NASDAQが非上場株二次市場SecondMarketを買収、スタートアップの株が売りやすくなる

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[筆者: Katie Roof]
NASDAQが、SecondMarket Solutionsを買収してその能力をNASDAQ Private Marketに合体させることで合意した。同グループは、DocuSignやPinterest、Shazam、Tangoなど非上場企業の株式の取引を支えていくことになる。

SecondMarketの現在のCEO Bill Siegelが、大きくなったNASDAQ Private Marketのビジネスを率いる。その本社は、サンフランシスコとニューヨークの両方に置かれる。業務は、最初の日から、通常通り継続して行われる。

買収の条件は公表されていない。

スタートアップの非上場期間が長くなっているので、株主たちのために流動性を提供すべきニーズも増している。NASDAQの執行副社長Nelson Griggsによれば、社員が自社株を売れるオプションを持てば、スタートアップは“多くの優秀な人材を吸引/保持できる”ようになる。

また企業にとっても、キャッシュ状況が楽になるので、IPOや売却に向かうプレッシャーが和らぐ。たしかにIPOをすれば一般的に株価は上がるが、住宅資金などのために、もっと前に株を売りたい社員もいる。

非上場でも、急速に成長している企業の株には需要がある。NASDAQ Private Marketは機関投資家にも働きかけて、彼らにも、これらIPO前のスタートアップの株式に関心を持ってもらう。

SecondMarketは2004年に創業され、これまで数度の“バージョンアップ”を行っている。非公開株のための二次市場としてはパイオニア的存在で、Facebookなどの人気株も初期にはここで取引された。

Facebookが上場した2013年からは、SecondMarketは、単発的な取引から企業がスポンサーになるトランザクションに焦点を移した。同グループは70社がスポンサーとなる株式公開買付け事業を仲介し、トランザクションの量として25億ドルあまりを処理した。

その間SecondMarketは、FirstMark Capital、Li Ka-shing、Social Capital、およびTemasek Holdingsから3400万ドルあまりの資金を調達した。

これまでNASDAQ Private MarketはSharesPostとのジョイントベンチャーだったが、これからはNASDAQがその完全なオーナーになる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

ニュースアプリ「Vingow」などを開発するJX通信社、共同通信デジタルと資本業務提携

JX通信社代表取締役の米重克洋氏(左)と取締役の

JX通信社代表取締役の米重克洋氏(左)と取締役COOの細野雄紀氏(右)

ニュースアプリ「Vingow」などを開発するJX通信社は10月15日、共同通信デジタルとの資本業務提携を実施したことを明らかにした。資本提携として、共同通信デジタルを割当先とした第三者割当増資を実施。金額は非公開だが、関係者らによると億単位の資金を調達しているという。

「NewsDigest」

「NewsDigest」

JX通信社は2008年の設立。2012年10月よりVingowを提供している。Vingowは、ユーザーがあらかじめ登録したキーワードに対して、最適なニュースを閲覧できるというニュースアプリ。その仕組みを実現するために、同社では独自のエンジンを開発。ネット上の記事をクロール・自動解析・要約している。

Vingowで行っている記事の収集から整理・編集・発信のという一連のプロセスを、SaaS型のニュースエンジン「XWire(クロスワイヤ)」としてニュースサイトなどに提供しているのが同社のコア事業だ。大きなところでは、T-MEDIAホールディングスの運営するポータル「T-SITE」などへの導入実績がある。

また2015年には、速報配信に特化したニュースアプリ「NewsDigest(ニュースダイジェスト)」の提供も開始。ダウンロード数は数十万件だが、速報ということでプッシュ通知も積極的に行っていることもあり(もちろん設定でオフにできる)「起動回数やアクティブ率は他のニュースアプリと比較しても非常に高いのではないか」(JX通信社代表取締役の米重克洋氏)という。
さらにこのNewsDigestをベースにした法人向けの速報検知サービス「FASTALERT」も開発。大手メディアや金融機関を対象に提供していくという。

速報検知の仕組みについて聞いたところ、「Vingowで1日5万件の記事を解析してきた。その中から例えばどういった単語がニュースに使われるかなどのデータを蓄積している。人によってはビッグデータと呼ぶかも知れないが、そういった情報をもとにニュース性を見ている」(米重氏)とのこと。

これについては同社取締役COOの細野雄紀氏が例を挙げて説明してくれたのだが、例えば「ソーシャルネットワーク上で話題になっている記事」という切り口だけで速報のニュースを集めようとすると、2ちゃんねるのまとめ記事なんかも頻出するそうだ。そこでその内容を「ニュースそのもの」かどうか、すばやく正確に判定するために、Vingowで培ってきたノウハウが生きているという。

今回の資本業務提携により、JX通信社は自社の技術を共同通信グループの報道現場に応用する取り組みを協力して進めるとしている。また共同での新製品開発も検討するほか、XWireの拡販などでも協力していくとしている。

スマートトイのMoffがバンダイナムコなどから1.6億円の資金調達——新領域と米国展開を強化

ウェアラブルデバイス「Moff Band」を2014年にリリースしたMoff。同社は9月7日、バンダイナムコエンターテインメント、ORSO、TomyK(既存株主でACCESS共同創業者である鎌田富久氏の会社だ)、個人投資家を引受先として、総額1億6000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

Moffは2013年10月の設立。大阪市主催のハッカソン「ものアプリハッカソン」をきっかけに、ウェアラブルデバイスの開発を目指すことになった(当時の話はこちらをご参考頂きたい)。2014年秋に日米で一般発売を開始したMoff Bandは、Amazon電子玩具カテゴリーで国内最高1位、米国最高2位を記録。販売台数に関しては明らかにしていないが、Moff代表取締役の高萩昭範氏いわく手応えは好調だという。

「Moff Band」

「Moff Band」

Moff Bandは内蔵する加速度センサーとジャイロセンサーによって人の動きを感知。Bluetoothで各種デバイスと連携する。例えば手を上下に振ることで、その動作に合わせて疑似的に楽器を演奏したりできる。

