インド通信事業者が新型コロナウイルスの予防情報を共有

インドの通信事業者は、国内で40数件の感染例が検出されたことを受けて、COVID-19こと新型コロナウイルスの感染拡大についてユーザーへの警告を開始した。

Reliance Jio、Airtel、国営のBSNLの加入者は、米国時間3月8日の日曜日に電話を発信する際に、ヒンディー語と英語での警告を受けた。同国で「caller tune」と呼ばれているこのメッセージは、通常の発信音の代わりに再生される。

録音されたメッセージは、「せきやくしゃみをしているときは、必ずハンカチやティッシュで顔を守ること。そして、石けんで定期的に手を洗いなさい。顔、目、鼻には触れないように。せき、発熱、息切れがあれば、1メートルの距離を保つこと。必要であれば、すぐに最寄りの医療センターを訪れるように」と伝えている。

事情に詳しい情報筋がTechCrunchに語ったところによると、インド最大の通信事業者であるVodafoneも、警告メッセージの実装を開始した。一方、Airtelは警告の範囲を広げようとしているという。この計画はインドの保健・通信当局によって監督されている。

世界中の多くの産業に深刻な影響を与えてきた新型コロナウイルスは、インドでもいくつかのビジネスと生活を混乱を生じさせ始めている。太陽エネルギー関連の企業や製造業、製薬会社は、いずれも中国から原料を調達しており、政府に支援を求めている。

インド国内ではこれまでに43例の感染が検出され、うち3例は完治している。

米国の大手企業数社の最近の動きにならい、インドの一部企業も従業員に在宅での勤務を奨めている。NoidaとGurgaonの従業員の1人が新型コロナウイルスへの陽性反応を示したため、金融サービスのスタートアップであるPaytmは先週、オフィスに来ないよう促した。

チェンナイに本社を置くクラウドサービス企業のZohoは、十分な注意を払い在宅勤務するよう全従業員に呼びかけた。ITコングロマリットのTech Mahindraも、同様の動きをみせている。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹Twitter

Uberがインドのフードデリバリー事業を地元Zomatoに約221億円で売却

Uberインドで展開してきたフードデリバリー事業を地元のライバル企業Zomatoに2億600万ドル(約221億円)で売却した。Uberにとって主要海外マーケットの1つであるインドの当局に提出した書類で明らかになった。

2020年1月にUberはUber Eatsのインド事業を、赤字のフードデリバリースタートアップZomatoの株式9.99%と引き換えにZomatoに売却したと発表した。両社は買収額などの詳細は明らかにしなかった。インドの一部のメディアは3億5000万ドル(約376億円)規模だと報じた。TechCrunchは、Uber Eatsのインド事業とZomatoの株式9.99%は1億8000万ドル(約193億円)と評価された、とレポートした。

書類の中でUberは「Uber Eatsのインド事業についてZomatoから示された『考慮した適正価格』は2億600万ドル(約221億円)だった。ここにはZomatoから支払われる商品・サービス税の還付金3500万ドル(約38億円)も含まれている」としている。

この買収は創業11年となるZomatoのバリュエーションの大幅減を如実に物語っている。2020年初めに1億5000万ドル(約160億円)の資金調達を明らかにしたとき、同社の価値は30億ドル(約3220億円)と報じられた。

2019年12月のインドの報道機関PTIからのインタビューで、Zomatoの共同創業者でCEOのDeepinder Goyal(ディーピンダー・ゴヤル)氏は、同社は2020年1月末までに最大6億ドル(約645億円)を調達する見込みで、今はその最中だと話した。同社はまだ資金の大半を確保していない。Zomatoの広報はコメントを避けた。

Uber Eatsの撤退で、インドのフードデリバリーマーケットはZomatoと、Prosus Venturesが支援するSwiggyの2強体制となった。Swiggyは現在も進行中のラウンドで2020年2月に1億1300万ドル(約121億円)を調達した。業界の予測ではSwiggyがインドのフードデリバリー業界でトップだ。

両社とも新規顧客を獲得したり、既存客の満足度を維持したりしようと、毎月1500万ドル(約16億円)超のフードデリバリーを行っているが、依然として黒字化に苦戦している。

米国のような発展したマーケットと違い、インドでは黒字化は特に難しい。バンガロール拠点の調査会社RedSeerの推計によると、各デリバリーアイテムの価値は米国では33ドル(約3500円)だが、インドでは同じようなものが4ドル(約430円)だ。

India QuotientのVC、Anand Lunia(アナンド・ルニア)氏は最近のポッドキャストの中で「フードデリバリー企業はプラットフォームでフードアイテムのコストを補い続けるしか方法はない。でなければ顧客のほとんどはサービスを利用できない」と話した。

それだけでも大変だが、この2社は新たな競争相手にも直面している。TechCrunchは先週、Amazonが早ければ3月末にもインドのフードデリバリー業界に参入する計画だと報じた。

画像クレジット: CHANDAN KHANNA / AFP / Getty Images

参考:アマゾンがインドのフードデリバリー市場にまもなく参入か

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

インドのモディ首相がソーシャルメディアからの撤退を検討中

インドの首相が、世界最大の民主主義のリーダーでもあるソーシャルメディアをやめた人々のリストにまもなく加わりそうだ。

インドのNarendra Modi(ナレンドラ・モディ)首相はインド時間3月2日の夜、自身のFacebook、Twitter、Instagram、YouTubeアカウントを放棄することを考えているとツイートした。

モディ首相は、ツイッターで5300万人のフォロワーを獲得し、同SNS上で最も人気のある人物の1人だが、考えの根拠を示さなかった。

さらに、モディ首相のFacebookページにも4400万人以上のフォロワーがいる。Instagramは3520万のフォロワー、そしてGoogleの動画プラットフォームは450万人だ。

モディ首相が週末にかけて実施する可能性があるアカウントの閉鎖は、インド国内における失業者の増加、経済の減速、首都ニューデリーでの暴動、彼の最近の政策に対する抗議など、さまざまな問題から自らを遠ざける可能性がある。

これは、彼が長年にわたって使ってきたソーシャルメディアアカウントでの対策とは、まったく異なるものになるだろう。モディ首相と彼が所属する政党であるインド人民党(Bharatiya Janata Party)は、TwitterやFacebook、WhatsApp、その他いくつかのインターネットサービスを非常に効率的に利用してメッセージや議題を宣伝し、2019年の首相再選に重要な貢献を果たした。

モディ首相の政党には、彼の考えを国民と共有するためのNaMoというアプリもある。これはインドのGoogle Play Storeで最もダウンロードされているアプリのうちの1つだ。このNaMoアプリが廃止されるのかどうかについては明らかになっていない。

モディ首相にとってソーシャルメディアをやめることは、少なくとも彼に平和をもたらすかもしれない。複数のアナリストによると、同氏がフォローした人物の中には、暴力を扇動し虚偽の情報を何度も広めていた者もいたという。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

ディズニーがインド首相批判のジョン・オリバーによる新エピソードを封印

3億人以上のユーザーを抱えるインド最大のオンデマンドビデオストリーミングサービスでありディズニー傘下であるHotstarは、米国の放送局HBOによるNarendra Modi(ナレンドラ・モディ)首相に批判的な『Last Week Tonight with John Oliver』の最新エピソードの配信を停止した。世界最大のエンターテインメント市場の1つであるインドでのこの判断は、Disney+が2020年3月にローンチされる前に多くの顧客を失望させた。

Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領のインド訪問数時間前に放映されたこの番組で、番組でホストを務めるJohn Oliver(ジョン・オリバー)氏は、インド政府の疑わしい政策とモディ大統領の市民権政策に関する「物議を醸す人物像」への最近の抗議について語った。19分間のニュース要約と論評は、信頼できる報道機関から情報を得たものだ。

このエピソードはインドではHBOのYouTube公式チャンネルで視聴でき、400万回以上視聴されている。HotstarはインドのHBO、ShowtimeおよびABCの独占共同パートナーだ。

TechCrunchはHotstarを運営するStar Indiaと、Foxとの契約の一環としてインドの主要放送ネットワークを買収したDisneyの広報担当者に何度かコメントを求めたが、回答は得られなかった。

 

インドで情報、放送、映画、報道を規制する情報放送省の報道官は、政府は検閲についての議論には関与していないと述べた。

インドの多くの顧客は2月24日の月曜日に、HotstarがNetflixやAmazon Prime Videoのように、一部のコンテンツを自主検閲するのではないかと推測した。通常、オリバー氏の新しいエピソードをは火曜日の午前6時から配信される。

そして2月25日の火曜日、ディズニー傘下のプラットフォームにはスポンサーをからかうようなスケッチも含め、多くのセンシティブな題材を検閲する手段があり、政府を批判するようなリスクは冒さないことが明らかになった。

2019年にAmazonは、CBSの番組『Madam Secretary』第1話のインドにおける配信を停止した。Netflixはサウジアラビアで、サウジアラビアの皇太子を批判したHasan Minhaj(ハサン・ミンハジ)氏の『Patriot Act』のエピソードを取り下げた

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

インド警察がカシミール地方でVPNを使った数百人の捜査を開始

インドが実効支配するカシミール地方の地元警察は、紛争が続くヒマラヤ地域でのソーシャルメディアの使用禁止措置を回避するために仮想プライベートネットワーク(VPN)を使った人たち数百人に対して捜査を開始した。この禁止措置は、人権やプライバシーを擁護する活動家たちから非難を浴びている。

スリナガル州警察サイバー部門を率いるTahir Ashraf(タヒール・アシュラフ)氏は、2月13日に警察当局はソーシャルメディアを悪用し「非合法活動と分離独立主義の思想」を宣伝した容疑者数百名をすでに特定し調査していると述べた。

2月17日、警察はインドのテロ対策法である違法活動防止法()のもとで「有罪を立証できる材料を数多く」押収したと述べた。この法律に違反した者は最高7年の懲役となる。

「ソーシャルメディアの悪用を深刻にとらえ、分離独立思想の宣伝や違法活動の扇動のために悪質な人間がソーシャルメディア・サイトを悪用しているという通報が絶え間なく届いています」と地元警察は声明の中で述べている。

この動きは、インド政府がAmazon IndiaやFlipkartなどのショッピングサイトを含む数百のサイトのブロックを解除した数週間後に始まった。Facebook、Twitterなどソーシャルメディア・サービスはいまだにアクセスできず、モバイル通信のデータ速度も2Gに制限されている。

あるアナリストの調査によれば、ブロックが解除されたサイトは301件中126件だが、「ある程度」しか使えないとのこと。ソーシャルメディアの検閲を回避してニュースサイトを見るために、700万人以上が暮らすこの紛争地帯の多くの人たちは、VPNサービスを使い始めたのだ。

インド政府は、カシミール地方の半自治権を取り消した2019年8月の頭から、ジャンムーとカシミールでインターネットへのアクセスを遮断した。この措置は、当地区の治安を維持するための正当なものだとインド政府は主張している。その数カ月後、無期限のインターネット遮断を広い範囲に強いている政府に対してインドの最高裁判所は苦言を呈した。

「政府は、その地域からどのような情報が発信されるかを、ほぼ完全にコントロールしています」と、人権擁護団体アムネスティ・インターナショナル・インド事務局長Avinash Kumar(アビナシュ・クマール)氏は言う。

「政府には国の法と秩序を守る責務がありますが、あいまいで漠然とした申し出をUAPAのようなテロ対策法を根拠に捜査したり、ソーシャルメディア・サイトをブロックすることでは解決になりません。インド政府に必要なのは、まず人権を重視し、カシミールの人々に自由に発言させることです」と彼は政府に促した。

ニューデリーを拠点とするソフトウェア・法律・自由センターの事務局長Mishi Choudhary(ミシ・チョードリー)氏は、当局はVNPを使った人を追いかける必要などなく、他のすべての民主的社会と同じようにインターネットを解禁すべきだと語っている。

「疑わしい噂には、同じソーシャルメディア・プラットフォームで正確な情報を数多く提供することで対処できます。内容に基づく発言の制限は、憲法で定められた制限の範囲内でのみ許されるものであり、その場しのぎで行われるべきではありません」と彼女は言う。

画像クレジット:Waseem Andrabi / Hindustan Times / Getty Images

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

Appleが第3四半期からインドでオンライン販売を開始

想定していたよりも少し時間がかかったが、インドでも待望されていたApple(アップル)のオンラインストアが2020年第3四半期から利用できるようになる。この件に詳しい情報筋がTechCrunchに明らかにした。

Appleは2019年8月に「世界中の顧客と同じようなオンラインと店舗両方での体験とサービスケアをインドの顧客にも提供したい」と語っていた。

オンラインストアと実在店舗をインドでいつ立ち上げるのか、Appleはこれまで具体的なタイムラインを示してこなかったが、当初の計画ではインドでのオンライン販売を2020年第1四半期にスタートさせることを目標としていた、と情報筋は話した(第1四半期の立ち上げというタイムラインは、最初にBloombergが「数カ月内」に 開始するかもしれないと報じていた)。

Appleの広報にコメントを求めたが、すぐには得られなかった。

情報筋によると、Appleはまだ開店に伴うロジスティックに取り組んでいて、7〜9月が仮の開店目標となっているとのことだ。AppleのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏が発表のためにインドに赴くだろう、と情報筋は話した。

ムンバイに開店する見込みのインド初の実在店舗はオンラインストアよりさらに数カ月かかる見通しで、年末までには間に合わないかもしれないとも述べた。

世界で2番目に大きなスマホ市場であるインドは2019年、単一ブランドを扱う外資系小売に対する規制を緩和し、Appleのような企業が実在店舗を開く前にオンラインストアを設けることができるようになった。

現在、Appleはインドで提携したサードパーティ小売と、Amazon IndiaやFlipkart、Paytm Malleといったeコマースプラットフォームを通じて製品を販売している。インド政府が方針を転換する前、Appleはいくどとなく外国投資(FDI)ルールを緩和するよう政府にリクエストしていた。

Appleの幹部は長い間、Amazon India、Flipkart、Paytm Mallが各自のGMV(総流通総額)を増やすためにiPhoneとMacBook Airを大幅に割引して販売していることに失望の意を示してきた、と情報筋はTechCrunchに語った。

調査会社Counterpointによると、インドでのiPhone出荷台数は2018年に43%減だったのが、2019年は6%増となった。これは、2020年も成長が続くかもしれないことを示している。

Appleは1月28日の火曜日、12月までの四半期の売上が過去最多の918億ドル(約10兆円)となったことを発表した。クック氏は、マーケットの中でもインドの売上高は「2桁」成長だった、と語った。

画像クレジット: Qi Heng / VCG / Getty Images

関連記事:Appleが初の売上10兆円超えで株価上昇

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

中国のVivoがインドのスマホ市場でSamsungを抜き2位に

かつてインドのスマホ市場を牽引したSamsung(サムスン)は、まだ成長している世界でも稀な携帯電話マーケットで現在も主要プレーヤーではあるものの、2019年12月までの四半期で第3位へと順位を下げた。調査会社Counterpointによると、2019年にインドでは1億5800万台のスマートフォンが出荷されたが、この数は前年の1億4500万台から増加したものだ。

中国企業のVivo(ビボ)は2019年第4四半期にインドにおけるスマホベンダーとしてサムスンを抜いて第2位になった。トップはマーケットの27%を占めたXiaomi(シャオミ)で、10期連続でその座を維持した。

Vivoの2019年通年における出荷台数は76%増加した。価格帯が100〜150ドル(約1万1000〜1万6000円、インドではかなり支持される水準だ)という安価なシリーズのスマホを店舗で積極的に展開し、またeコマースでの売上も手伝ってサムスンを抜いた、とCounterpointのアナリストは話した。

同社によると、Vivoのマーケットシェアは2018年第4四半期からの1年間で132%増えている。

中国スマホメーカーOppo(オッポ)からのスピンオフ企業であるRealme(リアルミー)が5位、同じく中国のOppoが第4位だ。

サムスンはインドでいくつかのスマホの価格を大幅に下げ、そしてご当地機能を搭載したもモデルを展開した。しかし中国勢との競争に苦戦している。サムスンにコメントを求めたが、回答はなかった。

Realmeはインド市場を席巻した。創業2年の同社は、Xiaomiのインドにおける戦略を模倣し、これまで低価格のAndroidスマホの積極的なオンライン販売にフォーカスしてきた。

一方でVivoとOppoはここ数年、インドの地方都市を開拓し、小売業者と契約を交わしてきた。2社はライバル企業の製品よりも自社のスマホを販売するよう小売業者にインセンティブを与えるために小売業者へのコミッションを増やした。

インドマーケットに6年前に参入したXiaomiは、間接経費を抑えるためにオンラインに特化してスマホを販売していたが、今では1万もの店舗を構えている(一部は大手小売チェーンとの提携による)。Xiaomiは2019年9月、インドで1億台のスマホを出荷したと話している。

インドが年間出荷台数で米国を抜く

また、1月24日金曜に発表されたレポートでは、インドでは2019年に1億5800万台のスマホが出荷されたと報告されている。初めて米国の年間出荷台数を抜いた。

累計スマホ販売台数がすでに世界第2位となったインドはいまや、年間スマホ出荷台数も世界で2番目に多いマーケットだ。

CounterpointのシニアアナリストTarun Pathak(タルン・パタック)氏は、2019年に米国では1億5000万〜1億5500万台のスマホが出荷された、とTechCrunchに語った。

ほとんどの国においてスマホ出荷台数が減少している中で、インドは人々がまだ新しい端末を欲しがっている稀なマーケットとなっている。現在、インドでは5億台近くのスマホが使用されている。しかしインドの5億人以上がまだスマホを入手していない。

しかし、減速しつつあるインドの経済は当然のことながらスマホ市場にも影を落としている。スマホマーケットの成長率は2018年に10%だったが、2019年は8.9%だった。

画像クレジット: Nasir Kachroo / NurPhoto / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

暗号の専門家27人がインドの仲介者責任法改定を考え直すよう警告

世界中のセキュリティと暗号化の専門家が、さまざまな団体に集結し、インド政府に対して、同国の仲介者責任法の改正を思い留まるよう呼びかけている。

1月9日、インドのIT大臣Ravi Shankar Prasad(ラビ・シャンカール・プラサッド)氏に送られた公開書簡で、27人のセキュリティおよび暗号化の専門家が、現在、まとめられている改正法案をそのまま可決すれば、インターネットのセキュリティが弱体化し、強力な暗号化が制限されるとインド政府に警告した

インド政府は、2018年12月末、仲介者責任法の一連の改正法案(PDF)を提出した。もしこれが施行されたなら、中小からFacebookやGoogleといった最大手に至るすべての企業が運営する無数のサービスは、大幅な変更が求められることになる。

元の改正案は、仲介者(インド政府の定義では、2人以上のユーザーがコミュニケーションを取り合うための便宜を提供し、インドには500万人以上のユーザーがいるサービス)は、ユーザーのコンテンツを積極的に監視し選別して、疑わしいコンテンツの最初の発信者を特定可能にすることで、ユーザーの行動に対する全責任を負わずに済むようになるという内容だ。

「仲介者の保護に、責任からそのプラットフォームやシステムで交わされるコミュニケーションを監視する能力までを結びつけるこの改正案は、終端間の暗号化を制限し、他者による既存のセキュリティ対策の弱体化を助長してしまう」と専門家たちは、インターネット協会が取りまとめた書簡に記している。

終端間の暗号化に関しては、サービス提供者が解読したユーザーのコンテンツにアクセスする手段が提供されていないと彼らは言う。これに加わった専門家にはGoogle、Twitter、人権擁護団体Access Now、Torプロジェクト、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアムで働く個人も含まれている。

「これは、終端間の暗号化を適用するサービスは、改正案で要求されるレベルの監視は行えないということ意味しています。暗号化プロトコルのバックドアを使うか、エスクローに暗号化キーを保管するか、グループメッセンジャーにサイレントユーザーを忍ばせるか、といった方法を使うことになり、システムのセキュリティを弱体化せずに例外的アクセスを可能にする方法はない」と彼らは言い加えている。

巨大ハイテク企業はこれまで、いわゆる「セーフハーバー」法を享受してきた。現在、アメリカの通信品位法やインドの2000年情報技術法の下で適用されている法律では、プラットフォームは、そこでユーザーがやりとりする内容に関しては責任を負わないことになっている。

このところ多くの団体が、この法律の改正に懸念を表明している。今週のはじめには、Mozilla、GitHubCloudflareはインド政府に対して、彼らが作成した仲介者責任法の改正案を透明化するよう要求した。最新の改正草案の内容を知る人間は、インド政府の他には存在しない。1月15日に、インドの最高裁判所の承認を得るために提出される予定だ。

人々が訴える数々の懸念のなかに、「仲介者」そのものの曖昧な定義がある。最後に公表された草案では、「仲介者」の定義は非常に漠然としていた。人気のインスタント・メッセージ・クライアントから、インターネットISP、サイバーカフェ果てはウィキペディアまで、幅広いサービス提供者が含まれてしまう。

ウィキメディア財団の法務顧問Amanda Keton(アマンダ・キートン)氏は、2019年12月末、インターネット上のコミュニケーションの「追跡可能性」を要求しないよう、インド政府に訴えた。それが通ってしまえば、ウィキペディアの協力者たちが自由にプロジェクトに参加できる機会が制限されてしまうと警告している。

あるアメリカの技術系企業の幹部は、1月8日、匿名を条件に、仲介者のガイドラインに関する改正法案によって大きな変更が要求されるとしても、インド政府はここで立ち止まって考える時期に来ているとTechCrunchに話した。

「ソーシャルメディア・プラットフォームとインスタント・コミュニケーション・サービスに対して行動を起こせば、現実世界は大きなダメージを受ける。偽情報の拡散によって、私たちは少なくとも30人の命が失われるという損害を被った。もし明日、他人に見られたくない写真やメッセージがインターネット上で漏洩するとしても、現在のサービス提供者には手も足も出ません。私たちに必要なのは、今のインターネットの課題に対処する法律です」と彼は語っていた。

画像クレジット:PRAKASH SINGH / AFP / Getty Images

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

インド最高裁がカシミールのインターネット遮断は不当で「権力の乱用」と裁定

インドの最高裁は2020年1月10日、カシミールにおける無期限のインターネット遮断は不当であり、Narendra Modi(ナレンドラ・モディ)首相率いる政府による「権力の乱用」と裁定した。

同国は2019年8月、イスラム教徒が大半を占めるカシミールの自治を取り消し、その後インターネットアクセスを遮断した。政府がセキュリティのためとして強行しているこのインターネット遮断は、あらゆる民主主義の中で最長となる。今回の最高裁による裁定は、インターネット接続を回復させるものではない。

最高裁は裁定の中で、インターネットの無期限の遮断はインドの通信規則に反していると指摘している。N. V. Ramana(N. V. ラマナ)判事はまた、カシミール地元当局に1週間以内にすべての制限を見直すよう命じた。

また最高裁は、政府がすべてのインターネット遮断命令をつまびらかにすべきとした。不当な扱いを受けている人々がそうした命令に抗うことができるよう書面で公開すべきとしている。

インド政府はカシミールで携帯電話の通信も遮断したが、現在これは大半のところで回復している。

活動家でニュースメディアのMediaNamaの創業者であるNikhil Pahwa(ニクヒル・パーワ)氏は、最高裁の裁定は下級裁判所に手本を示すものとして「意義深い」と述べた。

ニューデリーを拠点とするデジタル支持団体「Software Law and Freedom Centre」が運営するサービスInternet Shutdownsによると、インドでは過去9年間で381件のインターネット遮断が報告されている。そのうちの319件は2017年以降のものだ。

インターネットが利用できない状態は、事業にもかなり大きな影響を及ぼしてきた。インド国際経済関係研究所(ICRIER)の2018年に行われた調査によると、インターネット遮断でインド経済は30億4000万ドル(約3330億円)の損失を被った。業界団体のインド携帯通信協会(COAI)は2019年12月末に発表したレポートで、サービスを展開する22エリアでの遮断により通信会社は1日あたり800万ドル(約8億8000万円)の損失となっていると推定している。

画像クレジット: Saqib Majeed / SOPA Images / LightRocket / Getty Images

関連記事:インド政府が再びインターネットを遮断、今回はアッサム州とメガラヤ州

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

インドのアプリ市場を長年支配した中国製を抜き同国製アプリが初めてトップに

中国のデベロッパー製アプリは、インドで人気があった。2018年はインドで人気上位100のAndroidアプリのうち、44が中国製だった

しかし、2019年はインドのデベロッパーのがんばりにより、その様子が変わってきている。アプリの分析やマーケティングを行なっているAppsFlyerによると、全体的にインドのアプリが勢いを取り戻してきているという。

報告書によると、インドのGoogle Play StoreとApple App Storeの2019年Q2とQ3では、上位200アプリのうち2018年は38%がインドのデベロッパーや企業のものだったが、41%に上昇した。

調査会社App Annieのデータによると、「インド製アプリの上昇は中国製アプリのシェアを奪っている。2018年には中国製が43%でトップだったが、2019年は38%になりトップの座を譲った。中国製とインド製を合わせると、全体のほとんど4/5を占め、79%だ」と主張を裏付けている。

AppsFlyerによれば、この変化は2018年から2019年にかけて多くのインド企業が決済やゲーム、ニュース、エンターテインメントなどのアプリに進出してきたためだという。その結果、2019のQ2、Q3ではアプリのインストール数が65億に達した。

しかし同じ報告書で、中国のデベロッパーも依然としてがんばっており、どのカテゴリーでも強い、と述べている。

インドには4億5000万あまりのスマートフォンユーザーがいて、それほど厳しくない法律のおかげでオープンな市場が維持されている。そのため、インドは世界中のデベロッパーにとって魅力的な市場になっている。

Xiaomi(シャオミ)やByteDance(バイトダンス)といった中国企業の多くが、インドを彼らにとって最大の市場として挙げている。TikTokのインドユーザー2億を超えたインドのスマートフォン市場をリードしているXiaomiは、インドのユーザーのためのサービスのポートフォリオを急速に築いている。12月初めにはインドで貸付アプリをローンチした。

しかしインターネットを初めて使うユーザーは、それほど豊かでない人たちが多いこともあり、そんな人たちの人気を得ることは容易ではない。たとえば旅行アプリを作っているデベロッパーたちは、1インストールあたりのコストが約2.4ドル(約170インドルピー)かかっている。食べ物と飲み物のアプリは1インストールあたり1.9ドル(約135インドルピー)、一方ゲームはコストが13.5インドルピーだ。

[AppsFlyerのデータによると、2019年のアプリのインストール数はインド製が中国製を上回った。金融カテゴリーのアプリは人為的なインストール増大に費用を投じている(どれがそうなのかを当てるのはやさしい)。その結果、金融アプリの59%はインストール初日にアンインストールされている。]

このツイートで語られているように、マーケティングに大金をつぎ込んでも、これらアプリの定着率はインストール初日で23.4%だった。そしてその月の終わりには2.6%に落ち込んでいる。それでも2018年の、初日22.8%、30日後2.3%に比べると定着率は上がっている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

民主主義の大規模な破壊を恐れたインド政府がネットサービスを一部規制へ

インド政府は米国時間10月21日、情報仲介企業を規制する既存のルールを改定する計画であることを発表した。情報仲介企業(Intermediary、Intermediarries)とは、コンテンツの作成をユーザーに依存しているソーシャルメディアアプリケーションなどのことで「彼らは民主主義にとんでもない破壊をもたらしている」と政府は見ている。

最高裁判所に提出された法的文書で、エレクトロニクスと情報技術省(Ministry of Electronics and Information Technology)は「情報仲介企業を規制する規則を2020年1月15日までに起草する」と表明している。

さらにその文書の中で同省は「インターネットは民主的な政体に想像を絶する破壊をもたらす強力なツールとして勃興した」とコメントしている。そこで同省によれば、情報仲介企業を監視監督することによって「個人の権利や国の統一性、尊厳性、および安全性に対する現在ますます増加している脅威に対抗できる」としている。

インド政府は昨年後半に、法案協議に関するガイドラインの草案を発表した。それによると「提案されている規則は2011年の法律を改訂するもので、情報仲介企業として500万以上のユーザーがいるソーシャルメディアなどのサービスを対象とする」ことを明らかにした。

政府の職員によると、規則の今日的な改定が必要なときとは放置すれば偽の情報やインターネットのそのほかの悪用が継続的に氾濫すると思われる時代や社会状況を指す。

10月21日に提出された文書は、WhatsApp上のメッセージの発信源を明らかにするシステムを導入せよとするインド政府の要求に対するFacebookからの拒否への応答だ。WhatsAppはインドで人気最大のインスタントメッセージングプラットホームで、ユーザー数は4億人を超えている

インドではソーシャルメディアのユーザーがアカウントに、政府発行の12桁のバイオメトリックスIDであるAadhaar(アーダール)をリンクさせるべきだという意見もある。12億人がこのシステムに登録している。

Facebookの役員は「インド政府の要求である発信源の開示に応じたら、全世界のWhatsAppユーザーが享受しているエンドツーエンドの暗号化が無意味になる」と主張している。「暗号化をなくしたらユーザーの安全性とプライバシーが侵される」と彼らは主張する。最高裁判所は米国時間10月22日にFacebookの言いぶんを聴く予定だ。

インドのインターネット人口は近年増大し、業界の推計によると現在は6億人を超えている。安価なAndroidハンドセットと低料金のモバイルデータの増殖により、ますます多くのインド人がインターネットとソーシャルメディアプラットホームのユーザーになっている。

ある下級裁判所は最高裁判所に対して「テクノロジーは経済成長と社会開発に寄与する半面、ヘイトスピーチやフェイクニュース、公序紊乱、反国家的活動、名誉毀損的投稿、などなどの違法行為がインターネットとソーシャルメディアの上で急増している」と伝えた。

画像クレジット: HABIB NAQASH/AFP/Getty Images

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

インドの月面探査機、着陸ミッション中に信号途絶

インドによる無人探査機を初めて月の南極に軟着陸させる試みは失敗に終わったと、同国の宇宙機関は米国時間8月7日に発表した。

月面から2マイル(約3.2km)未満の上空で、着陸機のVikra(ヴィクラ、インドの宇宙開発の父ことVikram Sarabhai、ヴィクラム・サラバイ氏にちなんだ名前)と管制室との通信がロストした。

インドのNASAに相当するISRO(インド宇宙研究機関)からのライブ中継は、管制室がランダーからの信号を受信できず、科学者たちが緊迫する様子を流した。

着陸の試みを見守っていたインド首相のNarendra Modi(ナレンドラ・モディ)氏は、ISROにて同室した科学者と子どもたちに励ましの言葉をかけた。

「勇気を出して。ISROへの信頼は失われていない。その努力と旅路にはその価値があったことを誇りに思う。我々の宇宙開発の最良の瞬間はこれからなのだ」。

宇宙開発は難しい。月面は着陸を試みて失敗した宇宙船の破片でいっぱいだ。月の大気は非常に薄いためパラシュートは使えず、宇宙船はスラスタによって速度を調整するしかない。

Chandrayaan-2(チャンドラヤーン2号)は約1億4000万ドル(約150億円)をかけたミッションで、2008年に実施されたChandrayaan-1で発見された水が存在する月のクレーターの研究を目的としている。

ミッションが成功すれば、インドは月面への軟着陸に成功した4番目の国になっただろう。今のところ、これを成し遂げたのは旧ソ連、米国、中国だけだ。

7月15日にAndhra Pradesh(アーンドラ・プラデーシュ)州のSriharikota(シュリーハリコータ)にあるSatish Dhawan(サティシュ・ダワン)宇宙センターから打ち上げられた全長142フィート(約43m)のロケットは、オービター、ランダー(着陸機)、および六輪のローバー(探査車)を搭載していた。ランダーとローバーは2週間しか稼働しない予定だが、今週初めにランダーを分離したオービターは、少なくとも1年間稼働する。

ISROは、ロケットの部品を自転車で運び手で組み立てるなど、1960年初めから低コストの宇宙開発に特化した長い道のりがある。

2013年、ISROは初の惑星間ミッションとして7400万ドル(約94億円)で火星へとオービターを打ち上げた。これは、同じ年にNASAが火星へのミッションに費やした6億7100万ドル(約720億円)のほんの一部にすぎない。2017年、ISROはわずか18分で104機の人工衛星を宇宙へと打上げた。

ISROは今年初め、独自の宇宙ステーションを将来的に設置し、太陽と金星へのミッションを行う計画を明らかにした。英国からの独立75年を記念して、2022年にGaganyaan(サンスクリット語で宇宙輸送機の意味)と呼ばれる初の有人宇宙飛行ミッションを行い、その後宇宙ステーションの開発に着手する予定だ。インド政府はGaganyaanミッションのために、1000億ルピー(約1500億円)の予算を認めた。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹Twitter

シャオミが1億台のスマートフォンをインドで出荷

Xiaomi(シャオミ)は米国時間9月6日、同社の最も重要な市場であるインドにて、5年前にビジネスを開始して以来1億台以上のスマートフォンを出荷したと発表した。これは、調査会社のIDCによる数字を基にしている。

8四半期連続でインドのスマートフォンベンダーのトップの位置を維持している中国の巨人は、格安端末のRedmiとRedmi Noteが同国内で最も売れているスマートフォンだと伝えた。

インドは世界で最も急成長している世界第2位のスマートフォン市場であり、またほとんどの端末の価格は200ドル以下(約2万1000円)である。シャオミは高コスパなスマートフォンを提供しており、またインドでは初めから常に価格重視の市場をターゲットにしている。同社によると、販売されるハードウェア製品で5%以上の利益を設定することは決してないという。

シャオミの副社長で同社のインド事業のMDであるManu Jain(マヌ・ジャイン)氏は声明の中で、同社の今日のマイルストーンは「これは、創業以来から多くのMiファンに愛されてきた証拠だ。我々より先に市場に参入したブランドもあるが、我々が達成した驚くべき偉業からはほど遠い」と述べた。

インドだけで1億台のスマートフォンを出荷したことは、多くの市場でビジネスを展開するシャオミにとって大きな偉業である。同社は昨年、全世界で約10カ月(インドを含む)に1億台の携帯電話を出荷し、これもXiaomiの記録となった。

中国での競争が激化し、スマートフォンの出荷が世界中で鈍化または減少する中、シャオミにとって近年インドは最も重要な市場となった。同社がインドに進出した最初の2年間は、コスト削減のために主にスマートフォンのオンライン販売を利用していた。しかしそれ以降、シャオミは実店舗でのプレゼンスを確立しており、同国での販売の大半を占めている。ちなみにインドは、スマートフォンの出荷台数が伸び続けている数少ない国の1つでもある。

シャオミは先月、同社が年末までにインドにて1万店舗を設置する予定だと述べた。また同社は、それまでに店舗販売が売上の半分を占めると予想している。同社は、インドで2万人以上の雇用を創生し、その大半を女性が占めていると述べた。

スマートフォンがインドでの大きなビジネスであり続けているにもかかわらず、Xiaomiは他のハードウェア製品もインドで販売しており、現地向けのソフトウェアサービスを構築してきた。同社は投資家の役割もしており、Twitterなどから最近1億ドル(約110億円)を調達したローカルなソーシャルネットワークのShareChat、金融テックのスタートアップのKrazyBeeとZestMoney、そしてエンタメアプリ開発会社のHungamaを含む、いくつものスタートアップを支援している。

近日のTechCrunchとのインタビューで、シャオミの幹部はインドに専門のチームを作り、現地のスタートアップへの投資機会を丁寧に調査していると語った。

「これは新章の始まりにすぎず、今後も全てのMiファンのために、最高のスペックと品質、そして適正な価格で、より多くのカテゴリーと製品を提供する」と、ジェイン氏は述べている。

かつてインドのスマートフォン市場をリードしていたSamsung(サムスン)は、シャオミとの競争力を高めるため、さまざまな価格帯で数多くの端末を発売した。また、同社はインドでのマーケティング予算も増やしている。ただし、シャオミはマーケティングにほとんどお金をかけていないが、トップの座を維持している。

サムスンは10年以上前にインドに進出し、同国で1億台以上のスマートフォンを出荷したと、調査会社のCounterpointはTechCrunchに伝えている。「この偉業を達成したスマートフォンベンダーは、サムスンとシャオミだけである」とCounterpointでアナリストを務めるTarun Pathak(タルン・パタク)氏は述べた。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹Twitter

インドの月探査機チャンドラヤーン2号、7月22日に打ち上げ日を再設定

インド宇宙研究機関(ISRO)は先週、月の南極点にローバー(探査車)を送るチャンドラヤーン2号の打ち上げを予定していたが、打ち上げ1時間前に発見された「技術的な障害」のために、計画は延期された。そして、ISROは米東部時間の7月22日の月曜日5時13分に、打ち上げを実施すると正式発表した。

チャンドラヤーン2号は月着陸機とローバーを搭載した探査機を月に届けることを目標としている。月の南極にローバーを軟着陸させるというのは初の試みで、またインドにとっても科学実験装置を搭載し耐衝撃シールドを搭載した着陸機を探査機から発射するのではなく、ランダーを月面へとコントロールし軟着陸させるのは初の試みである。これが成功すれば、インドはこの種の月面着陸を成し遂げた4番目の国となる。

打ち上げ日にはライブストリームを提供する予定で、GSLV Mk-IIIロケットがチャンドラヤーン2号を軌道へと投入する様子は、さぞかし見栄えがすることだろう。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

Netflixの会員数は期待したほど増えずむしろ米国では微減

Netflixの2019年第2四半期の決算報告では、米国の有料月額会員の数が初めて減少に転じ、相次ぐ料金値上げがついに顧客の忍耐の限界に達したかと思われる。同社の全世界の有料月額会員は270万人増加したが、実は実際の増加数は283万人のところ、米国では13万人を失った。

Netflixの消費者向け料金はこの四半期に10.99ドルから12.99ドルに上がり、明らかにそれが減少の一因だろう。同社はこれほどのリアクションを予想していなかったらしく、2018年Q2の増加数が550万人だったから少なくとも今期500万人は増えると予想していた。

同社によると、月額会員の増加数は値上げをした地域ほど予想からの乖離が大きく、しかしまた世界のすべての地域で増加数は期待を下回った。米国における減少は競争のせいと思われるかもしれないが、しかし同社によると、発表したばかりでまだ実際に操業していない競合が多いので、実質的な影響はないという。

むしろNetflixが指摘するのは、値上げとともに追加されたコンテンツの陣容だ。Q2のコンテンツの顔ぶれは、期待どおりの新会員を集めることができなかった。次のような、強力な人気コンテンツがあったにもかかわらず。When They See Us(4週で視聴数2500万世帯)、Our Planet(3300万世帯)、Murder Mystery(7300万世帯)、The Perfect Date(4800万世帯)、Always Be My Maybe(3200万世帯)。

それでも同社は、Q3の有料サブスクライバー増を700万人と大きく見積もっている。前年同期の610万人増よりも大きな数字だ。この楽観の大きな理由は、モバイルオンリーで手頃な料金のプランをその四半期にインドで立ち上げるからだろう。

Netflixの株価はQ2の結果のために10%以上下がった。Q2のNetflixの決算報告はここで見られる。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

インドの人工衛星破壊で400あまりの破片がさまざまな軌道上にばらまかれた

NASAのアドミニストレーターを務めるJim Bridenstine氏によると、インドが最近実施した軌道上防衛能力のデモンストレーションにより、400あまりの破片がさまざまな軌道内に散乱し、国際宇宙ステーションやそのほかの配備物を危険にさらしている。彼は米国時間4月2日に行われた市民参加の集会で、「こわい、とってもこわいことだ」と述べた。

先週敢行されたそのテストでは、インドのロケットが高度約300キロメートルに打ち上げられ、前からそこに置かれていた人工衛星に当たって破壊した。それは、1月に打ち上げられたMicrosat Rだと思われる。ナレンドラ・モディ首相はそのテストについて、誇らしげにこう述べた。「インドの優秀な科学者たちの素晴らしい能力と我が国の宇宙計画の成功が示された」。

世界中の宇宙関係者たちからの反応はそんなに温かいものではなく、一部はその行為を宇宙の軍用化に向かう一歩と非難し、またBridenstine氏らはもっと現実的な警告を発した。

彼はこう言った。「意図的に軌道上にデブリフィールド(Debris Fields,、残骸界)を作ることは人間の宇宙飛行と両立しない」。

「その一度のイベントによる400片のデブリを軌道上に認識した。われわれが今調べているのは10センチ以上の大きな破片約60個のみである。60個のうち24個は、国際宇宙ステーションの遠地点の上にある」。

これらの破片のほとんどはすぐに大気圏内で燃え尽きてしまうが、大きなものは追跡できるし、必要なら回避もできる。しかし、「これらのこと全体が悪しき前例になる」とBridenstine氏は示唆する。「どこかの国がやったら、他の国もやろうという気になるだろう」。

まさに彼の言うとおりだからこそ、今回インドはやったのだ。つい最近の2008年に米国もロシアもそして中国もすでにそれをやってしまった。だから米国にも責任の一端はある。でも、デブリを軌道上に送り込んでISSを危険にさらすようなことは、単純に良くない考えだ、と全員が合意するだろう。

インド宇宙研究機構のアドバイザーTapan Misra氏はIndian Expressに、6カ月以内にデブリはすべてなくなる、今回のミッションはいかなるリスクも生じないよう細心に計算されている、と述べている。彼によると、中国による今回と同様の迎撃ミッションは高度が今回の3倍近くあり、大量のオブジェクトを作り出したので、長年経った今でも探知の対象になっているそうだ。

軌道上のデブリは深刻な問題であり、今後打ち上げが増えるとともに問題も悪化する。しかしRocket Labのような一部の企業は事前対策を取ろうとしている。同社はなんと、宇宙銛(もり)という、打ち込んで後で回収できる装備を設計している。それは理論としてはたいへんクールだが、むしろ、そんなものが必要にならないことを願いたいね。

画像クレジット: AFP/Arun Sankar/Getty Images

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

培養肉による食品革命を甲殻類のエビに広げるShiok Meats

自然由来のたんぱく質や肉に代わる人工的な食材は今、消費者の関心が高まり、その企業には何億ドルという資金が殺到している。しかしビーフやチキンを培養する企業は多くても、シーフードの人工製品に関心を向けている企業はほとんどない。

Shiok Meatsは、この状況を変えようとしている。同社はシード前の資金をAIM PartnersやBoom Capital、Ryan Bethencourtなどから調達し、来週はY Combinatorの仲間たちに加わってプレゼンを行う。

共同創業者ーのSandhya Sriram氏とKa Yi Ling氏はともに、シンガポール政府の科学技術研究局にいた幹細胞研究家で、居心地のいい政府のポストを完全に捨てて起業という高速レーンに乗ることにした。

二人が定めた目標は、食料品店の冷凍コーナーに収まっているエビの代替品を作ることだ。ついでに、スープに入れるエビ団子用に最初からみじん切り状のエビも作りたい。

シーフードのの全地球的な市場規模は巨大だが、とくにアジアと東南アジアは甲殻類が頻繁に食される。国連食糧農業機関の2015年の調査によると、中国の消費者だけでも360万トンの甲殻類を消費している。

しかし、エビの養殖の現状は、かなり汚いビジネスだ。その業界は劣悪な労働条件と不衛生な養殖池と環境破壊をこれまで頻繁に批判されている。AP通信社の特ダネ記事は、タイのシーフード業界に存在する現代の奴隷制を暴露した。

「最初にエビを選んだのはカニやロブスターに比べて扱いやすいからだ」とShriram氏は述べるが、今後は高級な甲殻類にも挑戦するつもりだ。

今は、もっぱらエビが対象だ。初期のテストはうまくいったし、製品のキログラム単価は5000ドル程度に抑えられる見込みだ。

5000ドルは高いと思われるかもしれないが、でも今製品開発が進んでいる培養ビーフに比べると相当お安いのだ。

「培養肉や人工肉に比べると、うちの人工エビは安い。あちらさんはどれも、数十万ドルというキログラム単価だから」とLing氏は言う。

同社は、3年から5年後には市販にこぎつけたいと考えている。最初は、アジア太平洋地域の消費者がターゲットだ。

具体的には、まず本国市場であるシンガポール、次は香港とインド、そして最終的にはオーストラリアでも売りたい、という。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Samsungがインドに世界最大のスマートフォン工場をオープン、現地生産のメリット最大化を目指す

今週Samsungは、世界で二番目に大きいモバイルフォーン市場に、世界最大と称する工場オープンした。2020年に拡張工事が完了すると、その工場のある工業団地都市Noida(New Okhla Industrial Development Authority)の規模はほぼ倍増し、インドのスマートフォン生産能力は現在の年産6800万台から1億2000万台にアップする。

エレクトロニクスの巨大企業Samsungは、1996年の最初の工場の開設以来10年あまりスマートフォンを生産しているが、競合企業の多くはインド市場にそれほど積極的ではない。たとえばAppleはiPhone 6Sの生産の試行を開始したが、それまではiPhone SEの小規模な生産をしていただけだ。

生産の現地化は雇用をもたらすだけでなく、デバイスの生産コストも下げる。“Make in India”イニシアチブを掲げるインド政府も、当然ながらSamsungの発表を歓迎している。オープニングセレモニーにはモディ首相も出席し、韓国大統領ムン・ジェインも、彼の故国の最大の企業を代表して出席した。

Samsung IndiaのCEO HC Hongがプレスリリースで述べている: “弊社のNoida工場は世界最大のモバイル工場であり、Samsungのインドへの強力なコミットメントのシンボルであり、政府の‘Make in India’プログラムの輝かしい成功例である。Samsungはインドの長期的なパートナーある。弊社は‘Make in India’(インドで生産)し、‘Make for India’(インドのために生産し)、そしてこれからは‘Make for the World’(世界のために生産)していく。弊社は政府の政策と歩調を合わせ、インドをモバイルフォーンのグローバルなエキスポートハブにする、という夢の実現に向けて、政府の支援を継続的に求めていきたい”。

インドは、スマートフォンの巨大な成長市場だ。昨年同国はアメリカを抜いて、中国に次ぐ世界第二位の市場になった。現地生産へのコミットメントは、今Xiaomiに次いで世界第二位の生産台数に甘んじているSamsungの今後に、多くのものをもたらすだろう。

画像クレジット: Samsung

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

インドの鉄道駅では800万人がGoogle提供の無料Wi-Fiを利用している、Googleには広告収入がある

2015年にGoogleは、インドの鉄道駅に無料のWi-Fiを設置する企画をスタートし、そして今日同社は、目標の400駅、対象人口800万を超えた、と発表した

今日(米国時間6/6)、インド北東部のアッサム州ディブルガール駅がオンライン化されたとき、その目標に到達した。

Googleの発表によると、今では毎月800万あまりの人びとが駅のWi-Fiを利用している。そして一回のセッションで平均350MBのデータ通信を消費し、その半分が少なくとも一日に二回、この事業のWi-Fiを使用する。

十分な規模に達したと見たGoogleは今年から、有料の高速接続を別途提供して、この事業の収益化を開始した。これまでの標準プランにも広告という収入源はあるが、それは鉄道会社や通信会社と分有されている。

400駅800万人という到達点は、Googleにとってまだ“旅の途上”だ。今後は鉄道駅以外にもWi-Fi接続ポイントを全国的に設置していく意向だ。

GoogleのNext BillionチームのVP Caesar Senguptaはブログでこう述べる: “インドはインターネット人口が世界で第二位に多い。しかしそれでも、オンラインでない人口がまだ10億近くいる。われわれの計画も、あと数百万はまだ未達成だ。そもそも、駅を利用しない、あるいは駅に近くない人びとも多い”。

この事業は今、インドネシアやメキシコなどにも根付きつつある。Senguptaによれば、今後対象国はさらに増やしていくそうだ。

しかし無料のWi-FiはGoogleの専売特許ではない。FacebookのInternet.orgはネットの中立性に違反しているとしてインドで禁じられたが、昨年その後継システムがインドでローンチした。Facebookはそれについてあまり語らないが、規模ではGoogleにとうてい及ばないだろう。

Googleがインドで展開しているのは無料のWi-Fiだけではない。検索など主要サービスもインドでそのデータフレンドリーな(データ通信をあまり消費しない)バージョンを提供しているし、またモバイルの決済ネットワークTez食品配達サービス、そしていちばん最近は地域コミュニティのためのソーシャルネットワークを立ち上げた。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Googleがライトビームを使うインターネット接続をインド農村部で展開

Googleは、世界中の農村部がインターネットに接続できるために、ライトビーム(light beam(s), 光線)を使う方法を準備している。今日の発表では、その展開はまずインドから、となる。

同社は、人口5000万を抱えるアーンドラプラデーシュ州の通信事業者と共に、そのFree Space Optical Communications(FSOC, 空中光通信)と呼ばれる技術を実用化しようとしている。それは、光のビームを使って高速大容量の長距離インターネット接続を提供する技術だ。

パートナーのAP State FiberNetは1月から2000のFSOCリンクを導入し、同州のネットワークバックボーンをそれらに対してもサポートしていく。Googleのそのプロジェクトは、Googleによると、“同州で数千名の人びとをサポートしている、セルタワーやWi-Fiホットスポットなどの主要なアクセスポイントにはアクセスできない、危機的な格差を填(う)める”ことがねらいだ。

同社によると、インド政府の計画では2019年までに1200万世帯をインターネットに接続する、としており、Googleのこのプロジェクトはその政府施策の一環でもある。

このプロジェクトのアイデアは、Google Xが、遠隔地のための熱気球を使った接続プロジェクトで、末端伝送ラインとしてFSOCを使ったことがきっかけだ。リーダーのBaris Erkmenの説明によると、のちに彼らは、FSOCを単独でも使えることに気づいた。

Google Xのチームがアーンドラプラデーシュ州に出向し、FSOCの展開を行う。Erkmenによると、要請があれば他の企業や組織にも喜んで協力するそうだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa