層強化し、とりわけエンタプライズアプリケーションと統合化とビジネスプロセスオートメーションをオープンなPaaSとして提供して行くことに貢献する。“モバイルのアプリケーションサービスはこのビジョンの鍵であり、FeedHenryはモバイルアプリケーションをサポートするためのセキュリティとポリシー管理と同期化と統合化機能を提供してくれる”、と同社は言っている。

FeedHenryのアーキテクチャはNode.jsをベースとし、企業によるAndroidやiOS、Windows Phone、BlackBerryのアプリケーションや、HTML5によるWebアプリケーションの開発を助ける。アプリケーションの構築のためには、各ネイティブのSDK、Apache Cordova、HTML5、Titanium、およびフレームワークとしてXamarin、Sencha Touch、各種のJavaScriptフレームワークをサポートする。デベロッパがFeedHenryからリンクできるアプリケーションは、salesforce.com、SAP、Oracle、デバイス管理サービスAirWatchとMobileIronなどだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


iOS 8レビュー:洗練されてユーザー体験は大きく進化―制限緩和はデベロッパーのチャンス

AppleからiOS 8が公開された。 昨年のiOS 7へのアップデートほど劇的ではないが、それでも大幅な改良であり、追加された新機能も多い。新しいiPhone 6でiOS 8を利用するとその真価がよく理解できる。Appleが制限のいくつかを緩和したことはサードパーティーのアプリ・デベロッパーにとって大きなチャンスを開くものだ。iOS 8でもたらされた自由化と新機能は今後iOSエコシステム全体に大きな変革をもたらす可能性がある。以下、カテゴリーごとに紹介していこう。

メッセージ

iOS 8のAppleメッセージ・アプリは他の人気のあるメッセージ・サービスによく似たものになっている。いちいち新しいメッセージアプリをインストールし、登録しなくても今流行の機能がデフォールトで使えるのだから便利だ。

新しいAppleメッセージでは、タップとスワイプで画像、音声、動画が送れる。私が一番気に入った機能は、グループを選択して「ミュート」し、一時的に非表示にできることだ。これはAppleがグループ・メッセージ機能を導入したときから必要だと強く思っていた。私の家族はAppleメッセージの大の愛用者で、仕事中には少々邪魔になるのだ。

また特定のスレッドに自分の位置情報を付加するのも簡単になった。友達や家族の間で居場所を教えあうのがずっと簡単になった。単独アプリのFind My Friendsを使うより便利だ。

写真

写真で特筆すべきなのは検索機能の充実だ。iOS 8では写真やビデオを日時、場所、アルバム名で検索できる。また高度なコンテキスト検索機能が利用できるようになり、たとえば「ある場所で撮ったすべての写真」を検索して表示できる。編集能力も強化され、露光、明るさ、ハイライト/シャドウ別調整などをマニュアルで操作できるようになった。今や写真編集能力はApertureのような単独アプリなみの水準となった。

しかも機能が豊富になっても、複雑なオプションで初心者を迷わせるようなことはない。デフォールトでは高度な編集機能は隠され、自動補正のオン/オフのボタンだけが表示される。自動補正の傾きの補正機能はアマチュアの写真の多くを救ってくれるだろう。

ひとつだけ私を面食らわせたのは、iCloudでの共有はすべてのデバイスの写真を統合してしまうので、どの写真がローカルにあるのかクラウドにあるのかを判別することができないことだ。もちろんこれによってユーザー体験がシンプルになっているわけだが、 iPadとiPhoneで別々のライブラリを管理できないのはちょっと不便な場合もある。

QuickType

Appleのモバイル用ソフトウェア・キーボードはこれまでiPhone登場の当初からほとんど変わっていなかった。今回初めて予測変換機能を取り入れるなど大幅な改良が図られた。予測変換はあまりに便利で、いままでこれなしにどうやっていたのだろうと思うほどだ。メッセージなどの入力の場合、過去の履歴を参照して相手ごとに最適な予測候補を表示するようになっている。本当のところこの機能はもっと早く実装して欲しかった。

サードパーティー・キーボード

ソフトウェア・キーボード関連ではもうひとつ、Appleがサードパーティーにシステム全般で利用できる独自のキーボードの開発を許した点も見逃せない。残念ながらAppleはその手順を「設定」の奥に隠しているため、サードパーティーのソフトキーボードをインストールするのはあまり簡単ではない。もっともAppleはこれによって知識のない初心者がうっかり新しいキーボードをインストールしてまごつくことを防ごうとしているのかもしれない。

いずれにせよ、この機能は大歓迎だ。〔これにともなってジャストシステムはiOS版ATOKのリリースを予告している。〕

ヘルスケア

Appleのヘルスケア・アプリはiPhone自体のモーションセンサー(5sのM7、6/6 PlusのM8)」から取得されるデータも含め、さまざまなデバイスからアップロードされる健康とフィットネス関連のデータを集中管理するハブとなる。またそれらのデータをアプリを通じて特定の相手と共有することもできる。

今のところ私自身はヘルス関連のデータを記録するデバイスをたくさん使っているわけではないが、 それでもサードパーティーのヘルス関連アプリをインストールしたり、データの種類ごとにあれこれアプリを移動したりする必要をなくしてくれた。Apple Watchが登場すれば、ヘルスケア関連のデータは飛躍的に拡充されるだろう。

デベロッパーは収集されたデータを一般ユーザーにわかりやすく表示するアプリを開発するチャンスだ。

ファミリー共有

iOS 8では6人までの家族が単一のiTunesアカウントを共有できるようになった。メインのユーザーはApple IDを使って家族をファミリー共有機能に登録できる。すると登録された家族メンバーは他のメンバーが購入、ダウンロードしたiTunesの音楽やiBookの本、App Storeのコンテンツを自由に利用できる。子供のために特別のApple IDを作ることもでき、両親のクレジットカードが使える。ただし子どもたちの購入には親の承認が必要になる。

またファミリー共有では家族のメンバー全員が写真、カレンダーなどを共有、同期して利用できる。ファミリーといっても別にDNAで親子関係を鑑定するわけではないから、親しい友だちとファミリー共有のグループを作ることも可能だ。その他、ファミリー・メンバーの間で位置を共有したり、「iPhoneを探す」で協力して位置がわからなくなったデバイスを探したりできる。

iCloud Drive

iCloudも強化され、iOS 8のiCloud DriveはDropboxやGoogleドライブに近づいてきた。ドキュメント、ファイルをクラウドに保管するだけでなく、デバイス間での同期も自動的に実行される。つまりあるデバイスで編集した結果が即時に他のデバイスにも反映されるようになった。また同じファイルを目的によって異なるアプリで開くこともできる。

連携

新しい「連携」機能によってデバイス間での作業の連携がより緊密になった。メールを書き、メッセージを読み、ウェブをブラウズするというような作業はiOSデバイスとMacの間でシームレスに実行できる。ただしMac側でこの機能が完全に実現するためにはYosemiteの登場を待つ必要がある(おそらく来月一般公開となるもよう)。しかしHandoffはiOS 8デバイス同士の連携を実現しているので、iPhone 6で書きかけた文書をiOS 8にアップデートしたiPad Airで開いて作業を続けるといったことはすでに可能だ。

Instant HotspotはiPhoneが自動的にホットスポットとなってiPadとMacにWi-Fiを提供する。iPad、Mac側ではWiFiが届かなくなるといちいち接続操作を行わなくてもiPhoneのホットスポットに切り替わる。

Spotlight

Spotlightを利用すると多様な情報源を横断的に検索して答えが得られる。Wikipediaからの結果がすぐに得られるのは特に便利だ。その他App Storeの関連あるコンテンツ、最新ニュース、周辺の位置情報なども検索される。

一見ささいな追加に思えるかもしれないが、iOS 8の有用な新機能のひとつだ。これでiPhoneがモバイル検索ポータルとして大幅に価値を増した。Spotlightはホーム画面の上部からプルダウンするだけで使える。いちいち検索やApp Storeなどのアプリを開く必要がなくなった。

通知と拡張

iOSデバイスの通知センターは必要な情報を見落とさずにすむ便利な機能だが、iOS 8では、メール、カレンダー始めサードパーティー・アプリからの通知に対してもいちいちアプリを開かずに通知センターから直接返信ができるようになった。私の場合、これはたいへんな時間の節約をもたらしている。ロック画面をスワイプしてアプリを開くとInstagram/Twitter/Facebookという魔のバミューダ・トライアングルにはまりんで、とんでもなく時間を無駄しがちだが、通知センターからの返信機能のおかげで、その回数が大幅に減った。

拡張機能はサードパーティーのデベロッパーが、たとえば、ロック画面で下にスワイプするだけでフィリップスのスマート照明を操作するショートカットを作るなど、さまざまな可能性を開くものだ。

音声認識

音声認識はiOS 8で大きく改良された。ユーザーの頭の中を読み取っているのではないかと思うほど正確に音声を認識してテキスト化してくれる。

さらなる成長への期待

iOS 8にはこれ以外にも無数のアップデートが含まれている。上でも述べたとおり、AppleはiOS 8でソフトウェア・キーボードを始めいくつかの重要な領域で制限を緩和した。またApple Payがアメリカでリリースされた。これらはデベロッパーにとっては大きなチャンスであり、今後エコシステムの多方面に影響が出てくるだろう。また来月のYosemiteの公開で「連携」がMacから利用できるようになることも重要だ。

現在iOS 8のアップロードは始まったばかりで、サーバーへの負荷などのため、やや待ち時間がかかっているようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


IBM、Watson Analyticsを発表―Watson人工知能が万人にビッグデータ解析能力を与える

今日(米国時間9/16)、IBMは一般のビジネス・ユーザーに高度なビッグデータ解析能力を与えるWatson Analyticsという新しいプロダクトを発表した。

Watson Analyticsはクラウド・サービスで、データの収集、チェック、解析、ビジュアル化、共同作業のためのコミュニケーション・ダッシュボードなどビッグデータ処理に必要な作業はすべてクラウドで行われる。Watsonといえば、誰もが知るとおり、人気クイズ番組『ジェパディー』で人間のチャンピオン2人を打ち破った人工知能としてあまりにも有名だ。

IBMのビジネス分析事業グローバル・マーケティング担当副社長、Eric Sallは「単にブランドイメージのためにWatsonの名前を付けたわけではない」と強調する。Sallによれば、このプロダクトの特長はビッグデータに対して自然言語で分析、加工処理を行えることで、これにはまさにWatsonの人工知能テクノロジーが用いられているのだという。

Sallは「Watson Anlyticsの目的は、一般のビジネス・ユーザーに強力なビッグデータ解析能力を与えることにある。適切な意思決定のためにビッグデータを利用しなければならないことはだれでも知っている。だが、これまでそれができるのはごく一部の高度な知識とコンピューティングのインフラを持つユーザーに限られていた」と述べた。

現在、ビッグデータ解析には強力なコンピュータ資源、データサイエンティストとデベロッパーのチームが必要とされる。中でも後者を確保することは難事業だ。Sallは「このためにビッグデータ解析の結果を得るまでに、往々にして何日も、あるいは何週間もかかる。 今日のビジネスの厳しい競争環境からみてこのような遅れは許されない。また意思決定を行う人々が他のチームにいちいち処理をお願いするようではいけない」という。

Watson Analyticsはこうした障害を一挙に克服することを目指している。まずクラウド・サービスであるから、コンピューティングのインフラについて心配する必要はない。次にユーザーの望むデータ解析を自然言語で受け付けるのでデータサイエンティストもプログラマーも必要としない。

ユーザーは既存のデータ、たとえばSalesforce.comのCRMデータなどをそのままインポートして利用できる。Sallによれば、このサービスにはポピュラーなビジネス・ツールによって生成されるデータをインポートするためのコネクター・ツールが用意されているという。データをセットすれば、ユーザーは思いついた質問を次々にぶつけていくこともできるし、サービスにバンドルされているストーリー・テンプレートを利用して標準的な統計分析を行うこともできる。

もし営業データを扱っているのなら、テンプレートから標準的な分析を行うのが有効だろう。しかし、その過程でユーザーが何かを思いつけば、自由に質問することができる。Watsonは質問を理解して直ちに答えを出してくれる。Sallによれば「問題は多くのビジネス・ユーザーがビッグデータ解析の専門知識や経験に乏しいため、そもそもどんな質問をするべきなのかよく理解していないという点だ。テンプレートはこのような場合に解析を進めるための糸口として大いに役立つ」と述べた。

さらにWatson Analyticsのベーシック版はIBM Cloud Marketplaceから無期限に無料で提供される。 Sallは「ユーザーがこのサービスを利用する際の敷居を下げるために無料版を提供することにした。無料版も極めて高度な能力を持っている」と述べた。

有料のプレミアム版には、大容量ストレージや企業内データベースのデータに直接アクセスするためのコネクター、さらに高度な分析能力などの追加機能が加わる。

Sallは「これまでわれわれは紺のスーツを着たセールス部隊がCIO始めIT部門の専門家にプロダクトを売り込んでいた。一般ビジネス・ユーザーを直接のターゲットとするWatson Analyticsはわれわれにとって大きな戦略の変更だ。こうしたエンドユーザー向けプロダクトを急速に普及させるにはフリーミアム・モデルが適していると判断した」という。

Watson Analyticsにかぎらず、最近のIBMのエンタープライズ・クラウド戦略自体が、IBMが2013年に買収したインフラのプロバイダー.、Softlayerのプラットフォームを利用したプロダクトのデジタルマーケットを中心に据えるようになっている。またBluemix Platformを通じて、将来はサードパーティーのデベロッパーがWatson Analyticsをプロダクトに組み込むことが可能になる。

Watson Analyticsは今月虫にベータテストが開始され、年末には一般公開される予定だ。クラウドサービスであるので、デスクトップ、タブレット、スマートフォンなどさまざまなデバイスから利用が可能だ。しかしまだ専用のアプリは登場していない。

画像: Flickr USER ibmphoto24 UNDER CC BY-NC-ND 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


EucalyptusのCEOの突然のOpenStackへの改宗はHPによる買収が下地だった

先月、長年OpenStackを批判していたEucalyptus *のCEO Mårten Mickosが突然心変わりした。昨日(米国時間9/11)は、彼の会社がHPに買収された。HPは、今年OpenStackで大きく稼ごうとしている企業だ。〔*: Eucalyptus, プライベートクラウドのためのIaaSでAWSのAPIを多用。〕

MickosがOpenStackに対して急に前向きになったのは、まさに、それがあったからだ、としか思えない。

彼は自分の会社のWebサイトのブログで、その心変わりを説明している。彼は、OpenStackと競合することでむしろOpenStackに貢献してきた、とジョークを言っている(初期には実際にOpenStackにコードを貢献している)。しかしMickosは、この爆弾投下(買収発表)の前に、来週シリコンバレーで行われるOpenStackのイベントでキーノートを担当する、と発表した。競合どころか今の彼は、OpenStackプロジェクトに真剣に寄与貢献しようとしているのだ。

Mickosはブログの記事にこう書いている: “私から見てOpenStackは何でもありのクラウドプロジェクトで、大小さまざまなベンダがそれを独自に複雑高度にカスタマイズしたパッケージを作って、展開していくものだ。それらは、〔Eucalyptusのように〕AWSとの互換性が必須要件となるような展開ではない”。

MickosがOpenStackに関して心変わりしたときSteven J Vaughan-Nicholsは自分のブログに、EucalyptusとOpenStackの併存は犬と猫が同じ部屋にいるようなものと書き、長年のオープンソース評論家である彼Vaughan-Nicholsは、Mickosの発言に“ぶったまげた”と言っている。Mickosの会社EucalyptusはOpenStackの宿敵AWSとベッドを共にしている。そんな両者が共存できるわけがない。でもMickosは、共存の道を見つけようとしているのだ。

IaaSとしてのOpenStackはいわば、Amazon Web ServicesやGoogle Cloud、Microsoft Azureなど、パブリッククラウドの強力な商用プロバイダたちの、オープンソース版だ。これらの商用サービスは、細部まで透明というわけにはいかないので、ユーザによってはそのことが問題になる。4年前にRackspaceとNASAが共同して、成長著しい大手パブリッククラウドプロバイダたち(中でもとくにAWS)に対するチェック機能としてOpenStackプロジェクトに着手した。それは完全にオープンソースなので、ITの人たちやデベロッパはコードベースに直接アクセスして、必要なカスタマイズを行える。それは、商用システムではできないことだ。

Mickosの会社はそうではなく、パブリックやプライベートなクラウドからAWSのクラウドへのブリッジを作った。しかし、彼自身資金力はあったが、市場はOpenStackをも含むさまざまな競合勢力に席巻されつつあった。

一方、今年になってHPはOpenStackに転向し、同社のこれまでのCloud OSに代わってHP HelionとOpenStackを主軸に据えることになった。しかもおもしろいことに、Helionへの移行と共にAWS APIのサポートをやめた

というわけで、知らない間に両社(HP, Eucalyptus)は、最初は互いに別の方向を向いてクラウドに取り組んでいたにもかかわらず、今ではOpenStackという共通項で結ばれようとしているのだ。

買収の話はかなり前から進んでいたはずだから、Mickosが突然OpenStackへの改宗を発表したときには、買収をめぐってHPとの会話を重ねていた、と見るのが自然だろう。

いずれにしてもHPはついに買収を決定し、Mickosを同社のクラウド事業部担当のSVPに任命することにした。つまりこれからは、MickosがHPのクラウド戦略の鍵を握る人物になる。HPのクラウドビジネスの今後の吉凶を、彼の手腕が決めるのだ。

企業世界で人気を高めつつあるOpenStackも、相当高度な専門知識および技能がないと実用化できないことが、難点と言われている。そこで先週HPは、OpenStackの実装を楽にしてくれる一連のサービスを発表したが、モバイル開発プラットホームKinveyのCEO Sravish Sridharの説では、HPは今回の買収を活用してOpenStackの実装を単純化するための総合的なシステム(ソフトウェアによるアプライアンス)を作ることもありえる。

“Eucalyptusを買収したことによってHPは、展開と管理の容易なクラウドアプライアンスを作れるプロダクト指向のチームを入手した。それは、OpenStackソフトウェアの弱点と言われていた部分だ”。

OpenStackによるクラウドの構築と展開と管理の面倒を見るサービスでHPは、VMwareやIBM、Red Hatなどなどと競合する。RedHatは最近、OpenStackのテストを容易にできるためのソフトウェアアプライアンスを発表した。たぶん同社はこれを皮切りに、OpenStackとそのまわりの実装を容易化するアプライアンスを次々と出していくつもりだろう。

この買収が表面的には奇妙な仲と見えても、HPの市場奪取努力としてはむしろ、きわめて分かりやすいし、これからも同社は、より魅力的なクラウド製品を提供することによって、競争の激しい市場で優位に立とうとするだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Googleが新人スタートアップに10万ドルを提供…ただしそれはGoogle Cloudを使うためのクレジット

【抄訳】

今あなたが創業ほやほやのスタートアップなら、Googleが、Google Cloudプラットホームの1年かぎりの、10万ドルぶんのクレジットをくれる。つまりAWSでもAzureでもなく、Googleのサーバの上でアプリケーションをホストできて、その1年間の料金が10万ドル以下なら料金を請求されない。GoogleはスタートアップをCloudプラットホームのお客として取り込むために最近、Cloud Platform for Startupsというキャンペーンを開始したのだが、この10万ドルクレジットはそのメニューの一部だ。このキャンペーン企画を、今日行われたGoogle for Entrepreneurs Global Partner Summitというカンファレンス*で、Googleの技術インフラ担当SVP Urs Hölzleが発表した。〔*: パートナーについては後述。〕

GoogleのCloudプラットホームを1年間、10万ドル相当ぶん使える、というこのクレジットをもらえるスタートアップは、①創業5年未満で②年商50万ドル未満でなければならない。 しかも、すでにGoogleのパートナーとなっているアクセラレータやインキュベータあるいはVCの③傘下でなければならない。Googleは今後パートナーを増やすつもりなので、まだGoogleのパートナーでないVCなどは、打診してみるとよい。下の図には4つの条件が載っているが、4つ目は、④これまでこのクレジットをもらったことがない、だ。

【中略】

このクレジット企画には、インフラの管理サービス(をGoogleが代行)も伴う。Googleのエキスパートが一対一でアーキテクチャのリビューをしてくれるし、24/7のサポートもつく。

Googleには初心者向けの無料プランがすでにあったし、またAWSには2013年からAWS Activateという企画の一環として、アクセラレータやインキュベータやVC向けの”Portfolio Package“という事業がある。実はこの事業が、今回のGoogleの10万ドルクレジット企画とそっくりなのだ。Amazonの場合はスタートアップに、15000ドルぶんのAWSのクレジットを与える。一方Microsoftがかなり前からやってるBizSparkという事業の中にも、ほやほやスタートアップのためのクレジットがある。そのAzureのクレジットは月額150ドルだから、Googleに比べると小さい。

でも、小さなスタートアップが1年でGoogleのサーバを料金10万ドルぶん使うのは、現実にありえないほどたいへんだから、これはGoogleのマーケティング的花火のようなものでもある。実際にGoogleを使っているSnapchatのような、大きな人気サイトになれが、話は違うが。Googleのサーバを計算集約的な処理に使えば、10万ドルぶんぐらいすぐに使ってしまうかもしれないが、Bitcoinのマイニングをやりたい、なんて言ったらGoogleは拒絶するだろう。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


リモートアクセスのLogMeInがMeldiumを買収してシングルサインオンに注力

企業や個人にリモート接続を提供するLogMeInが今日発表した興味深い買収は、今後の同社のサービスを一層充実させるとともに、企業や消費者のクラウドへの大移動という最近の動向を同社の新たな収益源にしようとするものだ。同社が買収したMeldiumはY-Combinatorの卒業生で、シングルサインオンなどのアイデンティティ管理サービスが専門だ。

公開企業であるLogMeInによると、同社は1500万ドルをMeldiumを抱えるBBA社に支払う。この価格には、キャッシュと今後の成功報酬の両方が含まれる。

Meldiumは、その名が示しているように、複数のアプリケーションへのサインオン過程を”meld”(溶融)して一体化する。今では、人気のクラウドサービスDropboxやGoogle Apps、Hubspot、WordPress、Zendesk、Salesforce、Asana、Trello、Evernote、JIRA、Rackspaceなどなど、およそ1500のアプリケーションをサポートしている。技術系でない人でも便利に使えることが、とくに好評だ。同社が昨年ローンチしたとき本誌のライターColleen Taylorが次のように書いている

“Meldiumが天才的なのは、共有アプリケーションへのサインインが容易になるだけでなく、それらのアプリケーションへのアクセスをアドミンが無効にする管理作業も、容易にできることだ。要するに一言で言えば、すべての機能がとても簡単に使える、ということ。技術知識がなくてITのエキスパートでない人でも、グループのMeldiumアカウントを管理できるほど、分かりやすくてフールプルーフなツールだ。 “

今回の買収の対象は、技術と人材の両方だ。MeldiumのファウンダAnton Vaynshtok、Bradley Buda、Boris Jabesをはじめ、チームの全員がLogMeInのサンフランシスコのオフィスに加わる。

LogMeInの本社はボストンにあり、今ではおよそ10万社の中小企業を顧客に抱える。最近の同社は、これらの企業がクラウド上のデータを管理するサービスも導入している。

たとえばjoin.meはリモートミーティングツール、AppGuruはクラウドアプリケーションを見つけて管理する、LogMeIn Centralはリモートデバイス管理、 Cubby Enterpriseは企業向けのファイル同期/共有サービス、LogMeIn Proは広く利用されているリモートアクセスプロダクトだ。でも、無料のサービスLogMeInを廃止して非難されたこともある。

LogMeInでMeldiumのサービスがどういう位置づけになるのか、それはまだ分からないが、後者は基本的にフリーミアムだ。社員数5人未満でアプリケーションも10以下という零細スタートアップは無料だが、そのほかは20ユーザ/20アプリケーションの月額29ドルから最高の199ドルまで、数段階の有料制だ。

LogMeInの現在の時価総額は、10億ドルを超えている

LogMeInのCEO Michael Simonはこう語る: “アプリケーションのクラウド化とBYOA(bring-your-own-app)*という二大トレンドによって、ITの人たちは、アイデンティティの管理や社員のアクセス、データのセキュリティなどについて、これまでとは違う視点を持つことを強制されている。たとえばセキュリティとアイデンティティ管理に関しては、シングルサインオン(SSO)の有効性が今急速に認められつつある。そして私の知るかぎり、もっともエレガントで分かりやすくて使いやすいSSOのソリューションを市場に提供したのがMeldiumだ”。〔*: BYOA, 個人でDropboxを使ってる人が勤め先でも自分のアカウントでDropboxを…仕事目的で…使う、といったこと。〕

“MeldiumとSSO、それプラス、クラウドアプリケーション管理のAppGuruがうちにあることによって、弊社は今日のITが抱える難題に十分対応できるようになり、また今成長著しいアイデンティティ管理市場における競争でも、優位に立てるようになった”、とSimonは言っている。

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Googleに新ブランド‘Google For Work’が生まれる…一連の生産性ツールのブランドイメージ強化/明確化のため

今朝(米国時間9/2)Googleは同社のサンフランシスコのオフィスで、同社のエンタプライズプロダクトのブランド名を変えて、一連のツールと生産性サービスを’Google for Work’にリネームする、と発表した。

この新しい呼び方は同社のさまざまなビジネスツールをすべてカバーし、そのそれぞれに’for Work’という接尾詞が付く。Drive for Work、Search for Work、などのように。

改名の理由としてGoogleは、すでに好評な各ツールのブランドイメージが向上することと、それぞれのツールの目的が直感的にわかることを挙げている。それはDriveだけど、お仕事(work)用、という具合に。すでにGoogleの教育用ツールやサービスは、このように束(たば)ねられて、独自のブログを持った。

Googleのエンタプライズ方面と生産性ツール(OAソフト)方面の取り組みは、とりわけ、Microsoftとの競合を意識している。Microsoftの新CEO Satya Nadellaが最近掲げたスローガンが、‘生産性とプラットホーム’だが、Googleもまさにそうだろう。BoxやDropbox、Appleなども、この炎の中で自分の剣を鍛えている。

Googleのエンタプライズ担当部長Amit Singhは記者たちに、同社の企業顧客向けクラウドストレージサービスDrive for Workは、新規の登録ユーザが毎週2000名近くある、と語った。そして今ではFortune 500企業の60%がGoogle for Workを有料サービスとして利用しているそうだ。

Googleは、クラウドコンピューティングとクラウドストレージの料金に関して思い切った値下げを行ってきた。同社のデータセンターは巨大だから、コモディティ(日用品)のようなツールは最低の料金で提供できる。Amazonなども同じく料金を下げているので、市場全体としても安値傾向だ。

コモディティ的なクラウドサービスから大きな売上が得られなくなると、エンドユーザ向けのツールやサービスに意識が向かう。でもGoogleは、どっちの市場でも一定のシェアを握りたいようだ。

Singhによると、ITの費用など一部の費用はムーアの法則に従って下降しないが、それは、企業が抱えているレガシーの遺産から発生する費用のせいだ。それらのリソースは昔は会社の経営に貢献したが、今のビジネス環境では重荷になっている。それらを全部捨てて、クラウドサービスに移行した方がコスト的にも良い、とSinghらは主張する。

しかしGoogleの一連の生産性サービスは、今後、Googleの主要な収益源になるのだろうか。この前の四半期の決算報告では、‘その他の売上’が全売上のわずか10%だった。ただし売上成長率は全科目の中で最高、前年同期比で53%増だった。Googleの総売上は前年同期比で22%増だから、‘その他’という科目はちょっとした優等生なのだ。

Google自身が、この分野を重視していることは、確実だ。

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Googleが同社のクラウドで映画の視覚効果の制作もできるためZync Renderを買収

Googleが今日(米国時間8/26)、 Zync Renderを買収したことを発表した。 Zync Render(ZYNC)は、映画スタジオなどがクラウドで視覚効果(visual effects, ビジュアルエフェクト)を描く(レンダリングする)ためのサービスだ。同社の技術はStar Trek: Into DarknessLooperなどで利用されている。Googleがここを買収したねらいは、映画スタジオなどに同社のCloud Platformを、彼らの制作の場としてもっと使ってもらうためだ。

現在ZYNCはAmazonのEC2向けに最適化されているが、これからはGoogleのCloud Platformに統合される。ZYNCによると同社の技術は1ダース以上もの長編商業映画や、数百ものコマーシャルに利用され、その全描画時間は650万時間にもなる。

Googleが今日述べているように、映画の特殊効果を描画するためには、とても強力なインフラストラクチャを必要とする。多くのスタジオが自社独自のレンダーファームを持っていて、クラウドサービスは主に、制作効率化のための容量拡大として利用される。しかしそういう専用のコンピューティングインフラを持ってないところや、自社でやりたくないところは、エフェクトのレンダリングもクラウドからのコンピューティングサービスに依存したい。

Googleは、課金は分単位と言っているが、サービスのそれ以外の詳細はまだ明らかでない。ZYNCの側は、“Google Cloud Platformのような大規模で安定性の高いインフラを使えるなら、これまでよりもさらに良いサービスを顧客に提供できる。大きな仕事も十分にできるし、提供パッケージの種類も増やせる、料金もよりリーズナブルにできるだろう”、と言っている。

なお、Amazonはこれまで何度も、うちは視覚効果をレンダリングするためのプラットホームとして最適だ、と主張してきた。同社は、ZYNCも仕事をしたStar Trek: Into Darkness — における、Atomic Fictionの仕事ぶりに関するケーススタディーまで発表している。Microsoftもときどき、うちのクラウドは映画制作にも最適、と売り込みの言葉を述べている。

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VMwareがDocker、Pivotal、GoogleとパートナーしてVM上のコンテナサポートを提供

VMwareが今日(米国時間8/25)、DockerGoogle、およびPivotalとパートナーして同社プラットホーム上でDockerをサポートする、と発表した。さらに同社は、Kubernetesのコミュニティとも仲良くして、そのコンテナ管理ソリューションも顧客に提供して行く。

一見すると、DockerとVMwareは水と油のようにも思える。多くの点でDockerのコンテナは、VMware的なソリューションの必要性を否定している。なぜならVMware型の”ソフトウェア定義データセンター(software-defined data center)”は明らかに、独自の仮想マシンを使うことが前提だからだ。でも仮想マシン上でDockerコンテナを使うことは十分に可能だから、一つのデータセンターで両者が共存できないことはない。

VMwareのCTO Ben Fathiが今日の発表声明の中で言っている: “Docker、GoogleおよびPivotalとの提携により、弊社の企業顧客は一つの共通的なプラットホーム上であらゆるタイプのアプリケーションを開発、稼働、および管理でき、スケールしていくことができる。そのためにDockerコンテナと弊社仮想マシンは妥協のないIT環境を提供する。両者の持ち味を活かすことによって企業顧客のためのコンテナを最適化し、ソフトウェア定義データセンターにおけるアプリケーションの効果的な稼働を確実なものとする”。

つまりVMwareによると、これら三者とパートナーすることにより企業顧客は、既存のVMwareインフラ上やハイブリッドサービスvCloud Air上のアプリケーションをコンテナ化して動かすことができる。しかも同社の主張によると、それによって同社がこれまで培ってきた“コンピューティングと管理とストレージとネットワーキングとセキュリティの能力がコンテナ環境にもたらされ”、企業顧客は仮想マシン内で動くコンテナを〔Docker単体よりも〕より安心して採用できるようになる。

同社はDockerとの協働によりDocker Engineを、VMwareのワークフロー上でVMware vSphereやVCloud Airに対し使えるようにする。両社はさらに、libsware、libcontainer、libchanなどDocker関連のオープンソースプロジェクトでもコラボレーションし、またDockerとVMwareのプロダクトとの相互運用性の向上にも努める。

VMwareによると、同社はGoogleとの協働により“POD型(モジュール型)のネットワーキングモデルをOpen vSwitchに持ち込み、OpenStackとKubernetesのマルチクラウド統合を可能にする”。Googleはこう述べている: “専用マシンをKubernetesのために提供することは、計算機リソースの有効利用のためだけでなく、セキュリティ強化のためにも重要である”。GoogleによるとVM(仮想マシン)は、“強力なセキュリティドメイン”を表現する。つまりコンテナはある程度信頼性の高いワークロードを提供するが、仮想マシンは信頼性の低いワークロードに対してもさらにセキュリティの層を提供する。そこで同社が言うようにGoogleも今では、そのデータセンター内の同一の物理的インフラストラクチャ上に複数のKubernetesクラスタを置いているのだ。

GoogleのプロダクトマネージャCraig Mcluckieは次のように述べる: “クラスタのインフラストラクチャにVMWareの高度な技術が加わることによって、物理的なコンピューティングをどこでやろうとも、Googleのようにコンピューティングできるようになる”。

PivotalとVMwareは協働してlibcontainerプロジェクトの改良に取り組む。これはDockerのコンテナの参照実装で、そこにVMwareのWardenプロジェクトの一部機能を持ち込むことによって、PivotalのCloud Foundry の孤立的な環境をDockerで管理できるようにする。

 

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


ゲームを完全にクラウド化しても遅延が生じないネットワーキング技術”DeLorean”をMicrosoft Researchが発表

ゲームの未来を考えるとき、たぶんいちばん魅力的で夢のようななコンセプトが、“ゲームのNetflix”だろう。それはすでに、OnLiveの早くからの取り組みや、Sonyの出したてほやほやのPlayStation Nowなど、いくつかの形で実現している。

ゲームをサーバの大きなクラスタから提供することには、自分のコンソールやPCでゲームをすることにないメリットがいくつかある。ストリーミングビデオでHDのゲームをプレイできるデバイスならどんなデバイスでも使えるし、コンソールのハードウェアを買い換えることに比べるとクラウドの技術的な改良に期待する方が簡単だから、グラフィクスなどが早く着実に良くなる。それに、20GBのゲームをダウンロードすることに比べると、ゲームをすぐにプレイできる。

Microsoftはストリーミングゲームの提供に関してまだSonyほどのプラットホームを築いてはいないが、すでに関心は示している。4月にMicrosoftはデベロッパたちに、TitanfallのようなXboxの超大作ゲームがクラウドプラットホームAzureを利用して、全体的なパフォーマンスを落とすことなくより高度なAIや物理演算を実現しているところをデモした。

昨日(米国時間8/21)Microsoft Researchが発表した報告書は、同社はその高度なクラウド技術を活用して将来的に独自のゲームプラットホームを作りたい、とりあえずその方式を模索したい、と述べている。そこに具体的な名前として登場している“推論型実行エンジン”*DeLoreanは、MicrosoftのAzureサーバとプレーヤーのデバイスとのあいだに、ネットワークの遅延を招く複数の要因がどれだけ多層的に存在しても、見かけ的に遅延のないゲームプレイを提供する仕組みだ。〔*: “speculative execution engine”〕

報告書はその結論部分で、この調査に加わったユーザの多くが、高速アクションの多いDoom 3Fable 3をプレーして、ローカルシステム上と、DeLoreanを250ミリ秒の遅延に設定したクラウドからのゲームの、違いを判別できなかった、と述べている。それが事実なら画期的だ。250ミリ秒もの遅延があれば、これまでならどんなゲーマーでも、いらだってコントローラを投げつけていただろう。

Microsoft Researchは、何をどうやったのか? DeLoreanを理解する鍵は、“推論型(speculative)”という言葉にある。ビデオゲームはユーザのアクションによって次に起きることが多様であり、事前にそれらを決められないから、YouTubeやNetflixのビデオのようにバッファリングができない。ぼくが自分の銃でTitanfallを撃った直後の画面が、Titanfallでなくぼくがジャンプする絵だったら、全然おかしい。でも、プレーヤーのそれまでの入力から次にありえるアクションを“推論する”ことはできる。Microsoftはプレーヤーの次の瞬間のありえるアクションをいくつか予測する方法を見つけて、それらを事前にプレーヤーのデバイスのメモリに、つまりバッファに、送り込んでいるのだ。そして実際のアクションの直後には、クラウドからでなくローカルメモリから、最適画像をレンダリングする。

ただしMicrosoftによると、この方式が有効であるためにはネットワークの帯域が、予測対応をしないおとなしいクラウドに比べて1.5倍から4.5倍ぐらい高速でなければならない。つまり、地球上のどこにいても、Xboxのストリーミングサービスで遅延のないゲームを楽しもうと思ったら、PlayStation NowやNvidiaのGridなどを使う場合よりも速い接続を必要とする。ただしそれは、PlayStation NowやGridなら遅い接続でもゲーム展開に遅延がない、という意味ではない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))