プロダクトは当初“スマートトイ”という触れ込みで製品を提供してきた。その先の構想はあったが、「いきなり(機能を)てんこ盛りにしても売れない。まずはベーシックなモノをと考えた」という。そしてトイというアプローチを通じて、「『体を動かす』ということはゲーム体験として通用するということが分かった」(高萩氏)という。そのため今後は低年齢層向けのトイにとどまらないプロダクトの展開を進める。

Moff Bandで取得した動作や姿勢の情報や独自のデータ解析技術を活用し、フィットネスやヘルスケアの分野でのゲーミフィケーション化を可能にするプラットフォーム「アクティブ・ゲーミフィケーション・プラットフォーム」を構築する。またパートナーとの事業開発も強化する。株主となったバンダイナムコエンターテイメントやORSOとのサービスの共同開発をすすめるほか、米国では10月以降大手玩具チェーン店と組んでの商品展開も予定している。

なおMoffは、米国展開の強化に向けて100%子会社の米国法人である「Moff USA」を設立したことも発表している。CEOには、米AppleやAT&T、ACCESS等で事業開発・アライアンス分野のVice Presidentを歴任したAlbert B. Chu氏が就任する。

左からMoff USA CEOのAlbert B. Chu氏、Moff代表取締役の高萩昭範氏

左からMoff USA CEOのAlbert B. Chu氏、Moff代表取締役の高萩昭範氏

わずか1万DLのアプリが月商1000万円を達成する事例も——アプリ制作ツール「Yappli」運営元が3.3億円を調達

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「1年目は本当に大苦戦、月の売上は数十万円で毎月微増を繰り返すだけ。『いいプロダクトを作ったから来て使ってよ』というのでは全然ダメだった」——ノンプログラミングでアプリを制作できるツール「Yappli」を手がけるファストメディアの取材は、代表取締役の庵原保文氏のこんな重たい言葉から始まった。

同社は9月1日付けでグロービス・キャピタル・パートナーズ、Salesforce Ventures(米Salesforce.comグループのコーポレートベンチャー事業部)、YJキャピタル(既存株主でもある)、個人投資家の川田尚吾氏を引受先とした総額約3億3000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにしている。出資比率やバリュエーションは非公開。

ファストメディアは、ヤフーで同僚として働いていた庵原氏と共同創業者で取締役の佐野将史氏、取締役の黒田真澄氏の3人が2011年に立ち上げた個人プロジェクトからスタート。2013年にYappliを正式公開した。

Yappliはブラウザ上で機能をドラッグアンドドロップで配置し、クリエイティブをアップロードしていくことで、ノンプログラミングでスマートフォンアプリ(iOS/Android)を作成できるサービスだ。詳細は以下の動画を見てもらえばと思う。

ジオプッシュ(スマートフォンが特定のエリアにある際にプッシュ通知を送る機能)を含むプッシュ通知にも対応し、広告配信も可能、アプリの申請も代行する。冒頭で庵原氏が語るように、プロダクト自体は——初めてデモを見たリリース時から——イケていると思った。価格も月額9800円からと比較的安価で中小規模の会社でも使いやすい。だが、クラウドサービスとしてサイト上で販売していたところで有料ユーザーはほとんど増えなかったという。

同社はYJキャピタルからシードマネーを調達していたが、サービスインから1年経たずで売上は数十万円。さすがに「これでは危ない」となって方針を転換。大手企業をターゲットに営業を始めたところ、今度は驚くように案件が取れ始めた。新生銀行や日本ロレアル、女性アパレルのアダストリアホールディングスなどが次々と自社アプリの制作にYappliを導入。3人というスモールチームだったこともあって、サービスインから1年半経たずして単月黒字を達成した。

「革新的なサービスを作って数万円で手軽にスモールビジネスに提供しようとしたが、結局市場のニーズを見ていなかった。自社アプリを求めていたのはすでに顧客を抱えている大手企業。だがいざ制作会社に相談すると1000万円単位の見積もりが来るので、容易にアプリを制作できないという課題があった」(庵原氏)。そんな大手企業にこそプロダクトが刺さったのだという。「制作会社と比べれば10分の1程度で導入が可能。またノンプログラミングでアプリを作れるというのは、ITリテラシーの低いEC担当者であっても運用できるということ。そこも評価されている」(庵原氏)

サービスに登録する法人は、無料も含めて5000社。有料ユーザー(社数非公開)の7割はアパレル関連の自社アプリやブランドアプリだという。アプリはそのブランドのファンがダウンロードすることもあって、アクティブ率が高く、売上への貢献度も大きいケースが多いという。

「ブランドアプリであれば、アプリのプッシュ通知はメールマガジンよりも効果がある。ECサイトの売上全体のうち10%程度がアプリ経由というブランドも複数ある。1社だけだが、1万ダウンロードのアプリだけで月商1000万円を達成するという事例もある」(庵原氏)。プッシュ通知の開封率(通知が来て、そのアプリを起動すること)は約30%、通知から5分以内での開封率が5〜10%あるため、タイムセールなどを積極的に行うブランドも多いという。

同社では今回の調達を契機にサイト上で提供していた低価格帯のサービスの新規募集をいったん終了する。今後は人員を拡大し、サービス開発および法人営業に注力するとしている。

未公開ベンチャーの大型資金調達が顕著にー2015年上半期調査レポートをJVRが発表

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このところ、大型の資金調達リリースが増えていると感じる方も多いのではないだろうか。ジャパンベンチャーリサーチ(JVR)が3日に発表したレポートによると、2015年上半期の資金調達総額が624億円に達した。これは資金調達総額が6年ぶりに1000億円を超えた昨年下半期と同額だった。

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調達総額は2014年下半期と並んだが、調達企業数は23%減で326社となり、2014年上半期以降は大幅な減少傾向にある。つまり資金調達の大型化が顕著になったといえる。今回のレポートには含まれいないが、2014のレポートにあるように、引き続きシード・アーリーステージでの投資からシリーズA、シリーズBでの投資に成功するスタートアップが増加しているのが要因だろうか。

投資家別の比率を見ると、事業法人が全調達金額の624億円のうち439.7億円を占めている。このことからも、事業シナジーのある企業へのシリーズA、シリーズBでの投資が増えていること、また最近言われ続けているが、スタートアップのバリエーションの高騰も関係していると考えられる。

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1社あたりの調達額(中央値)はこのように、2014年下半期からほぼ2倍ともいえる1億3000万円となり、過去最高額となった。投資領域としては近年好調のITに加え、ヘルスケア、バイオ、医療が多くを占めており、これらは多額の投資が必要なドメインといえる。投資金額の割合としては、全体の投資額のうち、IT領域が28.6%、ヘルスケア、バイオ、医療領域が19.8%を占めた。

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また注目すべき点は、会社法改正以前の使い勝手の悪さから日本では優先株はほとんど使われないと言われてきたが、ついに76.9%に達したことだ(この比率は、ジャフコ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、日本ベンチャーキャピタル、DBJキャピタル、グローバル・ブレイン、産業革新機構、グロービス・キャピタル・パートナーズ、東京大学エッジキャピタル、サンブリッジ グローバルベンチャーズ、大和企業投資の10社を調査対象としたものだ)。

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優先株とは、普通株式に優先的な条件が付いた種類株式のこと。普通株式での投資は、投資家のリスクが経営者よりも大きかったが、優先株の条件によって緩和される。それゆえ投資家はよりリスクをとって、高いバリエーションで、多額の投資を行うというリスクをとりやすくなる。つまり大型の資金調達は、優先株の使用と表裏一体の関係なので、これらによってシリコンバレーではほぼ全てが優先株というように、日本でもさらに普及する可能性はあるだろう。

女性特化転職サイト運営のLiBが2.7億円を調達、キャリア支援の新構想も発表

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キャリア女性特化の会員制転職サイト「LiBz CAREER(リブズキャリア)」を運営するLiBは7月30日、リンクアンドモチベーション、クラウドワークス、サイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)、日本ベンチャーキャピタル、ニッセイ・キャピタルの計5社を引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額は2億7千万円。出資比率やバリュエーション等は非公開。

LiBは2014年4月の創業。「企業で活躍する女性を増やし、女性が活躍する社会を創る」をミッションに掲げて同年5月にLiBz CAREERを立ち上げた。同年7月にはCAVおよびEast Venturesから7千万円の資金調達を実施している。LiBz CAREERは2015年7月末時点で会員数約2万4000人に到達する見込みだという。

同社では今回の資金調達をもとにマーケティングを強化。さらに女性向けキャリア支援サービスの提供。機能拡充をするが、その一環として発表されたのが今回出資するリンクアンドモチベーション、クラウドワークスとともに展開する「キャリアパスポート構想」だ。

LiBではより広い領域で女性のキャリア支援を行うべく、今回出資を受けた事業会社との連携を進める。まずリンクアンドモチベーションと提携し、クライアント企業に対して女性が働く際のモチベーションの診断や、採用や研修、制度設計などの支援を行う。またクラウドワークスと連携ユーザーにリモートワーク可能な求人情報をの提供していく。

クラウドワークスは「職務の経歴を可視化することで、個人の与信を作っていく」といった話を常々しているが、LiBz CAREERでは同社と連携する形でそんな与信を作っていくことも考えているようだ。具体的な連携内容は明かされていないが、キャリア・評価などをサイト上のレジュメに蓄積して、「次のキャリアに移る際の『パスポート』となる経歴書を作ることが可能になる」(LiB)とうたっている。

LiBの「キャリアプラットフォーム構想」

LiBの「キャリアプラットフォーム構想」

既存金融企業のヒモのない純粋個人が財産管理スタートアップを起業、しかもFutureAdvisorは順調に成長

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YC S10*のFutureAdvisorが、ユーザ数と管理資産総額が1年で10倍に成長したことを発表した。管理資産総額(assets under management, AUM)はすでに6億ドルを超えている。〔*: YC, Y Combinator; S10, Summer 2010, 2010年夏季。〕

最近シリーズBで1550万ドルを調達した同社は、インターネット上の財産管理プラットホームで、ミドルクラスに人たちの資産管理とその有利な運用を助けている。同社のプロダクトは、投資アドバイザーと財産管理の二役(ふたやく)だ。

財産管理の面では同社は顧客の資産に直接介入して、運用先運用対象のバランスを図り、ユーザが望む投資目的を達しやすい資金配分を行う。今同社は4000名あまりの顧客の資金を管理し、そのポートフォリオの平均規模は14万3000ドルだ。

アドバイザーとしての同社は、登録ユーザが30万人以上おり、総額で約400億ドルを追跡している。なお、同社の投資アドバイザーサービスは、無料だ。

FutureAdvisorのCEO Bo Luによると最近同社は、顧客から要望の多かった、公的学資積立制度529 College Saving Planの管理も導入した。この、各州の積立制度は、1000万人のアメリカ人(主に子どもの親)が利用している。

コンピュータのアルゴリズムで投資のアドバイスを行うサービスは、WealthfrontやBettermentなどを初めとして、このところ混み合っている。しかしLuが強調するのは、FutureAdvisorがつねに、具体的な個人の本人性に基づくサービスであることだ。資金を正しく管理する責任を、同社は各個人に対して負う。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ウォンテッドリーが日経新聞から約1億円の資金調達、採用支援事業などで業務提携

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wantedlyウォンテッドリーは6月10日、日本経済新聞社(日経新聞)との資本業務提携を発表した。

日経新聞を割り当てとした約1億円の第三者割当増資を実施。あわせて採用支援事業や各イベントで業務提携を進める。今後はそれぞれの顧客基盤やブランド、提供コンテンツなどを活用した新サービスの企画や運営も検討する。

ウォンテッドリーはビジネスSNSを軸にした採用支援サービス「ウォンテッドリー」を運営。2015年6月時点でのMAU(月間アクティブユーザー)は60万人、登録企業はスタートアップをはじめとして900社に上る。

48億円のファンドで「大阪発、世界」を支援—投資独立系VCのハックベンチャーズ

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地方創生というキーワードを聞くようになって久しいが、大阪をはじめとした関西のスタートアップを取り巻く環境もこの2年でかなり変化したんだそう。2013年に大阪市が起業家支援の拠点「大阪イノベーションハブ」がオープン。そこを拠点に多くの人材が交流しており、現在も週に数回テック系のイベントが開催されている(TechCrunchでもハッカソンを開催している)。

そんな活動の中から生まれる「大阪発、世界」のスタートアップへ投資する独立系ベンチャーキャピタルのファンドがスタートした。

大阪市や中小機構、銀行のほかに阪急電鉄などが出資

大阪市に拠点を置くハックベンチャーズが組成した投資ファンド「ハック大阪投資事業有限責任組合」。5月に一次募集を終了したこのファンドの規模は48億円。最終的には総額100億円規模まで拡大する予定だ。LP(有限責任組合)には大阪市のほか、独立行政法人中小企業基盤整備機構、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、積水ハウス、阪急電鉄、日立造船、Mistletoeの名前が並ぶ。

5月28日に発表されたプレスリリースによると、このファンドでは、「関西を基盤としつつ、米国シリコンバレーなどの最先端地域と密な連携を取ることにより、ITによる産業革新の波を引き寄せ、日本/関西に世界的に競争力のある事業を創造することを目指す」とのこと。直接ハックベンチャーズに聞いたところ、「大阪をベースにしながらも、地域の制限はせず、グローバルに進出するスタートアップを支援していく」との回答を得た。

パートナーを務めるのは、コンサルを経てシリコンバレーでシード投資やインキュベーションを手がけて来た校條浩氏のほか、東レでCVCを立ち上げたのち米国スタートアップと日本企業のマッチングなどを手がける山舗智也氏、日本テクノロジーベンチャーパートナーズの金沢崇氏の3人。校條氏や山舗氏は大阪とシリコンバレーを行き来して活動することもあり、「シリコンバレー経由でアジアや世界に出たいスタートアップも歓迎」(ハックベンチャーズ)する。

投資対象とするのはシード・アーリーステージからシリーズAのスタートアップまで。投資額は1社数千万円〜数億円程度を想定する。投資対象となるのはIoTのほか、住宅や自動車、医療といった、「ITによりスマート化が急速に進む領域」が中心となる。

LPとともに投資対象を育成

関西では最大規模の独立系VCファンドが誕生したワケだが、気になるのは投資対象となるスタートアップの数だ。冒頭のとおり、大阪のスタートアップ環境が変化しているのは事実だけれども、資金を調達して、Jカーブを掘って、早いスピードでの成長を目指すような起業家がはたしてどれだけ居るのだろうか。

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ハックベンチャーズでもそのあたりは課題として認識しているようで、「(スタートアップの)数は正直あまり多くない」と語る。そこで同社では「ハックラボ」というラボ機能を用意。単に出資をするだけでなく、LPの支援のもとで事業創造・育成をしていくそうだ。例えば阪急電鉄であれば鉄道から不動産まで様々なビジネスがあるし、積水ハウスならばスマートホームなんかも興味があるところだろう。詳細はこれから決めていくようだが、企業と組むことで具体的なビジネスの「ネタ出し」もしたいという。

「関西には中小企業気質の会社が多いが、一方でグローバルに出たいという声も聞く。そういう人たちにはハックラボを使ってもらいたい。ありきたりなキーワードだが、『大阪のものづくりとシリコンバレーのIoT』を組み合わせていきたい」(ハックベンチャーズ)

photo by
Yoshikazu TAKADA

クレディセゾン、FinTech特化のコーポレートベンチャーキャピタルを設立

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screenshot_371先日のGoogle I/Oでも決済サービスのAndroid Payが発表されたばかりだが、金融(Finance)とIT(Tech)を掛けあわせたいわゆる「FinTech」に注目が集まっている。そんなFinTech関連のスタートアップにも影響のありそうな動きがあった。

クレディセゾンは6月1日、国内カード業界初となるコーポレート・ベンチャーキャピタル、「セゾン・ベンチャーズ」の設立を発表した。資本金は1億円で、クレディセゾンの100%子会社となる。

クレディセゾンでは、これまでにもOrigamiやコイニーをはじめとしてスタートアップに積極的な出資をしてきた。新設したセゾン・ベンチャーズでは、シード・アーリーステージのベンチャーを対象により機動的に活動したいとする。

主な投資対象はFinTechの分野で新世代の金融・決済ソリューションに取り組むスタートアップ、もしくはカード会員資産や永久不滅ポイントなど、クレディセゾン固有の資源を活用し新たな経済活動を生み出すポテンシャルを持つスタートアップ。クレディセゾンでは、3500万人の顧客基盤、30年以上のカードビジネス経験でスタートアップを支援するとしている。

企業の規模やアイデアにもよるが、1社あたり数百万円〜数千万円をイメージしているとのこと。将来的には、数年で数十億円規模にまで投資規模を拡大していきたいと意気込む。

ロコンドがアルペンと資本業務提携、10億円の資金調達と同時にスポーツアイテムのECを開始

ロコンド代表取締役の田中氏()

ロコンド代表取締役社長の田中裕輔氏(左)とアルペン執行役員の白鳥明氏(右)

ロコンド代表取締役社長の田中裕輔氏(左)とアルペン執行役員の白鳥明氏(右)

靴を中心にアパレルやコスメを取り扱うECサイト「ロコンド」。運営のロコンドが5月28日、アルペンとの資本業務提携を実施した。

これにともないロコンドはアルペンを引受先とした第三者割当増資を実施し、10億円を調達した。出資比率は非公開だが、20%以下のマイナー出資となっている。同社はこれまで、Rocket Internetをはじめ、みずほキャピタル、ネオステラ・キャピタル、エキサイト、リード・キャピタル・マネージメント、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、ジャフコから合計35億円の資金を調達している。ロコンドでは、今回調達した資金で商材の調達や人材確保、システム開発、倉庫の拡大、プロモーションなどをすすめる。

あわせて、ロコンド内にスポーツファッションECサイト「LOCOSPO(ロコスポ)powered by Alpen Group」を立ち上げると同時に、ロコンドがアルペンの自社ECサイトの開発・運営を行う。

ローンチ時の体質を改善し、今期黒字へ

2011年2月に“日本版Zappos”をうたってサービスを華々しくスタートさせた靴のECサイト「ロコンド」。商品の当日無料配送、商品を自宅で試したあとでもOKな返品対応、電話・メールで相談を受け付けるコンシェルジュサービスなど、ユーザー目線のサービスを提供し、また同時にテレビCMも積極的に放映。Grouponなどへの出資でも知られるドイツのベンチャーキャピタルであるRocket Internetが出資し、「ECサイトの垂直立ち上げ」をうたっていた。

だが2012年2月期の決算は—東日本大震災の影響や、商材確保で苦戦したとも聞いたことがあるが—売上高約12億円、純損失約15億円。厳しい船出となった。

「売上は12億円(2012年2月期)から30億円、50億円と成長し、2015年2月期には75億円となった。今期には黒字化も見えるところまできた」——ロコンド代表取締役社長の田中裕輔氏はこう語る。

サービス開始当初は商品を自社で商品を確保し、定価で販売。さらに倉庫もアウトソーシングしていたが、体制を刷新。インポート商品を除いて消化仕入れ(委託)のモデルに変更し、倉庫のオペレーションも自社で行うなど、体質改善に取り組んできた。

「我々の最初の失敗は初年度で資金を突っ込みすぎたところ。(業績について)メディアで取り上げられることもあったが、徐々に体制を見直してきた。だが一方で、送料・返品無料やコンシェルジュ、即日配送というサービスについては最初から変えずにやってきた」(田中氏)

そんなロコンドだが、現在は靴を含めた「SBICS(Shoes:1.4兆円市場、Bag:1兆円市場、Inner:9000億円市場、Cosme:2.3兆円市場、Sport1.4兆円市場)」の7兆円市場に進出することを目指しているのだという。すでにアパレルでは海外ブランドと提携。さらにサマンサタバサのサイト運用支援でバッグの販売を開始しており、4月にはコスメの販売も始まった(試供品付きで、試供品が合わなければ返品無料なんだそう)。そして今回のアルペンとの提携でスポーツ領域の強化を進めることになる。

「ガチのスポーツ用品」しか売れなかったアルペン

アルペン執行役員でデジタル推進本部副部長 兼 戦略企画室長の白鳥明氏に聞いたところ、同社で課題だったのは「デジタル戦略」。ロコンドと組む前のアルペンのコーポレートサイトは、良く言えば古き良きWebデザイン、テック業界の言葉でいえばWeb 0.8ぐらいのデザインだった。ECも楽天市場などに出展する程度。「『ガチスポーツ』の商品では強みがあるが、ファッションやアパレル、スニーカーというものが売れなかった」(白鳥氏)

それを示す面白い例が、ファッション性の高いスニーカーの売れ方だ。最近人気のNewBalanceのスニーカーなどは、型番次第でファッション系のECサイトでは定価でもすぐに売り切れてしまう。だがそんな商品でもアルペンでは4割引でも商品が売れ残っていたのだそう。それを試しにロコンドで販売したところ定価で完売したそうだ。そんな背景もあり、ロコンドと組み、ファッションという切り口でECを展開することに活路を見出したというわけだ。またアルペン社内では3月にデシタル部門を再編している。

LOCOSPOとアルペンの自社ECサイトでは在庫を共有しており、サイトローンチ時には約1万点の商品をラインアップする。将来的には20万点まで拡大を見込む。

解析ツールのユーザーローカル、YJキャピタルとEast Venturesから約2億6000万円の資金調達

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ヒートマップに対応したアクセス解析ツール「User Insight」やソーシャルメディア解析ツール「Social Insight」などを提供するユーザーローカルが5月25日、YJキャピタル、East Ventures引受先として約2億6000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。同社は今回調達した資金をもとに、ビッグデータ分析事業強化進める。

ユーザーローカルは2007年の設立。代表取締役を務める伊藤将雄氏は、もともと楽天のエンジニア・プロデューサーで、「みんなの就職活動日記」を事業化、法人化した人物。その後早稲田大学大学院にウェブ上の行動解析を研究し、その成果をベースにした製品を提供すべく、ユーザーローカルを設立した。これまで国内外25万サイト以上への無料解析ツールを提供しているほか、国内700社以上へ商用アクセス解析ツールを導入。月間70億PV以上のデータを分析しているという。

同社によると、顧客増による分析対象となるデータ量増大、スマートフォン・マルチデバイス領域やO2O分野での分析ニーズの高まりを受けて資金調達を実施したという。今後は大規模なインフラ投資のほか、業種に特化の解析サービスも提供していくという。すでに4月から、メディア業界に特化した「Media Insight」なども提供している。

一枚岩的な巨大アプリケーションのITは終わり、多様なサービスを自在に組み合わせる時代に…それを手伝うMuleSoftが急成長

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いろんなソフトウェアやサービス、データソースなどを統合して一本化するプラットホームMuleSoftが今日、1億2800万ドルという巨額な資金調達を行った。

そのシリーズGのラウンドを仕切ったのはSalesforce Venturesで、ServiceNowとCisco Investmentsが参加した。またそのほかに、Adage Capital Management、Brookside Capital、Sands Capital Venturesなど、主に上場企業を対象にしているファンドも加わり、さらにこれまでの投資家NEA、Lightspeed Venture Partners、Meritech Capital Partners、Bay Partners、Hummer Winblad Venture Partners、Morgenthaler、およびSapphire Venturesも加わった。

投資家の数がとても多くて、その顔ぶれもさまざまだ。これで同社の総調達額は、2億5850万ドルという途方もない額になる。これだけ大きな資金調達は、通常、IPO近しの兆候だ。

MuleSoftのCEO Greg Schottはこう語る: “公開企業向けの機関からの投資を受け入れる決定をしたのは、そういう関係を築きたかったし、公開市場の投資家たちのやり方を知りたいと思ったからだ”。

彼によると、確かに規模的には公開企業になってもおかしくないし、今回の資金調達をその方向へのステップと取られてもしょうがないが、当然ながらその日程等を今明らかにすることはできない。彼曰く、“Q1の決算からの予測では、今年の年商は1億ドルに達するだろう。うちは急成長しているし、上場してもよい規模だ。すでにその気はあるから、残る問いはそのタイミングだ”。しかし現時点では、プライベートラウンドで資金を調達して成長を継続するべき、と彼は判断したのだ。

MuleSoftは、さまざまなアプリケーションやデータやデバイスを結びつけるプラットホームを提供している。確かに、今、そういう需要は多い。今回のように多数かつ多様な投資家が、同社の継続的な成長に関心を示すのも、当然だ。

Schottによると、20年か30年ぐらい前までは、企業は一枚岩的なアプリケーションを作って、それにありとあらゆる複雑なことをさせていた。でも今では、あらゆるものが細切れになっている。そういう細片をうまく糊付けして使うのが、今のやり方だ。各細片は、どこかのSaaSのこともあれば、何かのアプリケーションのこともあり、あるいはインターネットに接続されたデバイスのこともある。非常に多様だ。

同社が急成長している理由も、いろんなものを互いに接続して使うという需要が、今はものすごく大きいからだ。MuleSoftのプラットホームを利用すると、それが簡単迅速にできる。各部を結びつけるためにいちいちコードを書かなくても、MuleSoftがすべて、面倒を見てくれる。

ServiceNowやSalesforceのようなSaaS企業がMuleSoftに関心を持つのも、そのためだ。彼らは、顧客がさまざまなサービスを縫い合わせることの重要性を、よく理解している。オープンなAPIがあるだけでは、それらを使いこなす仕事がたいへんになるが、MuleSoftのようなミドルマンがいれば、複数のサービスをまとめてくれるのだ。

“うちはAPIも提供しているから、コードを手書きする必要がない。それによってITのコストが下がり、顧客企業内の開発過程もスピードアップする”、と彼は述べる。

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短期的な採算性ではなく長期的な協業に——中小企業バックオフィス支援のBizerと法律事務所のAZXが資本提携した理由

中小企業のバックオフィス業務をクラウドで支援するサービス「Bizer」。このサービスを提供するビズグラウンドが5月18日、AZX Bizer Support Fund なるベンチャー投資ファンドを割当先とする第三者割当増資を実施したと発表した。投資額等は非公開だが、数百万円程度だと聞いている。

このAZX Bizer Support Fund 、実は今回の出資に向けて組成されたファンド。AZX 総合法律事務所を筆頭に、士業によるスタートアップ支援を手がけるAZX Professionals Groupがパートナーとなっている。外部資本も入っておらず、その名の通りビズグラウンドへの投資だけを行うファンドだ。

両者は今回の投資を契機に業務提携も実施。Bizerのユーザーは、AZXの弁護士に初回30分無料相談ができるようになるほか、AZXの契約書作成サービス「契助」の割引利用が可能になる。今後については、ビズグラウンド代表取締役の畠山友一氏いわく、「今のBizerのサービス範囲だけにとどまらず、新たな事業領域での協業も検討していく」のだそう。

法律事務所がスタートアップ投資をする意味

Bizerのユーザーからすれば弁護士によるサポートが強化されるワケだし、AZXからすれば投資先の支援をすることで将来的なキャピタルゲインも期待できる。さらにはスタートアップのクライアント獲得にもつながる話だ。ただスタートアップの法務に強いとは言え、法律事務所が投資まで行うというのは日本ではあまり聞かない。

ちなみに、米国シリコンバレーに拠点を置く大手法律事務所のWilson Sonsini Goodrich & Rosati Professional Corporation(ウィルソン ソンシーニ)もクライアントであるスタートアップに積極的に投資してきていることで知られている。これはスタートアップへの支援の強化につながる一方、士業として客観性を欠くことになるということで賛否両論あるようだ。

「もともとはBizerをAZXのクライアント向けに利用できないかという点を検討したことが最初の契機。だが出資をすることで、短期的な収益面での採算性ではなく、長期的な視点で一緒に協業していくことができると考えた」—AZX Professionals Group CEOで弁護士の後藤勝也氏は語る。

実はAZXでは1月頃からスタートアップへの投資を検討していたのだそうで、これが初の案件となる。「以前からフィーベース(都度士業に料金を支払って相談などをするという形式)でサービスを受けるのはまだ厳しい状況なので、株式を持ってもらえないかというような相談もあった。今回の出資は、フィーベースのサービスを無料・低額にするという趣旨ではなく、連携してサービスを作るためのものだが、今後はこのような趣旨でも投資していきたい」「我々もビジネスとしてやっている以上、お金をもらっていないとできないこともあったが、投資先であれば組織としてきっちりと支援していける」(後藤氏)

具体的な投資目標などは聞けなかったが、「ベンチャーキャピタル等が想定する資本政策を乱さないよう了解を得つつ投資を進める」(後藤氏)とのこと。また投資先ごとにファンド(ただし、基本的には外部のLPを入れない)を組成する予定だという。

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Simon Cunningham

 

動画制作クラウドのViibarがヤフーと資本業務提携、既存株主含め7億円の資金調達

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「動画元年」なんて言われていたのは去年か一昨年のことだっただろうか。ともかく動画に関するビジネスが急速に拡大しているのは事実だ。十代のカップルが自らの動画をアップする「MixChannel」は女子中高生の2人に1人が利用しているそうだし、動画広告のプラットフォームも複数スタートしている。UUUMのようなYouTuberのマネジメント会社も登場してきたし、動画制作向けのクラウドソーシングサービスもある。

そんな動画制作特化型クラウドソーシングサービスの1つ、「Viibar」を運営するのがViibarだ。同社は5月18日、ヤフーと資本業務提携を行うことを明らかにした。

資本提携では、ヤフーに加えて既存株主であるグロービス・キャピタル・パートナーズおよびグリーベンチャーズが出資。総額約7億円の第三者割当増資を実施した。あわせて、ヤフー執行役員 マーケティングソリューションカンパニー長の荒波修氏が社外取締役に就任する。なお、業務提携の詳細については、6月後半にも詳細を発表するとしている。

動画広告が成長。売上は前年比30倍に

Viibarは動画制作に特化したクラウドソーシングサービスだ。現在国内を中心に約2000人のクリエーターがユーザー登録。動画制作はスタッフが進行管理や制作スタッフのマッチングを担当。クライアントとクリエーターはオンライン上でコミュニケーションを取りながら動画を制作していく。

Viibar代表取締役の上坂優太氏

Viibar代表取締役の上坂優太氏

これまで、動画広告や商品説明動画などウェブで利用される動画をはじめ、テレビCMやOOH(交通広告や屋外広告)などに向けた動画を制作してきた。売上高は非公開ということだったが、「2013年度から2014年度で30倍成長」(Viibar代表取締役の上坂優太氏)なのだそう。

初年度ということでベースとなる売上が決して大きいとは思わないが、それでも30倍というのはすごい数字だ。この成長の背景にあるのは、急増する動画広告のニーズ。「テレビCMやOOHなど、利用の幅も広がっているが、そこはあくまで一次関数的な成長でしかない。当初から明確にあったウェブの動画広告が大きく成長している。市場ではクリエイティブ不足が明確な課題になってきた」(上坂氏)

制作だけでなく、“成果”に結びつく機能の提供へ

上坂氏は、「安かろう悪かろうではない」と、Viibarで作成する「動画」そのものの品質が評価されていると説明するが、同時に「動画広告」としての品質を高めているところだと語る。

動画広告は、単純に動画としてのクオリティだけでなく、動画を閲覧した人がそのサービスを利用したり、商品を購入するといった“成果”が求められるもの。そのため、どれだけイケてる動画を作るかということではなく、動画広告をユーザーに配信するという一連のフロー——企画、制作者のマッチング、動画制作、動画の配信、効果測定、そして効果測定を元にしたPDCAを回す——を通じて、成果を出していかなければならない。

だがこれまでのクラウドソーシングが担当していたのは「制作者のマッチング」「動画制作」といったパート程度だ。Viibarでは現在、動画広告にまつわる一連のフローを自社でまかなえるよう、各種開発を進めているのだそうだ。「動画広告はクリエイティブの要素が大きいが、そのクリエイティブを評価して、次の企画に落とし込むというところまでをデータドリブンでやっていく」(上坂氏)

具体的な内容については聞けなかったが、動画制作に加えて動画配信やアナリティクスの機能も提供していくということだろう。実際、今回の調達を機に、データアナリストなどの採用も始めていると聞いた。

ヤフー本体が出資するも「基本的にはIPO目指す」

ヤフー本体によるスタートアップへの出資というのは、それほど多いケースではない。Facebookを使った懸賞サービスを提供していたクロコスや、映画チケットの共同購入サービスを提供していたブルームなど、買収案件が比較的目立っている印象だ。

ヤフーによる買収の可能性について上坂氏に尋ねたところ、「基本的にはIPOを目指している。動画広告は急速に伸びており、特にBtoB、BtoBtoCでレバレッジを書けてサービスを展開するには、以下にジャイアントと組むかというのは重要になると思っている。ただし我々はYouTubeやFacebookなどともすでに取引もあるし、基本的に独立した存在」としている。

唯一のハードウェアアクセラレータを自称するHaxlr8rがHaxに改名、卒業生たちの販売流通体制のための新事業を開始

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これまでHaxlr8rは、アイデアやプロトタイプ段階のハードウェアスタートアップがプロダクトの実際の製造に漕ぎ着けるまでの過程を支援してきたが、でも、製品が実際に完成してから、そのあとはどうするのだ? やっと物を作れるようになった企業は、今度は製品の販売や流通のための方法が必要だ。

そこでHaxlr8rは、社名をもっと分かりやすい覚えやすい”Hax”に改め、すでに製品が完成しているハードウェアスタートアップの、マーケティングと流通という厄介な問題の解決を支援する、新しい事業を立ち上げた。それはHax Boostと名づけた新しいアクセラレータで、9月に事業を開始し、ハードウェアスタートアップによる流通チャネルや小売パートナーの発見と開拓を支援する。

Hax Boostの6週間の特訓プログラムでハードウェアスタートアップは、流通チャネルの開拓や、サプライ・チェーンとロジスティクスの最適化、営業部門の作り方育て方、小売パートナーや流通企業とのコネの作り方、などを勉強する。多くのアクセラレータと同様に、その間、企業としての通常の操業時間もあり、またメンターたちから指導を受ける時間もある。今回のそれは、流通戦略とその改善について教えてくれる先生たちだ。

6週間はアクセラレータの事業期間としては短いが、ほとんどの企業が、その期間が終わったあとも指導やアドバイスを受けることになる。Hax Boostは全過程を終了した企業の持ち分の2%を取る。9月から始まる最初の‘学期’の受け付けは、7月11日が締め切りだ。

Hax Boostはサンフランシスコで‘開校’するが、従来どおりのハードウェアアクセラレータはHax Acceleratorと名を改めて継続する。こちらは、7月学期の申し込み受付が5月23日までだ。

また、〜Boostを‘卒業’したハードウェアスタートアップには、最大で20万ドルの開業資金が提供される。ただし資金の提供は、次の学期からだそうだ。

以上の発表が行われた翌日である今日(米国時間5/11)は、同社のデモデーが行われる。そこにどんなプロダクトが登場するか、詳しくはまた別の記事でご報告しよう。

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レイ・フロンティアがICJとアドウェイズから資金調達、ライフログアプリの開発を強化

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レイ・フロンティアは5月8日、ICJ1号ファンド投資事業有限責任組合およびアドウェイズを引受先とした第三者割当増資を実施した。金額および出資比率は非公開だが数千万円程度とみられる。ちなみにICJ1号ファンド投資事業有限責任組合はインキュベイトファンドの子ファンドの1つで、通常は1000万円〜3000万円程度の出資を行っている。

レイ・フロンティアは2008年の設立。当初はAR(拡張現実)関連アプリの自社サービスおよび受託開発を手がけていたが、その過程で培った位置情報やセンサー技術をもとにライフログ管理アプリ「SilentLog(サイレントログ)」を提供している。

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このアプリはバックグラウンドで立ち上げているだけで、1日の活動(どこかに滞在している、徒歩で移動している、交通機関で移動しているといったこと)を記録。同日に撮影した写真とともに日常を振り返ることができるというもの。

ユーザー数は現在4万ダウンロード。Apple Watchにも対応しており、同製品のリリース後はダウンロード数も増加傾向にあるそうだ。ちなみにユーザーの約半数は40歳以上というシニア層にリーチしたアプリとなっている。

同社では今回調達した資金をもとに、Apple Watch対応を含めたアプリケーションの開発・運営体制を強化する。「ライフログ関連のアプリは、『どんな情報を見せるか』という点にフォーカスしているところがあるが、どんな情報を取れるか、そして取った情報をもとにユーザーに対して何を提供できるかが重要。そういったユーザーのインセンティブまで考えていきたい」(レイ・フロンティア代表取締役 CEOの田村建士氏)

引受先にアドウェイズの名前があるが、同社とは行動情報の機械学習アルゴリズム開発強化で支援を仰ぐほか、将来的にはライフログをもとにした広告商品の共同開発も視野に入れているという。ただし、「データはセンシティブなもので、慎重に検討していく」(田村氏)とのこと。

学習管理サービス「studyplus」運営のスタディプラス、フェムトおよび朝日新聞社から1.85億円の資金調達

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学習管理サービス「studyplus」を手がけるスタディプラスは5月8日、フェムトグロースキャピタル投資事業有限責任組合および朝日新聞社を割当先とした合計1億8500万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

同社が提供するstudyplusは、学習の習慣化を支援するサービス。学習記録をつけたり、同じ進路を希望する学習仲間とコミュニケーションをとったりできる。APIも外部公開しており、旺文社などが提供する20の学習アプリと連携もしている。

ユーザーは2015年5月時点で110万人。高校生の良く使う勉強系アプリのナンバーワンにも輝いたという(リクルート進学総研の「高校生価値意識調査2014」調べ)

今回の調達では、エンジニアを中心とした人材採用を強化する。グリーでドリランドや釣りスタなどのゲームを担当したエンジニアの斉藤秀治氏もCTOとして参画する。

サービスは2013年3月から提供しているが、現在は単月黒字を達成する月も出ているという。同社は東京・渋谷にて自習室を運営しているが、入会制限をする状況。加えて広告販売も本格化。「大学受験生や勉強という文脈で広告訴求できるような媒体は少ないので、大学からの生徒募集などの需要はある。入試広報に関する広告は440億円規模の市場。ここからその市場を取っていく」(スタディプラス代表取締役の廣瀬高志氏)

アプリに簡単にメッセージング機能を組み込めるLayerがWebアプリケーションのサポートを開始、ユーザ増大のためにエンジェル的なファンドを立ち上げ

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【抄訳】
TechCrunch DisruptのBattlefieldに2年前に登場して優勝をかっさらったLayerは、デベロッパが自分のアプリケーションに、わずか10行足らずのコードでメッセージング(テキスト、音声、ビデオ)やファイル共有の機能を組み込める、というコミュニケーションプラットホームのサービスだが、今日(米国時間5/6)は2年前の約束どおり、モバイル(iOS、Android)だけでなくWebアプリケーションもサポートする、と発表した。

また同社は、なるべく多くのデベロッパにLayerを使ってもらうための投資資金として、The Layer Fundと名づけたファンドを立ち上げた

The Layer Fundの提供によってLayerが投資先企業の部分的オーナーになるのではなく、その企業が成長してLayerをますます使ってもらえるための、成長資金として資金が提供される。

LayerのファウンダでCEOのRon Palmeriは、“Layerの成功はLayerを使うアプリの成功にかかっている”、と述べる。

Layerはこれまで、モバイルのアプリデベロッパのためのツールを提供していたが、そういう顧客企業からマーケティングや宣伝PR、資金調達などの相談を受ける機会が少なからずあった。

Layerはそういう顧客企業と一緒に問題解決に取り組んできたが、The Layer Fundを立ち上げたことによって、お金の面でも援助できることになった。

このファンドはBloomberg BetaのRoy Bahatから提案され、AnthemVPやCrunchFund 、SV Angel、Promus Ventures、Data Collective、MkII Ventures、Jean Pigozziなどが投資者として参加した。AngelListからも利用できる。5万ドルから10万ドルまでのきわめて初期的な投資案件を年に5件、という事業規模を想定している。

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なおLayerは、Layerを利用するアプリのためのiMessageふうのGUIツールキットAtlasを提供していたが、このたび、OpenStreetMapをベースとする地図サービスMapboxとパートナーして、地図表示を伴う位置機能もアプリ/アプリケーションのLayer層の中で利用できることになった。

【中略】

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2013年のTechCrunch Disrupt SFでローンチしたLayerは、今では、これを利用しているアプリの数が1万近くあり、デベロッパは全世界の1360の都市に分散している。Webアプリケーションのサポートが加わったこれからは、‘アプリ’ではなく‘アプリ/アプリケーション’という面倒な書き方になるだろう。

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ビジネスチャットシステムを手がけるChatWork、GMO-VPから3億円の資金調達

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国産のクラウド型チャットシステム「ChatWork」を提供するChatWorkが資金調達を実施した。同社は4月27日、GMO VenturePartnersを引受先とした総額3億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。今回の調達をもとにエンジニアの採用や新機能開発、プロモーション、アライアンスパートナーの開拓を進める。

ChatWorkは2000年の設立(当時の社名はEC Studio)。これまで一貫して自己資金でサービスを運営し、14年間黒字での経営を行ってきたという。なおプロダクトとしてのChatWorkは2011年3月のリリース。キャッチコピーは「メールの時代は終わりました」というなかなか過激なモノだった。すでに米国にも進出し、子会社ChatWork Incをシリコンバレー置いている。今後は日米あわせて積極的な採用を実施する予定。国内については、現在35人の社員数を2〜3年で100人以上まで拡大するとしている。

ChatWorkは現在、中小企業や大企業、教育機関、官公庁など約6万6000社、世界183カ国で利用されている。とはいえクラウド型のチャットシステムは競合も多い領域。スタートアップだけ見ても海外のSlackHipChat、国内のTalknoteco-meetingなどがある状況だ。