YouTubeは、クリエイターがファンを取り込み収益を得るための多様な方法を提供している。同社は米国時間7月11日、米国カリフォルニア州アナハイムで行われたVidConイベントでそのように発表した。昨年YouTubeはこのイベントで、チャンネルメンバーシップや商品販売、プレミア公開などの新しいプロダクトをローンチした。今回は、それら既存のオプションの拡張とともに、さらに新しいプロダクト、Super StickersやLearning Playlistsなどを導入した。後者Learning Playlistsは、YouTubeの教育利用の増進が狙いだ。
収益増のための機能
Super Stickersは、既存の収益化ツールのSuper Chatを補完する。
2017年1月にローンチしたSuper Chatでは、YouTubeのライブストリームやプレミア公開でファンがお金を払って自分のメッセージを目立たせる。YouTubeによると、今ではSuper Chatが、2万近くのチャンネルにおける最大の収益源になっている。その収益は、1年で65%増加した。
Super Chatを利用したことのあるチャンネル数は累計で9万以上に達し、中には毎分400ドルあまりを稼いでいるところもある。
Super Chatの人気に触発されてYouTubeが導入したSuper Stickersは、数か月後にローンチする。この機能は名前のとおり、ファンがライブストリームやプレミア公開の間にアニメステッカーを買って、クリエイターにいいね!好きだよぉ!というサインを送る。
Super StickersはゲームサイトTwitchの仮想グッズBitsのエモート(emotes)やチアモート(Cheermotes)がヒントのようだ。我孫子市のM2が発明したとされるエモートや、その発展形チアモートは、チャットの中にアニメステッカーを挿入して、ビデオの作者への賞賛を示す。ただしYouTubeのSuper Stickersはルック&フィールがやや異なり、使える言語やカテゴリーも広い。ゲームだけでなくファッションや美容、スポーツ、音楽、食べ物などさまざまだ。
昨年のVidConでYouTubeは、チャンネルメンバーシップも導入した。それはYouTube GamingのそれまでのTwitch的「スポンサーシップ」の拡張で、ファンが有料会員になって好きなチャンネルの特別の機能やコンテンツにアクセスできる。
現在のそのやり方は、ファンは4.99ドルの会費をチャンネルメンバーシップであるチャンネルに払い、自分だけのバッジや絵文字をもらって、会員限定のライブストリーム、特別なビデオ、シャウトアウトなどにアクセスできるようになる。そして今日YouTubeは、要望の多かった「会員のレベル」を導入した。
チャンネルのオーナーであるクリエイターは、会費のレベル(金額)を5段階設けて、それぞれの特典を変えられる。この機能は一部のユーチューバーでテスト済みで、テストにはFine Brothers EntertainmentのREACTチャンネルなどが参加した。テストの結果では、2つのより高価な会費を設けるだけで、会員からの収益がそれまでの6倍になったという。
YouTubeのMerch shelf機能(Merchandise shelf、販売機能)も拡張される。それは昨年のVidConでデビューした機能で、パートナーのTeespringの協力により、クリエイターはTシャツとか帽子とかスマホケース、などなどの商品を売れる。YouTubeがわずかな手数料を取るが、売上のほぼ全額がクリエイターのものになる、と同社は言っている。
Merch shelfのパートナーはその後増えて、今ではCrowdmade、DFTBA、Fanjoy、Represent、Rooster Teethなどがいる。
YouTubeによると、Merch shelfとSuper Chatとチャンネルメンバーシップの導入で、何千ものチャンネルが収益を倍増したそうだ。
YouTubeの教育利用
今日のVidConイベントでは、収益化のほかに教育や創造力も話題になった。
YouTubeを勉強の道具として利用することをもっと容易にするために、Learning Playlistsという機能がローンチした。これにより、今作れるプレイリストよりも構造性のあるプレイリストを作れる。この機能を利用すると教育ビデオのクリエイターはビデオを複数の章に分割して、それぞれ重要なコンセプトを章のタイトルにできる。基礎から中級、上級と進むものでもよい。そしてYouTubeとしては初めて、ビデオを視るページで「次の動画」を隠すことができる。
これまでは、Khan AcademyやTED-Ed、The Coding Train、Crash Courseなど一部の良質なパートナーと一緒にこの機能をテストしてきた。
一方YouTube Givingは、資金調達ツールだ。これは1年間テストしてやっとベータを終えようとしている。数カ月後には、米国の多くのクリエイターが使えるようになるだろう。ファンが「寄付する(donate)」ボタンを押すと、非営利事業/団体のクリエイターに支援が行く。
著作権侵犯対策
今日のVidConは、YouTubeのCPO(Chief Product Officer、プロダクト担当最高責任者)であるNeal Mohan(ニール・モーハン)氏によるキーノートの前に、同社の著作権侵害防止ツールの好評な変更について発表があった。
それによると、著作権保有者は自分のコンテンツが登場するビデオの中で問題箇所のタイムスタンプを指定しなければならない。一方クリエイターはYouTube Creator Studioのアップデートされたバージョンを使って、コンテンツの文句を言われた部分を容易に削除できる。
これまでの、普通の言葉によるクレームでは、その人の著作権コンテンツがほんの一瞬だけ映るという場合、対応しづらかった。これからは明確なタイムスタンプがあるから、正確な削除作業ができる。YouTubeはこの問題への対応を前から検討していた。今後は音楽への対応(無音化、別の曲への置き換え)も楽にできるし、ビデオ全体を取り下げる悲しい体験がなくなる。
一般的にクリエイターは、ファンの参加性が高くなりお金も得られる変更や新しい機能を歓迎する。お金を失わない機能も、もちろん。
しかしそれでもYouTubeは、今なおその大きな間違いや、推奨システム上の賭博行為、小児性愛のワームホール、COPPA(児童のオンラインプライバシー保護法)違反の嫌疑などを問題視されている。視聴者を過激派に勧誘するような極端なコンテンツを(「次の動画」などで)推薦することも、問題だ。しかもYouTubeは、金のために子どもを搾取する親たちにも結果的に協力し、言論の自由とヘイトスピーチ対策の矛盾という問題も抱えている。
YouTubeが抱えているこれらの問題は、チャンネルの売上増進のためのステッカーなどよりずっと重くて大きい。でも今のYouTubeは、FacebookやInstagram、最近クリエイターの作品も見せるようになったSnapchatなど、強力な競合がいるから、今回発表されたさまざまな変更や新機能は、クリエイターをつなぎとめるためには効果がありそうだ。
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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa)