フロントラインワーカーのためのチャット&人事アプリFlipがユーザー数100万人突破で約34.5億円を調達

共同創業者兼製品責任者のGiacomo Kenner(ジャコモ・ケナー)氏、CMOのAnn Kathrin Stärkel(アン・カトリン・スターケル)氏、創業者兼CEOのBenedikt Ilg(ベネディクトイ・ルグ)氏、CFOのGeorg Renz氏(画像クレジット:Flip)

世界の労働人口の8割以上約27億人はコンピューターの前で日々を過ごしていないため、テクノロジーに関しても格差が激しく、彼らをユーザーとして対象としたIT投資は1%程度と言われている。それが、スマートフォンやアプリの台頭で急速に変化しており、米国時間2月2日、その流れを受けてビジネスが好調なスタートアップの1社が、このチャンスに飛びつくべく、資金調達を発表している。

フロントラインで働く人々が互いにチャットしたり、マネジメントチームから連絡を受けたり、シフトの入れ替えなどの人事活動を行うためのコミュニケーションアプリを作っているFlip(フリップ)は、3000万ドル(約34億5200万円)を調達したそうだ。ドイツのシュトゥットガルトに拠点を置き、主にドイツ語圏のDACH地域(ドイツ・オーストリア・スイス)で利用されているこのスタートアップは、この資金を利用して、まずは英国をはじめとする新しい市場に進出する予定だと、CEO兼創業者のBenedikt Ilg(ベネディクト・イルグ)氏は述べている。

Notion Ventures(ノーション・ベンチャーズ)とベルリンのファンドHV Capital(HVキャピタル)が共同でこのラウンドをリードし、これまでの出資者であるCavalry Ventures(キャバルリー・ベンチャーズ)とLEA Partners(LEAパートナーズ)、そしてVolkswagen(フォルクスワーゲン)会長Matthias Müller(マティアス・ミューラー)氏をはじめとする多くの個人出資者が参加している。

Meta(メタ)のWorkplace、Microsoft(マイクロソフト)のTeamsCrew(現在はSquareが所有)、Blink(ブリンク)Yoobic(ヨービック)When I Work(ウェン・アイ・ワーク)Workstream(ワークストリーム)など、世界の労働者の同じ分野、そしてコミュニケーションに関する同じユースケースを対象としたアプリが市場に多数存在している。実際、2月2日、Snapshift(スナップシフト)という、主に人事側に焦点を当てたフロントラインの仕事アプリも資金調達を発表したばかりだ。

しかし、混戦のように見えるこの分野には、3つのことがいえる。第一に、この市場は十分に大きく、断片的であるため、長期的にいくつかの強力なプレイヤーが混在する可能性があるということ。第二に、この市場はまだかなり新しいので、各プレイヤーが進化や革新を遂げる可能性はまだたくさんあるということ(イルグ氏は、FlipのアプリがGDPRの規則に厳格に準拠していることが、他の企業がGDPRに準拠していると主張するも、実際には準拠していない際に、同社がビジネスを獲得するのに役立っていると述べている)。また、かなり基本的な部分でも、同社はユーザーインターフェースや操作性だけでなく、アプリのサイズ、携帯電話上で占有する容量、使用するために必要な帯域幅など、アプリを使いやすくしている。

「私はFlipを始める前にPorsche(ポルシェ)で製造の仕事をしていたので、マネジメントとのコミュニケーション不足など、その気持ちはよくわかります」とイルグ氏はいう。「私たちは、画面数も少なく、ダウンロードして使用することに関して、この分野で最もシンプルなアプリケーションです。これが、エンドユーザーのために私たちが作って提供したい製品の精神です」。と語る。

そして三つ目は、成功のためにはクリティカルマスが重要だとすれば、Flipは実際に前面に躍り出ているということだ。

McDonald’s(マクドナルド)、Rossmann(ロスマン)、Edeka(エデカ)、Magna(マグナ)、Mahle(マーレ)など、現在までに200社、約100万人のユーザーを獲得している。パンデミックにより、最前線で働く人たちが突然、人々の意識の中心に現れた瞬間、Flipの収益は急上昇し、2021年は6倍になったとイルグ氏は語った(このスタートアップは、実際の収益や評価額を公表していない)。

この分野を追っている人は、先々週、WorkplaceがMcDonald’sを顧客として発表することを望んでいたものの、それを控えていたという話を書いたことに気づいたかもしれない。FlipのMcDonald’sとの契約人数は、現在約6万人。McDonald’sはすでにFlipと公の場で協働していることを考えると、Workplaceとの契約がどうなるかは興味深いところだ。いずれにせよ、この案件がいかに大きな意味を持つかは明白である。

今日のアプリは、主に雇用主が、日中動き回っている、通常は1つの場所で働くことのない、より広範囲の従業員とコミュニケーションをとるために使用されている。また、従業員同士も、主に生産性向上のために、シフト交換や給与明細の確認など、コミュニケーションをとるためにアプリを使うが、仕事に直接関連する機能を実行するために使うわけではない。この分野は、Yoobicのようなライバルが機能を構築している分野であり、イルグ氏は、Flipもその可能性を検討し始めていると述べた。

Notion VenturesのJos White(ヨス・ホワイト)氏は「Flipは、デスクを持たない社員1人ひとりが、自社のコミュニケーションプロセスに真に参加する機会を提供します。このような社員を積極的に取り込むことには、大きな可能性があります。Flipが英語圏の市場で拡大する際に、我々の専門知識と経験でサポートできることを楽しみにしています」と声明で述べている。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【コラム】オンチェーンの資金調達はスタートアップの資金調達を変える

Web3はVCが支配する、とJack Dorsey(ジャック・ドーシー、Twitterの共同創業者)はツイートする。そうだろうか。Web3は私たちが作るものであり、許可された場合のみVCが所有するのだと筆者は思う。私たちは今まさにWeb3を構築しており、その過程でどこに行くのか、どのように資金を調達するのかをコントロールするできるのは私たちである。

分散と自律性を真剣に考えるなら、時代遅れのVCの基準に従わなければならない理由はない。スマートコントラクトで管理されたオンチェーンの資金調達など、他の手段が存在する。プロジェクトが直感的に利用できる、より公平で、完全に透明性があり、投資家や開発者にとっても適応性がある手段である。

筆者が完全なオンチェーン方式を資金調達の未来(あるいは少なくとも次の大きな進化)と考えるのはこれが理由である。

長く困難な道のり

Web3がVCに支配されるとしたら、Web2.0がすでに億万長者、コングロマリット、多国籍企業に支配され、文化的影響力、政治的権力、そして人類がこれまでに経験したことのないような巨額の富を得ていることも頷ける。それならば、消えゆく光に逆らっても仕方がないが、ここに問題がある。私たちがインターネット上で行うことは、文字通りすべて、彼らに権力をさらに独占させ、彼らにより多くの資本を生み出すように設計されている。私たちがログインするたびに、彼らには富が転がり込む。

そう考えると、ジャック・ドーシーのようなベテランのWeb 2.0プレイヤーが、Web3の将来について冷ややかに見ているのも不思議ではない。今後、私たちが覚えておくべきことは、Web3はスタンドアロンで存在するということである。Web2.0に取って代わるものではなく、彼らのプレイグラウンドはそのまま存続する。

Web3は、Web2.0とは独立して同時に存在する。信じようと信じまいと、この機会を倫理的な要請として捉え、インターネットの概念を反復し、前世代の過ちを正し、おそらく社会の機能の最も基本的な部分に影響を与え始めなければならないと考える人もいる。企業に力を与えるのではなく、コミュニティに力を与えるのだ。

結局のところ、現在企業が支配しているものと同じプラットフォームを個人に与えるためのオープンソースがWeb3なのだ。私たちの新しいフレームワークの存在意義は、個人に力を与え、年齢、人種、性別、国籍を問わず、すべての人がより公平にアクセスできるようにすることにある。現状を打破するためには、誰かが立ち上がらなければならない。

未来は私たちが描くものである

この崩壊は、具体的にどのように起こるのだろうか?出発点はオンチェーンに他ならない。現在、Web3のプロトコルや分散型アプリを構築している開発者の大半は、新世代のクリエイターとして哲学にむしゃぶりついて仕事をしている。

彼らは、古いモデルがどのように機能しているか、誰がサービスを提供しているか、その状態を維持できるようにどのように設計されているかを理解している。会社の設立、資金調達、取締役会の設立、従業員の採用などを知る従来のスタートアップアクセラレーターの経験は、開発者たちの仕事をさらに向上させるための強固な基盤となる。

ブロックチェーン技術は、すでにオープンソースの不変的な台帳を提供している。この台帳は、Web3を生み、これを推進してきた理念と直接沿う形で、すべての資金調達ニーズを満たすために使用できる。私たちは、自己実行型のスマートコントラクトを利用して、資金調達のオープンポイントとクローズポイントをコントロールし、すべての投資と条件をオープンにして検証可能性をもたせることができる。

Web3のプロジェクトでは、透明性は非常に重要である。このようなオンチェーンで一般に検証可能な資金調達方法を利用すれば、偏りがないことを保証できる。このモデルでは、すべてが公開され、すべての投資家が同じ土俵に立っていることがオープンなので、裏取引はできない。さらにいえば、投資がブロックチェーン上で確定するたびに、株式取引や構造が明らかになる。

もう1つの方法は、ホワイトリストを利用することである。ホワイトリストを利用すると、プロジェクトに純粋に情熱をもち、それに関わっている人々が、経済的に最も大きな影響力をもつことができる。

暗号アドレスを事前に選択することで、すべての審査とデューデリジェンスを事前に完了し、プロセスを効率化することができる。資金調達契約は汎用性があり、理由を問わず任意のアドレスをホワイトリストに登録することができるため、権限はすべてスマートコントラクトを発行したチームに残る。これにより、煩雑で時間がかかりがちなプロセスをきめ細かくコントロールすることができる。

良心的な創造

オンチェーンの資金調達モデルは、開発者に対してより公平なアプローチを提供し、教育、雇用、信用、コネクションなどの社会経済的な障壁を回避することができる。これらのモデルでは、プロジェクトだけしかもっていない開発者でも、プロジェクトをスタートさせることができる。プロジェクトとその潜在価値だけが重要となる、より実力主義的な機能が提供されるのだ。

小規模なプロジェクトでも、ピッチデッキを作成したり、銀行口座を開設したり、今までのように積極的に投資家を探したりする必要がなくなり、リソースと時間を節約することができる。

これこそが、ブロックチェーンという産業を生み出したコミュニティ主導の理念である。シンプルなツールを導入することで、プロジェクトごとに理にかなう方法で成長と資金調達を促進することができる。これにより、開発者、愛好家、ユーザーによるWeb3の所有が可能になる。

まだ長い道のり

オンチェーンの資金調達は、従来のVCモデルを完全に消滅させるものではない。なぜなら、開発者は優れた投資家と一緒に仕事をすることで、貴重な視点を得ることができるからである。VCは、ビジネスモデルや財務モデルの分析、スケールアップの計画、実行リスクや市場での企業のポジションなどを評価する専門家である。このような特性に重点を置くVCは、今と同じように価値をもち続けるだろう。どのプロジェクトも、企業の成長と成功を支援した実績のある人材を求めている。

オンチェーンは特効薬ではない。それは単に、オープンで公平な資金調達のプロセスを実現し、開発者が最も便利だと感じるメカニズムに近づけるための、(今のところ)最高の枠組みである。

この新しいイノベーションに注目し、新しいつながりがその可能性を最大限に発揮できるように歓迎したい。

編集部注:本稿の執筆者Parker McCurley(パーカー・マッカーリー)はDecent Labsの共同設立者でCEO。

画像クレジット:cnythzl / Getty Images

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(文:Parker McCurley、翻訳:Dragonfly)

スマートアイデアが約3500万円の追加調達、AGキャピタルグループ会社ライフカードに開発支援サービス提供

家計簿アプリ「2秒家計簿おカネレコ」を運営するスマートアイデアが約3500万円の追加調達

家計簿アプリ「2秒家計簿おカネレコ」(Android版iOS版)を中心にPFM(個人財務管理)事業を展開するスマートアイデアは2月4日、第三者割当増資による約3500万円の追加資金調達を実施したと発表した。引受先はAGキャピタル。

今後、AGキャピタルのグループ会社ライフカードが、スマートアイデアの開発支援サービス「サブスク開発」を採用。ライフカードがシステム開発・アプリ開発の支援を行う。

スマートアイデアは、ある一定期間開発チームの時間を確保し、プロジェクトを担当する開発サービス「サブスク開発」を展開。確保した時間を上限とし、システム開発・アプリ開発を進行させるものという。継続してプロダクト運営ができるよう、開発後のアフターサポートを行うメンテナンスプランも用意している。

同サービスでは、プロダクトマネージャーおよびITディレクター・開発ディレクター・デザイナー・エンジニアのチーム体制で、毎月上限時間までプロダクト開発をトータルサポート。日本国内での企画と、ベトナムのエンジニアによる開発により、「高品質」「低価格」なプロダクト開発を実現できるとしている。

また、プロフェッショナル人材によるPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)業務を行い、部署間コミュニケーションの最適化やマルチベンダーマネージメント、プロジェクトコストの最適化などを実施する。PMOでは、企業におけるプロジェクト支援について、部署の枠を超えて、開発ベンダーとの調整なども含めてマネージメントを行う。

スマートアイデアが約3500万円の追加調達、AGキャピタルグループ会社ライフカードに開発支援サービス提供

家計簿アプリ「2秒家計簿おカネレコ」を運営するスマートアイデアが約3500万円の追加調達

家計簿アプリ「2秒家計簿おカネレコ」(Android版iOS版)を中心にPFM(個人財務管理)事業を展開するスマートアイデアは2月4日、第三者割当増資による約3500万円の追加資金調達を実施したと発表した。引受先はAGキャピタル。

今後、AGキャピタルのグループ会社ライフカードが、スマートアイデアの開発支援サービス「サブスク開発」を採用。ライフカードがシステム開発・アプリ開発の支援を行う。

スマートアイデアは、ある一定期間開発チームの時間を確保し、プロジェクトを担当する開発サービス「サブスク開発」を展開。確保した時間を上限とし、システム開発・アプリ開発を進行させるものという。継続してプロダクト運営ができるよう、開発後のアフターサポートを行うメンテナンスプランも用意している。

同サービスでは、プロダクトマネージャーおよびITディレクター・開発ディレクター・デザイナー・エンジニアのチーム体制で、毎月上限時間までプロダクト開発をトータルサポート。日本国内での企画と、ベトナムのエンジニアによる開発により、「高品質」「低価格」なプロダクト開発を実現できるとしている。

また、プロフェッショナル人材によるPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)業務を行い、部署間コミュニケーションの最適化やマルチベンダーマネージメント、プロジェクトコストの最適化などを実施する。PMOでは、企業におけるプロジェクト支援について、部署の枠を超えて、開発ベンダーとの調整なども含めてマネージメントを行う。

小さなスタートアップMayhtは新コンセプトの小型スピーカーで業界の巨人たちに挑む

スタートアップを立ち上げる方法はいろいろあるが、少数の既存企業が深く根を下ろし市場を独占している業界に挑戦するには、ひときわ勇敢な創業者チームが必要だ。例えば、トップ企業の名前が文字通り「インターネットで検索する」という動詞になっているようなネット検索市場には、余程の勇気がなければ挑戦しようとは思わないだろう。スピーカーの世界も似たようなもので、過去100年の間、テクノロジーはほとんど進歩しておらず、Shania Twain(シャナイア・トゥエイン)の甘く心地良い歌声を気中に放つスピーカーのコンポーネントは、ほとんどすべてひと握りのメーカーが作っている。

この世界に風穴を開けようと考えるスタートアップは多く、毎年、さまざまな方法で「スピーカーをより良くする」と謳う企業のプレゼンを何度も目にするが、いつもそれは不発に終わっている。確かにイノベーションは起きているが、スピーカーのコアテクノロジーでは、真に革新的といえるような動きがほとんどない。しかし、2022年のCESでは、その例外ともいえるMayht(メイト)のチームと話をすることができた。

同社は、お互いに反対方向を向いたスピーカーを作り、モーターでスピーカーの振動板を同時に動かすことで、手を叩くのと同じような動きを実現した。つまり、2つのスピーカーは完全に同調するということだ。同社によると、この小型化されたスピーカーは使用時のエネルギー効率を高め、出荷や保管の際のサイズも小さくでき、業界に与えるインパクトはこれまでの投資に見合うものだとしている。スピーカーの技術も興味深いが、筆者が興味をそそられたのは、オランダの小さな寄せ集めのイノベーター集団が、どのようにしてこの業界の状況を変えようとしているのかということだ。

Mayhtはテクノロジー企業だ。同社は開発の早い段階で、スピーカー技術の世界においては、巨大企業と真っ向勝負してもあまり意味がないことに気づいた。そのため、いくつかの特許とクールなリファレンススピーカー(パートナー候補にデモをするプロトタイプ)を武器に、同社は実質的に外部から委託を受ける研究開発部門を構築したいと考えている。つまり、新しくて興味を引くテクノロジーを生み出し、それを有名なスピーカーブランドにライセンス供与するスカンクワークス(極秘開発チーム)だ。筆者は、このオランダの小さなスタートアップに注目し、コンシューマーエレクトロニクスの中でも最も強固な守りを敷く業界にどのように挑んでいるのか詳しく見てみることにした。

このインタビューでは、Mayhtチームとその投資家らに話を聞き、ゴリアテの世界の中で好戦的なダビデになるための秘訣は何かを考えてみた。

「当社は、2016年からこのスピーカー技術に取り組んできた。最初の2、3年はプロトタイプを作っていたが、今では量産に近いもの、あるいは量産中のものが数多くある。当社はスピーカーユニットのメーカーではなく、その技術を守り、それをライセンスしているだけだ」と、MayhtのCEOであるMattias Scheek(マティアス・シーク)氏は説明する。そして「サウンドバーから小型サブウーファー、小型音声アシスタントスピーカーまで、さまざまな用途で当社の技術をようやく紹介できるようになった。特に小型音声アシスタントスピーカーは、市場に旋風を巻き起こすと確信している。例えば、Echo Dot(エコードット)がSonos One(ソノス・ワン)やサウンドバーと同じ音を出せるようになるということだ。また、サブウーファーのないスピーカーでも、サブウーファーのあるものと同じ音が出せるようになれば、市場は大きく変わる。当社はようやくそれらを公開することができた」と同氏は述べる。

同社は、新世代のスピーカーユニットを発明したという。一般的なスピーカーユニットは振動板を備えているが、駆動機構全体が振動板の後ろにあるため、限られた動きしかできない。Mayhtのイノベーションは、駆動機構を振動板の横に配置することだ。これにより、振動板はより大きく動くことが可能となる。自動車のエンジンでも似たようなことがある。エンジンのパワーを大きくするには、2つの方法がある。1つはシリンダーを大きくして、より多くのガスと空気の混合物を爆発させてパワーを生み出す方法、もう1つは、ストローク長を大きくする方法だ。Mayhtは、この考え方をスピーカーにも応用している。Google Mini(グーグルミニ)やAlexa(アレクサ)のスピーカーのようなスマートスピーカーだけでなく、スペースが限られている車載用など、さまざまな用途でスピーカーの小型化が求められていると同社は考えている。また、同社のスピーカー技術は、ビリつきを抑えることもできるという。

Mayhtのスピーカー技術では、駆動機構を振動板の横に配置している。これにより、2つのスピーカーを同調させ、従来のデザインによる同等サイズのスピーカーに比べて、より多くの空気を動かすことができるという理論だ(画像クレジット:Mayht)

同社は、現世代のスマートスピーカーに対してあまり高い評価はしていない。音声コントロール機能、メッシュWi-Fi、優れたデザイン、電源管理、優れたユーザーエクスペリエンスなど、いずれも意味のあるイノベーションだったが、スピーカーの技術自体は代わり映えしないものだ。

「Bang&Olufsen(バング&オルフセン)、Bose(ボーズ)、Sony(ソニー)など、どのメーカーも似たようなものだ。どのメーカーも同じ技術を使い、同じスピーカーユニットを使っている。同じ工場で作られたユニットなのだから仕方がない。主要メーカーは3~4社で、さまざまなスピーカーブランドはそれらのメーカーからスピーカーユニットを調達しているのだ。この分野でイノベーションが起こらないのは不思議なことではない」とシーク氏は嘆く。「メーカー自身がスピーカーユニットを開発しているわけではないので、より高品質なテクノロジーを追求しようとは思わないのだ。1~2%程度の改善はあっても、スピーカーユニットの全体的なアーキテクチャを変えることはない。そのようなことをすれば、メーカー全体の製造体制を変えることになり、メーカーにとっては大きなリスクとなる」と同氏は続ける。

Sonos Oneを分解してみると、凝ったテクノロジーの下には平凡なスピーカーユニットがあることがわかる(画像クレジット:Haje Kamps for a Bolt teardown

「スピーカーメーカーは、真のイノベーションを達成するのに見合う報酬が得られない。というのも、最低レベルのコストで最高の品質を実現する必要があるため、既存のテクノロジーにとらわれず、本当に新しくて革新的なものを生み出すインセンティブがスピーカーメーカーには与えられないからだ」と、MayhtのチーフコマーシャルオフィサーであるMax van den Berg(マックス・ファン・デン・バーグ)氏は説明する。そして「そういったことを踏まえて、当社は創業以来、世界中の45社ほどのスピーカーメーカーと話をしてきた。その中で、このような製品を見たことがある会社はなかった。これはまさに破壊的なイノベーションだ」と同氏は語る。

Mayhtは、今回のラウンドで、オランダのベンチャーキャピタルForward One(フォワード・ワン)を中心に総額400万ユーロ(約5億2000万円)を調達した。筆者は、この投資を先導した同VCのパートナーにインタビューを行い、はたから見ると困難な戦いに挑もうとしているように見える会社に、なぜ自信を持って資金を投入できたのかを探った。

「私は、このチームがMayhtを特別なものにしていると思う。創業者の兄弟2人は、7歳の頃からスピーカーに携わっており、とても感銘を受けた」とハードウェアのスタートアップに投資をしているフォワード・ワンのパートナー、Frederik Gerner(フレデリック・ゲルナー)氏は述べる。「両氏がスピーカー業界の枠組みを破壊しようとしていることは、非常に有意義なことだ。同じテクノロジーで何十年も成り立っていた巨大かつ成長中の市場は、今まさに革命の時を迎えている。ハードウェアは、多くの業界を一歩前進させる真の手段であり、当社はこのハイテクハードウェアのイノベーションの必要性を、これまで以上に達成可能で重要なものと考えている」と同氏は続ける。

既存のスピーカーユニットメーカーを蹴落とすために工場を建設するのは無駄なことだ。代わりに賢明な同社は、ライセンス方式を採用し、非常にスリムでエンジニアリングに特化したチームを構築し、比較的少額の資金を調達することを進めている。現在、Mayhtの従業員は20名で、そのうちの70%ほどがエンジニアリング部門の担当者だ。また、戦略的に非常に強い影響力を持つ人材を顧問として迎え入れたのも賢い選択だ。このことは、今後この種の企業を構築する上での鍵となるかもしれない。

「顧問には、非常に経験豊富なメンバーがいて、チームで活躍している。Philips(フィリップス)のライセンス部門で働いていたメンバーが2人いるが、そのうちの1人は、実際にライセンス部門を率い、フィリップスにおいてライセンシングを巨大なビジネスにした。彼は、ライセンシングの仕組みだけでなく[特許]訴訟の処理についても大いに助けてくれているし、非常に優れた交渉役でもある」とシーク氏は説明する。

Mayhtのスピーカーのプロトタイプと、Sonosの(より大きな)スピーカー。Mayhtによると、この2つのスピーカーの音量や音質は同じだという。画像クレジット:Mayht

Mayhtでは、起業する場合、自分たちによく合うタイプの会社を作ることを重視している。例えば、同社は、Sonosでマネージングディレクター兼グローバルオペレーション担当副社長を5年間務めたPiet Coelewij(ピート・コエレウィジ)氏も顧問として招き入れている。また、同社のチーフコマーシャルオフィサーであるマックス・ファン・デン・バーグ氏も注目の人物だ。同氏は、1990年代半ばにソニーのパーソナルオーディオ部門のマーケティングマネージャーを務め、その後も長年にわたってソニーの上級幹部として活躍してきた。「適切な人材が部屋にいることで、ドアを開けて進むことができる」と、シーク氏は控えめな表現ながらも両氏の功績に言及する。

同社はブランドを築き上げ、それを他社との共同ブランドとして活用したいと考えている。これはブランディング上の大きな問題を解決する賢明な方法だ。ほとんどの人は、自分が持っているスピーカーの内部で使われているスピーカーユニットのメーカーは知らないし、知る必要もないだろう。しかし、他の業界では前例がある。余程のマニアでもない限り、ほとんどの人は自分のパソコンのプロセッサーが誰によって作られているかなどは気にしていない。少なくとも、AMD(エイ・エム・ディー)がIntel(インテル)のしっぽを捉えた時、IntelがAMDに対抗して「Intel inside(インテル入ってる)」キャンペーンを展開するまでは、そうだったはずだ。Mayhtはそのシナリオを参考にして、Heartmotion(ハートモーション)ブランドを商標登録した。そして、同社のスピーカーをライセンシーと共同ブランド化することの合意を取りたいと考えている。例えば「Sonos powered by Heartmotion(Heartmotion搭載Sonos)」といったようなものだ。

「『Heartmotion』というのは、当社がライセンス供与するテクノロジーブランドだ。スピーカーの動きが心臓の動きに似ていることから、そう呼んでいる。目標は、すべてのスピーカーが当社の技術を搭載し、当社の技術を使用するパートナーが製品の箱にマーケティングの一環としてHeartmotionのロゴを使用することだ」とシーク氏はいう。

スピーカーのサイズと重量を最小限に抑える技術を基に、同社はいくつかの巧妙なセールスポイントを用意している。自動車やRVのメーカーにとっては、ドアパネルやダッシュボードなどの小さなスペースに、音の出力を落とすことなく、より多くのスピーカーを配置できるということだ。これは当然のことなのだが、筆者が特に感心したのは、より環境に配慮した技術に人々が(ようやく!)興味を示し始めている現在の状況において、Mayhtがいくつかのマーケティングメッセージを活用していることだ。低消費電力でありながら大きな出力が得られる小型スピーカーをパッケージ化することで、思いがけない効果が生まれることがある。その一例として、同社が試作したスピーカーには、太陽光発電技術の「Powerfoyle(パワーフォイル)」で覆われたものがある。これは、鳴り続けるBluetoothスピーカーを作ることが可能ということだ。エネルギー消費量に加え、フォームファクターが小さくなれば、重量や輸送量が削減され、結果的に環境面でも大きなメリットがある。

関連記事:太陽電池を搭載し自ら電力を供給し続けるMayhtの小型高音質スピーカー

Mayhtの「Heartmotion」スピーカーのプロトタイプ(画像クレジット:Mayht)

Mayhtは、特許ポートフォリオ戦略に裏打ちされたライセンシングファーストのビジネスモデル、優れた創業者のストーリー、ライセンシングやオーディオの専門家が名を連ねる顧問チーム、そして初めから適切にものごとに対処するために落ち着いて行動しようとする姿勢によって、注目の2022年に向けて着実に体制を整えている。そして、チームは、長年の研究と土台作りを経て、実行の年に向けたシフトアップを狙っているため、十分なリソースを確保したいと考えている。

「2022年は、当社の製品が消費者の手に渡る年だ。その瞬間を目にすることをとても楽しみにしている。当社は、かなり長い間、目立たないように製品作りに取り組んできた。これは本当に奇妙なことだが、業界ではそのすばらしさが知られていても、消費者はまだそれを体験していないのだ。当社にとって、2022年は大々的に公開する年になる。パートナーと協力してこの製品を消費者に届けるだけでなく、当社自身もやることを考えている……」といいながら、シーク氏は途中から声をひそめた。詳細を話しかけていたのだが、録音されていることを思い出したのだ。しかし「もうすぐ、2022年の第2四半期には発表できるだろう。まだ詳しいことはいえないが、現在、消費者が当社から直接購入できるリファレンス製品を開発中だ。消費者にも体験してもらいたいので、試用のために限定版のスピーカーを作っている」と話してくれた。

同社によると、自社製品での収益はあまり考えておらず、これはブランドの認知度を高めるために、大量に生産するサンプルだという。

「自分たちで(3インチ[7.62cm]の)T3スピーカーユニットを搭載した製品を作っているのは、実績を上げれば業界全体が動き出すからだ。この数年間でたくさんのプロトタイプを作った」とファン・デン・バーグ氏は説明する。問題は、新製品の設計には時間がかかり、大手スピーカーブランドにもその時間が必要だということだ。そのため同社は、ペースを上げるべく、リスクを冒して自分たちの手で問題を解決しようとしている。「当社は(サードパーティがデザインしたスピーカーは)少し長いプロセスを必要とすると感じている、サードパーティには決定する時間が必要なのだ。おそらく、彼らの製品が市場に出回るのは、2022年末から2023年初頭になるだろう。それまでの間、当社がこのテクノロジーを消費者に発表することが非常に重要だと考えている。当社は誰かと競争をしたいわけではないが、当社がてがけていることはクールだと思うし、Heartmotionを搭載したすばらしいBluetoothスピーカーの限定サンプルを提供できることをとても楽しみにしている」とファン・デン・バーグ氏は語った。

画像クレジット:Mayht

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

オランダのEdTechのStudytubeがトレーニングマーケットプレイスSpringestを買収、シリーズBで約34.5億円調達

オランダのオンライン学習プラットフォームStudytube(スタディチューブ)は、ヨーロッパの研修予約マーケットプレイスSpringest(スプリングエスト)を買収した。同時に、Energy Impact Partners(エナジー・インパクト・パートナーズ、EIP)と既存投資家のVerdane Capital(バーデン・キャピタル)が主導する3000万ドル(約34億4900万円)のシリーズB投資ラウンドを終了した。買収の条件は明らかにされていない。

Studytubeは、SaaS型マーケットプレイスを通じて、中堅・大企業にオンライン学習・開発プラットフォームを提供し、サードパーティプロバイダーからコースを提供している。

Springestを加えることで、StudytubeはT-Mobile(Tモバイル)、Vattenfall(バッテンフォール)、Aegon(エイゴン)、NS、Eneco(エネコ)、STORK(ストーク)など30以上の顧客を獲得し、さまざまな業界の300以上の中堅・大企業を抱えることになるという。また、ドイツ、ベルギー、北欧、英国にも進出する。Studytubeは現在アムステルダム、ベルリン、ハリコフの各オフィスで働いている180人以上の従業員を抱えており、まもなく北欧にオフィスを開設する予定だ。

今回の投資ラウンドは、欧州での人員増強とさらなる戦略的買収のために実施される予定だ。

StudytubeのCEOであるHomam Karimi(ホーマン・カリミ)氏は「Springestの買収により、当社のポートフォリオは瞬く間に8000以上の学習プロバイダーに拡大し、25万以上のオンラインおよびオフラインの学習製品を提供するようになりました。2021年には、合計5000万ユーロ(約65億8600万円)相当の学習製品が、当社のマーケットプレイスを通じて調達されました」。と述べている

SpringestのCEOであるRuben Timmermans(ルーベン・ティマーマンス)氏は「Springestは、企業とその従業員に、最も包括的なヨーロッパのトレーニングデータベースを提供します。我々のデータベースとStudytubeのオンライン学習・開発プラットフォームを組み合わせることで、Springestを利用する組織は、コースの検索、予約だけでなく、組織の学習・開発を1カ所で簡単に整理、管理、提供することができます」。と語る。

EIPのヨーロッパマネージングパートナーであるNazo Moosa(ナゾ・ムーサ)氏は「ヨーロッパのEdtech市場は、シングルポイントソフトウェアソリューションで混雑しています。Studytubeは、学習管理システム、学習体験プラットフォーム、統合オーサリングツール、学習マーケットプレイスからなる、完全に統合された学習プラットフォームを提供した初めての企業です。このため、Studytubeは他の成功したシングルポイントソフトウェアソリューションを統合するのには最適な企業となっています。優れた製品への絶え間ない注力とともに、StudytubeはヨーロッパのEdtech分野における勝者の1人になると信じています」。と語っている。

Studytubeは、Docebo(ドシーボ)、LearnUpon(ラーンアップオン)、Cornerstone(コーナーストーン)、Go1(ゴーワン)と競合している。

カリミ氏は「Studytubeの学習管理システムは、詳細なレポート、資格管理、複雑なビジネスプロセスの簡単な自動化など、完全に包括的であるため、競争力があるのです。このため、ヘルスケアのようなコンプライアンス重視の分野にも対応できます」と私に教えてくれた。

「直感的な学習体験と同時に、スマートレコメンデーションとソーシャルラーニングを活用しています。他の多くのLMS(学習管理システム)は、ユーザーエクスペリエンスのこの側面を忘れていることが多く、彼らはインスピレーションを与えるためではなく、学習を管理するためだけに作られています」と述べている。

画像クレジット:Studytube team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

セキュリティテスト自動化SaaSのAeyeScanを提供するエーアイセキュリティラボが3億円調達、開発体制拡大・営業体制を強化

セキュリティテスト自動化SaaSのAeyeScanを提供するエーアイセキュリティラボが3億円調達、開発体制拡大・営業体制を強化

セキュリティテスト自動化SaaS「AeyeScan」を提供するエーアイセキュリティラボは2月3日、第三者割当増資による3億円の調達を完了したと発表した。引受先は、リード投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)、またSalesforce Ventures(米国セールスフォース・ドットコムCVC)、G-STARTUPファンド(グロービス)、既存投資家のANRI。

調達した資金により、開発体制拡大に向けた採用を強化し、プロダクトの継続的な機能追加と改善を推進する。また、既存顧客、パートナーとの連携強化・深耕を図るべく営業体制を強化する。さらに、新たなセキュリティモデルを模索するSaaS企業や、自社開発プロダクトを有する企業へのマーケティング活用・営業を展開し、開発・運用とセキュリティがシームレスに連携するDevSecOps実現に向けた取り組みを開始する。

AeyeScanは、いつでも誰でも高品質な脆弱性診断を可能にするSaaS型Webアプリ診断ツール。これまで専門家に依頼していたウェブサイト・ウェブサービスの安全性を確認する脆弱性診断を自社で実施する「診断の内製化」や、アプリケーション開発時における「セキュリティテストの自動化」「DevSecOpsの実現」をサポートするものという。

ウェブサイトやSaaSへの脆弱性診断の実施は、運用負荷・コストなど課題が山積しており、昨今話題となっているLog4jの脆弱性は、脆弱性対応への課題を改めて浮き彫りした。AeyeScanでは、最新の自動化技術を駆使し、人手に依存せず高度な脆弱性診断を実現し、これら課題の解決を支援する。セキュリティテスト自動化SaaSのAeyeScanを提供するエーアイセキュリティラボが3億円調達、開発体制拡大・営業体制を強化

エーアイセキュリティラボは、「セキュリティエンジニア不足を我々の有する技術力で解決する」を理念に2019年4月に創業したスタートアップ。サイバーセキュリティ技術のプロフェッショナル集団、特にウェブアプリケーションセキュリティに深い知識と経験を有するメンバーが在籍しており、クラウドを活用したセキュリティサービスの開発提供および各種コンサルティングを提供している。

竹製トイレットペーパーとセレブ出資者で知られるCloud Paperが約5.8億円を追加調達

商品一覧にトイレットペーパーとキッチンペーパーをに揃え、さらに品揃えを増やそうとしているCloud Paper(クラウド・ペーパー)は、従来の原料に代えて竹から作った持続可能なトイレットペーパーを作っている。同社は500万ドル(約5億7500万円)の資金調達ラウンドを、そうそうたる投資家を迎えて完了した。同社はこの資金を使って製品ラインを拡充し、業務用トイレットペーパー、タッチレス・ディスペンサー用ペーパーなどの業務用製品の提供を開始する。この会社はセレブリティ・ビンゴをプレイするかのように、スター満載の出資者リストを作っている。

「Cloud Paperは、紙製品業界に樹木フリー製品への切り替えを促すミッションを背負っています」とSoundwaves(サウンドウェーブズ)のAshton Kutcher(アシュトン・カッチャー)氏はいう。「私たちはこのミッションに加わり、この分野での立場をいっそう強固にするとともに、Cloud Paperには小売業へと拡大し、積極的なB2B戦略を追求し、DTC(消費者直販)を成長させていくことを期待しています」。

今回の500万ドルのラウンドには、Bezos Expeditions(Jeff Bezos[ジェフ・ベゾス]氏個人の投資会社)、Mark Benioff(マーク・ベニオフ)氏のTIME Ventures(タイム・ベンチャーズ)、Presight Capital(プリサイト・キャピタル)、Soundwaves、およびAmazonの幹部、Jeff Wilke(ジェフ・ウィルキー)氏が参加した。

2人のファウンダーは、最初にUber(ウーバー)、次にConvoy(コンボイ)と会社から会社へと互いに追いかけ合い、ついには過去(と我々の下部を)を水に流すクリーン・テック会社を作った。

「共同ファウンダーと私は、Uberで会社がUber Xと全世界へのライドシェアリングを展開し始めた頃に出会いました。私たちはそこで驚くほどユニークな時間を経験し、超成長が起きるところを目の当たりにしました。そして次はConvoyで一緒に働きました。そこはトラック運送とサプライチェーンのUberのような会社で、2人はこうした非常に成長の早いスタートアップで6~7年を過ごしました」とCloud Paperの共同ファウンダー、Ryan Fritsch(ライアン・フリッツ)氏は説明した。「あるとき2人で話し合いました。『今こそ築き上げた経験を活かすときだと思う。何をしようか?2人ともサステナビリティの分野に大々的に参入したいことはわかっていました。調査結果は、私たちを紙・パルプ産業の与えている影響へと導きました。早送りして2019年の春、会社を立ち上げ、300万ドル(約3億4000万円)のシードラウンドをGreycroft(グレイクロフト)のリードで行いました」。

画像クレジット:Cloud Paper

それ以来、会社はさらに高い目標を設定し、これまでに300万ロール以上のトイレットペーパーを販売した。現在スタッフは8人だけで、もっと大量の水を流すべく体制を整えている。

「2022年はB2Bに大きく力を入れます。それが私たちの始まりでしたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の間は消費者直販にシフトしていました。一部の産業、特に接客と旅行は活気を取り戻し始めています。これらので施設で求められている業務用製品は、現在当社のウェブサイトにあるものとは大きく異なります」とフリッツ氏はいう。「ペーパータオルとトイレットペーパーにはあらゆる種類のバリエーションがあります。たとえばアリーナは小さな350枚のロールを欲しがりません。欲しいのは3000枚の大容量巨大ロールです。現在商品ラインを拡大しているところです。それが2023年に向けた当社の焦点です」。

数字も意味のある結果を示している。Cloud Paperはシードラウンド当時より930%多くのロールを販売し、消費者直販の顧客ベースは230%増だ。企業顧客は400%増だと同社は報告している。この期間にブランドの売上は800%以上伸びた。

これは大変な数のペーパーロールで、1万本の樹木が救われたと同社は推定している。紙の材料となる竹は中国から仕入れているが、サプライチェーンを元の竹まで追跡することは困難だ。では、Cloud Paperはどうやって、実際に持続可能な方法で栽培された再生可能な竹を使っていることを知っているのだろうか?ファウンダーには明確な答えがある。

「私たちはサプライチェーンの持続可能性を検証できる実績あるサードパーティーを信頼しています。2021年当社は、FSC(森林管理協議会)認証を取得した最初の100%竹ブランドになりました。直接の競合他社を探すと、いつも3つか4つの同じ名前が見つかるでしょう。竹の収穫と栽培の持続可能性に関してFSCのチェックボックスにチェックを入れたのは私たちが最初です。とフリッツ氏は説明した。「Natural Resources Defense Council(NRDC、天然資源保護協議会)が発行している ‘the issue of tissue’(ティッシュの問題)という年次報告書があります。2021年初めて、新しい竹由来ブランドが複数掲載されました。2021年当社は最高評価をもらいました。今後も第三者監視機構の追加を検討するとともに、必要な透明性が維持されていることを確認します。つい最近私たちは、USDA biobased certification(米農務省バイオ素材認定)を受けたところで、他にも目を向けています」。

同社は、彼らの樹木フリー竹製ペーパータオル / トイレットペーパーが2021年だけで1万本以上の樹木を救ったと言っている。今回調達資金によって、Cloud Paperはサプライチェーン、製品開発および雇用への大規模な投資が可能になる。

画像クレジット:Haje Jan Kamps

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nob Takahashi / facebook

不必要なプラスチックを排除したより環境に優しい食料品配送を目指すZero Grocery

Zero Grocery(ゼロ・グロッサリー)は、食料品を2時間以内に、地球を傷つけない方法で届けることを使命としている。

プラスチックを使わない食料品、家庭用品、パーソナルケア用品の配送を行うこのスタートアップ企業は、2年前、廃棄物の削減に焦点を当てたビジネスに対するベンチャーキャピタルの関心について取り上げた企業の1つだ。当時、2019年に起業した創業者兼CEOのZuleyka Strasner(ズレイカ・ストラスナー)氏は、470万ドル(約5億3900万円)の資金を調達したばかりだった。

米国時間2月3日、同社はSway Ventures(スウェイ・ベンチャーズ)が主導する新たなシード資金としてさらに1180万ドル(約13億5500万円)を調達し、Zero Groceryがこれまでに1650万ドル(約18億9400万円)を調達したことを発表した。これは、同社が環境に優しい無料配達を2時間以内に提供する持続可能なオンライン食料品店を立ち上げたことにともなうものだ。

ストラスナー氏はTechCrunchにメールで、前回の資金注入以来、Zero Groceryは「信じられないような旅をしてきました」と、語った。同社はチームの規模を倍増し、ロサンゼルスやベイエリア市場など、サービスを提供する市場の数も倍増させた。

さらに、顧客数も2倍以上に増え、平均注文額と継続率も伸びた。その結果、顧客生涯価値の向上につながり、2021年にはペットボトル3万5000本分、食料品のビニール袋6万枚分が埋立地に捨てられるのを防いだという。

「2022年1月からは、サービスを全面的に刷新し、手数料や会員登録なしで当日2時間以内の配達を実現し、顧客獲得が完全に軌道に乗りました」と、ストラスナー氏は付け加えた。「2022年に成長に投資したドルの回収率は、2021年の平均の3倍になっています」。

画像クレジット:Zero Grocery

資金調達の面ではすばやい成功を収めたが、同社の焦点はより全体的で持続可能なモデルであるとストラスナー氏はいう。これは、コンセプトをすばやく実証し、その後、規模を拡大することで、より少ない労力でより多くのことを可能にするというアプローチによるものだ。

新資本は、Zero Groceryがより多くの地域でサービスを提供するために、新しいハブを開設できるよう、地理的拡大に充てられる予定だ。さらに、規模を拡大するために、新規顧客の獲得にも投資する。会社が大きくなればなるほど、運営上の効率は上がり、ベンダーとの関係も強化され、持続可能な社会の実現に貢献できるとストラスナー氏は言った。

ストラスナー氏は、同社の成功の多くは、市場機会に起因すると考えている。2020年、2021年は、デリバリーサービスが大きく伸びた。実際、それ以前は、米国の食料品販売に占めるデリバリーの割合は10%弱だった。その時、世界的なパンデミックによってニーズが急増したが、その多くは満たされていなかったとストラスナーはいう。

「速く、便利で、手頃な価格で、高品質で、持続可能な、ゲームチェンジャー的なサービスは、より多くの次元でお客様に価値を提供し、同時に複数のニーズを満たします」と、彼女は付け加えた。「このことは、競合他社から多くの顧客を獲得することに容易につながりました」。

オンライン食料品専門店Mercatus(メルカタス)によると、需要により、2022年の食料品売上高1兆1240億ドル(約129兆円840億円)のうちオンライン比率は11.1%に成長し、2026年には1兆2500億ドル(約143兆円5887億円)の20.5%となる見込みと予測されている。

現在、プラスチックはわずか9%しかリサイクルされておらず、その多くが埋め立て地や海へと流れている。つまり、プラスチックのゴミを減らすために個人が行う小さな変化でも、積み重なれば環境に大きなプラスの影響を与えることができる、とストラスナー氏はいう。

「このパンデミックを通して、人々がどのような生活を送りたいか、そして今日の決断が明日にどのように影響するかをより意識するようになったことが大きな特徴です」と彼女は付け加えた。「つまり、オーガニックで、クリーンで、環境にやさしい製品を求めているということであり、Zero Groceryはそれを提供することができるのです」。

画像クレジット:Zero Grocery / Zuleyka Strasner, Zero Grocery founder and CEO

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(文:Christine Hall、翻訳:Yuta Kaminishi)

GM Venturesが急速充電対応バッテリー技術のスタートアップSoelectに投資

ノースカロライナ州に本社を置くバッテリー技術のスタートアップSoelect(ソエレクト)は、1100万ドル(約12億円)のシリーズAラウンドをクローズした。同社は、新たに調達した資金を、電気自動車の次世代バッテリーを可能にするかもしれない、急速充電が可能な電極技術の拡張に使う予定だ。

リードインベスターのLotte Chemicalと投資会社KTB Networkに加え、General Motorsのコーポレートベンチャーキャピタル部門であるGM Venturesも戦略的投資家として参加した。GM Venturesは、輸送の安全性や持続可能性に関するソリューションを提供する企業に投資する傾向があり、そうしたソリューションは将来のGM車や製造施設、事業運営に導入することができる、とGMの広報担当Mark Lubin(マーク・ルービン)氏は述べている。

「SoelectをGM Venturesのポートフォリオに加えることの競争上の優位性の1つは、急速充電が可能な電極技術であり、これは将来のリチウム金属電池と固体EVバッテリーの電極設計の両方を可能にするものです」と、ルービン氏はTechCrunchに語った。「今回の投資、そしてこの分野における他の投資は、将来のGM製品の航続距離の増加、効率向上、コスト削減を可能にするバッテリー技術の進歩を加速させるGM Venturesの取り組みをさらに拡大します」。

VCが最近投資したバッテリー会社はSoelectだけではない。バッテリー寿命を向上させ、バッテリーを2倍のエネルギー密度にする「電極なし」のリチウム金属電池を持つ、MITのスピンアウトスタートアップSolidEnergy Systems(SES)にも投資し、提携した。SESとGMは、マサチューセッツ州にプロトタイプ製造施設を建設し、2023年までに大容量の量産前バッテリーを作ることを目指している。

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GMは、パートナーのLG ChemとUltiumバッテリーのための2つのバッテリー製造施設を建設中だが、GMは他の実りあるバッテリー提携の可能性にもオープンだ。同社は2021年10月、長寿命で急速充電でき、そして持続可能なバッテリーを実現するためのバッテリー技術を開発する新しいバッテリー研究施設をミシガン州に建設する計画を発表した。GMは、1リットルあたり最大1200ワット時のエネルギー密度を持つバッテリーを製造し、コストを少なくとも60%削減したいと考えている。

関連記事:GMがより低コストで航続距離の長いEV用バッテリーの開発施設を建設中

画像クレジット:Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

りんご収穫ロボットを復活させるために、Abundantの新オーナーがエクイティクラウドファンディングを計画

2021年夏、ヘイワードに拠点を置くAbundant Robotics(アバンダント・ロボティクス)は、突然閉鎖してしまった。多くのスタートアップ企業が失敗しているが、これは難しいことで知られるロボット工学の世界にも当てはまる現象だ。しかし、新型コロナウイルス感染流行は、この2年間で、特に従業員の補充が難しい農業のような分野を中心に、ロボット関連企業の資金調達に恩恵をもたらした。

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明らかにWavemaker Labs(ウェーブメーカー・ラブズ)は、同社のりんご収穫技術に可能性を見出していた。Miso(ミソ)やFuture Acres(フューチュー・エーカーズ)といったロボット関連のスタートアップに関わったこの投資会社は、2021年10月にAbundantの知的財産を買い取った。TechCrunchでは当時、Future Acresにこの技術が統合される可能性が高いと指摘した。しかし現在、Wavemaker LabsはAbundantブランドを再構築する準備に取りかかっているようだ。

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MisoとWavemakerの両方を設立した(両社のCEOでもある)Buck Jordan(バック・ジョーダン)氏は、新たに復活したAbundanceのCEOを務めることになった。また、Piestro(ピエストロ)の共同創業者であり、MisoおよびWavemakerのCFOであるKevin Morris(ケヴィン・モリス)氏は、新会社でもCFOの役職に就く。2人は「業界のリーダーたちと協力して、残りの経営陣を構築しているところだ」と述べている。

これらの要素がほぼ揃ったところで、次のステップは資金調達、特にエクイティクラウドファンディングとなる。Abundanceは2000万ドル(約23億円)のシードキャンペーンを実施するために、WAXと話し合っている。2022年の10月まで行われるこのキャンペーンから得た資金は、Abundantの既存の知的財産を利用した新しいりんご収穫ロボットの開発に使用されるという。

画像クレジット:Abundant Robotics

「私たちが『資金使途』に記載されている上限額を調達できた場合、買収した広範な製品開発の取り組みを用いて、ロボット工学者とエンジニアリングの専門家で構成される当社のチームが、まずはデモやパイロット用の完全に機能するプロトタイプを構築します。その後は商業的な予約注文を受けて、最小単位の製品の生産を開始します」と、ジョーダン氏はTechCrunchに語った。「今回の資金調達で、私たちは製品計画の実行にともない、市場の牽引力や企業とのパートナーシップを生かすことができるため、この事業のためにさらなる追加資金を調達する必要はないと考えています」。

Wavemakerは、明らかにAbundantのブランドにも価値を見出している。6年前に設立されたこの会社は、最終的に市場に適合するものを見つけることはできなかったものの、約1200万ドル(約14億円)の資金を調達し、急成長中の農業ロボット分野でそれなりに高い知名度を獲得した。今回の新たに復活した体制では、以前のシリーズAで調達した金額の2倍に近いシードラウンドを実施して、事業を始めようとしている。計画通りに進めば、Wavemakerが2021年買い取った知的財産の現金と合わせて、かなりのランウェイを確保することになる。

「私たちは、Abundant Roboticsがこれまでに開発してきたコンピュータビジョンや機械学習などの画期的な技術に大きな価値を見出しましたが、そのプロトタイプは過剰に設計されており、製造コストも高かった」と、ジョーダン氏は語る。「買収した知的財産、ソフトウェア製品、そして製品を納得のいくコストで市場に投入する方法を知っている実績あるチームを活用して、私たちは現在の製造コストの数分の一で完全に機能するプロトタイプを再設計し、事業開発と財源確保を行うために、今回調達する資金を使用する予定です」。

画像クレジット:Abundant Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

顧客データパイプラインを企業戦略向けに拡大するRudderStackが約64.4億円調達

企業が経営分析やマーケティングを改善するための独自データプラットフォームの開発を支援するRudderStackが米国時間2月2日、Insight PartnersがリードするシリーズBのラウンドで5600万ドル(約64億4000万円)調達したことを発表した。これまでの投資家であるKleiner PerkinsやS28 Capitalも、このラウンドに参加し、2019年に創業した同社の総調達額は8200万ドル(約94億3000万円)になった。

データウェアハウスの急激な増大と機械学習の進歩により、企業はデータを有効活用するますます複雑なアプリケーションを作ろうとしている。しかしRudderStackのCEO、Soumyadeb Mitra(スーマイヤデブ・ミトラ)氏から以前聞いた主張によると、顧客データパイプラインの既存のソリューションの多くがマーケティングのチームに売り込むために作られており、企業が今求めている先進的なアプリケーションを作るのが困難なアーキテクチャを使用している。それに対してRudderStackのアーキテクチャは最新のデータスタックの上に置かれ、データウェアハウスをアーキテクチャの核にしている。

画像クレジット:RudderStack

また同社は、市場に別の角度からアプローチしている。ミトラ氏によると「従来的な顧客データプラットフォームはマーケティングの費目になるので、マーケティングに合った形をしている。しかしAmazonのような最先端の企業を見ると、顧客データのインフラストラクチャを作っているのはマーケティングチームではなくて、ほとんどエンジニアリングのチームと、データのチーム、ときにはグロウスのチーです。グロウスチームの中にもデータチームがいて、彼らがインフラストラクチャを作っている場合もある。私たちは、そのやり方を採用しています」という。

過去数年間でRudderStackは、Mitraが「配管工事層」と呼ぶものを整備した。すなわちすべての要素および統合がデータをデータウェアハウスから出し入れする。さらに今後については、チームは今、データのトランスフォーメーションや、ユーザーデータをセグメントに分けてオーディエンスを作るなど、その上に来る機能の構築に専念している。

多くの点でそれはまた、今ではTwilio傘下であるSegmentの最初のビジョンだが、しかしMitraの主張では、彼らのフォーカスは今ではもっぱらマーケティングにある。「私たちでもセグメント化は競合で優位に立つための機能だが、しかしバイヤーがマーケターではなくデベロッパーの場合は、他社との競合でつねに高い勝率を得ている」とミトラ氏はいう。

画像クレジット:RudderStack

ミトラ氏によると、2020年から2021年にかけては、同社の売り上げがおよそ4倍半に伸び、顧客ベースは3倍増した。今の顧客の中には、AllbirdsやWealthfront、Crate & Barrelなどがいる。チームの人員は3倍増して115名になったが、2022年はさらに増やすつもりだ。

新たに得た資金は主に、プロダクトの機能の増強と、市場開拓努力に投じられる。

Insight PartnersのマネージングディレクターPraveen Akkiraju(プラビーン・アキラジュ)氏は、これから彼が取締役会に加わるRudderStackについて次のように述べている。「RudderStackがユニークなのは、顧客データのエンド・ツー・エンドのデータパイプラインが、データウェアハウス向けに最適化されていることです。クラスで最良のアーキテクチャにより、データエンジニアは、複数のチームによるデータサイロの形成を防ぎ、データパイプラインを構築する能力を加速して先進的なアナリティクスと機械学習のユースケースを開拓できます。そのためのラウンドをリードして、Souymadeb(ソウイマデブ)氏と彼のチームがすばらしい顧客データプラットフォームと企業を構築していく仕事に参加できることは、ゾクゾクするような体験です」。

画像クレジット:Mint Images/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

自律走行車の知覚能力アップのためのソフトウェアを開発するAnnotellが約27億円調達

自動車業界が自動運転車への道をゆっくりと歩む中、現在の自律走行システムの技術的ギャップを埋めようとするスタートアップが出現している。最新の動きとしては、自律走行システムの知覚能力の性能とその改善方法を評価するソフトウェアを手がけるスウェーデンのスタートアップ、Annotell(アノテル)が現地時間2月3日、事業拡大のために2400万ドル(約27億円)を調達したと発表した。

Annotellの共同創業者でCEOのDaniel Langkilde(ダニエル・ランキルド)氏はインタビューで、同社が行っていることを「自動車が運転免許を取得するための視力検査、あなたが運転に適しているかどうかを判断するために試験を受けるようなもの」と例えた。「Annotellのプラットフォームは、システムの性能を理解し、それを上げることを支援します。どうすれば改善できるかを顧客に指導しています」。つまり、Annotellの製品は、企業のデータの品質をテストし、測定する分析、およびそれらのデータセットを改善するための「正解データ」の生産を含んでいる。

その目的は完璧さではなく、予測可能性であり、現在すでに存在する半自律プラットフォーム(先進運転支援システムなど)にとっても、多くの企業が将来の構築を目指している完全自律型自動車にとっても同様に重要だと、ランキルド氏は付け加えた。「システムが常に正しいとは限りませんが、システムを安全に使用するためには、何ができて、何ができないかを知る必要があります」。

シリーズAラウンドは、Skypeの共同創業者Jaan Tallinn(ジャン・タリン)氏が率いるエストニアのVC、Metaplanetと、日本企業などが出資しているディープテック投資家のNordicNinjaが共同でリードしている。Metaplanetは直近ではStarship Technologiesに投資し、 Googleが買収したDeepMindの初期投資家でもある。AnnotellのシリーズAラウンドには、以前の出資者であるErnström & CoとSessan ABも参加した。ヨーテボリを拠点とするAnnotellの累計調達額は3100万ドル(約35億円)で、評価額は公表していないが、同社の顧客には世界最大の自動車メーカーとその主要サプライヤー、そして自動運転に特化している大手自動車会社が含まれる。

Annotellが埋めようとしている市場のギャップは、かなり重要なものだ。自律走行システムは、膨大な量の走行データと、その情報を処理してプラットフォームに運転の基本を「教える」のに使われている機械学習で成り立っている。

コンピュータビジョンを使って、これらのシステムは赤信号や停止している車、曲がるべき時などを認識することができる。問題は、これらのシステムの反応が与えられたデータに基づいていることだ。自律走行システムは通常「推論」することができず、自動車が実世界で必然的に遭遇するような未知の変数にどう対応するかを決めることができない。

「機械学習は、稀だが重要なことを処理するのが苦手です」とランキルド氏はいう。

Oscar Petersson(オスカー・ペターソン)氏と共同でAnnotellを設立したランキルド氏は(2人とも深層学習を専門とする物理学者)、以前別の会社(脅威インテリジェンスのスタートアップRecorded Future)で働いたときにこの問題に遭遇したと述べた。Recorded Futureでは、脅威をより識別するためにプラットフォームに与える情報データを収集することを任務としていた。悪意のあるハッカーは、隙間を見つけて脆弱性を作り出すことに注力するため、ランキルド氏のチームが将来の攻撃を軽減するためのパターンを特定するために行っていた作業の多くが、事実上台無しになった。

「ミッションクリティカルな仕事をする上で、ブルートフォース(総当り)方式の機械学習には限界があることが浮き彫りになりました」と述べた。

自律走行システムも同じような問題に直面しているが、正しく動作させることがより重要だ。というのも、何か問題が発生した場合に人命が危険にさらされるからだ。また、正しい動作により、企業が製品を市場に投入し、消費者に信頼してもらい、購入・使用してもらうために通過しなければならない安全性と制御のレベルがより高くなる。

「人々が機械学習やAIを信頼するためには、安全性に非常に真剣に取り組まなければなりません」と同氏は述べた。「映画サービスで間違ったレコメンドをすることと、一時停止の標識を無視したり人にぶつかったりすることは、大きな違いがあります。私たちはそのことも真剣に受け止めています。だからこそ、この問題にフォーカスしたかったのです」。安全規制の強化は、Annotellにとって、特定の使用例や市場機会を示すものでもある。顧客のためにシステムを改善するだけでなく、特定の製品の使用許可を与えるために、機関や規制当局が信頼できるデータ群を作成する。

機械学習がシステムに教えることを補完するAnnotellのアプローチは、今日の自律走行システムと同様に進歩的で、その性質上、完全な自律走行に設計されていないシステム(ドライバーに代わるものではなく、アシストするためのシステム)の限界を試し、形式化するものだ。やがて完全自律走行は、因果推論アルゴリズムの構築に用いられるベイジアンネットワークのような、他の種類のAIアプローチも取り込むかもしれない、とランキルド氏はいう(先週TechCrunchが取り上げた因果AIスタートアップはもっとドラマチックで、因果AIこそが自動運転の実現に向けた唯一の希望であり、それは大きな飛躍ではあるが、実現にはかなりの時間がかかると主張していた)。

しかし、今のところAnnotellは、大きなチャンスである、ある程度の自律性がすでに組み込まれたシステムの安全性に技術を注いでいる。

Metaplanetのジャン・タリン氏は声明で「自律走行車の商業展開においては、安全性の確保が主な制約となりますが、Annotellは短期間で大きな進歩を遂げました。我々はAnnotellのソフトウェアだけでなく、それを構築したチームにも感銘を受けており、彼らとこの旅をともにすることに興奮しています」と述べた。

画像クレジット:Jae Young Ju / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

京都フュージョニアリング、核融合炉技術の構築に向けシリーズBで13.3億円を獲得

より多くのスタートアップが核技術に参入する中、資金調達が活発になるのは驚くことではない。このたび、日本を拠点としながら海外での事業展開を強化している核融合エネルギーのスタートアップ、京都フュージョニアリング(Kyoto Fusioneering、KF)が、最新のラウンドで13億3000万円の資金を調達した。これにより、同社の累計調達額は16億7000万円となった。

2020年に京都フュージョニアリングは、英国政府が後援する核融合実験炉「STEP(Spherical Tokamak for Energy Production)」の開発をサポートする複数の契約を獲得している。同プロジェクトは2040年までの運転開始を目指しており、KFの将来にとって重要な鍵となりそうだ。

今回のシリーズBラウンドは、既存投資家であるCoral Capitalの支援に加え、大和企業投資、DBJキャピタル、ジャフコ グループ、JGC MIRAI Innovation Fund、JICベンチャー・グロース・インベストメンツを新たな引受先としている。

また、KFは京都銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行から総額7億円のデット調達も実施した。

この資金は、研究の加速と事業の拡大、プラズマ加熱(ジャイロトロン)と熱抽出(ブランケット)のための核融合プラントエンジニアリングの技術開発に使用される。これらの技術は、核融合炉プロジェクトの開発に必要なものだ。

現在、世界7極が参加しているグループ(欧州連合、日本、米国、ロシア、韓国、インド、英国、中国)が国際的なITERプロジェクトを支援している。これは2020年代後半までに、核融合実験炉を実現しようとする超大型国際プロジェクトだ。

米国や中国などでは、国内で独自のプログラムを進めている。日本政府もまた、核融合分野でさまざまな取り組みを行っている。

Coral Capitalの創業パートナー兼CEOのJames Riney(ジェームス・ライニー)氏はこう述べている。「気候変動は人類にとって存亡に関わる脅威ですが、核融合エネルギーの未来が実現すれば、文字通り世界を救う銀の弾丸になるかもしれません。多くのスタートアップが『世界を変えたい』と語るものですが、この会社は本当に変えつつあるのです」。

核融合は多くのことを約束してくれるが、今のところ大きな成果は得られていない。しかし、もし誰かがそれを実現できれば、世界のエネルギーと環境問題の多くを解決できる可能性がある。なぜなら、事実上無限の燃料資源を意味しており、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーを得られるからだ。

画像クレジット:Kyoto Fusioneering

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

出張手配・管理の自動化および出張費の最適化SaaS「AI Travel」を提供するAIトラベルが3億円の資金調達

出張手配・管理の自動化および出張費の最適化SaaS「AI Travel」を提供するAIトラベルが3億円の資金調達

出張手配業務の課題を解決する出張手配・管理SaaS「AI Travel」を提供するAIトラベルは2月2日、第三者割当増資、新株予約権付社債の発行および取引銀行からの融資により、合計約3億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、日本ベンチャーキャピタルが運営するファンドを中心とした複数のベンチャーキャピタルなど。

AI Travelは、「出張手配代行」「出張管理システム」「カスタマイズ」という異なる価値をワンストップで提供するというサービス。乗換案内アプリのように出張の要件を入力するだけで、最適なホテル・飛行機・新幹線を最小限の手間で予約できるという。また、総務・経理向けの管理機能ではすべての情報をリアルタイムに一元管理でき、分析および改善施策の立案・実行もサポートする。

調達した資金は、コロナ禍における感染リスクを抑えた出張、電子帳簿保存法の改正を受けたペーパーレス化・業務効率化など、新たな出張業務管理への対応に向け「AI Travel」の機能アップデートを加速させ、その実現と普及のための組織体制強化を図る。

資金調達の目的

  • 出張効率化SaaS「AI Travel」の機能アップデート
  • SDGs・ESG経営の要望に対応する機能アップデート
  • 官民連携やエンタープライズ企業を対象とする業務DXの推進
  • 事業成長を加速させるための開発・営業・アライアンス組織の採用強化

リモートワークを中心とする人材事業を展開するキャスターが13億円のシリーズD調達、既存事業拡大と新規事業領域に進出

オンラインアシスタントサービス「CASTER BIZ」などの人材事業を展開するキャスターは2月2日、シリーズDラウンドとして、第三者割当増資による総額13億円の資金調達の実施を発表した。引受先は、インキュベイトファンド、グリーンコインベストメント投資事業有限責任組合、AXIOM ASIA Private Capital、UNICORN2号ファンド投資事業有限責任組合(山口キャピタル)、第一生命保険。

調達した資金により、広告宣伝・新規事業開発・事業拡大に伴う採用などに注力し、既存事業の拡大と新たな事業領域への進出に取り組む。コロナ禍でリモートワーク化を急速に進めている企業の人材リソースニーズに応えるための資本にあてるという。

2014年9月設立のキャスターは、「リモートワークを当たり前にする」というミッションを掲げ、創業時よりフルリモート経営で組織を運営。誰もがリモートワークという働き方を選べるよう、リモート中心の総合人材サービスを展開している。

CASTER BIZシリーズをはじめ、スタートアップの事業開発・組織開発を支援するコンサルティング事業など、現在10事業を展開している。CASTER BIZは、2021年に取引社数累計2900社(解約したクライアントも含む)を突破、前期の全社売上は過去最高額を記録したという。

モバイルアプリのテストをノーコードで自動化するWaldoが約17.2億円を調達

「ノーコード」でテストを自動化するツールのWaldo(ウォルドー)が1500万ドル(約17億1800万円)を調達した。モバイルアプリの開発チームはWaldoを使ってスクリプトのコードを1行も書くことなくテストをセットアップし、継続的インテグレーション(CI、Continuous Integration)パイプラインにシームレスに統合できる。

このシリーズAラウンドを主導したのはInsight PartnersのJoshua Zelman(ジョシュア・ゼルマン)氏で、Matrix PartnersとFirst Round Capitalも参加した。他にNicolas Dessaigne(ニコラ・デセーニュ)氏、Ben Porterfield(ベン・ポーターフィールド)氏、Tyler Gaffney(タイラー・ギャフニー)氏、Keenan Rice(キーナン・ライス)氏といったビジネスエンジェルも投資した。Waldoは今回得た資金で従業員を増員し、Go-To-Market戦略を固めていく考えだ。

Waldoをよく理解するために、まずはモバイルのテストについて考えてみよう。小規模な開発チームは通常、実際にテストをすることに多くの部分を頼っている。スマートフォンを数モデル所有し、アプリの開発ビルドをそのデバイスで実行する。うまくいかないことがあればバグを見つけて修復する。

アプリやチームが大規模になると、手作業でのテストでは追いつかなくなる。テスト用のスクリプトを書くことはできるが、それは開発の時間がさらにかかる厄介なタスクだ。資金が十分にあってテスト用スクリプトに開発の時間を使うことができるか、時間が経つにつれて開発者がそのスクリプトを放置してしまうかの、どちらかだ。

Waldoは3つ目のやり方があると考えた。この4年間、同社はセットアップもメンテナンスも簡単なテスト用プラットフォームを開発してきた。開発者はWaldoのプロダクトを使い始めるときに、アプリのパッケージ(開発環境で作成した.ipaまたは.apkのファイル)をこのプラットフォームにアップロードする。

するとWaldoはそのアプリをブラウザウインドウで実行する。これはそのアプリのライブバージョンで、開発者はローカルのエミュレータと同様に操作できる。ボタンをタップし、ログイン画面でパスワードを入力し、画面を指でスワイプするような操作だ。

Waldoはテストのステップをすべて記録する。このテストを本番環境で使用すれば、Waldoは同じステップを実行して問題があれば、つまりテストの最後のステップまで到達しなければ、アラートを出す。テストはCIワークフローから直接トリガーされる。つまりGitリポジトリに新しいコードをコミットすれば、アプリは自動でWaldoに送られる。

画像クレジット:Waldo

時間が経っても適切に動作するのは、Waldoが画面の構造を理解するからだ。例えば、開発者はテストに戻って画面のエレメントを特定することができる。同社の共同創業者でCEOのAmine Bellakrid(アミン・ベラクリド)氏は筆者に対し「ウェブページでウェブインスペクタを開き、HTMLを見ていると想像してみてください」と説明した。

このようにすれば、開発者は画面の類似性は一定のしきい値以上であると判断し、一部のエレメントを手動で構成できる。例を挙げると、テキストボックスを選択することができれば他の言語でも大丈夫だと考えられる。

時間をかけてテストをパスしたり失敗したりするように調整した後は、実際にエンド・ツー・エンドのテスト用プラットフォームを利用できる。Waldoはユーザーインターフェイスだけを見ているのではなく、アプリを操作して分析のためにイベントをチェックする。例えばWaldoのテストを本番サーバに対して実行すれば、問題なくログインできたことによりWaldoはサーバが適切に動作していると判断する。

裏側ではWaldoはアプリをパッケージし直し、コードを追加してアプリに関する情報を抽出できるようにする。その後、アプリをサーバ上のシミュレータで実行する。Waldoはエミュレータからも情報を取得する。

ベラクリド氏は「我々のゴールはパイプラインをなくすことです。我々はアプリをApp Storeに提出する前の最後のテストです」と述べた。Waldoの顧客で健康保険アプリのAlanにはQAチームがない。開発者がQAを担当して欲しいと考えているからだ。一方、こちらも保険会社であるLemonadeにはすでにQAチームがあるが、Waldoのようなプロダクトを利用することで時間を節約しワークフローを改善できる。

ベラクリド氏は「モバイルではスピードが勝敗を分けます」という。テストは多くのモバイル開発チームのボトルネックだ。Waldoのテストを組み込むことで、幅広いテストをカバーしアプリを迅速にリリースできるようになる。

画像クレジット:Waldo

画像クレジット:Daniel Romero

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

旅行体験アプリHeadoutがオミクロン株流行を乗り切り約34億円の追加資金を獲得

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、旅行予約スタートアップのHeadout(ヘッドアウト)のビジネスはほぼ壊滅状態に陥ったものの、ここ数カ月の国内旅行の回復にともない、同社は成長を取り戻している。消費者が世界中の都市でのツアーやイベント、その他の体験やアクティビティを予約できるこのサービスは、海外旅行ではなく国内旅行や地元の需要に応えることで、2021年1月以降800%の成長を実現した。7月までに同社はEBITDAで黒字化を達成した。2021年秋には1200万ドル(約14億円)のシリーズBラウンドを完了し、そして今、既存投資家たちはHeadoutの最新ラウンドにさらなる資本を追加するために戻ってきた。

Headoutの3000万ドル(約34億円)の新ラウンドは、Airbnb、Uber、Instacartといった他のマーケットプレイスを支援してきた先行投資家のGlade Brook Capitalがリードした。既存投資家であるNexus Venture Partners、FJ Labs、500 Startupsなども参加している。

Headoutの共同創業者でCEOのVarun Khona(ヴァルン・コナ)氏は「我々は積極的に資金調達をしていませんでした」と語る。「9月からの投資家であるGlade Brookは、当社の継続的な成長を見て、当社への投資を倍増させたかったのです」。その結果、Headoutはさらに数件のインバウンドリクエストも受け、追加資金を調達することを決めた。「提供された条件と、長期的なビジョンに対する彼らとの整合性が非常に良かったので、断るのは非常に難しかったのです」とコナ氏は付け加えた。

同社は、本来なら倒産しかねないような難局を乗り越えてきた。

シリーズBの最初のクローズ時にコナ氏が言ったように、パンデミックの初期にHeadoutの「事業は2億5000万ドル(約285億円)超からものの数週間で取るに足りない規模」になった。しかし、同社は店を閉める代わりに、国内旅行により重点を置き、自分の住む都市やその近辺を探索したい人々に対応する方針へと転換した。現在では、国内旅行が同社のビジネスの80%近くを占めており、パンデミック以前とは打って変わっている。

そして今、Headoutはオミクロン流行を見事に乗り切った。

画像クレジット:Headoutのユーザー

2021年11月までに、年初と比較して約10倍の成長を遂げたとコナ氏はTechCrunchに語った。しかし、オミクロン感染拡大にともない、12月と1月はその成長が鈍化した。しかし、この数週間、最新新型コロナウイルス変異種の感染がピークを迎え始めたことで、Headoutのビジネスはまたもや成長した。

おそらく直感に反しているが、パンデミックはもはや旅行体験の需要を完全に抑えないと、コナ氏は指摘する。時には、需要を刺激しさえする。

「人々は追加資金を手にしています。そして外国へ旅行することはできません。しかし、旅行したい、さまざまなものを見たい、いろいろなことをやってみたいという欲求は、これまでと同じように高いのです」と同氏は話す。「実際、ある意味では、お金や時間を使いたい、経験したいという消費者心理や欲求は、新型コロナ後さらに高まっています。私たちは今、大好きなものが奪われたらどんな生活になるのか、時間的にもアクセス的にも限界を感じているのです」。

Headoutは月間アクティブユーザー数、収益ランレート、評価額の詳細を明らかにしておらず、コナ氏は「数億」としか言わない。しかし、これまでに190カ国超から1000万人が同社のプラットフォームで体験を予約したと明らかにした。

現在、Headoutのマーケットプレイスは、世界50都市で旅行体験予約を提供している。提供する商品のデジタル化で現地のサービスプロバイダーと直接連携し、直前の予約にも対応し、ダイナミックに価格を設定することで収益を上げている。Headoutは、予約手数料を取るが、現在試験的にサブスクリプションにも挑戦している。

同社の顧客は、若いカップルや家族連れが多く、平均予約人数は2〜3人だ。また、都会に住んでいて、教養があり、そしてもちろん旅行好きの人が多い。

今回の追加資金で、同社は事業の急拡大を目指している。今後24カ月で500都市にサービスを拡大する予定だ。そして短期的にはすべての職務で採用し、今後数カ月で150人のチームをさらに200〜250人増やす計画だ。

コナ氏はまた、買収でチームを成長させる機会もあると考えており、パンデミックを生き残るための資本を持たないが、優れた才能を持つ旅行やエンターテインメントのスタートアップがたくさんあると指摘した。

「当社はそのような企業にも目を向けたいと考えており、すでに話を進めています」と同氏は仄めかした。

製品面では、パートナーと消費者の両方の経験を向上させるのに資金の一部を投入する予定だ。例えば、パートナー向けには、駆け込みサービスの一覧や、ツアーに遅れて参加したいという人のために、ガイドの現在のライブロケーションを表示できるツールなどを提供する方法に取り組んでいる。また、Headoutユーザー向けとしては、まだ詳細は詰まっていないが、ディスカバリーの改良に取り組んでいる。

今後数カ月間の成長が予定されているにもかかわらず、コナ氏は新資本があまり失われることはないと考えている。

「Headoutの取引はすべて利益になるので、取引が増えるたびに収益が改善されます。規模が大きくなればなるほど、収益も利益も大きくなります。火傷の心配はあまりしていません」と同氏は述べた。

画像クレジット:headout

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

企業内で増大し複雑化するSaaSの管理を簡単にしてくれるTorii

Toriiの創業者たち。左からウリ・ハラマティ氏、Uri Nativ(ウリ・ナティフ)氏、Tal Bereznitskey(タル・ビリニシツキ)氏)。(画像クレジット:Torii)

ソフトウェアの爆発的な普及によって、多くの企業が少なくとも100種類以上のSaaSアプリケーションを使用しているが、そうしたソフトウェアを管理する世界は、以前に比べてより分散化され、より複雑になっている。

SaaS管理ツールのTorii(トリー)は、企業全体が使用しているクラウドアプリをまとめて管理することが可能で、すべてのアプリを探せるだけでなく、投資収益率を最適化するための対策を自動的にとってくれる。

TechCrunchが同社を取り上げたのは、2021年2月にWing Venture Capitalが主導するシリーズAで1000万ドルの調達を発表したときだった。Toriiの創業者でCEOのUri Haramati(ウリ・ハラマティ)氏は、年間経常収益が300%以上増加したこの1年を「私たちにとって非常にすばらしい年」と振り返る。

「行ったすべてのことにおいて、大きな成長が見られました」と彼は付け加えた。「それは、このラウンドに導いたパンデミックの動きと、誰もがクラウドに移行し、より多くのツール、より多くの科学的アプローチ、より良いコントロールを採用したという事実から始まったのです」。

収益の向上に加えてToriiは、Instacart(インスタカート)、Carrier Corporation(キヤリア・コーポレーション)、Bumble(バンブル)、Athletic Greens(アスレチック・グリーンズ)、Palo Alto Networks(パロアルト・ネットワークス)といった顧客と協力ながら、シリーズA直後には15人だったチームを70人にした。その内容は基本的に、市場開拓、マーケティング、カスタマーサクセスの各チームの強化とともに、セールスおよびマーケティング担当のバイスプレジデントを加えるといったリーダーシップチームの強化だった。

今回Toriiは、Tiger Global Managementが主導するシリーズBで5000万ドル(約57億2000万円)の資金調達を行い、資金調達の総額は6500万ドル(約74億4000万円)となった。Wing、Global Founders Capital、Uncork Capital、Entree Capital、Scopus Venturesなどの既存投資家も参加している。

ハラマティ氏は、今回のシリーズBをもう少し行う予定だったが、ソフトウェアの進化のスピードに会社がついていく必要があった。顧客が抱える主な問題の中には、コストと無駄の問題がある。複雑さが原因で無駄の割合が増加しており、ツールの追加が進むにつれて、ソフトウェアにかかるコストも増大している。

さらにセキュリティも加わり、あらゆるものが接続され、データが以前よりもはるかに簡単に流れるようになった今、別の問題や苦痛の種が生まれている、と彼は付け加えた。

実際、Toriiの顧客データによれば、企業は毎月平均19個の新しいクラウドアプリケーションを追加してる。そのうちの75%は、未承認、未審査、または会社のセキュリティポリシーに準拠していない可能性がある。それだけでなく、アプリのライセンスの平均35%が未使用または無駄になっている

ハラマティ氏は「2年前、3年前と比べても、問題の本質は変わらず、ただ規模が大きくなっています」という。「みんなの邪魔をしているとは言われたくないでしょう。大多数の従業員はテクノロジーを利用していますが、そのテクノロジーが標準以下の場合、40%の従業員が離職することがわかっています」。

シリーズBの資金を得たハラマティ氏は、資金の大半を製品エンジニアリング、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスを中心としたチームの強化に充てる予定だ。2022年末には200人に成長することを目指している。また、顧客のエコシステム全体をつなぐことができるように、現時点で130以上を数えるツールとの統合をさらに進めていきたいと考えている。

一方、Wing Venture CapitalのパートナーであるJake Flomenberg(ジェイク・フローメンバーグ)氏は、SaaS管理の分野は彼がずっと以前から考えていた分野だという。フローメンバーグ氏は企業が「パズルの小さなピースをやりくりしている」のを眺めていたが、彼はハラマティ氏と彼のチームに出会って初めて、熟慮されたデータの収集と分析がどのようなものなのか、また熟慮された自動化とオーケストレーションがどのようなものなのかを目の当たりにした。

フローメンバーグ氏は「もし本当に重要なビジネス上の意思決定を行い、物事の自動化やオーケストレーションを始めようとするならば、4分の3程度の正確さのデータでは始めたくありません」という。「SaaSの崩壊は現実的なものになっていて、現時点ではカオスと呼ぶにふさわしいものになっています。利用者は自宅で好きなように振る舞うだけなので、管理するのは不可能です。IT担当者が容易に現状を把握できて、さらに大きな影響を与えることができる仕事に向かうことができるなら、それこそがToriiが向かっている方向であり、私に喜んで投資させたきっかけなのです」。

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(文:Christine Hall、翻訳:sako)

クラフトビール醸造所向けITサービスのBest Beer Japanが7000万円のシード調達、業務店向けクラフトビールEC事業開始

クラフトビール醸造所向けITサービスのBest Beer Japanが7000万円のシード調達、業務店向けクラフトビールEC事業開始クラフトビール醸造所向けの在庫管理システムと受注システムを提供するBest Beer Japanは2月3日、シードラウンドにおいて、7000万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、LaunchPadFund投資事業有限責任組合(Headline Asia)、SocialEntrepreneur3投資事業有限責任組合(PE&HR)、NBCエンジェルファンド2号投資事業有限責任組合(事業創造キャピタル)、オリザリア、デジタルハリウッド大学、南章行氏(ココナラ代表取締役会長)、小林泰平氏(Sun* CEO)、ほか個人投資家。

Best Beer Japanは、クラフトビールの醸造所のバックオフィス業務を管理するためのITツールや物流サービスを手がけるスタートアップ企業。樽の在庫と出荷をリアルタイムで管理できる「樽管理システム」、ビール樽をシェアリングすることで運送コストを抑える「レン樽」などのサービスを開発・運営している。

これまでIT化が進んでいなかったクラフトビール製造業に対して「ビール業界のDX」実現に向けた様々なサービスを提供し、前年比で取引先の醸造所数は2倍に増加。衛生面や酒税・在庫の管理といった作業の負担を軽減し「醸造所がよりビール作りに集中できる環境を作ること」をサポートする。

Best Beer Japanは今回の資金調達を活用し、複数の醸造所からクラフトビールを購入できるプラットフォーム「業務店専用 クラフトビールECサイト」の運営を本格的にスタート。1つのサイト内で醸造所を横断して複数の商品を選ぶことができ、注文・支払いまで完結させるシステムで、すでに事前登録が始まっている。クラフトビール醸造所向けITサービスのBest Beer Japanが7000万円のシード調達、業務店向けクラフトビールEC事業開始

クラフトビール醸造所向けITサービスのBest Beer Japanが7000万円のシード調達、業務店向けクラフトビールEC事業開始

業務店専用クラフトビールプラットフォームのイメージ