香港のイベントプラットフォームEventXがシリーズBで約2.8億円調達、HTCとVRで協力も視野に

EventXのCEOであるSum Wong(サムウォン)氏(画像クレジット:EventX)

各国が新型コロナ規制を緩和するにつれ、人々の活動は対面式に戻りつつある。しかし、バーチャルイベント分野は、少なくともアジアにおいては、投資家を魅了し続けている。香港を拠点とするイベント管理プラットフォームEventXは、香港時間2月16日、シリーズBでさらに800万ドル(約9億2000万円)を調達し、このラウンドで確保した総額を1800万ドル(約20億8000万円)に引き上げた。

今回の資金調達は、Hillhouse Capital(高瓴資本)のアーリーステージ投資部門であるGL Ventures(高瓴創投)が主導した。これまでの投資家には、Hillhouse Capitalの元パートナーが設立した投資会社Gaocheng Capital(高成资本)や、近年VRに力を入れている台湾の大手電機メーカーHTCなどが含まれている。EventXは、ポストマネー評価額を公表していない。

今回のシリーズBは、EventXが設立されてから8年後に実施された。これは、中国本土のバーンレートが高いインターネット企業に比べて、異例の忍耐強い資金調達ペースだ。同社は、ユーザー登録のサポートから参加者のバーチャル名刺交換まで、現実のイベントを管理することからスタートした。2020年に新型コロナウイルスが出現したとき、デジタル化のチャンスだと考え、ウェビナーやバーチャル展示会などのライブイベントをサポートするHopin(ホピン)のような新サービスを開発した。現在では、主催者がイベントを通じて新たな顧客やパートナーを開拓するリード生成機能も備えている。

対面式イベントを封じるパンデミック規制のおかげで、Hopinは最近の記憶では最も急速に成長した企業の1つとなった。しかし先週、ロンドンを拠点とする同スタートアップは、ポストコロナにバーチャルイベントへの需要が鈍化すると判断し、スタッフの12%を解雇したと報じられた。パンデミックはEventXにも恩恵をもたらし、同社プラットフォームの2021年第4四半期のオンライン参加者数は120%増加した。また、ライブイベントが元通りになったとしても、同社は長年続いてきたオフラインビジネスを維持することができると考えています。

これまでに、同社はアジアを中心に100以上の都市でイベントの開催を支援し、そのプラットフォームには500万人以上の参加者が訪れている。同社の100人のチームは、香港、シンガポール、日本、韓国、台湾に分散している。

同社は今回の資金を、買収、製品開発、人材採用、アジア(特に台湾と東南アジア)での事業拡大に充てる予定だ。また、投資家であるHTCと協力して、イベント体験にVRソリューションを導入することも視野に入れている。

画像クレジット:

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

革新的アプローチでバニラ栽培に挑戦するVanilla Vidaが量産へ向け約13億円調達

バニラは確かに 「世界で最も人気のフレーバー 」だ。しかし、その人気とは裏腹に、製造は非常に複雑で、多くの人が本物ではなく合成バージョンを手にすることが多い。

私たちが消費するバニラの約70%はマダガスカルで栽培されているが、最近の気象ニュースを見ると、マダガスカルはこの10日間に1つではなく、2つのサイクロンに見舞われた。これは「今」だけの問題ではなく、この地域は20年近くも嵐や劣悪な生育環に悩ませられていて、バニラの価格が1キロあたり25ドル(約2880円)から数百ドル(数万円)へと上昇する原因となっている。

Vanilla Vida(バニラ・ビダ)のCEO、Oren Zilberman(オレン・ジルバーマン)氏によると、気候変動の高まり、天然バニラビーンズの不安定な供給、バニラ栽培が労働集約的であることなどが、私たちが消費するバニラの95%が合成である理由だ。

イスラエルに拠点を置くVanilla Vidaは、革新的なアプローチでバニラの生産に挑戦している数少ない企業のひとつだ。他には、バニラを作るのにトウモロコシの繊維に含まれる酸を抽出するプロセスを開発したSpero Renewables(スピロ・リニューアルブル)や、レタスでバニラの味と香りを作り出す方法を研究しているPigmentum(ピグメンタム)などがある。

Vanilla Vidaの場合、ジルバーマン氏のルーツが農業であることから、より直接的な農業のアプローチをとっており、垂直統合とサプライチェーンの技術を開発し、天然のバニラを制御された環境で栽培できるようにしている。

同社は2019年、オランダで行われたバニラ栽培の研究実験の失敗に端を発するアイデアでスタートした。研究でうまくいった部分を取り入れ、基本的にサプライチェーン全体を破壊するために、栽培と加工の分野にもそれを応用した。

「私たちを過去よりも前進させたのは、製品の品質という顧客に価値を与える重要なマイルストーンに到達することでした」と、ジルバーマン氏はTechCrunchに語った。

2020年にイスラエル企業StraussのアクセラレーターであるThe Kitchenで正式に会社を立ち上げて以来、チームはエンゲージメントに注力し、顧客とつながってきた。それをジルバーマン氏は「初期スケール」と呼んでいる。

「良いニュースは、能力よりも需要があることですが、拡大は最も困難な部分であり、今まさに我々はそこにいます」と同氏は付け加えた。

目標は、スマートファームや空調管理された温室での高度なバニラビーン栽培方法を通じて、バニラのサプライチェーンにおける量、品質、コストの安定性をエンドツーエンドで提供することだ。

規模拡大を図るため、Vanilla VidaはOrdway Selectionsがリードし、FoodSparks、PeakBridge PartnersのNewtrition、キブツのMa’agan Michaelが参加したシリーズAラウンドで1150万ドル(約13億円)を調達した。

今回のラウンドで、Vanilla Vidaが現在までに調達した総額は約1500万ドル(約17億円)になった。ジルバーマン氏によると、倍の額を調達する機会もあったほど投資家は同社の技術に非常に期待していたが、ゆっくりと時間をかけて、会社の正しい成長を支える戦略投資家を選ぶことにした。

一方、2021年には20社超とパイロットプログラムを実施した。

「当初、Vanilla Vidaのことを知る潜在顧客はほぼ皆無でしたが、プロダクトの品質を目にしたことで、こんな高品質なものを今日まで見たことはない、という声を耳にしています」とジルバーマン氏は話した。

顧客は、同社がまだサポートできないような量を求めている。しかし、今回調達した資金によって、同社は研究開発や技術をより深く追求することができ、また、ジルバーマン氏が間もなく登場すると言う競合他社の参入の障壁をより高くすることができる、と同氏は述べた。

資金はまた、まずイスラエル、その後アメリカやヨーロッパに設ける実験施設や雇用、そして最大手の食品メーカーやフレーバーハウスである顧客との取引に使われる予定だ。

Vanilla Vidaはまだ新技術に取り組む新しいプレーヤーだが、同社は2023年に生産量を増やし、2024年か2025年からバニラのサプライチェーンに目に見える変化をもたらすとジルバーマン氏は予想している。

「施設の建設と、ウガンダやパプアニューギニアなどバニラを栽培している国の既存の農家との取り組みの継続という、2つの大きな最初の動きが同時に起こるでしょう」と同氏は付け加えた。

画像クレジット: Vanilla Vida / Vanilla beans being grown in a climate-controlled environment

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

デジタルツインの社会実装を目指すDataLabsが1.3億円のシード調達、点群データの自動3次元モデリングツールを3月末公開

デジタルツインの社会実装目指すDataLabsが1.3億円のシード調達、点群データの自動3次元モデリングツール公開に向け体制強化

DataLabsは2月16日、シードラウンドとして、第三者割当増資による総額1億3000万円の資金調達の実施を発表した。引受先は、東京大学協創プラットフォーム開発、ディープコア。調達した資金は、点群データの有効活用に向けたプロダクト開発および機能の拡張、それらの開発に適したリサーチエンジニア・ウェブエンジニアなどの人材採用にあてる。

また同社は、点群データの「自動モデリングツール」、三次元データや二次元CAD図面の「クラウド型共有・可視化ツール」の2プロダクトのリリースを近日予定しているという。

まず2月末には、点群データ・三次元モデル・二次元CAD図面などを、誰でも閲覧・共有できる「点群三次元モデル可視化・共有ツール「Linked Viewer」を公開予定。URLの共有のみでブラウザー上で閲覧可能としており、生データをダウンロードすることもできる。デジタルツインの社会実装目指すDataLabsが1.3億円のシード調達、点群データの自動3次元モデリングツール公開に向け体制強化

 

もう1点は、3月末にリリース予定の「点群データの自動モデリングツール「Modely」(モデリー)。計測した点群データをDataLabsのプラットフォームにアップロードすると、クラウド上で自動解析するというもの。対象を画面上でクリックするだけで、自動で寸法精度100%(パラメトリックモデリングを採用した場合)の三次元モデルが完成する。

なお現在、Modelyの要素技術を用いて、現場での配筋状況の自動モデル化による検査の効率化などを目指した実証実験を東日本旅客鉄道と進めているそうだ。鉄道をはじめ、あらゆる施工現場における配筋検査等の効率化のため、全国の建設業界の企業などに向けてサービス展開も図るとしている。

2020年7月設立のDataLabsは、「デジタルツインの社会実装」を通じ最適化された社会の実現に資することをミッションとするスタートアップ。三次元計測のほか、点群データの自動三次元モデリング(BIM/CIM化など)、熱流体や気流、構造解析などの各種シミュレーション(CAE解析)機能をSaaSで展開。UI・UXを充実させ、デジタルツイン実現のハードルを極限まで低減するという。

船の自律航行技術開発を行うエイトノットが1億円調達、2025年までの社会実装目指す

船の自律航行技術開発を行うエイトノットがシードラウンドファーストクローズとして1億円調達、2025年までの社会実装目指す

船の自動運転技術開発スタートアップ「エイトノット」は2月15日、シードラウンドのファーストクローズとして、J-KISS型新株予約権方式による1億円の資金調達実施を発表した。引受先は、DRONE FUND、15th Rock Ventures、リアルテックファンド。累計資金調達額は1億5000万円となった。

2021年3月設立のエイトノットは、「ロボティクスとAIであらゆる水上モビリティを自律化する」をミッションに掲げる、自律航行技術開発スタートアップ。ロボティクス専門家集団による開発チームを擁し、実用的な技術を現実的なコストで、かつスピーディに開発可能としており、創業から半年で小型船舶向けの自律航行技術の開発と実証実験を成功させている。同社は、2025年の自律航行無人船の社会実装を目指し、事業活動を加速させるという。

調達した資金は、「ロボティクスおよびAIに精通したエンジニアリングチームの強化」「EVロボティックボートを活用した事業開発チームの強化」などにあてる。

調達した資金の主な用途

  • ロボティクスおよびAIに精通したエンジニアリングチームの強化
  • EVロボティックボートを活用した事業開発チームの強化
  • 自律航行機能を備えた小型船舶の開発
  • 遠隔監視システムの開発
  • 事業化を見据えた実証フィールドでの航行試験

昨今、陸の自動運転・空のドローンなど、モビリティの自律化・自動化技術は隆盛著しく、その動きは船舶など水上モビリティにも及んでいる。水上モビリティにおいても自律化による安全性・利便性・経済合理性の向上が見込め、とりわけ四方を海に囲まれた日本では、旅客・物流において新たな移動・輸送手段となることが期待されているためという。災害時に代替輸送手段として活用することも期待されている。

またグローバル市場、特に新興国の場合、都市部の交通渋滞が深刻な社会課題となっていることから、船運は重要な交通・輸送手段として活用が推進されている。

これら状況においてエイトノットは、ロボティクス・AIなど先端技術を活用した「水上モビリティのロボット化」をコンセプトとし、環境に配慮したEVロボティクスボートによるオンデマンド型水上交通を実現することで、課題解決に貢献するという。

あらゆるアプリを「スーパーアプリ」に変えるAppboxoが約8億円を調達

ミニアプリとは、より大きなアプリの中で動作する軽量のプログラムのことで、ユーザーのエンゲージメントと収益の追加的な源泉として機能する。ミニアプリは、WeChat、Alibaba、Grabなどの「スーパーアプリ」によって普及した。しかし、すべての開発者がこれらのハイテク企業のリソースを持っているわけではない。シンガポールを拠点とするAppboxo(アプボクス)は、この競争の場を均等にしたいと考えている。このスタートアップのプラットフォームでは、ミニアプリを自分で作ったり、サードパーティの開発者向けマーケットプレイスであるAppboxo Showroomからミニアプリにアクセスしたりして、開発者は自分のアプリをスーパーアプリに変えることができるのだ。

GCash(ジーキャッシュ)、Paytm(ペイティーエム)、VodaPay(ボダペイ)などを顧客に持つAppboxoは、米国時間2月16日、RTP Global(RTPグローバル)が主導するシリーズA資金調達で700万ドル(約8億円)を調達したことを発表した。その他、最初の投資家であるAntler(アントラー)と500 Southeast Asia(500ソースイースト・アジア)に加え、SciFi VC(サイファイ・VC)、Gradient Ventures(グラディエント・ベンチャーズ)(GoogleのAIに特化したベンチャーファンド)、エンジェル投資家のHuey Lin(ヒュー・リン)氏とKayvon Deldar(ケイボン・デルダー)氏といった新しい支援者が参加した。

Appboxoは、2019年にCEOのKaniyet Rayev(カニエト・レイエフ)氏、CTOのNursultan Keneshbekov(ヌルスルタン・ケネシュベコフ)氏によって設立された。TechCrunchが最初に取り上げたのは2020年12月でシード資金を発表したときだった。現在、東南アジア、インド、南アフリカの10のスーパーアプリに採用され、400以上のミニアプリの統合をサポートしており、その大半はサードパーティの開発者によって構築されたものである。同社によると、統合されたユーザー数は5億人以上とのこと。

同社は、主に2つの製品を提供している。1つは、ミニアプリを構築・起動するためのSDKやAPIを備えたSaaSプラットフォーの「Miniapp」例えば、モバイルウォレットは、フードデリバリー、ショッピング、レストラン予約などのミニアプリを統合することができる。

2つ目は、約1年前に登場した「Shopboxo」で、企業はモバイルデバイスを通じてカスタマイズ可能なオンラインストアを30秒以内に立ち上げることができる。

Shopboxoで作成したミニアプリは、Appboxoを通じてスーパーアプリに統合することができる。レイエフ氏は、中小企業の幅広い加盟店ベースにリーチできることで「特にAppboxoの顧客はすでにeコマースを中心に同社のプラットフォームを使用しているため、2022年はミニアプリの数が数千に拡大する」と予想している。「金融系スーパーアプリは、新しい垂直方向への多様化を望んでおり、現在の状況では、eコマースが最も明白な機会であり、最も実行しやすいように見えます」と語る。

レイエフ氏は、AppBoxoの新たな資金調達は、Shopboxoをさらに発展させ、同時に加盟店エコシステムを拡大し、国際的なプレゼンスを構築するために使われるとTechCrunchに語っている。当初は、スーパーアプリが最も優勢なアジア太平洋地域に焦点を当てるが、ヨーロッパと米国にも進出したいという。

画像クレジット:AppBoxo

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(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)

飲食店向けの予約・注文・顧客管理システムなどのトレタが総額20.3億円調達、プロダクト開発・人材採用を強化

飲食店向けの予約・注文・顧客管理システムなどのトレタが総額20.3億円調達、プロダクト開発・人材採用を強化

飲食店向けの予約・注文・顧客管理システムなどを手がけるトレタは2月16日、第三者割当増資および金融機関からの融資により総額20億3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、凸版印刷、HR Tech Fund、Image Frame Investment(HK) Limited(Tencent Holdings Limitedの完全子会社CVC)、岡三キャピタルパートナーズ、ジャパン・コインベスト3号投資事業有限責任組合。

調達した資金は、プロダクトの開発推進および人材採用にあてる。また、投資家とのパートナーシップの向上、協業事業の推進を通じた事業拡大を図り、飲食店が外食DXに取り組みやすい環境を作ることで外食業界へのさらなる貢献を目指したいという。

トレタは、飲食店向け予約・顧客台帳サービスの「トレタ」、注文から会計までをスマホで完結する店内モバイルオーダーの「トレタO/X」、飲食店の電話予約をAIで自動受付する「トレタ予約番」など、飲食店経営の構造を見直し、再構築するための様々なサービスを手がける。POSレジ開発によりチェーン展開する飲食店が急増した1970年代以降、人手に負荷をかけて発展・維持してきた外食業界の問題点や、コロナ禍を背景とする飲食店経営の効率化・生産性向上といった課題に対して、その解決には外食DXが不可欠であると同社は考え、サービスの開発を進めている。

グーグルのInboxを復活させてSlackも混ぜたメールクライアント「Shortwave」

Google(グーグル)による「Inbox」の実験は、それが続いていた間は輝かしいものだった。2014年に招待制のサービスとして開始されたInboxは、同社の次世代のメールクライアントだった。あまりにも優れていたため、Googleが2019年にサービスを終了させたことも意外ではなかった。しかし、ありがたいことに、Google / Firebase(ファイアベース)の元従業員グループが現在、Inboxの体験を復活させている……Slack(スラック)のユーザー体験も少し混ぜて。

Shortwave(ショートウェーブ)のAndrew Lee(アンドリュー・リー)CEO、Jacob Wenger(ジェイコブ・ウェンガー)CPO、Jonny Dimond(ジョニー・ダイモンド)CTOは、全員が以前、GoogleでFirebaseを担当していた。同社の初期から働く社員たちの多くも同じだ。

  1. conversation

    画像クレジット:Shortwave
  2. channel

    画像クレジット:Shortwave
  3. inbox

    画像クレジット:Shortwave

Inbox for Gmailと同様に、Shortwaveは基本的にGmailを中核とするメールクライアントであり、ユーザーは両者を簡単に行き来することができる。しかし、それ以上のものでもある。それは2022年に向けて再考されたInboxのようなものだと考えればよい。

リー氏が筆者に話してくれたように、同社のチームはInboxから2つの重要なインスピレーションを得た。「1つは、メールをグループ分けして処理するべきという考え方です」と、リー氏は述べ、Inboxのトピックごとにメールを束ねる機能を引き合いに出した。「受信箱の中でメールの量が増えると、すべてのメールに目を通すのは現実的ではありません。キーボードショートカットを駆使し、アプリが高度に最適化されていたとしても、すべてのメールに目を通すだけで長い時間がかかります」。例えば、カレンダーの通知のような自動化されたメールが届いても、招待はカレンダーですでに受け入れている場合があるだろう。そこで、数回のクリックですべてのメールを既読にしたり、スヌーズして後で見るようにしたりすれば、時間を大幅に節約できる。

画像クレジット:Shortwave

さらに、チームは「受信箱は、好むと好まざるとにかかわらず、ToDoリストである」という考えのもと、Shortwaveを開発した。「そうすると、ユーザーにToDoリストのように管理するツールを提供するか、あるいは頭の中で管理することを強要するかのどちらかになります」と、リー氏は説明する。「彼ら(Inboxの開発者たち)は、Inboxに文字通りチェックマークを追加して、『これは完了したものとしてマークされているよ』ということを表現するなど、ToDoリスト型の機能を追加しました。我々も同じことをしました」。

画像クレジット:Shortwave

Shortwaveでは、例えばメールを受信箱の一番上に固定することができる。筆者にとって、これはGmailのスター機能を使うよりも良い方法だが、これは個人的な好みの問題かもしれない(私はよくメールにスターを付けるが、その後、そのメールに戻ることはまずない)。また、必要に応じて受信箱内のメッセージを並べ替えたり、自分で作成したバンドルに整理したりすることもできる。

現代のメールクライアントに期待されるような、メッセージをスヌーズする機能も備えている。

Inboxのユーザー体験に加えて、チームはSlackのような最新のチャットクライアントの機能も実装した。例えば、GIFや絵文字を使って返信することができるなど、ShortwaveにはSlack風のリアクション機能が搭載されている。また、グループ会話用のチャンネルや通常の@メンションなど、特にビジネスシーンでのグループ会話を容易にするためのさまざまな機能も用意されている。

会話に参加している全員がShortwaveを利用している場合は、入力中を伝える通知も届き、他の人がオンラインにいるかどうかも確認できる。

筆者は数日前からShortwaveを試しているが、確かにこれは初期のInboxを思い出させる(ただし、iOSアプリとは異なり、Androidアプリはまだ少し粗い部分があり、チームもそれを認識している)。

リー氏の話によると、チームは主にビジネスユーザーをターゲットにしているという。また、誰でも無料でサービスを利用できるが、90日以上のメール履歴をサービスに残したい場合は有料になるという、Slackのようなマネタイズモデルを採用している。

画像クレジット:Shortwave

Shortwaveは米国時間2月15日、シリーズAラウンドで900万ドル(約10億4000万円)の資金を調達したことも発表した。このラウンドは、実はチームが製品開発に着手した直後の2020年4月にクローズしており、USVLightspeed(ライトスピード)が主導し、共同創業者たちも出資した他、Flybridge Capital(フライブリッジ・キャピタル)とAfore Capital(アフォア・キャピタル)が参加した。また、Mercury(マーキュリー)のCEOであるImmad Akhund(イマド・アクンド)氏、Segment(セグメント)の創業者であるPeter Reinhardt(ピーター・ラインハート)氏とIlya Volodarsky(イリヤ・ヴォロダースキー)氏、Voyage(ボヤージュ)の創業者であるOliver Cameron(オリバー・キャメロン)氏など、多くのエンジェル投資家も出資している。

画像クレジット:SKrow / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アジア太平洋地域のさまざまな文化に配慮したメンタルウェルネスプログラム「MindFi」

メンタルヘルスのスタートアップMindFiはアジア太平洋地域(APAC)全体で事業を展開しているが、それぞれの市場で「文化の違いに配慮した」ケアを提供したいと考えている。そのために、従業員の福利厚生として提供しているアプリのプログラムを、宗教、ジェンダーのステレオタイプ、人種、コミュニケーションスタイル、価値観などを考慮して現地プロバイダーと共同開発していると、共同設立者兼CEOのBjorn Lee(ビョルン・リー)氏はTechCrunchに語った。

現地時間2月14日、シンガポールを拠点とする同社は、200万ドル(約2億3000万円)のシードラウンドを調達したと発表した。このラウンドには、既存投資家のM Venture PartnersとGlobal Founders Capitalが参加した。エンジェル投資家には、Carousell(カルーセル)の共同創業者であるMarcus Tan(マーカス・タン)氏、CarroのCSOであるKenji Narushima(ケンジ・ナルシマ)氏、Spinの共同創業者であるDerrick Ko(デリック・コー)氏が含まれている。

MindFi(Mind Fitnessの略)は、Y Combinator(YC、Yコンビネータ)の2021年夏コホートに参加した。現在、シンガポール、香港、オーストラリアを含むアジア太平洋地域で事業を展開し、16言語でサービスを提供している。同社の法人顧客には、Visa、Willis Towers Watson、Patsnapなどがある。MindFiの製品は、15の市場で35社の雇用主のもと、合計10万人の従業員にサービスを提供している。

メンタルヘルス関連のスタートアップは、米国では特にパンデミックの間に多くの資金を獲得したが、アジアの多くの地域ではまだ初期段階にある。MindFiは、この状況を変えようとしているスタートアップ企業群の1つだ。最近資金調達に成功した企業には、Intellect(同じくY Combinatorの卒業生)やThoughtfullなどがある。

MindFiアプリには、自己管理型のメンタルウェルネスプログラム、コミュニティフォーラム、グループセラピー、AIによるコーチやセラピストとのマッチングシステムが含まれている。ユーザーのプロファイルには、MindFiのデータと、睡眠、心拍数、日々の活動などのフィットネスウェアラブルの情報が集約される。

リー氏はTechCrunchに対し、今回のシード資金は、AIエンジンの開発を加速し、ウェアラブルからの生理データとMindFiのメンタルヘルスデータの統合を進め、現地の専門家と協力して主要なAPAC市場でアプリ内プログラムを作成するために使用されると述べている。同氏は、APACでは米国や欧州に比べてライセンスを持ったメンタルヘルス専門家の数が比較的少ないとしながらも、ユーザーが安心してサポートを受けられるように、同社のプログラムが多様な文化的コンテクストに適合するようにすることが重要だと語る。

M VenturesのパートナーであるMayank Parekh(マヤンク・パレック)氏は声明の中で、次のように述べている。「メンタルヘルスは、ほとんどの国で伝統的に見過ごされてきましたが、成長著しいアジア地域ではなおさらです。私たちは、現在の市場には十分なサービスが提供されていないと感じており、創業者を第一に考える投資家として、重要な問題を解決するために相互に補完し合うスキルと洞察力を持つMindFiチームと協力できることをうれしく思っています」。

画像クレジット:MindFi

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(文:Catherine Shu、翻訳:Aya Nakazato)

コロナ禍と「リベンジ旅行」がバーチャル旅行スタートアップ「Heygo」の資金調達を後押し

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が最も深刻だった時期は、旅行に行ける人はほとんどいなかった。これに対し、2021年と2022年は「リベンジ旅行」の年になると予測されてきた。人々がもっと旅行に行く、あるいは少なくとももっと計画を立てる年になるという予測だ。

その背景として、人々が純粋な興味から、あるいは実際の旅行の計画を立てることを目的としてバーチャル旅行ができるサイトの存在がある。Heygoのライブツアーでは、ツアーガイドが90以上の国からライブストリーミングを実施している。「旅行版のTwitch」のようなものだ。

コロナ禍で多くの人がこのサイトを知り、有用であると理解したのは間違いない。HeygoがシリーズAで2000万ドル(約23億1600万円)を調達したのだから。このラウンドを主導したのはNorthzoneで、他にLightspeed Venture Partners、Point 9 Capital、TQ Ventures、Ascensionも参加した。

Heygoはある種のクリエイターエコノミーを活用している。ガイドはお気に入りの場所やテーマを自分のライブチャンネルで世界中の視聴者に共有し、チップで稼ぐ。同社は、2022年1月の予約件数は前年同月比の300%増で、最近200万件の予約を達成したと説明している。

共同創業者でCEOのJohn Tertan(ジョン・タータン)氏は筆者に対し次のように述べた。「マチュピチュを歩き回る、ハノイで料理教室をする、飛行機をレンタルして火山の上を飛ぶなど、あらゆるコンテンツがあります。現実の世界をストリーミングして、地元の人たちが熱心に取り組んでいることについて話をしたり、さまざまな場所にいる人たちのストーリーを共有したりする場です」。

同氏の説明によれば、視聴者は無料で参加し、ストリーミングをしているガイドに質問して、チップを送る。プラットフォームはチップに対してレベニューシェアをとるが、大半はガイドに渡される。Heygoは室内専用のストリーミングアプリもちょうどリリースするところで、これはコロナ禍で急速に広がったAirbnbやAmazonのバーチャル「体験」とは違うものになるようだ。

NorthzoneのパートナーでHeygoの取締役となったMichiel Kotting(ミシェル・コッティング)氏は「Heygoは常に存在すべきだと感じるサービスを作り上げた、たぐいまれなケースです。ガイド付きのインタラクティブなストリーミングは絶大な人気を誇る旅行番組やドキュメンタリーのジャンルにおけるTwitchに相当し、自宅から没入型の世界旅行ができる新しいカテゴリーを創出しています」と述べた。

このラウンドには、Checkout創業者のGuillaume Pousaz(ギヨーム・ポサーズ)氏、Tier創業者のLawrence Leuschner(ローレンス・ロイシュナー)氏、Postmates創業者のBastian Lehmann(バスティアン・レーマン)氏、Github創業者のScott Chacon(スコット・チャコン)氏(SCNE Ventures経由で)、Songkick創業者のIan Hogarth(イアン・ホガース)氏、GoCardlessとNested創業者のMatt Robinson(マット・ロビンソン)氏、Juro創業者のRichard Mabey(リチャード・メイビー)氏などのエンジェルも参加した。このラウンドの結果、コッティング氏、Paul Murphy(ポール・マーフィー)氏、Kolja Hebenstreit(コルヤ・ヒーベンシュトライト)氏がHeygoの取締役となった。

画像クレジット:gmstockstudio / Shutterstock

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

教師、生徒、保護者が同じページで課題の進捗や成績を確認できるSchoolyticsのダッシュボード

筆者が学校に通っていた頃、つまり今から1万4千年ほど前のことだが、宿題の進捗状況を記録することは、それ自体が宿題のように感じられたものだ。その一方で親たちは、学期末ごとの通知表が来るまで、子どもの全体的な進歩については、ほとんど知ることがなかった。もし、ある生徒(あるいは多くの生徒)の学力が低下するようなことがあれば、ただでさえ多忙な教師が生徒の成績表を探って、その落ち込みを確認しなければならなかった。これは現在もほとんど変わっていない。

Schoolytics(スクーリティックス)は、そんな状況を変えようとしているスタートアップ企業だ。生徒、保護者、教師、管理者のための「オールインワンの情報ハブ」として宣伝されているSchoolyticsの分析ダッシュボード(School + Analytics = Schoolytics、というわけだ)は、生徒が日々どのように過ごしているかを全員で確認できるようにし、注目すべき変化にフラグを立て、傾向の概要を提供する。

Schoolyticのダッシュボードには次の4つのタイプがあり、それぞれが前段の仕様よりも広い範囲をカバーするようになっている。

  • 生徒用ダッシュボードでは、個々の生徒が自分の成績、今後の課題、やらなかった課題、期限内に提出した回数などの指標を把握することができる
  • 保護者用ダッシュボードでは、親や保護者が自宅にいる子どもたちの指標を確認することができる
  • 教師用ダッシュボードでは、個々の生徒の評価指標を見たり、クラス全体の課題完了率などを確認することができる。また、生徒が急に課題をやらなくなった時にフラグを立てたり、優等生名簿(課題完了率に基づく)や進捗報告書などを自動的に作成したりすることができる
  • 管理者用ダッシュボードでは、学校別、学年別の評価指標を表示したり、個々のクラスのレポートを閲覧することができる

Schoolyticsは、Aaron Wertman(アーロン・ウェルトマン)氏とCourtney Monk(コートニー・モンク)氏によって設立された。2人は教科書レンタル / オンライン家庭教師 / 教育のメガ企業であるChegg(チェグ)でデータサイエンスを担当していた。モンク氏は、Teach For America(ティーチ・フォー・アメリカ)で半年以上働いた経験があり、地元の学区で教育委員会のメンバーを務めている。ウェルトマン氏は、ベイエリアにあるKIPPの学校でボランティア活動をしていた際、学校が依存しているツールの多くは、貧相で、データも生のままであることに気づいた。同氏は2020年の初めに、そのすべてを近代化する方法を考え始めた。そして、その年の終わりに、2人は自分たちがしてきた取り組みを形にして、Schoolyticsを起ち上げた。

Schoolyticsは、多くの教師がすでに使用している学習管理システムからほとんどのデータを取得している。Google Classroom(グーグル・クラスルーム)だ。新型コロナウイルス感染拡大の際には、多くの教師が急いで教室や課題をバーチャル化しなければならなかったため、Classroomの使用率は大幅に上昇した。しかし、Google Classroomでは、生徒が提出した基本的なデータを収集するためには役立つものの、それをどのようにグラフ化したり分析したりするかは、教師が考えることだ。Schoolyticsは、そのデータをフロントエンドとして提供し、手作業で行っていた重労働やスプレッドシートとの格闘を、教師のやるべき仕事から省くことができる。

クラス全体の傾向を示すSchoolyticsの教師用ダッシュボード 画像クレジット:Schoolytics

同社はまた、教師が生徒とコミュニケーションをとったり、クラス全体にメッセージを流すことができる専用の安全な場所を提供するために、内蔵型のメッセージングシステムの開発も進めている。

Schoolyticsを使用するための費用は、地域が負担するのが理想的だが、教師が個人的にこのツールを試用してみたいと思うのであれば、現在2つのプランが提供されている。1つは、最大10のGoogle Classroomを持つ教師を対象とした無料オプション、もう1つは最大100のClassroomを必要とする教師を対象とした月額10ドル(約1160円)からの有料オプションだ。

同社は先日、Haystack(ヘイスタック)、Audacious Ventures(オーデイシャス・ベンチャーズ)、Accelerated Ventures(アクセラレイテッド・ベンチャーズ)の支援を受け、シードラウンドで280万ドル(約3億2000万円)の資金を調達したと発表した。現在、チームは約10名で構成されており、幼稚園から大学まで、500校以上の学校と取引している。

ダッシュボードを実際に見てみたいと思う人のために、Schoolyticsにはデモ用のダッシュボードが用意されており、前述の異なる役割に応じたダッシュボードが、どのようなものなのかをチェックすることができる。

それぞれの子どもの詳細が表示されるSchoolyticsの保護者用ダッシュボード(画像クレジット:Schoolytics)

画像クレジット:Schoolytics

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米Novoloop、プラスチック廃棄物から高価値の化学製品を生み出すリサイクル方法を開発

ポリエチレン(私たちがよく知っている一般的なプラスチック)を「バージン」プラスチック(石油化学から直接作られたプラスチックのこと)に対抗できる高価値のプラスチックにアップサイクリングすることは、極めて困難な問題だ。それが非常に難しかったため、何十億トンものプラスチックがリサイクルされず、地球や海を汚染している。しかし、米国に拠点を置く新しいスタートアップ企業のNovoloop(ノヴォループ)は、その答えを出したと主張する。

同社の創業者であるJeanny Yao(ジェニー・ヤオ)氏とMiranda Wang(ミランダ・ワン)氏の2人の女性科学者は、5年以上にわたってこの問題に取り組んできた。

米国時間2月15日、Novoloopは1100万ドル(約12億7000万円)のシリーズA資金を調達したことを発表。このラウンドはEnvisioning Partners(エンヴィジョニング・パートナーズ)が主導し、Valo Ventures(ヴァロ・ベンチャーズ)とBemis Associates(ビーマス・アソシエイツ)に加え、SOSV、Mistletoe(ミスルトー)、TIME Ventures(タイム・ベンチャーズ)を含む以前の投資家も参加した。Novoloopは、高機能アウターウェアに見られるシームテープなど、アパレル向けボンディングソリューションを製造しているBemis Associatesと新たに提携を結んだことも発表した。

Novoloopは、プラスチック廃棄物を高性能の化学製品や材料に変えることを目指しており、ATOD(Accelerated Thermal Oxidative Decomposition、熱酸化分解促進)と呼ばれる独自のプロセス技術を開発した。ATODは、ポリエチレン(現在最も広く使用されているプラスチック)を、高価値の製品に合成可能な化学的構成要素に分解するという。

その最初の製品は靴、アパレル、スポーツ用品、自動車、電子機器などに使用される熱可塑性ポリウレタン(TPU)のOistreになる。この製品のカーボンフットプリントは、従来のTPUに比べて最大で46%も小さいと、Novoloopは主張している。

Novoloopの共同設立者でCEOを務めるミランダ・ワン氏は、声明の中で次のように述べている。「プラスチックがすぐにはなくなることはないでしょう。そのため、生産されるものと再利用されるものとの間のギャップを埋めるためのイノベーションが必要です。何年もかけて技術開発を行ってきた私たちは、この必要性の高い技術を商業化するために、すばらしい投資家やパートナーから支援を得られたことを発表でき、大変うれしく思います」。

「我々が今回の投資ラウンドを主導することになったのは、Novoloopがプロダクトマーケットフィットを見つけたからです」と、Envisioning PartnersのパートナーであるJune Cha(ジューン・チャ)氏は述べている。「Novoloopは、Oistreが初期段階でも市場で幅広い用途に使えることを証明しました」。

ワン氏は電話で筆者に次のように語った。「ポリエチレンプラスチックは、包装材として最も一般的に使用されているものですが、化学的に変化させたり、分解して有用なものに変えることが非常に困難です。私たちは、このポリエチレンを酸化させるために、根本的に新しい化学的アプローチを採用することで、これを解決しました」。

「他の誰もが、廃プラスチックであるポリエチレンを化石燃料の原料にしています。しかし、私たちのアプローチは、直接ポリエチレンの廃棄物を採取し、ワンステップで変換するというものです。(中略)ですから、石油やガスに戻す場合に発生する多くのステップや化学反応を根本的に回避することができます」と、ワン氏は語る。

Novoloopの競合企業には、BASF(ビーエーエスエフ)、Covestro(コベストロ)、Lubrizol(ルーブリゾール)、Huntsman(ハンツマン)などがある。これらは化石燃料からバージン材のTPUを製造している企業だ。現在、TPUの約99%はバージン材である。言い換えれば、これは崩壊の準備を整えた巨大な産業なのだ。

画像クレジット:Novoloop / Novoloop founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

韓国大手NAVER、可能性に満ちた日本と韓国の大手eコマース販売業者の成長を加速するNew Vesselに投資

eMarketerの推定によれば、2021年の日本のeコマース市場は1440億ドル(約16兆5600億円)、韓国は1210億ドル(約13兆円9200億円)だ。市場規模の大きさにもかかわらず、両国のeコマースアグリゲーターの数は、より市場規模が小さい他の国よりも少ないと、韓国のeコマースアグリゲーターであるNew Vessel(ニューベッセル)は述べている。

同社は現地時間2月15日、韓国と日本での市場獲得をにらみ、非公開のシードラウンドで資金を調達したと発表した。韓国のインターネット大手NAVER(ネイバー)、CKD Venture Capital、Wooshin Venture Investmentが共同でラウンドをリードし、Lighthouse Combined InvestmentとS&C Networksが参加した。

New VesselのCEO、Jaebin Lee(イ・ジェビン)氏はTechCrunchに対し、新たな資金は韓国と日本でのeコマースブランドの買収と、ブランド管理、マーケティング、サプライチェーン管理の専門家の追加採用に充てると語った。同社は現在、年間売上高が少なくとも100万ドル(約1億1500万円)、利益率が15〜30%のブランドを求めており、買収案件の規模は100万〜200万ドル(約1億1500万〜2億3000万円)になるだろうと同氏は付け加えた。同社は2022年上半期に買収を完了した後、6月にシリーズA資金を調達する予定だと同氏は指摘した。

画像クレジット:eMarketer(スクリーンショット).

New Vesselは、弁護士や投資家として10年以上のM&A経験を持つイ氏と、日本のEC「楽天」や韓国のEC「Coupang(クーパン)」で活躍したKyuyong Lee(イ・キュヨン)氏が2021年9月に創業した企業だ。

ここ数年、共同創業者の2人は、ThrasioやPerchなどグローバルなアグリゲーター大手の成長を目の当たりにしてきた。だが、韓国と日本におけるeコマース市場は世界でもトップクラスにあるにもかかわらず、eコマースアグリゲーター業界はまだ始まったばかりであることに気づいた。このことは、両国を拠点とするアグリゲーターにとって大きな可能性だとイ氏は話す。

「単に時間の問題です。韓国と日本のeコマースアグリゲーター市場は、未開拓の可能性に満ちています」と同氏はいう。

New Vesselは、韓国と日本の大手eコマースの販売業者の成長を加速するために彼らと提携し、実績に裏打ちされた最適化戦略と売上拡大戦術を提供するという。同社が目指すのは、米国拠点の販売業者が韓国と日本で事業を拡大するのを支援することと、逆に、韓国と日本のブランドが米国市場へ参入できるようにすることだとイ氏は述べた。同社は最近、米国と韓国に拠点を置く携帯電話アクセサリーメーカー、Spigen(シュピゲン)と戦略的提携関係を結び、オペレーションにおける強みをさらに高めた。

「韓国のオンラインブランド販売業者の大半は、自分のブランドを売り込むことが可能であることさえ認識していません。ブランドオーナーとの提携により、すばらしい製品を手頃な価格で市場に広げ、販売者だけでなく消費者全体にも価値を提供できると信じています」。

一方、グローバルなeコマースアグリゲーターのThrasioは、日本のeコマースブランドを買収するため、2021年3月に日本に事務所を設立し、アジアに進出している。

画像クレジット:Blue Planet Studio / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

保証つき中古iPhoneを再生・再販するSwappie、欧州での事業拡大に向け約142億円を調達

サミ・マルティネン氏とエマ・レイヒコイネン氏(画像クレジット:Swappie)

フィンランドを拠点とするSwappieは、中古iPhoneの再生・再販を行う企業だ。すべてのプロセスを請け負い、整備されたデバイスは12カ月間の保証付きで、独自のマーケットプレイスで販売される。2020年には、欧州の新しい市場に進出するために、3580万ユーロ(約47億円)のシリーズBをクローズした。

同社はこのたび、グロースエクイティ企業であるVerdaneがリードする1億800万ユーロ(約142億円)のシリーズCラウンドを実施した。既存投資家であるLifeline Ventures、Inventure、Reaktor Ventures、TESIも参加した。今回のラウンドにより、同社の累計調達額は1億4900万ユーロ(約196億円)を超えた。

Swappieの共同創業者兼CEOであるSami Marttinen(サミ・マルティネン)氏は、声明の中でこう述べている。「当社は、品質を標準化し、サステナビリティの役割を擁護し、中古車を購入するのと同じように整備されたスマートフォンを購入することを一般的にすることで、Swappieがこの分野における消費者の認知度と信頼性を高められると心から信じています」。

中古・整備済みスマートフォンの市場全体は、2022年から2027年の間に年率10.23%で成長すると予測されている。スマートフォンは、2022年には1億4600万トンのCO2を排出すると予測されている。Swappieによれば、人々が携帯電話を1年でもより長く使用することで、約200万トンの排出量を削減できるという。

VerdaneのパートナーであるJanne Holmia(ヤンネ・ホルミア)氏はこう述べている。「人々や企業がより持続可能なライフスタイルへと移行していく中で、iPhoneの再生やリコマースの分野は大きく成長しており、それにともない、Swappieは再生済みスマートフォンにおける欧州のマーケットリーダーとなる可能性を示しています」。

しかし、欧州の電子機器リフレッシュ市場を制するための競争は、まだ終わっていない。

2021年、欧州の再生電子機器マーケットプレイスであるRefurbedは、Evli Growth PartnersとAlmaz CapitalがリードしたシリーズBで5400万ドル(約62億4000万円)の資金を調達した。Refurbedは、130社の再生品業者が同社のマーケットプレイスで販売するという、少し変わったアプローチをとっている。

ドイツ、オーストリア、アイルランド、フランス、イタリア、ポーランドで事業を展開している同スタートアップは、他の3カ国にも拡大する予定だ。

この分野では他に、Back Market、Swappa(米国)、Amazon Renewなどが競合している。また、ドイツにはRebuyもある。これからも、まだまだ競争は激化していくだろう。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

Web3のパワープレイヤー「アニモカブランズ」が日本進出、戦略的子会社「Animoca Brands株式会社」が11億円のシード調達

Web3のパワープレイヤー「アニモカブランズ」が日本進出、戦略的子会社「Animoca Brands株式会社」が約11億円のシード調達

香港拠点のAnimoca Brands(アニモカブランズ)は2月15日、日本における戦略的子会社「Animoca Brands株式会社」(Animoca Brands KK)の2021年10月25日設立を発表した。またAnimoca Brands KKは、シードラウンドとして約11億円の資金調達を2022年1月に完了したと明らかにした。引受先は、IPX1号ファンド(MCP アセット・マネジメント)、Animoca Brands。シードラウンド完了を経て、今後東京都港区を拠点に日本における事業拡大に取り組む。

Animoca Brands KKは、大手出版社、ブランド、教育、スポーツ競技団体、アスリート、アーティスト、ゲーム会社といった、日本の知財やコンテンツ(IP)ホルダーがグローバルで直接コミュニティを作るとともにファンを獲得し、トラフィックを創生することを支援する目的で設立。具体的には、ブロックチェーン技術を活用したプラットフォームを構築・提供し、日本の知財・IP ホルダーがWeb3のエコシステムの中で自らNFTやトークンを発行できる仕組みを提供。これにより、ファンとのコミュニティの構築・成熟化を支援するという。

  1. Web3のパワープレイヤー「アニモカブランズ」が日本進出、戦略的子会社「Animoca Brands株式会社」が約11億円のシード調達

体外受精治療の支払いを予測しやすくする英GaiaがAtomico主導のシリーズAで約23億円調達

Gaiaの創業者兼CEOナダー・アルサリム氏(画像クレジット:Gaia)

Gaia(ガイア)は、パーソナライズされた保険や支払いプランなどの製品を使って、体外受精(IVF)による不妊治療のプロセス全体の「リスク軽減」を目指すスタートアップだ。赤ちゃんのためのBNPL(後払い決済)に近いが、少し異なる。

このたび同社は、ロンドンのAtomico(アトミコ)がリードするシリーズAラウンドで2000万ドル(約23億円)の資金を調達した。これまでの投資家には、Kindred Capital、Seedcamp、米国のClocktower Technology Venturesが含まれる。これにより、Gaiaの累計調達額は2300万ドル(約26億5000万円)に達した。AtomicoのパートナーであるSasha Astafyeva(サーシャ・アスタフィエバ)氏は、Gaiaの取締役会に参加する。

保険や支払いプランだけでなく、Gaiaは、臨床データセットに基づいて、適切な治療を提供できるクリニックに加えて、カップルが必要と思われるサイクル数を予測する予測技術を持っているという。

Gaiaの創業者兼CEOであるNader AlSalim(ナダー・アルサリム)氏は、声明でこう述べている。「今日の不妊治療モデルは壊れています。なぜなら、不妊治療を受けたい人と、それを受ける余裕のある人との間の格差がかつてないほど大きくなっているからです。不妊治療を受けようとする人の4人に3人は、経済的な負担が大きすぎるという理由で治療を開始しません。英国と米国では、IVFを必要とする人の7人に1人しかアクセスできない状況で、肉体的にも精神的にも負担の大きい治療へのアクセス、体験、支払い方法を見直す必要があります」。

同氏によると、Gaiaのモデルでは、同社の予測技術の対象となるサイクルで生児が生まれなかった人は、治療費を低く抑えることができるという。そして、出産した人は、治療サイクル全体の費用を月々の支払いに分散させることで、全体の費用計画を立てやすくなる。

アスタフィエバ氏はこう付け加えた。「精子率の低下や晩産化など、さまざまな要因が不妊治療サービスへの需要を高めています。不妊治療に取り組む人が増えている中、経済的な理由だけで治療を断念している多くの家族を支援する上で、Gaiaのサービスは重要な役割を果たすことができるでしょう」。

今回の投資は、Atomicoのコンシューマーパートナーであるアスタフィエバ氏が、Felix Capitalからパートナーとして参加して以来、主導する2回目の投資となる(最初の投資は、LightspeedとのZappのシリーズA)。

Gaiaは、アルサリム氏が妻と一緒に自ら体外受精を利用したことで、治療にかかる費用がいかに予測不可能であるかを実感したのがきっかけとなり、2019年に設立された。

彼はこう語った。「最初の子どもを妊娠するための道のりで、IVFのサイクルを5回、2つの国にまたがる3つのクリニックで行い、5万ポンド(約7800万円)を費やしました。私たちの場合、幸運にも子供を授かることができましたが、ほとんどの人はそこにたどり着くことすらできません。そして、痛みは精神的、肉体的なものだけでなく、経済的なものでもあることに気づきました」。

同氏は、今日、15%の人が不妊治療を必要としているにもかかわらず、2%以下の人しか不妊治療を受けられていないという全体像を指摘している。「当社が解決しようとしている問題は、人々に明瞭な情報と可視性を提供し、経済的な不安を感じることなく安心して治療を受けられるようにすることです。そしてそれ以上に重要なのは、十分なサービスを受けていない人々のために市場を開拓したいということです」。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

営業担当者がその顧客のエキスパートになるための洞察を提供するDatabookが約57億円を調達

Databookの共同設立者でCEOのアナンド・シャー氏(画像クレジット:Databook)

2021年4月にシリーズAで1600万ドル(約18億円)を獲得した、AIを活用したコンサルティング型セールスインテリジェンス企業であるDatabook(データブック)が、今度はシリーズBで5000万ドル(約57億円)を獲得した。

パンデミック3年目でリモートワークが続く中、営業担当者の88%が「現在の経済状況では顧客のニーズを予測することが重要」と感じているとSalesforce(セールスフォース)は指摘する。しかし、営業担当者は、経営幹部へのセールスに必要な戦略的洞察、関連するビジネスユースケース、パーソナライズされたコンテンツが不足していることが多い。

そこでDatabookの出番だ。同社は、営業担当者が顧客の専門家になれるようなツールを、ボタンをクリックするだけという形で提供している。Databookの顧客基盤は現在、毎年3000億ドル(約34兆円)超の売上高を生み出しており、Salesforce、Microsoft(マイクロソフト)、Databricks(データブリックス)などのエンタープライズ企業がこの技術を利用して顧客の購買体験を向上させ、結果として収益獲得を増やしている。

「Databookのプラットフォームは、営業担当者のビジネスセンスを高め、アカウントの優先順位付けを支援し、営業活動全体を解決しようとするビジネス上の問題に正面から取り組むためのものにする強制機能です」と、Salesforceのエンタープライズセールス担当AVP、Frank Perkins(フランク・パーキンス)氏は文書で述べた。「Databookは、アカウントプランニングの方法と、担当者がアカウントに売り込むための準備に革命をもたらします。そして、これらすべてを一般的な営業担当者が完全にアクセスできる方法で行います。ゲームチェンジャーです」。

MicrosoftのベンチャーファンドM12はシリーズAをリードし、Bessemer Venture Partnersが主導する今回の応募者多数のシリーズBラウンドにも参加した。さらに、DFJ Growth、既存投資家であるThreshold Ventures、Salesforce Ventures、Haystackが参加している。

Databookの共同設立者でCEOのAnand Shah(アナンド・シャー)氏は、こんなに早く追加資金を調達するつもりはなかった、と電子メールを通じて語った。実際、同社は過去4年間で3倍の売上成長を見せており、その多くはマーケティング費用をほとんどかけずに得た需要だ。

「当社の財務内容は健全で、当社の規模とステージとしてはユニークで強固なものですが、イノベーションと新規顧客開拓のスピードを支えるべく採用を加速させるために、今すぐ追加資金を調達することにしました」とシャー氏は付け加えた。

同ラウンドの主導権を争う投資家が多数いたにもかかわらず、Databookが以前から知っているBessemerを選んだ理由について「優れた実績を持つナンバーワンのクラウドSaaS投資家」であり「当社の今後をかなり支援できる広範な投資およびポートフォリオ運用チームを抱えています」とシャー氏は述べた。

同氏は、今回の資金を3つの方法で活用する意向だ。1つ目は、製品、エンジニアリング、営業、マーケティング、カスタマーサクセスなど、事業の全部門での雇用だ。2つ目は、銀行、生命科学、小売、消費財などの新しい業界への進出だ。これらの業界はすべてデジタル化の影響を受けており、顧客関係管理への投資を行い、営業担当者が顧客について十分な情報を持ち、効果的に販売するために十分な時間が必要だと考えていると、同氏は指摘する。

Databookの顧客は、官民4万4000社のグローバルデータセットを活用している。このため、3つ目の資金活用分野として、欧州とアジア太平洋地域への事業拡大、営業およびマーケティングチームへの投資を行う。これは元アクセンチュアのPeter Zuyderduyn(ピーター・ザイダーダイン)氏を2021年に欧州地域のゼネラルマネージャーに任命したことを補完するものだ。

今回の資金調達は、同社にさまざまな変化が起きている中で行われた。シリーズAラウンドから評価額は5.5倍になり、従業員数も2倍に増えた。さらに、同社は2021年を売上高350%増で終え、第4四半期は複数の7桁の取引成立を受けてこれまでで最も好調な四半期となった、とシャー氏は述べた。

「これは、当社のビジネスと顧客基盤の急成長を直接証明するものです」と同氏は付け加えた。「当社の従業員の38%はこれまで過小評価されてきたコミュニティ出身者で、今後も採用を続けるなかで、多様性、公平性、包括性にいて高い水準を保つことを約束します」。

従業員の増加は役員レベルにも及んでいる。元Google社員のNeil Smith(ニール・スミス)氏が最高技術責任者に、Tamar Shor(タマール・ショア)氏がTreasure Dataを経て製品担当上級副社長に、そして元SalesforceのBruno Fonzi(ブルーノ・フォンジ)氏がエンジニアリング担当副社長に就任した。

一方、Databookはコンサルティング型セールスインテリジェンスのパイオニアであり「今、企業のB2Bセールスが優先している」この新しいカテゴリーのリーダーであり続けている、とシャー氏は話す。アカウントベースのテクノロジーやセールストレーニングに莫大な投資を行っているにもかかわらず、法人向けソフトウェアは依然として非効率で、収益の平均41%が営業とマーケティングのチームに費やされている。シャー氏は、Databookを使用する営業チームは、平均して3倍のパイプラインを達成し、2倍近くの案件を生み出し、サイクルタイムを1.5倍速くしていると推定している。

「企業は将来に向けて、企業におけるデジタル販売の役割を見直す必要があります」と同氏は話した。「顧客価値と信頼を生み出すには、市場開拓チームのメンバー全員が、特定のビジネス成果を解決する完全なソリューションで買い手と売り手を調整することで、戦略的なコンサルタントとして機能する必要があります」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

動画により1対多のOJTを実現するマネジメント支援サービスClipLineがシリーズEセカンドクローズとして4.5億円調達

動画により1対多のOJTを実現するマネジメント支援サービスClipLineがシリーズEセカンドクローズとして4.5億円調達

動画で組織実行力を高めるマネジメント支援サービス「ClipLine」を提供するClipLineは2月15日、シリーズEラウンドセカンドクローズとして、第三者割当増資による総額4億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、あいざわアセットマネジメント、DG Daiwa Ventures、SMBCベンチャーキャピタル、山口キャピタル。シリーズEラウンドとしては総額10億5000万円の資金調達を実施したことになる。また累計調達額は25億5000万円となった。引き続きエクステンションラウンドの実施を予定しているという。

調達した資金により、ClipLineの機能を拡張し、より経営に寄り添うサービスへ進化させる。特に現場マネジメントの柱となる「店長・ミドルマネジャー支援」機能の強化および導入促進に注力する。

・店舗運営に必要な情報をスコア化するダッシュボード機能の実装
・店長・ミドルマネジャーの利用シーンに即したマルチデバイスの開発
・その他の使途として、人材獲得による組織体制の強化に引き続き注力

ClipLineは、動画とクラウドで多店舗展開ビジネスの生産性を改善するサービス。OJTを1対1ではなく、1対多人数へ拡張し、24時間いつでもどこでも新人が1人でトレーニングできる環境を構築し、指導者の拘束時間を削減するという。また、マネジメントをリモート化し、ミドルマネージャーの負荷削減を通じた販売管理費の抑制や、暗黙知の形式知化による店舗間での理念体現・ノウハウ共有などの実績があるそうだ。

投資家はメタバースのキラーアプリを必死で探す、3DソーシャルネットワークアプリBUDが約17.3億円調達

投資家たちはメタバースの次なるキラーアプリを見つけようと必死だ。ユーザーが3Dのコンテンツをカスタマイズして他の人と交流できるアプリのBUDが米国時間2月13日、シリーズA+ラウンドで1500万ドル(約17億3100万円)を調達したと発表した

「どうぶつの森」を思わせるかわいらしいキャラクターが登場するBUDは2021年11月に公開されたばかりだ。調査会社のApp Annieによれば、アプリ公開から数週間で米国など数カ国においてAndroidのソーシャルアプリカテゴリーでトップ10に入ったが、その後は100位台に沈んでいる。

勢いは落ちたが、この新しいアプリに対する中国の積極的な投資家の動きは止まらなかった。「予定オーバー」であるシリーズA+ラウンドを主導したのはQiming Ventures Partnersで、Source Code Capital、GGV Capital、Sky9 Capitalも参加した。シリーズAの調達金額は明らかにされていない。新たに調達した資金は製品の研究開発と国際市場でのユーザー獲得に充てるとBUDは述べている。

SnapのエンジニアだったShawn Lin(ショーン・リン)氏とRisa Feng(リサ・フォン)氏が共同で2019年にBUDを創業し、従業員数100人の企業へと成長させてきた。2022年末までに従業員数を200人にし、グローバルの本社を暗号資産ハブとして台頭するシンガポールに開設することを目指している。

BUDのセールスポイントの1つは、テクニカルな知識がなくてもドラッグ&ドロップで簡単に3Dワールドをカスタマイズできることだ。この点が、人気のクリエイター向けメタバースアプリで韓国インターネット複合企業Naver傘下のZepetoとは異なる。中国では最近、Zheliという新しい3DアバターソーシャルプラットフォームがApp Storeの無料ソーシャルアプリカテゴリーでトップになった。

関連記事:韓国NAVER Zがメタバースクリエイター向けの約115億円ファンドを設立

BUDやRoblox、Zepetoなどはエンドユーザーがメタバースを体験できるアプリだが、メタバースを単なるバズワードではなく現実のものにするためのインフラを開発している起業家も多い。分散型決済システムを開発している人もいれば、クリエイター向けツールを作っている人もいる。後者の例としては、3Dグラフィックス開発者向け共同作業プラットフォームで最近シリーズAで5000万ドル(約57億7000万円)を調達したTachi Graphicsがある。

関連記事:500以上のモバイルアプリが「メタバース」というバズワードを使って新規ユーザーにアピール

画像クレジット:App Storeのスクリーンショット

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(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

オンライン文房具市場をリードするためPapierは約57.7億円のシリーズCを獲得

テクノロジーを活用して非テックな製品を世に送り出しているスタートアップPapier(パピエ)は、オンラインで販売しているパーソナライズされたノート、手帳、カードなど、紙ベースの文房具に対する強い需要を受けて、事業拡大を続けるために資金調達を行った。このロンドンのスタートアップは、シリーズCで5000万ドル(約57億7000万円)を調達した。今回の資金は、米国への進出と、より多くの紙ベース製品やペン、その他デスク収納、ペンや鉛筆などの文房具、その他の書くことを支援するあらゆる物を含むデスク周りの消耗品などの製品の拡大を継続するために使用する予定だ、とPapierのCEO兼創業者のTaymoor Atighetchi(テイムール・アティゲッチ)氏は述べている。

「世界的な文房具ブランドを作ることが使命です」と彼はインタビューで語っている。「2000億ドル(約23兆円)規模の市場でありながら、強力なオンラインブランドは存在せず、他の業種に見られるようなカテゴリーを定義するようなものはありません。今回の資金調達は、その計画の重要な一部です。グローバルに、そして米国に、私たちを押し出してくれるのです」と述べている。また、Papierは現在のところ非公開を続けるものの「株式上場は絶対にこの先の旅の一部だと考えています」とも付け加えている。

パリのVCであるSingular(シンギュラー)がこのラウンドをリードし、その他にdmg ventures(ディーエムジー・ベンチャーズ)、Lansdowne Partners(ランズドーン・パートナーズ)、Kathaka(カサカ)が新たに出資し、Felix Capital(フェリックス・キャピタル)とBeringa(ベリンガ)が以前から出資している。このスタートアップは現在6500万ドル(約75億円)を調達しており、その評価額は公表していないが、過去2年間で収益は150%成長しているという。

このラウンドにおけるPapierの主要な投資家の1人が、世界有数の新聞社であるDaily Mail Group(デイリー・メール・グループ)のコーポレートベンチャー部門であるというのは興味深いことだ。出版業界など紙媒体の産業がどんどんデジタル化している今、Papierはある意味、アナログ製品の無名から脱却し、収益基盤全体をカニバライズしない興味深いルートを提示していると言えるだろう。

同スタートアップは、伝統的なものを現代の消費者の興味を引くような方法で倍増させることで、単純に成長する機会を見出したのである。つまり、カバーデザインは、InstagramやPinterestなどのサイトで目を引くモダンなグラフィックに寄せているということだ。V&A(ブイ・アンド・エー)、Mother of Pearl(マザー・オブ・パール)、Temperley London(テンパリー・ロンドン)、Rosie Assoulin(ロージー・アズーラン)、Headspace(ヘッドスペース)、Matilda Goad(マチルダ・ゴード)などの有名企業とのコラボレーションにより、購入者の名前とひと言でそのデザインをパーソナライズする方法を提供している。

そして、これらの製品は、若い消費者の間で生まれているある種の美学に対応していると、アティゲッチ氏は考えている。現代の私たちは、何でもできるアプリで埋め尽くされた海の中を泳いでいる。今日の話題は、NFTのような仮想オブジェクトに価値を与え「株」を購入することかもしれない。ミレニアル世代やそれより若い消費者は、デジタルネイティブであるがゆえに、これらをより敏感に感じているのかもしれない。

しかし、プロダクティビティや余暇の過ごし方、そして決定的なのはお金の使い方に関して、彼らは自分たちの生活の大部分を決めているスクリーンに代わるものを積極的に探しているようだ。テクノロジーを使って生産され、販売されるPapierの製品は、現代のデジタル世界に対する保護カバーのようなものでもあるのだ。

ノートの典型的な顧客は高齢者だと思われるかもしれないが、ミレニアル世代は現在Papierの最大の顧客層で、売上全体の53%を占めており、Z世代ユーザーは最も急速に成長しているセグメントであることがわかっている。

アティゲッチ氏によると、同社の成長計画の1つは、すでに販売している製品の市場での認知度を高めることだという。英国ではブランドの認知度は約30%、米国では15%だという。つまり「当社の存在を知らない文房具バイヤー」へのマーケティングに多くの投資を行うことになる。

この点で特に注力するのが米国で、同社は2022年の売上高の40%を占めると予測しており、2019年以降5倍に成長している。

同社は、製品のデジタル版を作る予定はない。書いたメモをアプリに変換するEvernoteのようなスタイルはとらない。しかし、アティゲッチ氏は、消費者がデジタル世界から離れるための方法を提供するという考えにある他のデジタルビジネスと連携したいと述べている。実際、この分野は中小企業だけでなく、iOSに新しいモードを組み込み、通知を最小限に抑え、1日の特定の時間帯にデバイスを使用する方法を合理化することによって、人々が画面から離れるのを助けているApple(アップル)のような大手プラットフォーム企業も推進している技術だ。

「Papierは、このアナログ革命の動きを拡大するものです」とアティゲッティ氏は言い、これはPapierだけではないとも指摘した。ただ他の市場をどう見るか次第だと。「Calm(カーム)もアナログ製品を販売しています。Sleepと呼ばれています」と語っている。

投資家はそのコンセプトと将来性を高く評価している。

「このブランドの魅力は、家庭と一体化したスタイルにあります」と、SingularのNahu Ghebremichael(ナフ・ゲブレミーチェル)氏はいう。「最近では、多くの人がホームオフィスで仕事をするようになりました。以前ほど、仕事と生活を切り離して考えることができなくなっています。Papierは、その両方の領域で何かできるかもしれません」と述べる。彼女はこのラウンドで役員に加わっている。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Akihito Mizukoshi)

スキンケア・コスメティックのD2Cブランドを展開するリバースラボが約2億円調達、新規商品を開発・既存商品改良

スキンケアD2C「sirobari」とコスメティックD2C「sirocos」を展開しているリバースラボは2月10日、第三者割当増資による総額約2億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、ダイヤモンドファンタジーおよび複数のエンジェル投資家。2019年11月設立以来初のエクイティファイナンスとなる。調達した資金は、新規商品の開発と既存商品の改良、プロモーション活動にあてる。

スキンケアやコスメティックといった化粧品の多くは、店頭などオフライン販売が主流となっている。これにより大資本による絞り込まれたラインナップの商品が安価に購入できるものの、ニッチな悩みやコンプレックスを解消するための商品は販売チャネルが限られ高価格帯になってしまうという。リバースラボは、「ニッチな悩みやコンプレックスに寄り添ったラインナップの構築」「機能性重視の商品開発」「ポジティブでスタイリッシュな商品パッケージの開発」「継続しやすい価格とサービスの提供」などにより、顧客の心理的・物理的なハードルを抑えたプラットフォームを提供し、共に解決できる企業を目指し、資金調達を実施したという。

2019年11月設立のリバースラボは、「ー戻ることは罪じゃないー RETURN TO INNOCENCE」をコンセプトに、スキンケア・コスメティックのD2Cブランドを運営するほか、他社D2Cブランドの立ち上げ支援コンサルティングを提供。sirobariは発売から1年半経過しており、累計販売数30万枚を超えるという。