Scanwellが新型コロナ抗体テスト検証を1000人規模で開始

家庭での新型コロナウイルス(COVID-19)抗体検査については、科学者や医療関係者の間でかなりの議論がある。抗体を持っている個人を認証して経済活動を部分的に再開するプロセスにおいて必要なステップだと言う人もいれば、現在利用できるテスト手法の精度と効果に疑問を投げかける人もいる。あなたがどちらの側につくにせよ、さらなるテストが必要なのは確かだ。そしてスタートアップのScanwellが家庭での抗体検査をそれなりの規模で検証する取り組みを始めた。その一方で同社は診断にかかる緊急使用承認についてFDA(米食品医薬品局)と協議を続けている。

Scanwellは家庭用の抗体テストキット1000個を無作為に抽出した市民に配布するのにノースカロライナ州、そしてローリー拠点のWake Forest Baptist Health(ウェイク・フォレスト・バプティスト・ヘルス)の協力を得ている。この検証には州議会が10万ドル(約1070万円)を拠出した。対象者はウェイク・フォレスト・バプティスト・ヘルスのシステムに登録された患者の中から選ばれ、指先から血液を採取するキットが年間を通して毎月郵送で届く。これはウイルスと抗体を追跡するためであり、統計学的により多くの人を対象とした調査の縮図となる。

今回のScanwellのテストは、まだFDAから緊急使用の承認を受けていないため、研究目的でのみ使用することができる。FDAはこれまでのところ、遠隔診療で使用されているものも含め、COVID-19に関するいかなる家庭用テストも承認していない。しかしつい最近、「家庭用も含め、安全で正確な新型コロナウイルステストの利用を拡大するのは公衆衛生上の価値がある」とガイダンスをアップデートした。そして診断サービスの企業などと提携してテストの開発に積極的に取り組んでいる最中だ、としている。

すでに家庭用の尿路感染症診断サービスを展開しているロサンゼルス拠点のScanwell Healthは先月、家庭用の血清抗体テストの使用についてFDAの承認取得に取り組んでいると発表した。このテストキットでは、診断ラボにキットが到着すればわずか15分で結果がわかる。しかし新型コロナウイルスにかかる抗体テスト全体の精度については疑問が投げかけられている。そしてウイルスに感染し、回復した人の感染後の免疫の状態や期間についてもさまざまな意見がある。

免疫や回復した人をよく理解することは、外出禁止を徐々に緩和する上で重要な材料となる。免疫テストはその中核を担う。既存の分子テスト手法での感染テスト、そしてAppleとGoogleが実施しているシステムのような感染追跡とともに、大規模で行われる必要がある。

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(翻訳:Mizoguchi

米食品医薬品局が製造コスト25分の1の新型人工呼吸器を認可

米国食品医薬品局(FDA)は、ミネソタ大学が設計した新しいタイプの人工呼吸器「Coventor」(コベンター)の製造を認可した。このプロジェクトは既存モデルと同等の生命維持能力をもつ人工呼吸器を大幅な低コストで量産できるようにすることで、必要としている医療機関が早期に安価で入手できるようにすることを目的にしている。

Coventorは、FDAの緊急使用許可(EUA)を取得した最初の新型人工呼吸器だ。緊急使用許可とはその名が示す通り、FDAが通常発行する伝統的な医療機器の認可と異なり、不足している必要機器を提供するために一時的に認可したり、全承認行程を経ずに行う緊急時の対応だ。

新型コロナ・パンデミックは近代の記録ではこの種の危機としておそらく最大の事例であり、COVID-19による呼吸器疾患の重篤患者の治療には、殆どの場合挿管あるいは人工呼吸器による補助が必要になる。増え続ける肺炎患者のために人工呼吸器は米国内外で供給不足が続いており、新しい設計の機器や他の医療用呼吸器具を改造して補完するなどいくつもの解決策が提案されている。

ミネソタ大学のCovnetorは、工学部と医学部の共同チームが開発した。卓上サイズの新型呼吸器は約1000ドル(11万円)で製造が可能で、原価で販売されれば、市価2万~2万5000ドルする現行の医療水準人工呼吸器を置き換える有力な候補になる。

医療機器メーカーのMedtronic(Teslaとも共同で人工呼吸器の製造計画を進めている)とBoston Scientific(今回の承認後にCoventorの製造、販売を担当する)の両社も設計に寄与した。ミネソタ大学は今日(米国時間4/15)、Coventorの仕様をオープンソース化し、世界中で製造できるようにすることも発表した。ただし他社が製造するためにはFDAまたは各国の公共保健機関の承認を得る必要がある。

画像クレジット:University of Minnesota

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

工事現場で対人距離監視と接触者追跡をするウェアラブルデバイス

以前に電気工事従事者の安全を守る専用ガジェットを開発したスタートアップが、新たな脅威、新型コロナウイルスから工事現場を守るニーズに応えようとしている。バンクーバーを拠点とするProxxiは、手首につけるウェアラブルデバイスの「Halo」を発売した。適正な対人距離として推奨されている6フィート(約1.8m)以内に別のバンドが近づくと振動で知らせるデバイスだ。

Proxxiは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続く中でも現場での作業は不可欠であり、しかも通知システムがなければ従業員同士が適正な距離を保つのが難しい業務でガイドラインを守るために、このデバイスを設計したと説明している。

このバンドは低電力Bluetoothを使ってほかのバンドと通信する。また、新型コロナウイルスの陽性患者が発生した場合に現場内での接触者追跡ができるように、どのバンドが接近したかも記録する。Proxxiによれば、プライバシーを保護するためにバンドは位置情報を追跡しない。また情報はバンド間で共有、またはProxxiに送信され、身につけている従業員の個人を特定する情報とは紐づけられない。

Estimoteの職場用接触者追跡ウェアラブルなど、同様の取り組みはほかにもある。Proxxiのアプローチは、アクティブな監視や周囲との適正な距離の通知を主眼としている点で他社と異なる。Estimoteのウェアラブルは、接触した可能性のある人に関するアラートを視覚的に提供するシステムに力を入れている。

ProxxiのHaloシステムは、簡単にすぐセットアップし、使い始めることができるという。また、スマートフォンとの接続や、スマートフォン経由でのセットアップも不要だ。

バンドの価格は100ドル(約1万7000円)で、5月4日に出荷を開始する。接触者追跡、および現場での対人距離に関するコンプライアンスと有効性の監視のために、モバイルアプリとウェブベースのダッシュボードが提供される。

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(翻訳:Kaori Koyama)

アップルがユーザーの移動データを公開、新型コロナで変化する都市をひと目で確認可能に

Apple(アップル)は、同社のマップアプリのユーザーから集めた匿名情報を元にしたデータを一般公開すると米国時間4月14日に発表した。このデータは「Mobility Trends Reports」として毎日更新され、マップアプリの中で行われたルート検索の回数の変化を見ることができる。マップはiPhoneの標準ナビゲーションアプリで自動車、徒歩、公共交通機関の3種類のモードがある。

アップルは、この情報がいかなる個人とも結びついていないことを強調している。マップアプリが移動データをユーザーのApple IDと関連付けることはなく、人がどこにいたかという履歴を保存することもない。アップルによると、マップで集めた検索ワードや個別の経路などのデータは、ランダムに変わる識別番号と結び付けられるだけで、その番号も定期的にリセットされる。この匿名集約データが提供するのは都市、国または地域レベルのビューだけであり、ある地区での歩行者、ドライバー、公共交通利用者の数の変化を、ユーザーがアプリを開いて道順を調べた回数に基づいて表現している。

Appleのインストールベースの大きさと、日々の通勤や移動のためにGoogleマップなどのサードパーティーアプリを使う人はあまりいないであろうことを踏まえるとある都市における外出回数の減少を確認するかなりよい方法だと考えられる。

このデータはアップルのウェブサイトで誰でも入手可能で、互換性の高いCSV形式でダウンロードできる。ウェブ上でも特定の地域を検索したり、その地域の全体的な傾向を見ることができる。

個人にとっては好奇心を満たす程度のことだろうが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を調査している都市や州、国の政策担当者にとっては、ソーシャルディスタンスや自宅待機、隔離命令などの拡散防止戦略の効果を確認するためにとても役立つだろう。

アップルはほかにも、Googleと共同でOSレベルの匿名接触者追跡システムを開発している。両社はまずデベロッパー向けのAPIを公開し、その後機能をOSに組み込み、公共保健機関のアプリと連携する。アップルは新型コロナ危機のために役立つことに対してとりわけ熱心であると同時に、そのための対策が個々のユーザーのプライバシーを侵害しないことにも腐心している。集団レベルで効果的な行動を起こす上では困難なバランスだが、アップルのリーチの大きさは、どんなツールを提供する上でも強力な優位性になる可能性がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

グーグルがPixelスマホとChromebook用の独自チップを準備中か

報道によると、Google(グーグル)はApple(アップル)の例に倣ってハードウェア分野を強化するために、将来のスマートフォンに搭載するカスタム設計チップを開発しているという。Axiosの記事によると、グーグルは自社製プロセッサを将来のPixelデバイスに搭載する準備を進めており、その中にはスマートフォンだけでなく、最終的にはChromebookも含まれている。

グーグルによる独自製品への注力は、成功と失敗が入り交じったものだったが、いくつかのPixelスマートフォンは、カメラソフトウェアや写真処理において高い評価を獲得している。しかし、同スマートフォンがこれまでは一般的なQualcomm(クアルコム)製プロセッサを採用してきたのに対し、アップルは長い間iPhone向けに独自のカスタムプロセッサ(Aシリーズ)を設計し続けてきた。AシリーズプロセッサはOSやアプリケーションに合わせてカスタマイズされパフォーマンスを発揮するいう意味で、アップルに優位性をもたらしている。

記事によると、グーグルの独自チップはコードネーム「Whitechapel」と呼ばれており、Samsung(サムスン)と共同開発され、同社の5ナノメートルプロセスが使用されている。内部には8コアのARMベースのプロセッサを内蔵するだけでなく、機械学習とGoogleアシスタントのための専用チップリソースが確保されている。

グーグルはすでにこのプロセッサの最初の動作可能なプロトタイプを受け取っているが、実際にPixelスマートフォンに搭載されるのは少なくとも1年後になるとされており、これはサードパーティ製プロセッサを搭載するPixelが、少なくとももう1世代登場する可能性が高いことを示唆している。レポートによると、チップは最終的にChromebookにも搭載されるが、それにはさらに時間がかかるという。

Aシリーズプロセッサの性能がIntel(インテル)の同等製品をスケールアップし凌駕していることから、アップルがいずれMac製品でも独自のARMベースプロセッサに移行するのではないかとの噂は、何年も前から流れていた。ARMベースのChromebookはすでに存在しているので、もしチップが期待に応えることができれば、グーグル側の移行は容易となるだろう。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

民間初の月面貨物輸送を行うIntuitive Machinesがその着地点と打ち上げ日を決定

民間企業として初めて、NASAに代わって月への科学機器輸送を担当するIntuitive Machines(インテュイティブ・マシンズ)が、着地点とミッションの目標日付を決定した。同社の月面着陸機、Nova-C(ノヴァC)は、Vallis Schröteri(シュレーター谷)と呼ばれる月面最大の谷への着地を目指している。そこは比較的平坦で十分な太陽光が当たり、着地を妨げる大きなクレーターや岩石はない。

Intuitive Machinesは2021年10月21日の打ち上げを目指しており、不可能だった場合のための予備日も決められている。同社はSpaceXと契約し、Nova-CをFalcon 9(ファルコン9)ロケットでNASAのフロリダ州ケネディ宇宙センターから発射する。このミッションではNASAの科学実験機器(有人月面探査を目指すアルテミス計画準備のための情報収集に使用される)だけでなく、商業貨物もいくつか運搬する。

Intuitive Machinsが本ミッションを与えられた商業月面輸送サービス(CLPS)プログラムの主目的は、NASAがアルテミス計画のための準備を行ったり資材を運ぶパートナーを民間企業の中から探すことにあり、そのパートナーがミッションの費用を負担してくれる他の民間組織を集めてくれることにも期待している。現在NASAは、Jim Breidenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官の下、公民連携を積極的に推進する方針を打ち立てており、宇宙の商業化を通じて費用対効果を追求している。

Nova-Cに積載される主要貨物の1つは、高精度自動着陸システムで、着陸機が月面の障害物を回避するために設計されている。これは2024年(NASAのアルテミス計画が延期されなければ)に人間が再び月面に降りるときにも利用される極めて重要なシステムだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アマゾンが新型コロナによる需要増加対応で7万5000人を追加雇用

Amazonは、既に過去4週間で10万人以上を新規雇用して、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的なパンデミックによる需要増加に対応しているが、米国で7万5000人のフルタイムおよびパートタイムの従業員を追加採用する。同社は米国時間4月13日のブログ記事でこの追加雇用について公表したほか、需要の急増に対応して給与支払いの総額を5億ドル(約538億円)以上に増額することも発表した。

同社はこの雇用によって、新型コロナ・パンデミックによる経済危機のために起きている失業や一時解雇の影響を少しでも緩和できることを期待していると語った。Amazonはこの雇用枠を「状況が正常に戻り、以前の雇用者が呼び戻してくれるまで」働きたい人の選択肢として位置づけている。

同社は新規および既存従業員の「安全、給与、福祉」のための投資を引き続き強化していくと語っている。オンライン小売の巨人はこの取り組みの詳細について、配送センターおよびWhole Foods店舗における体温検査、従業員へのマスクの配布、これらの実践の日常的監視の導入などを行うという。

Amazonの施設で働く人々は、さまざまな行動を起こして、会社の作業環境に対する抗議し、健康・安全面の行動規範の改善の訴えている。いくつかの倉庫では作業者はすでに新型コロナウイルス陽性を示しており、最近CEOのJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が配送作業員との結束を示すために訪れた施設でも感染者が出ている。

画像クレジット:Johannes EISELE / AFP / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

iPad Proのようなデザインの新iPhoneをアップルが準備中との報道

AppleはiPhone 11 Proに代わる新型のiPhone、そしてiPhone 11の新モデル、小型のHomePodと位置追跡タグを2020年秋発表する準備を進めているようだ。Bloombergが報じている。最上位スマホiPhone 11 Proの後継モデルは少なくともiPad Proに近いデザインとなりそうだ。現在の丸いエッジではなく、スクリーンとサイドはフラットで、Appleが3月に発表した最新iPad Proで導入した3D LIDARセンサーシステムも搭載する。

新iPhoneは「フラットなステンレススティールのエッジ」でiPhone 5のようなデザインとなり、大きいバージョンのスクリーンはiPhone 11 Pro Maxの6.5インチよりもわずかに大きくなる見込みだという。また、ディスプレイ最上部にあるフロントカメラ配置している「ノッチ」を小さくするかもしれない、ともしている。

一方、リアカメラに搭載さたLIDARトラッキングシステムではプロセッサーのスピードやパフォーマンスの改善が図られており、AR性能が大幅に向上しそうだ。Bloombergによると、プロセッサーの改善はAI性能のアップも意図しているとのことだ。

秋のローンチと発売を計画されている段階だが、現在の新型コロナウイルスパンデミックによる混乱で、一部は「通常より数週間後ろ倒しで」提供されることになるかもしれない、とのことだ。

その他の製品に関するアップデートは、新しいHomePodは現行モデルより50%小型で、2020年後半の発売が見込まれている。価格的には安価になり、新HomePodリリース時にはSiriの性能も向上し、Apple以外のストリーミングサービスもサポートするとBloombergの記事にはある。その他にはApple Tagがある。これはAppleが先日、意図せずその存在を明らかにしたもので、TileのようなBluetooth位置追跡アクセサリーだ。これも2020年発売されるかもしれないという。

さらに記事ではMacBook Pro、Apple TV、低価格のiPadとiMacのアップデートも準備中と言及している。Appleのハードウェアアップデートのサイクルを考えれば、驚くべきことではない。それらのリリースについて予定はなく、新型コロナウイルス(COVID-19)がこうした計画にどのように影響を及ぼすか、はわかっていない。

画像クレジット:Qi Heng / VCG / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

MITがアップルの「探す」機能にヒントを得て新型コロナ接触者追跡システムを開発

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大防止策のひとつとして、接触者の追跡がある。感染する機会があった人を保健当局が把握し、感染を広げる恐れがあるとその人に通知するものだ。接触者追跡は、感染拡大を抑えた世界の一部の地域では既に効果を上げているようだ。しかしプライバシー擁護派は、米国でこうしたシステムを実施することに大きな懸念を持っている。

プライバシーを守る接触者追跡システムの実施方法については、ヨーロッパの専門家グループによる分散方式など、多くの提言がある。米国では、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームが自動で接触者を追跡する新しい方法を考案した。みんなのモバイルデバイスから発信されているBluetoothの信号を利用して、個人をまったく特定せずに、接触した人とランダムな数字を結びつける方法だ。

このシステムは、研究チームが「チャープ(『さえずり』の意)」と呼ぶランダムな数字をモバイルデバイスが常に発信することによって動作する。チャープはBluetoothで発信される。これが重要だ。ほとんどの人のデバイスでBluetoothが常にオンになっており、また短距離の無線通信プロトコルなので誰かのチャープを受信したらそれはその人が比較的近くにいたのが確かであるからだ。

新型コロナウイルス感染症の陽性であると診断されたら、その人は過去14日間(接触感染のおそれがあった期間)に自分のスマートフォンから発信されたすべてのチャープをアップロードする。アップロードされたチャープは陽性と診断されたケースのデータベースに保存され、他の人はそのデータベースを調べて自分のスマートフォンが陽性の人のチャープを受信しているかどうかを確認することができる。もし一致するチャープがあったら、そのスマートフォンの持ち主は感染のリスクがある。陽性の人と約12メートル以内に近づいたことがあるからだ。検査を受けるべきかどうか、あるいは推奨される2週間の自己隔離をするかどうかの目安になる。

MITのシステムは、米国自由人権協会(ACLU)などのプライバシー保護関連団体が詳しく論じている、接触者追跡にまつわるプライバシー関連の厄介な問題の多くを完全に回避している。MITのシステムは位置情報をまったく使用しないし、個人を特定する診断やその他の情報とも一切結びつけられない。ただ、完全に個人の裁量に任されているわけではなく、コンプライアンスの観点からのリスクはあるだろう。MITは、陽性と診断された人に保健当局の担当者がQRコードを発行し、そのQRコードを使ってチャープの履歴をデータベースにアップロードすることを想定しているからだ。

MITのシステムは、人々のスマートフォンにインストールされたアプリで動作する。この設計は、紛失したMacやiOSデバイスを見つけたり、親しい人が持っているデバイスからその人のいる場所を知ったりするためにApple(アップル)が実装している「探す」システムからヒントを得たものだ。「探す」は、チャープを使って近くにあるアップルのハードウェアに位置情報をブロードキャストする。

MITリンカーン研究所のサイバーセキュリティ&情報サイエンス部門の担当主任でこのプロジェクトの共同主任研究員のMarc Zissman(マーク・ジスマン)氏は、ブログで次のように説明している。「このシステムは『探す』にヒントを得たものだ。もし私がスマートフォンをなくしたら、スマートフォンからBluetoothでランダムな数字のブロードキャストを始めることができる。それは広い海でライトを振るようなものだ。Bluetoothをオンにしている誰かが通りがかったとき、その人のスマートフォンが私に関して何かを知ることはない。ただアップルに『私はライトを見ましたよ』と伝えるだけだ」。

このシステムでは、陽性の人のチャープのデータベースを自動で調べ、検査を受けた方がいい人、あるいは自己隔離した方がいい人にアラートを送ることもできる。研究チームは、プライバシーを守りつつ保健当局のニーズと目的に合うよう、当局と緊密に連携してきた。

MITのチームは、この計画を広く実現するには次のステップとしてアップル、Google(グーグル)Microsoft(マイクロソフト)の協力が重要だと述べている。効果的に機能させるには、モバイルデバイスのプラットフォームとの緊密な連携が必要だ。将来的にiOSとAndroidの標準機能として提供すれば、広く普及するだろう。

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(翻訳:Kaori Koyama)

NASAは月面ロボット探査車隊に搭載する超小型科学装置のアイデアを募集

NASAのジェット推進研究所(JPL)は、アルテミス計画やその他の月面ミッションで使用する超小型月面探査車に搭載できる科学装置のアイデアの一般公募を開始した。このアイデアチャレンジは、クラウドソーシング・プラットフォームであるHeroX(ヒーローエックス)にて「Honey, I Shrunk the NASA Payload」(ねえ、NASAのペイロードを縮めちゃったよ)と、31年前の映画「ミクロキッズ」(原題「Honey, I Shrunk the Kids」)のタイトルを現代風にもじった見出しで公開されている。求めているのは、最大で100×100×50mm、または「新しい石けんぐらいの大きさ」の装置だ。

なぜこんなに小さくする必要があるのか?NASAは、かつて大型ロケットと大型オービターと大型着陸船でのみ実現できた科学調査を以前では不可能だった短い周期で、ずっと低コストで行いたいと考えているのだ。人類の月着陸とその後の居住までの長い道のりを整備し、補給ミッションの費用を賄うために「月の資源を利用する実用的で経済的な方法」が必要になるとNASAは話している。地球の周回軌道を回る国際宇宙ステーションへの輸送ですら、すでに高額な経費が掛かっているが、はるか遠いまでとなるとそれは天文学的な数字に膨らんでしまう。

目標は、超小型探査車を早急に運用可能にして、1年から4年以内に月に送り込むことだ。JPLは、国際的コミュニティーの専門知識や経験を借りて、既存の材料と技術でどこまで可能かを探りたいと考えている。今回のアイデアチャレンジは、あくまでコンセプト段階のデザインを募集するものだが(賞金として準備されているのは16万ドル=約1700万円)、長期的にはそれを出発点として実際の技術的パイプラインを構築し、月面探査車にその技術を採り入れ、月に送り込む計画だ。

チャレンジには簡単に参加できる。応募した内容の権利、つまり知的所有権はすべて応募本人に帰属する。ただし、最終選考まで残った際には、アメリカ政府が適切と判断したいかなる目的にもそのアイデアを使えるよう許諾する事実上永久的なロイヤリティーフリーのライセンス契約を、新たに米政府と結ぶことが条件となっている。

もし、宇宙のルンバに搭載できるミニサイズの環境センサーとデータ収集装置のアイデアをお持ちなら、このJPLのアルバイトを除いて、NASAの深宇宙探査計画に貢献できる道はない。もし、そのアイデアが本当に優れている場合だが。

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(翻訳:金井哲夫)

米疾病対策管理センターは社会に必須のインフラ従業員に「コロナ疑いがあっても無症状なら業務継続すべき」

米CDC(疾病対策管理センター)は新型コロナウイルス(COVID-19)流行抑制に関するガイドラインをアップデートした。これにより「社会に必須のインフラ業務」に従事する人々については新型コロナウイルス患者に接触した後の予防的隔離が緩和される。 これは多数の労働者、特にギグエコノミーやテクノロジー企業の社員に大きな影響を与える可能性がある。

新ガイドラインは、新型コロナウイルスにさらされた可能性のある従業員の隔離を緩和し、以前のように自宅での隔離を強制するよりむしろ職場での予防策の徹底に重点を置いている。

CDCの発表によれば、新ガイドラインは「社会的に重要な機能の継続を確保する」こと目的としている。CDCは、社会的に必須な業務に従事している人々の場合、新型コロナウイルスにさらされた可能性があっても無症状であるなら職場に留まって業務を継続すべきであるとしている。「さらされた疑い」は家族が新型コロナウイルスに感染した場合、または感染したか感染の疑いがある人々から2m以内にいたことが確認された場合を含む。

もちろんCDCはそうした人々が通常どおり勤務していいと助言しているわけではない。 この種のリスクにさらされた人々は勤務に就く前に検温と症状の有無の確認の必要があり、自身でも健康状態に注意を払わねばならない。また少なくとも14日間、勤務先でマスクを着用する必要がある。適切な防護機能を備えたマスクが品不足のために入手できない場合は布マスクでもよいという。また他の従業員から物理的に距離をとる必要があり、使用したり接触した器具等は定期的に消毒される必要がある。

CDCはさらに雇用者に対して「勤務中に体調の悪化があった人々はただちに帰宅させること、 症状が現れる前の2日間にさかのぼって接触した可能性のある人のリストを報告すること」を求めている。

CDCのガイドラインの変更は、水曜日のホワイトハウスのコロナウイルス・タスクフォースの記者会見で発表され、インフラを機能させるために必要な措置だとされた。「新型コロナウイルスの流行中、社会的に必須な重要サービスの中断を防ぐことは極めて重要だ」とホワイトハウスは考えている。新ガイドラインは、常勤社員だけでなく「契約社員」にも適用される。これはAmazonのフルフィルメントセンターの従業員やInstacart、Uber Eatsなどの宅配サービスの配送スタッフなどが含まれるのだろう。

ガイドラインのアップデートに先立って、新型コロナウイルスに関連した多数の労働問題が起きていた。これには労働条件に対する契約労働者の抗議ストライキ重要なサービスの中断などが含まれている。

画像クレジット: CHRIS DELMAS/AFP / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

NASAが2022年の月への貨物輸送にMasten Space Systemを指名、同社の月着陸船XL-1と連携

NASAは月面探査プロジェクトのパートナーとして、Commercial Lunar Payload Services(商用月輸送サービス、CLPS)参加企業の中から、カリフォルニア州モハベを拠点とするMasten Space System(マステン・スペース・システム)を指名した。同社はNASAの依頼を受けて、科学以外および技術機器など8つの積載物を2022年に月の南極に運ぶ。

Mastenは、CLPSプログラムの下で月輸送契約を結んだ4番目の会社であり、NASAは2019年5月に、Astrobotic(アストロボティック)、Intuitive Machines(インテュイティブ・マシンズ)、Orbit Beyond(オービット・ビヨンド)の3企業が月への積載物輸送を担当すると発表した。その後Orbit Beyondは契約を取り下げたが、AstroboticとIntuitive Machinesは今も、各社が製作した着陸船を使って来年それぞれの貨物を運ぶことを目標にしている。

今回のMastenとの契約は、CLPSプログラムの他の企業と同じく、月面に再び人間を送り込むNASAのプログラムであるアルテミス計画の一環だ。同プログラムでは恒久的な科学調査基地を設置し、究極的にはそれを火星やその先へと人間を送り込む足場として利用する。NASAはCLPSプログラムを通じて行っているような官民提携によって、月や火星のミッションを可能にするとともに、旅客輸送への商業的関心を引くことに焦点を合わせている。

Mastenの契約金額は7590万ドル(約82億7264万円)で、そこには積載物運搬作業すべてと、同社の月着陸船であるXL-1との連携が含まれている。月に着陸した後も最低12日間作業を続ける必要がある。XL-1が運ぶ貨物の中には、月面温度や放射能の測定とマッピング、水素その他水の存在を示す気体を検知するための機器がある。

Mastenが開発したXL-1は、その革命的デザインで2009年にNASAの100周年記念ノースロップ・グラマン月着陸船 Xプライズ・チャレンジに参加して優勝した。さらにMastenは、何種類もの垂直離着陸(VTVL)ロケットをNASAに代わって開発・飛行させており、テスト機のXaeroもその一つだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Rocket Labが使い捨てElectronロケットのヘリでの空中キャッチに成功

Rocket Labは使い捨て用に設計されたたロケットを降下中に回収する方法を開発している。米国時間4月7日、同社は空中捕捉プロセスのカギとなる部分を実証するためのテストに成功したと発表した。予告なしに公開された動画にはヘリコプターがElectronロケットを空中でキャッチするところが撮影されている。

ロケットは打ち上げ後、大気圏外で衛星を搭載したキックステージ段を切り離し、大気圏に再突入する。回収プロセスのカギはElectronの1段目に誘導システムを搭載して操縦する点にある。これによって再突入角を調整し、1段目が大気との摩擦で損傷することを防ぐ。その後、1段目はパラシュートを展開して降下する。ヘリコプターが降下するロケットを空中でキャッチし、機体から吊り下げてRocket Labの発射基地に戻る。

今回公開されたRocket Lab空中キャッチのテストは、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行にともなう社会的隔離の実行が要請される前の3月に実施されたものだ。同社はElectronの1段目と形状、重量が同等のダミーを使い、ニュージーランド沖の洋上でヘリコプターから落下させた。1段目がパラシュートを展開すると2機目のヘリコプターが落下地点に急行し、高度約1500メートルでダミーをキャッチした。

Rocket Labは再突入部分の回収システムのテスト2019年12月に開始していた。打ち上げテストを2019年12月と2020年1月に行っている。どちらの打ち上げでもロケットには誘導とナビゲーションのシステムが搭載され、データが収集された。2度目の打ち上げではロケットには、大気圏への再突入角度を調整して降下速度を遅くするシステムも搭載されていた。

重要なプロセスが意図した通りに機能することが証明されたため、実際に第1段を回収するという次のステップに進むことになったわけだ。Rocket Labではさらに次のステップとして第1段を実際に操縦し、パラシュートを展開させるテストを2020年後半に予定している。ただしこのテストでは空中キャッチは行われない。Rocket Labでは1段目を着水させた後、洋上で回収する計画だ。ロケットは地上施設に戻され、再利用可能な状態に整備される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

PlayStation 5のDualSenseコントローラーはゲーム用アクセサリーの未来を告げる

Sony(ソニー)がPlayStation 5のコントローラーのデザインを明らかにした。それは、好評だったDualShock(デュアルショック)系列の後継機で、その新世代機の名前としてDualSense(デュアルセンス)と呼ばれる。

そのデュアルセンスコントローラーは黒と白を身にまとい、ゲームパッドというよりは、未来的なプラスチック製装甲ロボットの装具のようだが、それでもなお、デュアルショックの名残は明らかにある。とくにボタンのレイアウトは、代々のPlayStationでおなじみのものだ。しかしデュアルセンスには触覚的フィードバックがあり、Sonyによると、これによりゲームの没入感覚がより高度になる。

触覚的フィードバックは、現世代のコントローラーの、かなり一般的で特定の原因のない低周波ノイズを抑えるための改良だろう。またソニーはさらに、新しいL2とR2に加えた「アダプティブトリガー」(adaptive triggers)によって、前よりも触覚的なレスポンス(応答性)を加え、そのためにゲーム内のアクションを実行しているときに、いろいろ異なった種類の張力応答がある。たとえばその例のひとつが、「弓を引いて矢を射る」という応答だ。

そのため、外見はデュアルショック 4よりややずんぐりしていて、アダプティブトリガーのために内部のスペースが必要になっている。でもソニーによると、デザインを変えて部品の角度を変えるなどの工夫で、コントローラーを手に持ったときの感じは見た目よりずっと軽いそうだ。

このコントローラーは専用の「Share」ボタンがなくなり、新たに「Create」ボタンができた。それは、前の機能+αだと思うが、ソニーからの詳しい発表はまだない。

  1. ps5g1

  2. ps5g2

  3. ps5g3


一方、新たに設けられた内蔵マイクにより、ヘッドセットの要らない音声チャットができる。ただしこれは正規の入力として使われるのではなく、単に「あると便利」という機能のようだ。なぜならソニー自身は依然として、長時間のプレイにはヘッドセットを勧めている。

あえてルックスだけに限定して見れば、ソニーは明らかに、これまでのコントローラーのおとなしい黒から、もっと大胆なデザインを目指したようだ。ツートンカラーのストームトルーパーのような基本色に、中央タッチパッドの両側のライトバーが色どりを添えている。

個人的にはこのルックスは好きだし、またUSB-Cのポートは充電状態をチェックできるので良い。PS5本体にそれほど関心があるのか、自分でもよくわからないけど、コントローラーは非常にそそる。アップグレードが待ち遠しい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Relativity Spaceは3Dプリントとクラウドベースのソフトウェアで新型コロナの嵐をやり過ごす

他のどの業界とも同様に宇宙関連の若いスタートアップや企業でも、新型コロナウイルス危機の煽りを受けてレイオフが相次いでいる。しかし、Relativity Space(レラティビティー・スペース)は、なんとかレイオフを回避できた。それどころか、世界的パンデミックにも負けず、新規に従業員を雇用している。RelativityのCEOで創設者のTim Ellis(ティム・エリス)氏は、大型3Dプリントと、クラウドベースのツールとテクノロジーの導入にフォーカスしたことが、会社を苦境に追い込まなかった大きな要因だと話している。

Relativityが間もなく完成させるロケットは、エンジンから胴体、さらにはその中間にあるものまで、ほとんどが3Dプリント部品で構成されるため、基本的にほぼ途切れることなくプロトタイプの製造を進めることができた。Relativityは、航空宇宙と防衛に携わる企業の例に漏れず、必要不可欠な事業と認知されているのだが、相当早い時期から新型コロナウイルスの潜在的な危険性に対処し、従業員の健康と安全を確保すべく手を打ってきたとエリス氏は言う。米国でこの病気が問題視され始めた3月9日、公式な規制や自宅待機の要請が出される以前に、Relativityでは早くも従業員に自宅勤務を勧めていた。

「それができたのは、一部には私たちの自動プリント技術のおかげです。工場にはごくごくわずかな人間しかいませんが、それでもプリンターを動かし続けることができます」とエリス氏はインタビューで話してくれた。「現に今はたった1人で数台のプリンターを見ていますが、実際にプリントが行われています。文字通りワンマン運転です。その一方、この2週間ほどの間に、会社の業務の大半を自宅で処理できるようにしました」。

たった1人の現場担当者で工場全体を管理できる能力は、現在の状況において、競争上、非常に大きな強みであり、同時に従業員の健康と安全を大切に守る方策でもある。エリス氏によると、同社はすでに複数の地域で業務を行っているという。ケープ・カナベラルとフロリダに加えて、ミシシッピ州のジョン・C・ステニス宇宙センターとロサンゼルス本社だ。Relativityではまた、米国内の離れた場所からも数名の従業員がテレワークしている。同社は早くから、全員が一箇所に集まらなくてもデザインや開発が行えるように体制を整えていたのだ。

「私たちはワークフローを円滑にするために、独自のソフトウェアツールを開発しました。それが大変に優れています」とエリス氏。「しかも、ITAR(国際武器取引規制)と複数の暗号プロトコルに準拠しつつクラウドに深く対応した企業ということだけでも、本当に有利なのです」。

自社開発のソフトウェアとクラウドベースのツールに集中したことに加え、エリス氏は、一番新しい資金調達ラウンド 、 2019年10月にクローズした1億4000万ドル(約152億円) のタイミングも、新型コロナウイルス危機への備えに貢献したと考えている。Relativityはレイオフを回避し、新たな求人も開始しただけではない。パートタイムも含め、全従業員に給与を全額支給し続けている。これはすべて、今思えば先を見通したビジネスモデルのおかげなのだが、現在の国際的ビジネス状況におけるこの目覚ましい優位性は、実際のところ単に幸運の賜物だとエリス氏は言う。それでもこれまでのRelativityの回復力は、一部には新型コロナウイルスのパンデミックに起因する大きな永続的変化の現れだと彼は信じている。

「それによって本当に変わるもの【中略】は、国際的なサプライチェーンへのアプローチです」と彼は言う。「もっと多くのものを米国内で生産して、サプライチェーンの過度なグローバル化への依存を減らそうという圧力が高まると思います。私たちがずっと3Dプリンターを使ってきたのは、そのためでもあります。それは、ごくわずかな作業員で、今のような状況下でもロケットの第1段が作れてしまう自動化のテクノロジーというだけではありません。サプライチェーンに関して言えば、限られた数の供給業者と、いくつもの製造方法からなる簡素なサプライチェーンを持つことで、供給業者やサプライチェーンの停止による大打撃を大幅に減らせるのです」。

新型コロナウイルス危機が、2021年に最初の3Dプリントロケットを飛ばすという予定を含めた打ち上げスケジュール全体に、どこまで影響を与えるかはまるで予測できないが、テレワークと社会的隔離指示に難なく添える製造ラインで多くの業務がこなせるとエリス氏は期待している。ジョン・C・ステニス宇宙センターのエンジン試験場といった提携施設が閉鎖されれば、確かに打撃にはなる。だがRelativityの回復力は、この危機的状況が去ったあかつきには、あらゆる種類の製造業の模範となるだろう。

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceXの初期型Dragonカプセルが最後となる20回目のミッションを完了

SpaceX(スペースX)は2012年にNASAに代わって貨物輸送ミッションを開始し、それ以来国際宇宙ステーション(ISS)への補給を続けてきた。そして現在、最初のミッションから使用されているバージョンのDragonカプセルが、米国時間4月7日の火曜日午後に予定どおりISSから帰還して大西洋に着水、引退した。

これはCRS-20こと、スペースXによるNASAのための20回目となる商用補給ミッションが完了したことを意味する。Dragonは3月7日にケープ・カナベラルから打ち上げられた後、3月9日からISSにドッキングしていた。またこれは、ISSの宇宙飛行士が操作するロボットアームの補助によりDragonがドッキングした最後の機会となった。Crew Dragonを含む新しいDragonでは、ISSへのドッキングに自動プロセスが採用される。

今回使用されたDragonは帰還に先立ち、地上の研究者が調査するための実験材料や結果を積み込んでいた。このカプセルは以前にもCRS-10とCRS-16の2回のISSへの飛行ミッションを経験しており、今回の引退飛行は補給船にとってハットトリックとなっている。

スペースXの次のミッションは5月中旬から下旬に予定されている、初となる乗員を乗せたDragonによるISSへの飛行となるDemo-2だ。もちろん貨物輸送ミッションも継続され、次回は2020年10月に暫定的に予定されている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

IoT接続用の衛星コンステレーションを展開するMyriotaがシリーズBで21億円を調達

モノのインターネット(IoT)に、人工衛星によるインターネット接続を提供するMyriotaが、HostplusとMain Sequence VenturesがリードするシリーズBのラウンドで1930万ドル(約21億円)を調達した。これにはBoeing(ボーイング)と元オーストラリア首相Malcolm Turnbull(マルコム・ターンブル)氏、Singtel Innov8などが参加した。同社の調達総額はこれで3700万ドル(約40億3000万円)になり、軌道上にはすでに4つの衛星がある。計画では、新たな資金を基に2022年までには衛星数を25に増設する。

Myriotaは、IoT向けに衛星への直接接続をローコストで提供する。それは主に機器装置類のモニタリングのような産業的利用や、地下水の水位測定のような環境保護活動で利用されている。オーストラリアのアデレードに本社を置く同社は、独自の技術で低コストのIoT通信技術を開発し、それはバッテリー寿命やセキュリティ、拡張性、および費用の点で既存のソリューションに優ると主張している。

今回の資金で同社は、次の2年間ほどで社員を5割ぐらい増やし、国際市場へのさらなる進出を目指したいと考えている。また同社のすべてのプロダクトに、リアルタイムレポート作成を可能にする製品の構築にも注力していく。

Myriotaの拡張プランは既に始まっており、最近は同社と同じく宇宙テクノロジー企業であるカナダのexactEarthを買収した。それにより同社は軌道上の衛星4つと新たな社員、そしてカナダ、米国、ノルウェー、シンガポール、パナマおよび南極にある計6つの地上局を入手した。

Myriotaは、50基のIoT用衛星コンステレーションを作ってグローバルな規模とサービスを提供することを目標としている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Swarmが米国での衛星インターネットサービスに関する承認をすべて取得

2018年に衛星スタートアップのSwarm(スワーム)がFCC(米国連邦通信委員会)の規則に違反して複数の衛星を打ち上げていたことが判明したが、異例の形でステルスモードから抜け出した。規制当局は当時、同社の衛星はほとんどのCubeSat(超小型衛星)よりも小さく、また既存の技術では確実に追跡できないサイズだと主張していた。2年後となる2020年、Swarmは米国で商業サービスを開始するために必要な規制のハードルを、すべてクリアしたと発表している。

2019年にSwarmは、当初のコンステレーションで計画していた150機の衛星と最大600機の衛星を打ち上げる許可をFCCから認証され、衛星から地球へのデータ送信に必要な無線周波数帯を使用する許可を得ていた。さらに同社は英国やニュージーランド、ドイツ、スウェーデン、南極大陸、国際水域での事業を行うための規制当局の承認を追加して得ている。また米国や英国、南極大陸、ニュージーランド、およびアゾレス諸島では地上局の設置許可を得ており、2020年中にはさらに多くの設置許可を得る予定で、すべてが計画どおりに進んだ場合、夏の終わりまでに地上局のネットワーク全体が30拠点に到達する予定だ。

Swarmの最終的な目標は、海上や地上の物流の追跡、農業などのIoTアプリケーションや、地上のインフラが不十分な地域での基本的な通信サービスに適した手頃な価格の衛星インターネットネットワークを世界的で提供することだ。現在、すでに軌道上にある9基の衛星を使ってサービスが開始できる段階にあり、さらに多くの国での運用をカバーするために、規制当局の認可を拡大している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Modernaに続きゲイツ財団が支援するInovioの新型コロナのワクチンが臨床試験へ

米国時間4月7日、FDA(米国食品医薬品局)は新薬臨床試験(IND)プログラムに基づいて新しい新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンの候補を承認した。これにより直ちにINO-4800 DNAワクチンの臨床試験のフェーズ1が開始される。

開発元のバイオテック企業 InovioではINO-4800 DNAワクチンをボランティア被験者に接種する計画で、動物実験では免疫反応の増加が示されるなど有望な結果が得られている。

InovioのDNAワクチン候補は、特別にデザインされたプラスミド(細胞の核外に存在するDNA断片)を患者に注入する。プラスミドを受け取った細胞における、特定の感染源を標的とする抗体生成を増強させるのが目的だ。DNAワクチンは、獣医学においては各種動物の感染症に対して承認を受け、頻繁に利用されているが、人間への使用はまだ承認されていない。

Inovioの新型コロナウイルスのワクチン開発はゼロから始まったわけではない。これまでにも同社はMERS(中東呼吸器症候群)のDNAワクチン候補のフェーズ1臨床試験を完了し、有望な結果が出している。被験者は高レベルの抗体生産を示し、効果は長期間持続している。

Inovioには優れたスケールアップ能力があり、フェーズ1およびフェーズ2の試験を実施するためにわずか数週間で数千人分のワクチンを製造することができた。同社はこの実験にあたってMicrosoftのファウンダー、Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏が創立したBill and Melinda Gates Foundationからの支援を受けている。プロジェクトには他の非営利団体からの資金提供もあった。Inovioでは「 臨床試験が成功した場合、追加試験と緊急使用(承認が必要)のために今年中に100万回分のワクチンを準備できる」と述べている。

INO-4800は、FDAから臨床試験のフェーズ1の承認を受けたたワクチンとして2番目となる。我々も報じたとおり、 Modernaも2020年秋の限定実用化を目指して臨床試験を行っている。Inovioの臨床試験に参加する40人のボランティアはすべて健康な成人で、ペンシルベニア大学フィラデルフィア校のペレルマン医学部、あるいはカンザスシティの製薬会社、Center for Pharmaceutical Researchによってスクリーニングされる。 フェーズ1の試験は向こう数週間続けられ、夏の終わりまでまでに被験者の免疫反応、副作用の有無に関するデータが得られるものと同社では期待している。

新しいワクチンの広範な使用の承認が得られるまでには、1年から1年半以上かかるのが通例だが、新型コロナウイルスに対するワクチンの臨床試験開始のペースは並外れて速い。あまり長く待たずにすむことを期待しよう。

画像クレジット:Alfred Pasieka / Science Photo Library / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

米国では新型コロナ対策で睡眠時無呼吸用の装置を改造して人工呼吸器の不足に対処

米食品医薬品局(FDA)は、従来とは異なる解決策に対する必要性が高まるなか、同局の方針と規制を適応させるよう取り組んできた。つまり、新型コロナウイルス(COVID-19)患者の治療に必要な医療機器の不足などに対応するためだ。カリフォルニア大学バークレー校と同サンフランシスコ校、さらには実働中の病院に所属する医師、エンジニア、医学研究者のグループは、人工呼吸器不足に対応する独創的な解決策を考案した。それがFDAの緊急使用許可(EUA)の基準を満たすことを願っている。これまでほとんど使われずに放置されていた、どこにでもあるハードウェアと、備蓄されている医療用呼吸器具によって解決しようというもの。

このグループには、肺疾患専門医、医学および工学の教授、その他多くのメンバーがいる。自らを、COVID-19 Ventilator Rapid Response Team(COVID-19人工呼吸器緊急対応チーム)と名乗っている。睡眠時無呼吸症候群の治療に一般的に使われている既存のCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)マシンを改造して、一種の人工呼吸器として利用する方法を編み出した。人工呼吸器は、ICU内で重度の新型コロナウイルス患者の呼吸を維持するための挿管に必要とされている。

睡眠時無呼吸用の装置は、自力で呼吸できない患者が継続的に使用するようには設計されていない。基本的に、睡眠中に患者の気道が塞がれないようにし、酸素レベルを維持して、望ましくない目覚めやいびきを防ぐもの。このCPAPの改造に取り組んだグループは、挿管に使用できるチューブを使用して、ハードウェアを適合させることができた。主導的な役割を果たしたのは、ベイエリアの3つの病院のICUで、肺の疾患を専門とする救命救急医、Ajay Dharia(アジャイ・ダリア)博士と、カリフォルニア大学バークレー校の工学系の大学院生だ。

すでにFDAは、緊急の必要性がある場合には、もともと人工呼吸器として設計されていない呼吸装置の使用を検討するよう、医療施設や専門家に促すガイダンスを発行している。これだけでも、人工呼吸器緊急対応チームのアプローチは一歩先んじたものだったことになる。それでもチームは、当局からの緊急の認可をさらに求めている。というのも、大量の機器を改造するには、サプライヤーやメーカーと大規模に協力することが必要だからだ。

さらにチームでは、現在使われていないCPAP、つまり睡眠時無呼吸症候群用の装置を寄付してくれるよう、個人や組織に協力を求めている。それを改造して、人工呼吸器を作るためのベースのハードウェアとして使うためだ。興味のある人は、チームのウェブサイトで、さらなる情報をチェックしてみよう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)