Twitter世代向けに、数分間単位のごく短い教育ビデオを提供するCoursmos

Dave McClureのみならず、シード投資家に売り込みをかけるときは、相手を惹きつけることのできる内容から始めるべきだ」。

これを実践してまずCoursmosというiOSアプリケーションをリリースして、少なからぬ人の注目を集めることに成功したスタートアップがある。

そのスタートアップは、ロシアに拠点をおいている。彼らは、既存Eラーニングの問題点を突いて、より効果的な学習環境を提供するのだと主張している。長い時間(最低でも数週間)をかけて学習を行う従来型MOOCと異なり、Coursmosはレッスンをより細かい、把握しやすい規模に分解する。たいていは数分程度のビデオにまとめられていて、たとえば職場に向かうバスの中などでの利用を想定しているわけだ。

これは言うならば「Twitter世代に向けたEラーニング」といったところだ。マイクロブロギングサービスのように、教育コースを短い制限時間内で提供しようという試みだ。気を散らしやすい世代(Generation Distracted)向けの教育環境とも言えるのかもしれない。

「人々は学びたいと思っています。ただ、現在のMOOCは従来型のオフライン教育のやり方に拘り過ぎていると思うのです。もちろん、オンラインコースでも従来と同じクオリティを保とうと考えてのことなのでしょう。しかしひとまとまりの長さを小さくすることで、レッスンを受ける前に時間についてあれこれと悩む必要もなくなるでしょう。世に広がっているMOOCでは、受講前にかなりの覚悟が必要となってしまうのです」と、共同ファウンダーのPavel Dmitrievは言っている。

「Coursmosのマイクロコースフォーマットは、さほど時間をとることなく、簡単に内容を把握できるようになっています。3分間を確保できるのなら、レッスンをひとつ受けることができます。繰り返しておきますが、30分でなく3分でワンレッスンを完了することができるのです」。

ワンレッスンの長さを短くしようとする狙いを実現する意味もあって、CoursmosはモバイルファーストでまずはiOSアプリケーションをリリースすることとした。Androidアプリケーションも現在準備中だ。Dmitrievによれば、ウェブプラットフォームも構築する予定であるとのこと。6月の設立以来、これまでにシード資金として15万ドルを調達している。出資しているのはロシアのエンジェル投資家の他、ウクライナのテック系インキュベーターであるHappy Farmなどだ。

Coursmosはレッスン自体をどこから入手するのか。それはクラウドからだ。今のところ、講座の数はまだまだ非常に少ない。そして大方の予想通り、品質的にもばらつきが大きい。しかしこれは、新たなプラットフォームを開拓しようとする際にはよくあることだとも言える。

しかし、実はこの記事自体、500 StartupsのメンターであるVitaly Golombの作成したマイクロコースをきっかけに執筆にいたっているのだ。但しぱらぱらと他のコースを見てみたところでは、それほど面白いと思うものには出会えなかった。短いのだから全てのコースが簡潔にまとめられているというわけでもないようだ。

UGC(User Generated Content)というのが広く受け入れられるようになっており、Coursmosとしては「レッスン」についてもクラウドから良いものが出てくるはずだという信念を持っているのだろう。アプリケーションの中でも「フィーチャードコンテンツ」として、品質の高いコンテンツをまとめて提示することができるようになっている。そうした形で紹介できるほどに、たくさんのコンテンツが生まれてくるのであれば、なるほど面白いプラットフォームとして機能することになるのだろう。

また、アプリケーションには講義をカテゴリ毎に分類して表示する機能もある。カテゴリはアートや料理からコンピューター、工芸、健康、ビジネスなどの多岐にわたっている。購読するコースは「Your classes」タブにまとめておくことができ、簡単に見なおしてみることもできる。さらにすべてのレッスンには「mark completed」(完了マークを付ける)ボタンが用意されていて、「Your classes」タブ内のレッスンを全て受講したかどうかなど、簡単にチェックすることができる。

仕組みとしてはきちんとしていると思う。ただ、こうした仕組みの「中身」を埋めるのは、講義ビデオと同じような「短い間の苦労」では済まないかもしれない。今のところはコンテンツが登録されていないカテゴリもかなり存在するのだ。

確かに、YouTubeなどでも、シナモンパウダーにむせ返らない方法など、さまざまな知識を無償(ないしはほんの少しではあれ、ネット上でのウケを獲得するために、それとももしかすると広告収入でリッチになるという実現可能性の低い目的)で公開してくれる人がいる。そういう意味でCoursmosも、クラウド経由によるコンテンツの充実を願っているのだろう。ただ、YouTubeは多くのオーディエンスの獲得を期待できる大きなプラットフォームであり、また何ら「教育的」でなくてもコンテンツをアップロードすることができる。そういう意味でみるとCoursmosのハードルは少々高めに設定されていると言うこともできよう。

もちろんCoursmosも、ただ手をこまねいてコンテンツの充実を願っているわけではない。講座を有料にするオプションも提供して、口座開設のモチベーションをあげようと努力もしている。ちなみに有料化した場合は9%がCoursmosの取り分となり、それによりマネタイズの途も確保しようという考えだ。但し、同時に有料化する講座は少ないだろうとも予測しているようだ。既存MOOCでも大学レベルの教育プログラムを無料で提供しているわけで、3分の講座を有料で提供するには、相当に特殊かつ充実した内容でなければ難しいはずだと考えているわけだ。また、気を散らしやすい世代は、なかなか財布の紐を緩めないものだという認識もある。実際問題として、さくらんぼの柄を口の中で結ぶという難しい技も、YouTubeで無料公開されたりしているのだ。

無料で学ぶための方法として、MOOCが最大の関心を集めているのは間違いのないところだ。しかしCoursmosも、YouTubeで公開されているチュートリアルなどとは充分に競合していけるという目論見をもっている。誰もが自由にコンテンツをアップロードするのではなく、組織的な管理を行って、利用者側も体系だって閲覧できる仕組みを提供することにより、変わった猫のビデオなどよりは人気がでるはずだと考えているのだ。

「Coursmosは組織的に、教育分野に注力することで、より多くの人に学習環境を提供していきたいと考えているのです」とDmitrievは述べている。

本稿の執筆にはTechCrunchのSteve O’Hearも協力している。

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(翻訳:Maeda, H


Nook、今四半期は対前年で売上20%減と試練続く―デジタル事業の分社化は否定

Barnes & Nobleがeブックとeリーダー事業から生じた損失を取り返すことは容易ではないようだ。

同社がさきほど発表した四半期決算報告によれば、Nook事業の売上は前年同期比で20.2%落ち込んだ〔B&Nでは今年の5-7月期を2014会計年度の第1四半期としている〕。Nookの売上は1億530万ドルで、前年同期比ではマイナスだったものの、前四半期の1億800万ドルからは上昇した。

Nookのハードウェア事業は対前年同期比で23.1%ダウンだったのに対してデジタル・コンテンツの売上は15.8の減少にとどまった。B&Nではこの不振の原因を一部はNookのタブレット、eリーダーのセールスの不振に求めているが、同時に今年はHunger Gamesや50 Shades of Grey三部作のようなブロックバスター作品が出なかったことも影響したとしている。印刷版、オンライン版を合計した小売事業全体の売上は10億ドルで対前年同期比9.9%のダウンだった。

今回の報告でB&NはNook事業に今後も注力していう姿勢を鮮明にしたといえる。会長のLeonard Riggioは以前言明していた小売事業の再編は中止するとし、「その代わりにB&NはNookの1000万台普及を当面の目標とする。そのために店頭およびオンライン販売の双方に力を入れる必要がある」と述べた。つまりB&Nは以前報道されていたようにNook事業と現実店舗の事業を分社化するのではなく、双方を一体として運営していくという路線を取るようだ。

Nook MediaのCEO、Michael P. Husebyもコメントを発表し、「Nookシリーズは今後も価値あるプロダクトとして市場jに提供される。現在複数の新機種を開発中であり、すくなくとも1機種はクリスマスまでに登場する」と述べた。Nookデバイスの製造をサードパーティーのメーカーに開放するかどうかについては依然触れられなかった。今朝の10時にカンファレンス・コールが予定されているので、何か新しいことがわかればフォローする。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


SmartNewsのゴクロが4.2億円を増資、データサイエンティストなど人材採用を加速

smartnews

スマートフォン向けニュースアプリ「SmartNews」を開発、運用するゴクロが今日、グロービス・キャピタル・パートナーズを割当先とする第三者割当増資を実施して4億2000万円を調達したと発表した。増資実施後のゴクロの資本金は4億8000万円となる。

SmartNewsはiPhone、iPad、Android向けアプリとして提供されていて、事前にダウンロードしたコンテンツをモバイル端末に合わせた独自UIで読めるニュースアプリ。メディア各社と提携していて、現在25社43媒体と提携、もしくは協業が進行中という(情報開示:TechCrunch Japanも協業媒体の1つ)。ダウンロード数は公開されていないが、2013年7月8日現在でiOS版の評価平均が4.66(8527人の評価)、Android版の評価平均が4.58(3379人の評価)というから評判は上々のようだ。

ニュースのアグリゲーション・キュレーション市場では、SmartNews以外にもGunosyや、Anntena、Flipboardなどがある。Antennaを運営するグライダーアソシエイツが8月8日にマクロミルから15億円の出資をすることを発表しているなど注目分野だ(もっともAntennaへの出資についてはバリュエーションが過大ではないかという意見も各方面から聞こえてくるが)。

SmartNewsは単にモバイル画面で見やすいニュースということではなく、今回の増資でエンジニアや「データサイエンティストを採用する」と明言しているように、情報のフィルタリングが1つのキモだ。ゴクロの鈴木健氏がTechCrunchに語ったところによれば、ユーザーに届ける記事の選別は、Twitterで得た情報を独自開発のリアルタイム解析技術「Crowsnest」を使って行なっている。

また、OSネイティブの描画コンポーネントではなく、独自の表示エンジンを使っているのも特徴という。ページめくりのエフェクトというのもあるが、もう少し地味でありながらもUIを使いやすいものにする工夫がある。例えば、記事の見出しを形態素解析を行って品詞の連接状況から折り返し位置を決定して表示しているほか、カーニングや長体処理(文字幅を縮めたり伸ばしたりする処理)をかけることで、スマフォなど限られた画面に最適に文字が表示されるよう腐心している。OSやブラウザ標準の描画コンポーネントを使うと、特に横幅を狭めたようなときのテキスト表示では、禁則処理で無駄な空白ができてしまいがちなので、それを回避しているということだ。SmartNewsのタイル表示された記事見出しをよく見ると、一部の記事の枠に淡い色がついているが、こうした配色がなく真っ白な状態だと、ぱっと画面をみた時にどの写真(画像)がどのテキストと関係しているのか人間には分からなくなってしまう、ということもあるという。

ゴクロは今回調達した資金で、主に人材獲得を加速する。エンジニア、データサイエンティストらを中心に、現在6名の社員を1年以内に40名規模の体制する。さらに、海外市場を視野に入れた事業の準備に着手するという。

PCからモバイル、Webからアプリ、人間によるコンテンツ編成から統計処理と、いろんな流れにうまく乗っているように見えるSmartNewsですが、果たしてポストPC時代のヤフーポータルのような存在になれるのか注目ですね。


現場ジャーナリストの常備武器となったVideolicious, Washington Postらが$2.25Mを投資

携帯上で簡単に(作品として完成した)ビデオを作れるアプリVideoliciousが、企業利用の拡大をねらっている。たとえばこれまでは不動産企業の社員教育に利用されていたが、まだまだいろんな業界でお役に立つはずだ。

新たな成長に活を入れるためにVideoliciousはこのほど、Washington Post Company、Amazon.com、Knight Foundationなどから225万ドルの資金を調達した。この投資ラウンドを仕切ったのはVenture51 とSocial Leverageで、既存の投資家Joanne Wilson、Trestle Ventures、それにQuotidian Venturesらも参加した。同社の資金調達総額は、これで400万ドルあまりになる。

Washington Postなどが投資者として名を連ねているのは、このところジャーナリストがVideoliciousを利用する例が増えているからだ。そのことが同社の今後の業績に大きく貢献するだろう。過去数か月で100社を超える新聞、雑誌、テレビ局などが登録会員となり、彼らが抱えるジャーナリストたちに現場で手早く“ビデオ記事”を作らせている。初期のユーザの一例であるWashington Postでは今、30名の記者がこのアプリを使っている。

このアプリでは、写真やビデオを縫い合わせる作業や、その上に音声を重ね録りする作業が、とても簡単にできる。だから記者たちは、印刷媒体のジャーナリストでも、フォトジャーナリストでも、あるいはビデオジャーナリストでも、速報ニュースに関するビデオを迅速かつ効率的に社に送れる。もはや、重い機材を担いだビデオクルーや、ビデオ編集スタッフは要らない。

Videoliciousがマスメディアの現場で広く使われるようになった理由は、それだけではない。同社が最近リリースしたいくつかのプロ級のツールにより、既存のCMSの上でVideoliciousおよびその上で作ったビデオをシームレスに扱えるようになったのだ。つまり、ビデオを迅速に作れるだけでなく、メディア企業は現場で作られたビデオを、今後いろんなコンテンツで多面的に利用し、お金を稼げるようにもなったのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


ビジネスインフラになったYouTube–グルメ専門でメジャーを目指すTastemade

YouTubeのインフラ化、その上の多様なビデオネットワーク(YouTube networks, YouTubeネットワーク)の成長とともに、そこにはさまざまな才能が集まるようになり、また特定分野に絞ったネットワークも数多く登場している。中でもカリフォルニア州サンタモニカのTastemade は、わずか数年で、グルメのための次世代ビデオネットワークとしてトップの座に登りつめた。

本誌は最近、ロサンゼルスのデジタルビデオ企業めぐり を取材企画として行ったが、その一環としてTastemadeを訪問した。本誌は同社を、インターネットビデオの“ニューウェーブ”と位置づけた。Machinimaと同様、Tastemadeも視聴者層を特定している…同社は、グルメのためのライフスタイルネットワークを自称し、ファンの多い料理人や料理愛好家をタレントとして数多く集めている。同社の番組は‘封切’がスケジュール化され、同社の特別スタジオで制作される。

そのスタジオは昔のMTVのスタジオを改造したもので、協同ファウンダのSteven Kyddによると、5つの撮影用セットを新たに作った。たとえば’Brooklyn Kitchen’セット(実際にぼくが過去にブルックリンで見た大きなキッチンの5倍はある)、料理学校セット、おしゃれなカクテルバーセット、などだ。また防音壁で囲った準備用キッチンがあり、そこでシェフたちが下ごしらえをする。

このスタジオでは、オンデマンドで見られる料理番組を制作するだけでなく、さまざまな料理イベントの開催と撮影も行う。たとえばライブの特集番組”Japan week“では、日本料理の料理人複数がコラボレーションして料理する様子を撮影した。

なぜ、グルメを選んだのか? Tastemadeの二人のファウンダはどちらもDemand Mediaの元役員だが、新たなニューメディア企業の創設にあたって、二人の大好きな“食べること”をテーマに選んだ。しかも、食は、収益化の機会がそこら中に転がっている。そして彼らは、ニッチ対象ではなく広い視聴者層を対象とするメジャーなメディアを志向した。それはちょうど数十年前に登場したケーブル企業が、その後メジャーにのし上がったように…そんな成長路線を彼らはイメージした。

“今のケーブル大手は今から25年前には生まれたてのひよっこ企業だった。当時と同じような機会が、今日のデジタルのプラットホームには存在する”、とKyddは考えている。

上のビデオを見ると、Tastemadeのやり方がよく分かる。本誌の、「YouTube経済」特集のそのほかの記事も、ぜひご覧いただきたい。毎週月曜日と火曜日にビデオ付きの記事を載せていく予定だが、以下は、過去記事の一覧だ:

〔仮訳: デジタルビデオが作るニューハリウッド/ゲーマーのためのビデオネットワークMachinima/ビデオクリエイターにプロのツールを与えるFullscreen/(この記事)〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


視聴時間単位で広告枠を販売するDennooがニッセイ・キャピタルから110万ドルを追加調達

単にブラウザに広告が読み込まれただけではなく、実際にユーザーに表示された時間単位で広告枠を販売する事業を展開するのがDennooだ。このスタートアップについては以前に本誌でも取り上げている

そのDennooが新たにニッセイ・キャピタルから110万ドルを追加調達したことを発表している。今年2月にはニッセイ・キャピタル、サイバー・コミュニケーションズ、サイバーエージェント・ベンチャーズと数名の個人投資家から117万ドルを調達しており、それ以前に調達した83万ドルと合わせると、累計調達額は310万ドルとなっている。

Dennooが手掛ける新しい広告の取組みは、興味深い。一方で、表示時間ごとに支払う広告主側のメリットは大いにあるが、広告を掲載する媒体側からすると従来の単純なインプレッション数で計測した方が視聴時間で計測するよりも収益性が高いのではないかという懸念点が存在することは確かだ。この点について、Denno共同創業者の長山大介氏は、同社が提供する「Viewable Time*計測サービス」でどの広告枠がCPV販売によって収益増につながるかを予め予想することができる」としている。(*Viewable Time:ユーザーの画面上に広告が表示されている状態)

Dennno共同創業者の梅田茂利氏は「このサービスの真価を発揮するのは動画広告だ」と語っており、今年6月からサイバー・コミュニケーションズと共に動画広告サービス「Adjust Display Cost-per-View」の提供を開始している。

この動画広告はユーザーの画面に広告の50%以上が表示されていて、一定秒数(15秒から30秒)以上が表示された場合のみ広告料金が発生するというものだ(YouTubeの動画広告である30秒間視聴されたら料金が発生する「True Viewインストリーム」と似ている)。すでに大手IT企業、通信会社や官公庁などから発注を受けているそうだ。

今後は今年秋ごろに「Cost-per-View」の売買を自動的に行うことでができるプラットフォーム「Dennoo Display CPV Demand Side Platform (仮称)」をリリース予定としており、年内には米国でも同サービスを提供予定だそうだ。


ビデオ・コンシェルジュサービスの5by、スマートフォンおよびスマートTVにも対応を計画中

退屈で仕方がない中、何も生産的なことなどやる気にならず、何時間もYouTubeを見て過ごしてしまうという経験が、誰にでもあることと思う。但し、そうした中ですら不満を感じてしまう。即ち、そうした何もやる気がしないほど退屈した心をすら、楽しませてくれるビデオになかなか出会うことができないのだ。

こうした問題こそ、5byが対処しようと考えているものだ。モントリオールに拠点をおくこのサービスを立ち上げてCEO職に就いているのはGreg Isenbergだ。モバイル向け音楽推奨サービスにやや似たスタイルで、「キュレーション」を前面に押し出したウェブビデオサービスを提供しようとしている。

外見的に5byはビデオ版Songzaともいったようなサービスだ。その言葉の意味するところは試してみればすぐにわかることだろう。こうしたサービスの場合、たいていはサイトを訪問すると数多くのビデオが掲載されているものだ。しかしこの5byの場合は違う。まずはカテゴリのみが表示されているのだ。曰く「Blowing You Away」(びっくり)、「Killing Time」(ひまつぶし)といったたぐいのものだ。気になるカテゴリを選ぶと、さらに細かなジャンルを選ぶことができる(「Animals」や、個人的に最も気に入っている「Space」などといったジャンルが用意されている)。ここでジャンルを選べば、そこでビデオ(YouTubeないしVimeoのビデオが使われている)が表示されるという仕組みだ。

ビデオの上映が始まると、画面にはさまざまなリアクション用ボタンが表示される。笑ってしまった場合にはそうした場合用のボタンがある。気に入らなかった場合には、その旨を意思表示するボタンもある。もちろんいつでもビデオをスキップできるようにもなっている。こうした利用者からのリアクションは5by側で集約され、嗜好に関する情報は、好みのビデオを提供できるようにと活用される。

やり方としては非常にシンプルなもののように思えることだろう。Isenbergによると、これがとてもうまく機能しているのだとのことだ。彼は当初、他のメンバーとともに、今年3月に行われたLaunchカンファレンスにて「リーンスタートアップ」形式で本サービスを立ち上げた。そして数千の訪問者を獲得し、それぞれサイト上で12分程度の滞在時間を楽しんでもらうことに成功したそうだ。それからしばらくして、現在ではサイト滞在時間は19分程度に伸び、集めたビデオ本数も10万本を超えるのだとIsenbergは話している。

今のところ、コンテンツキュレーションはすべて5by内の少人数チームが担っている。もちろん、複数ソースから魅力的なビデオを選んでくるためのプログラムは利用している。ViceやEpic Mealなどの人気ビデオを集め、適切なカテゴリに分類して利用者に提供しているのだ。利用者の拡大に伴ってニーズも増え、キュレーションサービスを社内リソースのみで行うのは難しくなっていくのだろう。5byのマネタイズプランはStumbleUpon同様にCPVモデルによるところもある。しかしIsenbergによれば、キュレーターとしての存在感もまた、利用者からの人気を集めているものなのだそうだ。

ところで、楽しむためのビデオコンテンツと、そして広告ビデオとの境界が曖昧になってきているのも5byにとっては追い風となるのだろう。BuzzFeedを見てもわかるように、広告コンテンツであっても積極的にシェアしようとする人たちも多い。こうした動向の中、キュレーターとしても通常のコンテンツに加えて、ネイティブ広告を配信してビジネス化するチャンスが生まれているわけだ(5byは利用者の好みを把握しているので、この面からも効率的な配信が行えるかもしれない)。Isenbergによると、まずはPlayboyがネイティブ広告の配信元として提携に名乗りをあげているのだとのこと。

5byが今後考慮すべきは、PCを見ながらのビデオ体験の満足度についてだろう。PCを設置しているデスクの前でビデオを見ても楽しめないことが多い。すなわち5byはPCのみでなく、他の環境にもサービス展開を広げていくことが必要だ。Isenbergもこのことは認識しており、現在はiOSアプリケーションを開発中であるとのこと。モバイル環境では、他のことをしながら端末を操作するというようなことも多。そうしたことを視野に入れて、利用者の興味をいっそう掻き立てるように、カテゴリ分類に工夫を加えようともしているところなのだそうだ。

さらにIsenbergの話によれば、今後のスマートテレビ時代を見据えて、2つの有名番組制作社と提携に向けた話し合いが進んでいるのだとのこと。ネットワークに繋がったテレビでYouTubeを見ても、多くのコンテンツの中で迷い、面白いコンテンツを見逃してしまうのが一般的な話だ。そこに5byの参入余地があるのだとされているようだ。5byがサービスの提供を始めてから、まだ日が浅い。しかし筆者の例で言えば、ビデオを見ながら過ごしてしまう時間がますます増えてしまっている。それもこれも5byのせいなのだが、これでもしマルチプラットフォーム化などをしてしまえば、さらに大きな問題になってしまうに違いないと思うのだ。

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(翻訳:Maeda, H)


YouTubeネットワークは明日の大型メディア企業だ

ここ数年で、YouTube上にはマルチチャネルネットワーク(MCN)がものすごく増えた。彼らは、チャネルを多くし、オーディエンスを増やすことによって、ビデオ作品からの収益を上げようとしている。これら、YouTubeをベースとする収益目的のビデオネットワーキングのことを、通常は“YouTubeネットワーク”と呼んでいる。しかし目標は同じでも、その達成方法は各ネットワークによりまちまちだ。

ぼくは先週いっぱい何をやっていたかというと、ロサンゼルスにオフィスのあるこれらYouTubeネットワーク各社を訪ね回っていたのだ。Big Frame、Fullscreen、Machinima、Maker Studios、Tastemade、ZEFRなどなどは、それぞれ、どこがどう違っているのか。ビデオの作者たちへの待遇は、どうなっているのか。

コラボレーションとコーディネーション

YouTuberでビジネスをしようとする者たちはまず、コラボレーションによってオーディエンスを増やそうとする。つまりAさんとBさんがコラボレーションして、それぞれ相手のオーディエンスを自分のオーディエンスにもする。彼らのチャネルにサブスクライブしているオーディエンスの多くが、とくに嫌いでもないかぎり、新たに増えたBさんAさんのビデオも視聴するだろう。

Big FrameとMaker Studiosは、この方法で人気クリエイターたちの作品をたくさん集めて成績を上げている。視聴者が増え、会員も増え、そして結果的に広告収入の源泉である視聴数(ビュー数)も増える。

コラボレーションを広めようとしているのは、MCNだけではない。YouTube自身が、多くのクリエイターを傘下に集めるために、本格的で大規模なプロダクション施設YouTube Space LAを開設した。スタジオがあり、撮影機材があり、ビデオのクォリティを上げるためのポストプロダクションの施設や機材もある。またこの施設はコミュニティセンターとしても利用され、いろんなソーシャルなイベントや教育訓練のためのワークショップに、年間を通じ多くのクリエイターを集めている。

古き良き日のハリウッド的プロダクション

ハリウッドをハリウッドたらしめているものは、大作の商業コンテンツを作る意志だ。そしてYouTube上のMCNたちも、単純にクリエイターを集めてコラボレーションさせ、彼らにベストプラクティスのリストを与えるだけでなく、視聴者を満足させる、価値の高いオリジナルコンテンツを作らなければだめだ、と気づきつつある。

これまでYouTubeでは、視聴者がカジュアルな見方しかしないので、ビデオはなるべく短くすべし、とされていた。でも最近では、時間をかけて複数のビデオをじっくり見るタイプのオーディエンスが増えつつある。そのため、長時間ビデオが徐々に増え、またそのためのプロダクション投資も増えている。

その方面でいちばん意欲的なのが、たぶんMachinimaだ。同社はMortal Kombat: Legacy(今では第二シーズン)やBattlestar Galactica: Blood & Chromeなどに投資して、YouTube上の長時間ビデオの限界を模索している。そして今のところ同社は、視聴者の熱心な視聴態度から、“これで行ける!”という前向きの感触をつかみつつある。

またMakerやTastemadeなどは、Machinimaのようにシリーズもののコンテンツを作るのではなく、作品の質の向上に力を入れている。両社とも、クリエイターたちに使わせる専用のスタジオがあり、そこで彼らのコンテンツを作らせる。Makerでは、クリエイターたちはスタジオのセットを再利用できる。一方Tastemadeは、キッチンのセットを何種類も作ってクリエイターたちに使わせている。

特定ニッチや業種に焦点

最近では、オーディエンスを特定のニッチや消費者特性、あるいは特定の業種業態に絞ったビデオ制作が増えている。この路線を最初にやり始めたのMachinimaだが、同社は最初、ビデオゲームのファンの男の子、という層に着目した。しかし最近では、そういうニッチ路線を行くYouTubeネットワークが増えている。

たとえばTastemadeの場合は、最初から“グルメ指向”でスタートした。食べ物に関心のある人たちは、相当な視聴数、ひいては広告収入を、期待できる層なのだ。またDanceOnは、その名のとおりダンスファンを対象としている。

オーディエンスの層を特定しないネットワークも、個々の企画では層化のきざしがある。たとえばBig Frameは、都市住民のためのForefront、ファッションと美容に絞ったPolished、女性クリエイターのためのWonderly、性的少数者層のためのOutlandish、などを作っている。

技術の向上

商用プロダクションとなると、ビデオの高品質化が重要だ。しかし視聴者増に欠かせないのは、チャネルそのものの技術的管理だ。そのために、FullscreenやZEFRはYouTubeネットワークが自分のチャネルの視聴率や広告収入の動向などをチェックするためのダッシュボードを提供している。

Fullscreenが最近作ったCreator Platformは、ビデオチャネルを管理するためのツールだ。最初はアクセス分析と広告収入を見るためのダッシュボードだったが、今ではクリエイターたちが自分のチャネルを良くしていくためのいろんな情報を提供している。

一方ZEFRは、YouTubeにアップロードされた、大手メディア企業に著作権のあるコンテンツを見つける。昔は、ファンが勝手にアップロードしたそんなコンテンツは無条件で取り下げられたが、今では著作権保有者にとってお金を稼ぐ手段だ。今やZEFRは、このサービスの対象をメディア企業だけでなく一般企業にも拡大し、悪質ビデオの発見などに役立てている。

FullscreenとZEFRはどちらも、自社でコンテンツを制作しているわけではないけれども、YouTubeネットワークとそのコンテンツをビジネスとする企業であることには変わりない。

次にやってくるメディア企業とは

今私たちは、ビデオの未来へ向かう曲がり角にいる。次世代の大型メディア企業はYouTube(など)の上に生まれる。テクノロジと伝統的なプロダクション技術の両方を身につけた彼らが、今の大手メディア企業の敵にもなりパートナーにもなる。しかしそこまで昇りつめるYouTubeネットワーク企業は、アートにおいても、サイエンスにおいても、プロダクションにおいても、コンテンツにおいても、そして運においても、大きく恵まれた企業でなければならない。

写真クレジット: chelsea(:, Compfight ccより。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


ソーシャルメディア・キュレーションサービスを展開するStorify、コラボレーション機能およびエクスポート機能を追加

ソーシャルメディアのキュレーションサービスを展開するStorifyが、新機能のリリースを行った。Storifyは、企業ブランドなどによる利用を増やしつつあるが、そうした利用者に大いに歓迎されそうな機能だ。

最も注目されるのは、共同編集(コラボレーション)機能だろう。これまではStorifyを複数の利用者で使おうとした場合、全員でひとつのアカウントおよびパスワードを共有する必要があった。もちろんこうした方法は望ましいスタイルではない。政治的な話をするときに、人とアカウントをシェアすることを気味悪く思う人も多いだろう。

この度の改良により、パスワードを共有してひとつのアカウントで作業するのではなく、別の利用者にもアカウントを利用する権利を付与できるようになった。また編集内容を間違って消してしまったり上書きしてしまったりするのを防ぐために、コンテンツをロックする機能も追加された。ところで当方では、新機能がリリースされる前に少し使ってみることができた。その時の様子では、誰かが編集しているときに別の人も同じ記事を編集しようとすると、編集中の人に通知が送られるようになっていた。この通知に応じて保存して作業を終了(別の人に編集権を渡す)したり、あるいはそのまま作業を継続することができる(この場合は編集権は移動せず、新たに編集しようとした人は、すぐには編集を行うことはできない)。将来的には、同じ記事についてでも、異なるセクションならば複数の人が同時に編集できるようにしたいと考えているそうだ。また、それぞれの人に応じたパーミッションレベルの導入も行いたいとのこと。

また、StorifyをPDFとしてエクスポートする機能も追加された。すなわちビジネス目的で作成したStorifyをクライアントに見せようと思った場合、メールで添付できる形にするために新たな編集作業を行ったりする必要はなくなったわけだ。

尚、これらの機能が利用できるのはStorifyの有料利用者だ。有料サービスというのは、今年になってから導入されたもので、VIPBusinessのプランが用意されている。共同ファウンダー兼CEOのXavier Dammanによると、有料利用者は130以上となっているのだそうだ。ジャーナリストやメディア企業が大いに興味を示しているStorifyではあるが、実は利用者の90%がパブリッシャーではないのだそうだ。実はそうした傾向を目にしてDammanは企業向けの有料サービスも構築することとしたのだそうだ。すなわち、既存のメディアには担い切れない部分があると、多くの人が考えているのだと考えたわけだ。

パブリッシャー以外にどのような人が利用しているのかと言えば、スポーツチームや大学などでも利用されているとのこと。そしてやはりメーカー・ブランドや、そのブランドの販売などを行うエージェンシーからの利用が多いのだそうだ(有料版のリリースにあたっても、そうしたメーカーからのストーリーを展開する場所としての役割を強調していた)。

「メディアとブランド、ないしコンテンツマーケティングが展開される場は多様になってきました」とDammanは言う。「ブランド側も独自のストーリー展開を試みるようになってきており、そうした中、ジャーナリストが利用していたツールを利用するようになってきているのです」。

そもそもはメディアによる利用を想定していたStorifyだが、時代の流れに乗って、その活躍範囲を広げつつあるということのようだ。DammanおよびStorifyの他のメンバーたちの多くもジャーナリストとしての経験を持つ。今後も双方にとって有益なツールを提供して行きたい考えだ。

ところで、今回の発表には有料利用者以外にも関係するものがある。すなわち、上に掲載したように、綺麗に並んだグリッドビューが利用できるようになっており、これは全利用者が使うことができるようになっている。

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(翻訳:Maeda, H)


「ソーシャル・ブックマーク」に未来はあるか。20万ユーロを集めてMinilogsがサービス展開中

Deliciousの言葉を見ると、多くの人が「Web 2.0」を思い出すことだろう。Yahooによって買収されて、結局放棄されるまで、「クラウド」サービスの典型として大いに人気を集めたものだった。それまではあくまでも個人のものであった「ブックマーク」を公開することにより、ブックマークをする人自身も、そしてブックマークされる側にもメリットが広がっていったのだった。

以来10年ほどの月日が流れ、現在「ソーシャルブックマーク」系サービスを立ち上げようと考える人は少なくなったかもしれない。しかし、情報にリンクして、そしてそれを共有するというのは「ウェブ」というものの基本的魅力のひとつだ。そしてソーシャル性を持ち込むだけでなく、ビジュアル面でも工夫したPinterestは大成功となり、ここから刺激を受けているスタートアップもある。

刺激を受けて、自分たち独自の魅力を訴えようとするスタートアップのひとつにMinilogsがある。パリ発のサービスで、まずは20万ユーロの資金を集めてサービスをリリースした。

キャッチコピーによれば「大好きなものを保存して、再構築して、みんなと共有するためのベストサービスです」とのこと。このサービスではビデオ、音楽、地図、およびスライドなどをブックマークすることもでき、それぞれを「minilogs」と呼ばれるまとまりにしてプレイリストとして扱うこともできる。自身でプレイリストを楽しむこともできるし、そしてもちろん共有することもできる。

ところで今は2013年であり、Minilogsに用意されたのはもちろん「共有」機能だけではない。たとえば投票したり、フォローしたりというTwitterのようなソーシャル機能も備わっている。ただウリの機能は、独自にインプリメントしているプレイヤー機能ということになるだろう。登録したコンテンツがそのままプレイリストとなる。他のサイトにエンベッドすることもできるのが面白い。フランスの新聞社であるLe Figaroも利用しているようだ。

「この十年、リッチコンテンツがウェブ上に溢れるようになってきました。しかしそうしたコンテンツを保存しておいたり、編集してリミックスして活用する手段というのはあまり出てきていないように思うのです」と、Minilogsの共同ファウンダーであるJean-Philippe Coutardが言っている。「Pinterest(およびそのクローン)は、ビジュアル系コンテンツを扱うサービスを提供していますが、写真を共有するのに使われているだけというのが現状です。ビデオや音声、地図やスライドなども同様に扱えるようにすべきではないでしょうか。Minilogsは現状と理想の橋渡しをするものです。すなわち、ブックマークしたページに含まれるあらゆるコンテンツタイプを扱えるようにしたのです」。

他に同様のサービスが「出てきていない」というのは言い過ぎではある。ビデオや音声をブックマークしておくサービスというのは山ほどある。しかしMinilogsは、ブックマークした内容をさまざまな場所で再利用できるというメリットがある。「ページの中にどのようなタイプのコンテンツがあるのかを意識することなく、ただリンクをシェアするという意識だけで簡単に情報共有ができるようになっているべきだと思うのです」というMnilogsの主張は正しいものだろう。今後の発展が期待できるサービスかもしれない。

ただ、思い出すのはDeliciousのこと。そもそもそうした方向性を持ったサービスであったのだった…。

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(翻訳:Maeda, H)


インターネットストリーミング|テレビ放送|録画番組|オンデマンド…すべてを単一のストリームに一体化する”テレビ視聴の革命”Fan TV

ビデオを見つけてくれるサービスFanhattanが、テレビの見方を変えようとしている。同社のストリーミング専用セットトップボックスは、テレビとDVRとVOD(オンデマンド)の良いとこ取り+インターネット上で人気のストリーミングサービス、という何でもありの製品。ブランドをFanと変え、独自のイノベーションをひっさげて、ライブTV*とストリーミングサービスの世界へ船出する。〔*: live TV, 今放送中のテレビ放送/番組のこと。〕

そのFan TVボックスは、今日のD11カンファレンスで披露されたが、売りはコンテンツの多様さよりもむしろ、Yves Beharデザインの、トラックパッドに似たビューティフルなコントローラ(リモコン)だ。また、便利な検索発見画面で、テレビ放送、録画、そしてストリーミングの各コンテンツを一体的にナビできる。

数年前にFanは、iPad用の検索発見アプリをローンチした。これもテレビ番組とストリーミングを一体的に検索できるツールだった。そのアプリでは、今見られるコンテンツの名前などが高輝度表示された。

ストリーミングからライブTVを見つける逆転の発想

今回の、テレビ用セットトップボックスでも、やはりテレビ放送とストリーミングサービス、とVOD(ケーブルや衛星)および録画済みのコンテンツを、一体的に検索発見できる。

そう、Apple TVやRokuやWDTVなどと違うのは、Fanがあくまでもストリーミングデバイスであり、それが、お宅に前から来ているケーブルテレビにも接続される、という点だ。Fanの、最大の差別化要因がそれだ。しかもNetflixやHulu Plusなどの、インターネット上のストリーミングサービスをテレビ受像機に送り込むだけでなく、このデバイスの検索発見ツール/画面を使ってライブTVの番組も見つけることができるのだ。

Fanは大手のペイTV(pay TV, 有料テレビ==ケーブル会社)と契約して、彼らの顧客にもFan TVを使わせようとしている。同社はセットトップボックスの値段を明かさないが、ビジネスモデルとしてはサービスのプロバイダがデバイスの代金を助成する方式…携帯やワイヤレスのこれまでの常套手法…になるようだ。

ではFan TVは、ライブTVの受け入れは同軸ケーブルで行うのか? ノー。テレビ放送も、WiFiまたは背面のイーサネット(Ethernet)ポートへストリーミングされるのだ。その点では、RokuのボックスやApple TVによく似ている。

ケーブルや衛星のテレビ配給会社から見ると、Fan TVのある家庭にはもう、Ciscoなどの古くさくて格好悪いセットトップボックスを置かなくてもよい。Fanの方がユーザ体験が優れているだけでなく、お値段が従来のセットトップボックスよりも大幅に安い。まだパートナー企業は発表されていないが、この夏の終わりまでにはFanを採用するケーブルや衛星企業が決まるだろう。CEOのGilles BianRosaによると、年内に合衆国の既存のケーブルテレビユーザのうち6000万世帯にFan TVが提供されるだろう、という。〔訳注: アメリカではケーブルテレビ会社と契約するのが、いちばんふつうの、いちばん多いテレビの見方。〕

リモコンがビューティフル

ありとあらゆるテレビ/ストリーミングソースを一体化してしまうこともかっこいいが、さらにすばらしいのがトラックパッドふうのリモコンだ。これまでの、ボタンだらけの醜い使いづらいリモコンとは大違い。

Fan TVのデザインは、工業デザイナーのYves Beharにお願いした。売れっ子の彼は、このカンファレンスにも製品が二つ出ている。そしてその結果は、非常に画期的なテレビリモコンだ。片手でタッチ〜スワイプするだけでチャンネルの切り換えやメニューの指定、音量調整などができる。

自分でも使ってみたが、このリモコンにわずかでも似たものは過去にないと思う。携帯をタッチで使っているときと、同じ感覚だ。おっと、携帯用のテレビリモコンアプリが、今ではあるけど。でもFanのはもっとシンプルで、そのほかのデバイスを必要としない。

テレビファンにもコードカッターにも

Fan TVは、今のテレビに満足している人にもモアベターなユーザ体験を与える…検索が容易にできるから、録画も見つけやすい。今のふつうのケーブルテレビ視聴者にも、テレビの見方の革命をもたらすだろう。

また、Fanとパートナーするケーブル/衛星側から見ると、このプロダクトはコードカッターや“コードネバー族”*を呼び戻せるかもしれない。Fan TVでは、インターネットのストリーミングサービスを見られると同時に、同じ検索画面からライブTVにも行ける。ケーブル会社はぜひ、若者向けの安いプランを提供すべきだ。いずれにしてもそうなれば、ケーブル事業者にとってはすばらしいことだ。Fan TVの、経営的未来のためにも。〔*: cord cutter, ケーブルテレビのコードを切った人、cord never, 最初からケーブルテレビと契約しない人。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Google Now、リマインダや音楽等、新しく6種類の「カード」を追加


GoogleからGoogle Nowについてもアップデートの発表があった。AndroidおよびiOSで利用する自動情報提示インテリジェントツールである「カード」に、新たに6種類が加わることとなった。加わったのは位置情報を活用するリマインダ、公共交通機関情報、本、音楽、テレビ、そしてゲームに関するものだ。いずれもこれまで同様に利用者にとってタイムリーに表示される。

たとえば新しいリマインダカードは時間、一緒にいる人、位置情報に基いて情報を表示する。また自然言語処理を行うことができ、簡単に音声コマンドでセットすることもできる。AppleがiOS環境で提供しているリマインダーに似ているとも言えるかもしれない。ただ、Google Nowのナレッジグラフと連動することで、一層便利に使える可能性がありそうだ。また、ReminderはNowに対して自ら情報提供のタイミングを指示するものという意味もある。これまでNow側からの自動情報提供であまり有益な情報が得られないと感じていた人も、このリマインダ機能により、新たな可能性を感じることになるかもしれない。

他に提供されることとなった新カードも、外出時などにいろいろと役立ちそうだ。ただ透けて見えるのはGoogle Playの売り上げを伸ばそうとするGoogleの意図だ。Nowと連動させていくという方向性は、なるほど頭の良いやり方というべきだろう。本格的モバイル時代が到来し、デスクトップにおける検索広告の収益性がますます低くなっていくものと思われる。そのような中、新たな収益源として機能しそうに思われる。

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(翻訳:Maeda, H)


日本発の記事も海外に・コメントが成長の鍵–ハフィントン・ポスト日本版がローンチ

ハフィントン・ポスト 日本版 ローンチ

以前からアナウンスされていたハフィントン・ポストの日本版が本日ローンチした。これに伴い、ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパンが記者発表会を開き、今後の展望について語った。

本家ハフィントン・ポストの編集長Arianna Huffingtonと日本版編集長の松浦茂樹氏が強調したのは日本の未来を語る場を目標としていることだった。日本版では他国と同様に経済・政治などのニュースを取り上げることはもちろんだが、人間の生活面や健康面といったことも積極的に発信していきたいとう。

というのも、日本の伝統である健康的な食事や、人間の精神的な面においての工夫(Arianaは京都で座禅を組んで感銘を受けたそうだ)などは日本の強みであり、多くの人がこういった情報も求めているからだ。日本版で掲載された記事は海外のハフィントン・ポストにも翻訳されて掲載される。そのため、日本こそが貢献できる領域を発信することは重要だと考えている。

また、日本国内の人口減少、ワークライフバランス、自殺問題といった社会問題に関しても日本の豊かな伝統が解決策を見つけることができるのではないかとArianaは語った。

さて、このような記事を提供する上だけでは既存のメディアと比べて目新しい点はないが、どのように差別化を図るのだろうか。一番のポイントはユーザー同士の活発な対話だ。ハフィントン・ポストが米国で人気を博している大きな理由の1つがこれで、月に4,600万ユーザーがサイトに訪れ、800万件以上ものコメントを投稿しているという。

日本でもこのような状態になることが目標だ。とはいえ、日本ではコメントはあまり投稿されないのではないかと思われる方は多いだろう。松浦氏自身も編集長に就任してから最も多く聞かれた質問がこれだったという。

松浦氏は、ハフィントン・ポストのポジティブな意見を集約し、ネガティブなコメント(批判が絶対的にNGという意味ではなく、議論にならない批判コメント)は意図的に表示しないという編集方針に可能性を感じ、日本でも同じように取組むという。現状は活発にコメントが投稿されることは難しいかもしれない。しかし、継続的に続けていけば…と語った。

なお、ハフィントン・ポスト日本版はAOLと朝日新聞の合弁会社により運営されているが、編集権はハフィントン・ポストにあり、親会社が編集に口出しをすることは無いと語っていたことを付け加えておこう。


高密度な3DグラフィクスやゲームまですべてをWebがリプレースする時代に向けて, OtoyとMozillaが強力なストリーミング技術を発表

近い将来、スマートフォンとタブレットとラップトップの違いは画面のサイズだけ、となる。トップクラスのゲーマーたちは3D要素びっしりのゲームをスマートフォンで十分楽しめる。Michael Bay監督は”Transformers 4″のCGIを自分のiPadで制作する。という未来を目指してロサンゼルスの Otoyは、Mozillaと共同で、どのアプリケーションでもすべての種類のデバイスにWebからストリームできる方法を発明した。どのデバイスもアプリケーションのI/Oインタフェイスは完全にWebブラウザだけになるので、この方法が主流になればプラットホーム別のアプリストアは要らなくなり、また、条件に応じてコンピュータをアップグレードする必要もなくなる。下のデモビデオを見てみよう。

Otoyは前にも、3D要素がぎっしり詰まったグラフィクスを、それがレンダリングできないはずの古い/安価なデバイスで動かして世間を驚かせたことがある。その2009年のときのOtoyのデモ以来今日まで、Onliveのストリーミングビデオによるゲームをはじめとして、さまざまなクラウドサービス企業が繁茂してきた。しかしこれまでは一貫して、ビデオゲームはゲーム専用機、モバイルアプリはそれぞれのアプリストア、そのほかのソフトウェアはそれぞれのオペレーティングシステム、という棲み分けが定着していた。だからすべてのクールなアプリケーションを楽しもうと思ったら、各種ゲーム機、iPhone、Windows PC、Xbox、などなどをすべて手元に揃えなければならない。

しかし同時にまた、今ではどのデバイスにもWebブラウザがある。そしてOtoyは、Webブラウザのあるデバイスならどのデバイスでも自分のソフトウェアが動くようにしたいので、すべてのソフトウェアをJavaScriptで書く。だから、まもなく、“このソフトは(ゲームは)XXXXXでしか動かない(遊べない)”という事態が終焉を迎える。そして、ソフトウェアが、ひいてはユーザが、特定のデバイスに縛られない自由な世界が訪れる。

これまでは、高度なゲームやグラフィクスを動かすためにはラップトップの高級機(3000ドル以上)を必要としたが、それもなくなる。Otoyがサンフランシスコの本社でMozillaやAutodeskと共催した発表イベントでは、iPhoneの上であの凝ったグラフィクスのFPS(一人称シューティングゲーム)Unrealが、なめらかに動いていた。つまり単純に言うと、Otoyはスーパーコンピュータのやることを携帯やタブレットの上に持ち込むのだ。

Otoyの投資家でセレブたちのためのタレントエージェントを経営しているAri Emanuelは、この技術が自分のビジネスにとって大きな意味を持つ、と言う。誰もが映画作家になれるし、短期間低コストで映画を作れるようになる、というのだ。今の本格的な商業映画では、ワンシーンの撮影またはCGI制作に一日を要している。Otoy的な技術を使うと、グローバルに分散したチームがリアルタイムで協働できる(ビーチでタブレットを抱えて仕事に参加するやつもいる)。お互いの時間調整が難しくて、簡単な修正にも丸一日かかる、といった事態はなくなる。

では、3000ドルのラップトップと商用アプリケーションを買わずに済むためにOtoyにはいくら払うのか? 今同社のサービスはもっぱらプロのアーチスト向けだが、その利用料金は概算で300ドルという。

それにまた、OtoyとMozillaが共同開発した新しい高機能なストリーミング技術により、今モバイルゲームや映画等のストリーミングサービス(Netflixのインターネット帯域占有率は最大で32%といわれる)によって生じているインターネットの混雑と渋滞が、緩和されることも期待される。同技術では、同じデータ量に対して従来の3/4の帯域しか使わない。

Otoyのようなクラウドレンダリングサービスがわれわれのコンピューティングニーズの大半をリプレースするためにはしかし、すべての末端ユーザが定常的安定的に、十分に広い帯域を享受できることが必要だ。デモを見たかぎりでは4Gで十分にビデオゲームをストリームできるようだが、ユーザ人口の多い都市、航空機の中、そしてインフラの貧しい農村部などではまだまだだ。クラウドがすべてをまかなうためにはおそらく、合衆国全体としての、インターネットインフラのレベルアップが必要だろう。

というわけでOtoy(+Mozilla)のような、ハイパワーインターネット技術は、数年後というより、十数年後以降が楽しみ、と言うべきか。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


BBCのオンデマンドサービスiPlayerで初めてタブレットがモバイルを抜く

ここにも、タブレットの急速な普及の兆候が見られる。イギリスのBBCがインターネットから番組をオンデマンドで提供しているサービスiPlayerでは先月、初めてタブレットがモバイルを抜いた。番組リクエスト数はタブレット4100万に対して、モバイルからが4000万だった。PCなどすべてのデバイスを合わせると3月の番組リクエスト数は2億7200万だった(番組本体のみ、紹介編などを除く)。

3月のリクエスト総数の中でタブレットとモバイルはどちらも約15%を占める。下のグラフを見ると、長期的な傾向としてタブレットとモバイルは、これまでの主なiPlayerアクセスデバイスであるコンピュータ(PC)のシェアを蚕食していることが分かる。2012年3月ではPCのシェアは59%、今年の3月では47%だ。同じ時期にタブレットは6%から15%に、モバイルは9%から15%に伸びている。

これはBBCだけの特異な現象ではなく、業界全体としてもPCの売上は落ち込み、タブレットやスマートフォンのようなネット接続型のスマートデバイスが売れている。Gartnerの予測では今年の全世界のタブレットの売上台数はほぼ2億で、前年比70%の伸びとなる(IDCの予測では78.4%増)。これに対しPCの売れ行きは今年7.3%減少する。今回のBBCの数字と似た例としては、先月Adobe Digital Indexの場合、やはりタブレットからのアクセスが初めてスマートフォンを抜いている。

BBCのオンデマンドTVは、今放送中のテレビ番組と放送後の過去番組を見られるサービスだが、デバイスの形状やサイズからして、いかにもタブレット向きのアプリだ。ポータブルでありながら、画面サイズと解像度は不満感を与えない。BBCのiPlayerのデータでも、タブレットは圧倒的にラジオよりはテレビ番組用に使われている。

上記のデータはすべてiPlayer全体だが、テレビコンテンツに限ると、タブレットは3月の番組リクエストの19%を占め、モバイルは17%だった。一方ラジオだけでは、タブレット4%に対してモバイル10%だ。ラジオではPCのシェアが68%と高く、iPlayerが主に仕事などのバックグラウンドとして利用されていることがうかがわれる。PCの画面は、お仕事用に使われているのだろう。

iPlayerの利用のされ方でもうひとつおもしろいのは、テレビは主に(3月ではリクエストの88%)過去番組を見るために使われ、今放送中の通常番組の視聴は少ない。これに対しラジオでは、リクエストの83%でその日の通常番組が聴かれている。

iPlayerで今放送中の通常番組を見るためには視聴料を払わなければならない(ラジオは無料)。しかしその通常番組の視聴料収入はこのところ一貫して減少傾向にある。また通常のテレビ視聴者に比べてiPlayerの視聴者の年齢は下の方に偏っていて、2012Q4ではiPlayerユーザの76%が55歳以下だった。昨年8月にはiPlayerの通常番組視聴者がテレビリクエスト全体の32%(平常時の倍以上)に急増したが、それはおそらくオリンピックのためだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Vineの6秒ビデオを集めてミュージックビデオを生み出すVineTune。Vineの適用可能性はますます拡大?!

Twitterの肝いりでスタートしたVineだが、当初よりマーケッターやメディアから「広告のフロンティア」として注目されている。マーケティングの世界ではUGC(User Generated Content)はいろいろと注目を集めてきたし、ソーシャルメディアも既に保守的な広告エージェンシーにも活用されるようになっている。そしてVineが動画という、広告に馴染むスタイルのもとに一切を統合したと考えることができるのだ。

ただ、登場から3ヵ月が過ぎて、まだVineを活用した革新的な広告プラットフォームというのが登場してきていない。ようやくその萌芽が見えるかどうかといった段階だ。そんな中で、新たな可能性を探っているもののひとつがVineTuneだ(職場での閲覧には適さないかもしれない)(訳注:仕組みから当然かもしれませんが、読み込みには少々時間がかかります)。ロンドンの広告エージェンシーであるBeattie McGuinness Bungayが提案するサービスだ。Twitterを検索して収集したVineビデオを利用して、歌詞とビデオを結びつけたコラージュ風の音楽ビデオを作成するというものだ。

製作過程は次のような感じだ。

まず、VineTuneチームが月初めに、あまり有名でないアーティストをひと組セレクトする。そしてVineTuneシステムを使って音楽ビデオを作成するのだ。最初の作品で使われている曲はFlexinというもので、Masters Of Franceによるものだ。楽曲のセレクションが済めば、あとはわかりやすい作業を進めていくことになる。各センテンスから特定の単語を選択して、その単語をハッシュタグとして使っているVineビデオをTwitterで検索するのだ。そして見つかったビデオを音楽クリップ上で流すようにする。

流されるミュージックビデオは、見る度に異なったものとなることが予想される。指定したキーワードをハッシュタグとして使うビデオを、別のものと切り替えて表示するようになっているからだ。

自分でもミュージックビデオに参加してみたいという人も多いことだろう。もちろんそれも可能だ。

参加するにはVineTuneページの下にある「add a vine」ボタンをクリックする。すると作成するビデオで採用すべきハッシュタグが指定される(そのハッシュタグに関連するビデオを作ることになる)。たとえばこちらで試したときは「#sheというハッシュタグが指定された)。指定されたそのタグと、#Vinetuneというハッシュタグを加えて投稿すれば登録作業は完了だ。

登録を行えば、投稿したVineビデオがミュージックビデオの一部に採用されるという仕組みになっている。

VineTune、さまざまなジャンルで面白いコンテンツを生み出すのに利用できそうだ。斬新な音楽ビデオを格安に作るのにも利用できそうだし、ミュージシャンたちのプロモーションツールとしても活用できそうに思う。

但しVineTuneは、広告の世界も主な活躍の場所として考えているようだ。

「新しいツールの使い道というのには誰もが興味を持っているものです」と、VineTuneのファウンダーは述べる。「多くの人がVineを使った広告の方向性を模索しています。非営利組織からもいろいろな動きが出てくるとおもいます」。

広告費などがあまり出せない非営利組織でも、Vineを使った実験的な広告手法が模索されることとなる。そしてそのような成果を見据えつつ、より大きなブランドにもVine活用の動きが広がっていくわけだ。

VineTuneチームはもちろんウルヴァリンを意識している。Vineを使ったトゥイーザー広告を展開しているからだ。「Vineを活用して、従来の広告手法に全く新しい展開が生まれるということもあり得ます」とのこと。

単純にかんがえても、たとえばVineなどの短いコンテンツをVineTuneなどのように長尺化するものもあるだろうし、また従来型の予告編のような長いコンテンツを6秒に縮めるという方向性がある。さまざまなサービスやブランドが頭をひねっているところなのだろう。

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(翻訳:Maeda, H)


テレビ放送ストリーミングで勝訴したAereoのCEOが提携網の拡大について自信を語る

昨日(米国時間4/1)裁判所の重要な裁定を勝ち取ったAeroは、テレビ放送のストリーミングとDVRサービスをめぐる既存放送業界との法廷闘争でさらに有利な立場に立った*。同社のサービスは、HDのビデオコンテンツをユーザのお好みのデバイスへオンデマンドあるいは月額料金制で送り届ける。しかも最近の噂ではAereoは、Dish、DirecTV、AT&Tなどのテレビ局やISPと提携に関して協議しているという。〔*: 控訴審がAeroの著作権侵犯を否定、テレビ局側の残る手は最高裁への上告のみ。〕

AeroがFox、NBCといった大手ネットワーク〔==番組配信網を持つ〕放送局と法廷で争っているかぎり、そのような提携や買収の案件がまとまることは難しい、と言われていた。しかし、控訴審勝訴後のCEOでファウンダのChet Kanojiaは本誌TechCrunchのインタビューで、今回の勝訴によって業界の革新的破壊者としてのAeroの立場はより堅固になった、と説明する。昨日の判決はAeroにとって追い風である、と。

Kanojiaは具体的な社名等は挙げないまま、いま“多数の”企業と協議中であり、彼らはAeroとの協働に“非常に前向きの関心を”表明している、と語った。結局のところ、今回の問題の本質はただ一つ、“消費者に最大の利益をもたらすものは何か”である、と彼は言う。“提携に関しても、提携のための提携はしない”、と。

今回の勝訴によって、それら企業のAero観は変わっただろうか? この問いに関しKanojiaは、彼らとの協議はコンスタントに行われている、とだけ答えた。

Kanojiaは、裁判に関してはまったく心配していないようだ。“金の無駄遣いだし頭の無駄遣い”にすぎないが、今の放送業界の体質がそれだから、しょうがない、と。

Kanojiaは曰く、テレビ業界の歴史を見てみると、真の変化やイノベーションはどれもこれも、数ダースもの法廷闘争を背負わされている。非常に腰の重い業界だが、そのために今では熟れすぎていて、そろそろ木から落ちる頃合いだ。

私は彼に、“つまり、業界の既存の大型選手たちから攻撃されるのは吉兆である、ということですね”、と聞いてみた。彼は、面倒な訴訟に巻き込まれたこと自体を肯定はしなかったが、しかし裁判(とくに昨日の裁定)によって、Aeroに対する市場の信認がより揺るぎないものになったことは確実だ、と述べた。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


“テレビの完全インターネット化”, 古い規制に縛られる日米に先がけスウェーデンのMagineが実現

Hulu PlusやNetflix、Amazon Primeなどは、ケーブルテレビに毎月お金を払ってテレビを見るのをやめたい、と思っている人たちのための、強力な代替手段だ*。でも、有線のケーブルではなくインターネットを使うケーブル(ではない)テレビはどうだろう? セットトップボックスは使わないし、DVR的な‘あとで見る’機能や検索機能もある。そして家庭にあるふつうのスマートTVで通常のテレビ番組も見られる(あるいはあなたのiOSデバイスからApple TVに番組をAirPlayでストリーミングできる)としたら? スウェーデンの Magineが月曜日(米国時間3/25)からやろうとしているのが、それだ。 〔*: アメリカのテレビの見方の主流はケーブルテレビ経由。〕

月曜日に始まるMagineの“ファーストエディション”は、毎月約10ユーロを払うと30のチャンネルを見られる(最初の30日は無料試用期間)。その30のチャンネルの中にはスウェーデンのテレビ局のほかにCNN International、BBC World News、National Geographic、Cartoon Networkなどもある。今後も、権利を獲得次第、チャンネルを増やしていく。

Magineの本質はケーブルテレビのスタートアップだ。つまり、クラウド上のケーブル事業者〔物理的な‘ケーブル’はない〕。スウェーデン国内のテレビ局と契約し、ヨーロッパの有料放送とは料金支払いの契約を結んでいる。同社がユーザに代わって‘会費’を払う。すべてがクラウドからのサービスなので、ケーブルの敷設やそのメンテナンスなどの資本支出が要らない。

今年の初めにドイツのミュンヘンで行われたDLDカンファレンスでMagineのデモを見たぼくは、その後同社のベータユーザとしてとても満足している。合衆国の今の制度ではMagineの進出や、同様のクラウドサービスの展開は無理だが、同社はとりあえず全ヨーロッパへのサービス拡大を考えている。今、各国および全ヨーロッパ的な放送局と交渉を進めている。

Magineも強調しているように、これは違法すれすれの離れ業ではなくて、放送業界の公認の下(もと)に進められている正規のビジネスモデルだ。放送局は前向きにMagineと協力しており、彼らにとってはディストリビュータ(流通経路)がまた一つ増えるわけだから、それも当然だ。

既存のテレビ放送をインターネット化クラウド化しただけでなく、Magineには21世紀のケーブルTVと呼ぶにふさわしい斬新なユーザ体験が組み込まれている(それらに比べるとアメリカの各家庭にあるComcastのボックスが、これまで以上に古ぼけて見えるだろう)。Magineのサービスは、Webやモバイル経由でテレビ(スマートTV)からアクセスする。

その仕組みはこうだ(まず、あなたがスウェーデンに住んでること):

ベータの登録ユーザになったら、Web、または携帯やタブレットのアプリからMagineを見られる。またSamsungとLGのスマートTV用には専用のアプリがある(スウェーデンで売られるSamsungにはプレインストールされる)。TVとモバイルのアプリはどちらもクラウドにアクセスし、携帯やタブレット、あるいはテレビのリモコンでコントロールする。モバイルの場合はテレビ画面にQRコードが出るので、それをスキャンすれば接続される。

従来のケーブルテレビと違ってMagineには検索と発見の機能がある。各チャンネルの番組表を見られるだけでなく、番組を前回前々回などへさかのぼって見ることもできる(最大7日前、または30日前まで)。

月曜日からは、ベータの参加者もアプリが新バージョンにアップグレードされ、検索と発見がより便利になる。さらにその後は、これまで待たされていた申込者を順次登録していくとともに、サービスの供用区域をヨーロッパの全域をめざして拡大していく。

とても野心的な会社だけれど、やってることの内容を見れば、そのうちヨーロッパのメジャーの地位を獲得してもおかしくはない。合衆国では当分無理だとしても、こういうものができるだけ早く可能になるよう、働きかけていくことは重要だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Rovio、Dreamworksのアニメ映画「ザ・クルッズ」とタイアップしたゲームを公開中

croods

Rovioからの新ゲームはもう試しただろうか。Dreamworksのアニメ映画である「The Croods」(ザ・クルッズ)を元にしたものだ。

RovioはDreamworksとタイアップし、キャラクターやシーンなど、映画と同じものが登場するゲームに仕上げた。遊び方自体はシンプルだ。石器時代後の原始時代に向けて成長(進化)しつつあるクルッズファミリーをサポートするのが目的となっている。

いろいろな場所を駆け巡りながら、クルッズは食べ物を採取し、そして狩りをする。その中で見たこともない生き物を見つけ、そして飼い慣らす。

「見たこともない生き物」というのは、言葉通りで「異形」の生物たちだ。Rovioも「見たこともないモノ」と表現している。名前はGirelephant、Molarbearなどというものだ。また、Rovioとしてはポケモン風を意識したのかブログ記事中では「ゲットだぜ!」(catch them all)などという言葉も使っている。

プレイ中には族長であるGrugからの助言も得ることができる。Bad Piggyの作る乗り物のような、新しい道具を作るヒントを与えてくれるのだ。そうした助言に基いても事態が打開できないようなときにはレベルアップアイテムなどを使うこともできる。

Rovioはいろいろと映画業界とのタイアップを活発化させているようだ。『ブルー 初めての空へ』(原題: Rio )が出たときは、これにあわせてAngry Birds Rioが登場した。またAngry Birds Star Warsの大人気も記憶に新しいところだ。

こうしたコラボレーションと同時に、Angry Birdsは自前の短編アニメを、ゲーム内配信という形で毎週リリースしていく予定ともなっている。

ザ・クルッズはiOS版およびAndroid版がリリースされている。

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(翻訳:Maeda, H)