インターネットの50年、われわれは何を学んだのか、そしてこれからどこへ向かうのか?

私と、私の大学の院生のチームが、最初のメッセージをインターネットで送信したのは、1969年10月のロサンゼルスの暖かな夕方のことだった。それが、世界的規模の革命の始まりだったとは、だれ一人考えてもみなかった。最初の2文字、具体的には「Login」の「Lo」を、UCLAのコンピュータ室でタイプ入力すると、ネットワークはクラッシュしてしまった。

それゆえ、最初のインターネットメッセージは、期せずして「Lo and behold(驚いたことに)」の最初の2文字と同じ「Lo」だったことになる。私たちは簡潔で強力、かつ予言的なメッセージを送信したのだった。

当時はまだARPANETと呼ばれていたが、それは政府、産業界、そして学界によって設計された。科学者や学者が、互いの計算機リソースにアクセスできるようにして、研究に必要な大きなファイルを交換し、時間とお金、行き来する手間を節約するためのものだった。ARPA、つまりAdvanced Research Project Agency(高等研究計画局。現在は先頭にDefense=国防を付けて、DARPAと呼ばれる)は、民間企業のBolt BeranekとNewmanに委託して、そこの科学者にルーター、つまりInterface Message Processorを実装させた。 UCLAは、この芽を出し始めたネットワークの、最初のノードとして選ばれたのだった。

1969年の12月の時点では、ノードは4つだけだった。それらは、UCLA、スタンフォード研究所、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、それにユタ大学だ。このような最初期の段階を経て、このネットワークは指数関数的な成長を遂げた。接続されたホストコンピュータの数は、1977年までで100台、1989年までで10万台、1990年代初頭で100万台、そして2012年には10億台に達した。現在では地球の全人口の半数以上に行き渡っている。

その過程で、われわれは予期していなかったようなアプリケーションの出現に驚かされた。それは突如として現れ、またたく間にインターネット上で広範囲に行き渡った。例えば、電子メール、ワールドワイドウェブ、ピアトゥピアのファイル共有、ユーザー生成コンテンツ、Napster、YouTube、Instagram、その他のソーシャルネットワークなどだ。

こんなことを言うと、夢想家のように思われるかもしれないが、初期の段階では、オープンな雰囲気、コラボレーション、共有、信頼、そして道徳規範、といった素晴らしい文化を楽しんでいた。インターネットは、そのようなものとして構想され、育まれたのだ。その初期には、私はARPANETに参加している人を、全員個人的に知っていた。そしてわれわれは、皆行儀よく振る舞っていた。実際、そうした「ネチケット」へのこだわりは、インターネットの最初の20年間には維持されていた。

今日では、インターネットが異論の余地がないほど素晴らしく、オープンで、協力的で、信頼でき、さらに倫理的であると言う人は、まずいない。データと情報を共有するために生まれたメディアが、どうやって、そのような疑わしい情報が交錯する世界になってしまったのか。共同から競合へ、同意から不和へ、信頼に足るデジタルリソースから疑わしい情報の増幅器へと、いったいどうして変わってしまったのか。

その堕落は、1990年代の初頭に始まった。ちょうどスパムが初めて登場したころ、インターネットが消費者の世界に深く浸透するにつれ、インターネットを収益化しようという激しいまでの機運が高まった。これによって、詐欺、プライバシー侵害、偽ニュース、サービス妨害など、数々のダークサイドの勢力が勃興した。

そうして、インターネット技術の進歩と革新の性質も変化した。リスクを回避するために、「ムーンショット」という言葉に象徴されるような、初期の夢想的な文化がないがしろにされ始めたからだ。われわれは、まだこうした変化に苦しめられている最中だ。インターネットは、共通の価値観と正しい事実に基づいて、情報の分散管理、民主主義、そしてコンセンサスを促進するように設計されている。その生みの親たちが抱いていた大志を完全に達成するという点では、これは失望でしかない。

民間勢力の影響力が増すにつれて、彼らの方針と目標が、インターネットの本質を支配するようになった。商業利用の方針が影響力を持つようになると、企業はドメインの登録に対しても課金できるようになり、クレジットカードの暗号化が電子商取引への扉を開いた。AOL、CompuServe、Earthlinkのような民間企業は、やがてインターネットへのアクセス料として月額を請求するようになり、このサービスを公共財から私財へと転換させた。

インターネットを収益化することが、その景色を変えてしまった。一方では、それは大きな価値のある貴重なサービスを実現した。これには、普及した検索エンジン、広範な情報の宝庫へのアクセス、消費者の助成、娯楽、教育、人間同士のつながりなどを挙げることができる。もう一方では、それはさまざまな領域における濫用と支配につながっている。

その中には、企業や政府によるアクセスの制限、経済的なインセンティブが短期間でも企業の利害と一致しない場合にみられる技術開発の停滞、ソーシャルメディアの過剰使用からくるさまざまな形の影響、などを見て取ることができる。

こうした問題を軽減するために、何かできることがあったのではないかと問われれば、すぐに2つの方策を挙げることができる。まず第1に、厳格なファイル認証機能を提供すべきだった。つまり、私が受け取ったファイルは、私が要求したファイルの改変されていないコピーであることを保証する機能だ。そして第2に、厳格なユーザー認証機能も用意すべきだった。つまりユーザーが、自分がそうだと主張する人物であることを証明する機能だ。

そうした機能を準備だけしておいて、初期の段階では無効にしておくべきだった。その時点では、偽のファイルが送信されることもなく、ユーザーが身分を偽ることもなかったのだから。そして、ダークサイドが顕在し始めたときに、そうした保護機能を徐々に有効にして、悪用の程度に見合うレベルまで引き上げることで、悪用に対抗することができたはずだ。そうした機能を最初から提供するための簡便な方法を用意しておかなかったために、今さらそうすることは厄介だという事実に苦しんでいる。その相手は、この広範に拡がったレガシーシステム、インターネットなのだ。

誕生から50年が経過した今、インターネットはこれからの50年でどのように進化するだろうか? それはどのようなものになるのだろうか?

その未来を映し出す水晶玉は曇っている。しかし、私が50年前にも予測したように、それが急速に「見えない」ものになっていくことだけは見通せる。つまり、インフラとして目につかないものになるだろうし、そうなるべきものでもある。

電気と同じくらいシンプルで、使いやすいものになるはずだ。電気は壁のコンセントに差し込むという、拍子抜けするほど簡単なインターフェースで、直感的に利用できる。どのようにしてそこに届くのか、どこから来るのか、知る必要もないし、興味もないだろう。それでも、必要なときにいつでも使えるのだ。

残念ながら、インターネットへのアクセスは、それよりはるかに複雑だ。私がある部屋に入ったとする。その部屋は私がそこにいることを知るべきだ。そして、サービスとアプリケーションを、私のプロフィール、アクセス権、さらに好みに応じて私に提供するべきなのだ。私は、普通の人間とのコミュニケーションと同じように、話したり、手を動かしたり、触れたりすることで、システムと対話できるようになるべきだ。

われわれは、そのようなことが可能な未来に向かって急速に進んでいる。モノのインターネットにより、ロジック、メモリ、プロセッサ、カメラ、マイク、スピーカー、ディスプレイ、ホログラム、センサーを備えた環境インフラが整備されるからだ。そうした目に見えないインフラを、インターネットに埋め込まれた知性を持ったソフトウェアエージェントと組み合わせることで、上で述べたようなサービスがシームレスに提供されるようになる。一言で言えば、インターネットは基本的に、世界中に張り巡らされた神経系のような役割を果たすようになる。

これが、私が考える将来のインフラの真髄だ。しかし、すでに述べたように、アプリケーションやサービスを予測するのは非常に困難だ。まったく予期しなかったものが、爆発的な驚きとともに、忽然と現れることがある。何ともはや、頻繁に刺激的な驚きをもたらす世界規模のシステムを、われわれは作ってしまった。なんて面白い世の中なんだ!

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

次にゲームのストリーミングサービスを立ち上げる大企業はウォルマートか?

