AWSが日/週/月ベースの予約制インスタンスを割引料金でローンチ

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AmazonのクラウドコンピューティングプラットホームAWSが今日(米国時間1/13)、新しい料金制を導入し、それを使うと、一日に一定の時間だけ、とか、毎月一定の日だけとかに自分のクラウドアプリケーションを動かす必要のあるユーザが、AWSのサービスをより使いやすい料金で利用できる。

その新しい料金制はScheduled Reserved Instancesと呼ばれ、AWSのユーザはインスタンスを、日ベース、週ベース、あるいは月ベースで、一定の時間だけ予約し利用できる。そのためには、下図のような入力フォームにスケジュールを記入するだけだ。

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予約期間の単位は1年だが、その代わり標準のオンデマンドの料金の5〜10%の割引料金になる。

割引率は、一般的にAWSの利用が混みあう時間帯は5%、週末など比較的ひまな時間帯は10%となる。

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この新しい料金制は、当面、US East(North Virginia), US West(Oregon), EU(Ireland)の各リージョンでしか利用できない。

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これは、なかなかうまいやり方、と言えるだろう。クラウドのワークロードはむらが多いからね。でも、週日の午後だけに何かの計算をしたい、とか、月初に課金の計算をするだけ、なんてときに、インスタンスをフル契約するのはもったいない。

AWSでもAzureでもGoogleのCloud Platformでも、任意の日と任意の時間にマシンを動かして停止することは十分に可能だが、そんなユーザでもこれまでは、標準のオンデマンドの料金を払っていたのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

GoogleがBebopの買収に$380Mを投じたことをSECの文書で公表…エンタプライズクラウド事業の本格化のため

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11月の終わりにGoogleは、bebopの買収を発表した。bebopはVMwareのCEOで協同ファウンダだったDiane Greeneが創業したクラウドプラットホーム企業だ。今日(米国時間1/4)GoogleがSECに提出した関連文書によると、その買収の価額は$380,241,352(3億8024万1352ドル)であった。

その際bebopのGreeneの持ち株724万4150株はAlphabetのクラスC資本株20万729株(単価740.39ドル)および一部現金と交換された。“Greene氏は交換された株を提供者が勧めるファンドに寄付した”、と文書は述べている。

この買収はbebopの技術を入手するだけでなく、Googleのクラウド事業をGreeneに指揮させることが目的、と見なされていた。ステルスだったbebopについて知られていることは少なく、せいぜい、企業によるクラウドアプリケーションの構築とメンテナンスを助けるクラウド開発プラットホームである、ということぐらいだ。Googleにとっては、同社の買収によってエンタプライズクラウド関連のプロダクトを一層充実させることが、目的だろう。

まだステルス状態の企業にしては巨額な買収だから、目的はGreeneとその技術者チームの獲得以上のものだった、と思われる。

前の記事にも書いたように、当時GoogleのCEO Sundar Pichaiはブログに、“Greeneは新たに立ち上げられる総合的なエンタプライズクラウド事業を統括する。この事業ではプロダクトとエンジニアリングとマーケティングと営業が一体化され、そこにGoogle for WorkとCloud PlatformとGoogle Appsも組み入れられる…”、と述べていた。

ベンチャーキャピタルGeneral CatalystのゼネラルパートナーでVMwareのCEOだったSteve Herrodは、Greeneという人物を激賞していた: “彼女はすごい人だから、Googleのクラウド事業のやり方をたちまち変えてしまうだろう。bebopの技術者チームは優秀だから、Googleにエンタプライズビジネスに必要なDNAを大量に持ち込むだろう”。

Googleは今回の買収を契機に同社のエンタプライズクラウド事業を始動するつもりだから、この買収価額には、そのために必要な技術と人をなんとしてでも獲得したい、という強い意思が感じられる。

Greeneとbebopチームが加わったことによって、Googleのエンタプライズクラウドの戦略が今年どのように進化していくか、それを見守りたい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

OracleがDocker運用管理サービスのStackEngineを買収、経営の軸足はますますクラウドへ

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長年クラウドを馬鹿にしていたOracleが最近は逆にそれを、ものすごく重視している。先週ひそかにStackEngineを買収したのも、同社のPaaSの提供物をさらに一層充実させるためだ。

テキサス州オースチンのStackEngineは、同社のWebサイト上の短い声明で、Oracle.comへの合体を説明している。それによると、データベース大手のOracleが同社を買収し、その条件の一環として社員は全員Oracleに加わる。

StackEngineは昨年、二人のベテラン技術者たちが創業し、Dockerの運用管理を提供するサービスとして2014年10月にステルスを脱した。オープンソースのコンテナシステムであるDockerは、最近の数年間で、猫も杓子も使う日用品のような、普遍的人気者になっているが、それ自体は、ITのプロたちがアドミニストレータとしてコンテナを管理するための機構を欠いていた。StackEngineは、そのことに着目した。

ChefやPuppetとスクリプトを使えばそんな管理層を作ることは可能だが、StackEngineは、もっと最初からDockerに特化された適正な管理コンソールを提供したい、と考えた。今回の買収までに同社は、二度のラウンドで計450万ドルの資金を獲得している。

単独で見ればこの買収は、Oracleの買い物としては奇妙に見えるかもしれないが、むしろこれは、もっと大きな同社のクラウド計画の一環だ。同社は今年、クラウドに向かう大きな数歩を踏み出したが、今回の買収はDockerコンテナに直接関連していて、Oracleのコンテナ市場への参入と、その市場の将来性に賭ける姿勢を表している。

この買収はDockerにとって有意義だったかもしれないが、Dockerはこの前、競合製品Tutumを買収しており、そのほかのコンテナ管理スタートアップにとっては状況が不利になったかもしれない。Docker自身が選んだ管理レイヤが、Tutumなのだ。

Oracleは別の声明で、StackEngineの本拠地オースチンに新たにクラウド専用事業所を作ると言っている。その近くに、クラウド担当社員のための住宅も買うらしいから、今後の人材獲得策も含め、このプロジェクトへのOracleの“本気度”が伺える。

今月初めに発表された決算報告(.pdf)でOracleは、クラウドの売上が26%伸びて6億4900万ドルである、と言っている。その内、PaaSの売上は4億8400万ドルで34%伸びている。対して、オンプレミスの売上は7%ダウンだ。同社の、未来に向けての伸びしろはクラウドにしかない、ということか。

StackEngineにとっては嬉しいイグジットパス、そしてOracleにとってはPaaSの持ち駒のさらなる充実だった。今建設中のオースチンキャンパスは、2016年のOracleの新しい動き(新たな買収、プロダクト開発など)のメインの舞台になるだろう。

〔訳注: ここにグラフが表示されない場合は、原文を見てください(Oracle企業プロファイル)。〕
[graphiq id=”5kqMqbO7qrH” title=”Oracle Corporation (ORCL)” width=”700″ height=”461″ url=”https://w.graphiq.com/w/5kqMqbO7qrH” link=”http://listings.findthecompany.com/l/12055771/Oracle-Corporation-in-Redwood-City-CA” link_text=”Oracle Corporation (ORCL) | FindTheCompany”]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

AWS、t2.nanoをリリース―EC2で最小、最安のインスタンス〔東京リージョン利用可能〕

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今年、ラスベガスで開催されたAmazonのデベロッパー向けカンファレンス、re:Inventで AWSは「近く、EC2コンピューティング・サービスで、極めて小型だが必要な際には急速に拡張可能なインスタンスの提供を開始する」と発表した。そのインスタンスがt2.nanoと名付けられて利用可能となった

AmazonのUSリージョンでこの「ナノ・インスタンス」を動かすには月額で4.75ドルしかかからない(つまり1時間あたり0.0065ドルだ)。もちろんEC2として最安のインスタンスとなっている。もし1年分の作動を確保するなら時間単価はさらに0.0045ドルに下がる。前金は必要ない。他のリージョンからの利用は若干高くなる〔東京リージョンは時間単価0.01ドル〕。

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このインスタンスには 512MiBのメモリが付属し、 1コアのバーチャルCPUは必要に応じてバースト可能だ。

Amazonでは「このインスタンスはアプリを開発中のデベロッパーやトラフィックの少ないウェブサイトのホスティングにもっとも適している。どんな目的にせよ、大量のメモリやCPUパワー長時間必要としないような作業なら何にでも使えるだろう」と述べている。Amazonのチーフ・エバンジェリスト、Jeff Barrはまた「教育やトレーニングの場でも多数のt2.nanoが利用されるだろう」と期待を述べた

新しいナノ・インスタンスは、 AWSの他のバーチャルCPUに比べて低い能力しかないが、CPU利用率が 5%以下のアイドル状態になるとAWSはユーザーにボーナスCPUクレジットを付与する。このクレジットは後でバースト・モードが必要になった場合に利用できる。

t2.nanoは 32bitまたは 64bitで動作する。Amazonはこのバーチャル・マシンでWindowsを作動させることを推薦はしておらず、その場合には
Server Core AMIを利用することになるだろう。もちろんWindowsの利用が禁止されているわけではない。

EC2ではこの種のバースト可能な小型インスタンスのシリーズを各種揃えている。これまで、micro、small、medium、 largeが提供されていたが、今回これにt2 instancesが加わったわけだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Googleクラウド上の関係データベースサービスCloud SQLがバージョン2となり大幅に高性能化

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GoogleのCloud Platform上には、完全な管理を伴うMySQLデータベースのサービスがあり、そのサービスはCloud SQLと名付けられている。そして今日(米国時間12/10)、このデータベースサービスのバージョン2が、ベータでローンチした。

Cloud SQLのバージョン1は2011年にローンチしたが、一般公開されたのはそれからちょうど2年半後だ。そしてGoogleによると、今日のアップデートでCloud SQLのスループットはこれまでの7倍速くなり、スケーリングの上限はデータ10TB、IO速度15000IOPS、1インスタンスあたりのRAMサイズ104GBとなる。いずれの数値も、バージョン1より大きい。

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今回のアップデートに伴い、Cloud SQLの料金プランも変わる。サービスのインスタンスタイプがCompute Engineと同じになるので、‘長く使えば安くなる’のGoogle哲学により、Google独自の持続的利用の料金(sustained use pricing)が適用される。つまり1か月の時間の25%以上サーバを動かすと、ディスカウント料金になる。

ただしベータ期間中は、サーバの使用時間の長短にかかわらず、全ユーザが持続的利用料金になる。

以下が、ニューバージョンの仕様だ:

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Googleの注記によると、このバージョン2のサービスは同社のCloud Platformのこれまでの改良成果をフルに利用している。それはスピードの向上だけにとどまらず、さまざまな面での柔軟性(自由度)のアップにより、データの量的処理能力も大きくなっている。

そのほかニューバージョンにはHigh Availabilityフェイルオーバ、リードリプリケーションのオプション、バックアップ周期とメンテナンスウィンドウを構成可、などの高度な機能もある。

デベロッパはこれらのデータベースに、どこからでも接続できる。GoogleのCompute Engineからはもちろんだが、彼らのワークステーションからでも。ただしApp Engineからのニューバージョンの利用は、もうすこし待たされるようだ。

〔訳注: 12月10日に公開された原文が、しばらくアクセス不能となり、今日(日本時間12/15)復帰しました。今後持続する正規稿とみなし、ここに訳出します。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

複数のベンダのクラウドを一体的に監視し最適化するCloudynが$11Mを調達して合衆国オフィスの開設を目指す

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複数のベンダのクラウドを使っているとき、その全体的な使用状況をモニタして最適化するサービスCloudynがこのほど、シリーズBで1100万ドルを調達したことを、今日(米国時間12/14)発表した。

そのラウンドをリードしたのはCarmel Venturesで、これまでの投資家Titanium InvestmentsとRDSeedが参加した。これで同社の資金調達総額は1650万ドルになる。

Cloudynはエンタプライズのクラウドユーザに、興味深い周辺的サービスを提供する。同社を利用してユーザは、多様なサービスにまたがるクラウド利用をモニタし、使い方を最適化できる。ファウンダでCEOのSharon Wagnerによると同社は最近新たに、必要に応じて、顧客が利用しているクラウドの大きさを増加させるサービスも導入した。

つまりクラウドのユーザ企業自身が、利用するクラウドサービスの大きさを増減するのではなく、Cloudynの最適化サービスの一環としてクラウド利用を大きな構成へと拡張し管理する。Wagnerは、“昨年はいろんな業種で、クラウドを成長させるためのツールが欲しいという要望が多かった”、と説明する。

それは、使っていないサーバを外す最適化とは逆に、大きな構成を選んだときに、それの利用効率を最大化したい、という最適化ニーズだ。“顧客は、クラウドリソースのセルフプロビジョニングとクラウドのフットプリントの成長により効率を高め、コストを下げようとしている”、とWagnerは語る。

Cloudynの顧客は、Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud、OpenStackなど、複数のインフラストラクチャを使っていてもよい。それらを全体的にCloudynがモニタし最適化する。

同社はイスラエルのテルアビブに拠を構え、当地の活発なスタートアップシーンの一員である。しかし今回の資金調達を機に、国際化もねらっている。今現在顧客の80%は合衆国の企業なので、2016年には少なくとも一つの合衆国オフィスを開きたい、とWagnerは述べる。

Wagnerは、顧客の数を明かさないかわりに、同社がクラウド上で管理しているマシンは20万を超えている、という。現在の同社の社員は30名だが、来年はこの倍にしたい、と彼は言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

Adobeの売上は記録破り―大企業でもビジネスモデルの根本的転換は可能だ

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IBM、HP、EMCなどの大企業がビジネスモデルの転換を目指して苦闘していることはわれわれもよく知っている。それらに比べると、Adobeは興味深いケースといえるだろう。つい数年前までAdobeは箱入りソフトを売る会社だった。それがごく短期間でクラウドサービスの定期課金(サブスクリプション)を主力とする会社となった。先週発表されたAdobeの財務報告を見る限り、この変身に大成功を収めている。

まずその根拠として数字をチェックしてみよう。Adobeはこの四半期に13億1000万ドル、対前年比で22%のアップという成績を収めている。同社はまた通年の売上が48億ドルという記録破りの額に達したことを発表している。もちろんこうした数字自体も大きいが、私が特に強い印象を受けたのは、継続する課金収入だった。これは今やAdobeの売上の74%を占め、メインビジネスとなっている。2015年の同社のデジタル・メディア関連の通年定期課金収入(annual recurring revenue=ARR).は30億ドルだった。

実際、Adobeはこの第4四半期だけでARRに3億5000万ドルも加えている。同社の発表によれば、この成長は主としてエンタープライズが課金モデルへの転換を積極的に採用しているためだ。この四半期に個人やチームの83万3000人がAdobe CC(Creative Cloud)に新たに登録しているという。

多くの企業が苦闘する中、Adobeは比較的短期間に急速にクラウド企業へと変身を遂げた。これは同社が事前に周到な計画を準備していたことが大きいようだ。

Adobeの創立は1986年とはるか昔に遡る。しかしAdobeが箱入りソフトを販売していたのはそう昔ではない。それが変わったのは2013年のことだ。同社はCC(Creative Cloud)にビジネスの主力を移すと発表した。そしてその言葉どおり、従来の主役だった箱入りソフトのシリーズ、CS(Creative Suite)の販売を中止した。この決断は業界を震撼させた。 TechCrunchのLardinois記者は当時驚きを次のように書いている

Adobeはソフトウェアの将来は定期課金ベースのネットワーク配信にあると信じ、それに社運を賭けるつもりのようだ。…Maxカンファレンスの参加者の大部分はここでCS7が発表されるものと思っていたはずだ。ところが意外にもCreative Suiteのブランド名は消えていくことが判明した。…(CCの責任者)Morrisは私の取材に対して、この方針転換がかなりの冒険であることを認めた。「多くのユーザーはこういう転換が起こるとしても数年後のことだと考えていただろう。しかしそれが今日だったことはショックだったかもしれない。」

Adobeのような世界的大企業がCCの発表後、わずか2年半でにこのような思い切った決断をするというのはかなり珍しいことだ。また顧客ベースも課金モデルへの転換を強く支持ことも注目に値する。.

「牛を捕らえるには角をつかめ」

Adobeが実行したのは他の会社が恐れるような道だ。普通の会社なら確立した箱入りソフト販売モデルの横に少しずつサブスクリプション・モデルを忍び込ませるというような方法を取っただろう。しかしAdobeはいきなり箱入りソフトの販売を止め、全面的に定期課金モデルを導入した。

比較という点ではMicrosoftが参考になるかもしれない。同社は現在でも箱入りソフトのOfficeとクラウド版のOffice 365を並行して販売している。エンタープライズソフトの分野でも同様だ。

公平を期すなら、Adobeといえども古き良きマーケティング・リサーチをしなかったわけではない。AdpbeはCCを開発し、ユーザーを相手にテストを行った。その結果は思いがけないほど積極的な反応だった。前述のScott MorrisはわれわれのLardinois記者の質問に答えて2013年にこう語っている

われわれがこの決断をしたのはCreative Cloudの登録ユーザーのほとんど全員が気に入ってくれていることを発見したからだ。AdobeのオンラインストアでCreative Cloudの満足度はPhotoshopより高い。これは前代未聞だ」とMorrisは言う。

注意すべき点は、当時Adobeは極めて高価な箱入りソフトを売っていたことだ。その価格は1200ドルから上は2500ドルまでした。つまりユーザーはそれほどの金額を支払ってもそれらのソフトが提供する機能を必要としていたわけだ。サブスクリプション・モデルに移行するにあたってこうしたクリエーティブなチームや個人のユーザーは一時に高額な支払いを必要としなくなった。毎月少額を支払えばよく、しかもAdobeは常時ソフトをアップデートして最新のものにしてくれる。Adobeとしてもときおり巨大な新バージョンを出荷するより、オンラインで少しずつアップデートを繰り返す方がはるかに開発を管理しやすい。

Adobeの新モデルはユーザーにもメーカーにもメリットの大きいものとなった。関係者全員が得をするという珍しい例だった。利用ケースによって価格は大幅に異なるものの、個人ユーザーは月額わずか9.99ドルからLighroomやPhotoshopなどの人気ソフトが利用可能であり、全アプリが使い放題となるセット契約でも月額80ドルだ。エンタープライズ向け契約では1人あたり月額70ドルの使い放題や1人1アプリ月額30ドルの契約も選べる。〔日本版:日本では月額980のフォログラフィプランから月額4900円のコンプリートプラン、さらにさまざまな法人向けプランが選択できる。詳しくはこちら。〕

Adobeという教訓

Adobeは多くの大企業がはまり込んでいる泥沼を避け、まったく異なるビジネスモデルに移ることに成功した。業界の常識とは逆に、同社は箱入りソフトの販売で得ていた以上の売上を定期課金モデルで得られることを証明した。.

とはいえ、われわれもどんな規模、種類の会社もAdobeのとおりに行動して成功できるとは考えていない。

そもそも、Oracleのような純然たるエンタープライズ向け企業と個人、エンタープライズをまたいでビジネスをしてきたAdobeのような企業を単純に比較するのは難しいのだろう。それでもなおAdobeが従来のビジネスモデルを一変させ、かつそれに大成功を収めたという事実は残る。他社はおそらくAdobeの成功の秘密を知りたがるだろう。市場は現在も急変し続けており、強い意思に基づく決断によって成功したAdobeを手本にしたい企業は多いはずだ。.

画像: sikerika/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

朗報―Googleドライブ内のファイルがずっと見つけやすくなった

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実はこのアップデートは私自身が長年待ち望んでいたものだった。Googleドライブ内にあるファイルがずっと見つけやすくなった。ユーザーはファイルの種類、作成者、作成ソフト、開くことができるソフトなどをあらかじめ指定して検索ができる。

ウェブ、Android、 iOSその他どんなデバイスからでもこのファイルタイプによる絞込み検索は可能だ。また検索窓から「高度な検索」が可能になった。「最近使ったファイル」へのアクセスも簡単だし、
3D TouchのあるiOSのホームスクリーンからドライブ内を検索することもできる。Googleアプリをいちいち開くことなく、iOSの検索窓からドライブを検索することができる。

すべて朗報だ。

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今回のアップデートについてGoogleのチームはこう書いている

ユーザーの目に見えにくいところで努力したおかげで、検索結果が以前よりずっと改良されました。…だれでも以下のような検索ができます。:
– メールアドレスまたは所有者名を使って共有ファイルを探す.
– 「ファイルが最後に編集された時期」、「ファイルの含む単語数」、「共有者」など「高度な検索」機能を利用してファイルを探す

われわれは引き続きGoogleドライブでファイルを見つけやすくするための改良を続けます。アップデートは今後数週間にわたって世界各地で続けられる予定です。

Dropbox、Box、UpThereのような人気のクラウド・ストレージにもこうした高度検索機能が切実に必要とされているが、実装したのはGoogleドライブが初めてということになる。Googleは膨大なデータを持っている上に検索機能は得意中の得意だ、ということが(残念ながら)関係しているのだろう。それにしても時間がかかったことではある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Google、VMwareの共同創業者Diane Greeneのスタートアップを買収、企業向けクラウドのトップに任命

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今日(米国時間11/19)、Googleは意表を突いた動きを見せた。Googleはエンタープライズ向け開発プラットフォームを提供するスタートアップ、bebopを買収すると同時に、そのファウンダーであるDiane GreeneをGoogleのエンタープライズ・クラウドビジネスのトップに就けた。

Greeneにはこの職に対して十分過ぎるほどの経歴がある。Greeneはまず第一にVMwareの共同ファウンダー、CEOだった。またGreeneはGoogle(現在はその親会社、Alphabet)の取締役だ。またGreeneのbebopはGoogleが買収するまでほとんど誰にも知られず、ステルス状態で運営されていた。

Googleはこの任命をCEOのSundar Pichaiが発表した。Pichaiによれば、 Greeneは新たに統合されたエンタープライズ・クラウド事業全般を指揮することになるという。 エンタープライズ・クラウドにはGoogleのクラウド・プラットフォーム全般、Google Appsと新たなビジネス向けプロダクトに加えてそのクラウドのエンジニアリング・チームなどがすべて含まれる。Pichaiによれば、今回新たにマーケティングとセールス部門が加えられたという。

PichaiはGoogleクラウドはFortune 500企業の60%で利用されていると述べているものの、これまでのGoogleのエンタープライズ・クラウドに対する取り組みには戦略的な一貫性が欠けていたことも事実だ。

Constellation Researchのファウンダー、 R Ray Wangは Greeneの就任は VMwareでの経歴を考えるとGoogleのエンタープライズ・ビジネスにとってきわめた望ましいとして、「Googleは、消費者目線でユーザー体験を考え、それをエンタープライズ級のプラットフォームに拡張できる思考〔ができるトップ〕が必要だ」とTechCrunchに語った。

ベンチャーキャピタルのGeneral Catalystのゼネラル・パートナーであり、元VMwareのCTOだったSteve Herrodも「彼女はたいへんな才能の持ち主だ。Googleのビジネスは大きく変わるだろう」と、この意見に同意した。

Googleはクラウド・ビジネスのパイオニアとして大きく先行しながら、これまでライバルのAmazon Web ServicesやMicrosoft、IBMとの競争で苦戦していた。

エンタープライズ面でGoogleは早くからビジネス向けのパッケージ、Google Apps for Workを提供していたが、この7月に大口顧客であったGEが30万人の社員が使うクラウド・ツールをMicrosoft Office 365に乗り換えるという痛手を被っている。

この打撃を反省してか、Googleは去る10月に、他社のクラウドサービスと契約している企業は無料でGoogle Apps for Workに乗り換えができるというプロモーションを開始している。

GoogleにはライバルのAWSやMicrosoftと競争する体力は十分あったが、これまで大企業を深く理解し、戦略的思考ができるリーダーシップに欠けていたといえるかもしれない。

さらにGoogleのPichaiはブログ記事でGreeneが起業したスタートアップ、bebopの買収したことについて、「同社の開発したプラットフォームはエンタープライズにとって導入、維持管理が簡単であり、アプリを作動させるのに適している。Googleのクラウド・プラットフォームの全域で統合を進めることを助けられる」としてl単にGreeneを獲得するための買収ではなかったことを強く示唆した。

Greeneは3年前からGoogleの取締役の一員であり、今後もその役割は継続する。Google内でGreeneはPichaiに直属する。またbebopチームは買収手続きが完了次第、全員がGoogleに加わることになるという。

画像 Robert Scoble/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Googleのクラウドプラットホームがカスタムマシンタイプを提供、CPU数とメモリ量を細かく指定可能

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Googleが今日(米国時間11/18)、同社のクラウド上の仮想マシンの‘新しい買い方’をスタートした

これまでの仮想マシンは、Google Cloud PlatformやAWS、Azureなど、どこを選んでも、その‘買い方’はほぼ同じだった。CPUとRAMの構成に関する既定のセットがいくつかあって、計算処理を優先するかメモリ容量を優先するかによって、それらの中からどれかを選ぶ、という買い方だ。

しかしGoogleのCompute EngineでこのたびベータでローンチしたCustom Machine Types(カスタムマシンタイプ)では、仮想CPU(vCPU)の数とRAMの量をユーザが指定できる。

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従来は、vCPU二つで力不足になってきたら、既定のセットの中からvCPU四つのマシンタイプを選ぶ。当面三つで十分な場合は、お金の無駄遣いになってしまう。

今度の新しいCustom Machine Typesでは、最大32までのvCPUと、vCPU一基あたり6.5GiBまでのメモリをユーザが指定できる。正確を期すことが大好きなGoogleは、従来のギガバイトでなく、デジタル(2進数)情報の標準単位であるギビバイトを使うことにしたのだ。なにしろあなたのアプリケーションのニーズが変われば(当然変わるだろうけど)、コアやメモリの数量をあとからでも自由に調整できるのだ。

下表は、vCPUとメモリの量に応じた、従来のマシンタイプ(青)と、今回のカスタムマシンタイプ(白)の料金比較だ:

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上の例は、インスタンスが1か月フル稼働した場合の各マシンタイプの月額料金で、Googleの継続利用割引が適用されている。これまでのGoogleの仮想マシンと同じく、カスタムマシンタイプも毎分料金制があり、また、Google本体の空きメモリを利用するpreemptibleマシンの割引もある。

合衆国リージョンでは、vCPU1基の使用料が1時間0.03492ドル、1GiBのRAMの1時間の使用料が0.00468ドルである。preemptibleマシンではvCPUが0.01002ドル、RAMが0.00156ドルになる。ヨーロッパとアジアではやや高くて、たとえば標準のvCPUは0.03841ドルになる(合衆国0.03492ドル)。

カスタムマシンタイプはすでに、GoogleのコマンドラインツールやAPIでサポートされている。Google Developer Consoleからのグラフィカルな指定はまだだが、数日後には実現するだろう。

カスタムマシンタイプで使えるオペレーティングシステムは、CentOS, CoreOS, Debian, OpenSUSE, またはUbuntuだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

Hewlett Packard Enterpriseは今後何もかもコンテナが主軸…ハイブリッドクラウドをメインにしつつ

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Hewlett Packard Enterprise(HPE)が今日(米国時間11/16)、バルセロナで行われたDockerのデベロッパカンファレンスで、同社のデベロッパ関連製品のアップデートをたくさん発表した。HPEのコンテナにかける意欲には、並々ならぬものがあるようだ。

HPEのインキュベータパートナー担当VP Tana Rosenblattは次のように語る: “コンテナは確かに画期的な技術だが、それは単に新しい技術であるだけでなく、ハイブリッドな環境を求める企業にとっても意味がある。今後のDockerとの、きわめて有意義なパートナーシップにより、その優れたやり方とプロダクトの恩恵に与れると期待している。その際のわが社の戦略は、受容して拡張せよ、だ。弊社には、devとopsおよび両者を結びつけることに関連した知財がたくさんある。それらをDockerと組み合わせれば、弊社のエンタプライズ顧客にさらに高い価値を提供していけると信ずる”。

HPEには今日ローンチしたハイブリッドクラウドのためのPaaS Helion Development Platform 2.0があり、それが最初からデフォルトでDockerをサポートする。したがってデベロッパとITオペレータはたとえば、このサービスを使って、Dockerコンテナとしてパックされたマイクロサービスをデプロイできる。

HPEにはさらに、クラウドの負荷とパフォーマンスをテストするStormRunnerと、モバイルのパフォーマンスモニタツールAppPulseがあり、これらもDocker化されたアプリケーションのデプロイとモニタリングをサポートする。

HPEのクラウドモニタリングツールSitescopeも、これからはDockerのSwarmクラスタをサポートする。それによりアドミンは、Dockerのクラスタのすべての層…Swarmからコンテナの個々のワークロードを実際に動かすDockerのデーモンに至るまで…をマップしモニタできる。

さらにまた、リリース管理サービスHPE CodarもDockerをサポートし、ストレージ配列3PAR StoreServとソフトウェア定義ストレージStoreVirtualもDockerイメージをサポートする。

以上すべてをひっくるめて、HPEは近いうちに24×7のエンタプライズコンテナサポートを開始し、Dockerのリファレンスアーキテクチャとデベロッパ向けの新たなリファレンスガイドが、ハイブリッド環境にコンテナをデプロイしたいユーザに提供される。

Rosenblattによると、HPE(当時のHP)が、コンテナに全(まる)がけすることを意思決定したのは1年半前だ。HPはこれまでさまざまなアーキテクチャのコンテナ技術をトライしてきたが、コンテナへのフルコミットメントの契機になったのはDockerだ。“今というタイミングを決めたのがDockrだ”、と彼女は述べている。“それへ向かって全社が動き始めたのが1月であり、これからのHPEは、フィジカルからクラウドまでのすべてのソリューションにおいて、顧客にはコンテナによるソリューションを提供していきたい”、というのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

AWSは韓国に次いでイギリスにも新たにリージョンを設ける意向、今後はインドにも

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Amazon Web Services(AWS)このところ、サービス供用地域の拡大にますます熱心だ。AmazonのCTO Werner Vogelsは今日(米国時間11/6)、2016年の終わりないし2017年の初めにイギリスリージョン(UK region)を立ち上げる、と発表した

それはEUでは3つ目のリージョンで、最初はかなり長年、ダブリンのデータセンターが、ヨーロッパのデベロッパがAWSを使って同地域内にアプリケーションをホストするための、唯一の選択肢だった。そして昨年AWSは、ドイツのフランクフルトを拠点とするリージョンを初めて立ち上げた

イギリスリージョンを発表した日の前日にAWSは、韓国リージョン(South Korea region)の計画を発表した。これはアジア太平洋地区では5つ目のリージョンだ。このほか計画中のリージョンとして、インド、中国第二、オハイオ州(2016)がある。AWSの現在稼働中のリージョンは、11ある。

イギリスと韓国に関してAmazonは、すでの顧客数がとても多いことを挙げている。“2006年にAWSを立ち上げた当初から、イギリスの指導的企業の多くがアーリーアダプターだった。弊社は今日まで継続して彼らを、アジリティの強化やITコストの低減、容易なグローバルスケーリング等の面でお手伝いしてきた”、とVogelは声明文の中で言っている。

リージョンの数に関しては、A、M、G三社の中ではM(Microsoft)のAzureが20で最大、G(Google)のCloud Platformは4つだ(合衆国内2、ベルギー、台湾)。デベロッパはエンドユーザに近いところからアプリケーションをホストした方がレイテンシが低い、と考える。またローカルデータ主権法(local data sovereignty law)のあるドイツのような国では、一部のユーザデータが国外に出ることを禁じている。


〔訳注: AWSの現状11のリージョン一覧(出典)〕

米国東部(バージニア北部)リージョン
EC2 アベイラビリティーゾーン: 5*
2006 年開始

米国西部(北カリフォルニア)リージョン
EC2 アベイラビリティーゾーン: 3*
2009 年開始

米国西部(オレゴン)リージョン
EC2 アベイラビリティーゾーン: 3
2011 年開始

AWS GovCloud(米国)リージョン
EC2 アベイラビリティーゾーン: 2
2011 年開始

サンパウロリージョン
EC2 アベイラビリティーゾーン: 3
2011 年開始

欧州(アイルランド)リージョン
EC2 アベイラビリティーゾーン: 3
2007 年開始

欧州(フランクフルト)リージョン
EC2 アベイラビリティーゾーン: 2
2014 年開始

アジアパシフィック(シンガポール)リージョン
EC2 アベイラビリティーゾーン: 2
2010 年開始

アジアパシフィック(東京)リージョン
EC2 アベイラビリティーゾーン: 3
2011 年開始

アジアパシフィック(シドニー)リージョン
EC2 アベイラビリティーゾーン: 2
2012 年開始

中国(北京)リージョン
EC2 アベイラビリティーゾーン: 2

〔アフリカと中東は現状ではヨーロッパのリージョンがカバーしている。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

クラウドIDE Codeanywhereがバージョンアップしてスピードを4倍増へ

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デベロッパサービスの分野はこのところ、AtlassianのIPOが近いことや、GitHubがもうすぐユニコーンになる、といった話題が賑やかだが、新進のスタートアップの中ではKodingやNitrous.ioなどが今やMicrosoft、SAP、それにOracleとさえ張り合うほどの勢いだ。でも、これらのクラウドベースのIDEには、スピードという大きな問題がある。そこで、5月の本誌主催Disrupt New Yorkに登場したCodeanywhereは、そのCloud IDEのコードを完全に書きなおして、この問題を解決しようとしている。

ユーザ数が50万を超えたCodeanywhereは、自らを“デベロッパのためのGoogle Docs”と呼び、クラウドを従来のデスクトップ上のコーディングに近づけようとしている。

Codeanywhereの協同ファウンダIvan Burazinによると、今度のニューバージョンには新しい機能が山盛りで、UIも一新し、複数のファイル間のジャンプや検索、GitHub/Bitbucketのコマンド、リポジトリのインポートなどが加わった。しかしなんといっても最大の目玉は、スピードが従来の4倍になったことだ。それはとても、すばらしい。

2012年に創業されたCodeanywhereはパロアルトにオフィスを置き、2014年秋のTechstars Bostonや昨年のTechCrunch Disrupt Startup Battlefield New Yorkに参加した。

すでにシリーズAの資金を調達しており、月間アクティブユーザが15万、登録ユーザ数50万に達している。

Codeanywhereはフリーミアムで、有料プランはユーザ一人あたり月額3ドルから50ドルまでだ。

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Google Apps for Workの有料企業ユーザが200万を突破、サードパーティアプリケーションの審査推奨制度をスタート

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先月Googleは、ライバルのMicrosoftやAmazonとの契約が残っている企業にはGoogle Apps for Workのクラウドアプリケーションを無料にして企業顧客を増やそうという、大胆な作戦を実行した。Google Apps for Workを有料で使っている企業は現在200万社、無料も合わせるとユーザ数は500万を超えている。それが、今以上に企業ユーザを増やそうというのだ。

今以上に顧客を惹きつけ、今以上にデベロッパたちがこのプラットホーム向けのソフトウェアを作ってくれるようにGoogleは、Google自身のGAfWネイティブアプリケーションやプロダクトだけでなく、サードパーティのアプリケーションを審査しGAfWのユーザに推奨する事業を立ち上げた

すでにセキュリティとパフォーマンスの審査を通り、推奨されているアプリケーションが8つある:

併せてGoogleは今日(米国時間11/3)、広大なApps Marketplaceにおけるアプリケーションの発見のしやすさをやや改善し、またAndroidへのリンクを強化した。そして今やGoogle Play for Workにあるエンタプライズアプリケーションも紹介している。

今Googleのコンペティタたちは企業ユーザと一般消費者をはっきり分けた製品戦略やマーケティング戦略をとろうとしており、Googleもそれに倣おうとしている。その典型が、IBMとパートナーしたAppleだ。しかもこの両社は2014年の12月という早くから、iOS用やMac用の企業向けアプリの提供を始めている。

このGAfWのニュースのタイミングにも、戦略的意味がありそうだ。今回のGAfW関連の発表は、同じく企業のクラウド利用に焦点を当てたDropboxのイベントと、同日なのだ。

飴と鞭

今回のGoogleからのニュースは、同社がエンタプライズビジネスを伸ばすために飴と鞭的なやり方をしていることを、示している。

Google Apps Marketplace(Google全体のアプリケーションマーケットプレース)は、AWS MarketplaceやSalesforce、それに企業向けにアプリケーション統合サービスを提供しているクラウドストレージ屋さんなどと競合しており、今ではGAfWと統合できる企業向けアプリケーションを750以上も提供している。

しかしGAfW担当のディレクターRahul Soodによると、数が多いことは必ずしもそれらの利用性に結びつかない。“そもそも現状では、どのアプリケーションがセキュアで信頼性があって高性能で今使ってるツールとの統合性が良いのか、さっぱり分からない。しかも、仮に、検討すべきアプリケーションのグループが分かったとしても、実際にそれらを評価する能力や余裕が企業にない”。

そこでGoogleは、さまざまなサードパーティアプリケーションと、Google自身が作ったGAfW固有のアプリケーションとの、相性を審査する役を買って出ようとしている。

“これらのアプリケーションはGoogleとサードパーティのセキュリティ企業がリビューして、安全性と信頼性を確認し、高度な統合化要件を満たしていることをチェックしている”、とSoodは書いている。セキュリティ企業の名前は、今Googleに問い合わせ中だ。そうやって顧客になるべく多くのアプリケーションを使わせて、Googleのプラットホームへの親近感を持たせ、今後のより高度なサービスでお金をいただこう、という心算なのだ。

また顧客(GAfWのユーザ)企業だけでなく、Googleはソフトウェアのメーカーにもこのプラットホームを開発の対象として利用してもらいたい。

そのためにGoogleは、さまざまなことをやってきた。Google for WorkのパートナーのためにTechnology Trackを立ち上げたのが2014年の3月だった。それはGoogle App ServicesのAPIの統合を選択したソフトウェアパブリッシャーへのごほうびだった。そのごほうびとは、技術やマーケティングや営業の支援、そしてGoogle Apps Marketplaceでアプリケーションが上の方に表示されることだ。最近ではGoogleの推奨アプリケーションに優先的に選ばれる、という飴も加わった。推奨にはセキュリティのお墨付きも伴うから、それらのアプリケーションは相当目立つと思われる。

この、Googleによるアプリケーション審査〜推奨制度は、うまくいけば、ほかのアプリケーションマーケットプレースを蹴散らしてしまうかもしれない。企業ユーザにとって、Googleのお墨付きの効果は、かなり高い。次第に、他のマーケットプレースは見なくなる可能性もある。

そうなればもちろん、デベロッパ〜ソフトウェアショップもGAfW向けのアプリケーションを一生懸命作ろうとするだろう。審査に通るコツ、Googleから高く評価されるコツも、次第にわかってくる。それはGoogleにとっても自分のエコシステムを大きくする方法だが、大きくしたものをずっと支配し制御し続けるための“王様的”な方法でもある。

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資料を軸にしたBtoBマッチングサービス「Boxil」運営のスマートキャンプが1.5億円の資金調達

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ビジネス向け資料を軸にしたBtoBビジネスマッチングサービス「Boxil(ボクシル)」を提供するスマートキャンプ。同社は11月4日、グリーベンチャーズ、ベンチャーユナイテッド、アーキタイプベンチャーズを引受先とした合計1億5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。またこの発表とあわせてサイトをリニューアル。クラウドサービスに特化した資料共有・BtoBマッチングサービスを展開する。同社はこの調達をもとにマーケティングおよび人材の確保を進める。

スマートキャンプ代表取締役の古橋智史氏

スマートキャンプ代表取締役の古橋智史氏

Boxilのリリースは2015年4月。スマートキャンプは以前から資料作成特化のクラウドソーシングサービス「SKET」を展開していたが、そこで制作した資料を実際に掲載し、実際に売上向上やコスト削減に繋がるような場所を作ることを検討する中でBoxilの提供に至ったという。

Boxilではサービス提供企業がアップロードした資料(おもに営業資料)をダウンロードして閲覧できるという、よくあるホワイトペーパーサービスと同等の機能に加えて、専用のチャットで直接サービス提供企業の担当者とやりとりを行うことができるのが特徴だ。チャット上で直接受発注までに至るケースも多いという。サービス開始から半年弱、現在約200社が法人登録しており、商談発生件数は1000件以上(ただし成約数については確認できなかった)。

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今回の調達に合わせたリニューアル以降、Boxil上に掲載できる資料をクラウドサービスに限定する。「クラウドサービスがBoxil上で高いマッチング率だったこともあるが、特にクラウドサービスは機能が細分化されており、メリットが分からない、セキュリティに不安があるという声が多い。大企業への導入は進んでいるが、本来導入すべき個人や中小企業ではまだ導入が進んでいない。また単価が安いこともあって営業担当を多く置けない状況」(スマートキャンプ代表取締役の古橋智史氏)

将来的には資料のダウンロードやチャットだけでなく、レーティングやレビューの機能も導入することで、「クラウドサービスの価格コムにを目指す。クラウド未導入の個人事業主から中小企業経営者240万社がターゲットになる」(古橋氏)という。すでに海外ではG2 Crowdのようなクラウドサービスに特化したレビューサイトが存在する。

HPのOpenStackプラットホームHelionがバージョン2.0にアップ、構成デフォルトとセキュリティを充実

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誰もが知ってるように、HPはそのパブリッククラウドビジネスに終止符をうち、そっちはAWSやMicrosoftやGoogleに譲る、と言っている。その代わり同社は今、プライベートとハイブリッドのクラウドに専心しつつある。プライベートクラウドといえば、今のところ唯一の現実的なオプションがOpenStackだから、同社はHelion OpenStackと名づけた独自のOpenStackプラットホームを1年前から提供している。そして今日同社は、そのOpenStack商用/エンタプライズディストリビューションのバージョン2.0を発表した

HPのクラウド担当SVP Mark Interranteによると、HPがパブリッククラウドビジネスから脱退したことは、同社がこれからプライベートとハイブリッドのクラウドに大きく注力していくことを意味する。“それは、いよいよ焦点が絞られてきたということであり、最良のプライベートクラウドを顧客に提供し、ハイブリッドの管理を加速し、我が社のクラウドのハイブリッド的資質をより強力に打ち出していかなければならない”、という。

Helion OpenStack 2.0はOpenStackの’Kilo’リリースの実装だが、最新リリースは今月初めに出た’Liberty’だ。しかし、プロダクション向けには最新リリースを採らないとする保守的な姿勢が、この世界の標準慣行でもある。そこでHO 2.0には、Kiloリリースの新機能がすべてあるとともに、HP独自の新しい機能もいくつか盛り込まれている。

Interranteによると、HPのチームはOpenStackの標準リリースに独自のキュレーションを加え、穏健妥当な構成デフォルトをセットし、内部および外部の脅威に対するセキュリティを強化している。またバグフィクスに関してはできるかぎり最新リリースからバックポートしているが、最新リリースの新機能はバックポートしていない。

KiloリリースにHPの独自の仕事を加えたHelion OpenStack 2.0には、ダウンタイムののないローリングアップグレードや、アプリケーションを中断しない継続的パッチ管理、アドミンインタフェイスの改良によるログとモニタリングの中央集中化、といった機能がある。またネットワーキング機能はHPのDistributed Cloud Networkingサービスを統合して分散データセンター環境を管理できる。このほか、Nuage NetworksのVirtualized Services Platformもサポートしている。

そしてさらに、HP独自の機能としてユーザインタフェイスのあるインストーラや、ロードバランサ、ファイヤーウォール、VPN SaaSなどがある。opsコンソールもHP独自で、クラウドの状態をオペレータがモニタし、現状や問題点をよく理解できるようにしている。

Interranteと彼のチームによると、顧客はセットアップのカスタマイズよりも構成の自由を求めている。そこでたとえば新しいHelionのLifecycle Management(ライフサイクル管理)サービスを利用するとクラウドのレイアウトを指定でき、僅かな作業でそのインストールをリプレイできる。

HPのOpenStack担当エンジニアは210名おり、そのサブプロジェクトのチームリーダーが8名いる。またこのプロジェクトのTechnical Committeeには3名が参加している。

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コンテナ化したアプリケーションがベアメタル級の速さで動くクラウドホスティングサービスCarinaをRackspaceが立ち上げ

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Rackspaceが最近ますます、コンテナに深入りしてきた。その同社が今日(米国時間10/27)、コンテナサービスCarinaのベータローンチを発表した。Carinaは完全な管理サービスを伴うコンテナ環境で、ベアメタルのパフォーマンスを提供するとともに、デベロッパがローカルに使い慣れていたDockerツールをすべて提供する。

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Rackspaceのプロダクト/ストラテジ担当SVP Scott Crenshawと上級ソフトウェア設計技士Adrian Ottoによると、チームはとくに、高速で使いやすくて、コンテナ環境を使うときの複雑性をすべて隠した開発/運用環境の提供を目指した。OttoはOpenStackによるコンテナプロジェクトMagnumをリードし、Carinaはその上で動く。

このベータは長期に及ぶと想定されるが、その期間中はサービスを無料で利用できる。最初はDocker中心だが、長期的にはMagnumとOpenStackの柔軟性を生かして、KubernetesやMesosなどそのほかのコンテナオーケストレーションエンジンも使えるようにしていく。

Carinaによる、マルチテナント環境とベアメタルに近いパフォーマンスの組み合わせは、高性能なシステムをローコストで提供できる、とチームは信じている。Ottoによると、高度なセキュリティを目指した場合、マルチテナントのシステムは必ずしも最適の選択ではないかもしれないが、ユーザにはRackspaceのプライベートクラウドサービスを利用する選択肢もある。

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同社のこれまでの経験に基づいて選ばれたデフォルトの集合があり、ユーザは通常、それらのデフォルトの上でサービスを利用する。ただしもちろん、細部の変更は自由だ。Ottoはによると、多くのユーザがコンテナオーケストレーションエンジンとしてデフォルトのDocker Swarmをそのまま使い続けるだろう、という。癖の強いKubernetesに比べれば、Swarmの方が(重要な項目における)デベロッパの自由度が高いそうだ。

このサービスは従来的なハイパーバイザを使わない設計(代わりにlibvirt/LXCを使用)なので、従来からの仮想マシンを使うサービスに比べてコンテナの始動が相当に速い。しかしセキュリティなどの面で仮想マシンにこだわるユーザもいるので、今後は仮想マシンもサポートしていく予定だ。

大手のパブリッククラウドのベンダたち(Google, AWS, Microsoft)は今こぞって、独自にコンテナサービスを提供している。しかしRackspaceのサービス(Carina)は、それらよりも速いだけではなく、コンテナを抽象化して(物理的細部を隠して)デベロッパに提供している。それに、Rackspaceとしては当然ながら、競合他社よりも一段レベルの高いサービスを提供できる、とチームは信じている。

Rackspaceはこれまで、多くのパートナーと組んで非公開ベータを行ってきた。たとえばO’Reilly Media社は、オンラインの学習ツールをコンテナを使って動かしている。DrupalやWordPressのホスティングサービスPantheonは、かなり前から、プラットホームのコアにコンテナを利用している。

本番供用になった場合の料金体系を同社はまだ発表していないが、Ottoは、同じワークロードをほかのパブリッククラウドサービスで動かした場合よりも相当安くなる、と約束している。

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OpenStack Foundationがクラウドアドミンの資格認定事業を発表、分かりやすい構造理解のため視覚化ツールをローンチ

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二年に一度行われるOpenStack Foundationのカンファレンスで、OpenStackによるクラウドを管理するアドミンの資格認定プログラムが発表された。

OpenStackは多くのサブプロジェクトで構成されているので相当複雑であり、このソフトウェアフレームワークを使ってクラウドを構築しようとする企業にとってはとくに、有能なアドミニストレータを見つけるのが難しい。

数年前に当Foundationは教育訓練のマーケットプレースを立ち上げ、そこにRedHat、MirantisなどのベンダやLinux Foundationのような団体が提供するコースを陳列した。Foundationの事務局長Jonathan Bryceは今日のキーノートで、このコース紹介は非常にうまくいったが、しかしそれでもまだ、十分な数の有能な人材は育っていない、と述べた。

今回の資格認定事業は、Foundationが多くの企業(Canonical, Cisco, HP, Mirantis, Rackspace, SuSEなど)の協力を得て開発したもので、これがOpenStackアドミンの基準になることをねらっている。

認定が欲しいアドミンは、まず地球上のどこからでも受けられる認定試験を受ける。最初の試験は同FoundationとLinux Foundationの協力により、2016年に行うが、その試験勉強のためのコースはおよそ20社の教育訓練プロバイダから提供される。受験料などは現段階では未定だ。

OpenStack FoundationのCOO Mark Collierが今日の記者会見で語ったところによると、今後はデベロッパをはじめ、OpenStackのエコシステムを構成するそのほかの主要ロールについても、このような資格認定方式を導入するそうだ。

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OpenStack Foundationは今日(米国時間10/26)、資格認定〜教育訓練事業のほかに、Project Navigatorという情報閲覧ツールをローンチした。このサービスもやはり、OpenStackの複雑性対応の一環で、ナビゲータは今のOpenStackを構成するおよそ25あまりのサービスやサブプロジェクトの一つ々々について情報を提供する(それらの成熟度、パッケージング、ドキュメンテーションなど)。Project Navigatorは、OpenStackが最近行った‘構造改革’の成果を前面に打ち出している。それは構成サブプロジェクトを「コア」(コンピューティング、ネットワーキング、ストレージ)と、そのほかの「オプション」の二つに分ける、という構造だ。

“サブプロジェクトを「コア」と「オプション」の2グループに分けた目的は、OpenStackによるクラウドの構築とデプロイを単純化するためだ”、とCollierは述べる。“Project Navigatorはその単純化された構造を分かりやすく視覚化して表現し、ユーザがOpenStackクラウドの構築に取り組むとき、必要な部位の選択を容易にできるようにすることが、ねらいだ”。

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OpenStackクラウドのデプロイを支援するSolineaが$4Mを調達してアジア太平洋(とくに日本)市場の開拓へ

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OpenStackのクラウドをデプロイすることは、今なお容易なワザとは言えない。Solineaは、コンサルタント兼技術提供者として企業によるプライベートクラウドの設計と展開を支援する。同社は今日(米国時間10/21)、Translink Capitalが率いるシリーズAのラウンドで400万ドルを調達したことを発表した。数名のエンジェル投資家がこのラウンドに参加している。

TransLink Capitalはアジアとの強いコネがあり、エンタプライズテクノロジの経験もある。SolineaのCEO Francesco Paolaによると、そのため彼の企業にとっては理想的な投資家だ。

Paolaと協同ファウンダでCTOのKen PeppleはOpenStackとのつき合いが長く、同社を創業したのは数年前だが、ほとんど自己資本のみでやってきた。Paolaによると、当時はまだプライベートクラウドをやろうとする企業にとって自己の技術力やサードパーティのサービスが乏しく、彼らにとってはとくにスケーリングが難題だった。

Solineaはサービスのプロバイダとして創業したが、やがて、プロダクトも提供しないとだめだ、と気づいた。そこで同社が作り上げたプロダクトGoldstoneは、OpenStackのクラウドを視覚化して監視および管理するツールだ。Paolaが経験から学んだのは、適切なプロダクトがなくて、素手でサービスビジネスをスケールするのはとても難しい、ということだ。Goldstoneは今年の初めにオープンソース化し、今取り組んでいる次のプロダクトはGoldstoneがベースで、2016Q1にリリースできる予定だ。

今回得た資金は、この新しいプロダクトの開発資金にもなる。そのほかは、APAC諸国(中でもとくに日本)の市場開拓のための資金となる。これらの国々ではOpenStackへの関心は高まっているが、Solineaのようなサービスプロバイダはまだ少なくて、企業によるOpenStackクラウドの本格的な実装もまだそれほど多くない、とPaolaは見ている。

Paolaによると、ヨーロッパ市場もいずれは、と考えてはいるが、そのためには、人材を揃えるなど態勢の整備が重要だ、と彼は言う。

今日の資金調達の発表と並行してSolineaは、Deutsche Börseと共にハイブリッドクラウドのプラットホームを開発中であることを公表した。

“クラウドを採用して成功している企業では、経営者とITのトップたちが、クラウドは単なる技術的なソリューションではないことをよく理解している”、とPaolaは語る。“Deutsche Börseも、また北米やAPACの顧客企業も、クラウドが経営にアジリティと効率をもたらすための戦略的な要請だ、と解釈している。だからDeutsche Börseのチームと協力してハイブリッドクラウドを構築していくことを、とても楽しみにしている”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

DigitalOceanにFloating IP機能が加わる、サーバのダウンタイムを実質ゼロにする

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人気の高いクラウドホスティングサービスDigitalOceanに今日(米国時間10/20)、floating IPと呼ばれる興味深い機能が加わった。

今では多くのデベロッパが、DigitalOceanやAmazon Web Services、Google Cloud Computing、Microsoft Azureなどのクラウドホスティングサービスを利用している。昔の“レンタルサーバ”と違って、アプリケーションのデプロイや運用のための、いろんな機能やサービスが提供される。

とくに便利なのは、アプリケーションを複数のデータセンターで動かしたい場合や、アプリケーションの複製をあちこちに置きたい場合だ。でもそれらのネットワークの管理が、複雑難解になることもある。ドロップレット(個々のクラウドサーバ)の置換が必要以上に難しくなったりするのは、それぞれのドロップレットのIPアドレスが違うからだ。

それはまるで、郵便配達への依存度が大きくなったようなものだ。彼なら誰のことでも知っているし、あなたの町のすべてのアドレスを知っているから、誰かが引っ越ししても彼に聞けば新しい住所が分かる。でも、誰かの住所を知りたくなるたびに彼に依存するなんて、とても面倒だ。

そこで登場するのがfloating IP、すなわち浮動IPだ。DigitalOceanのこの新しい機能では、ひとつのIPを同じデータセンター内のどのドロップレットにも割り当てられる。IPがユーザのアカウントに付随し、ユーザのインスタンスには付随しない。AmazonのEC2 Elastic IPも、このような機能だ。

いろんなユースケースがあるけど、ぼくが好きなのは災害対策だ。あなたのドロップレットのひとつが、完全にダウンしました。治すのに時間がかかりそうなので、セーブされているイメージを新しいドロップレットに載せて動かし、IPは元のIPをそのまま使いたい。…この奇跡を実現するのが、floating IPだ。

もっと良いのは、イメージからリカバーするのではなくて、バックアップドロップレットを用意し、そこにプロダクションドロップレットのすべてを複製しておくのだ。そしてプロダクションドロップレットに異状が起きたら、 IPをそのバックアップドロップレットに移行するだけだ。ユーザ(お客さん)にとっては、サーバが落ちたという認識は完全にゼロだ。適当なスクリプトを書いておけば、IP移行の過程も自動化できる。

また、ロードバランサーを二つ使って(災害時には)floating IPを有効に使えるだろう。DigitalOceanは今や70万のデベロッパのために800万のクラウドサーバをデプロイしているから、この機能は彼らの仕事も楽にするだろう。

〔訳注: floating IP参考記事(1)(2)。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。