Accelerated Mobile Pages (AMP)とは何か?ニール・パテル氏による決定版ガイド。

Accelerated Mobile Pages (AMP)については、2月のローンチ以来、多くのサイトが対応を開始し、様々な情報がでてきているといった状況かと思います。今回の記事は、ニール・パテル氏によるまとめ記事となりますが、AMP対応におけるメリットなどがわかりやすくまとめられています。メリットもデメリットもあるAMPですが、ページスピードの速さは非常に魅力的ですね。また、遅ればせながらSEO JapanもAMP対応を進めており、こちらの記事もAMPバージョンを作成しています。まだまだ研究段階といったところですが、実装可能なものだけでも網羅していきたいと思います。– SEO Japan

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*リンク先は全て英語となります。
*2016年4月の記事のため、一部追記を行っています。

モバイルページをスピードアップする時が来た。

Googleがモバイルフレンドリー・アップデートをローンチし、ランキング要素の1つとして以来、サイトオーナーはモバイル体験を高速化することへの関心をより強めている。

モバイルユーザーのためにページを最適化することは非常に好ましいことだ。しかし、そもそもページが素早く読み込まれなければ、ユーザーがあなたのコンテンツを楽しむ妨げになってしまうだろう。

解決策は何か?

モバイルページの高速化について考えたことはあるだろうか?このガイドは、あなたがAMPを理解するうえで大きな助けとなるだろう。

*リンクをクリックすると、名前とメールアドレスの入力が求められます。入力すれば、PDF版のガイド(英語)がダウンロードできます。

Accelerated Mobile Pages。そう、AMPと呼ばれる技術だ。

スピードはWebページをデザインする上で、欠かすことのできない要素だ。KISSmetricsのデータによると、「読み込みに3秒以上かかるWebページの場合、およそ40%のユーザーが離脱してしまう」、ということだ。

10万ドルを一日で売り上げるオンライン・ショッピングサイトの場合、読み込みが1秒遅れることで、毎年250万ドルの損失となる可能性がある。

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Googleによれば、AMPを用いることで、読み込み時間が15%から85%短縮できるという実験結果もある。

2015年の12月にGoogleは、AMPがランキング要素となる可能性も示唆している。

そのため、WebマスターやマーケターやSEO担当者は、AMPがモバイルページに与える影響について分析をし始めた。その結果、AMPは実際にランキングに大きな影響を与えると指摘する事実も報告されている。

簡単に言えば、AMPに対応したページは上位に表示され、読み込み速度が速く、訪問者を顧客にコンバートしやすいようだ。

最近では、イギリス版のWhiteboard Fridayにて、distilled社のウィル・クリシュロウズ氏とトム・アンソニー氏がAMPの仕組みと、そこから得られる利益についての解説を行っている。

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モバイルユーザーへのリーチの重要性を理解しているデジタルマーケターとして、AMPの詳細とメリットを詳しく把握したいのであれば、下記の記事を読み進めて欲しい。

Accelerated Mobile Pages (AMP)とは何か?

AMPはモバイルコンテンツ戦略の一部となるべきである。

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AMPはGoogleとTwitterのコラボレーションにより産まれた。

簡潔にいえば、Accelerated Mobile Pagesはモバイルページを高速化させるために設計されたプロジェクトである。要素を基本的なものに絞り込むことで、始めからモバイル・フレンドリーであり、読み込み速度の速いページを作成する。

詳細は、オープンソースのプラットフォームに記載されているので、ぜひ、確認してほしい。

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AMPは、Googleがユーザーにフォーカスしているという、何よりの証拠となっている。

Googleがこのような新しいアップデートをロールアウトすれば、「より多くの利益をGoogleが得るために行われている」、と考える人もいるだろう。

この意見は非常に正しいと言える。なぜなら、ユーザーが幸せになればなるほど、よりGoogleに接する機会が増えることになり、Googleの広告ビジネスに大きな利益をもたらすことになるからだ。

しかし、そもそもGoogleは検索ユーザーへの大きな情熱を抱いている。そして、あなたも同様に情熱を持つべきなのだ。

Accelerated Mobile Pages (AMP) はオープンソースのプロジェクト、もしくは、プラットフォームであり、パブリッシャーがモバイルページの速度と可読性を改良する手助けとなることを目的としている。

つまり、「速度の速いモバイルページ+読みやすいコンテンツ=より良いユーザー体験」、ということになる。

AMPはどのような仕組みなのか?

Search Engine Landのポール・シャッピロ氏は、AMPの3つの構造を整理している。

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【画像内和訳】
1.AMP HTML
HTMLのサブセットであり、カスタムタグ、属性、多くの制限を持つマークアップ言語。しかし、通常のHTMLの知識があれば、既存のページをAMP HTMLで記述することに大きな問題はないだろう。通常のHTMLとの違いについての詳細は、AMPプロジェクトのサイトに記載されている、必須のマークアップ要素のリストを確認してほしい。
2.AMP JS
モバイルページ用のJavaScriptフレームワーク。多くの場合で、リソースの管理と非同期の読み込みを担当する。サードパーティー製のJavaScriptはAMPでは使用が許可されていないことは注意してほしい。
3.AMP CDN
オプショナルなコンテンツ・デリバリー・ネットワーク。AMP対応したページをキャッシュし、自動的にパフォーマンスの最適化を図る。

AMPは、HTMLタグを削減しモバイルユーザーに適したもののみを読み込むことで、モバイルページの読み込み速度を劇的に向上している。

下記の図表と解説はウィル・クリシュロウズ氏のWhiteboard Fridayからの引用であるが、AMPのプロセスを簡潔に説明している。

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【画像内和訳】
Will:この図表を見てほしい。通常のWebページで使用されているアイデアだ。図表内ではWWWと記載しよう。これは通常のデスクトップバージョンのページということだ。もしAMPバージョンのページがあれば、通常のページのソースコード内でAMP HTMLで記載したページへのリンクをrel=”canonical”で指定する。このリンクはAMP対応したページへ向けられているが、AMP対応したページをここでは、”hosted AMP page”と呼ぶことにしよう。

つまり、このAMPページというものは、必要なものだけを備えたHTMLで構成された、あなたのドメイン内にあるページである。実際にこうしたAMPページを見てみるために、Guardianを例に挙げてみよう。GuardianはAMP対応を行っている早期のパートナーの一つだ。GuardianのWebサイトに行き、どこかのニュース記事のURLの末尾に”/amp”と追加すれば、AMP HTMLのページを見ることができる。また、(通常のページの)ソースコードにAMP HTMLのリンクが確認できるだろう。

これが、”Hosted AMP”だ。Googleに対し、何かする必要はない。ただ作成すればよく、読み込み速度が速くなるように設計されている。しかし、キャッシュページのプラットフォームも用意されており、この図表では”gstatic”と記載している。

AMPは最適化されたHTMLによって記述されたページをレンダリングする。そして、そのページの読み込み速度は非常に速い。なぜなら、ページの読み込みを遅延させるHTMLタグの使用が許可されていないからである。

JavaScriptを使用しているページの場合は、AMPページではそのスクリプトはレンダリングされない。

その他のAMPについて知っておくべき情報を、下記に記載しておこう。

  • AMPでは、簡略化・合理化されたCSSを使用する。
  • AMPが提供しているJavaScriptライブラリのみが使用できる。これは、あなたがコントロールできるものではないため、レイジーロード(遅延読み込み)となる可能性がある。これは、AMPの唯一のデメリットかもしれない。
  • AMPバージョンのサイトがいつでも機能するために、適切なバリデーションが必要。
  • AMPページでは、フォームの使用は許可されていない。
  • より良い体験のために、カスタムフォントは特別に読み込まれる。
  • 見栄えの悪い画像を避けるために、画像の高さと幅を宣言する。
  • ページ内に動画を使用したい場合は、AMPが認証しているエクステンションを使用する。

さらに、AMPバージョンのページを作成し、モバイルページの向上を図る場合、読み込み速度と読みやすさが問題となるため、記事の共有といった要素は重要視されていない。そのため、ソーシャルシェアボタンが適切に表示されない場合もある。なぜなら、ソーシャルシェアボタンの多くは、JavaScriptを使用して開発されているからだ。

*2016年5月にAMPはソーシャルボタンの機能を追加しました。

Accelerated Mobile Pagesの利点

サイトスピード、ページビュー、検索順位の間には強い相関関係がある。

覚えておくべきことは、読み込み速度が速ければ、モバイルユーザーはサイト内でより多くのページを閲覧し、結果として直帰率が下がるということだ。

直帰率が下がり、サイトでの体験が向上すれば、Googleはそのページへ恩恵を与える。そのため、AMP対応のページがAMP対応でないページよりも上位に表示されていても、大きな驚きではないだろう。下記の二つのバージョンを比較してほしい。

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読み込み速度の速いコンテンツの提供を可能としているFacebookのインスタントアーティクルズのように、AMPはユーザーのモバイル体験を次のレベルへと導くものである。

事実、AMP対応にすることで、多くの利益がもたらされる。その中でも、特に大きい5つのメリットを挙げてみよう。

1.Webページを即時に読み込む
スピードはモバイルページにおける真髄のようなものだ。優れたコンテンツは必要だ。しかし、ページへのアクセスが可能でなければ、ユーザーはそのコンテンツを読むこともない。

モバイルでの読み込み速度が1秒遅れることで、コンバージョン率が3.5%、ページビューが9.4%下がり、直帰率が8.3%増えるというデータもある。

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このことからも、ページの読み込み速度を向上させる必要性が感じられると思う。そして、AMPはその目的を達成させる手助けとなるのだ。

人々がコンテンツ(記事、ブログ、動画、ポッドキャストなど)を消費する方法は劇的に変化している。コンテンツが配信される頻度は特にだろう。

もしも、あなたのモバイルページの読み込み速度がでんでん虫のように遅ければ、ターゲットとしたモバイルユーザーを顧客へとコンバートさせることは難しいだろう。AMPによって劇的にページスピードを向上させるための準備をしておこう。

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AMPはあなたをモバイルページの向上を目的とした行動に駆り立てる存在である。

Googleは継続して自身のシステムを改良している。今のところ、モバイルフレンドリーは最も大きなアップデートだと考えられるが、AMPプロジェクトが頭角をあわらしてきた。

そして、この事態はある事実を意味している。つまり、Googleは完成されていないということだ。新しい検索アルゴリズムのアップデート、高度な新機能やツールの開発などは今後も行われるだろう。

さあ、準備を始めよう。AMPプロジェクトのサイトに訪問し、あなたのモバイルページを加速化させるのだ。

2.コンテンツマーケターのために、モバイルにおける露出を高める
Googleは自然検索結果内におけるAMPページの表示を開始した。検索結果に緑色(*注)のAMPという表記があるため、すぐに発見できるだろう。

*注:実際は灰色ですが、原文ママで緑色と記載しています。

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検索結果内で目を引けば、クリック数が高まることは明らかだろう。

この緑色のAMPという表記は、他の検索結果よりも目立って表示されるため、クリック率の向上に一役買うことになるだろう。

そして、ユーザーは検索結果内でAMPページを探すようになるだろう。なぜなら、AMPページは通常のモバイルページよりも素早く読み込まれるからだ。

3.ランキングの上昇
サイトスピードとコンバージョン率には強い関係がある。読み込み速度の速いサイトでユーザーが幸せになれば、リストを購読したり、商品を買ったりといった行動を起こしやすくなる。

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多くの予測がされているが、GoogleはAMPをランキング要素にはしていない。

読み込み速度とモバイルフレンドリーは良く知られた要素であり、AMPはモバイルページと密接にかかわりあっている。

これが、AMPが独立したランキング要素となっていない理由である。なぜなら、AMPはモバイルページのみの仕組みであり、デスクトップバージョンのページには何も影響を与えないからだ。

つまり、モバイルフレンドリーなサイトが自然検索結果で上位に表示されるため、AMP対応のページは、AMP対応でないページよりも、モバイルの検索結果ページで上位に表示されるということなのだ。

4.柔軟な広告サポート
多くの人がWebサイトやブログを開始する理由に、お金を稼いだり、日々の仕事の補完にといった理由を挙げるだろう。

デスクトップとモバイルのページを見てみれば、多くの違いがあることに気が付くはずだ。

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ヘッダー画像、ナビゲーションのメニュー、サイドバー、ソーシャルボタン、フォーム、ポップアップ、その他の不要な要素などはコンバージョン率を下げる要因となっている。

しかし、AMPでは、モバイルページにおけるこうした阻害要因を取り除くことが可能なのだ。

全てのHTMLタグが使用されているわけではなく、合理的なCSSが使用されており、JavaScriptの問題は発生していないということが理由だ。また、コードも6倍軽くなっている。

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これは、広告からの収益をより簡易に得られることを意味している。

例えば、AMPバージョンのThe Guardianを分析してみると、通常のページよりも、広告がより柔軟でよりユーザーフレンドリーに表示されるように設計されていることに、すぐに気が付くだろう。

AMPバージョンのページをクリックすれば、ほぼ瞬間的にコンテンツが読み込まれる。

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AMP対応のページでは、広告は下記のように表示されている。

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AMPページでサードパーティーからの広告を表示させれば、広告も瞬時に表示されるだけでなく、ユーザーの注意を惹きつけ、計り知れない価値をもたらすことになるのだ。

既にご存知の通り、こうしたコンテンツマーケティングによるアプローチは、あなたの影響力を高め、ユーザーが持つ疑問に対する答えを提供し、広告費におけるROIを向上させる、非常に簡単な方法であるのだ。

AMPページでのマネタイズの準備をするために、下記に現在AMPの広告に対応している広告ネットワークを記載しておく。

  • Amazon A9
  • AdReactor
  • Google Doubleclick
  • Flite
  • Adform
  • Google AdSense
  • AOL AdTech
  • Taboola
  • plista
  • Smart AdServer
  • Yieldmo
  • DotAndAds

5.ユーザーのトラッキングをシンプルに
モバイルページへトラフィックを送るだけでは不十分だ。ユーザーがどのようにしてあなたのサイトにたどり着いたかを知る必要がある。

トラッキングは、ユーザーがどこからきて、どのページを見たか、などを判断する手助けとなる。

ユーザーとサイトのパフォーマンスをトラッキングすることは、AMPでは非常に簡単だ。なぜなら、すでに分析用のツールが準備されており、AMPバージョンのページを詳細に分析することが可能となっているからだ。

ユーザー行動は、あなたがトラッキングを行ったとき初めて影響を持つようになる。AMPでは、パブリッシャーは2つのタグから選択することができる。

これらのタグは、クリック、コンバージョン、動画、リンク、訪問数、新規顧客、既存顧客などの重要なデータ自動的にトラッキングしてくれる。

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Digivateによれば、およそ16,000のモバイル対応のサイトが、AMPによって毎日レンダリングされているということだ。The New York Times、The Guardian、Financial Times、BBC、News Corp、Washington Postなどの主要なトップブランドやニュースメディアはすでにAMPに対応している。

また、WordPress、Parse.ly、Chartbeat、LinkedIn、Adobe Analytics、Pinterest、Twitterなどのテクノロジーソリューション・カンパニーもAMPに対応している。

あなたのページをAMPに最適化しよう

Accelerated Mobile Pagesは発展途上の技術である。AMPプロジェクトの開発者によれば、Githubにて、”我々は毎週木曜日に全てのAMPページに対し、新しいリリースをしている”、とのことだ。

新しい機能も追加されるだろう。例えば、AMPバージョンのページか通常のモバイルページかをユーザーが選択できる機能が追加されると考えている。

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どちらにせよ、AMP対応の準備は進めておく必要がある。そうすることで、今後何が起ころうとも、あなたは勝者の側に立つことになる。

AMPに対応する方法を検討する際にはいくつかの選択肢がある。初心者であれば、少なくとも2つのバージョンのページを保持することだ。

オリジナルのコンテンツはモバイルフレンドリーであるだろうが、それとは別に、AMPバージョンのページを作成する。そして、このAMPページが、劇的に読み込み速度を速めることになる。

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また、AMPでは、フォーム要素やサードパーティー製のJavaScriptが許可されていないことを思い出してほしい。

マーケターとして、e-mailのリストを構築したいと誰もが思うだろう。AMPの弱点は、この目的が簡単に達成できないことだ。

さらに、コメントや他のアクションなど、ユーザーがモバイルページのコンテンツに参加することをAMPは許可していない。

繰り返しになるが、注目すべきはスピードであり、可読性なのだ。

WordPressのユーザーであれば、AMPを今すぐ開始するために、GitHubでプラグインをダウンロードしてインストールすればよい。

単純に、“Download Zip” をクリックしよう。

*WordPressのサイトですが、プラグインはこちらでダウンロードできます。

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このプラグインは、通常のプラグインのように、WordPressのダッシュボードからインストールすることもできる。非常に簡単だ。

プラグインをインストールし実装すれば、各ブログ投稿のURLの末尾に “/amp/”と追加すればよい。ブラウザでの表記は下記のようになる。

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また、The GuardianのAMPバージョンのページは下記の通りだ。

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パーマリンクを設定していなければ、“?amp=1”を代わりに追加すればよい。

そして、GoogleのSearch Consoleにて、バリデーションと修正を行うことを忘れずに。これを行うことで、GoogleがあなたのAMPバージョンのページを発見する手助けとなる。

まとめ

AMPは非常に強力だ。モバイルページをアップグレードすることで、サイトスピードにおける、Googleの期待を満たす手助けとなる。

将来は、Accelerated Mobile Pagesはソーシャルメディアにおける、モバイルとのかかわりに大きな影響を与えるだろう。私はそれを確信している。

AMP対応に注目すると同時に、モバイルマーケティングの戦略もしっかりと行うことだ。こうすることで、あなたのサイトへのモバイルトラフィックを発生させ、あなたのビジネスを成長させる原動力となる。

この記事を読み終える前に、一つだけ尋ねさせてほしい。モバイルページのスピードと可読性を高めたいと思うだろうか?もし思わないのであれば、何があなたをそうさせるのだろうか?


この記事は、NEILPATELに掲載された「The Definitive Guide to Accelerated Mobile Pages (AMP)」を翻訳した内容です。


今回の記事を含め、いくつかAMP対応の記事をSEO Japanで上げています。まだまだ調査段階でありまして、最低限の実装となっていますので、ひっそりと告知させていただきました(笑い)。しかし、実装の技術に関して言えば、ニール・パテル氏が指摘する通り、AMPはそこまで難しいものではないと感じています(細かい設定などを省けば)。AMPの対象と機能はどんどん増えていくと思いますので、可能な限り実装方法は確認しておこうと思います。– SEO Japan

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ガートナー曰く、2016年におけるスマートフォンの販売成長率は1桁台に後退見込み

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ICTアドバイザリー界の大手であるガートナーによれば、今年はスマートフォン販売の成長率が大幅に落ち込む見通しなのだそうだ。2015年は14.4パーセントの成長率だったものが、2016年には7パーセントまで下がる見込みであるとのこと。全世界をあわせても、今年のスマートフォン出荷額は15億ドルにとどまるみこみなのだそうだ。

成長率が最も高かったのは2010年で、前年比73パーセント増を記録していた。

スマートフォン市場の停滞については1年以上前から指摘されてはいる。先進欧米市場は飽和状態に近づいていて、また需要が先細る中国においても成長が鈍化しているからだ。モデルチェンジの際も、既存機能の性能アップ程度であることが多くなり、新モデル発表のたびに端末を買い換えるモチベーションも下がってきている。また、キャリアによる買い替え助成的意味をもつキャンペーンなども姿を消しつつある。

普及段階にあっては高額なスマートフォンの買い替えサイクルも2.2年ないし2.5年程度となっていた。それが3年以上と長くなりつつあるのが現状であるのだとのことだ。

もちろん、インドなどでは大いに成長の余地があるのだとも、ガートナーは言っている。フィーチャーフォンが販売台数中61パーセントを占めていて、スマートフォンの価格が十分に下がれば、一気にスマートフォンに買い換えるような展開も有り得るからだ。

インドにおける、今年のスマートフォンの販売台数は1億3900万台程度だそうで、これも昨年比で29.5パーセントの増加となる。しかしインドにおける携帯電話機の売れ筋価格は70ドル程度であり、そのような中でスマートフォンが売れるためには、価格帯が120ドル以下程度であることが必要なのだそうだ。すなわち、インドでいきなりAppleが大ブレイクということにはならなそうだ。しかし、インドのOEMメーカーであるIntexと契約を結んで、提供するSailfishなるスマートフォン向けOSの販路拡大を狙っているJollaなどにとってはチャンスと言えるだろう。

インドにおいて、はじめてSailfishで動作するIntex Aqua Fishは、120ドル未満の価格で今年中に市場投入される予定となっている。ただし、開発には遅れもあるようで、先月の広告では「数ヶ月のうちに登場」という表現になっていた。

中国をみてみると、スマートフォンの売り上げは横ばいとなっている。ガートナーによれば、5年のうちの成長率もさほど高いものとはならないだろうとのこと。市場は飽和状態になっており、また価格競争も激しい地域だからだ。ちなみに昨年は、携帯電話機のうち95パーセントがスマートフォンであったとのことだ。これからの成長を伺う中、地元の市場が飽和状態となってしまっていることはXiaomiなどにとっては厳しい話だといえるだろう。同社は先月、マイクロソフトと特許権購入についての契約を結び、海外での成長戦略を模索しているところだ。

一方でガートナーは、中国においては新たなベンダーが登場してくる余地もあるとしている。2018年までには、新しいスマートフォンメーカーが中国内のベスト5スマートフォンメーカーの一角に割り込んでくると見ているそうだ。「インターネット関連企業は、モバイルデバイスの開発に力を入れつつあります。サービスの利用者を拡大し、さらにロイヤルティをもってもらうために自社開発のデバイスを提供しようとする動きが拡大しているのです」と、ガートナーのアナリストであるAnnette Zimmermanは言っている。

また、アフリカにおけるサハラ以南の地域についても、スマートフォンベンダーにとっては魅力的なところだとしている。この地域では、昨年になってようやくスマートフォンの売り上げがフィーチャーフォンを上回ったところだ。この地域における動きも活発化していて、たとえばノキアは、一世を風靡したノキアブランドの使用許可を新興のスマートフォンOEMメーカーであるHMDに与えることで、この地域における市場拡大を目指している。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

Yahoo買収の第二ラウンドのビッド(入札)で落札者最尤候補のVerizonは$3Bを提示する…とWSJが報道

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VerizonがYahooの主要なインターネット事業の買収に、徐々に近づいているようだ。Wall Street Journalの記事によると、この通信大手はYahooを競る第二ラウンドのビッドで30億ドルを提示するらしい。

プライベート・エクイティ企業のTPGも、ビッドをねらっている。第二ラウンドのオファーは月曜日だが、WSJの情報筋によるとYahooは、今後もさらにラウンドを重ねるという。そのほかの買い手候補、Time Inc., Alphabet, Comcast, AT&T, IAC/InterActive Corp.などが、4月の第一ラウンドよりも前に下(お)りたため、現在はVerizonがトップランナーだ。

(情報開示: VerizonはAOLのオーナー、そしてAOLは本誌TechCrunchの親会社だ。)

Verizonが来週行うと思われる30億ドルのオファーは、ニュースサイトや広告ビジネスを含むYahooのインターネットビジネスが最初のビッドサイクルで獲得したとされる40〜80億ドルよりも安い。WSJによるとそれは、先月行われたセールスプレゼンテーションでYahooのCEO Marissa Mayerが、Verizonの主な買収動機である同社のオンラインビジネスが、低調であると明かしたためだ。しかしCNBCのアナリストDavid Faberが書いた記事によると、20億ドルとか30億ドルは、Yahooがこれまでに受け取った“最安のビッド額よりもさらに安い”そうだ。

YahooとVerizonはコメントを拒否した。本誌はTPGにもコンタクトしている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

社内SNSのTalknoteを中学・高等学校が導入、SNS利用のトラブル防止を評価

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「『いい会社』をつくる」がコンセプトの社内SNS「Talknote」。ビジネスでの利用が中心のこのサービスが「『いい学校』をつくる」ための試みを開始した。

Talknoteをテスト導入するのは、東京都・武蔵野市の聖徳学園中学・高等学校だ。ICT教育を積極的に推進している同校は、2015年12月よりTalknoteのテスト導入を開始。一定の成果が得られたことから本格導入に乗り出すことをあきらかにした。これまでも教育現場での導入実績はあったが、全面導入は初の事例となる。

教育現場へTalknote導入するのは、「ICT教育の推進」といった目的に限らない。今回の事例に関して言えば、「SNSを利用したいじめや犯罪などのトラブルを未然に防ぎたいという学校側の意図もあった」とトークノートの関係者は語る。そして、そのための機能こそがTalknoteの強みであり、「Slack」や「ChatWork」といった競合他社のツールとの違いであると、トークノート代表の小池温男氏はTechCrunch Japanの取材に対して語った。

「Talknoteは、社員満足度を高めることを最大の目的としている。たとえば、気持よく仕事ができているか、体調を崩していないかなど、『具合が悪い社員』を出さないような努力を企業はすべきだと考えている。そのための仕組みがTalknoteにはある。具体的には、『毎朝9:00にログインしているのに今朝は10:00にログインした』『普段は頻繁に投稿するのに今週は投稿数が極端に減った』といった社員のアクションの変化を、Talknoteは管理者にアラートで教えてくれる」(小池氏)

こういった「アクションの変化」を見逃すことなく、具合が悪い社員を出さない仕組みが、今回の学校側の「SNSを利用したいじめや犯罪などのトラブルを未然に防ぎたい」というニーズと合致した形だ。

Talknoteの導入企業数は右肩上がりで成長している。2015年12月時点では2万1515社。導入企業の業界・規模は飲食から通信・情報サービス、不動産、広告・Webマーケティング、小売、Web・映像制作、人材、コンサルティング、セールスプロモーション、製造業、学習塾、通販など幅広い。企業ごとのアカウント数は数人~1000人以上と幅広い。

「Talknote」導入企業数の推移

「Talknote」導入企業数の推移

Talknoteに限らず、コミュニケーションツールは利用人数が多いほどその恩恵を受けやすい。「塚田農場」や「四十八漁場」などの飲食店を運営するエー・ピーカンパニーでは、1000名を超える全社員がTalknoteを活用している。課題のひとつに、「食材(魚種)が多過ぎて特徴が覚えきれない」ことがあった。しかし、現地の漁師から店舗スタッフまですべての人で情報を共有する「産地共有ノート」というグループを作成。商品知識向上の目的を達成したという。

また、2016年3月にはいわゆる「スタンプ機能」を追加した。

「リリースした3月以降、Talknote上のメッセージ総数は増加傾向にある。今までの新規機能利用率と比べても、初動活性化が早かった印象だ。また、オリジナルスタンプを作りたいというニーズも増えており、実際に導入も進んでいる」(Talknote広報)

同社では、今後も必要に応じてTalknoteに機能を追加していくという。最後に、中・長期的な目標を小池氏に語ってもらった。

「将来的には、あらゆる企業・団体でTalknoteが導入されているというのが理想。社内SNSを含め、コミュニケーションツールはひとつの勝者に収れんしていくというのが一般的な見方だが、それは間違い。B2C向けコミュニケーションツールに目を向ければそれは明らかだ。Facebookを使う人もいればLINEやSkypeを使う人もいる。目的が異なれば使うべきツールも違ってくる。事実、弊社のクライアントの中にもツールを併用している企業がある」(小池氏)

SlackやChatWorkといったB2B向けコミュニケーションツールとのすみ分けを図りながら共存していくというTalknoteの戦略が、小池氏の言葉から浮かび上がってくる。

エジプトのInstabugが創業3年でシリコンバレーから$1.7Mを調達、Y Combinatorの育成企業に

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Instabugを知ったのは、2013年にカイロにいたときだ。そのとき、“アラブの春”から生まれたこの元気な連中が、Y Combinatorの2016年冬季クラスに‘入学’することになるとは、夢にも思わなかった。

今度彼らはAccel Partners率いるラウンドで170万ドルのシード資金を獲得し、モバイルアプリのバグ報告という最初の機能だけでなく、もっと機能を拡張していこうとしている。出資者の中には著名なエンジェル、Clouderaの協同ファウンダーAmr Awadallahや、MoPubのファウンダーでCEOの Jim Payneらがいる。

チームの多くは今でもエジプトにおり、だからMENA(Middle East and North Africa)地域のスタートアップ投資としては、これはかなり大きい方だ。同社のサンフランシスコのオフィスも、もっと大きくしていきたいと同社は考えている。

Instabugは今、元々のバグ報告ツールを拡張して、モバイルアプリをサポートするもっと幅広いキットにしていこう、と目論んでいる。

Instabugが2013年に公開したシンプルなSDKでは、モバイルアプリのユーザーがスマートフォンを振るだけでバグを報告できる。報告には自動的にスクリーンショットとデバイスの詳細情報、ユーザーがそのとき何をしたか、などの情報がついてデベロッパーへ送られる。しかしこういったツールは、いちいち名前を挙げられないぐらいコンペティターが多い。でもInstabugを使えばデベロッパーは、バグの内容やフィードバック、クラッシュの状況などを一箇所で見ることができる。

今では12000のアプリがInstabugを利用しており、App Storeのトップ100のうち26のアプリもそこに含まれている。Instabugが動いているデバイスは、iOSとAndroid合わせて3億近い、と同社は言っている。

2月にInstabugは、Instabug 3.0をローンチした。それにはアプリ内の会話機能があり、チームとユーザーがアプリの中で会話できる。

InstabugのCEOで協同ファウンダーのOmar Gabrは、“シリコンバレーの投資家がエジプトに目を向けて、スタートアップを支援してくれたことは、嬉しい”、と語った。

最初はエジプトのアクセラレータFlat6Labs Cairoの傘下だった同社は、2013年にエンジェル投資家たちから30万ドルを調達している。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Microsoftはビッグデータ分析とその応用プロダクトでApache Sparkに総賭けの姿勢

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Microsoftが今日(米国時間6/6)、オープンソースのクラスターコンピューティングフレームワークApache Sparkに、本格的にコミットしていく、と発表した

昨年、Sparkのエコシステムの浅瀬でちょっと足を濡らしてみたMicrosoftは、本日、いくつかのSpark関連サービスのプレビューを終えてそれらを公式ローンチし、またR Server for Hadoopのオンプレミスバージョンが今後はSparkベースになる、と発表した。R Serverの‘R’は、今人気がますます盛り上がっている、ビッグデータ分析とモデリングのためのオープンソースの言語Rを指す。

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さらにMicrosoftは、R ServerのAzureクラウドバージョンR Server for HDInsightがこの夏の終わりごろプレビューを終えて一般公開される、と発表した。なおSpark for Azure HDInsightは今すでに一般公開されていて、Hortonworksによる管理を伴うSparkサービスがサポートされる。MicrosoftのビジネスインテリジェンスツールPower BIも、今ではSpark Streamingをサポートし、ユーザーはリアルタイムデータをSparkから直接Power BIへプッシュできる。

これらの発表はすべて、Microsoftが“Sparkへの幅広いコミットによってMicrosoftのビッグデータ分析プロダクトを強化する”、と述べる方針の実現(の一環)だ。プロダクトはPower BIやR ServerだけでなくCortana Intelligence Suiteも含まれる。こちらはMicrosoftの複数のビッグデータ分析サービスを併用し、いくつかの機械学習ツールも利用するシステムだ。〔Cortana参考サイト

今週サンフランシスコで行われるSpark SummitでMicrosoftは、Google, Baidu, Amazon, Databricksなどなどと共にスポットライトを浴びる気でいる。その席でMicrosoftは、同社がSparkに今どれだけ入れ込んでいるか、その情報をシェアする、と約束している。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

$30Mを投じたスーパーコンピューターStampede 2は18ペタフロップスを誇り利用は研究者向けに一般公開へ

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世界のスーパーコンピューターの上位5機たちの、地位が危うくなってきた。テキサス大学が3000万ドルを投じたStampede 2が、追い上げている。そのピーク時処理能力18ペタフロップスは、CrayのTitanやIBMのSequoiaと肩を並べる。中国のTianhe-2(天河二号, 33.86pFLOPS)には、まだ及ばないが。

その建造目的は、大規模な数値処理を必要とする研究者が誰でも利用できる、世界クラスのスーパーコンピューターを作ることだた。たとえば原子力工学や環境科学の分野では、シミュレーションに膨大な計算力を要する。それらはデスクトップコンピューターなら数年かかるが、スーパーコンピューターなら数日で完了する。

たとえば下図のコロイド状ゲルのシミュレーションでは、75万個の粒子類似体のすべての動きと相互作用を究明しなければならない。

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あるいは下図の、創始期超新星のレンダリングでは、2000立方キロメートルの一般相対論的電磁流体中のすべての擬粒子(?)のエントロピーを追跡しなければならない。

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お分かりかな?

テキサス大のプレスリリースで、Texas Advanced Computing Center(TACC)のディレクターDan Stanzioneが語っている: “StampedeやStampede 2のような大規模なコンピューティングとデータ能力は、どんな研究開発分野においてもイノベーションのために必要不可欠だ。Stampedeは、住宅および商用建造物の耐震基準の策定のために、これまででもっとも大規模な数学的証明を提供してきた”。

その2013年3月に稼働を開始したStampedeの2倍の能力を持つのがStampede 2だ。それらは、どちらも、米国科学財団(National Science Foundation, NSF)の助成金によりテキサス大学オースチン校で作られた。

2倍というのは、必ずしもコア数のことではない。製造技術がStampedeの22nmから14nmのXeon Phiチップに(コードネーム”Knights Landing”)に進化し、そのほかの“将来世代的な”プロセッサーも使われている。コア数は、61コアから72コアに増えた。

RAMもストレージもデータの帯域も倍増した。いくら処理能力が速くても、データの移動が遅ければ無意味だ。Stampede 2は毎秒100ギガビットへと高速化し、そのDDR4 RAMは十分に高速でかつ巨大な第三段キャッシュと、通常のメモリの役を担う。

また、Intelの最新のメモリ技術3D Xpointによる不揮発メモリも採用している。それはNANDよりも高速でDRAMより安いと言われ、高性能を要求されるストレージの理想の媒体と見なされている。Stampede 2はそれを本格的に採用した初の実用機となるが、いずれはわれわれデスクトップのユーザーにも恩恵が回ってくるだろう。

しかしその十分すぎるスペック(参考記事)は、正当な開発動機があったとはいえ、ポルノのように誘惑的だ。テキサス大のプレスリリースによると最近の10年間で、TACCを利用する機関の数は倍増、上級研究者たちの数は三倍増、一般のアクティブユーザーは五倍増した。自然を研究調査する分野と、新しいツールやサービスを開発する分野の両方で、ディープなデータ分析の新たに発見される用途が増え続けているから、ユーザーの数は今後ますます増え続けるだろう。

Stampede 2の稼働開始がいつになるのか、それはまだ決まっていないが、資金には問題がないようだから、あと一年あまり、というところか。もちろんその間に、スーパーコンピューターの上位5機は、競争がますます混み合ってくるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Pavlokの「リストショック」ウェアラブル目覚しで起きてみた

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この明るいオレンジ色のシリコン製品を手首に巻いた時、私は電気ショック首輪のことを思い出さずにいられなかった。あれはかなり残酷だといつも思っていた。そして今、私はこうして自分で着用している ― 吠えるからでも庭の外に出るからでもなく、午前6時にベッドから出られない罪のために。

私の方がこの件に関して主体性があるとはいえ、この比較は必ずしも不適切ではない。そもそも、その名称“Pavlok”[バブロフ]からして、エサを期待して涎をたらす犬たちを思い起こさせる。この名前が想起させようとしているのは一種の条件づけだ。このハードウェアのフルバージョンは、あらゆる悪癖を抑制するために作られたもので、悪い考えが頭に浮かんだ時に押す「マニュアルショック」ボタンまで付いている。

今春Indiegogoで公開されたShock Clockバージョンは、主として人が朝ベッドから出るのを助けることに焦点を絞っている。会社はこれを「生涯唯一必要なアラーム」と呼んでいる。もちろん、話はそう単純ではない。まず言っておくと、このリストバンドはスマート端末と接続しておく必要がある。つまり、スマートフォンかタブレットをベッドの近くに置いておかなければならない ― そしてもう一つの理由については次に説明する。

対応するPavlokAlarmアプリは単機能だ。デバイスとペアリングするためのボタンと時刻の設定、およびどれほど乱暴に起こすかを切り替える機能がある ― 触覚ブザー、サウンド、またはショック。設定して手首に巻いたら、そう、あとは寝るだけだ。

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電気ショックを与えている時以外、Shock Clockはそこそこ快適に着用していられる。フィットネストラッカーを着けて寝たことのある人なら、おおよそ想像できるだろう。シリコン製バンドに挿入するモジュールは、フィットネスバンドのものよりやや大きいが、睡眠の邪魔になるほどではない。

アラーム機能については、ほぼ宣伝通りに働く。アラームをセットして、起床方法を選ぶ ― 止めるためにはスマートフォンを探さなくてはならない(あるいは、時々私がやったように、リストバンドを外す)。

バイブレーションが、中では最も快適だ。スマートフォンの通知を手首で受けているような感じだ。特別寝起きが悪い人でない限り、これで十分だろう。一方、サウンドオプションは、スマホのアラーム以上に優れたことは殆ど提供しないが、予備として他の方法とセットで使うにはよいかもしれない。。

そして「ショック」。これは…強烈だ。正確には、痛みはないが、予想していたものより少々激しかった。正直なところ、朝ベッドから出る方法とし私の好みではないが、それでも、スマートアラームを組み込んだ小犬が、私を起きるまで舐め続けるよりはましだ。ちなみに、これがいわゆるパブロフの条件づけだ。

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Shock Clockには「エビデンス」書類が添付されていて、「Pavlokは医療機器ではなくその効果について医学的試験は実施されていない」と書かれているが、電気ショックによる行動変化への効果については、科学的に研究されている。冊子にはいくつかの研究結果が紹介されており、1970年代にある被験者のヘロイン使用を抑止したと思われる事例もある。それを考えると、時間通りに起きることは、実に控え目な要求だ。

私は適切に条件づけされるほどには、まだ十分な時間Pavlokを使っていない。今でも目覚しが必要で、実を言うと、着けて寝るのをやめている。眠い時のウェアラブルとしては、今使っているフィットネストラッカーだけで十分だ ― おそらく多くの人にとっても。しかし、このしくみをもっと多機能なウェアラブルに組み込む可能性はあるかもしれない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Trelloに対抗、Microsoftの新たなプロジェクト管理ツール「Planner」が正式ローンチ

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Microsoft Officeのラインナップに、 新たな仲間が加わった。Microsoft Plannerだ。これは仕事の計画を視覚的に整理するためのソフトウェアで、タスクのアサイン、ファイル共有、チャットなどチームが協働するための機能を備えている。昨年の秋に初めて概要が紹介されたこのアプリは、プロ向けソフトウェアであるAtlassianのJIRA CoreやTrello、Asanaといったスタートアップが提供する簡単に使えるツールがひしめく分野へと参入する。

TrelloのようにPlannerでも「Boards(ボード)」を使って、仕事の管理を行う。各ボードの中には個別の「Cards(カード)」があって、それぞれに締切を設定したり、添付資料を付けたり、カテゴリー分けやチャットができるようになっている。何のカードかを一目で判別できるよう、カードに書類や写真を設定することもできる。カードは「Buckets(バケツ)」と呼ばれるカラム内で整理する。バケツには色分けや優先順位を付けることが可能だ。

このソフトウェアのもう1つ重要な要素が「Hub(ハブ)」だ。このハブでは、仕事全体の進捗を確認することができる。誰が計画通りに仕事を進められていて、誰が遅れているかを確認し、そこから自分のタスクや課題を絞り込んで確認することができる。

Microsoftが提供するこのサービスが他の競合サービスより魅力的な点は、Microsoftプロダクトと連携することだ。すでにMicrosoft Officeの一連のプロダクトや関連サービスを使用している企業に訴求することができるだろう。例えば、PlannerはOffice 365 Groupsと連携しているので、PlannerでのやりとりはOutlook 2016、ウェブ版Outlook、モバイルでもOutlook Groups Mobile Appsから見ることができる。

PlannerはOneNoteとも連携している。全てのプランに対して、OneNoteのNotebookが割り当てられると同社はいう。ソフトウェアはOfficeとも連携するので、ユーザーはカードにWord、Excel、PowerPointの書類を添付することができる。これらの書類はSharePoint Onlineのドキュメントライブラリに保存され、オフラインでも利用可能となる。

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Microsoft Officeのサービスの1つであることから、Plannerは企業がすぐに活用できるツールになっている。大手企業が要求する技術的な要件とサポートを備えている。例えば、複数回余計にバックアップを行う機能、素早い復旧、そしてHIPAA、FISMA、ISO27001の基準を満たし、EUの基準にも準拠したモデルも提供する。

Microsoftは前からProjectというプロジェクト管理ツールを提供してきたが、多くの人はそれは複雑すぎて、ニーズに対して過剰なツールであると感じていた。Projectを完全に使いこなすためにはユーザーがいくらか使い方を学習する必要があったため、多くがExcelやTrelloといった新しく登場したソリューションに流れていた。

しかし、他のプロダクティビティアプリがMicrosoft Officeの利益を生み出すプロダクトの認知度を脅かすようなことがあれば、同社は何かしらのアクションを取ってきた。MicrosoftはYammerWunderlistSwiftKeySunriseAcompliを買収し、Slackの買収も検討した。Trelloの場合は、買収の代わりに自社でサービスを構築した。

MicrosoftはPlannerでカスタマーの負担が軽く、簡単に使いこなせるツールとして提供し、SharePoint Tasksの代わりに位置付ける。Plannerの最初のデビューより随分と前にSharePoint Tasksは撤去されていた(Tasksのページは、1年ほど前からPlannerのウェブサイトに遷移するようになっていた。Plannerの正式発表より前からだ)。

Microsoftは、次の数週間で該当するOffice 365のカスタマー( Office 365 Enterprise E1-E5、Business Essentials、Premium、 Educationのサブスクリプションプランに加入しているカスタマー)にPlannerを展開していくという。Plannerが有効になると、これらのカスタマーはOffice 365のランチャーに自動で表示されるようになるという。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

Facebook Live、ゲームストリーミングでTwitchに挑む

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もし、人々がインターネット上で何かに多くの時間を費やしているなら、そこにFacebookが一枚加わろうとすることは間違いない。彼らの新たな探究の旅はゲームストリーミング。TwichとYouTubeに支配されている分野だ。今日(米国時間6/6)Facebookは、World Of Warcraftのメーカー、Blizzardと提携して、同社のゲームにソーシャルログインとFacebook Liveビデオストリーミングを組み込むことを発表した。まずは最新大ヒット作品のOverwatchから。

BlizzardのゲーマーはFacebookでログインできるようになるので、一緒にプレイする友達を探したり、ゲーム内コンテンツをニュースフィードでシェアしたりするのが簡単になる。Facebook Live APIにはプレイ中の画面をライブストリームする機能が含まれている。Facebookユーザーはゲーマー友達がモンスターと戦ってレベルを制覇するのを見ながら、リアルタイムでコメントを残すことができる。

Amazon傘下のTwitchサービスは、毎月1億人が利用しているが、Facebookとつながっているゲームは6.5億人がプレイしているので、この新機能の膨大な可能性が想像できる。

今やビデオゲームは観戦スポーツとなり、FacebookはESPN[米スポーツ専門TV局]への道を進もうとしている。

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FacebookはTwitchに追いつかなくてはならない。Twitchはその〈プレイヤーピクチャー・イン・ゲームプレイピクチャー〉ビデオストリーミングとライブチャット機能を何年もかけて磨いてきた。専用のインターフェース、ビデオクリエーターのための広告や定期利用収益化オプション、および繁栄するゲーマーコミュニティー等、追いつくのは容易ではない。

しかしFacebookは、その巨大なユーザー基盤と高度なストリーミング用バックエンドを活用し、ソーシャルグラフを武器に戦う。

Twitch's dedicated game streaming interface

Twitch’s dedicated game streaming interface

もしFacebookが、ゲームのライブストリーミングはゲーマーだけでなく、一般視聴者にとっての次の大物だと本気で信じているなら、他では得られないようなビュー数をプレイヤーに与えられるだろう。

その昔Facebookは、FarmVilleに後押しされたデスクトッププラットフォームを持つカジュアルゲーム世界の中心地だった。人々は自分のデジタル都市や牧場を維持するために、何時間も考えることなくクリックし続けた。Facebookによる次のゲーミングへ界参入は、ユーザーにとってさらにシンプルかもしれない。自分はプレイすることがない。ただ観戦するだけだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

VOEZはアニメをテーマにしたクセになるリズムゲームだ


VOEZは台湾発の新しいゲームで現在アプリのゲームチャートを急上昇中だ。Rock Bandの様であり、DDRの様でもあるが、もう少しカラオケっぽいセッティングになっている。単純に言えば、VOEZはアニメをテーマにしたリズムゲームだ。プレイヤーは色鮮やかなコマンドが標的ラインに向かって降ってくるのに応じてタップ、ホールド、スワイプを繰り出す必要がある。動作は数種類しかないが、どんどん激しい曲に移行するにつれ、ゲームの難度度は増す。このゲームが他と違う点を一つ言えば、ベースラインでプレーしていると落下するレーンがシフトし移動してくる所だ。Rock Bandが静的であるのに対して、このゲームではベースラインがシフトし、脈打って拡がるところが何か浮遊感がある。

少なくとも私にとって、このゲーム中で特に難しかったのは、見つけるのが難しい白い点々とレーンをシフトしてくるスライドホールドだ。これらは本当に厄介なのだが、そのせいでゲームがより面白くなってもいる。

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少し自分でも驚いたことは、私はこのゲームが好きだっただけでなく、実際かなり上手だったことだ。クラブっぽいダンスビートにもかかわらず(少しDJになった気分になる)、リズミカルにプレーすることで爽快感と開放感が同時に入り混じった気分になる。私は自分のiPhone SEとフルサイズのiPadの両方でこのゲームをやってみたが、VOEZは小さなスマホでプレーする方がずっと簡単で楽しいということが分かった。

VOEZは回数無制限でプレーでき10曲ほどが無料でついてきて曲は入れ替わる。もしあるレベルが気に入れば、その曲をずっとロック解除にするためには「鍵」を買わねばならない。楽曲にはメローポップ、ロック、インテンステクノがある。歌詞は英語ではないが、心配は無用、ゲームのチュートリアルと操作の解説には英語を含む4つの言語で対応している。

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VOEZは台北を拠点とするゲームディベロッパーRayark Internationalのゲームで、同社からは2番目のヒット作だ。以前ヒットしたCytusは、よく似たスタイルのリズムゲームだった。しかし、今回のゲームは前作とは十分に異なっており、前作の続き物という感じはせず、むしろ同じ流れ、といった感じだ。

あと、ゲームをダウンロードするにはWi-Fiに繋がっている必要がある、ということは知っておいたほうが良いだろう。メインのアプリは約200MBのスペースが必要で、曲を追加するたびにさらに5MBほどが必要になる。まあ、それぐらいだ。VOEZはiOSGoogle Playの両方で、無料で楽しめる。だから結局のところは、それだけのスペースをスマホに確保するほどそのゲームが好きかどうか、ということだろう。

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(翻訳:Tsubouchi)

Boseのヘッドホン、QuietComfortがついにワイヤレスになった

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Boseの名前は、「ノイズキャンセリング」と同義と言ってもよい。だがワイヤレス、となるとそうでもなかった。このヘッドホンメーカーは、ことコードを切ることについては、ライバルたちが挙ってBluetoothで市場を溢れさせているにもかかわらず、歩みが遅かった。

嬉しいことにその会社が、ついに羽ばたく準備を整え、主力ヘッドホン、QuietComfortブランドにワイヤレス接続を導入した。新しいヘッドホン、QuietComfort 35は、もちろん同社の主要機種と美的な相違はない。このアラウンドイヤーヘッドホンは、複数のマイクロホンを備えアクティブノイズキャンセリング機能を提供する。

音楽の操作や通話受信のためのボタンを備え、充電式バッテリーは音楽再生20時間を約束し、Boseの言葉を借りれば「ニューヨークから香港までのフライトより長い」という。大変結構。ヘッドホンは今日から349.95ドルで発売される。

Bose

QuietComfortシリーズには新たなイヤホン2機種も加わる。上位機種のQuietControl 30は、同社の最高級製品ラインのイヤホン版として明確に位置づけられている。299.95ドル(発売は9月)のBluetoothイヤホンは、ノイズキャンセリング用マイクロホン(計6基)を備え、ケーブルには音楽再生と通話制御機能ボタンが装備されている。バッテリーは1回の充電で10時間持続する。

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一方SportSoundヘッドホンは、人気のJaybirdのフィットネスイヤホンに対抗すべく、耐汗性がありワークアウト中でも使用できる。価格は149.95ドルで、心拍モニター内蔵バージョンのPulseは、50ドル高い。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Rocket Internetからの買収で運命が大きく変化したイタリアのスタートアップ

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編集部注:本稿はMarcello Mariによって執筆された。

 

最初はおとぎ話だった。2015年の初頭、ドイツの巨大企業Rocket Internetがイタリア初のフードデリバリー企業であるPizzaBoを買収することを発表した。その買収金額は5100万ユーロ(約62億円)だった。

この金額は、イタリア出身のスタートアップに対する買収金額としては歴史上3番目に高い金額であり、Rocket Internetがイタリア企業を買収したのはこれが初めてだった。

Rocket Internetは、ドイツ出身のインターネット企業の中で最も成功した企業であろう。彼らの有名な(または悪名高い)ビジネスの手法とは、世界中の成功したビジネスモデルを丸ごとコピーをして、そのビジネスモデルを発展途上のマーケットで立ち上げるというものだ。だからこそ、このニュースがメディアに飛び込んだ時、皆がこの買収を大きな成功として祝ったのだ。

イタリアの企業に対する投資や、他企業からの買収(特に外国企業からの買収)は不足しており、だからこそ彼らはこのニュースをお祝い事として扱った(実際の功績より過剰の反応だったと言ってもよい)。

実際この買収の発表の後、同社はStartupItaliaが発表したイタリア出身スタートアップのランキングでTOP10入りを果たした。ちなみに、このランキングはイタリアのスタートアップ業界ではとても威厳あるものだ。

その後、PizzaBoの最高経営責任者であるChristian Sarcuniは世界のスターの仲間入りをする。少なくとも、彼がイタリアのスタートアップシーンにおけるスターとなったのは間違いない。彼はこの買収を、初期のPizzaBoを見捨てた投資家たちに対する「大きな復讐」と表現した。

TechCrunchとSarcuniとの独占インタビューの中で、彼は「メディアがPizzaBoにもつ関心は、私たちのサービスに対するものではなく、今回の買収によって巻き起こった、どよめきに対するものなのではないかと感じます」と語った。

しかし、Rocket Internet独特の積極的な成長戦略、そして極端にアグレッシブとも言える、PizzaBoブランドのマーケット拡大計画をPizzaBoに提示し始めたことで事態は一変する。

「買収完了後、初めてMarc Samwer(Rocket Internetの共同創業者)と会いました。彼は自分の事をシェアホルダーの代弁者であると話しました。しかし、彼が食品事業全体の実権を握っていることは明らかでした。明らかに、彼は食品事業における意思決定者だったのです」とSarcuni氏は本誌に語ってくれた。

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世界中に存在する多くのスタートアップと同様、PizzaBo創業の物語は実に控えめなものだ。創業者であるSarcuniは南イタリアにある小さな町で生まれ、2010年にイタリア最大の学生都市であるボローニャで会社を立ち上げた(ボローニャは学生都市であるからこそ、ピザの配達業としては最良の条件が整ったマーケットだった)。

創業1年目は6万枚のピザを配達した。4年後、その数字が100万枚に達し、ボローニャの他にも5つの学生都市に事業を拡大したころ、Rocket Internetが同社の門を叩く。

「Rocket InternetからのEメールを受け取った時は、本当に驚愕の思いでした。メールの受信から24時間以内には、要求された資料をすべて揃えて送信しました。その翌日にはRocket Internetの担当者が当社を訪れ、資料の数字を確認する作業が始まったのです」とSarcuniは買収後のインタビューで語った。

それから間もなく、あとはサインを待つばかりの契約書がSarcuniのデスクに届いた。Rocket Internetの財務諸表によれば5100万ユーロの買収金額だ。

当初、Rocket InternetとSarcuniの間には多くの約束事があった。その一つが、PizzaBoの社名とロゴの変更はしないというものだった。

ところが、それから数カ月の内にPizzaBoの社名は「Hello Food」と変更されることになる。Rocket傘下のフード企業であるHello Freshと似た名前だ。「彼らとは数多くのミーティングを実施しましたが、あれはその中でも特に厳しいものでした。あらゆる手段を使い、彼らにもう一度考え直してもらうよう努力しましたが、どうすることもできませんでした」とSarcuniは語る。

社名に関する約束のほかにも、PizzaBoが新たに20都市へとマーケットを拡大する際、Rocket Internetはその支援を約束していた。しかし、Sarcuniの言葉を借りれば、当時のRocket Internetのチームはデューデリジェンスで忙しく、事業拡大までは手が回らなかった。

「Rocket Internetが戦略を変更しようとしていたのは明らかでしたが、私たちは必死の努力で20都市への事業拡大の目標を達成しました。彼らからの電話を受けとったのは、大規模なマーケティング・キャンペーンの準備を整え、私はみずからカメラの前に立ち、当社初の全国放送のテレビ・コマーシャルを撮影していた時でした。そのキャンペーンのための資金援助をキャンセルするという旨の通告です。それに関する説明は一切ありませんでした」と彼は話す。

この後、事態は深刻化する。

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2016年2月5日金曜日、Sarcuniが目覚めたとき、大量のテキスト・メッセージとEメールが届いていた。

その中の一通には、彼の会社がJust Eatという企業に売却されたと書かれていた。同社はイギリス首位の食品配達企業であり、PizzaBoのメインの競合企業だった会社だ。

「Just Eatのイタリア責任者との会議では、私たちの両者とも驚きを隠せませんでした。彼も私と同じく今回の売却に際して何の知らせも受けておらず、意見を聞かれることも無かったのです」とSarcuniは話す。

しかし、Just EatがpizzaBoを買収して以来、事態は好転し始めた。新しい企業の傘下となったことで、PizzaBoは本来の社名を取り戻した。独立性も維持されていたようだ。

しかし、それは嵐の前の静けさだったのだ。2016年3月後半、その嵐がやってきた。

買収以来、Just EatとSarcuniは何事においても、ただの一度も合意に達することはなかった。そのJust EatがPizzaBoに対し、本社をボローニャからミラノへと移転するように指示する。

Sarcuni率いるPizzaBoには、同社の成功の秘訣とされるチームが存在する。そのチームは本社移転に反対していた。本社移転の陰に、隠された人員削減が存在することを恐れたのだ。典型的なイタリア企業らしく、PizzaBoの労働組合による抗議活動が行われることとなった。これはイタリアにおけるスタートアップの歴史上、初めての出来事だ。

しかし、イギリスの巨大企業からの要求を前に、労働組合の交渉責任者は無力だった。最終的な決定権はSarcuniに移った。結局、彼はチームとの約束を果たすことができず、3月15日に本社移転を了承した。

PizzaBoは、Sarcuniがみずからの手で創業し、無借金であり、Rocket Internetによる買収以前は他社から資金援助も受けてこなかった。そのPizzaBoは、彼が最高経営責任者として続投することを認めなかった。

PizzaBoがたどった運命はさておき、買収から始まったこの物語は、イタリアのスタートアップの歴史上、最も高額な買収劇の一つであることには変わりはない。

劇の幕が降りた今、Sarcuniは自分が起こした失敗を痛いほど自覚している。「もし時間を戻せるのならば、あの時、自分の会社を丸ごと売るようなことはしなかったでしょう。少なくとも、会社のコントロールを失わないようにするでしょう。当然、もっと信頼のおけるパートナーを選ぼうとするはずです」と彼は語る。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

GoGoを訴えていたAmerican Airlines、機内WiFiサービスでViaSatと契約

2016-06-06-american-airlines

American AirlinesはWiFiをGogoからViaSatに乗り換えるようだ。AAは来年11月までに100機の導入を予定している新鋭機、ボーイング737 MAXの機内WiFiサービスについて南カリフォルニアの衛星コミュニケーション企業、ViaSatと契約したことを明らかにした。

この契約はAAがGogoを訴えるという緊張した状況の中で行われた。フライト内WiFiの有力プロバイダー、GoGoの接続速度が遅いことにAA(と乗客)は苛立ちを募らせていた。

GoGoとAAは控えめに表現しても友好的ならざる関係だが、Gogoは依然アメリカの多くの航空会社にWiFiサービスを提供している。134機のAirbusの機体はGoGoの2Ku衛星通信セットを装備している。

現在のアメリカの国内便のWiFiはメールをチェックするのがやっとというスピードがほとんどだが、ViaSatでは各座席に12Mbpsの接続を約束しており、「家庭と同様のマルチメディア・ストリーミングを可能にする」としている。AAの新鋭機はViaSat-1とViaSat-2を採用し、さらに高速のViaSat-3が2019年に登場すればそれに切り替える。

参照  The Los Angeles Times

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

マーク・ザッカーバーグのTwitter、Pinterest、LinkedInがハックされる―Facebookアカウントは無事

2016-06-07-zuckerberg-hacker

Facebookのファウンダー、CEOのマーク・ザッカーバーグがハッカーに攻撃され、短時間だがいくつかのアカウントを乗っ取られた。一部のサービスには不愉快な投稿が表示された。

EngadgetよるとザッカーバーグのFacebookアカウントは無事だったが、Pinterest、 Twitter、LinkedIn wereはハックされた。記事にはアカウントが回復される前のハックされた状態のスクリーンショットも何枚が掲載されている。

乗っ取られたPinterestのページによると犯人グループはOurMine Teamと名乗っている。リンクされたTwitterアカウントは現在、停止されている。

ハッカーたちはザッカーバーグのInstagramアカウントの乗っ取りも試みたようだ。攻撃されたアカウントの中でザッカーバーグの企業グループに属する唯一のSNSだが、TechCrunchが知る限りでは、Instagramのセキュリティー・システムが乗っ取りを防止した。

先月はLinkedInがハックされ、大量のメールアドレスとパスワードのデータが漏洩した。ハッキングは2012に遡るもののようだが、当時LinkedInはパスワードとソルトなしのSHA-1ハッシュで保存しており、何十万というパスワードが簡単に解読されてしまったようだ。この大規模なセキュリティー上の失態によりハッカーは生のパスワード情報を入手し、パスワードをハッキングする能力を大きく向上させたと見られている。

今回のザッカーバーグのアカウントのハッキングがLinkedInから流出したメール、パスワードのデータと関連しているかどうかは明らかではない。しかし、タイミングを考えると、またハッカーグループが乗っ取ったザッカーバーグのTwitterアカウントからのメッセージでLinkedInからのリークについて触れているところからも何らかの関係があることは考えられる。メッセージはこうだ。:“Hey @finkd [Zuckerberg’s Twitter account name], you were in Linkedin Database”〔おい、(ザッカーバーグのTwitteアカウント名)〕、お前はLinkedinのデータベースにあったぞ〕

ハッカーはまたザッカーバーグのLinkedInのパスワードだと主張するものも投稿していた。

ザッカーバーグはメールのパスワードと他のいくつかのソーシャル・ネットワークのパスワードを共有していたのかもしれない。複数のアカウントが同時に乗っ取られたのはそのためだととも考えられる。パスワードの使い回しは、新しいSNSに登録を求められる際に平均的なユーザーが陥りがちなセキュリティー上のエラーだが、世界最大のNSNのファウンダー、CEOもこの罠にかかっていたとするなら驚きだ。ただしザッカーバーグがハックされたのは利用頻度の低いアカウントのようだった。

Facebookの広報担当はこの件に関してコメントすることを避けた。

先月末、Twitter最大のフォロワーを誇るケイティー・ペリーのアカウントが乗っ取られてファンに衝撃を与えたばかりだ。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

歩ける範囲のご近所さん限定、地域SNS「マチマチ」がシードで6000万円の資金調達、全国展開開始

スタートアップやネット業界の人なら「ムトベ」という、ちょっと珍しい名前に聞き覚えがある人も多いだろう。六人部生馬氏はメガネECの「オーマイグラス」(Oh My Glasses)の共同創業者で、先日まではCOOだった人物だ。長身で、存在感のある黒縁の眼鏡。その風貌は、いかにも「メガネにコミットしています」という起業家・経営者という印象だと個人的には思っていたのだけど、下の写真にあるように六人部氏(左)はメガネを外して次のチャレンジを始めている。

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マチマチを運営するProper共同創業者でCEOの六人部生馬氏(左)と共同創業者でCTOの藤村大介氏(右)

「オーマイグラスは昨年3月で常任の取締役から非常勤になり、昨年9月で退任しています。引き続き株主として関わっていますが、事業が軌道に乗ってきたので離れた次第です」

また大きな挑戦がしたい、ゼロイチがやりたい――。そんな六人部氏が次に選んだ事業領域は、実はアメリカや中国でも伸びている、ご近所SNSというサービスなのだった。

Quipperエンジニアの藤村大介氏と六人部氏は約半年前にProperを設立。東京の一部地域に限定したサービスを2カ月前から開始していて、今日「ご近所さんと話そう」をコンセプトとする新サービス「マチマチ」の全国展開をアナウンスした。同時にシードラウンドとして6000万円の資金調達を実施たことを明らかにした。出資したのは独立系VCのANRIとBEENEXT、それにエンジェル投資家が数名だ。

住所確認の上で実名登録

マチマチは実名制で登録して、ご近所さん同士で気軽にコミュケーションできるソーシャルサービスだ。現状は、徒歩圏内(半径800メートル程度)と比較的小さな地域単位ごとに、そこに住んでいる人だけが参加できるオンライン・コミュニティーだ。過去2カ月のベータ期間には、東京渋谷区の富ヶ谷1丁目、2丁目、神山町、初台など約10の地域でサービスを展開してきた。今日から対象地域を全国に広げる。全国が使えば数十万という単位のコミュニティーとなる。

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地域のオンライン・コミュニティーを立ち上げるためには、リーダーが必要だ。これは「やりたい」と立候補する形をとっていて、このリーダーが初期メンバーを最低5人集められることがコミュニティースタートの条件。参加は18歳以上で登録時に住所が確認できる免許証や保険証などを郵送でやり取りすることで、スパムや不正利用を防ぐ。こうしたサービスではマルチ商法の営業が紛れ込みがちなので、通報機能や不正検知など取り入れることで安全、安心にフォーカスしていくという。

想定しているコミュニティーは1つあたり数十人から多くて200人程度。まだここは今後の推移をみないと分からないものの「300人とか400人は多すぎるのでは」(六人部氏)と考えているそう。

で、何のために繋がるのか?

町のお店やイベント情報、防犯・防災情報などをお互いに共有して、毎日の生活をより楽しく、より豊かにするためだそうだ。例えば「近くに良い病院ないですか?」とか「ペットが迷子になって探しています!」とか気軽に聞けるということだ。

「近所の人々とのつながりで地域の課題を解決するということをミッションにサービスを立ち上げました。少子高齢化や過疎化など日本社会には多くの課題があります。ところが地域をみてみると頼れる『縁』がなくなっています。都市化が進んで地縁や血縁が薄れてきている。そんな仮説からスタートしています。ちょうど良い距離感の近所のつながりが求められているのではないか、ということです」

「顔見知りが増えたら、防犯にもなりますよね。あと『あのあたりが危ないという情報を共有したい』と思っていても、そういう情報をどこに持って行っていいのか分からないということってありますよね」

すでにベータ版を開始している地域では、サービスを通して知った地元のお店にユーザーが訪れるといった例も発生している。また、町会が開催したお花見をマチマチ上で知ったユーザーが参加するなどの動きも出ているそうだ。

米国や中国には先行の大きなサービスも

実はマチマチにはベンチマークしている海外の類似サービスがいくつかあるそうだ。

2010年にスタートした米国のNexdoorは、すでに2億1000万ドル(約230億円)もの資金を調達している。面白いのはNextdoorでは当初、「コヨーテが出た」など防犯や安全のための投稿が中心だったものが、今はそうした防犯系の投稿の比率は20%にまで落ちてきていて、今は店舗・サービスの推薦情報が26%を占めるようになっていること。推薦情報がマネタイズポイントになりつつある、と六人部氏は見ているという(Nextdoorはユーザー数など非公開)。

このほかイギリスにはユーザー数が100万人規模のStreelife.comが、オーストリアにはFragNebenanが、そして中国には考拉先生というサービスなどがあるそうだ。

国内でも、マンション向けのオンラインコミュニティーや、ヤフーロコ、ロココムなど地域限定オンラインサービスというのはある(ロココムは2015年にサービス終了)。ただ、六人部氏の見立てでは、どこも大きくは成功していない。それは先行サービスの多くが、店舗クーポンや広告事業、チラシ配布など、住民同士の交流よりも先にマネタイズから入りすぎていたからではないか、ということだ。そうしたこともあって、マチマチでは商業アカウントは当面は提供しない。むしろ行政アカウントを求める自治体などと話を進めている段階だという。「自治体の多くが町会への参加率低下のこともあって住民に情報が届けづらくなっています。有事のときに防災で担い手がなくなって困っています。例えば地元避難所のカギを持ってるのが高齢の方で、地震などの有事の際に防災機能を発揮することができるか懸念されていることもあるんです」(六人部氏)。自治体や商業施設のほかにも、電鉄や不動産デベロッパー系から「沿線を盛り上げたい」というような引き合いもあるそうだ。

すでに書いたようにコミュニティー立ち上げには地域のリーダー的存在(呼び方はまだ決まっていないらしい)が必要だけど、われこそはという人は5人の仲間を誘ってマチマチに登録してみよう。そうそう、もう1つ。マチマチでは学生インターンを募集しているそうだ。

民泊営業「年180日以下」が閣議決定、事業者に影響を聞いた

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政府の規制改革会議が6月2日、個人宅の空室を有料で貸し出す「民泊」について、営業日数の上限を「年間180日以下」とすることを条件に解禁する方針を閣議決定した。今後は所管省庁である厚生労働省と観光庁で営業日数の上限を確定し、2016年度中に法案を提出する。

法的にグレー、黒に近いグレーと言われつつも急速に普及する民泊。今回の閣議決定で個人宅の民泊が解禁される一方で、民泊事業者からは営業日数制限に反発の声が上がっている。どんな影響があるのか? まもなく民泊物件仲介を開始するスペースマーケットCEOの重松大輔氏に聞いた。

――民泊事業への影響は?

民泊事業の発展を阻害するものだと思っている。投資の回収が困難になることで参入事業者が減る可能性がある。営業日数を規制せずに、問題があれば上限を設定するアプローチを取ってほしかった。

――そのほかに問題点は?

住宅の提供者は通常、Airbnbをはじめ複数のサービスに登録して部屋を貸し出している。われわれ事業者としては、他のサービスを通じて貸し出した宿泊日数を把握するのは難しく、どこまで厳密に営業日数を管理できるか不透明な部分もある。

――スペースマーケットとしてはどう対応する?

法律が施行されれば、上限にのっとってサービスを提供する。弊社はスペースの一時貸しが本業なので、民泊施設を(宿泊させずに)会議やパーティーなどの用途で貸し出すことになるかもしれない。

――政府に対して何らかの行動を取る?

(重松氏が代表理事を務める)シェアリングエコノミー協会として意見をとりまとめ、反対意見を表明する予定だ。今までグレーな部分があった民泊が白になったのは大躍進ではあるが、やはり上限規制はよろしくない。

日本は旅館業法上、原則として宿泊業はホテルや旅館に限定されている。家主が不在にもかかわらず、不特定多数の人を対象に、継続的に宿泊費を徴収する場合、営業許可がなければ違法となる。

閣議決定では、住宅提供者や不動産業者がネットを通じて届け出をすれば、旅館業法上の許可なしで部屋を貸し出せるようにするとともに、宿泊者名簿の作成や衛生管理を義務付ける内容などを盛り込んだ。(2日に閣議決定した「規制改革実施計画」のPDF、民泊に関する記述は23〜24ページ)

日経新聞によれば、民泊の営業規制をめぐっては、シェアリングエコノミーを推進する新経済連盟の三木谷浩史代表理事も「過剰規制は不要だ」とコメント。その一方、ホテル・旅館業界からは「宿泊者の安全が担保されない」などと規制強化を求める声が上がっている。TechCrunch Japanが内閣府に確認したところによれば、営業日数の上限は年90日の英国、年60日のオランダなどの例を参考に調整を図るという。

ライセンス切れによるPayPalのトルコ撤退、数十万人に影響

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国内の技術事業に対する地域的支配を強めているトルコの新たな犠牲者となったのは、アメリカの大手オンライン決済企業PayPalだった。同社は、サービスライセンスの更新ができなかったことから、6月6日をもってトルコでの事業運用を中止すると発表した

PayPalはTechCrunchに対し、この事業撤退により数万社の企業と数十万人の消費者に影響すると語った。

広報担当者もTechCrunchに対して今回の撤退を認め、2回に分けて撤退の裏にある理由を明かした。

最初は、金融監督機間であるBDDKによるライセンス申請の却下についてPayPalのローカルサイトに掲載されたトルコ語のメッセージを忠実になぞった文書だった。

「残念ながら、Paypalがトルコでの事業を中止することになったことをお知らせします」と、同社の文書には述べられていた。「2016年6月6日付で、トルコのお客様はPayPalを利用した送金や金銭の受領ができなくなります。お客様は、引き続きPayPalアカウントにログインしてアカウント残高をトルコ国内の銀行に引き出すことができます」。

「PayPalは、お客様をサポートすることを非常に大切にしています。しかし、トルコにおける支払機間としてのライセンス申請が現地金融監督機間によって却下され、トルコにおける事業を中止するように指導があったため、トルコにおける支払い処理を中止せざるをえなくなりました」。

ライセンスが却下された理由を聞かれた広報担当者は、ITシステムがトルコにローカライズされることを求めた新しい規則が原因であるとした。PayPalは幾つかのグローバルハブにITを分散させている。

「当社のサービス撤退は、BDDKが監督する新しい国家規則により、PayPalがITシステムを完全にトルコ向けにローカライズすることを求められた結果です」と、広報担当者は言う。「PayPalは、国内でITインフラを展開させたいというトルコの意思を尊重しますが、200以上の市場で運用されているグローバルな支払いプラットフォームを利用しており、単独国家において専用の技術インフラを持つローカルな支払いプラットフォームを保持してはいません」。

2015年に親会社のeBayから独立し、現在は460億ドルの資産価値があるとされるPayPalが、世界に何個のデータセンターを持っているのか、あるいはトルコの事業を扱っているのがどこのハブなのかは明らかになっていない。現在同社に質問中であるため、詳細がわかり次第アップデートする。

ここ数ヶ月、技術に関連してトルコが話題になっているが、特にポジティブな理由からではない。4月には、トルコ国民およそ5000万人分(全人口8000万人の過半数)の個人データがオンラインで流出した。これはデータを公表することでトルコのITインフラの老朽化を強調し、この問題についてレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とその技術政策を非難しようとする、ある活動家(あるいは複数の活動家)の仕業とみられる。

もちろん、単純に技術の話というわけではない。トルコはテロ攻撃の標的となっており、それがエルドアン大統領の鉄拳制裁アプローチを正当化する理由となると考える人たちもいる。

エルドアン政権は、前任者たちよりも技術分野での支配力を強めようとしており、現在までのところ、特にその動きが顕著な分野がソーシャルメディアである。TwitterFacebookRedditなどのサイトは、ポルノ、ドラッグ、テロリズム、違法なファイル共有、その他トルコの初代大統領ムスタファ・ケマル・アタテュルクに関するネガティブまたは疑義のあるコンテンツをホストするサイトをブロックする権限を監督官に与えるトルコの検閲法の対象となっている。

Twitterは、削除要請を拒否したツイートについて支払いを求められている罰金について抗議するため、トルコに対する訴訟を起こすに至っている。

TechCrunchでは、引き続きこの話題について他の企業に影響があるか、あるとすればどのようなものかを監視していく。PayPalの現地競合企業であるIyzicoは、現在もサービスを提供中である。

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(翻訳:Nakabayashi)

Airbnbが「City Hosts」プログラムを開始、旅行者に現地の体験ツアーを提供

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Airbnbは、一般的な宿泊先や印象に残るホテルに泊まるのとは違う個性的な旅行体験をゲストに提供することで有名になった。現在、Airbnbは旅行体験全体を新しくする方法を検討している。ゲストが現地の生活に触れることができる体験ツアーを専属のガイドと回るサービスだ。

部屋をシェアするサービスAirbnbは、City Hostsという新たなプログラムをプライベート・ベータ版でローンチした。Airbnbのゲストは宿泊先だけでなく、専属のツアーガイドを予約して、宿泊する街に隠された魅力を体験するツアーに参加することができる。プライベート・ベータ版では、サンフランシスコ、ロンドン、ロサンゼルス、パリ、東京のCity Hostsが利用可能だ。

Airbnbは、人々の旅行体験にもっと入り込みたいと考えている。このサービスのインターフェイスはNetflixの画面とよく似ている。ゲストが個別のエンターテイメント体験を簡単に選べるようにしたいという、このプログラムにおけるAirbnbの意図を示している。

現在36の体験コースがあり、私が思うにどれも面白そうな内容だ。サンフランシスコでカイトサーファーと冒険したり、パリ出身のシェフ主催のベトナム料理教室があったり、レコード好きとロンドンのグライム音楽シーンを巡るツアーなどがある。体験ツアーはゲストの人数に応じて支払う。また、Airbnbを通じてツアーが開催される街の宿泊場所を予約する必要がある。予約するCity Hostsによっては、体験ツアーで他のAirbnbのゲストと一緒になる場合もあれば、自分たちだけの場合もある。

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例えば、東京で「Art Luminary」のCity Hostsの体験に行きたい人は、ゲスト毎に250ドルを支払うと、ヨウコさんという現地のアートキュレーターが案内するツアーに参加できる。ゲストは1日およそ3時間の4日間、ヨウコさんと現地のアートギャラリーを訪れたり、アーティストに会ったり、知る人ぞ知るレストランやバーでひとときを過ごすことができる。ほとんどのコストは予約時の金額に含まれている。

このプログラムはまだ実装して間もないが、ユーザーの旅行体験に深く入りこもうとしているAirbnbが、着実にサービスの対象範囲を広げていることを示す。またこのプログラムでゲストは、体験したいアクティビティーに主軸に、いつどこへ旅行するかを選ぶことができるようになる。体験ツアーを予約すると、サイトはその体験ツアーの近くで何泊か宿泊できる場所のリストを提供している。

City Hostsがスケール可能かどうかについては、まだ分からない。Airbnbがこれらの町の興味深いカスタム体験ツアーに投資し、多くの労力をかけてこの施策に取り組んできたのは明らかだが、これを自分の街を自慢をしたい全てのユーザーに開放することになるかどうかは不明だ。ここにある多くの体験ツアーは夏以降からしか利用できないようだ。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

人工知能はSEOを一変させる―Googel RankBranを知らない対策が危険な理由

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編集部:この記事はJohn Ramptonの投稿。 Ramptonはオンライン請求サービス、DueのファウンダーでCRUNCH NETWORKのメンバー。

この筆者にようる過去記事:The broken world of mobile payments and how to fix it, What Zuckerberg And Gates Teaming Up Really Means For Clean Energy In 2016

SEOは完全に違うものになった

将来を見通すという困難な仕事にかかる前に、まずGoogleのサイト評価アルゴリズム、RankBrainがSEOをどう変えたかを考える必要がある。私はカーネギーメロン大学の同窓生で友達のScott Stoufferとこの問題について話し合った。彼は Market Brewの共同ファウンダー、CTOだ。この会社はFortune 500掲載の大企業のSEOチームにランキングのモデルを提供している。検索エンジンの専門家としてStouffer過去10年間に検索エンジンがどう進歩してきた知る絶好の位置にいる。

以下に述べるのは、SEOビジネスにとってGoogleの人工知能がどんな意味を持つかについてのStoufferの意見をベースにしている。

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現在の回帰分析には深刻な欠陥がある

SEOビジネスでこれは現在最大の誤謬だろう。Googleのランキング・アルゴリズムが大きく変更されるたびに「それはこういう影響をもたらす」と解説する予言者が大勢現れてきた。誰でも知っているような有名企業のデータサイエンティストやCTOが最新のGoogleアルゴリズムについて「詳しく知る立場にある」と主張する。これはアルゴリズムのアップデート以前のランキング・データを調べ、次にアップデートの内容が適用されたならこれこれの変化があるとあらゆる種類のサイトについて予測するという手法だ。

現在の回帰分析のアプローチでは、データサイエンティストは(良きにつけ悪しきにつけ)ランキング・アルゴリズムに影響を受けるタイプの特定のサイトのグループに着目する。そしてこうしたサイトのランキングの変動はしかじかのアルゴリズムの変更(コンテンツ関連、バックリンク関連、その他)によって引き起こされた可能性が高いと結論する。

ところがGoogleはアルゴリズムのアップデートに当たってもはやこうした考え方を採用していない。 GoogleのRankBrainは極めて強力な機械学習、あるいはディープ・ラーニングのシステムであり、そのアプローチはまったく異なる。

Googleのランキング・アルゴリズムにはコアとなる考え方が存在する。RankBrainはまずこのコア・アルゴリズムを理解し、現実のサイトに適用された場合、どのようなアルゴリズム組み合わせによってベストの検索結果を得られるかを決定する。たとえばRankBrainは、あるタイプのサイトではもっとも重要性の高いシグナルはMETAタグのtitleの内容だと判断する。

META titleの重要性が高いのであれば、ここに検索エンジン向けの記述をすることで検索結果に好影響を与えることができる。しかし常にそうであるとは限らない。別の種類のサイトではtitleタグは検索結果に破壊的な結果をもたらすことがある。

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重要なポイントは、それぞれの検索結果はまったく異なるアルゴリズムの組み合わせだということだ。この点に注目すれば、サイトのタイプや検索のコンテキストを無視した単なる回帰分析がいかに深刻な問題をもたらすかがわかるだろう。

つまり回帰分析は個別の検索ごとに行われなければ意味がない。 最近、Stoufferは検索モデル分析というアプローチについて書き、Googleのアルゴリズムの変更は、正しい分析を行えば定量的に確認できると論じた。第一に、過去に特定のキーワードに対する検索結果のスナップショットにもとづき、Googleが検索アルゴリズムルをどのように調整しているはずであるか、モデルを作成して推定する。ランキング決定に変化があった場合、新旧のデータの差異からモデルを再調整し、Googleが検索アルゴリズムにどような変化を加えらたかを明らかにする。 このようなアプローチを採用した場合、ランキング結果の変化がどのアルゴリズムのウェイトの増大あるいは低下によるものであるかを推定できる。

人間が未来を予測するときの誤りは、その意義を過小評価することだ

こうした知識をベースにすれば、われわれは特定の検索に対する体験を改善するためのSEOを始めることができる。ただし同じようなSEOアプローチが他のタイプの検索に対しても適用できると期待してはならない。前にも述べたようにRankBrainは検索結果(つまりキーワードのレベル)に対して最適化されているからだ。RankBrainは文字通りアルゴリズムをカスタマイズしてそれぞれの検索結果を表示している。

分類エラーを防ぐためにはニッチを出るな

Googleはディープ・ラーニング能力を利用してRankBrainに「良いサイト」と「悪いサイト」がどのようなものであるかを教えることができるのを発見した。個々の検索ごとにアルゴリズムをカスタマイズするのと同様、Googleはそれぞれのジャンルのサイトで典型的な「良し悪し」のサインがあることに気づいた。それぞれのジャンルには異なる顧客管理モデル、異なるテンプレート、異なるデータ構造があるのだから適用すべき基準も異なるのは必然的だ。

RankBrainは実行される特定の環境ごとに自らの「正しい設定」を学習する。繰り返しになるが、「正しい設定」はサイトのジャンルごとに異なる。たとえば健康ビジネスではGoogleはWebMD.comは信頼すべき優秀なサイトであることを知っており、検索結果のトップ付近にこのサイトが来るよう検索インデックスが調整されている。そしてWebMDに類似、あるいは関連したサイトは「良い」と判断される。同様に健康ビジネスでスパムを乱発しているサイトに類似するサイトは「悪い」と判断される。

RankBrainがディープ・ラーニング機能を利用してジャンルごとに大まかな「良いサイト」と「悪いサイト」という区分を作っているなら、数多くのジャンルの内容を含むサイトを運営している場合、どういうことになるだろう?

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まずディープ・ラーニングの仕組みをもう少し詳しく知る必要がある。「良い」と「悪い」という2つの大きなバケツにサイトを分類する前にRankBrainはそれぞれのサイトが「どんなジャンルに分類されるか」を知らねばならない。Nike.comWebMD.comの場合は簡単だ。これらは大きなサイトなので数多くのサブセクションがある。しかし全体としてNikeはスポーツ用品メーカーであり、 WebMDがヘルス・ビジネスに属することに変わりはない。こうしたサイトは容易に分類可能だ。

しかしサブセクションがそれぞれ異なるジャンルに属するようなサイトの場合はどうだろう? たとえば、ハウツー・サイトなどがよい例だ。こうしたサイトはきわめて広いジャンルのサブセクションを持つことになる。するとディープ・ラーニング・システムは十分に機能できなくなる。こうしたサイトを分類するためにGoogleはどんなトレーニング・データを用いたらよいだろう? あまりにジャンルが広い場合は有効なトレーニング・データを作成することはできない、というのがその答えだ。トレーニング・データは特定のジャンルを前提とする。Wikipediaにように極めて有名なサイトの場合、Googleはディープ・ラーニングによる分類を諦め、サイト自体を対象から除外している。こうした著名なサイトを含めることによってディープ・ラーニング・システムを混乱させることを防止するためだ。Wikipediaについていえば、「大きすぎて〔RankBrainを〕失敗させるわけにいかない」という例だろう。

SEOはきわめて高度なテクノロジー分野となりつつある

しかしWikipediaほど有名でないサイトの場合は話が違ってくる。残念ながらこちらの答えは「そんなことは誰にも分からない」だ。ディープ・ラーニング・プロセスはサイトを同ジャンルの他のサイトを比較する前に、どのジャンルに属するかを決めなければならなないはずだ。そのとき、ハウツー・サイトがたまたまWebMDサイトに酷似していたら、たいへん幸運だ。

しかし、Googleの分類プロセスがそのサイトを「スポーツシューズに関連している」と判断するなら、WebMDではなくNikeのサイトと構造を比較するだろう。もしハウツーサイトが、尊敬すべきWebMDではなく、スパム・サイトとして知られる靴サイトに似ている場合、Googleはこのサイトに「スパム」の烙印を押しかねない。もしハウツー・サイトがジャンルごとに別のドメインに分割されていれば、RankBrainがそれぞれのドメインをそれぞれのジャンルの他のサイトと比較するのは容易になる。つまりこれが「ニッチにとどまれ」という理由だ。

バックリンクにご用心

上に述べたようなジャンルへの分類が行われた後の段階となるが、次にバックリンク(被リンク)の影響について考えてみよう。サイトが「関連あるコミュニティーに留まる」ことの重要性はますます高まっている。RankBrainはジャンルごとの通常のバックリンクのプロフィールを知っており、これと異なるような状態を検知できる。

ある会社が靴のサイトを運営していたとしよう。上で説明したとおり、RankBrainはこのサイトを靴サイトにおける「良いサイト」、「悪いサイト」と比較する。当然ながらバックリンクの内容も「良いサイト」、「悪いサイト」と比較されることになる。

「良い靴サイト」はおそらく次のようなジャンルからのバックリンクを持っているはずだ。

  • スポーツ
  • ヘルス
  • ファッション

仮に靴会社のSEOチームがこれと違った新しい分野のバックリンク獲得に力を入れ始めたとしよう。 CEOチームの1人が優秀なエンジニアであり、また前職の関連で自動車産業に強かったとする。するとこのチームは「自動車の新規リースで靴を1足、無料進呈」というようなクロス・マーケティング・プロジェクトを始めるかもしれない。このプロモーションが自動車サイトに掲載されれば、靴サイトは大量のバックリンクを獲得できる。うまい話だろうか?

RankBrainは突然バックリンクが増大したことに気づき、他の評判の良い靴サイトのバックリンク・プロフィールとまったく性質が異なると判断する。それどころか、最悪の場合、RankBrainは靴のスパムサイトが自動車サイトから大量のバックリンクを得ていることを発見するかもしれない。これは非常にまずい事態だ。

そういう次第で、RankBrainは、それが正しい手段で得られたバックリンクかどうかに関わりなく、検索結果にとって「良い」リンクであるか「悪い」リンクであるか区別しようとする。その結果、この靴サイトには警告フラグが立ち、サイトの努力もむなしくオーガニックなトラフィックも急降下するということになりかねない。

SEOの未来と人口知能

以上見てきたように、RankBrainなどの人工知能は、ある時点でその能力が人力を超えてしまう。その後人口知能がどこへ向かうのか人間には正確に判断できなくなる。

しかし確実なこともある。

  • それぞれのキーワードは独自に検索の文脈を検討される
  • 誤った分類を防ぐために、多くのサイトはニッチな分野に留まることが必要
  • 自サイトが属する分野でもっとも信頼されるトップサイトの構成を模倣することが安全

ある意味でディープ・ラーニングはSEOの仕事をやりやすくしてくれる。RankBrainなどのテクノロジーは人間のやることに非常に近い。どういう意味かといえば、もはや「手っ取り早い抜け穴」などはないということだ。

もちろん困難になった面もある。その一つはSEOが極めて高度なテクノロジー分野になっていくという傾向だ。アナリティクスとビッグデータは単に今日のバズワードであるだけでなく、あらゆるSEOエンジニアが学んでおかねばならない基礎でもある。学ぶためにはたいへんな苦労をするかもしれないが、こうしたテクノロジーを使いこなせるエンジニアは高給を期待してよい。

画像::Maya2008/Shutterstock

〔日本版〕この投稿は長文のためGoogle RankBrain等に直接関連ある後半を訳出した。人工知能全般を論じている前半は原文を参照。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+