今年のGDC(Game Developers Conference)は、GoogleがStadiaでスポットライトを独占した。具体的な情報が欠けてるぶんを、派手な前宣伝で補ったような形だ。でもゲームのストリーミングサービスをねらっているのは、Googleだけではない。US Gamerの記事によると、Walmart(ウォルマート)もレースに参加しているらしい。

このリテイラーは最近の数年間、ハイテク分野への進出を画策していた。世間の注目を浴びるような買収を繰り返し、その中にはAmazonに対抗するJet.comもあった。店頭在庫をチェックするロボットを、50ぐらいの店舗でテストしてきた。そして最近CTOのJeremy King氏が辞めたことは、次の大きな事業の到来を予感させた。

上述の記事では「GDCでWalmartがデベロッパーやパブリッシャーたちと会っている」と報じている。しかし話がどこまで進んでいるのかはわからないし、このリーク情報に関与した連中は当然ながら匿名希望だ。同社に、サービスを試みるためのバックエンドのインフラストラクチャがあることは間違いない。すでに国内の大量の顧客情報があるから、彼らに大量のビデオゲームを売り込むこともできる。

しかし1月には、ビデオストリーミングサービスのプランを捨てたと報じられているから、GDCにおける会談も具体性はまだないのかもしれない。

画像クレジット: SAUL LOEB/AFP

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ビデオ会議サービスで黒字を達成したユニコーンのZoomがナスダック上場を申請

ビデオ会議サービスのZoomは2017年に10億ドル(約1100億円)の評価額になり、来月早々にナスダックに上場することを申請した

2019年に上場を目指すテクノロジー系ユニコーンは徐々に増えてきているが、その一員であるZoomの重要な特徴は、黒字企業であることだ。

Zoomは、2011年にEric Yuan氏が創業した。彼はWebExの初期のエンジニアだったが、それは2007年にCiscoが32億ドルで買収した。Zoomを立ち上げるまでの4年間、彼はCiscoのエンジニアリング担当バイスプレジデント(VP)だった。彼が先月、本誌に語ったところによると「もう二度と会社を売るようなことはしない」と言う。どうやら、WebExの買収後の待遇に不満だったことが、今回会社を売るよりも上場を選んだ動機のようだ。

Zoomは、これまで累計で1億4500万ドルを調達し、2019年1月31日で終わる2019会計年度では売上が前年比倍増の3億3000万ドル、粗利益は2億6950万ドルだった。その前の2017年と2018年の対比でも売上は倍増以上を記録し、2017会計年度の6080万ドルに対し2018会計年度は1億5150万ドルだった。

損失は縮小しており、2017年の1400万ドルが2018年には820万ドル、2019年1月に終わる会計年度では750万ドルだった。

IPOの申請書類によると、Zoomを支えているEmergence Capitalが、IPO前の株式の12.5%を保有する。そのほかの投資家とそのIPO前株式保有率は、Sequoia Capital(11.4%)、元Zoomの取締役Samuel Chen氏が関わるファンドDigital Mobile Venture(9.8%)、そして中国人億万長者で世界最高のお金持ちの一人とされるLi Ka-shing氏が保有するファンドBucantini Enterprises Limited(6.1%)だ。

Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)

とJP Morgan(JPモルガン)、そしてGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)が上場のリード役を任されている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

健康保険や福利厚生が必要なフリーランスにはCatchがある

最も注目を集めているY Combinatorスタートアップの1つであるCatchは、UberやPostmates、そしてギグエコノミーにかき回されて滅茶苦茶になった状況を整理すべくシードラウンドで多額を調達した。Catchは、フリーランスや業務委託者(コントラクター)、その他の福利厚生が受けられていない人に健康保険や退職金積立プラン、源泉徴収サービスを販売している。シンプルにした社会保障給付サービスを構築して整理することで、Catchは将来のセーフティーネットを提供できる。

「この競争社会で存続し続けるには、不平等や変動性を解決する必要がある。我々が思うにCatchは、雇用主や政府のみが福利厚生の給付ができるというところに、別の選択肢を提供する初の存在となる」とCatchの共同創業者でCOOのKristen Tyrrell氏は書いている。同じく共同創業者でCEOのAndrew Ambrosino氏は、企業であれば通常、人事マネジャーを雇ってさばく書類作業やプログラムをこなすのに苦労し、そこに問題があることに気づいた。「福利厚生給付をセットアップするのは大変だった。この分野の専門家になる必要があり、たとえ専門家になっても必要な福利厚生給付を実行するのはかなり難しい」。Catchは、こうした面倒だが必須の作業をあなたに代わってすべて引き受ける。

Catchは数万ものユーザー向けにプロダクトを試験展開し、そしていま本格化させようとしている。TechCrunchが見たところ、かなりの競争となったシードラウンドを完了させた。Khosla VenturesやKindred Ventures、NYCA Partnersが共同で主導したこのラウンドで510万ドルを調達し、評価額は2050万ドルとなったことをCatchは明らかにした。100万ドルものプレシード投資に続く今回のラウンドでの調達金は健康保険や生命保険のサービス拡大に使われる。最も優れたY CombinatorスタートアップはDemo Dayの前に十分に資金調達するという傾向があるが、Catchはそのうちの1つだ。

「雇用主がつくって提供するシステムとしての福利厚生は中世の中流階級を作り出した。戦後の経済が発展し、企業は健康保険や、家族が末長く安定して暮らせるような年金という形で福利厚生を提供している」とTyrrell氏は語る。Tyrrell氏は以前、学生の借金返済給付スタートアップのFutureFuel.ioでプロダクト担当のディレクターを務めていた。「民間部門の成長により(明らかに自給自足だ)、1970年代と80年代には、金融リスク管理は政府から雇用主へと大きくシフトした。公共のセーフティネットは民営化というソリューションを選んだ。テクノロジー発展が進むにつれ、雇用主と従業員は仕事はどうあるべきか再定義を続けた。官僚的でフレキシブル性に欠ける給付システムは変化に対応することができず、民間の社会保障は崩壊した」。

オンデマンドエコノミーの出現で、問題は近年大きくなりつつある。オンデマンドエコノミーでは数百万人がUberドライバー、Instacart買い物客、 DoorDash配達人、TaskRabbit従事者となった。一方、リモートワークやデジタル的遊牧生活に非難の目が向けられていたため、より多くの人がフリーランスや業務委託者、福利厚生なしのフルタイム従業員を選ぶようになった。「新しい労働階級が出現した。収入に変動があり、しかもその収入は入り組んでいて、かつ自動貯蓄や個人向けの退職プラン、独立した健康保険のような二次的な金融商品へのアクセスが限られている人たちだ。我々は、インターネットの急激な浸透で生まれた新たな機会でもって新ミレニアム時代に突入した」とTyrrellは声高に話した。「過去15年は型にはまらないプロレタリアートに借りをつくった。今こそ、個人に合った、使い勝手のいい、モダンでフレキシブルなセーフティネットを作るときだ」。

現在Catchは以下のようなサービスを提供している。いずれも独自のもので、それぞれに売上を上げている:

・Health Explorer(健康保険)
ユーザーが保険業者のプランを比較でき、補助金を計算する。Catchはブローカーとしての役割を果たし、保険業者から手数料を回収する。

・Retirement Saving(老後の備え)
ユーザーは年金制度のIRAとRoth IRAに対応するCatchのロボアドバイザーを使うことができる。Catchは貯蓄資産に関する業界基準の1ポイントを得る。

・Tax Withholding(源泉課税)
のちに支払うことになる税金にあてる金を自動的に貯められ、米連邦預金保険公社の保護を受けられるCatchの口座が提供される。Catchは貯められた金の利息を得る。

・Time Off Savings(休暇のための積立)
休暇中も収入が得られるようにするため、Tax Withholding同様にその資金を自動的に貯められる。Catchはその利息を得る。

こうしたサービス、そして残りのサービスもGuideを通じて管理されている。どういった給付を利用していて、何を必要としているのかについて、いくつかの質問に答え、銀行口座をコネクトし、どういったプログラムを希望していて、ノーティフィケーションを受け取るようにするかどうかを選ぶ。ノーティフィケーションはCatchがユーザーの決定や承認を必要とするときに送られてくる。複雑な手続きは最小限になるようにデザインされていて、もしあなたに子供がいるなら、再設計するかわりにワンクリックであなたのプログラムに子供を加えることができる。そうしたシンプルさがCatchの爆発的成長に火をつけ、源泉課税や休暇のための積立、老後の備えの残高は、過去3カ月毎月300%ずつ増えている。

2019年には、Catchは自社ブランドの学生ローン返済、眼科・歯科治療保障、LadderやEthosといったパートナーを通じての生命保険と補助金、Blue ShieldやOscarといった既存保険会社を通じての保険料支払いなどを新たに展開する計画だ。そして2020年には、自社でブレンドした老後の備えソリューションや、収入の平準化ツールをつくりたいと考えている。

もしこうしたサービスがあなたの興味を引くものでなければ、それこそがポイントだ。そうしたかなりつまらないことをあなたがアシストなしにこなす代わりに、Catchがそれを引き受ける。給付サービスGuideはウェブで使えるようになっていて、iOSとAndroidのベータアプリも間もなく展開される予定だ。Catchは消費者に直接販売することにフォーカスしている。というのも、「あまりにも多くのスタートアップが、自分たちのプロダクトが必要とされていると認識する前に販売チャネルやパートナーシップのところで時間を無駄に費やし、迷い込んでしまった、というケースを見てきたからだ」とTyrrellは書いている。ゆくゆくは、ユーザーが支払いを受けているところに直接機能を統合させたい、とCatchは考えている。

Catchの最大の競争相手はExcelスプレッドシートで手当たり次第福利厚生を管理している人たち、そして政府のヘルスケアと特定のプログラムのためのソリューションの寄せ集めだ。米国民の21%が退職後に向けた貯蓄はゼロで、これはCatchの事業拡大にとっては課題であると同時に大きなチャンスでもある。競合する1社、Track.taxはサブスクリプション料金を課していて、これがCatchに客を奪われている原因となっている。BettermentやWealthfrontのような自動応答アドバイザーは、収入がかなり不安定なギグワーカーにはあまり向かない。福利厚生が抑えられたギグエコノミーは、我々の手助けになるものなのだろうか、それとも妨害するものなのだろうか。Catchの創業者たちはどう考えているのだろう。「物事は複雑だが、結局のところギグエコノミーの現況は社会にダメージを加えている。フリーランスや業務委託者にサポートを提供するよりいいシステムなしには、彼らを不安定な状況にし、彼らは経済的にも成功しない」。

心配事はないか尋ねたところ、「セーフティーネットは個人向けに作られていない。人事部門や雇用主を通じて提供されるようにでできている。我々が提供するプロダクトが、グループもしくは企業のプロダクトと同じくらいしっかりしたものでないことをかなり憂慮している」。例えば、IRAだと個人向けには年6000ドルという限度があるが、同じような企業の確定拠出個人年金制度401kの限度は1万9000ドルだ。そして健康保険は個人向けよりグループ向けの方が安い。

そうした懸念を乗り越えるために、Catchはさまざまな種類の金融サービスをつくったエンジェル投資家の膨大なリストをつくった。このリストには、NerdWallet創業者Jake Gibson氏、 Earnest創業者Louis Beryl氏、Ben Hutchinson氏、ANDCO(Fiverrに買収された)創業者Leif Abraham氏、Totem創業者Neal Khosla氏、Commuter Club創業者Petko Plachkov氏、Playable(Stripeに買収された)創業者Tad Milbourn氏、そしてSynapse創業者Bruno Faviero氏が名を連ねている。そしてまた、さまざまなベンチャーファンドも組み入れた。そこには、Urban Innovation Fund、Kleiner Perkins、Y Combinator、Tempo Ventures、Prehype, Loup Ventures、Indicator Ventures、Ground Up Ventures、そしてGraduate Fundが含まれる。

3つの主な出資団体がいて、そのほかにも多くの出資者がラウンドに参加したという事実により、どの出資者もCatchを監督する責任はないと考えていないことを願う。米国民の8000万人が雇用主がスポンサーとなった社会保障給付がなく、2700万人が健康保険に加入していない。そして25〜34才の平均在職期間が2.8年であることは仕事の格差につながっていて、我々の労働力は強固なものではない。Catchは、ドジをする人にも救いの手を差し伸べる従来型のソフトウェアスタートアップのような運営はできない。注意深く動き、諸事を確固たるものにすれば、労働者の信頼を得て、福祉全体において重要な存在になるだろう。

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(翻訳:Mizoguchi)

クラウドサービスの最適なメンテ時期を予測できるオープンソース・ソフトウェア登場

クラウドサービスはもはや、「市民権を獲得した」という表現を超えてメインストリームへとなりつつある。TechCrunch Japanでも、日々新しく生まれるクラウドサービスを紹介しているところだ。ただ、特にグローバルで利用されるクラウドサービスには1つの課題がある。世界中から昼夜問わず利用されるため、システム停止を伴う計画的なメンテナンスを行いにくいというものだ。

しかしながら、メンテナンスを怠ることで障害が発生してしまえば、顧客離れにつながり運営企業に多大なダメージを与えてしまう。

そんな中、東京都市大学の知識工学部経営システム工学科の田村慶信教授ら研究チームは、クラウドサービスの最適なメンテナンス時期を予測するソフトウェアを開発したと発表した。同ソフトウェアにすでに判明しているバグデータを入力することで、メンテナンスにかかるコスト(費用や時間)が最小限となる時期を予測することができる。

写真:https://www.tcu.ac.jp/news/newsrelease/20190320-21316/

上の図は、今回開発されたソフトウェアにバグデータを入力したときに表示されるグラフだ。縦軸がコスト、横軸が時間で、この図からはサービス稼働から300日目においてメンテナンスを行うことが最適だと読み取ることができる。

このソフトウェアは田村研究室のウェブサイトでソースが公開されているため、誰でも自由にダウンロードして無料で使用することができる。

東京都市大学はプレスリリースの中で、田村研究室では今後「クラウドサービスから得られたビッグデータを深層学習により解析することで、クラウドサービス全体を自動修復できる手法を開発していく予定。これにより、これまで多大な人件費や日数をかけて人海戦術で行われていたメンテナンス作業を自動化し、無人化を実現する」とコメントしている。

趣味やスポーツなどのサークル検索・運営サービス「つなげーと」が資金調達、マーケティングツールへと進化めざす

スポーツなど同じ趣味をもつ仲間同士(サークル)のコミュニティプラットフォーム「つなげーと」を運営するつなげーとは3月22日、朝霞伸管工業、バリトゥード、個人投資家の宮嶌裕二氏、SEA ソーシャルベンチャーファンド、名古屋テレビ・ベンチャーズから資金調達を実施したと発表した。調達額は非公開。

つなげーとは、ウェブやアプリで、サークルを探す人とメンバー募集をするサークルをつなぐサービスだ。メンバー用のページでは、日々の活動を記録できる「ウォール」や個人メッセージの送信機能などのコミュニケーション機能が備わっている。また、サークルが何らかのイベント(例えばお花見大会など)を行う際には、サービス上で日程管理や参加申し込みなどができるのも特徴だ。同サービスには現在、1万3000以上のサークルが登録されている。

つなげーとは今回調達した資金を利用して、同サービスをマーケティングプラットフォームとして進化させる。企業のアカウントと既存のサークルをつなげ、リアルな顧客接点をもたせる「コミュニティマーケティング・プラットフォーム」を目指すという。

Webアプリのエラーの原因を早く見つけるLogRocketが12.2億円超を調達

Webサイトで訪問者がトラブルを体験するたびに、その企業の印象が悪くなる。だから、問題はできるだけ早急に解決すべきだ。そのための情報をWebサイトの開発チームに提供する、マサチューセッツ州ケンブリッジのLogRocketは米国時間3月21日、シリーズAで1100万ドル(約12.2億円)を調達したことを発表した。

このラウンドをリードしたのはBattery Venturesで、これにシード投資家のMatrix Partnersが参加した。未発表の400万ドルのシードラウンドを合わせると、同社の調達総額は1500万ドルになる。

創業者のMatthew Arbesfeld氏とBen Edelstein氏は幼なじみで、ともにボストンの郊外で育った。大学はMITとコロンビア大学に分かれたが、その後二人はサンフランシスコに移り、主にフロントエンド専門のエンジニアとして働いた。

LogRocket社のアイデアは、Webアプリケーションのエラーを調べるときの、彼ら自身のフラストレーションから生まれた。問題を見つけるために、手作業による調査をたくさんしなければならない。時間がかかりすぎる。そこから起業のアイデアが生まれた。

Arbesfeld氏はこう説明する: 「LogRocketは、ユーザーのすべてのアクティビティをリアルタイムで記録し、デベロッパーがトラブルシューティングをするとき、それらを正確に再現できるようにする。すると、どこで問題が起きたのかが早くわかるし、対策もしやすい」。

スクリーンショット提供: LogRocket

彼らのツールは、問題を起こしているアクティビティのHTMLとCSSのコードを捕捉し、その部分の操作のビデオも撮る。そしてエラーや問題が生じるとエンジニアはそのビデオを調べて、エラーが生じたとき彼または彼女が何をやっていたのかを見る。このやり方だと、問題の発見と解決がとても早い。

Arbesfeld氏によると、ユーザー体験の全体ではなく問題に関連したコードを捕捉するから、ビデオは本当は必要ない。「ユーザーがトラブった瞬間のコードを見つけて、問題領域にフォーカスできる」と彼は説明する。

ユーザーはそのデータに、LogRocketのダッシュボードからアクセスできる。また、Zendeskのようなヘルプデスクソフトウェアに統合してもよい。同社は今急成長中で、立ち上げから18か月で社員数25名、顧客数500社に成長した。顧客企業の中には、RedditやIkea、Bloombergなどがいる。

今回の資金調達は、彼らにとっては長旅の始まりだ。「顧客層をもっと広げる必要があるし、そのためには有能な営業とマーケティングの組織が必要だ」とArbesfeld氏は語る。「これまでのデータを活用すれば、トラブルが実際に起きてからではなく、前もって問題が起きそうな部分を見つけることもできる」と彼は言う。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

毎日のつまらない業務を自動化、RPAのUiPathが440億円超を調達

IT企業向けのロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)プラットフォームを展開しているUiPathはシリーズDでベンチャーキャピタルから4億ドル超(約440億円)を調達中で、評価額は70億ドル超(約7750億円)になる見込みだ。Business Insiderの報道後、TechCrunchに対し認めた。

我々はUiPathにコメントを求めていた。

2005年創業のUiPathはこれまでに4億900万ドルを調達していて、つまりこのスタートアップにこれまで投資された資金の累計額、そして評価額を今回のラウンドは倍増させることになる。2億2500万ドルを調達したシリーズCは6カ月前に行われたばかりで、PitchBookによるとその時点での評価額は30億ドルだった。UiPathはプロ中のプロの投資家であるCapitalGとSequoia Capitalに支援されていて、この2社とシリーズCを共に主導したのはAccel、Credo Ventures Earlybird Venture Capitalなどだ。

今回のシリーズDは機関投資家が主導している。

UiPathは、事業を展開する中で毎日のつまらない業務を簡単にするのを目的とする自動化ソフトウェアのワークフローを作っている。RPAというのはおそらく間違った名称だろう。というのも、必ずしも我々が今日思い浮かべるようなロボットではないからだ。どちらかというと、買掛け金の勘定のような日々の作業でかなり繰り返し行われることをコンピューターでさばくようにする、より洗練されたマクロレコーダーか、ワークフロー自動化ツールに近い。

たとえば、プロセスは小切手をスキャンすることから始まり、そして支払人や金額をOCRを使って読み取り、Excelのスプレッドシートにその情報を追加し、これまでその作業を行なっていた人に確認のために電子メールを送る。それでも人はまだ役割を担っている。特に例外のものを処理する場合だが、過去のシステムに比べるとオートメーションと言ってもいいくらいのレベルだ。そうでなければ現代的なツールから何の益も得られない。

UiPathは2015年に民間資本の調達を始めた。以来、評価額と経常利益は急成長している。2018年3月にシリーズBで評価額を11億ドルにし、シリーズCでその数字を倍以上にし、さらには最近のラウンドでまた倍にしようとしている。これは膨張しつつある経常利益のおかげだ。

経常利益が2年足らずの間に100万ドルから1億ドルになった、とUiPathは話す。シリーズC時点で1800社のクライアントを抱え、1日あたり6社増えていた。UiPathの昨年の経常利益は1億8000万ドルで、順調にいけば2019年の経常利益は4億5000万ドルとなる、と情報筋は語っている。

イメージクレジット: Busakorn Pongparnit / Getty Images

 

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(翻訳:Mizoguchi)

飲食店運営インフラをまとめたカオスマップが登場(2019年版)

飲食店向けの物件を月単位で貸し借りできるプラットフォーム「よじげんスペース」を運営するよじげんは3月20日、飲食店運営インフラサービス(RIaaS)をまとめたカオスマップを公開した。

よじげんはRIaaSを「店舗/キッチンシェア」「予約」「HR」「決済/レジ」「デリバリー」「食材仕入」「開業支援」「フードロス」「持ち帰り」の9つに分類した。その中でも数が多いのが、予約と決済/レジに分類されるサービス群だった。

これについて、よじげん代表取締役の荒木賢二郎氏は「想像以上に予約や決済分野のサービスが多かった。飲食店経営者は総じて年齢も高めでITリテラシーが低いという状況を踏まえると、正直、それぞれのサービスの違いもわからず、どれを使えばいいのか混乱してしまいがち。事実、よじげんスペースで開業される方の中で、カード決済を導入したいがどのサービスが良いのかわからず、時間だけが経過してしまうということもあった」とコメントした。

そして、提供されているサービスの多さ、飲食店を運営する側のITリテラシーの度合いを踏まえると、今後は従来の「開業支援」だけでなく、サービスの選定や導入方法なども含めた「運営支援」を行うスタートアップが増えそうだとも話している。

マイクロソフトの「Windows Virtual Desktop」は複数のWindows 10セッションを動かせる

昨年マイクロソフトは同社の仮想デスクトップサービスWindows Virtual Desktop発表した。そのときは非公開プレビューだったが、しかし米国時間3月20日からは、エンタープライズユーザーなら誰でも、Azureのクラウドでホストされる仮想のWindows 10デスクトップがどんなものか試すことができる。

ただしこれは、あくまでも企業のためのプロダクトである。クラウドのどこかにある仮想マシンの上でApex Legends(エーペックスレジェンズ)をプレイするために、使うものではない。このようなサービスのねらいは、エンタープライズがマシンやソフトウェアの管理で苦労することなく、サービスに含まれているOffice 365 ProPlusなどを使えることにある。また規制の厳しい業種では、外回りの社員にセキュリティ完備の仮想デスクトップを使わせて、データの安全を保持できる。

ちょっとすごいのは、ひとつの仮想マシン上で複数のWindows 10セッションを動かせることだ。

なお、このサービスの機能の多くは、マイクロソフトが昨年買収したFSLogixの技術に負っている。具体的にはたとえば、これらの技術によって、ちょこっと短時間使うようなユーザーに、OutlookやOneDriveなどのアプリケーションへの比較的速いアクセスを与える。

Microsoft 365のエンタープライズ顧客にとってこのサービスは、すでに料金を払っているサブスクリプションに含まれている場合が多いが、Azureのサブスクリプションは別途必要になり、クラウドで動く仮想マシンにお金を払うことになるだろう。

目下このサービスは、AzureのUS East 2とUS Centraのリージョンでしか利用できない。でもプレビューが終わったら、サービスの利用域は全リージョンに拡大するだろう。

関連記事: Microsoft’s new Windows Virtual Desktop lets you run Windows 10 in the cloud(昨年秋のWindows Virtual Desktopの発表、未訳)

画像クレジット: TechCrunch

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

独禁法推進派がもくろむFacebookの分社化

議会の反トラスト法委員会の、新たに任命された議長に呼び出されたら、いよいよ心配すべき時が来たと覚悟すべきだろう。

ニューヨークタイムズ紙に掲載された論説で、ロードアイランド州選出のDavid N. Cicilline議員は、連邦取引委員会に対し、反トラスト法に抵触する可能性がないかどうか、Facebookの活動を調査するよう求めた。Cicilline氏は、同社が密かな報酬と引き換えに10代の若者のデータを収集していたというTechCruchの独自の調査報告や、その他のスキャンダルを論拠としている。

「何か悪事が明らかになるたびに、Facebookは否定、中身のない約束、謝罪キャンペーンを順番に繰り返します」と、Cicilline氏は書いている。「それでも、何も変わりません。だからこそ私は、反トラスト法と、商業および行政法に関する下院小委員会の委員長として、Facebookの行為が反トラスト法に違反しているかどうかの調査を求めます」。

Cicilline氏の論説は、本来は有効な規制機関であるはずのFTCに圧力をかけることを狙ったものだ。それが現在までFacebookに対して何もできていないために、「重大な信頼性の危機に直面している」と、Cicilline氏は非難している。またCicilline氏は、FTCに対して行動を促す一方で、同じ論説では、Facebookの行為の何が特に問題と考えているのかについて、洞察に満ちた見解を提示している。ちなみに、Cicilline氏が今年、反トラスト法と商業および行政法に関する下院司法の小委員会の有力メンバーに選出された際に、元ニューヨーク市長のBloomberg氏は、彼のことを「ハイテク業界に関する最も強力な人物」と讃えた。

その委員会は、今やハイテク大企業の解体を主軸に据えるまでに関心を高めつつある民主党によって率いられている。そして、シリコンバレーを牛耳る独占的な黒幕に対して、反トラスト法に沿った行動を起こすための強力なメカニズムになり得るものと考えられている。

「何年もの間、プライバシー擁護団体は、Facebookが同意した契約に基づく責務を果たしていない可能性があると、その委員会に警告してきました。委員会は、命令を遂行させることができなかっただけでなく、FacebookによるWhatsAppとInstagramの買収を阻止することもできませんでした。Facebookの支配の拡大を許してしまったのです」と、Ccilline氏は書いている。そして、その巨大企業に何らかの打撃を与えるには、数十億ドル規模の罰金が必要だとしている。先月にもレポートしたように、FTCは数十億ドル規模の罰金を検討していると伝えられているものの、そのような大金による懲罰は、まだ実行に移されていない。

同議員は、Facebookの「略奪的な買収戦略」も問題にしている。将来競合しそうな企業を、脅威となる以前に買収するものだ。それにより、イノベーションが妨げられることになる。Cicilline氏はまた、競合しそうな製品からのAPIアクセスを制限するという同社の決定は、このソーシャルメディアの巨人の「反競争的行為の証拠」だとみなしている。

Cicilline氏は、Facebookがプライベートメッセージング機能を実現するために、自社のいくつかの製品を統合するというマーク・ザッカーバーグ氏の最近の発表を、もはや当然のごとく皮肉に満ちた目で見ている。それは「反トラスト法の施行を妨げようとする危険な権力の掌握」だとしている。2020年の大統領選挙に向けて、反トラスト的な向かい風が勢いづくであろうことを考えると、そうした見通しは、Facebookが今後直面しなければならないことを、はっきりとわれわれに垣間見せてくれる。

「米国の半トラスト法の関連機関は20年以上に渡って重大な独占状態を追求してきませんでした。その間に、企業の集中と独占の脅威は、歴史的レベルに達してしまったのです」と、Cicilline氏は書いている。

「厳格な施行が、長い間先送りにされてきたことは間違いありません」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

オーディオサンプルのマーケットプレイス、音楽制作コラボツール提供のSpliceが約67億円調達

テックはミュージシャンの財布から金を奪うばかりだと悪名を轟かせているが、Spliceはそうした状況を変えようとしている。オーディオサンプルのマーケットプレイス、そして音楽制作コラボツールを提供しているSpliceは2013年以来、アーティストにこれまで1500万ドルを支払い、昨年は数字を倍増させた。

Spliceではミュージシャンは著作権フリーのサウンドを販売することができる。そうしたサンプルを利用したエミネムやアリアナ・グランデ、マシュメロの楽曲はチャート1位に輝いた。300万ものシンセサイザー、ドラム、ボーカルのサウンドに無制限にアクセスできるようになるサービスの利用料は月7.99ドルだ。真剣にやっているミュージシャン用にデザインされているにもかかわらず、Spliceツールのユーザーは現在250万人で、1年前の150万人より増えている。

Steve Martocci

「音楽は美しい時を経験している」とSpliceの共同創業者でCEO、そして以前GroupMeをつくって売却したSteve Martocci氏は話す。「ストリーミングがうまくいっているという追い風は大したものだ。このマーケットがいかに大きなものか多くの人が認識するにつれ、人々はより音楽を制作したがるようになり、大きなチャンスがここにはある」。

そしていま、Union Square VenturesとTrue Venturesがそのチャンスをつかもうとしていて、Spliceの5750万ドル(約67億円)ものシリーズCを共同で主導した。「スケールがすべてだ」とMartocci氏は語る。「我々は我々自身に投資をしている。新たなプロダクトをつくり続ける。より有名なアーティストと連携し続ける。クリエイティブなプロセスとミュージシャンのエコシステムには修正されるべき点が多くあると考えている。我々は全ジャンルのアーティストが必要なものは全てそろっていると感じられるよう、利用できるコンテンツを多様化させたい」。

DFJ Growth、Flybridge、Lerer Hippeau、Liontree、Founders Circle Capital、Matt Pincusなどが参加した今回のラウンドにより、Spliceの累計調達額は1億450万ドルとなった。Spliceは企業価値を明らかにしたがらないだろうが、シリーズCで20%の普通株を売るという業界のスタンダードを用いれば、Spliceの価値は2億8500万ドルほどかもしれない。この数字は、ストリーミングやチケット販売、ハードウェアを扱っていない音楽スタートアップとしてはトップレベルだ。この成功で、昨年Sounds.comマーケットプレイスを立ち上げたNative Instrumentsのような競争相手が出てきている。

Spliceの購読による売上高はいったんプールされ、ダウンロードの多さに基づいてアーティストに分配される。パソコンで音楽を制作する人からドレイクのグラミー賞受賞に導いたプロデューサーのBoi-1daまでクリエイターの幅は広い。Martocci氏は、Spliceのサンプルマーケットプレイスの売上の大半はアーティストにいっていることを認め、「まったく彼らにとって有利なディールだ」と語った。これは特に音楽プロダクション業界にとっては素晴らしいものだ。というのも、SpliceのサンプルクリエイターはセレブDJではないからだ。Martocci氏いわく、彼らはオーディオエンジニアであり、素晴らしい収入の機会を手にして表に出てきた、これまで影に隠れていた人たちだ」。

Spliceはコンサートで存在感を増している。友人がMartocci氏に、GroupMeのようなソフトウェアを構築するのに素晴らしいツールがあったように音楽をつくるためのよいツールがなかったのはなぜか尋ねた。Skypeが買収した彼のチャットアプリを最終的に離れた後、Martocci氏はSpliceの共同創業者のMatt Aimonetti氏に連絡を取り、彼が人生の半分をオーディオエンジニアとして過ごしてきたことを発見した。彼らは、制作をシンプルにする、保存してコラボするための管理許可をコントロールするという音楽のためのGitHubにチャンスを見い出した。2015年にSpliceはサウンド購読ライブラリーを立ち上げ、翌年にはクリエイターが著作権侵害を回避できるよう所有権付きレンタルソフトウェアシンセサイザーの販売を開始した。

それから時はあっという間に流れ、Martocci氏はSpliceの異なるプロダクトラインで何を優先するかが今後大きな課題になるだろう、と語る。幸運なことに、彼は新しく補佐してくれる人材を迎えた。Apple MusicとBeats by Dreでプロダクトを主導したRyan Walsh氏が最高製品責任者としてチームに加わった。Ryan氏のチームへの参加については、Martocci氏はその理由を「Ryanは音楽における自分のミッションがまだ終わっていないと感じていたからだ」と話している。Marvel Entertainmentの前最高財務責任者Chris Acquaviva氏がいまSpliceのCFOを務めていて、彼はライセンスの専門家だ。さらにはクリエイターコミュニティを活発なものにするため、MakerBotの前CHROであるKavita Vora氏が最高人材活用責任者に就いている。

テックに対する一般的なイメージが業界の大企業によるとめどないスキャンダルによって試練を受けているいる時代にあって、Spliceは間違いなくポジティブに作用しようとしているエース級の存在だ。Martocci氏は、子を持つ人たちが子供がFortniteで遊ぶのとSpliceで音楽を制作するのに時間を費やしていると教えてくれたことを明かした。だが、Spliceでの音楽制作は推奨すべきスクリーンタイムだろう。

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(翻訳:Mizoguchi)

Slackに対抗するMicrosoft Teamsは50万社以上のユーザーを獲得

マイクロソフトのOffice 365のコンポーネントのひとつでコラボレーションプラットフォームのMicrosoft Teamsは、登場以来約2年で大きな数字を達成した。Teamsは、Office 365を使って仕事をする人々をそのエコシステムの中にとどめる役割を持っている。

マイクロソフトは米国時間3月19日、50万社以上がTeamsを使っていると発表した。ユーザーの総数は発表されていないが、50万社のうち150社には1万人以上のユーザーがいて、その150社だけで150万人を大幅に超えるとしている。

この発表と同時に、マイクロソフトはTeamsにこれから搭載される新機能の数々も明らかにした。これまで以上に多くのマイクロソフトのツールとネイティブに統合することで、Teamsの機能は増え、より幅広く使えるようになるという。

同社ワークプレイスコラボレーションのゼネラルマネージャー、Lori Wright氏はインタビューでこう語っている。「職場の厳密な階級組織は変化し、インクルーシブで透明な環境になってきています。私たちはこうした傾向は世界中で起きていると見ていて、このことがテクノロジーを新しい形へと向かわせています」

実際、新たに搭載される機能はインクルージョンの傾向とユーザーに応じてプラットフォームをよりパーソナライズすることに対応したものだ。新機能には、背景のカスタマイズや、コンテンツを撮影してテキストよりも効果的なやりとりをするためのカメラのサポートなどがある。また、プレゼンテーションを作成したり取り込んだりして手書きで書き込めるMicrosoft Whiteboardも統合される見通しだ。

ほかには、聴覚に障がいがある人やオーディオを使えないまたは聞けない人に役立つライブキャプションが追加される。またセキュリティ面では、プライベートチャットをするためのセキュアチャネル、コンプライアンスを実践しチャネル間の潜在的なコンフリクトを防ぐための「情報障壁」、機密情報を共有できないようにしてデータ損失を防ぐスクリーニング機能も追加される。

そしてライブイベントもサポートされ、ユーザーはTeams上で最大1万人に向けてブロードキャストをすることができるようになる(参加者はTeamsのユーザーとして登録されている必要はない)。

このように、Teamsは数々の重要なアップデートを予定している。マイクロソフトはTeamsをSlackのような「ナレッジワーカー」向けの製品として登場させたが、その後はフロントラインからバックオフィスまであらゆる社員が活用できるような包括的なアプローチを強調している。

Slackが特に優れている部分として他社製アプリとの統合があるが、マイクロソフトの今回の発表ではTeamsに統合できるアプリの数はアップデートされていない。しかし同社は、すでにOffice 365を使っている1億5,500万のユーザーが最終的にはTeamsも使うようになることに重きを置いている。Wright氏は「マイクロソフトのサービスをできるだけ多く利用し、サービスや構造の情報を活用するためにMicrosoft Graphも取り入れています」と語っている。

マイクロソフトはコラボレーションの分野で他社に遅れをとっているが、ユーザー数の伸びは目覚ましい。Facebookは2月に、Slackの競合製品であるWorkplaceのユーザーが200万人を超え、その中にはユーザー数が1万人を超える企業が150社あると発表した。一方、Slackは1月に、1日のアクティブユーザーは1,000万人以上で、Slackのプラットフォームを使っている組織の数は85,000にのぼると発表した。

注目すべきこととして、Slackは米国時間3月18日にエンタープライズに訴求するタイムリーな発表をしている。Slackはエンタープライズの顧客に対し暗号キーへのアクセスを許可するというものだ。これはエンタープライズの分野でビジネスを成功させるために重要な要素だ。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Google Stadiaを実機プレイ、多少の遅延が起きるが優秀なプラットフォーム

Googleの新しいゲーム・ストリーミングのプラットフォームであるStadiaだが、発表会場でレイテンシー、価格、サポート予定のデバイスなどについてうるさくスタッフに質問した後、新しいゲームコントローラを実際にテストしてみることができた。短時間だが大画面テレビでプレイしたのはクラウド版のDoom 2016だった。

最初のトライはさんざんだった。フレームレートが極端に遅くなり、まるでPowerPointのスライドの早送りみたいになった。4K映像が表示されたかと思うと何が映っているかわからないほどぼやけた。最長で0.5秒くらいのレイテンシーが感じられた。このありさまにGoogleの社員は不安げに顔を見合わせていたが、やがて私のコントローラをひったくって再起動をかけた。

再起動後は状況は大きく改善された。しかしひと言で要約するなら、ストリーミングゲームには「何が起きるか予想がつかない」不安定さが残っている。Googleの名誉のために付け加えておくと、Stadiaの実機テストは強力なネットワークが張り巡らされたマウンテンビューの本社キャンパスではなく、発表会場のホテルのWi-Fiで行われた。これは現実の使用条件にずっと近いはずだ。

StadiaはGoogleのクラウドゲームストリーミングサービスだ。テクノロジーの詳細についてはまだ不明な点が多々あるが、基本的な方向性ははっきりしている。ハイレベルの専用機ゲームをオンラインに移行させることだ。Chromeブラウザからアクセスできれば強力なゲーム用GPUを持たないスマートフォンなどのデバイスでハイレベルのゲームがプレイできるようになる。

最初のトライでつまづいたものの、その後Stadia体験は全体としてポジティブなものだった。Doom 2016の画像は鮮明な4Kで、プラットフォームを特に意識せずゲームに集中できた。新しいプラットフォームが導入された場合、「意識しないですむ」というのは大成功を意味する。

カジュアル・ゲームにはStadiaは素晴らしいプラットフォームになると思う。。ただし高度なマルチプレイヤーゲームを楽しむ筋金入りユーザーには最適ではないかもしれない。理論上は、YouTubeのフィードから直接にスポーツ系ゲームを起動できる。しかしこういう使い方には向いていない。インプットから画面上にその効果が出されるまでのレイテンシーがそれなりにあるからだ。しかし(私も含めて)多数のユーザーにとってStadiaの能力は十分だ。なんといってもこのレベルのユーザーがゲーム市場の大部分を占めるのだから、Stadiaは十分に価値があるテクノロジーだ。

Google Stadia担当のバイスプレジデントであるPhil Harrison氏は、レイテンシーがどれほどの範囲になるか正確な数字を挙げることは控えたが、「人間が何かを知覚してから反応するまでの時間よりも短い」と述べた。Googleのスタッフによれば、この時間は(個人差はあるものの)70ミリ秒から130ミリ秒程度だという。つまりStadiaのレイテンシーはネットワーク接続が最良であれば70ミリ秒未満ということになるのだろう。

レイテンシーはネットワークの状態だけでなく、ユーザーとデータセンターとの物理的な距離によっても変化する。つまり固定した数字はあまり意味がない。テスト時点で私はサンフランシスコにおり、およそ80キロ離れたサンノゼのデータセンターにアクセスできた。Googleは「Stadiaがサポートされている国のユーザーであっても、僻地に居住しているような場合、サービスの開始時点で必ずサインアップできるとは限らない」と認めたが、その理由がここで述べたような事情だ。

その他の興味ある点。

  • Googleはサポートされるデバイスについて「後日正確な情報を発表する」と述べたが、iOSデバイスをサポートするのかという質問に対して「スタート時点ではPixelデバイスに焦点を当てていく」と強調した。.
  • 別のプラットフォームで購入ずみのタイトルであってもStadiaではプレイできないようだ。当然だが、Stadiaのゲームはこのプラットフォーム上で改めて購入する必要がある。
  • ユーザーはYouTubeのストリームからゲームにアクセスすることができるが、すべてのコンテンツをまとめたハブとなるサイトも用意され、URLでゲームにアクセスすることもできる。
  • コントローラ(トップの写真)はよく出来ている。デザインはソニーのDualShockとよく似ている

Stadiaについては今年の夏のGoogle I/Oでさらに詳しい点が判明するはずだ。私の最初の実機テストではサービスがGoogleの主張どおりに作動し、専用機クラスのゲーム体験を与えることができると確認できた。そこで現在、最大の疑問は価格だ。ハードコアなゲーマーしか手が届かない価格になるのか、カジュアル・ゲーマーにも手頃な価格になるかがこのプラットフォームの性格を決める。ビジネスとしての成否もおそらくはこの価格設定にかかっているだろう

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(翻訳:Umihiko Namekawa、滑川海彦@Facebook

月額1万2000円+食材費で約32食ぶんを「つくおき」、出張料理サブスクの詳細

既報のとおり、料理家がユーザーの自宅へ訪問して作り置きに適した料理を代行してくれる、出張料理サービスを提供しているシェアダインは、3月19日から月額1万2000円からのサブスクリプションサービスを開始した。

月2回、3回、4回の頻度が選べ、それぞれ月額1万2000円前後、1万8000円前後、2万4000円前後となる。定額料金には、料理家の交通費と買い物代行費が含まれているが、食材費は別途必要だ。同社によると食材費は1回あたり平均3500円程度とのこと。1回の出張で12品程度の作り置き料理が提供されるので、家族4人だと約4食分、計約16食、月2回で約32食ぶんとなる。1食あたりのコストは500円強から1000円未満に抑えられることが多いので、外食を利用するよりも安上がりだ。

実際の定額料金は料理家によって異なり、月2回コースの場合、1回あたり6000円の料理家なら月額1万2000円、8000円の料理家なら1万6000円となる。厳密にサブスクリプションとなるのは料理家を選ばないコース。こちらは1回あたり6800円となるので月2回だと1万3600円だ。

前回の記事公開後、読者からさまざまな質問や疑問が寄せられたのでシェアダインに詳細を聞いた。

TechCrunch(TC):サービス提供エリアを教えてください。
シェアダイン:現在1都3県でサービス提供しています。具体的には2018年8月時点で以下のとおりです。

  • 東京都
    23区/八王子市/町田市/多摩市/日野市/稲城市/武蔵野市/三鷹市/調布市/府中市/国立市/狛江市/小金井市/国分寺市/小平市/東大和市/立川市/東久留米市/西東京市
  • 千葉県
    松戸市/浦安市/船橋市/習志野市/流山市/柏市/我孫子市/鎌ヶ谷市/八千代市/市川市/佐倉市/成田市/四街道市/印西市
  • 神奈川県
    川崎市/横浜市/藤沢市/鎌倉市/逗子市/相模原市
  • 埼玉県
    さいたま市/蕨市/川口市/春日部市/久喜市/上尾市/桶川市/越谷市/草加市/戸田市/朝霞市/志木市/吉川市/和光市/新座市/富士見市/ふじみ野市/三郷市/八潮市

TC:サービス提供エリア外へ進出する予定を教えてください。
シェアダイン:年内を目処にエリア拡大を開始、順次進めていく計画です。

TC:料理家に料理の要望(苦手なもの、アレルギー)などを出すことはできるのでしょうか?
シェアダイン:はい。アレルギー食材の有無、内容はプロフィール登録時に入力してもらい、料理家に申し込みと同時に共有されます。

TC:献立は事前にわかるのでしょうか。
シェアダイン:マッチング後、事前にチャットでのコミュニケーションが可能で、その際に苦手なもの含めた要望を反映しながら献立を提案します。ユーザーの中には、アレルギー食材や苦手なものだけ伝えて、買い物代行から献立提案、調理までお任せというケースもあります。特にリピーターには多く見られます。

TC:派遣される料理家はどうやって募集・選別しているのでしょうか。
シェアダイン:基本的に現在は広告と紹介です。説明会兼面談のあと、衛生研修、協力ユーザーの自宅で実際に題目に沿って3時間で10品の料理を作る実技もチェックします。

TC:材料費の決済方法は?
シェアダイン:現在はレシートを基にした当日精算です。LINE Payでユーザーと料理家との間で決済している例もあり、このあたりはキャッシュレスにしていきたいと考えています。

TC:材料の調達はユーザー宅近くのスーパーになるのでしょうか。
シェアダイン:特にユーザーからの指定がない場合は、普通のスーパーでは売っていないような食材を使う場合もあるので、当日調達を原則としつつ料理家に任せています。とはいえ、基本的にはユーザー宅の最寄りのスーパーが多いです。

TC:料理の際の調理器具や調味料は各自宅のものを使うのでしょうか。
シェアダイン:原則、ユーザー宅にある調味料、調理器具を使って調理します。調味料から提案する場合もわりとあります。その後、ユーザーが自宅で調理する際に「レパートリーが増えた」という声もありました。また逆のパターンで、なかなか自宅では使いこなせていない調味料や、備え付けのオーブンなどのあまり使われていない調理家電を使っての料理も積極的に提案しています。

TC:調理器具や調味料がそろっていない家だと調理が難しくなると思いますが?
シェアダイン:事前に図の調理器具や調味料の事前準備をお願いしています。すべてそろっていない場合、どうしても料理の幅が狭くなってしまうので、事前にないものは料理家が食材と一緒に購入するという提案もしています。

以下は、シェアダインがこれまで提供した料理の一例だ。

  • 食育
    離乳食後期〜幼児期への以降の手づかみ食べのおかずとして、咀嚼を促すメニューである「じゃがいも餅」、冷凍できる「鶏肉ボール」。魚離れが進んでいる中で、DHAを含む手軽な魚のおかずとして、漬け込んでおいて当日焼くだけの漬け込みメニュー「鮭のオイルハーブ漬け」「鯖の甘味噌漬け」。
  • 離乳食
    食材を小さく切り、小分けにしたフリージング離乳食として「筑前煮」「ごぼうと里芋のきんぴら」「鶏ひき肉と野菜炒め」「鮭とほうれん草のチャーハン」など料理。大人と同じものを途中で取り分けて薄味で仕上げ。そのほか手づかみ食べ”のおかずとして、「おやき」「スティック野菜」「きな粉蒸しパン」など提案。
  • 偏食(緑のお野菜をまったく食べない子供向け)
    一度素揚げをすると硬い繊維が柔らかくなり食感が変わる、出汁などの味が染み込みやすくなるような下処理を行う。子供の好きな味付け、食べやすいテクスチャーのあんかけを使った提案。
  • ダイエット(単にカロリーを減らすために野菜ばかり食べていた人向け)
    糖質を控えめにした、肉魚・豆・野菜・海藻をバランスよく使ったメニューを提案。腹持ちがいい、小腹が空いた時のための野菜たっぷりのスープ2種類など。
  • 美容
    鶏と漢方食材を使った参鶏湯。腸内環境を整えたり、血液がサラサラになると言われている酢玉ねぎなどを提案

介護施設マッチングサービス「KURASERU」運営が1.3億円を調達

写真前列中央:KURASERU代表取締役 川原大樹氏

病院から退院する要介護者を介護施設とマッチングする「KURASERU(クラセル)」は、医療ソーシャルワーカーの退院調整にかかる業務負担の軽減をサポートするサービスだ。サービスを提供するKURASERUは3月21日、DBJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、500 Startups Japan、個人投資家らから総額1億3000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

介護施設マッチングサービスKURASERUは、2018年1月にリリースされた。病院から退院できることになっても自宅や家族のもとでの在宅療養が難しい要介護者に対し、症状や状況に合った介護施設を探す医療ソーシャルワーカーの業務をサポートする。

従来は医療ソーシャルワーカー、または患者や家族の知識の中から、電話やFAXを駆使して空きを探す、という世界だった介護施設探しに、ITを取り入れて効率化を進めてきたKURASERU。さらに今回、タブレットやスマートフォンに対応したネイティブアプリ化で、より現場の業務に寄り添ったサービスに進化しようとしている。

KURASERU代表取締役の川原大樹氏は「病院の中にはPCが1台しかないというところもあり、使える場所や使用者のアカウントが制限されていることも多い。実際に退院後の介護施設を決める現場では、患者さんや家族とはミーティングルームなどで打ち合わせをすることになるため、持ち運べるタブレットで使えるアプリの形でシステムを提供することにした」とネイティブアプリ開発の理由について語る。

「これまでは電話で施設の空きを確認し、パンフレットを取り寄せて患者さんの家族に確認してもらい、次のミーティングのスケジュールも押さえて、3日がかりぐらいで調整して退院後の介護施設を決めてきた。ブラウザベースのサービスでも、ITによる効率化という意味では意義があったけれども、業務フローの中では使えない。タブレットなら、空き状況や施設のホームページを患者や家族と確認しながら、その場で決められるようになる」(川原氏)

従来のブラウザベースのシステムも、タブレット上のブラウザ経由で利用できないことはなかったそうだが、「手入力が必要な項目が多かったところを、タップで完結できるようにした」と川原氏は話している。

またアプリをインストールしたタブレットを渡すことで、医療施設の関係者にはシステムの存在を物理的に分かってもらえるようになった、とのこと。介護施設向けには、職員個人のスマートフォンにインストールし、どういう条件の入居希望者がいるか、個人情報は伏せた状態で検索することができるアプリが提供される。

現在は、神戸市北区でベータ版アプリを使った実証実験がスタートしている。病院の協力の下、実際に使いやすいものを開発できる環境が整った、と川原氏。調達資金も使って、病院と介護施設だけでなく、病院間の転院や、在宅から介護施設への入居する際のスムーズなマッチングも検証。よりよいユーザー体験を追求し、医療介護連携ツールとしてブラッシュアップしていくという。

調達資金はほかに、開発・サポート体制の強化にも投資していく、という川原氏。今回の調達では、同社が参加していた神戸市アクセラレーションプログラムでメンターとして支援を行った尾下順治氏、山下哲也氏がエンジェル投資に参加している。「マーケティングや経営戦略などで、深い見識を持つ2人の出資参加は心強い」とコメントしている。

また今回は、既存株主の500 Startups Japanに加え、銀行系ベンチャーキャピタルが出資に参加した。川原氏は「病院と銀行とは融資で強いつながりがある。全国ネットで病院とのつながりを押さえている銀行系VCの参画は、当社への信頼感醸成にもなる。これを今後予定している全国展開にもつなげたい」と話す。

実際に、サービス展開中の神戸や関西エリアだけでなく、関東からもサービスへのオファーが来ているとのことだが、川原氏は「今は神戸でトラクションを積み重ねて、それから関東や全国にも展開していきたい」と述べている。

KURASERUは、現状では病院・介護施設ともに無料で利用できるようになっている。収益化について川原氏は「我々は、プラットフォーマーとして医療介護連携ツールをつくるスタートアップ。患者さんがどういう経緯で入院し、退院、在宅医療、施設利用をしたのか、その流れをデータとして持っている。これは他にはない情報で、データを生かして違う分野のビジネスにできると考えている」と語る。

「目の前の収益を考えれば、みんな手を出しにくいことをやっていると思う。だが、今やっている医療・介護施設の市場だけでも全国で2500億円以上と推定される。プラットフォーマーとして広く捉えれば、もっと市場規模は大きいと考えている」(川原氏)

KURASERUは2017年10月創業。2018年6月には500 Startups Japanなどから5000万円を調達している。

2017年12月には神戸市が主催するスタートアップコンテスト「KOBE Global Startup Gateway」の第5期に採択され、神戸市アクセラレーションプログラムにも参加。2018年11月開催のTechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトルではファイナリストに進出し、富士通賞を受賞した。

ディズニーが21世紀フォックスの買収を完了

ディズニーは、米国東部時間3月20日午前0時2分に21世紀フォックスの買収を完了した。

713億ドルというこの巨額ディールの目標は、ストリーミングを将来の事業の中心に据えることだ。ディズニーはすでにESPN+ストリーミングサービスでもってその方向へと足を踏み入れている。そして今年後半にはDisney+という別のサービスの提供を開始する計画だ。このサービスにはディズニーの全ての映画ライブラリー、そしてStar Warsの新作Marvel(マーベル)も含まれる。

フォックスの買収でディズニーはより多くの映画、テレビ番組、そして知的財産を有するようになった。これは、ディズニーのウェブサイトトップのイメージデザインが、「シェイプ・オブ・ウォーター」「アバター」「デッドプール」(これらはすべてフォックスの映画だ)、そして「シンプトンズ」「アトランタ」(これらはフォックススタジオが制作し、フォックスネットワークで放映された)を特集するものに変更されたことにも表れている。ディズニーはまた、Huluの大株主にもなり、CEOのBob Iger氏(写真上)は「ディズニーはHuluのオリジナルコンテンツ拡充に投資し、グローバル展開もサポートする」としている。

加えて、見たところディズニーのスタジオは多くの観客を映画館に引き込むことができるなどすでにハリウッドで支配的的な立場を築いているが、今回の買収はそれをさらに確固たるものにする。MarvelとLucasfilmの買収のおかげで、ディズニーは過去4年間、グローバルでの観客動員数が毎年トップだ。そして2018年にはトップ4の映画のうち3本がディズニー制作のもので、一方でフォックスは2本がトップ10入りした。

昨年コムキャストと展開したフォックス争奪戦を買収額713億ドル(約7.9兆円)の提示で制したディズニーだったが、その後、規制当局の承認を得るまでに9カ月も要した。

一方で、フォックス・ニュース、フォックス・ブロードキャスト・ネットワーク、フォックス・スポーツを含むフォックスのニュース・スポーツ部門は新会社としてスピンアウトし、今回の買収の結果、4000人超が解雇される見込みだ。

「困難な局面はすべて去った、と言えればどんなにいいことだろう。買収の完了はマイルストーンの達成というより、ゴールラインだった」とIger氏は社員へのメモで述べた。「今後は、ダイナミックでグローバルなエンターテイメント会社にするために我々の事業を統合させるという難題が待ち構えている」。

Image Credits: Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

OperaブラウザのVPN機能がAndroid版アプリに帰ってきた

現在は中国企業傘下にあるノルウェー発のブラウザ「Opera」に、以前搭載されていた独自のVPN機能。買収後に一時機能が使えなくなっていたが、米国時間2月20日にAndroid版アプリにてこの機能が復活した。

Android版のOpera 51では、特の公共Wi-Fiなどの環境下で、プライバシーとセキュリティを向上させることができる。VPN機能では256ビットの暗号を利用し、ログを残したりアクティビティを保持することもない。

中国企業傘下ということで、Operaの使用に不安がある人もいるかもしれない。2月に開催されたMWCにてTechCrunchがOperaチームにこの点を尋ねると、同社は現在もノルウェーを拠点としており、同国のプライバシーに関する法律を守っていることを強調していた。

Android版のOpera 51のベータ版を試したところ、VPNの利用はとても簡単だ。セッティングメニューからスイッチをオンにするだけで、VPNが使える。

なお気をつけたいのは、VPNは利用者のプライバシーを守ってくれるが、これは地域制限を回避するためのものではないことだ(実際には可能だが)。Operaでは特定の国を選択することはできず、アメリカ/アジア/ヨーロッパの地域しか選ぶことができない。

[原文へ]

(文/塚本直樹 Twitter

Instagramの新機能、投稿写真の商品を選べばその場で購入できる

Instagramはまったく新しい収入源を開拓している。ついに、その米国内の1億3000万人のユーザーは、ショッピング用の投稿に載っている商品に付いたタグをタップするだけで、直接アプリの中で買えるようになる。あらかじめ支払い情報を登録しておくことは必要だ。「Checkout on Instagram」は、Adidas(アデイダス)、Kylie Cosmetics(カイル・コスメティクス)、Warby Parker(ワービーパーカー)をはじめとする、20以上のトップブランドを対象に、米国時間3月19日から米国内で使えるようになる。もはや、顧客を各ブランドのウェブサイトに誘導して購入してもらう必要はなくなった。

Instagramの広報担当者はTechCrunchに、「販売手数料を設定して、チェックアウトを可能にするための仕組みや設備の費用をまかない、取引に関連するコストも埋め合わせます」と説明した。その「販売手数料」として販売者に請求する金額を尋ねたところ、担当者は「今のところその具体的な数字は公表していません。非公開ベータ期間中に、手数料についても販売者と試行しています。それによって、消費者が払う商品の価格が変わることはありません」と答えた。このことからしてInstagramでは、向上が期待できる顧客転換率の見返りとして、販売者に高めの手数料を請求し、アプリ上で購入するための料金をユーザーの支払額に上乗せするようなことはしないようだ。

Checkoutの導入によって、Instagramの広告ビジネスもさらに繁栄するだろう。そこから購入に至るまでに必要なステップも短縮されるので、Instagramを利用したほうが、投資に対する見返りが大きいとブランドに納得させることができるからだ。現時点では、Checkoutボタンは、発表時にパートナーとなっている販売者によるオーガニックな投稿にのみ表示され、広告には表示されない。しかし、Checkout機能を付加した広告は、Instagramにとって金脈になる可能性もある。というのも、Facebookのニュースフィード広告ビジネスの先行きは怪しく、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏も、2019年のロードマップに不可欠なものとして、商取引を挙げているからだ。

Checkoutのタグは、非公開ベータに参加しているブランドのフィード投稿、ストーリーズ、発見タブのコンテンツに表示される。Instagramではいずれ、より多くの企業に、この機能を公開する予定だ。ユーザーが投稿をタップして商品のタグを表示し、それを開くと、これまでの「View on Website」ボタンの代わりに「Checkout on Instagram」ボタンが表示される。

初めて利用する際には支払い情報を入力する。それは保存されて、その後の買い物にも使われる。「保護された支払い情報を1カ所に保存しておけば、毎回ログインしたり、同じ情報を何度も入力しなくても、お気に入りのいろいろなブランドの商品を購入できます」と、Instagramは説明する。ブランドごと別々にサインアップしなければならないと、ユーザーはイラついて、カートに商品を入れただけで、途中で放棄してしまうことも少なくない。それを防ぐことができるのも、この機能の重要なメリットだ。TechCrunchでは、最近Instagramがストーリーズで、「資金調達中」のステッカーをプロトタイピングしていることをレポートした。それも同様に支払い情報を保存するものだった。Instagramが、支払い情報のデータベースを構築したいと考えているのは確かだろう。

ユーザーが何かをInstagram内で購入した後は、自分のプロファイル内に新設された「Orders」セクションでトラッキングできるようになる。そこには、注文の状況が表示され、オプションで注文をキャンセルしたり、返品や販売者に連絡することも可能となる。そして注文が出荷されたら、Instagramから直接通知を受け取ることになる。興味深いのは、Instagramでは、メッセージ機能に領収書発行機能を付加していない。FacebookのMessengerとは対照的だ。

販売者は、連絡先や住所など、注文を処理するための必要最小限な情報しか知ることができない。支払い情報は通知されないのだ。ユーザーは、任意で、販売者に電子メールのアドレスを伝えて、その後に商品やサービスの情報などを受け取ることもできる。Checkout on Instagramでは、ユーザーが販売者のウェブサイトで直接購入した時に比べて、少ない情報しか販売者に伝わらない。しかしInstagramは、その購入がどの投稿で発生したのかという情報は、販売者に伝えるとしている。

ユーザーは、PayPal、Visa、Mastercard、American Express、そしてDiscoverによる支払いが可能となっている。Instagramでは、販売者が、Shopify、BigCommerce、ChannelAdvisor、CommerceHub、その他のツールを、Checkout機能と統合できるようにすることを計画している。またInstagramは、Checkout機能の使われ方が、ユーザーがよく見るコンテンツのランキングのヒントとしても利用される可能性を認めている。支払いはPayPalによって処理される。そのビジネス分野には、Facebookも侵略するつもりはない。PayPalに支払う手数料は、おそらくInstagramが受け取る販売手数料から出ることになる。

「私たちが商品にタグを付けることによって、顧客にとって買い物がより便利なものになります」と、Warby Parkerの共同創立者兼CEOのNeil Blumenthal氏は述べている。「Checkoutは、買い物の体験を一歩進んだものにします。その場で買いたいとひらめいた商品を見つけた人にとって、より直感的でシームレスな買い物ができるようになるのです」。発表時にパートナーとなっている全ブランドを挙げておこう。Adidas、Anastasia Beverly Hills、Balmain、Burberry、ColourPop、Dior、Huda Beauty、H&M、KKW Beauty、Kylie Cosmetics、MAC Cosmetics、Michael Kors、NARS、Nike、NYX Cosmetics、Oscar de la Renta、Outdoor Voices、Ouai Hair、Prada、Revolve、Uniqlo、Warby Parker、そしてZaraだ。

今のところ、開発中と伝えられていたInstagramの独立したショッピングアプリが登場する兆候は見られない。その代わり、発見タブの中に専用のショッピングチャンネルを設置し、ストーリーズにタグも追加した。6カ月前のことだ。また最近我々は、私的に保存した投稿のコレクションを公開できる、Pinterestに似たような機能を、Instagramがプロトタイピングしているのを発見していた。その機能は、インフルエンサーにとってCheckoutが使える商品を他の人に勧めるのに適した手段となるだろう。Facebookはこの5年をかけて、さまざまな「購入」ボタンを試してきた。それが今ようやく自然な居場所に落ち着いたわけだ。

Instagramは、アプリの外にリンクする権利を必死に守り続けてきた。それは、コンテンツを着実に消費し続けてもらうためだ。今や世界で10億人以上のユーザーを抱えるまでに成長したInstagramは、人々の注目をずっと内部に閉じ込めてきた。そしてついに、その中で販売する権利を売るための準備が整ったのだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Firefox v66は自動再生のオーディオやビデオ、時間差広告を自動ブロック

Mozillaは米国時間3月19日、Firefoxブラウザーのバージョン66をリリースした。いつものアップデートとバグフィックスに加えて、今回はオンラインの迷惑行為を減らすという明確なテーマがある。

今回のアップデートでは、自動再生されるオーディオやビデオを自動的にブロックできるようになった。それらは、今のWebの疫病だ。ただブロックするだけでなく、もうすこしお利口で、ビデオがオーディオをミュートして再生されていることがわかったら、その再生を放置する。ニュースサイトのようにキャスターがでっかい声でがなりたてるようなサイトなら音声ミュートして静かにする。

Firefoxがブロックしたビデオを見たいときは、プレイボタンをクリックすればよい。常に自動再生ビデオOK、ミュートされない音声もOKのサイトを、ホワイトリスト(無害者のリスト)に入れることもできる。

最近のもうひとつの大迷惑は、テキストやそのほかのコンテンツがロードされてページを見られる状態になったあとに表示される広告だ。広告がテキストの位置を勝手に変えたり、画像のロードが遅くなるのもかったるい。Firefoxが今回導入したスクロール・アンカー機能を使えば、ロードの遅い広告のロード中にページのあちこちへ飛び回る〜飛ばされる必要がなくなる。

このバージョンのそのほかのアップデートとしては、複数のタブの中を検索する機能を新設、プライベートモードのときの検索を改良、分かりやすいセキュリティ警告メッセージ、Windows HelloのWeb認証のサポート、などがある。またエクステンションの設定を各エクステンションごとにではなく、単一のファイルにまとめて、そのぶんページのロードを速くした。

ニューバージョンの完全なリリースノートはここにある。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa