ASUSが暗号通貨マイニング専用のマザーボードを発表…自己診断機能を充実

マイニング用のハードウェアは、おかしなものだ。日用品のような安いハードウェアを使って複雑な計算を…効率悪く…やらせたり、あるいは特別設計の高価なボードにBitcoinを稼ぐ仕事しかやらせなかったり。そこで、マザーボードのメーカーとしても有名なASUSは、この両極端のギャップを埋めようとしている。

H370 Mining Masterは、20のグラフィクスカードをサポートするベーシックなマザーボードで、Ethereumなどのあまりリソース集約的でないスクリプトで使われる。カードはPCIe-over-USBで接続し、各ポートは、オンボードの診断機能により個別にコントロールされ管理される。それにより、個々のグラフィクスカードがどれも正しく動き、接続が完全であるようにする。

プレスリリースから引用しよう:

マシンのメンテナンスに割く時間が少なければ、それだけマイニングの時間が多くなる。そこでH370 Mining Masterには一連の自己診断機能があって、プラットホームの管理を容易にしている。中でも重要なのがGPU State Detectionで、ブート時にシステムをスキャンして各ライザーポートの状態を調べ、空か、機能するグラフィクスカードが接続されているか、あるいは問題が起きているかを点検する。State DetectionのアップデートされたGUIにより、各ポートの位置とステータスを英数字のコードで確認できる。オンボードの診断機能は、個別のデバッグ用LEDも利用する。それらは、CPUやメモリなど、特定のシステム部位に問題があれば点灯する。

ボード自身がさまざまな暗号通貨の機能を持ち、それらは、最初に電源を入れたときから完動する。

このボードの発売は2018年第三四半期で、価格は数百ドルだ。マイニング用のカスタムハードウェアに比べると、馬鹿安い。ただし、大量のグラフィクスカードがせっせと採掘を続けられるためには、それなりの電気料金を覚悟しなければならない。

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Nvidiaで生まれた怪獣HGX-2はHPCやAIのサーバーを単一アーキテクチャでまかなう

Nvidiaが昨日(米国時間5/29)発表したモンスターHGX-2は、ギークの夢の実現だ。それはクラウドサーバー専用機と称され、しかもハイパフォーマンスコンピューティングと人工知能の要件をひとつの強力なパッケージで満足させている。

まず、誰もが気になる仕様から。プロセッサーは16x NVIDIA Tesla V100 GPUsで、処理能力は低精度のAIで2ペタFLOPS、中精度なら250テラFLOPS、最高の精度では125テラFLOPSだ。標準メモリは1/2テラバイトで、12のNvidia NVSwitchesにより300GB/secのGPU間通信をサポートする。これらにより、総合性能は昨年リリースされたHGX-1のほぼ倍になる。

図提供: Nvidia

NvidiaのTeslaデータセンタープロダクトを担当するマーケティングマネージャーParesh Kharyaによると、これだけの通信スピードがあれば、複数のGPUを一つの巨大なGPUのように扱うことができる。“それによって得られるのは、膨大な処理能力だけでなく、1/2テラバイトのGPUメモリを単一のメモリブロックのようにアクセスできる能力だ”、と彼は説明する。

図提供: Nvidia

残念ながらこのボックスをエンドユーザーが直接買うことはできない。売り先はもっぱら、ハイパースケールなデータセンターやクラウド環境をエンドユーザーに提供する、インフラのプロバイダー、いわゆるリセラーたちだ。これによりリセラーは、ワンボックスでさまざまなレンジ(幅)の精度を実現/提供できる。

Kharyaはこう説明する: “プラットホームが統一されるので、企業やクラウドプロバイダーなどがインフラを構築するとき単一のアーキテクチャだけを相手にすればよく、しかもその単機がハイパフォーマンスワークロードの全レンジをサポートする。AIやハイパフォーマンスなシミュレーションなどで、各ワークロードが必要とするさまざまなレンジを単一のプラットホームで提供できる”。

彼によると、このことがとくに重要なのが大規模なデータセンターだ。“ハイパースケールな企業やクラウドプロバイダーでは、スケールメリットを確実に提供できることがきわめて重要だ。そのためにも、アーキテクチャがバラバラでないことが有利であり、アーキテクチャが統一されていればオペレーションの効率も最大化できる。HGXを使えば、そのような単一の統一的プラットホームへ標準化することが可能だ”、と彼は述べる。

そしてデベロッパーは、そういう低レベルの技術を有効利用するプログラムを書くことができ、必要とする高い精度を一つのボックスから得ることができる。

HGX-2が動くサーバーは、今年後半にLenovo, QCT, Supermicro, Wiwynnなどのリセラーパートナーから提供されるだろう。

画像クレジット: Nvidia

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AR/VRヘッドセットのマスマーケットの到来に備えてQualcommが低コストな専用チップセットを発表

今やスマートフォン用に最適化されたチップセットの上で、大量のプロセスが動いている。かつては、パソコンがあれば携帯電話にそれほど強力な処理能力は要らない、と思われていたのに。さらに最近の5年間では、ヘッドセットのパワーアップ競争が日に日に激しくなってきた。そして今日では、スマートフォンやヘッドセットなどのハードウェアに盛り込める処理能力はほぼ限界に達し、これからはむしろ、コストの低減と製品の特徴や仕様が勝敗を決する、とまで言われるようになってきた。

その新しい時代の先駆けとして今日(米国時間5/29)Qualcommが、スタンドアローンのヘッドセットのための専用チップセットを発表した。そのSnapdragon XR1は、同社としては初めてのARとVR専用のチップセットで、同社はその新しい機種ジャンルを“XR”と総称している。

XR1を搭載したデバイスの上では、たとえば、4K/30fpsのコンテンツをストリーミングできる。発表のステージには、 HTC Vive, Vuzix, Meta, そしてPicoなど、主なヘッドセットメーカーが招待された(上図)。今日実際に発売されるヘッドセットは多くないが、Qualcommは近年中に総出荷台数が1億台を超える、と想定している。

Qualcommの最新機でVR向けの参照設計でもあるSnapdragon 845との詳しい比較は発表されなかったが、しかしおそらくXR1は不要不急の機能をすべて省き、ハードウェアのメーカーが必要とする機能と性能だけを提供するローコスト機だ。

Snapdragon 845は、ヘッドセット上のコンテンツをハイエンドのPCが駆動する高性能なARやVR並にすることをねらっているが、XR1は店頭で大量に売られるローコストデバイスを目指している。XR1は845のように6DoFの自由度をサポートしないが、835のVRプラットホームのような、しっかりした動きをサポートするだろう。

Qualcomm XR設計チームのトップHiren Bhindeにメールでインタビューしたところによると、電力消費と温度上昇に関する同じベンチマークで比較すると、XRが扱えるワークロードは845より小さい。ただし、845がサポートするようなハイエンドのグラフィクスやメモリサイズを必要としないARの顧客もいるから、XR1は彼らにはぴったりだ、という。

今日のスタンドアローンのVRヘッドセットと比較すると、現在のPCをつながない消費者向けARヘッドセットは要求される計算処理能力が、それほど高くなくて、VRがねらっているような高忠実度な世界の再現を目指していない。そんなヘッドセットは簡単なヘッドアップディスプレイとして利用されることが多く、それに音声アシスタントがつく。Qualcomm XR1のパートナーVuzixがデモしたそんなヘッドアップディスプレイは〔その現場での利用目的が〕、Magic LeapやMicrosoftの“混成現実”が追っている、高度な、本物のように自然な環境マッピングを必要としない。

低コストでマスマーケット向けのヘッドセットに適したチップセットを発表したQualcommは、今がその発表の好機と信じており、XR1はAR/VR分野のメーカーたちに、より売りやすいハードウェアを作る能力を与える、と考えている。

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Vivoのオールスクリーンスマートフォンはカメラが飛び出し方式で6月にデビュー

今やオールスクリーンのスマートフォンはひとつの必然性である。だから現時点の疑問は、出るか/出ないかから、どこのどれが市場に一番乗りするか、にシフトしている。G7のローンチのときLGの連中は、ノッチはあと二年ぐらいは人生の現実であると言っていたが、最近の各メーカーの動向を見ると、もっと早いようだ。

2月のMWCで、VivoのApexハンドセットは単なるコンセプトのように思えたが、最近のリーク画像/映像を見ると違うようだ。 そのビデオは、はね上げ方式の自撮りカメラをデモしているし、スケジュールは6月12日の上海のイベントを告げている。そのハンドセットは、いちばん控えめに言っても、かつてのコンセプト機の親(ちか)しい親戚のようだ。

2月のプレスリリースは、コンセプトを詳しく述べている。

このように: “ユーザーの習性をサポートし続けるという約束に基づいて、Apexには8Mpの飛び出し型フロントカメラがある。このカメラは0.8秒で素早く上昇し、使用が終われば引っ込む。内部に接近センサーと周辺光センサーがあるため、従来のフロントカメラのようにスペースを奪わず、しかも同じ自撮り体験をユーザーに提供する”。

しかしVivoは、自分こそ答を見つけたと自負している企業の一つにすぎない。2月に会ったDoogeeは、ノッチを回避したプロトタイプをいくつか見せてくれたが、その中にも飛び出し型があったし、スライド式カメラのもあった。

そして、Lenovo Z5を忘れてはいけない。それは同社のVPが今月初めにソーシャルメディアで見せてくれた。ただし、写真ではなくてスケッチだった。でも、全体的に今感じるのは、たくさんの企業が、“最初に考えたのはうち”と言い張っていることだ。

でもたぶん来月には、Vivoがいよいよ本物を見せてくれるかもしれない。

参考記事

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REDのクレイジーなホログラフ・スマートフォンを大手キャリアAT&TとVerizonが採用

REDのHydrogen Oneは、実際に見るまでは信じられないデバイスのひとつだ。同社はこの1200ドルのスマートフォンをかなり前に発表したが、その後何度も遅れて、ついに平然と“今何をしているか言うことはできない”、と言い放った。

でもこれは、自信の表れなのだ。AT&Tは今日(米国時間5/17)、その5.7インチの“ホログラフディスプレイのデバイス”を扱う、と発表した。しかしもちろんこれは、そのデバイスを暗黙に承認した、という意味ではない。そもそも、暗黙の承認なるものがある、という意味でもない。

しかし発表に伴うプレスリリースでは、マーケティング担当のSVP曰く、“この革命的なスマートフォンは、市場で上位に位置するエンターテインメントネットワークにおける、コンテンツの制作と享受をより高度な体験にレベルアップする”。どういう意味だろう? ぼくは個人的には、ブツが自分の手の上に乗るまでは、いっさいの判断を差し控えたいと思う。

キャリア(AT&T)は、“この夏晩(おそ)く”、と言っている。そういえばREDも最近、8月のローンチと言っていた。価格は今のところ、誰が言っても推定でしかない。AT&Tが下支えをするのか、それとも正味1200ドルで売るのか、AT&Tからの答はないが、お値段から考えて長期の助成が妥当な線だろう。

Hydrogen Oneは、誰が見ても主流的モバイルハードウェアからはほど遠い。現時点ではそれは、おもしろい消費者電子製品の思考実験みたいだが、ただしすでに実物がある。しかも、アメリカのメジャー系のモバイルキャリアからこの夏提供される。

アップデート:Verizonもこのスマートフォンを採用するらしい。このキャリアは本誌TechCrunchのオーナー企業のオーナー企業だが、“今年晩(おそ)く”というさらに漠然としたタイムラインを示している。やはりお値段等の情報はない。

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万能飲料メーカー、Pico UがKickstarterに登場――昆布茶、コーヒーからクラフトビールまで卓上で作れる

家庭でクラフトビールが作れる装置で知られるPicoBrewがさらに大胆な家電製品を開発中だ。 Kickstarterで支援者を募っている新しいマシン、Pico Uはたいへん多様な飲み物を卓上で製造することができる。

飲み物のリストは以下のように多彩だ(これ以外にも作れる)。

  • 昆布茶
  • コーヒー
  • 紅茶
  • オルチャータ
  • マテ茶
  • ソーダ
  • クラフトビール(もちろん!)

PicoBrewのCEO、ビル・ミッチェルの説明によれば、「クラフトビールを家庭で醸造できる装置を開発する過程でわれわれは温度その他の環境を非常に精密にコントロールするプロセスを確立できた。われわれはこのテクノロジーがコーヒー、紅茶、その他のポピュラーな飲料を非常に高い精度で抽出するために利用できると気づいた。そこでPicoBrewでは汎用の卓上醸造、抽出マシンを提供することにした」ということだ。

Pico Uシステムは今日(米国時間5/16)からKickstarterで申し込みの受付を開始した。ベーシック版は169ドルで本体プラス1杯分の抽出ができるパッケージだ。市販価格は249ドルを予定している。デラックス版は最大5リットルまでの昆布茶やアイスコーヒー、クラフトビールの醸造ができる。プレッジ価格は189ドル(市販は299ドル)。

システムには Wi-Fi機能があり、専用アプリを通じてスマートフォンから醸造、抽出のプロセスをコントロールできる。もちろん本体のフロントパネルにもディスプレイが付属している。製品が出荷されるのは来年の第1四半期が予定されている。

〔日本版〕マテ茶は南米、オルチャータはスペインでポピュラーな飲み物。Pico Brewからそれぞれの飲み物のパッケージを購入してマシンにセットする。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

これからはchrootツールを使わなくてもChrome OSの上で正規にLinuxを動かせる

かなり前からデベロッパーたちは、Croutonなどのツールを使ってChrome OSマシンをLinuxベースのデベロッパーマシンとして使っていた。それはちょっと面倒なやり方だが、とりあえず使えた。でも今度からは、それがもっと簡単になる。Chrome OSマシンの上でLinuxアプリケーションを動かしたい人は、Settingsメニューにあるスイッチを切り替えだけでそれができるようになる。それは、今後Googleが、Chrome OSにLinuxの現在の安定バージョンの載ったDebian Stretchが動く、仮想マシンを同梱するからだ。

それは、シェルを使えるだけでなく、グラフィクスも完全にサポートされる。だからたとえば、Visual Studio CodeのMicrosoftによるLinuxバージョンを、Chrome OSマシンで動かせる。あるいはAndroid StudioでAndroidアプリを作り、そのラップトップ上でテストできる。Chrome OSのAndroidアプリのサポートは、昨年実現したから。

Linux on Chrome OSの最初のプレビューはすでにGoogleのPixelbookで試せるが、そのほかのデバイスのサポートは“もうすぐ”ということだ。

GoogleのChrome OS担当プロマネ・ディレクターKan Liuによると、デベロッパーがCroutonを使っていることはもちろん知っていたが、でもそうすると、Googleが提供しているセキュリティ機能がいっさい及ばなくなってしまう。最近ではChrome OSマシンもかなり強力になっているので、そのままLinuxを使いたいという要望も増えている、という。

グラフィクスに関しては、Waylandディスプレイサーバーを使用している。ウィンドウのルックスは、Androidや、Chrome OS上のWebアプリケーションと同じだ。

一般ユーザーにはLinuxの内蔵サポートから得られる利益はあまりないと思われるが、デベロッパーにとってはこれでChrome OSマシンがより魅力的になる。Pixelbookのようなハイエンドマシンでは、とくにそうだろう。Liuは、自分たちのチームが相当な労力を費やしてその仮想マシンを最適化した、と強調している。だから、Linuxアプリケーションを動かすことに伴うオーバヘッドは小さい、と見てよいだろう。あまり強力でないマシンでも、コードエディターを不満なく使えるのではないか。

そのうち誰かがWineエミュレータを持ち込んで、Chrome OS機の上でWindowsアプリケーションを動かし始めるのも、時間の問題だろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Androidの父Andy RubinのスマートフォンEssentialに日本語ネットショップができた

それはスマートフォンメーカー企業の、すなおすぎるような立ち上げだった。Androidの作者Andy Rubinのその新しい事業は、出足があまり良くないと外部からは見られているが、しかし今日(米国時間4/27)同社は、その潤沢な資金を生かして一気に、オンラインストア(ネットショップ)のグローバル展開を図った。

今日の同社はTwitter上で、それら重要拠点のストアを発表した。カナダ、フランス、日本、そしてイギリスだ〔ドイツも買える…後述〕。Engadgetによると、これらの市場の一部では、前から買うことが可能だったが、しかしそれは同社自身のショップからではなく、たとえばカナダではAmazonやTelusからだった。

一部には、特定の国に固有の注意点もある。それらは同社のTerms of Sale(販売規約)に書かれていて、そこには、ドイツでも買える、とある。

このように、同社は市場展開も遅かったが、無理もない。この種のビジネスをスクラッチから立ち上げるのは、容易ではない。手持ち資金が3億ドルあっても、だ。Essentialは最初の1年を国内市場の開拓に費やした。AmazonやBest Buyに卸し、キャリアはSprintと契約した。

今回行った流通チャネルの構築で、今後バージョン2が出るとき、展開がかなり楽になるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ロンドンを離れずに月を作る ―― ただしユーザーによるちょっとした組立作業は必要

ハードウェアを作ることは簡単なことではない。特にグローバルな製造インフラストラクチャの活用を拒否して、ロンドンのアパートの一室で全てを製造し、地元で手に入る労働力と材料だけを使おうとするときには、ますます難しいものとなる。しかし、この方法こそ、成功したKickstarterプロジェクトであるMoonのクリエイターたちが行った方法であり、彼らに後悔はない。

2016年に、私はMoonのプレゼンを目にした。これは私たちの衛星(月)の正確な複製で、実際の月の満ち欠けに合わせるように、その周りをLED群が回転するというものだ。クールなアイデアだと思ったが、その時は記事にすることはなかった。その代わりに、わたしはクリエイターの1人であるAlex du Preezに、将来このクラウドファンディングで作られた自家製ハードウェアの挑戦について、話す機会を持ちたいと依頼していたのだ。

このプロジェクトは成功し、2万5000ポンドの目標を上回る、14万5393ポンドを獲得した。そしてチームが最初の生産のまとめを行い、2回めの生産の準備を行っていた昨年末に、Alexと私は話をする機会を持つことができた(なお2回めの生産もちょうど最近終了したばかりである)。

これは実に興味深い、クラウドファンディング・ハードウェアプロジェクトのケーススタディである。単にMoonチームが、なんでも地元調達で済ませる、普通ではない選択をしたということだけではなく、月の樹脂成形そのものから、その台座や電気仕掛けに至る、あらゆることが参考になる。

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「その当時、私たちはそれらを正しく作っていることを確認したいと考えていました。私たちは工場での試作に、多くのエネルギーとお金を注ぎ込んではいなかったのです」とdu Preezは言った。「Kickstarterのキャンペーンの多くが、中国の製造工場に直接依頼されていることは知っていました。でも私たちはそうすると、製品の品質が大幅に落ちるのではないかと心配したのです」。

せいぜい隣町より遠くない場所から、全てを調達したという気分の良さに加えて、主要な利点は、関係する人びとと直接対話し、問題について直接説明したり一緒に取り組んだりすることができたことだ。

「電車に乗れば、彼らを訪ねることができるのです」とdu Preez。「例えば、この製品の腕の部分である曲がったパイプですけど、この部分だけでも私たちはパイプ加工会社を3回訪れて、担当者たちと直接話し合いました」。

もちろん彼ら自身も何もできない人びとではない、このプロジェクトを行った3人は以前にもクラウドファンディングプロジェクトの立ち上げを支援したことのあるデザイナーやエンジニアたちなのだ。ただ今回のプロジェクトは、初めて自ら企画したものだった。

「おそらくOscar(Lhermitte。プロジェクトリーダー)は、このプロジェクトの企画から製造に、2年から3年間は費やしていることでしょう」とdu Preez。「このアイデアを思いついた彼は、NASAに連絡してマップを作るための地形データを手に入れました。彼は技術的そして工学的な知見を求めて、私たちに声をかけてきたのです」。

英国内で全てを行うという決定は、ハードウェアへの要求の厳しさから、なかなか簡単には下されなかった。チームの基準は厳しかったのだ。その立派な成功(20万ドル超え)にもかかわらず、ユニークで高精度な電子機器をゼロから作り上げる事例は、まだ珍しいのだ。

全体の作業がロンドンの小さなアパートのスペースを使い果たしてしまったので、チームは様々な工夫を行わなければならなかった。

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「これらの製品を生産していたのが、この台所程度の小さな部屋の中だったのです」とdu Preezは思い出すように語った。「倉庫のような場所ではありませんでした。私たちが借りていたのは2階ですが…建物には大量の材料が届いていました。膨大な金属とかですね。それを運び上げるのは半日がかりでした。そして大量の箱なども届いて場所全体が満杯になりました。

彼らは、市場や深センからの既製品を使うという誘惑に抵抗し、その代わりに問題を解決するために、彼ら自身の創意工夫(と、近隣の呆れるほど専門特化した職人たち)に頼った。

「最も難しかったことの1つは、使われるそれぞれの部品が異なるプロセスで製造されているということです」と彼は言う。「プラスチックケースに収まっている電子機器を作るなら」たとえば防犯カメラや安価なAndroid携帯電話を作る場合などだが「開発と運用を、はるかに素早く行うことができます」。

明らかに最も重要なのは、月の球体自身だ。これまでに誰も、これほどのものを作ったことはなかった。そのため彼らはそのやり方を、自分たち自身で見つけなければならなかったのである。

「それはかなりの大きさなので、ひとかたまりの中身の詰まった固体として成形することはできません」とdu Preezは説明する。「もしそうしたら、送るのには重すぎるでしょう。それに材料が変形して、凹んでしまいます。ということで、私たちが行ったことは月の表面の地形を逆転させたような型を作って、その中に液体を注ぎ込むことでした。液体の硬化を行いながら、その型を回転させます、乾燥していく際に内側の表面が樹脂できちんと覆われるようにします。

試作段階でこれを行うために、彼らは「木と、自転車部品と、そしておそらくミシンのエンジン」を使った応急処置の解をひねりだしたと、彼は語った。「コストを抑えるために、それらを一箇所に集めなければなりませんでした。私たちの材料とコンセプトがうまく働くかを確かめるために、試行を行ったのです。もしこの方法が上手くいくことがわかったら、より良いものへと改善して行けば良いのだということはわかっていました」。

そして好運に恵まれ、彼らは適任者に巡り合うことができた。

「バーミンガム在住のこの人物が、私たちの試作機械に相当するものの工業版を所有していたのです。彼は型を作ることができて、一日中回転させるためのこの大きな金属枠も所有していたのです」とdu Preezは語る。「彼の仕事の品質は本当に素晴らしいものです」そしてもちろん、そこは列車で短時間で着ける場所なのだ ―― いずれにせよ中国広州への移動に比べれば。

細部への注意、特に球面の品質に対するこだわりがMoonの出荷の遅延に繋がった。最終的には当初の予定より、4ヵ月遅れることとなった。

Kickstarterのプロジェクトである以上、遅れはもちろん予想されていたことではあったが、du Preezは、バッカー(支援者)たちの反応に(友好的なもの非友好的なものを問わず)驚いたのだという。

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「反応は極端に2つに分かれたように思います。私たちには541人のバッカーがいました。私の見るところ月が手に入らないことで、失望したのは2名だけだったと思います。彼らは怒っていました。それこそ頭から湯気を出す程に怒っていたのです」と彼は言った。

「しかし、公の場で私たちを罵倒した人たちはいませんでした。彼らはただ現状をチェックしていたのです。バッカーから電子メールを受け取った際に、きちんと返信を送れば、バッカーたちは理解を示してくれるように見えます。私たちが着実に進んでいる限り、人びとはそれを受け入れてくれたのです」。

とはいえ、4ヵ月の遅れはそれほど酷い遅れとは言えないだろう。Moonよりも遥かに多額の資金を集め、出荷が何年も遅れたり、そもそも出荷そのものが中止になったものさえ存在している(実際の話、私はそうしたものの幾つかに出資していた!)。Du Preezは、支援者たちの信頼を損なわないようにしたいと考えている、クラウドファンディング候補者たちのために、いくつかのアドバイスを語った。

「価格付けを理解することは本当に重要です。誰が製造するのかから始まり、出荷に至るまでを良く考える必要があります。Kickstarterを始めたあとのゲームプランがないなら、かならず厄介な状況に陥ることでしょう」と彼は語った。「私たちはKickstarterを始める前に、部品表を作成し全ての経費計算を済ませていました。そして、その製品が上手く行くことを示す、何らかの概念証明(プルーフオブコンセプト)のようなものが必要です。いまでは非常に沢山の素晴らしいハードウェア開発プラットフォームがあるので、そうした証明を行うことは、今ならとても簡単だと思います」。

彼らの仕事に対する、細部への気配りと明白な誇りは、永続的なビジネスへとつながった。同社はアダム・サヴェッジ、マーク・ハミル、そしてMOMAなどから注目を集めている。一方2回目の生産である250個は終了し、チームはこれらのラインに沿って他のプロジェクトを検討している最中だ。

チームのプロジェクトを追跡したり、自分用のユニットを注文したり(まあ、早期割引を頼みたかったと考えるかもしれないが)する場合にはMoon専用ウェブサイトへ

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(翻訳:sako)

Virgin Galactic、VSS Unityの動力飛行に成功――2014年の事故以来、最初の宇宙往還機飛行実験

今日(米国時間4/5)、Virgin Groupの宇宙企業、Virgin Galacticは3年にわたって開発してきたロケット宇宙往還機の初飛行テストを行い、無事成功させた。発射母機のSpaceShipTwoは往還機、VSS Unityを吊り下げて離陸した。所定の高度に達した後、往還機は母機から切り離され、ロケットを30秒にわたって作動させた。これによりUnityはマッハ1.6まで加速された。

Virgin Galacticにとって2014年にSpaceShipTwo Enterpriseが悲劇的な事故により破壊されて以来、初の動力飛行テストだった。

前回の事故以後、リチャード・ブランソンの宇宙計画は大幅な見直しを迫られ、多数のパーツが再設計された。最近、実験はスピードアップされ、Unityの滑空テストに成功していた。

今日のテストパイロット、Mark “Forger” StuckyとDave Mackayの2人が母機から切り離されたVSS Unityを操縦した。オリジナルのSpaceCraftTwoと異なり、今回のUnityはVirgin Groupの企業、The Spaceship Companyによって製造された。同社はさらに2機の同型機を製造している。

Virgin Galacticは今回のテストで目標としていた高度、速度をまだ発表していない。今回の飛行はVirgin Glacticにとってきわめて重要なテストだったが、同社はこれまでできる限りメディアへの露出を避けてきた。これはメディアに豊富な情報を提供するイーロン・マスクのSoaceXとは対照的な方針だ。

アップデート:リチャード・ブランソンは実験の成功後、簡単な内容のツイートをしている。

Virgin Glacticは活動を再開、動力飛行に成功した。マッハ1.6。飛行データを検討した後、次のフライトに進む。いまや宇宙は手の届くところに来た。 ――リチャード・ブランソン

Virgin Galacticは再利用可能な宇宙往還機を開発、運用することを目的とする企業で、これまで同社の往還機は最高高度110キロの弾道飛行に成功している。1人あたり25万ドルの料金で乗客に宇宙観光を提供するのが目的だ。今回のテスト成功で事業のフィージビリティーは大きくアップした。同社は前回の死亡事故から立ち直ったが、万一同様な事故が再発すれば会社にとって致命的となるだろう。

〔日本版〕Virgin Galacticがさきほど公開したビデオ映像。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

見捨てられるPenryn世代: Intelは古いチップのSpectre対策を中止

チップの欠陥MeltdownとSpectreに対して、引き続き行われているパッチ努力の一環としてIntelは先月、2005年までさかのぼって開発コードYorkfield以降のプロセッサーにも修復を適用する、と示唆した。しかし最近のガイダンス文書によると、これらの古いプラットホームの多くは結局、修復を受けないことになった。

具体的には、Spectre Variant 2(変種2)のための対策は、チップの世代で言ってBloomfield, Clarksfield, Gulftown, Harpertown, Jasper Forest, Penryn, SoFIA 3GR, Wolfdale, Yorkfieldに対しては行われない。(IntelのコードネームのリストはWikipediaにある。)

変種2はブロックや回避がいちばん困難な欠陥なので、対策も難しい。マイクロコードのアップデートで何かをコピペして終わり、という仕事ではない。

そのガイダンス文書(PDF)には、修復対応をやめる理由が書かれている:

  • マイクロアーキテクチャの性格により、変種2を緩和する機能の実効的な実装ができない
  • システムソフトウェアの商用サポートが不十分
  • 顧客からの入力によると、これらの製品の多くが“クローズド・システム”として実装されているので、これらの脆弱性への露出の可能性が低い。

言い換えると: それは超難しい、サポートが薄い、そしてバグが悪用されるような使い方をしている人がとても少ない。

そもそもそれら古い機種は、リストが膨大であるだけに、Intelとしてもリーズナブルな後退をした、と言えるだろう。しかしそれでも、システムの管理者は、これらの世代のチップが自分たちのシステムの中で外部者に対してむき出しになっていないか(悪用の可能性がないか)、チェックしたいだろう。

そしてユーザーに関しては、Core 2 Duoに代表されるPenryns世代は、まだ古いラップトップを使っている人が少なくないだろう。2008年には、それがIntelのすべてだった。ぼくみたいに、古い機種に愛着があって捨てられない人は、重要な仕事をその上でやらないようにしよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

中国の宇宙ステーション、天宮1は間もなく墜落――重量9.4トン、正確な落下地点は不明

「上がったものはやがて下りてこなければならない」とことわざに言うが、使命を終えた衛星にも当てはまる。中国の最初の宇宙ステーション、天宮1( Tiangong-1)は7年近く軌道にあったものの、制御不能となり降下を続けている。今夜〔太平洋夏時間〕にも盛大な火の玉となって太平洋上に落下するはずだが…正確な場所はわからない。

不明な要素が多すぎるため天宮-1の軌道は推測するしかない。専門家が一致しているのは向こう24時間以内に大気圏に再突入するだろうという点だ。落下地点は北緯43度から南緯43度の間だという。

しかしESA(欧州宇宙機関)の専門家が最近説明したところによれば、巨大な物体が超高速で上層大気に突入するという事態の性質上、正確な時刻、地点はそれが起きるまで分からないという。

それだけ聞けば深刻な事態のように思えるが、実際にはさほどでもない。

天宮1はバスくらいの大きさで重量は9.4トンある(The Aerospace Corporationのビデオではスクールバスと比較されている)。しかし同サイズの隕石に比べると天宮1は内部が空洞なのできわめて軽く、脆弱だ。大気圏に突入すれば容易にばらばらになる。宇宙ステーションははるか以前に放棄されており乗員はいない。他の有人衛星と衝突する可能性もないという。

天宮1は2011年後半に2つの衛星として打ち上げられ、軌道上で結合された。中国の宇宙開発計画で最初の試みだった。その後2年にわたって3基の神舟(Shenzhou)衛星が宇宙ステーションとのドッキングに成功している。神舟8は無人のロボット衛星で、神舟9、10はそれぞれ3名の宇宙飛行士が搭乗していた。

天宮1は中国の宇宙ステーション技術をテストするプラットフォームだった(その後2016年に天宮2が打ち上げられている)。2013年には予定されたミッションを終えて退役した。中国の宇宙機関はスラスターを噴射させて天宮1を洋上に落下させる予定だった。いかに危険は小さいとはいえ、よその国にスペースデブリを振りまくのは良いマナーとはいえない。

The Aerospace Corporationによる図解。天宮1の軌道高度は120km程度で、高度80km程度まで降下したところで分解し、大きな破片は幅70km、長さ2000kmの区域のどこかに落下する。

残念ながら2年前から宇宙ステーションは地上からの指令に反応しなくなった。つまり制御された落下は不可能になった。落下日時が推定されたのは数ヶ月前だ。

テレメトリーが作動していないので、天宮1の現状は外部からの観察に頼るしかない(ドイツのフラウンホーファー研究所のレーダー画像)が、不確定要素が多数あるため正確は予測はできない。24時間程度の誤差で落下予測が可能になったのは先週のことだ。

天宮1の落下を目撃できれば大型隕石が大気圏に突入するときのような火の玉が出現するだろう。宇宙ステーションが上層大気と衝突してランダムに旋転し、分解、炎上するところは中国の宇宙機関の表現によれば「壮大な」宇宙ショーになるはずだ。おそらく1分以上目視可能だろう。

落下が近づくにつれて予測精度はさらに改善される可能性があるので、新たな情報があれば記事をアップデートする。

画像:Fraunhofer

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

アメリカで売る前に袋叩きのHuaweiは、それでもまだこの大市場を諦めない

ぼくがHuaweiの旗艦製品の説明を受けた最後の二度は、おかしなことが起きた。同社のアメリカでの流通計画に対する大きな障害物がある、というニュースが発生したのだ。最初のはCESの真っ最中だったが、AT&Tが手を引いた。次は大画面のスマートフォンP20のローンチ直前に、Best BuyがHuaweiを切る決定をした。ただしHuaweiによると、P20はアメリカで売りたい機種には含まれていない。

この中国のハードウェアメーカーがまさにアメリカでかなりのプレゼンスを確立しようと努力しているそのときに、相次いでそんなことが起きた。しかし米国政府による拒否の余波が広がる中で同社は、逃げも隠れもしないと意地を張っている。

CNETに宛てたメールで同社の消費者部門のCEO Richard Yuは、その強気を再確認した。“われわれはワールドクラスの製品とイノベーションをお届けすることにフォーカスし続けることによって、アメリカ市場とアメリカの消費者の信頼を勝ち取りたい。われわれがその信頼を裏切ることは、決してない”、とYuは主張する。

YuはAT&Tとの契約が破談になったときも、CESのステージで同じ気持ちを述べたが、今回はそのときほど激しい口調ではない。Yuの再説はもっぱら、アメリカのさまざまな安全保障部門からの度重なる警告はあったけれども、この騒動全体が度外れである、という主張の繰り返しだ。

“安全保障のリスク云々は根拠のない疑いに基づいており、率直に言って不公平である”、とYuは付け加える。“それらが事実に基づいている主張なら、オープンで透明な議論を歓迎したい”。

これらの主張が同社の意図を表しているとしても、この世界で三番目に大きいモバイル市場にHuaweiが食い込むのは、相当に厳しいだろう。アメリカではスマートフォンを通信企業(電話会社)から買うことが多いが、同社が頼みにできるキャリアは存在しない。しかもアメリカ最大の量販店にフラレたことは、傷口に塩である。

そして今後同社が起死回生に成功したとしても、国防総省の警告があるかぎり、アメリカの消費者に売るのは難しい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Intelは今年後半に発売するチップにSpectreとMeltdownのハードウェアレベルの対策を導入

SpectreとMeltdownはハードウェアの設計レベルのバグなので、簡単なパッチなどでは修復できないことが明らかだった。しかし幸いにも、これらに対して十分な時間を投ずることのできたIntelは、今年後半に発売する新製品のチップに、その欠陥からユーザーとアプリケーションを保護する、ハードウェアのアーキテクチャレベルの改良を盛り込んだ。

このニュースは、CEOのBrian Krzanichが同社のブログ記事で発表した。パートナー数社に対する感謝の言葉に続いて彼は、過去5年以内の感染製品に対しては、それらの動作をバグから守るソフトウェアのアップデートを行った、と述べている。もちろんその効果に関しては議論の余地があるし、パフォーマンスへの影響も無視できないが、なにしろ一応、バグフィックスがあることはある。

本当は、互いにやや関連するバグが三つある: Spectreには変種1と変種2と変種3があり、研究者たちは変種3をMeltdownと呼んでいる。いちばん対策が難しいと思われているのが変種1で、Intelにもそれに対するハードウェアのソリューションはまだない。しかし変種2と変種3は、今回対応できた。

“プロセッサーのさまざまな部分の設計を変えて、変種2と3の両者に対して防御するパーティショニングにより、新たなレベルの保護を導入した”、とKrzanichは述べている。Cascade Lake Xeonと第8世代Coreプロセッサーにこれらの変更が含まれ、2018年の後半に発売される。現状では情報はまだ漠然としているが、リリースが近くなればIntelは大宣伝を開始するだろう。

なお、第1世代Coreまでさかのぼる古いハードウェアも、マイクロコードがアップデートされる。NehalemやPenrynをおぼえておられるだろうか? それらも、いずれはパッチされる。驚いた方もおられると思うが、大企業や政府機関ではまだまだNehalemのシステムが使われている。たとえばエネルギー省のどこかでは、Pentiumの上で動くWindows 98SEシステムが今でも使われているだろう。

この発表に関してユーザーがすべきことは何もないが、コンピューターとOSを最新の状態に保つことは必ずやるべきだ。そして、分からないことがあればカスタマーサービスに尋ねよう。

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パソコン原始時代の名機Altairが現代にタイムワープしてきたAltairduino

Altair革命を懐かしく思い出す方は本誌読者の中にはおられないと思うが、われわれのような元祖コンピューターおたくは、あのころのクールな原始的コンピューターを思い出の中で美化せずにはいられない。1975年の1月にあの不思議な8800チップと対話するために売られたAltairは、キーボードもマウスもスクリーンもないのに、初めてのホームコンピューターとして使えた。元祖おたくにとって、それは天国だった。

そして今や、Altairのレプリカが売られている。スイッチもライトもケースも、完全に同じだ。そのAltairduinoはマイコンボードArduino Dueを使用し、初期のAltairを再現するのに必要なものが、すべて揃っている。

作者のChris Davisはミネソタ州のデベロッパーで、パーソナルコンピュータの歴史にのめり込んでいるうちに、実際にそれを作ってしまった。

“ずっと欲しいと思っていたけど、中古はあまりにも高すぎるし、エミュレータキットも今あるやつはものすごく高い。Hackster.ioでDavid Hanselのコードをたまたま見て、自分で作れることが分かった。さっそく作って、さらにもう一台作った。回路基板がすこし余っていたから、ネット上で何人かにあげた。希望者がとても多かったから、今度は売り物として作ることにした”。

そのキットは完全にオープンソースで、シミュレーターもある。まだDavisのプロジェクトは、終わっていない。

“Altair 680やKenbak-1も再現したい(後者はほぼ完成している)。紙テープを読むOAE OP-80Aも作りたい”。

彼はAltairのパワーには感動したが、この初期の奇妙なコンピューターで、昔のゲームをやろうとすると不満かもしれない。

“Doomはだめだけど、Colossal Cave Adventureはできるよ!”、と彼は言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Intel、Spectre脆弱性の新しい修正ソフトを公開――ユーザーの手元に届くには時間がかかる

IntelはSpectreの影響を取り除くための新しい修正パッチをを発表した。SpectreはCPUのハードウェア・アーキテクチャに起因する脆弱性で、メモリの内容が推測される可能性がある。Spectreは現在主流となっているほぼすべてのハードウェアに影響を与えているが、Intelが発表したパッチはSkylake(2015年後半出荷)以降の世代のCPUに対するものだ。

ただしパッチが一般のユーザーの元で効果を発揮するようになるにはかなりの時間がかかる。コンピューター(特にマザーボード)のメーカーのデベロッパーが修正パッチのコードをファームウェアに組み込む必要があるからだ。

1月にセキュリティー専門家によって発見されたこの脆弱性はアプリケーション、OS、カーネル、マイクロアーキテクチャなど各レベルで対処される必要があった。Intelのパッチはマイクロアーキテクチャに関するもので、現行のパッチを置き換えることになる。以前のパッチは不安定となる場合があることが指摘されていた。

モダンCPUの設計思想そのものに関連する脆弱性だけに、単純なワークアラウンドは存在せず、またメディアに大きく取り上げられ、強い圧力を受けた状態であったことを考えれば、最初のパッチにある程度不完全な点があることはやむを得なかった。しかしIntelは巨大企業であり、数ヶ月前から警告を受けていたのだから当初の対処は手ぬるいものだとしてIntelは批判を浴びた。

Spectre脆弱性に関しては常にそうだが、われわれエンドユーザーができることはあまりない。パソコンが最新の状態にアップデートされているか頻繁にチェックし、当然だが不審なコードを実行しないよう注意するぐらいだ。

読者のパソコンが旧型でSandy Bridge世代などのCPUを搭載しているのであればパッチの提供にはまだ少し時間がかる。現在はベータ版なので実験動物にはなりたくあるまい。

画像: Alice Bevan–McGregor/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

MITの新しいチップはニューラルネットワークを電池駆動のガジェットの上でも動かせる

MITの研究者たちが開発したチップは、ニューラルネットワークをスピードアップするとともに、その消費電力を最大で95%も引き下げる。その基本的なコンセプトはチップの設計を単純化して、チップ上の複数のコンピューター間のデータの行き来をなくすことだ。

MITの院生Avishek Biswasのチームが開発したこの新しい方法の利点は、ニューラルネットワークをスマートフォンや家電製品やそのほかの機会器具類の上で動かせるので、膨大な電力を消費するサーバーが要らないことだ。

それがなぜ重要なのか? つまりそうなると、このチップを使っている未来のスマートフォンは、高度な音声認識や顔認識などを、ニューラルネットワークやディープラーニングをローカルに動かして実行できる。原始的なルールベースのアルゴリズムを使わずにすむし、データをクラウドに送って処理の結果をもらうことも、する必要がない。

センサーがデータを集めている現場で、必要なデータ処理をすべて行うことを、‘エッジにおけるコンピューティング’、エッジコンピューティングと呼ぶが、それが一般企業のレベルで実用段階になりつつある。この新しいチップ設計の方法は、今成長中の機会がさらに商用化大衆化していくとき、業界に大きなインパクトを与えるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Nestは結局Googleのハードウェアチームに合流

GoogleがNestを、32億ドルで買収したのは2014年に遡る。NestはNest CamやNest thermostatを製造している会社だ。その時点では、GoogleはNestを独立して運営することを選択した。

どうやら、それが変わるようだ。

Googleのハードウェア責任者であるRick Osterlohは、本日(米国時間2月7日)の午後、Nestが、この先Googleのハードウェアチームと「力を合わせる」ことを発表した。言い換えれば、彼らは結局Google/Alphabetの傘の下にNestを巻き込むということだ。

Nestの担当者は、NestブランドがGoogle Homeブランドと並んで、Google内で引き続き使用されると語った。また彼らは、NestのCEOであるMarwan Fawazは、この先Rick Osterlohにレポートを上げるようになると語り、「大きな役割の縮小は予定されていない」とも語った(言い換えれば、この合流によって大人数の解雇は考えられていないということだ)。

これは、より多くのエンジニアを1つの屋根の下に集めることで、ハードウェア開発力を強化しようとしている、Googleの最新の動きである。ちょうど先週にも、同社はHTCのハードウェア事業の大部分を買収するために、11億ドルを費やす契約を行ったばかりだ。

以前からNestは(そして今朝の発表時点でも)そのプライバシーFAQの中で、Googleからの独立性を強調していた。すなわち、同社は「分離したマネジメントチーム、ブランド、そして文化を持っていて、独自の本社さえ所有しています!」と述べていたのだ。

この動きの噂は数カ月間続いていたが、最初のレポートが出たのは2017年の11月の事だった

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(翻訳:sako)

Intel、Xeon D-2100を発表――新CPUでエッジ・コンピューティングに対応

自動運転や産業用IoTセンサーなどの高度なテクノロジーが普及するにつれ、 エッジ・コンピューティングの強化がますます必要とされるようになった。つまりデータをクラウドに送って処理させるのが不適当なコンピューティング領域が増えてきた。データは収集されたその場でただちに処理される必要がある。わずかなレイテンシーであっても重大な問題を引き起こす可能性があるからだ。

今日(米国時間2/7)、Intelは新しいCPU、Intel Xeon D-2100を発表した。このチップは顧客のエッジ・コンピューティング能力を強化することを目的としている。またライバルの追い上げに対抗してエッジ・コンピューティングやIoTといった先端分野で先頭を走ろうとするIntelの戦略の一環でもある。

ネットワークの端、エッジにおけるコンピューティングには省電力と省スペースという特有の能力が必要とされる。新しいチップはこの要請に答えようとするものだ。たとえば、Xeon
DはSoC(System-on-a-Chip)というスタンド・アローン・システムだ。演算処理だけでなく、ネットワーク接続やストレージといったシステムを構築するために必要な能力がすべてチップ上に組み込まれている。また省電力性能も高い。これはデータセンターのサーバーとくらべて電力供給が制限されるエッジ・デバイスに用いるために必須の条件だ。

Intelのデータセンター・グループのバイス・プレジデント兼データセンター・プロダクト・マネジメント・グループのジェネラル・マネージャー、Jennifer Huffstetlerは新チップを紹介するブログ投稿で、この種のアーキテクチャーのニーズが高まっていることを指摘した。「データセンターの能力をエッジに向かって拡張するにあたって、サービスのプロバイダーはデータをネットワークのエンドポイント、つまりエッジ・デバイスそのもので処理するソリューションを提供しなければならない。これによりアプリケーションの処理におけるレイテンシーを減少させることができ、数多くのまったく新しいコンピューティング体験と応用分野を提供できる」と書いている。

またHuffstetlerはSoCについて、「単一パッケージに必要な要素がすべて組み込まれていることにより、セキュリティーが強化されたハードウェア・ベースのネットワークを構築することが可能となる」としている。Xeon Dは小さいパッケージだが、Skylake-server世代の Xeonコアを18個備え、 100Gbpsの暗号化、復号化、暗号化加速テクノロジーを内蔵している。IntelではこれをQuickAssist Technologyと呼んでいる。

Intelでは新しい5GネットワークでVR、AR体験が可能となるスマートフォンや自動運転車を設計する上でこのテクノロジーは決定的に重要なものになるとしている。VPNやソフトウェア・ベースのWANを作動させるにも役立つ。またCDNのようにネットワークのエッジに近い部分での性能が重要なクラウド処理の負荷分散にも効果があるという。

Intelでは新しいチップを利用するパートナーとしてDell、EMC、Ericsson、NEC、NetApp、Palo Alto Networksなど多様なサードパーティーと協力していく。

またSpectreとMeltdown脆弱性について、IntelではXeon Dチップには新たに開発したパッチを組み込んでいるという(Intelが発表した当初のパッチには不必要なリブートを起こすなどの問題があった)。

画像:Intel

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Intelの元社長が新しいチップ企業を立ち上げ、クラウド時代の高効率サーバープロセッサーを目指す

元Intelの社長Renee Jamesが作った新しいチップ企業Ampereが今日(米国時間2/5)、ステルス状態を脱して、その最初の製品、ARMベースの高効率なサーバー用チップを発表した。その想定ユーザーは、今日の肥大化したインターネットを支えるハイパースケールなデータセンターだ。

同社のその最初のチップは、カスタムコアのArmv8-A 64-bit serverで、運用速度は最大3.3 GHz、対応メモリー1TB、パワーエンベロープは125ワットだ。まだ価格は発表されていないが、Jamesによると、このチップの価格/性能比は、既存のいかなる高性能コンピューティングチップをも凌ぐ、ということだ。

今すでに、ほかに二つの製品を準備中だが、それらの発表はまだ先だ。

チップ企業を立ち上げるためには、大量のお金と相当なガッツを必要とするが、Intelに28年いたJamesには、この世界のもっとも有能な人材を集められるだけのコネクションがある。また資金的にはプライベート・エクイティ企業のThe Carlyle Groupが支えており、JamesはIntel退社後しばらく同社にいた。今日までの資金量は公表されていないが、なにしろ必要十分な資金は手元にある、という。

Ampereのマイクロプロセッサー。写真提供: Ampere

彼女が新しい企業を始めた動機は、プロセッサーの世界にはまだ誰もやってないことがある、と新たな機会とチャレンジを、一見成熟し飽和しているかのような市場に見抜いていたからだ。“新しい課題に挑戦してそれを実現しなくては、人間として何かをやったとは言えない”、と彼女は語る。

Jamesの目に映っているその新しい機会とは、多くのワークロードがクラウドへ移行するに伴い、これまでに作られたものよりもずっと効率の高い新世代のチップ技術が求められている、という底流的ニーズだ。そこで彼女は、高密度なチップを完全に新規に設計することにより、これまで得られなかった高いコストパフォーマンスと効率を低価格で実現しようとした。

2017年の前半に創業された同社はサンタクララに拠を構え、300〜400名の社員がいる。つまり彼女が言うように、それは“ガレージスタートアップではない”。チップは今、一部の顧客やパートナーたちがサンプリングしており、本格生産は今年後半に始まる。顧客企業の名はまだ明かされないが、パートナーにはMicrosoft, Lenovo, Oracleなどがいる。

そのチップの発表を行う予定だった1月に、Spectre/Meltdownバグが露呈した。Jamesも言うように、投機的実行を用いる現代的なチップは、どれもこのバグを免れることはできないが、しかしARMの被害は最小限であり、同社のチップを今年後半に発売するときにはパッチが組み込まれている、という。

チップの巨人たちに対抗するにはガッツが必要、と彼女も認めるが、しかしチャレンジから逃げる気はない。“画期的で新しいことをやろうとすると、‘そんなこと、どうやってやるんだい?’と言われる。これまでずっと、お前なんかにはできないよ、と言われたことばかり私はやってきた”、と彼女は述べる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa