「もっと早く知りたかった」、Gesundが医療アルゴリズム検証データを提供するために2.3億円を調達

医療アルゴリズムを開発することと、それが本当に機能することを証明することは、まったく別の話だ。そのためには、入手しにくいある重要なものが必要だ。医療データである。現在、とあるスタートアップ企業が、そのようなデータを、検証研究を容易にするツールとともに提供する準備を整えている。

今週、2021年に創業されたGesund(ゲズンド)が、500 Globalが主導する200万ドル(約2億3000万円)のシードラウンドでステルスから浮上した。CEOで創業者のEnes Hosgor(エネス・ホスゴー)氏はTechCrunchに対して、同社はすでに多くの実績を残していて、実行可能なプラットフォーム、30社の見込み顧客との取引、今四半期の売上見込みなどを見込んでいると語る。

基本的にGesundは、医療アルゴリズムを開発するAI企業や、自身のモデルをテストするアカデミアのためのCRO(Contract Research Organization、医薬品開発業務受託機関)なのだ。一般のCROが医薬品や医療機器企業向けの臨床試験をデザインするのと同じように、Gesundのプラットフォームは、AI企業が自社の製品をテストするためのデータをキュレーションし、その比較をスムーズに行うためのITインフラを構築する。

ホスゴー氏は「私たちは、自分たちを機械学習運用企業だと考えています」という。「私たち自身はアルゴリズムを手がけません」。

医療アルゴリズムは、学習させるデータがあってこそ役に立つが、多様で有用なデータセットの入手は困難であることが知られている。例えば、2020年にJAMAで発表された研究では、放射線科、眼科、皮膚科、病理科、消化器科などの分野にわたる深層学習アルゴリズムを説明した74の科学論文を分析し、これらの研究で使われたデータの71%がニューヨーク州、カリフォルニア州、マサチューセッツ州からもたらされたものだということを報告している。

実際、米国の34の州は、これらのアルゴリズムの学習に使用したデータを提供しておらず、より広い母集団に対する一般化の可能性が疑問視されている。

また、この問題は医療機関の種類を越えて存在している。大規模かつ権威ある大学病院で収集されたデータを使ってアルゴリズムを学習させることは可能だ。しかし、それを地域の小さな病院に導入しようと思っても、そうしたまったく異なる環境ではうまくいく保証はない。

BMJに発表された152件の研究のメタレビューによれば、アルゴリズムを訓練するために使用されるデータセットは、一般的に、必要とされるものよりも小さいという。当然ながら、アルゴリズムの成功例もあるものの、これは業界全体の問題なのだ。

テクノロジーだけでこれらの問題を解決することはできない。そもそも、そこにないデータを分類したり、提供したりすることはできないのだ。ヨーロッパ人以外の祖先を持つ人々の遺伝子研究が、非常に不足していることを考えてみて欲しい。しかしGesundは、既存のデータへのアクセスを容易にし、データ共有の新たな道を開くパートナーシップを構築するという、テクノロジーを役立てられる可能性のある問題に焦点を絞っている。

Gesundの検証プラットフォームの画面

Gesundのデータパイプラインは「各臨床施設と締結している、データ共有契約」に基づいているとホスゴー氏はいう。現在、Gesundはシカゴ大学医療センター、マサチューセッツ総合病院、ベルリンのシャリテ大学で収集された画像データにフォーカスしている(同社は今後、放射線医学以外の分野にも拡大する計画だ)。

機械学習アプリケーションで使用するためのデータの集約と配信は、Nightingale Open Science Project(ナイチンゲール・オープンソースプロジェクト)のような、研究者に臨床データセットを無料で提供する他の企業によっても行われている(物議を醸しているGoogleの「Project Nightingale」[プロジェクト・ナイチンゲール]とは提携していない)。だが、データそのものも重要な要素だが、実はホスゴー氏が秘密兵器と見ているのは、同社のテクノロジー・スタックなのだ。

「誰もがクラウドでML(機械学習)をやっています。ですが、一般的な医療機関はクラウドを持っていないので、すべてが失われてしまうのです」とホスゴー氏はいう。「そこで私たちは、病院のファイアウォール内に設置できる技術スタックを構築しました。これは機械学習にはつきもののサードパーティのマネージドサービスには一切依存していません」。

そこを起点として、プラットフォームには「ローコード」のインターフェイスが搭載されている。つまり、医師や医療機関は、基本的に必要なデータセットをドラッグ&ドロップし、そのデータに対して自身のアルゴリズムをテストすることができるのだ。

ホスゴー氏は「創業して約6カ月ですが、すでに本格的に走っています。私たちは開発した最初の製品は、クラウドリソースにアクセスできない高度なコンプライアンス環境において、モデルの所有者がデータに対して自身のアルゴリズムを実行し、正確なメトリクスをその場で生成できるようにするものです。それが私たちの強みなのです」と説明する。

現時点では、GesundはNightingaleと同様に、一部のサービスを無料で提供している。同社のCommunity Edition(コミュニティエディション)では、手持ちのアルゴリズムがある研究者たちが、自分たちのアルゴリズムを無料でテストできる(ただし、自分たちのデータセットをアップロードする必要がある)。

一方、同社の「プレミアム」版の費用を払うのは、AI企業だ。これによって、お金を払っている顧客は、独自のデータセットにアクセスできるようになるとホスゴー氏はいう。そして、必要なデータにはお金を払うという実績もある。現在、Gesundは30の潜在顧客との交渉中だとしていて、今期中に収益を上げる予定だという。

「私たちは2021年11月にシカゴで開催されたRSNAに出席しましたが、話を聞いたあらゆるAI企業から『ああ、もっと早く知りたかったです』という発言を聴きました」。

現在Gesundが調達した資金は今回の200万ドル(約2億3000万円)のプレシードラウンドだけだが、ホスゴー氏は2022年中に再び資金調達を行えることを期待している。近い将来、同社は研究開発に注力しつつ、米国および欧州における臨床提携を拡大する予定だ。

画像クレジット:Gesund

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(文:Emma Betuel、翻訳:sako)

【コラム】米国はシリコンバレーの力を活用して国防のイノベーションを推進すべきだ

米国防総省(DoD)をはじめとする米国政府機関および議会超党派合意は、中国が外交、インフォメーションとインテリジェンス、軍事力および経済力の戦略的活用によって、将来の世界秩序を再定義しようとしていることを認識している。

中国が宣言している目標と目的を踏まえれば、我々はこの評価が今後数十年間継続する可能性を予測すべきだ。

あらゆる公平な観察者にとって、中国の積極的な政府全体による支配、とりわけ軍事領域における支配への取り組みに対する米国の対応は、断片的かつ無効である。対応(要求、取得、予算)のために用意されたシステム(および人員)は、ライフサイクルコストと30年間におよぶDOTMLPF(教義、組織、訓練、物資、指導者育成、人事、施設)プロセス管理に最適化して設計されている。

しかし、戦略的競争に勝つためにはその正反対が必要だ。スピード、緊急性、スケール、短期ライフサイクル、およびアトリビュータブル(帰属可能)なシステムだ。既存のDoDシステムは、現在DoD関連の先端技術(AI / ML、自律、バイオテック、量子、宇宙利用、半導体、等々)のほとんどを支えている民間テクノロジー・エコシステムを効果的に利用するようには作られていない。

DoDの上級軍人および文民のリーダーの多くはこれを理解し、善意のイノベーションイニシアチブを設立してきた。しかし、こうしたイニシアチブへの長期的な資金提供とその効果は、先見性ある指導者個人の支援に依存することがほとんどあり、重要な指導者の在任期間が終わると危機に晒される。

その結果、この国のシステムも組織も人数も予算も、中国をはじめとする潜在的ライバルの挑戦を受けるためのスケーリングができない。我々の敵対者は、この国の伝統的システムが対応できるよりも速く革新している。

多くの人々が、既存のDoDシステムの刷新について記してきた。計画、プログラミング、予算、実行(PPBE)プロセスの修正、DoDアクセラレータおよびDefense Innovation Unit(国防イノベーション・ユニット)の規模拡大、既存の取得権限の活用などだ。

どれも良い考えだが、肝心の問題を見逃している、それは「DoDが民間産業と本格的に関わっていない」ことだ。米国民間セクターの並外れた潜在能力を活かし、その圧倒的に優れたリソースを持ち込むことでより効果的に前進することが、この戦略的競争に勝利するための鍵だ。

シリコンバレーはゲームに戻る準備ができている

第2次世界対戦後の最初の20年間、シリコンバレーは事実上「defense valley(防衛バレー)」だった。DoDと諜報機関のためにチップとシステムを作っていた。シリコンバレーにおけるイノベーションは、戦後スタンフォード大学への海軍研究事務所からの資金提供に始まり、さまざまな機関からの最先端の無線・電子システム開発の発注がそれに続いた。

生まれたての半導体企業にとって最初の大型契約は、大陸間弾道弾ミサイル、Minuteman II(ミニットマン2)の誘導システム、次いでアポロ宇宙船だった。冷戦期、Lockheed(ロッキード)はシリコンバレー最大の雇用主であり、3世代にわたる潜水艦発射弾道ミサイル、人工衛星、およびその他の兵器システムを製造した。シリコンバレーのリソースを結集させた我々の能力が、米国にとって決定的に重要で、最終的にソビエト連邦との冷戦に勝利をもたらしたことは間違いない。

今世紀の戦略的競争に勝つためには、同様のリソースと人材を確保する必要がある。今日、シリコンバレーはDoDを圧倒するテクノロジーエコシステムの中心に位置し、スピードと緊急性をもって動き、インセンティブが与えられれば、資金と人員を壮大なスケールで結集させ、一連の問題を解決することができる。

しかしDoDは、これを「大規模かつスピーディー」に活用すべきリソースであることをなかなか認めない。そして、完全に認めていないために、もしこのリソースを集結できれば何が可能になるのかを考えていない。

そして想像したことがないために、年間3000億ドル(34兆円)以上のベンチャー資金(対してDoDの研究、開発、試験、評価[RDT&R]プログラムは1120億ドル[約13兆円]、調達は1320億ドル[約15兆円])をこの国の安全保障を支える可能性のある軍民両用活動を支える分野に注ぎ込ませるために、どのようなインセンティブ(たとえば大規模な優遇税制など)を与えればよいのか考えたこともない。

「ハンマーにはあらゆるものが釘にみえる」ということわざは、主権と国際法への脅威のような問題の答をうまく説明している。ほとんどの思考は、既存の兵器システム(艦船、空母、原子力潜水艦)の追加 / 改良に限定されていて、代替的な軍事概念や南シナ海やバルト海やカリニングラードにおける戦争の阻止あるいは勝利に貢献した即時展開可能な兵器ではない。

どうやら、新しいベンダーによる小型、低価格、アトリビュータブル、自律型、致死的、大量、分散、短期ライフサイクルのプロジェクトを中心に作られた新しいシステムとコンセプトに関する会話は、ほぼ禁止されているようだ。しかし、これらこそが集まってくるソリューションとイノベーションエコシステムだ。SpaceX(スペースエックス)のような会社50社が、21世紀のDoDを作るのに協力するところを想像して欲しい。

米国の選りすぐりを戦略的競争に参加させよ

米国の民間セクター、特にシリコンバレーに焦点を合わせ、比類なきイノベーションと並外れた潜在投資力とともにその力を爆発させることで、中国に対する米国の能力低下を逆転させ、さまざまな主要テクノロジー分野で優位性を保つことができる。

それだけではない。我々はもっと積極的かつ意識的に、この国の世界に名だたる高等教育機構、すなわち米国主要大学に集まった才気あふれる革新的かつ創造的な学生たちと教員陣の膨大な未開発の可能性を活用しなくてはならない。

この国はかつてこれに成功したことがある。スタンフォードをはじめとする米国主要研究大学のほとんどは、冷戦期の軍事イノベーションエコシステムに不可欠な存在だった。しかし、シリコンバレーが独特だったのは、スタンフォード大学の工学部が、教授や大学院生に軍事エレクトロニクス企業を立ち上げるよう積極的に働きかけたことだった。最高の人材を集め、テクノロジーを商品化することでソビエト連邦とのレースに勝つための手助けをした。

この歴史的事例に触発され、我々は最近Stanford Gordian Knot Center for National Security Innovation(スタンフォード・ゴーディアン・ノット国家安全イノベーション・センター)を設立し、シリコンバレーのテクノロジー、人材、資産、スピード、そして困難な問題に立ち向かう情熱を駆使して米国がこの戦略的競争の新時代を勝ち抜く力になろうとしている。

我々はさらに、シリコンバレーや他のイノベーションエコシステムを横断してリソースを統合する取り組みを進めていかなければならない。トップクラスの大学では、国家安全保障イノベーションの教育を本格化する必要がある。国家安全保障イノベーターの養成、洞察力、融合、ポリシーアウトリーチの提供、最も困難な問題の解決の触媒になりうる実用最小限の製品の継続的創出などだ。

この国のすべてのリソースと至高の人的財産を活用しないリスクはあまりにも大きい。

編集部注:Steve Blank(スティーブ・ブランク)氏は、スタンフォード大学Gordian Knot Center for National Security Innovationの創立メンバーで、同大学の非常勤教授およびコロンビア大学のイノベーション担当上級フェロー。

Joe Felter(ジョー・フェルター)氏はGordian Knot Center for National Security Innovationのセンター・ディレクター、創立メンバーで、スタンフォー大学のCenter for International Security and Cooperation、Hoover Institution、およびStanford Technology Ventures Programの講師、研究職。

Raj Shah(ラジ・シャー)氏はGordian Knot Center for National Security Innovationの創立メンバー、テクノロジー企業家・投資家、スタンフォード大学非常勤教授、ペンタゴン防衛イノベーション・ユニット実験の元マネージング・パートナー。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Steve Blank、Joe Felter、Raj Shah、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Oh、フェイスブックがハックされた、そんなときの対策を知っておこう

今や技術に詳しい友人でもFacebookで「ハックされる」ことがある。どうやってそれを防ぐか。ハックされたアカウントを完全に回復するには何をどうすべきか。今回はそれを考えよう。

通常、アカウントが「ハックされる」のは、だれかがあなたのパスワードを手に入れるからだ。Facebookの場合は、そうなるととても厄介だ。Facebookを使って他のものへログインしている人が多いからだ。だから人のFacebookアカウントを盗んだ者は、大量のいろいろなものにアクセスできる。

もしもアカウントをハックされたら

アカウントをハックされたらどうなるか。結果はさまざまだ。だれかがあなたのふりをしてメッセージを送るかもしれない。投稿とか、何かおかしなことをするかもしれない。

まだログインできるなら、ラッキーだ。以下のことをしよう。今すぐ、パスワードを変更する。それができるなら、第一歩はそれだ。

ログインできなければ、パスワードのリセットをリクエストする。それがダメなら、誰かがそのアカウントのメールアドレスを変えたかもしれない。そんなときは次のようにする

おかしな状態をFacebookに報告しよう。すると彼らは、他の人たちにそれが起きないようにしてくれる。

セキュリティの設定にアクセスし、どこにでもログインできることを確認する。場所やデバイスがわからなければ、3つのドットのメニューを押して「あなたではない?(not you?)」を選ぶ。するとログアウトして、さらにあなたのアカウントのセキュリティを設定できる。

あなたのFacebookアカウントにアクセスできるすべてのアプリやウェブサイトを確認する。この表示内に、身に覚えがないものがあったらそれを削除する。

設定の「一般」でFacebookがあなたのためにリストしたメールアドレスをチェックする。自分のものでないものがあればそれを削除する。

もう一度、自分のパスワードを変更する。すると(理論的には)ハッカーはあなたのアカウントにもうアクセスできない。文字・数字・記号の混じった安全なパスワードにすること。どこかで使ってるパスワードを再利用してはいけない。パスワードマネージャーを使って自分が使ってるすべてのパスワードを調べ、一般的に高品質のパスワードを使おう。

二段階認証を使おう。そうすると、パスワードを盗まれても、あなたの電話番号や認証アプリにはアクセスできないため彼らはログインできない。

そして最後に、あなたのセキュリティやソーシャルメディアに何かおかしなことが起きたら、メールのパスワードを変えるべきだ。ソーシャルのアカウントへのアクセスを失う(盗まれる)のは最悪だが、それ以上にハッカーにとってうれしいのはメールへのアクセスだ。メールのパスワードは、1〜3カ月ごとに変えよう。なにかおかしなことが起きたら、すぐ変えるべきだ。

ハックされるのを防ごう

Facebookのアカウントが盗まれる、最も一般的なケースは、あなたを騙してハッカーにパスワードを渡してしまうやり方だ。Facebookの上でMessengerのメッセージを友だちからもらったけど、そこには「今日亡くなった人知ってる?」なんてメッセージにリンクがある。そのリンクはFacebookのものではないけど、クリックすると「もう一度ログインしてください」などと表示される。あなたは何も考えずにメールとパスワードをタイプする。でもその送り先はFacebookではないため、「彼ら」はあなたのパスワードを知ることになる。

それを防ぐためには、上で述べたように、二段階認証を使うべきだ。そして警戒しよう。Facebookからどこかへログインするときは、URLが「https://www.facebook.com」で始まっているかな?それが「ffacebook.com」や「facebook.this-is-a-security-notification.com」などだったら、自分のパスワードをタイプしてはいけない。最も安全なのはfacebook.comとブラウザー上で自分でタイプすることだ。

Facebookアプリの中にブラウザーがあることを忘れないように。その場合、あなたはアプリ経由で今Facebookの中にいるのだから、そこからさらにパスワード入力を含むFacebookへのログインを求められることはおかしい。Facebookの中からFacebookにログインするなんてありえない。Facebookの中から他のサイトにログインするときは、その認証過程は済んでいるのだ。再度入力の必要はない。おかしなログイン要請はすべて無視。

逆にアプリやウェブサイト内からFacebookのアカウントにアクセスする場合もあるが、そんなアプリは定期的にチェックして、しばらく使ってなかったり、もう不要なアプリなら削除してしまおう。必要なら後でまた入手すればいい。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ロシアのウクライナ侵攻へのテック業界各社の対応

2月24日、ロシアは数カ月におよぶ国境での軍備増強を経て、隣国ウクライナへの侵攻を開始した。

インターネットトラフィックの氾濫とデータ消去マルウェアによる、ウクライナ政府機関を標的としたサイバー攻撃に始まり、その後、地上、海上、空からの侵攻を開始した。ウクライナの報道機関もサイバー攻撃による障害を報告しており、ウクライナ政府はこのサイバー攻撃はモスクワと「明確な関連」があると指摘している

米国、欧州連合、NATOの同盟国は侵攻を激しく非難し、ロシアに広範で前例のない金融・外交制裁を科そうとしている。この制裁は地域全体のビジネス、貿易、金融に影響を及ぼすと思われる。

侵攻の影響は、ウクライナのテックエコシステム全体にも及んでいることは間違いない。ウクライナには、何百ものスタートアップやテック大企業だけでなく、世界最大のテクノロジーブランドの研究開発オフィスもある。

今後数時間、数日の間に現地の状況が急速に変化する中、TechCrunchはこの紛争がテックやスタートアップのコミュニティにどう及ぶのか、ニュースや分析を提供し続ける予定だ。

ある大手テック企業の役員は、従業員の安全のために社名を伏せるよう要請しつつ、ウクライナにいる全スタッフを避難させる方法を検討している最中であることをTechCrunchに認めた。現在、全空域が立ち入り禁止になっており、公共交通機関もほとんど機能していないことが事態を困難にしている。現在の計画では、ハンガリーかポーランドのどちらかに国境を越えてスタッフを移動させる方法を考えている。

こうした状況は、ウクライナのスタートアップにも大きな経済的影響を与えそうだ。

PDFや電子メール、その他の生産性ツールを手がけているReaddleは、ウクライナで最も有名な自己資金で起業したスタートアップの1社だ。南部の都市オデッサを拠点とする同社の広報兼マネージングディレクターのDenys Zhadanov(デニス・ジャダノフ)氏は、現在処理しなければならない緊急事態が多すぎると述べ、この記事のための電話インタビューをキャンセルした。しかし、ジャダノフ氏はテキストメッセージでTechCrunchに語った。

「我々は少し前に事業継続計画を立て、今それを実行しています。Readdleのすべての製品とサービスは稼働しており、現時点ではチームの避難は行われていません」。

ジャダノフ氏は、Readdleが11カ国で従業員を抱える国際的な企業に成長したことを指摘した。チームの「大部分」は、今もウクライナを拠点にしているという。

「ウクライナには、優秀なエンジニアやデザイナーなど、技術系のプロフェッショナルが集まっています」とも付け加えた。「多くのテック企業のCEOが、ウクライナに留まることを意図的に選択しました。彼らの多くは、この国とその人々を助けるために、援助や寄付をしています」。

ウクライナでは、さらに多くの国産スタートアップが、その影響を感じている。家庭用無線セキュリティのAjax、AIベースの文法・文章作成エンジンGrammarly、顔交換アプリのReface、ペットカメラシステムのPetcube、販売・マーケティングインテリジェンスのスタートアップPeople AI、語学個別指導マーケットプレイスのPreplyなどだ。これらの企業は、世界最大級のVCのいくつかから資金を調達しており、今回の事態でそうした関係にどのような影響が出るのか、また出るのかが1つの疑問点だ。

Macのソフトウェアやユーティリティを開発するソフトウェア会社のMacPawは、本社はキエフにあるものの、インフラはAmazon Web Servicesでホストされており、物理的にはウクライナ国外にあるとブログへの投稿で明らかにした。同社の決済処理会社Paddleは英国に拠点を置いており、ユーザーにとって「何も変化はない」見込みだ。「現時点で、我々は強く、団結し、ウクライナの主権と領土保全を守る準備ができています」とMacPawはTechCrunchへの電子メールで述べた。

ウクライナに進出しているある企業は、現地の状況が急速に変化していることを理由に、TechCrunchとの会話を報道されることを拒否した。

スタートアップだけでなく、研究開発部門を国外に置いているテック大企業や、コンテンツから広告販売まで、より地域に密着したサービスを提供しているチームもある。

GoogleのYouTubeやByteDanceのTikTokのような消費者向けのプラットフォームを持つ企業にとっては、偽情報や、逆の検閲にどのように利用されているか、あるいは誤用されているか、またその種のトラフィックをどう処理しているかが問われることになる。その上で、サービス全体がどのように維持されているのか、制裁やインターネットサービスの中断によって停止するリスクはないのかも問われる。TechCrunchはAmazon、Apple、ByteDance、Facebook、Google、Meta、Snapにコメントを求めた。詳細が分かり次第、更新する。なお、Microsoftはコメントを却下した。

その他、伝える点がいくつかある。

Googleでは、その様子からして、グローバルサービスの研究開発と現地でのオペレーションを担当する約200人がウクライナで働いているようだ。同社は長年にわたり、ロシアにおけるYouTubeをめぐる検閲で多くの問題に直面してきたが、今のところウクライナではそのようなことはない。

2016年からウクライナで事業を展開し、9都市に進出しているUberは、同国内での事業を一時停止した。Uberはキエフ在住の従業員とその近親者に、ウクライナの他の地域や他国への一時的かつ自主的な移転を提案した。ギグワーキングのドライバーと彼らがサービスを提供するライダーにとって、Uberのアドバイスは家にいることだ。

「私たちは、Uberの乗客、ドライバー、従業員の安全を守るためにできる限りのことをすることに引き続き注力しています。「部門横断的なチームが状況を注意深く監視しており、安全が確認され次第、サービスを再開する予定です」とUberはTechCrunchに述べた。

Lyftもウクライナを拠点とする従業員に対して予防策を講じている。ロイター通信によると、Lyftは緊急物資や避難のための金銭的支援に加え、休暇も提供する予定だという。Lyftはウクライナに約60人の従業員を抱えているとされ、2021年12月のブログでは、同年4月に開設したキエフオフィスを拡張する計画があると書いている。Lyftの広報担当者はすぐにはコメントしなかった。

TikTokとその親会社のByteDanceは通常、国別の従業員数を公表していないため、ウクライナに何人いるかは不明だ。しかし、彼らは非常に人気のあるアプリを持っている。同国では2021年に30%のリーチがあったと推定され、前年の2倍となった。TechCrunchは2021年、TikTokがアレクセイ・ナワリヌイ氏を中心とした反プーチン活動をめぐる重要な戦場となった様子を紹介した

関連記事:ナワリヌイ氏が混ぜっ返すロシアの政治戦争にTikTokも台頭

TikTokの広報担当者は、TechCrunchに提供した声明の中で「当社のコミュニティと従業員の安全は最優先事項です」と述べた。「当社は、有害な誤情報を含むコンテンツを削除するなど、当社のプラットフォームの安全を脅かすコンテンツや動きに対して行動を起こし、状況が進展するなかで監視を続け、リソースを投入していきます」。

Facebookの安全保障ポリシー責任者Nathaniel Gleicher(ナサニエル・グレイチャー)氏は、ロシアのウクライナ侵攻に対応してプラットフォームが取る行動についてツイートした。グレイチャー氏によると、Facebookはネイティブスピーカーによる特別作戦センターを設置し「状況を注意深く監視し、可能な限り迅速に行動する」ことにしているという。また、同プラットフォームは、ユーザーが自分のアカウントをロックできる機能をウクライナに展開し、ユーザーの友人でない人は、プロフィール写真のダウンロードや共有、タイムライン上の投稿の閲覧ができないようにした。これは、Facebookが8月にアフガニスタンでユーザーを保護しようとしたときに使ったのと同じ戦略だ。Metaはまた、アフガニスタンのユーザーの「友達」リストの表示と検索機能を一時的に削除し、アカウント保護に関する指示を表示するポップアップの警告をInstagramで展開した。今のところ、この2つの措置はウクライナのアカウントには採用されていない。

Twitterはウクライナのユーザーに対し、多要素認証の使用やツイートの位置情報の無効化など、オンラインアカウントを保護するよう警告している。24時間前にTwitterが、侵攻前のロシアの軍事活動に関する詳細を共有しているアカウントを誤って停止したことを認めた時とは打って変わった事態になっている。

関連記事:ツイッター、ロシアの軍事的脅威に関するオープンソース情報を共有するアカウントを復活

また、インターネット大手CloudflareのCEO、Matthew Prince(マシュー・プリンス)氏は、データセンターが侵害された場合に顧客のデータと通信を保護する取り組みの一環として、侵攻開始の数時間後に「ウクライナのサーバーからすべてのCloudflare顧客の暗号資料を削除した」と述べた。同社は2016年にキエフのデータセンターを開設しており、同社のステータスページによると、現在も稼働している。Cloudflareは、組織や政府機関にコンテンツ配信とネットワークセキュリティを提供している。

画像クレジット:Daniel Leal / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、Ingrid Lunden、Carly Page、Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

Clubhouseに話すのが苦手な人にも参加を促すテキストチャット機能が登場

音声ファーストのソーシャルネットワークがついに、ずっと黙って聴いていた人に参加してもらう手段を導入した。Clubhouse(クラブハウス)は米国時間2月24日、ルームチャット機能を公開した。YouTubeやTwitchにあるように、ボイスルームにテキストチャット機能を追加するものだ。

ルームチャットはオプションで、Clubhouseでルームを始める際にこのオプションを会話中に有効にするかどうかを設定できる。有効にするとアプリの左下にチャット画面を開くボタンが表示される。「Share」(共有)ボタンの横にある、吹き出しのアイコンが付いたボタンだ。

画像クレジット:Clubhouse

Clubhouseはテキストチャットのオプションを、このプラットフォーム上にいるクリエイターとオーディエンスをつなぐ「もう1つのタッチポイント」と呼んでいる。2021年に追加されたダイレクトメッセージ機能と同様に、オーディオにピンポイントに特化したこのアプリの幅を広げる機能であることは間違いない。そしてもっと多くの人にとってClubhouseを利用しやすくする機能でもある。他の多くのソーシャルプラットフォームではコンテンツと同時にテキストチャットを利用できるので、成熟したプラットフォームに備わっていて欲しいと利用者が期待する機能とも言える。

コンテンツのモデレーションに関しては、誰でもユーザー名を長く押して報告、またはチャットからブロックすることができる。ルームを始めたユーザーがモデレーターを指名し、モデレーターにメッセージの削除や妨害する参加者の退室を担当してもらう方法もある。ルームを終了するときにオーディオコンテンツとともにテキストチャットもアーカイブされるが、ユーザーがルームの終了後もチャットに参加し続けることはできない。

Clubhouseによれば、この機能はiOSとAndroidの両方で公開されている。ひっそりと聴いている人に一歩踏み出してもらいたいと思っているなら、アプリを起動して試してみよう。

画像クレジット:Rafael Henrique/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Kaori Koyama)

体験型ストア運営のb8ta Japanが日本における全ライセンス取得し米国b8taから独立、アジア進出も視野

体験型ストア運営のb8ta Japanが日本における全ライセンス取得し米国b8taから独立、アジア進出も視野

体験型ストアb8ta(ベータ)を国内で3店舗運営するb8ta Japan(ベータ・ジャパン)は2月24日、米国b8ta inc.から、日本国内向け事業における商標権およびソフトウェアのライセンスをb8ta Japan JV, LLCにおいて2021年12月末独占的に取得したと発表した。

b8ta Japanでは現在、合同会社から株式会社への移行の準備を進めており、これを機に第三者割当増資を実施し、日本のb8ta事業を一気に加速させる。体験型ストア運営のb8ta Japanが日本における全ライセンス取得し米国b8taから独立、アジア進出も視野

b8ta Japanは、米国VCのEvolution Venturesとb8ta.incの合弁会社、ベータ・ジャパン合同会社として2019年に設立。日本国内における事業を運営してきたが、2020年9月には米国b8taとの資本関係を解消、b8taの商標とソフトウェアの日本国内での使用に対してライセンス料を支払うモデルに移行していたという。

そして今回、約1年にわたる協議の末、日本国内における事業に関わる「b8ta」の商標権およびソフトウェアのライセンスをb8ta Japan側で独占的に取得することで合意に至った。

なお2022年2月18日、米国b8taは全店舗閉店したが、b8ta Japanは米国b8taから独立した法人であり、日本国内における運営には一切影響はない。事業継続に必要な資産はすべてb8ta Japan側で確保しており、今後とも米国の事業に左右されることなく日本での事業展開を継続する。

代表の北川卓司氏は、「これからも創業者の掲げたミッションである『リテールを通じて人々に新たな発見をもたらす』を体現し、日本国内でb8taの店舗事業、また付随するRaaS(Retail as a Service)の新事業を拡大して参ります。また、日本からアジアの他地域への進出も計画しており、売ることを主目的としない店舗の更なる拡大を進めていければと考えております」と述べている。

Cloudflare、フィッシングメールが受信トレイに届く前にブロックするArea 1 Securityを買収へ

Cloudflare(クラウドフレア)は、フィッシング攻撃が従業員の受信トレイに届く前に阻止する製品を開発したセキュリティスタートアップ、Area 1 Securityを買収する予定であることを発表した。Cloudflareは、現金と株式両方によるこの買収に約1億6200万ドル(約187億円)を投じる予定だ。

Cloudflareは、ゼロトラスト・セキュリティモデルを採用した独自のセキュリティ製品群を開発してきた。これらのセキュリティソリューションは、従業員がオフィス以外の場所にいる場合や会社のVPNを使用していない場合でも、データ損失やマルウェア、フィッシング攻撃を防ぐことができる。

米国時間2月24日の買収により、同社はそれらのゼロトラスト製品群に、成熟した電子メールセキュリティ製品を追加することになる。Area 1 Securityは、2021年だけで顧客のために4000万件以上のフィッシング詐欺キャンペーンをブロックしたと述べている。

Cloudflareの共同創業者兼CEOであるMatthew Prince(マシュー・プリンス)氏は声明で次のように述べている。「電子メールはインターネット上で最大のサイバー攻撃経路であり、真のゼロトラスト・ネットワークには統合された電子メールセキュリティが不可欠となります。それを含めて、Cloudflareのプラットフォームをゼロトラストの明確なリーダーにするために、本日、Area 1 Securityを同社に迎え入れることを歓迎します。当社にとってゼロトラストの未来とは、最も一般的なクラウドアプリケーションである電子メールを含む、組織のすべてのアプリケーションを保護するための統合されたワンクリックのアプローチです。私たちは共に、市場で最も速く、最も効果的で、最も信頼できる電子メールセキュリティを提供することを期待しています」。

Cloudflareのメール製品はこれが初めてではない。同社は2021年、最初のメール製品をローンチしている。たとえば、Cloudflareのアカウントにドメイン名を関連付け、CloudflareのインターフェースからカスタムEメールアドレスを作成することができる。受信したメールは、他のメール受信箱にリダイレクトすることが可能だ。

また、Cloudflareは、DNSレコードの改善やメールの安全性を高めるためのガイドも行っている。たとえば、スプーフィング攻撃の防止を支援することなどだ。

そして、Area 1 Securityは、Cloudflareが提供するEメール関連製品の重要なギャップを埋めるものだ。Area 1 Securityは、常に新しいフィッシング攻撃の発見と特定をしようとする。従業員が新しいメールを受信すると、Area 1 Securityは受信メールをスキャンしてフィッシングの試みがないか調べる。

不審なメールは、受信トレイに入る前に自動的にブロックされる。スパムフォルダに振り分けられるだけでなく、完全にブロックされるのだ。

舞台裏では、顧客はDNSレベルでMXレコードを変更することでArea 1 Securityの利用を開始することができる。その後は、クラウドファーストの製品なので、顧客がソフトウェアをインストールしたり、パッチを当てたりする必要はない。会社がGoogle WorkspaceやOffice 365を利用している場合、Area 1 Securityはこれらのメールプロバイダーと連携して動作する。

DNSサーバー分野でのCloudflareの深い専門性を考えると、この買収は理に適っている。Cloudflareは、すでに自社の従業員の受信トレイにArea 1 Securityを使用していた。つまり、自分たちが何を買収しているのか、すでによく知っているのだ。

画像クレジット:Daria Nepriakhina / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Den Nakano)

【2月25日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はAndroidスマホからストーカーウェアを削除する方法

【2月25日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―1位はAndroidスマホからストーカーウェアを削除する方法

掲載記事のうち、2月25日午前7時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:あなたのAndroidスマホがすぐに修正される見込みがないストーカーウェアに感染している可能性


今日最も広く展開されている消費者向けスパイウェアの1つにセキュリティ上の脆弱性があり、約40万人の携帯電話データが危険にさらされており、その数は日々増え続けている。この脆弱性がすぐに修正される見込みはないため、このガイドでは、あなたのAndroidスマートフォンからこれらの特定のスパイウェアアプリを削除する方法を説明する。そうすることが安全だとあなたが思えばの話だ。

第2位:日本人の赤ちゃんの顔の「かわいさ」には客観的な特徴があった―日本版かわいい乳児顔データセット公開


大阪大学大学院人間科学研究科教授の入戸野宏氏らによる研究グループは2月18日、日本人の乳児の顔の形状を分析し、その「かわいさ」には客観的な特徴が存在することを明らかにしたと発表した。日本人の赤ちゃんの顔をベースにした体系的な研究はこれが初めてとのこと。

第3位:世界初の可動部のない自動運転用ソリッドステートLiDAR開発、見たいところを必要なだけ見る人間の目のような視覚システム実現

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、LiDAR(ライダー)システムの開発・製造・販売を行うSteraVisionは2月21日、世界で初めて、スキャナー(MultiPol)の可動部を一切なくし量産性を向上させたソリッドステートLiDARを開発したと発表した。光の干渉を利用した光コヒーレント技術を組み合わせることで、肉眼では見えない遠方や霧の先が見えるようになり、さらに自動運転車向け認識技術と連動させることで、「見たいところを必要なだけ見る」ことができる人間の目のような機能を持たせることが可能になった。

第4位:テスラ取締役のキンバル・マスク氏、同社がビットコインを購入した際の環境影響について「無知だった」と発言

TeslaのCEOイーロン・マスク氏の弟で、同社取締役のキンバル・マスク氏は、イーサリアム会議のステージ上でのTechCrunchとのインタビューで、Teslaが2021年に暗号資産のBitcoinを15億ドル(約1725億円)分購入し、この通貨で同社の車両を購入できるようにする予定だと発表したとき、同社は環境への影響について「とても無知だった」と述べた。

第5位:これがオーブ型の新ヘッドセット「PlayStation VR2」だ


SonyはCESで、近日発売予定のバーチャルリアリティヘッドセットについて簡単に言及した。これは、Sonyが例年この展示会で行っていることで、詳細についてはあまり説明せず、今後の製品についての耳よりな情報を提供する。そして、もし何かエキサイティングなものを隠し持っているのなら、それを少し見せればいいのだ。

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携帯ゲームPC「Steam Deck」で自分が所有しているSteamゲームは遊べる?Valveが確認用ページを公開

携帯ゲームPC「Steam Deck」で自分が所有しているSteamゲームは遊べる?Valveが確認用ページを公開・日本語対応は計435本

PC Gamer Magazine via Getty Images

間もなく出荷が始まるSteam Deckですが、自分が所有しているゲームがSteam Deckでプレイできるのかは気になるところです。そこで、ValveがSteamライブラリ内にあるゲームがSteam Deckでプレイできるかを確認できるページを公開しました。

Steam Deckのゲームタイトル互換性としては、以前にValveが検証プログラムを発表していましたが、今回公開されたページはそれを自分のライブラリ内にあるゲームで確認できるようにしたもの。検証プログラム発表時に予告されていた内容です。

同ページにアクセスすると、自分のライブラリ内にあるゲームがSteam Deckでプレイできるのかを「確認済みのゲーム」「プレイ可能なゲーム」「非対応のゲーム」として表示されます。

なお、表示されるのは現時点でテスト済みとなったゲームのみで、未テストのものは「未テストのゲーム」として分類されます。

確認済みのゲームは、文字通りSteam Deckでプレイ可能なことが確認されているもの。プレイ可能なゲームは、プレイはできるものの、操作や設定に追加の作業が必要な場合があるとされています。

非対応のゲームは、残念ながらSteam Deckではプレイできないもので、VRタイトルのほか、Fall Guysなどが挙げられています。

Steam DBの情報によると、原稿執筆時点で確認済みとなっているのは408タイトル(このうち日本語対応のものは250本)。プレイ可能は374タイトル(日本語対応は185本)で、未対応は377タイトルと集計されているとのことです。

Steam Deckの日本での発売はもう少し先になりそうですが、それまでに確認済みゲームが増えることを期待したいところです。

(Source:ValveEngadget日本版より転載)

オックスフォード大からスピンアウトした英QuantrolOxは機械学習で量子ビットを制御する

2021年にオックスフォード大学からスピンアウトした新しいスタートアップ、QuantrolOxは、量子コンピュータ内部の量子ビットを機械学習(ML)で制御しようとしている。オックスフォード大学のAndrew Briggs(アンドリュー・ブリッグス)教授、テック起業家のVishal Chatrath(ヴィシャール・チャトラス)氏、同社のチーフサイエンティストのNatalia Ares(ナタリア・アレス)博士、量子技術責任者のDominic Lennon(ドミニク・レノン)博士が共同で設立した同社は西ヨーロッパ時間2月23日、Nielsen VenturesとHoxton Venturesが主導して140万ポンド(約2億1700万円)のシードラウンドを調達したと発表した。Voima Ventures、Remus Capital、Arm(アーム)の共同創業者であるHermann Hauser(ハーマン・ハウザー)博士、Laurent Caraffa(ローラン・カラファ)氏もこのラウンドに投資している。

同社の技術はテクノロジー非依存型で、標準的な量子コンピューティング技術のすべてに適用できる。QuantrolOxのシステムは、手動調整の代わりに、量子ビットの調整、安定化、最適化を大幅に高速化することができるというものだ。QuantrolOxのCEOであるチャトラス氏は、既存の方法はスケーラブルではないと主張し、特にこれらのマシンが改良され続ける限りはそうだと語る。

「ある米国の投資家と話していた時のことです。彼は、量子コンピュータが有用であるために収益を得るのを待つ必要はないという点で、我々は量子業界のスコップやつるはしのようなものだと言いました」とチャトラス氏。「5個の量子ビットから、願わくば数百万個の量子ビットになっていく中で、デバイス特性評価と量子ビットの調整を行うために、毎日私たちのソフトウェアが必要になります」。

同社は当面は、固体量子ビットに焦点を当てるという。フィンランドの研究所との緊密な連携など、同社がアクセスできるシステムであることも理由の1つだが、同社はそのパートナーシップについてはまだ公表する準備ができていない。すべての機械学習の問題と同様に、QuantrolOxは効果的な機械学習モデルを構築するために十分なデータを収集する必要がある。

チャトラス氏も述べているように、我々はまだ量子コンピューティングの非常に初期の段階にいる。しかし、QuantrolOxのようなツールが研究者のデバイステストのプロセスを加速するのに役立つなら、それは業界全体にとって恩恵となる。業界ではすでに多くの企業が、同社の制御ソフトウエアの利用を打診していると同氏は指摘した。

同社は現在7人の正社員を擁しているが、近い将来、さらに10人程度を採用する予定だという。だがチャトラス氏は、今後2年間で人数がそれ以上増えることはないだろうと述べている。「ニッチな分野に特化しているため、大きなチームは必要ありません」と彼はいう。「フルスタックにするつもりはありません。スタックの上位には行きたくないし、スタックの下位はハードウェアですから、そこにも行けません。当社がフォーカスしているのは非常に狭いエリアです」。

今のところQuantrolOxは、量子コンピュータの開発者とより多くのパートナーシップを構築することに注力している。チームは物理的なマシンだけでなく、これらのシステムと統合できるように、それらを制御するソースコードにもアクセスする必要があるため、かなり深いパートナーシップとなるからだ。

もちろん、今の業界には標準規格がほとんどないという問題があり、チャトラス氏はそれを痛感している。「量子産業が成功するためには、我々のようにある特定の分野に超特化したスタートアップがたくさん必要です。超特化した企業でなければ、規模の経済が得られないからです」と彼はいう。「フルスタックの(1つですべてなし得るという)ストーリーを語るのは、遅かれ早かれ止めなければならないと思います。人々は、企業のエコシステムを構築し始める必要があります」。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Den Nakano)

デザイントークンやアセットを自動的に収集、保存、配布することでVIの統一を支援する「Specify」

Figma(フィグマ)とGitHub(ギットハブ)の共通言語を作るスタートアップ、Specify(スペシファイ)をご紹介しよう。Specifyは、あなたのデザイントークンとアセットのためのセントラルリポジトリとAPIとして機能する。言い換えれば、デザイナーは標準的なFigmaファイルを更新することができ、変更はGitHubリポジトリに反映される。

このスタートアップは、Eurazeoが主導する400万ユーロ(約5億1600万円)のシードラウンドを調達した。BpifranceのDigital Ventureファンド、360 Capital、Seedcampも同ラウンドに参加した。EurazeoのClément Vouillon(クレマン・ヴイヨン)氏やeFounderのDidier Forest(ディディエ・フォレスト)氏など、ビジネスエンジェルも出資している。

組織がデザインに本腰を入れ始めると、ボタン、アイコン、フォント、ロゴ、色など、統一したスタイルでデザインシステムを作りたくなるものだ。例えばログインページは、Facebook(フェイスブック)、Twitter(ツイッター)、Gmail、Pinterest(ピンタレスト)ではそれぞれまったく異なる印象を与える。

とはいうものの、デザイナーと開発者の双方がこれを手作業で行っていることが多いのが現状だ。デザイナーはConfluenceやNotionでデザイントークンやアセットを使ってドキュメントページを作成する。そして開発者は、手作業でドキュメントをチェックし、最新のエレメントを使用しているかどうか確認しなければならない。

画像クレジット:Specify

Specifyは、デザイントークンやアセットを保存するセントラルリポジトリとして機能する。ユーザーはまず、1つまたは複数のソースと1つまたは複数のデスティネーションでSpecifyを接続する。

例えばSpecifyを使い、Figmaファイルから情報やデータを直接取得することが可能だ。そしてデザイナーはFigmaで何かを更新することができ、その変更はSpecifyのリポジトリに反映される。Specifyは単一の真実のソースとして機能するわけだ。

だが、変更はアプリケーション内でより速く反映されることもある。何かが更新されると、Specifyは自動的にGitHub上でプルリクエストを作成することができ、コマンドラインインターフェイスもある。開発者はワンクリックで変更を受け入れることができる。このようにして、色、ロゴ、フォントなどが、手動で作業することなく更新される。

Specifyは、自社製品の対象をFigmaとGitHubに限定するつもりはないようだ。この先、Dropbox(ドロップボックス)やGoogleドライブなど、さらに多くのデータソースを導入する予定だ。そしてNotionなど、より多くのアップデート先に対応する予定もあるという。特に、1つのデザイン変更を複数の更新先にプッシュできる機能があれば便利だろう。

製品ビジョンは明確だ。Specifyは、デザインチームを一元化する接着剤になりたいと考えている。「当社のアプローチは、Segment(セグメント)とよく似ていますが、デザインのための製品だと考えています」と、共同創業者兼CEOのValentin Chrétien(ヴァランタン・クレティアン)氏は筆者に語った。

画像クレジット:Specify

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(文:Romain Dillet、翻訳:Den Nakano)

上位100のサブスクアプリの2021年売上は前年比41%増の約2.1兆円

モバイルパブリッシャーが、Apple(アップル)やGoogle(グーグル)のようなプラットフォームの手からサブスクリプション収入をより多く手にするために戦っているのは不思議ではない。新しいレポートによると、ゲーム以外のサブスクアプリトップ100の消費者支出額は、2020年の130億ドル(約1兆5000億円)から2021年には41%増加して183億ドル(約2兆1000億円)になった。

そしてこれは、アプリ分析会社Sensor Towerの最新データによると、2021年に総額1316億ドル(約15億2000億円)に上る、アプリとゲームの両方におけるアプリ内課金の全体収益のほんの一部(14%)だ。

しかし、ゲーム以外のサブスクアプリが占める割合は拡大している。ちなみに2020年、ゲーム以外のアプリのサブスク収入は、その年の消費者支出総額のわずか11.7%にすぎなかった。

画像クレジット:Sensor Tower

また、2021年のアプリ内課金売上高の前年比41%増は、2019年から2020年にかけての34%増より強い伸びを示していることもレポートで明らかになっている。

もちろん、ここには世界的な新型コロナウイルスの大流行が影響しているのかもしれない。2020年以降、世の中がロックダウン対策やバーチャルでの仕事や学校に適応し、買い物やイベントなど、これまで対面で行っていたことをオンラインで行うようになったため、消費者は買い物、エンターテインメント、ヘルス&フィットネス、仕事、教育などのためにますますアプリを利用するようになった。

サブスクにかかるモバイル支出に関しては、米国の数字が世界的な傾向を反映していることがデータで示されている。米国の消費者は2021年、トップ100のゲーム以外のサブスクアプリに85億ドル(約9800億円)使い、2020年の59億ドル(約6800億円)から44%増えた。前年の28%増を大幅に上回る成長だ。2021年の米消費者のアプリ内課金への支出は、合計で407億ドル(約4兆7000億円)に上った。

画像クレジット:Sensor Tower

サブスクはまた、アプリストアの収益を増やす主流手段でもある。第4四半期には、米国で売上高上位100のアプリのうち、90がサブスクを展開していた。この数字は、2020年第4四半期の91、2019年第4四半期の93からわずかに減少している。

サブスクの売上高に関しては、AppleのApp StoreがGoogle Playを引き続き上回っている。App Storeのゲーム以外のサブスクアプリのトップ100の2021年の売上高は135億ドル(約1兆5580億円)で、Google Playの48億ドル(約5540億円)の3倍近くだった。App Storeは2020年の103億ドル(約1兆1880億円)から31%増、Google Playは27億ドル(約3115億円)から78%増えている。

米国でも、やはり同様の傾向が見られた。App Storeの上位100のサブスクアプリの売上高は、2020年の45億ドル(約5190億円)から前年比で33%成長し、2021年には60億ドル(約6920億円)となった。一方、Google Playのサブスクアプリの売上高は、2020年の14億ドル(約1615億円)から79%増え、2021年には25億ドル(約2880億円)に達した。

画像クレジット:Sensor Tower

消費者支出に関しては、他のストリーミングや出会い系アプリと並んで、Googleのアプリが上位を占めている。Googleの定額制サービスGoogle Oneは2021年に、アプリを通じて世界で11億ドル(約1270億円)を売り上げ、そのうち6億9800万ドル(約805億円)は米国でのものだった。また、GoogleのYouTubeアプリは同年に12億ドル(約1380億円)を売り上げ、そのうち5億6650万ドル(約650億円)が米国でのものだった。

その他の米国で売上高上位のアプリには、Disney+、HBO Max、Tinderなどがある。世界的にはPiccomaがそのリストに加わる。

画像クレジット:Sensor Tower

2021年にアプリストアのビジネスモデルに対する規制当局の監視が強化されたことを考えると、このようなサブスク市場の分析は興味深いものだ。

韓国のように、AppleとGoogleのアプリ内課金に対する支配力を制限するための新しい法律まで成立した市場もある。現在、オランダの規制当局は、出会い系アプリの決済でAppleが独占禁止法に違反しているとして、同社と行き詰まった状態になっている。また、このデータはゲーム以外の動向を調べたものにすぎないが、アプリストアがゲーム会社から得る額も巨額だ。そのため、たとえばEpic Gamesは、自社の独占禁止法に関する裁判の判決を不服として控訴している

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

Varosは自社のパフォーマンス指標を他社と比較できるデータ共有ツール

ある分野で上場企業の1社が厳しい四半期を報告すると、同じ分野の他の企業の株価が下がる傾向にある。しかし、非上場企業の場合、なぜ先週のコストが増加したのか、それは自社の遂行能力によるものなのか、それとも他の企業でも起こっていることなのか、正確に把握することは難しい。

サンフランシスコとテルアビブに拠点を置くVaros(ヴァロス)は、顧客獲得コストなどの主要なパフォーマンス指標について、その企業が同業他社と比較してどうなのかということを解明している。

CEOのYarden Shaked(ヤーデン・シャケッド)氏は、CTOのLior Chen(ライオー・チェン)氏と父親のGil Shaked(ジル・シャケッド)氏とともに2021年にVarosを設立し、Y Combinator(Yコンビネーター)の2021年夏のバッチに参加した。彼らは、顧客の技術スタックとのAPI統合を通じて、データをクラウドソースするデータ共有ツールを作り上げた。チェン氏によると、データはリアルタイムで取得され、顧客によるメンテナンスは必要ないという。

「eコマース企業はデータを重視しますが、一般的には自社の過去のデータを参照することしかできません」と、ヤーデン・シャケッド氏はTechCrunchに語った。

「無視界飛行しているようなものです。自社のパフォーマンスが良いのか悪いのかわからず、KPI(重要業績評価指標)が良いのか悪いのかも答えることができず、何が問題なのかわからないため、どのレバーを引けばよいのかもわからないのです」と、同氏は続けた。「その一方では、トレンドもあります。顧客獲得コストが急上昇した場合、それは市場のトレンドである可能性があります。私たちは、データ連携を通してその解決策を提供します。人々が入力したデータを、我々は匿名化して、洞察のために顧客に返します」。

Varosでは、すべてがセルフサービスだ。顧客がデータを接続すると、データはさまざまな階層に分類され、さまざまな方法でタグ付けされる。ユーザーはダッシュボードを使って、例えば月に10万ドル(約1150万円)をデジタルマーケティングに費やしているアパレル企業の一定期間の平均受注額と比較し、その期間の推移をグラフで見ることができる。

Varos創業者。左からジル・シャケッド氏、ヤーデン・シャケッド氏、ライオー・チェン氏(画像クレジット:Varos)

その中でも特に人気が高いのが、月曜日の朝に提示されるVarosのトレンドレポートで、ユーザーは週ごとのデータと週ごとのベンチマークを比較することができる。「これは、ユーザーが自社のパフォーマンスを直接の競争相手と比較して理解するのに役立つ、新しいカテゴリーのデータ分析です」と、ヤーデン・シャケッド氏は付け加えた。

同氏によると、この種のデータ連携は、農業や旅行、そして競合他社のデータに基づいて評価を行うレイトステージ投資など、他の業界では行われているが、eコマースやSaaSの分野では比較的新しいものだという。Varosは2021年8月にソフトローンチして以来、すでに大きな支持を得ており、現在は250以上のユーザーが、Varosにマーケティングデータを入力し、同業他社との比較を行っている。

Varosは、データのマーケットプレイスを構築するとともに、無料でサービスを提供してきたが、複数の有料顧客も抱えている。この需要に対応するため、同社はIbex Investors(イベックス・インベスターズ)が主導する400万ドル(約4億6000万円)のシード資金調達を実施した。このラウンドには、Y Combinatorの他、元Thomson Reuters(トムソン・ロイター)CEOのTom Glocer(トム・グローサー)氏、Bonobos(ボノボ)共同創業者のAndy Dunn(アンディ・ダン)氏、Farmers Business Network(ファーマーズ・ビジネス・ネットワーク)共同創業者のAmol Deshpande(アモル・デスパンデ)氏、Crossbeam(クロスビーム)CEOのBob Moore(ボブ・ムーア)氏、Connectifier(コネクティファイア)共同創業者のJohn Jersin(ジョン・ジャーシン)氏などの個人投資家が参加した。

米国時間2月23日に正式にローンチしたVarosは、マーケティングKPIからスタートしたが、それだけに留まるつもりはない。Shopify(ショッピファイ)、Google(グーグル)、TikTok(ティックトック)の統合など、収益の伸びやコンバージョン率を追加していくだけでなく、金融、製造、販売など、他の分野にも拡大していく予定だと、ヤーデン・シャケッド氏は述べている。

同社は1カ月前まで創業者3人だけだったが、現在はプロダクトとデザインを中心に7人のチームで運営している。2022年末までに人員の倍増を計画しているという。

「私たちの仮説が機能していることをうれしく思います」と、ヤーデン・シャケッド氏は語っている。「以前、Varosがなかった頃は、何かを見つけたり変更したりすると、どこがうまくいっていないのかを理解するための学習期間が必要になる傾向にありました。現在は、Varosがあれば、自分の目で見たものに基づきながら、創造性に集中することができます」。

画像クレジット:Varos

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

不正なサードパーティアプリの発見を支援するAstrix Securityがステルスから登場

サードパーティアプリ統合のためのアクセス管理を提供するイスラエルのサイバーセキュリティスタートアップAstrix Security(アストリックス・セキュリティ)が1500万ドル(約17億円)の資金調達によりステルスから姿を現した。

このスタートアップは、イスラエルの有名な諜報部門8200部隊の元メンバーであるAlon Jackson(アロン・ジャクソン)CEOとIdan Gour(アイダン・グール)CTOが2021年に共同で創業した。組織が重要システムに接続されたサードパーティアプリの複雑なウェブを監視・管理できるようにする。

リモートワークへの、転じてクラウドベース環境への移行が広まった結果、組織が使用する統合アプリケーションの数は過去2年間で劇的に増加した。Astrixによると、企業は重要システムへのユーザーアクセスの管理にはほぼ対応しているものの、APIアクセスの管理に関しては大半の企業が不十分であり、サプライチェーン攻撃、データ流出、コンプライアンス侵害などにさらされ、脆弱性は増している。そこで同社は、完全な統合ライフサイクル管理を実現するプラットフォーム、Astrix Security(アストリックス・セキュリティ)を開発した。

「現在のソリューションは、採用したいアプリのセキュリティの状態を評価するセキュリティスコアを提示しています。NoName(ノーネーム)のような他のソリューションは、API セキュリティに着目しています。これは、あなたが開発し、他の人が利用するAPIに焦点を当てています」と、Astrix創業前にArgus(アルゴス)でR&D部門のトップを務めていたジャクソン氏はTechCrunchに述べた。「私たちは、Salesforce(セールスフォース)のCRMやGitHub(ギットハブ)の知的財産など、サードパーティを通じて行われる統合を調査します。これらのシステムはすべて、あなたが開発したわけではありませんが、あなたはそれらに対してAPIアクセスを有効にしているのです」。

Astrix Securityは、エンタープライズアプリケーションに接続するすべてのサードパーティのインベントリを即座に提供する。このような統合やローコード、ノーコードのワークフロー構成における変更や悪意のある異常を自動的に検出し、リアルタイムに修復を行う。

この技術があれば、2021年発生したCodeCovのハッキング事件は未然に防ぐことができたとジャクソン氏は主張する。同事件で攻撃者は、同社のソフトウェア監査ツールに侵入し、数百の顧客ネットワークへのアクセスを得た。

「この出来事は、まさに私たちが開発しているものが目指すところです。この開発者は、GitHubにある自分のコードレポジトリの上に、新しいサードパーティ接続を追加しただけなのです。彼はそれを削除しましたが、アクセスを取り消さなかったため、知的財産全体がダークウェブで販売されることになりました」とジャクソン氏は語った。

Astrix Securityはすでに、テクノロジー、ヘルステック、自動車などの分野にまたがる多くのグローバル企業顧客の手に渡っている。ジャクソン氏によると、Bessemer Venture PartnersとF2 Capitalがリードし、Venrockと20以上のサイバーセキュリティ・エンジェル投資家が参加した1500万ドルのシード投資を、現在20人のチームの拡大と、市場開拓強化に使う予定だという。

画像クレジット:Dmetsov / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

アムステルダムApple Store人質立てこもり犯、約260億円相当の暗号資産を身代金として要求も警察突入時のケガで死亡

アムステルダムApple Store人質立てこもり犯、約260億円相当の暗号資産を身代金として要求も警察突入時のケガで死亡

LAURENS BOSCH via Getty Images

2月22日、オランダ・アムステルダムのApple Storeで発生した人質立てこもり事件は、銃を持った犯人が身代金として2億ユーロ(約260億円)相当の暗号資産を要求していました。しかしその後人質は逃げ出し、警察のロボットが飲料水を届けるよう装って近づいた際、油断した犯人に対して警察がパトカーで突入、跳ねられた犯人は逮捕翌日に死亡しました。

アムステルダムの警察署長フランク・パウ氏によると、犯人から逃げ出した人質の行動が膠着していた事件の突破口になったとのこと。パウ氏は「彼のとっさの判断がなければ、長く面倒な夜になっていたかもしれない」と人質を称賛しています。

ランサムウェアが企業や公的機関のPCネットワークを侵害した際にシステムに耐する身代金として暗号資産を要求するのはよくあることですが、生身の犯罪者が生身の人質を取った際に現金ではなく暗号資産を要求する事件もたまに発生しています。

たとえば2017年にウクライナで発生した英暗号資産取引所のCEO誘拐事件では、100万ドル(約1億1500万円)相当のBitcoinと引き換えに人質は解放されたものの、犯行グループはそのまま逃げおおせています。

いくら巨額になっても持ち運びに困らない暗号資産は、現実世界の人質立てこもり・誘拐犯にとっても身代金として都合が良いものです。かつて映画やドラマなどでよく見かけた、札束をバッグに詰め込んで逃走するような泥棒は、いまや絶滅危惧種なのかもしれません。

(Source:ReutersEngadget日本版より転載)

米国郵便公社が次世代配送車にガソリン車を選択、EV派のバイデン大統領はがっかり

米国郵便公社(U.S. Postal Service、USPS)は最初の計画どおり、同公社の郵便配達車隊の車両の90%を更新し、Oshkosh Corp.のガソリン車を採用する。

この決定は、バイデン政権の希望を打ち砕く。政権はこの独立機関を説得して、ほとんどが電気自動車で構成される車隊に変えるよう望んできた。また少なくとも短期的には、推計で合計60億ドル(約6933億円)となる契約の一部を、いかなるEVメーカーといえども手にする機会はない。郵便公社は環境保護庁のコメントを検討して、同公社の次世代配達車両事業が環境に及ぼす影響を評価し、その決定の最終決裁をした。その概要は384ページの文書で発表された。

その承認された事業では、USPSはウィスコンシンのOshkoshから5万台から16万5000台の郵便トラックを購入する。そして10%は電気自動車になるが、圧倒的多数の最大90%まではガソリン車になる。

USPSの総裁でCEOのLouis DeJoy(ルイス・デジョイ)氏は、声明で次のように述べている。「この問題の検討に際して、現状の古い車隊および私どもの脆弱な財務状況と、車両と安全性の緊急の必要性を考慮して、電気自動車の車隊を採用することは高望みだと判断された。私たちの財務的位置づけが、現在進んでいる10年計画、Delivering for America(米国のための配達)の進捗により改善されていけば、内部的または議会筋よりの新たな資金調達により、電気自動車のさらなる追求を継続できるだろう。

しかしながら車隊の更新は、待ったなしのプロセスであり、米国郵便公社の社員は男女を問わず、安全できれいな車両により私どもの普遍的なサービス義務を満たし、1週間に6日、すべての天候と地域の1億6100万の住所への配達を行えることを、もう待ちきれないほど待っていた」。

USPSによると同公社が選んだOshkoshの代替車両は、最も実用性が高いと判断された。なぜなら、バッテリー駆動の電気自動車は総保有コストがガソリン車よりも高いからである。USPSによると、同公社が新たな車隊の電気自動車の比率を10%に抑えたのは、そのためだ。

この決定は、バイデン政権とElectrification CoalitionなどのEV推進団体から非難された。

Electrification CoalitionのBen Prochazka(ベン・プロチャズカ)理事長は「USPSがその不透明で欠陥のある環境影響分析に対する正当な批判を無視し、ほとんどがガソリン車の新たな車隊を選んだことは、失望を通り越している」と述べている。

USPSは、2015年に新車両の探索を開始した。この次世代車両は人間工学的な改良が為され、エアコンと暖房を備え、360度カメラや最新のブレーキ、トラクションコントロール、エアバッグ、フロントとリアの衝突回避システムでビジュアルと音声の警告があるもの、そして自動ブレーキなどの安全技術を装備している必要がある。また、積載量も前より大きくなければならない。

2021年、USPSはOshkosh Defenseと契約したことを発表した。EVスタートアップでトラブルがあった上場企業Lordstown Motorsは契約を失った

画像クレジット:USPS

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

労働者が「フレキシブルな仕事」に何を求めているのか、WorkWhileは新たな見解を示す

WorkWhile(ワークワイル)の共同設立者であるJarah Euston(ジャラ・ユーストン)氏は、労働者を柔軟で信頼できる仕事に結びつけるという使命感を持っており、そう考えるのは彼女1人だけではない。しかし、彼女が際立っているのは、彼女が今日の労働市場の多くは誤った考え方の上に成り立っていると考えていることだ。

「私は、労働者が求めるのは無限の柔軟性だという考えには賛成できません」と、彼女はTechCrunchのインタビューで語っている。「それはおそらく、時給制の仕事で家賃を払おうとしたことがない人たちによるもので、請求書を支払うだけの十分な収入がある見通しや保証をするものではありません」と語る。

彼女はさらに「労働者は柔軟なスケジュールを必要としていますが、無限の柔軟性を求めているわけではありません【略】誰かがUberのドライバーになり、30分運転して、3時間ビーチに座って、さらに10分運転したいといった考えは、市場が自ら語った偽りなのです」と述べた。

労働者が何を得て、どのくらいの頻度でそれを得ることができるのかを理解するのに役立つプラットフォームがないことが、ユーストン氏が共同創業者のAmol Jain(アモル・ジャイン)氏とともにWorkWhileを立ち上げることに興味を持たせるきっかけとなった。2019年に設立されたWorkWhileは、時間給労働者を空いているシフトにつなげるだけでなく、翌日払い、遠隔地からのヘルスサービスへのアクセス、給与の透明性といった特典を提供する。

WorkWhileは、本拠地であるサンフランシスコ・ベイエリアをはじめ、ロサンゼルス、アトランタ、マイアミ、北ニュージャージー、アトランタ、シアトル、ヒューストン、ニューヨーク・メトロなど13の市場でサービスを運営している。ユーストン氏のビジョンに沿ったこの成長は、投資家の大きな関心を集めている。

このスタートアップは本日(米国時間2月23日)、Reach Capital(リーチ・キャピタル)が主導し、Khosla Ventures(コスラ・ベンチャーズ)、F7 Ventures(F7ベンチャーズ)などの既存投資家、Chamaeleon(カメレオン)、Position Ventures(ポジション・ベンチャーズ)、Gaingels(ガインガル)などの新規投資家が参加して、1300万ドル(約14億8900万円)のシリーズAを最近調達したと発表している。

最終的にWorkWhileが目指すのは、シフトだけでなく、常駐サポートやサービスも含めて(週の働き方にかかわらず)、より離れづらい労働者を持つマーケットプレイスを構築することだ。Arlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏が設立したRunner(ランナー)は、最近、同じようなアプローチで立ち上がった。パートタイムのオンデマンド労働者をW-2社員として雇用し、より安定した仕事を提供し、その後、テック関連のオペレーションでの仕事へとつなげるという方法だ。Bluecrew(ブルークルー)も同様のサービスを提供しているが、バーテンダー、イベント管理、警備、データ入力、カスタマーサポートなどの仕事を紹介する前に人材を雇用している。

安定した柔軟な仕事への関心が高まっているのは、大型辞職の反動もあるだろうが、フリーランス経済が成熟し、非定型の仕事を求める労働者でもサポートを求めるようになったことを示す、さらなるサインでもある。WorkWhileによると、Advance Auto Parts(アドバンス・オート・パーツ)、Ollie’s Bargain Outlet(オーリーズ・バーゲン・アウトレット)、Good Eggs(グッド・エッグズ)、Thistle(シスル)、Edible Arrangements(エディブル・アレンジメンツ)、Dandelion Chocolate(ダンデライオン・チョコレート)、Bassett Furniture(バセット・ファニチャー)といった企業でシフトが埋まっているとのことだ。

画像クレジット:WorkWhile

ユーストン氏によると、WorkWhileのプラットフォームで働く人の80%が週に30時間以上働きたいと考えており、60%が週に40時間以上働きたいと考えているという。「WorkWhileでは、『ギグ』という言葉は使わないようにしています。ギグプラットフォームと見られたくありません」とユーストン氏はいう。「安定した給料を得るための最高の場所として見てもらいたいのです」と語る。

労働者に優しいという売り文句に加え、WorkWhileは労働者にサービスの利用料を一切課さない。その代わり、WorkWhileを利用する企業には、労働者に支払われる料金に応じたパーセント型の手数料を請求することで利益を得ている。もちろん、雇用主にとっては、より信頼性が高く、離職率の低い労働力が期待できる。

ユーストン氏によると、同社は「人々が仕事についてどう感じるか」を示すデータポイントを見つけ、それを基にプロフィールを作成することが重要であるという。例えば、WorkWhileに入社した社員は、まずオリエンテーションを受け、その後、行動テストを受けることになる。

「難しくはありませんが、まさに指示に従っていくテストです」と彼女はいう。「1年に何回病欠の電話をしたかや、他の人は1年に何回病欠の電話をすると思うかといった、職場を取り巻く意識について確認しているのです」と語る。WorkWhileの現在の欠勤率はわずか5%で、予定されている労働者がシフトに参加するかどうかを予測する精度は76%だ。

このような方法でデータポイントを追跡することの課題は、歴史的に見過ごされてきた人々や社会経済的に低いバックグランドを持つ人々に不釣り合いに重くのしかかることである。結局のところ、このスタートアップは、主にパートタイムでフレキシブルな仕事を探している人向けではない。それは市場のすべての層を取り除いてしまいかねない。もう1つ興味深いデータがある。WorkWhileのプラットフォームで働く時間給労働者の約28%が暗号資産を所有しているということだ。

ユーストン氏によると、アプリでは「あえて意図的に」人口統計学的な質問をせず、前述の理由から予測モデリングの要因に年齢を含めないようにしているとのことだ。WorkWhileは、任意の労働者調査に基づいて、ユーザーの80%がPOC(有色な肌を持つ人々)であると認識しているという。

「私たちのモデルの哲学は、人々が働くことを妨げるのではなく、むしろリスクを管理することです。例えば、誰かがシフトに現れる可能性が50%未満であると予測した場合、顧客の要求が満たされるように予備の労働者を送ったほうがよいでしょう」と彼女は付け加えた。「我々のモデルが間違っていて、労働者がシフトに現れた場合は、そのバックアップの労働者には支払いは行われますが、顧客には請求されません」と語る。

同社は、誰もが働こうとすることを制限していないと主張しているが、より高い評価を受けた人に新しいシフトの最初の機会を優先して提供している。「将来的に、現場への移動が困難かもしれないと私たちが予測する人たちへのサポートを充実させることも視野に入れています。[…]もし私たちが、あなたが車を持っていないとわかった場合、相乗りオプションを提示することを検討することができます」と彼女は言った。

画像クレジット:WorkWhile

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ML可観測性プラットフォームのAporiaが約28.8億円のシリーズA資金を調達

テルアビブに拠点を置くAporia(アポリア)は、企業がAIベースのサービスを監視・説明できるように支援するスタートアップ企業だ。同社は米国時間2月23日、Tiger Global(タイガー・グローバル)が主導する2500万ドル(約28億8000万円)のシリーズA資金調達ラウンドを実施したことを発表した。このラウンドには、新たに投資に加わったSamsung Next(サムスン・ネクスト)の他、以前の投資家であるTLV Partners(TLVパートナーズ)とVertex Ventures(ヴァーテックス・ベンチャーズ)も参加、同社の調達資金総額は3000万ドル(約34億6000万円)に達した。

2021年サービスを開始した当初は、オブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームであることに正面から取り組んでいた同社だが、それからチームはその網を少し広げ、フルスタックのML(機械学習)モニタリング・プラットフォームとなっていった。

「今のところ、私たちのソリューションには4つの柱があります」と、Aporiaの共同創業者兼CEOであるLiran Hason(リラン・ハソン)氏は説明する。「1つ目の柱は可視性、つまりダッシュボード機能のようなもので、予測値などを見ることができます。2つ目は、かなり新しいものですが、説明可能性です。すでに何人かのユーザーには使っていただいています。3つ目がモニタリング、そして4つ目が自動化ですが、これも新しいものです」。

自動化は、もちろん、どのような監視サービスにとっても、明白な次のステップである。ユーザーは普通、受け取ったアラートに対して、何らかのアクションを起こしたいと思うからだ。Aporiaは、すでにその監視サービスにドラッグアンドドロップツールを取り入れていたので、この機能もすぐに追加できた。この自動化機能を拡張して、より複雑なユーザーケースに対応できるようにしたいと、ハソン氏は言及している。

また、説明可能性も、顧客からのフィードバックを基に追加した機能だ。企業には規制当局から、自社のAIモデルが何を行っているかを説明できるように求める圧力が増している。Aporiaは、モデルがなぜそのような予測をするのか、また、さまざまな入力パラメータがどのように予測に寄与しているのかを、ユーザーが理解できるように支援する。

フルスタックなML可観測性プラットフォームになるというミッションは、顧客の心に響いているようだ。Aporiaによると、同社のサービスを利用する顧客の数は、直近の半年間だけで600%増加したという。現在はその顧客に、Lemonade(レモネード)やArmis(アーミス)などの企業が含まれている。

「Aporiaは起ち上げ以来、信じられないような成長を見せ、驚くべき勢いで、急速にMLの可観測性の分野におけるリーダーとなっています」と、Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・クルティウス)氏は述べている。「グローバル企業の経営幹部は、人工知能のメリットと、それが事実上すべての産業にどれほど影響を与えているかを理解していますが、リスクによって夜も眠れない状態になっています。Aporiaは、すべての組織が、AIの責任ある利用を保証するために求めるソリューションになると位置付けられます」。

画像クレジット:Aporia

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【レビュー】Angry Miao・Am Hatsu、このメカニカルキーボードは「別格」だ

ここ数年、メカニカルキーボードの市場は活況を呈していが、パンデミックの影響で、多くの人がさらに自宅の設備増強を行っている(補助金の使い道の1つだ)。現在は、AliExpress(アリエクスプレス)の20ドル(約2300円)の特売品から600ドル(約6万9000円)のカルトキーボードまで、キートップやスイッチなどがついていない状態のものも選べる。そんな中に登場したのが、Angry Miao(アングリー・ミャオ)のAm Hatsu(アム・ハツ)だ。アルミニウム製のボディを持つワイヤレスの格子配列式分離型エルゴキーボードとなる。価格は1600ドル(約18万3000円)(なおスイッチとキートップは付いている)。ワイヤレス充電が可能で、同社のCybermat(サイバーマット)を買えば、充電のことを考える必要はなくなる。そのためには、さらに380ドル(約4万4000円)が必要だが。

つまり、2000ドル(約23万円)でまったく新しいタイピング体験と、キツイ学習曲線が得られるわけだが、なかなか慣れるのは難しいだろう。Angry Miaoによると、今のところAm Hatsuの再生産の予定はないとのことなので、二次市場での価格は当初の小売価格よりもかなり高いものになるだろう。

さて、最初にこれだけは言っておきたいことがある。これにお金を払う価値があるかどうかは、自分自身で判断するしかない。この価格では初めから却下するか、賢い暗号資産投資をした自分へのご褒美に衝動買いするかのどちらかだと思う。その中間に購買層があるのかどうかはわからない。

画像クレジット:TechCrunch

メカニカルキーボードが初めてで、自分でカスタマイズしたいのなら、250ドル(約2万9000円)以下ですばらしい体験を得られる。例えばGMMK ProKeychron Q2(または次世代のQ3)、Cannonkeys Bakeneko65(キャノンキーズ・バケネコ65)などだ。あるいは、カスタマイズもいらないという人は、Leopold(レオポルド)やDucky(ダッキー)を買って済ませれば良い。しかし、分離型エルゴキーボードを購入しようとすると、選択肢は少なくなってしう。それでも似通ったErgodox EZ(エロゴドックスEZ)やZSA Moonlander(ZSAムーンランダー)がはるかに安価に提供されているし、さらに優れた点もいくつか持っている。また一体型ではあるが、Kinesis Advantage 2(キネシス・アドバンテージ2)が同じような凹型格子配列式を採用している。また、ただ格子配列式キーボードに触れてみたいだけなら、Drop Planck(ドロップ・プランク)やPreonic(プレオニック)が入門用としては最適だろう。

あまり聞いたことがないかもしれないが、Angry Miaoはメカニカルキーボードの市場ではまったく新しい存在というわけではない。背面に大型のLEDパネルを搭載したCyberboard(サイバーボード)は、カルト的な人気を博し、好評のうちに3回の生産分を完売した。2022年3月には映画「マトリックス」をテーマにした新しいCyberboardが発売されるそうだ。

Angry MiaoのCyberboard(画像クレジット:Angry Miao)

Am Hastuは、Cyberboardとは異なる市場向けであり、万人に適しているわけではない。この新しいレイアウトを使いこなせるようになるだけでも大変なことだ。左右に別れた従来型の千鳥格子式キーボードに比べて、直線状に配置されたキーのおかげで、肩の筋肉の緊張を緩めることが可能で、手首をほとんど動かさずに済むというメリットがある。しかし、右手の親指でスペースやCTRL(コントロールキー)を押したり、左手の親指でバックスペースやエンターキーを押したりすることを、再学習することを考えてみて欲しい。またその次には、数字を入力するためのレイヤリングシステムを学ぶ必要がある。なぜならAm HatsuにはF(ファンクション)キーや矢印キーはもちろん、数字キー列も無いからだ。メカニカルキーボードのコミュニティで「65%キーボード」が人気なのには理由がある。65%キーボードは(Fキーは除くが)矢印キーや数字キー、そしてページアップ、ダウンのキーもコンパクトに収納している。

私は現在、Am Hatsuを1週間使ったところで、レビューをタイプしているところだ。しかしこの内容は気の弱い人向けではない。私の普段のタイピング速度は、1分間に80~90語程度で、特別なものではない。それが使い始めには15語近くまで下がり、1週間後には徐々に30語へと戻った。良いとは言えないが、Am Hatsuを非難したいわけでもない。それは慣れの問題なのだ。

画像クレジット:TechCrunch

だが、思い切って購入してみると、ハード自体は本当に美しいのだ。Angry Miaoは、Am Hatsの特徴的なアルミボディが5軸CNCマシンでどのように加工されたかについて、饒舌に語っている。それは簡単なプロセスではないことを示している。このビルドクオリティは別格だ。これに匹敵する分離型エルゴキーボードは見つからないと思う。Angry Miaoによると、このデザインはHBOのSFドラマWestworld(ウェストワールド)にインスパイアされたものだという。白と黒の配色や全体的なデザイン言語がそれを物語っているような気がするが、大事なのはそれだけではない。Angry MiaoのNFT(非代替性トークン)スキームについてはあまり語らない方がいいと思うが(これはすべてのNFTに言えることだ)、このキーボードを手に入れるためには、基本的にOpenSea(オープンシー)でNFTを購入し、それを物理的なボードと交換する必要がある。

デザインは、各半分の内側にあるオンオフを示す内側の小さなLEDの帯によってアクセントがつけられている。このLEDはそれぞれの充電状態も示している。特に邪魔にならず、キーボードに彩りを添えてくれる存在だ。

バッテリーはフル充電から約2週間の日常使用が可能とされている。Cybermatを使う場合は、そこから充電が行われるので充電状態を気にする必要はなくなる。それ以外の手段としては、両サイドの下部にUSB-Cポートがある。それはあまり便利とはいえない場所だ。これは、Cybermatsをより多く販売するための手段なのか、それとも機能よりもデザインを優先させた結果なのか。デザインチームは明らかにポートやネジを隠そうとしており、充電ポートがあるのは底面だけになっている。Appleの悪名高いMagic Mouse 2(マジックマウス2)を見習ったのかと思ってしまうほどだ。

画像クレジット:TechCrunch

しかし、Bluetooth接続は非常によく機能し、遅れを感じることはなかった。なお予想通り、パソコンに有線で接続してもキーボードは使えない。Bluetooth専用なのだ。

理解はできるが気に入らないデザイン上の決定は、1600ドル(約18万3000円)もするのに、Angry MiaoのIcy Silver(アイシーシルバー)というスイッチしか使えないということだ。これはリニアスイッチだ(Cherry Brown[チェリーブラウン]スイッチのような触覚的な切り替わりはない。Cherry Brownが客観的に見て最悪のスイッチであるというジョークを思い起こすことにしよう)。私はリニアスイッチが好きなので、これはこれでいいのだが、このボードはいわゆる「ホットスワップ」ではないので、スイッチを自分の好みに近いものに変更することはできない。

ちなみに、TTC製の「Icy Silver」スイッチには、2段式の長いスプリングが採用されており、作動には45グラムの初期力が必要だ。これは、作動力50グラムの人気スイッチGateron Yellow(ゲートロンイエロー)よりも少し軽く、Angry MiaoのスイッチのベースとなったTTC Icy Speed(TTCアイシースピード)よりも若干重い。キーボードオタクにとって最も重要なことは、このスイッチが本当にスムーズで、いまのところ引っかかりや雑音をまったく感じないということだ(もしそれがピンとこない場合には、ただ良いことだと思っていて欲しい)。

キートップは、あまり好きではない。これは、Angry MiaoのシースルータイプGlacier(グレイシャー)キートップのバリエーションで、私の好みからすると、少々薄すぎて滑らかすぎる。見た目はすばらしいが、PBT(ポリブチレンテレフタレート)セットと交換したいと考えている。しかしこの変わったレイアウトに適したキートップのセットを見つけるのは難しいだろう。

画像クレジット:TechCrunch

メカニカルキーボードにこだわりのある人ならこう訊ねるだろう「でも、良い打鍵音(thocc)はするの?」と。「Thocc」とはキーボードの音を形容する表現で、多くの人が好むという太く深い打鍵音を意味しているが、実際には皆の合意がとれているようなものではない。Am Hatsuにはあの深い音はない。どちらかというと高めの音だが、決して不快なものではない。

ほとんどのマニアックなキーボードでは、簡単にサウンドプロファイルを変更することができる。ハイエンドのキーボードは、デザインの変更が可能なDIYキットとしての提供が一般的だ。だがAm Hatsuはそうではない。これは、あれこれいじくり回す人(ティンカラー)のためのキーボードというわけではないのだ。実際、キーボードを開けるためのネジの場所すら簡単にはわからない。残念ながら、それはソフトウェアにも言える。すべてのキーの機能を変更することはできるが。使用できるデフォルトのレイヤーは2つだけだ。今のところ、レイヤーを追加することはできないが、これは特に小型の格子配列式キーボードの世界では、ごく標準的なことだ。

さて、Cybermatの話もさせて欲しい。900×340mmのアルミニウムの1枚板を使用しているため、標準的な900×400mmのデスクマットよりも少し薄いものの、重量は9ポンド(約4.1キログラム)強というヘビー級ハードウェアだ。

私が試用したのは第2弾で、Am Hatsuと同様別格の存在感を放っている。基本的にこれは、90WのGaNの充電器を使い合計12個の充電コイルを備えた巨大なワイヤレス充電ステーションだ。端にある2つは主に携帯電話を充電するためのもので、残りは2つのキーボードユニットを充電するために使われる。

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その上に敷くデスクマットが付属しているので、コイルの位置を正確に知ることができる。Angry Miaoによると、このマットはTesla(テスラ)のCybertruck(サイバートラック)にインスパイアされたものだそうだが、その片鱗はマットの角や底にあるハードなエッジからも見て取れる。

左後ろの角には小さな切り込みがあり、4つの充電ゾーンに対応したインジケーターとUSB-Cプラグの差込口がある。

同社によれば、このマットは過電流保護、過電圧保護、低電圧保護、過熱保護、短絡保護などのあらゆるセキュリティ機能と、異物検出機能を備えているという。私はキーボードにコーヒーを何度かこぼした前科があるので、コーヒーカップをこのマットの上に置くことには少々抵抗がある。

ハードウェアとしてはしっかりしている(セットアップ中に誤って一度だけ踏んでしまったが、ビクとびくともしなかった)。価格も大変なものだが、キーボード自身も同様だ。試しに買ってみて、自分に合うかどうかを試してみるようなガジェットではない。

Am HatsuとCybermatの両方に対して、Angry Miaoは、商品を受け取ってから72時間以内であれば、未使用の場合に限り、返品が可能であると明言している。基本的に販売は終了している。価格を考えると手を出しにくいものだろう。

このキットは、簡単に購入を勧めることができるものではない。もし自分がまさに求めているものであり、懐具合にも問題がないのら、どうぞご自由に。もしも迷っているようなら、まずは手頃な価格のものを試してみることをお勧めしたい。Am Hatsuの品質と目を引くデザインは他では見られないが、その分、価格も目が跳び出るほどになる。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

thatDotがオープンソースのストリーミンググラフエンジン「Quine」を発表

米国オレゴン州ポートランドを拠点とするthatDot(ザットドット)は、イベントのストリーミング処理を専門とするスタートアップ企業だ。同社は米国時間2月23日、データエンジニアのための新しいMITライセンスに基づくオープンソースプロジェクト「Quine(クワイン)」の立ち上げを発表した。これはイベントストリーミングとグラフデータを組み合わせ、同社が「ストリーミンググラフ」と呼ぶものを作成する。

そう聞くと、複雑なものだと思われるかもしれない。それは確かにその通りであり、また比較的新しいコンセプトでもあるからだ。Quineの背景にあるアイデアは、DARPA(米国防総省)の支援を受けた長年の研究に基づき、大容量のデータストリームを、ステートフルなグラフ、すなわち処理状態を把握するためのグラフとして構築するというものだ。論理学者のWillard Van Orman Quine(ウィラード・ヴァン・オーマン・クワイン)にちなんで名付けられたQuineは、チームが「スタンディング・クエリ」と呼ぶものを使って、このグラフにクエリを実行する。基本的には入力されたデータをリアルタイムで計算し、それをQuineが他のアプリケーションに配信する。

「私たちは、現在の業界が抱える問題、つまり私たちが置かれている板挟みの状況に焦点を当てて、ストリーミンググラフを開発しました」と、Quineの生みの親であり、thatDot社のCEO兼共同設立者であるRyan Wright(ライアン・ライト)氏は筆者に語った。「一方では、膨大な量のデータがあります。この10年間、ビッグデータは当たり前のものとなり、ますます大きくなっています。しかし、その一方で、我々はこれらのデータをどのように解釈すればよいのでしょうか?」。

最近ではかつて以上に、そのデータが動いており、多くの作業負荷ではレイテンシー(遅延時間)が重要になる。オープンソースのイベントストリーミングプラットフォームであるApache Kafka(アパッチ・カフカ)と、そのストリーミングデータを分析するApache Fink(アパッチ・フィンク)を組み合わせたような既存のソリューションでは、企業はデータプラットフォームとパイプラインを構築してこれらの入力データをすべて分析するために、何十人ものエンジニアを割かなければならないと、ライト氏は主張する。他の現代的なアプローチとしては、Neo4j(ネオフォージェイ)とTigerGraph(タイガーグラフ)のようなツールがあり、開発者の間にグラフデータベースを普及させてきたが、これらのツールはいずれもデータベースの観点からこの問題にアプローチするものだと、ライト氏は主張する。

画像クレジット:thatDot

「このような考え方では、技術的な詳細や、高速化、簡単化、拡張化の難しさなど、旧来の問題に悩まされることになります。そのため、この業界では大量のデータが入ってきても、速度が遅すぎてグラフソリューションをきちんと検討できないということがよく起こるのです」と、ライト氏はいう。同氏の主張によれば、現在のほとんどのソリューションは、1秒間に数千件のイベントを処理できる程度だが、Dot社が対象としているような顧客は、1秒間に25万件のイベントを処理できるソリューションを必要としているという。ライト氏は、Quineがそれに応えられる、あるいはそれ以上の処理能力を持っていると確信している。

「私はQuineを使用することによって、複雑なカスタムロジックとSQLクエリのページを、基礎となるイベントが変更されるたびに更新されるストリーム計算されたロールアップ値へのシンプルなクエリに置き換えることができました」と、Tripwire(トリップワイア)社の上級エンジニアであるMatt Splett(マット・スプレット)氏は語る。

同社のユーザーは、セキュリティ企業、オブザーバビリティ企業、ログ処理企業、フィンテック企業、広告企業、不正検知企業など、多岐にわたると、ライト氏と彼の共同設立者でCOOのRob Malnati(ロブ・マルナティ)氏は指摘する。他のオープンソース企業と同様、thatDotの使命は、膨大なQuineの企業ユーザーをサポートすることだが、同社はQuineをプラットフォームとして利用し、その上に新しいソリューションを構築することにも取り組んでいる。

同社は2020年に、Oregon Venture Fund(オレゴン・ベンチャー・ファンド)の主導で200万ドル(約2億3000万円)を超えるシード資金を調達しており、2022年後半にはシリーズAラウンドの資金調達を見込んでいる。

画像クレジット:KTSDESIGN/SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)