日本ではコーポレート・ベンチャーキャピタルが主流

japan-flag

【本稿の筆者、James Rineyは、DeNA Venture Capital Groupのプリンシパル】

アメリカで資金調達を考えるとき、コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)は「プランC」とほぼ同義だ。有力ベンチャーキャピタルから資金を得られなければプランBの準大手へと移る。それに失敗したときのプランCが、コーポレートだ。

例外はあっても、コーポレートは最後の手段と考えられがちだ。そこはあなたの会社が売れ残ったり、評価額が高すぎてそんな会社に小切手を書く頓狂な投資家は山ほどの「馬鹿マネー」を持っているところだけ、というときに行く場所だ。

「やつらは最低だ!」とUnion Square VenturesのFred Wilsonは言う。「彼らは会社の成功にも起業家の成功にも興味がない。大企業は自分たちの利益を最大化するために存在している。いい人や寛大になることはない。そんなものは彼らのDNAにない、だから投資家として最低なのだ」。

企業から資金調達することは米国で、とくにシリコンバレーでは理想的と言えないかもしれない。しかし日本では、IT起業家にコーポレート・ベンチャーキャピタルを嫌う贅沢は許されない。

CVC Participation Japan

様々な意味で、ベンチャーキャピタルとは基本的に企業の資金であり、それはコーポレート・ベンチャーキャピタルとしてだけでなく、個別ファンドの限定パートナーという形をとる場合もある。米国では圧倒的大部分の資金が年金基金、寄付、ファンドオブファンドなどの機関投資家から来ているが、日本では大半が企業からだ。

この相違は、日本の投資家の方がずっとリスク回避的であり、ベンチャーキャピタルは資金を投じるには危険すぎると広く理解されているためだ。そして、残念ながら、リターンはこの嫌悪感を乗り越えられるようなシリコンバレー並みにはいたっていない。

その結果、起業家の利用できるリスクマネーは著しく少ない。2014年、日本では9.6億ドルがベンチャーキャピタルに投じられたのに対して、米国では480億ドルだった ー 50倍の違いだ。エンジェル投資に関しては、違いは約10億ドル対241億ドルだ。言い換えれば、日本の起業家にはわずか19.6億ドルしか用意されていない。これは、おおよそAndreeseen Horowitzで5番目のファンドに相当する規模だ。

CVC Participation North America

ではなぜ日本企業はスタートアップに投資するのか?理由は他の国々の企業投資家とそう変わらない。企業投資の目的は金銭的見返りだけではない。経営的見地から、コーポレート・ベンチャー部門は、研究開発あるいは経営企画経費として見られている。

研究開発のニーズは、最新トレンドから目を離さなず、会社の中核ビジネスに影響を与えるものを手遅れになる前に発見することで満たされる。経営企画面からは、買収先企業を見つけるとともに、将来の提携を見越して有望な企業との関係を築くための機構の一つだ。要するに、彼らがVCをリスキーと考えているかどうかはあまり関係ない:金銭的見返りは主目的ではない。

スタートアップの資金の多くはいずれにせよ企業から来るため、企業マネーがなんらかの意味で独立マネーより劣るという発想は実はない。

実際、強力なブランドを持つ有力企業から資金を調達することは、市場に対して見せる姿勢として悪くない。体質的にリスクを嫌う国では、ブランド企業の後ろ盾は安定を意味し、その安定は途方もなく役に立つ。

CVC Participation Asia

名もない小さなスタートアップにとって、1年後も会社が存続していることを信じてもらえれば、ずっと顧客を説得しやすい。同じことは、優れた人材を雇うときにも言える。企業の後押しは、あなたのスタートアップという手漕ぎボートが、起業精神の嵐に出会っても沈没しないという幻想を与える。

認識は場所によって変わる。日出ずる国の起業投資家は、ベンチャーワールドのSequoiaだったり、Andreessen Horowitzだったりする。直観に反するかもしれないが、日本について聞くユニークな話は、おそらくこれが初めてではないだろう。

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

マッチングサービス「Omiai」のネットマーケティングがマザーズ上場へ

netma

オンライン広告やマッチングサービス「Omiai」を提供するネットマーケティングは8月13日、東京証券取引所マザーズ市場に新規上場を申請し承認された。上場予定日は9月16日で、証券コードは6175。

ネットマーケティングでは上場にともなって、49万株を公募し、108万株を売り出す。ネットマーケティング代表取締役の宮本邦久氏(50万株)、ネットマーケティング取締役の長野貴浩氏(20万3100株)および松本英樹氏が(1万6900株)のほか、ベンチャーキャピタルのRIP2号R&D投資組合(33万株)、DBJキャピタル投資事業有限責任組合(2万株)などが株式を放出する。オーバーアロットメントによる売り出しは23万5500株。

公募・売り出し価格の仮条件の決定は8月27日、ブックビルディング期間は8月31日~9月4日。価格の決定日は9月7日。主幹事証券会社はSBI証券となっている。

同社の2013年6月期の売上高は46億9084万円、経常利益は5557万円、純利益は6140万円。2014年6月期の売上高は66億1864万円、経常利益は2億7314万円、純利益は1億2695万円となっている。

ネットマーケティングは2004年7月の創業。ウェブ広告代理店としてスタートし、アフィリエイトサービスプロバイダー(ASP)などを展開。2012年からはFacebookを使ったマッチングサービスのOmiaiを開始。2015年にはそのOmiaiの仕組みを利用したジョブマッチングサービス「Switch.」も展開している。

バトル応募企業紹介:難病での休職、妻の産休手続き——起業家の経験が生んだ労務支援サービス「SmartHR」

150811smarthr01

スタートから5年を数えるOpen Network Lab(Onlab)のインキュベーションプログラム「Seed Accelerator Program」。4月に開催された第10期のデモデイで最優秀賞に輝いたKUFUのサービス「SmartHR」がクローズドベータ版のサービスを開始した。事前に募集をしていた約300社に対して順次アカウントを提供している。あわせて、SmartHRのサイト上で、新規のクローズドベータ版ユーザーも追加募集している。

SmartHRは「入退社の書類作成」「社会保険の手続き」といった労務手続きをサポートするサービスだ。例えば入社時の書類作成の場合、新入社員の氏名や住所などを入力すると、印刷すればそのまま利用できる役所提出書類などを自動で作成。さらに画面上にToDoリストを表示し、必要な作業を指示してくれる。今秋をめどに政府が提供する電子申請システム「e-Gov」と連携し、オンライン上での書類申請も可能になるという。ビズグラウンドの「Bizer」のほか、freeeやマネーフォワードが提供するクラウド会計サービスの機能の一部が競合にあたるだろうか。

自身の病気、妻の産休がサービスのきっかけに

KUFUの設立は2013年1月。代表取締役の宮田昇始氏は、かつてスタートアップで勤務していたが、数万人に1人発症するかどうかという難病にかかって顔面左半分麻痺、聴覚障害、視覚障害という経験をしたのだという。しばらく休職して病気から回復したが、自分の生き方や働き方を考えた上で独立しようとなったのだそう。そこでフリーランスで活躍していたデザイナーやエンジニアと作ったチームが同社の母体となった。

KUFU代表取締役の宮田昇始氏

KUFU代表取締役の宮田昇始氏

受託を受けながらいくつかサービスを企画。その1つを持ってonlabの門を叩き、見事にプログラムに採択されるも、「スタートして1カ月くらい『本当にそこにユーザーの課題があるのか』とヒアリングを続けていた。深掘りして考えて行くと課題があるのか分からず、数えるだけでも9回のピボットをした」(宮田氏)のだという。

そんなタイミングで思い出したのが前職での休職経験。その際、休職時の手当の申請などで社会保険労務士(社労士)にはお世話になったのだそう。また時を同じくして宮田氏の妻が産休をすることになったが、会社で手続きをしてもらえなかったために宮田氏が代行。その面倒さを痛感したという。

「ここにユーザーのニーズがないかと思ってヒアリングしたところ、特に10人程度の会社だと、労務の専任者がおらず代表が労務手続きをしているというケースが多かった。コストが合わないため、労務は面倒だが社労士を雇えないのだという。そういった課題を解決できるサービスを考えた」(宮田氏)

デモが動くようになって各所に話をしたところ、反応が良かったのは小規模の会社だけではなかった。「実は30〜50人規模の会社の反応が一番いい。その規模でも労務専任の人材がおらず、経理や人事が兼任している状況」(宮田氏)。現在はベータ版でサービスを提供しているため、利用は無料。今後は月額課金を中心にしてサービスを提供する予定だが、詳細については現在検討中だという。

同社はOnlabのほか、DGインキュベーションおよび非公開の1社からシードマネーを調達している。金額については非公開となっている。

なお同社は、11月17日、18日に渋谷・ヒカリエで開催予定のイベント「TechCrunch Tokyo 2015」の目玉企画「スタートアップバトル」に応募頂いている。

スタートアップバトルは2日目の11月18日午後に予定している企画で、100社以上の応募の中から書類審査を勝ち残った約10社が投資家や起業家、経営者、スタートアップ関係者、大手ネット企業の事業担当者などを含む観客の前でプロダクトのお披露目をするコンテストとなっている。

もちろんSmartHRが登壇するかどうかは審査が終わるまで分からないが、早く正式版のサービスをお披露目してもらいたいと期待している。

【TechCrunch Tokyo 2015スタートアップバトルの応募はこちらから

【TechCrunch Tokyo 2015の前売りチケット購入はこちらから

デジタル素材のマーケットプレイスを展開するピクスタがマザーズ上場へ

150610pixta
150610pixta

ピクスタのコーポレートロゴ。PIXTA会員のクリエーターがデザインした

写真や動画などデジタル素材のオンラインマーケットプレイス「PIXTA」を提供するピクスタは8月10日、東京証券取引所マザーズ市場に新規上場を申請し承認された。上場予定日は9月14日で、証券コードは3416。

ピクスタでは上場にともなって、18万株を公募し、27万7900株を売り出す。ピクスタ代表取締役の古俣大介氏が5万株、取締役の遠藤健治氏が3万株、同じく取締役の内田広太郎氏が1万3000株、Globis Fund III,L.P.が9万8500株、Globis Fund III(B),L.P.が2万7700株、SocialEntrepreneur投資事業有限責任組合が5万3000株、関西インキュベーション投資事業有限責任組合が5700株をそれぞれ放出する。オーバーアロットメントによる売り出しは6万8400株。

公募・売り出し価格の仮条件の決定は8月26日、ブックビルディング期間は8月27日~9月2日。価格の決定日は9月3日。主幹事証券会社は野村證券となっている。

同社の2013年12月期の売上高は7億8232万円、経常利益は4645万円の赤字、純利益は4698万円の赤字。2014年12月期の売上高は10億6876万円、経常利益は9844万円、純利益は9053万円となっている。

ピクスタは2005年8月の設立(当初の社名は「オンボード」)。2006年よりPIXTAを展開してきた。

PIXTAはプロ・アマチュアのクリエーターがPIXTA上に素材を投稿して販売。代金の一部をPIXTAが手数料として徴収し、クリエーターに報酬を支払うというもの。当初は写真に限定してサービスを展開していたが、現在ではイラストや動画など様々なデジタル素材を購入できる。2014年度の数字では、素材点数が983万点、単品販売の月間購入者数の累計は17万人、平均月間単価は5979円となっている。また2014年からは定額制販売も開始しており、2015年度第2四半期時点の契約件数は435件となっている。

アジアを中心にした海外展開も進めており、2013年には英語版サイト(7月)と中国語版サイト(12月)を開設。同年11月にはシンガポールに現地法人、2015年7月には台湾支店をそれぞれ立ち上げている。

ピッチイベント「RISING EXPO 2015 JAPAN」、優勝は予約台帳サービスのトレタに

rising expo 2015 japan

サイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)が主催するスタートアップ向けのプレゼンイベント「RISING EXPO 2015 JAPAN」が8月7日、東京・新豊洲にて開催された。

今回で4回目となるRISING EXPOは、「アジア最大級の資金調達・事業提携の場」と銘打ち、約250人の起業家や投資家を招待するクローズドイベント。イベントでは、一次審査(僕も一次審査員として参加している)を通過した国内外15社のスタートアップがプレゼンテーションを繰り広げた。 グランプリに輝いたのは予約台帳サービス「トレタ」を展開するトレタだった。同社を含め、登壇順にサービスの概要を紹介したい。

オープンエイト

女性特化のスマートフォン動画広告プラットフォーム「Video Tap」を展開。 Video Tapは月間延べ4000万人、女性含有率90%にリーチするプラットフォームとなっている。

広告主が動画広告に求めるのは「高い完全視聴率」「ブランディング効果」。一方でメディアが求めるのは「収益力」「ユーザービリティ」だ。Video Tapではそんな両者のニーズをかなえるべく、独自の動画広告UIを開発している(詳細は過去記事参照)。直近ではコンテンツマッチ型の動画広告も配信可能になった。6月から事業をスタートしたが、すでに資生堂、コーセー、P&Gなどナショナルクライアントによる利用実績があるという。
フーモア

ゲーム向けのグラフィックに特化したクラウドソーシングサービスを展開。登録クリエーターは3000人でその割合は国内7割、海外3割。イラスト制作からはじまり、2Dアニメーションや3DCG、マンガの制作までを担当している。創業4年で、売上は過去3年で前年比500%、230%、140%の成長を実現。

現在はネイティブ漫画広告の制作も実施しているが、この評価が非常に高いそうだ。DeNAのマンガボックスに掲載した漫画広告は完読率97%、(広告を出したサービスの)登録者率500%増、課金額250%増となった。VOYAGE GROUPから電子書籍サービス「Androbook」も購入し、新たなサービスを準備中だという。今後は受託に加えて、メディアでのマネタイズ(ヤフーとの提携が決定している)、オリジナルIPの発信を進める。

VUNO

韓国発のVUNOは、人工知能を活用した医療向けの画像処理サービス「VUNO MED」を開発している。通常、医師や放射線技師などはCTスキャンの画像などを、自身の経験に基づいて診断するが、それでは診断できる画像の数が限られている(一生で1人の放射線技師が診断できるのは1万人とも言われる)し、初見では判断がつかない症状もあるだろう。

そういった経験に依存するところの診断を、人工知能と過去の症例画像の組み合わせによって精度の高いモノにしようというのがVUNO MEDの考えだ。これまでに韓国の民間企業や政府系VCから合計約1億円の資金を調達。8つの病気に対してこの取り組みを進めている。

JOKERPACK

こちらも韓国のスタートアップ。同社が提供する「BeeCanvas」は、「キャンバス」と呼ぶページ上に、動画やウェブページなどさまざまなフォーマットのデータを貼り付けて保存・共有できるサービス。すでに日本語化されているほか、iOS、Android向けのアプリも提供されている。

Lang-8

TechCrunchでも何度か紹介している「HiNative」は、学習したい言語で文章を書き、その言語が母国語であるユーザーと添削しあうことができるサービス。自分の発音を録音して他のユーザーに聞いてもらったり、逆にネイティブが正しい音声を録音して教えてあげたりすることもできる。

外国語学習で重要なのは文法だけでなく文化や習慣も大事だというが、HiNativeではユーザー間でメッセージをやりとりすることで、自ずと文化的な背景も学ぶことができるとしている。現在170カ国で利用されており、国別では中国が42%、米国が23%となっている。これまでの質問は15万件、回答は50万件。

スピカ

ゆめみからスピンアウトしたスピカは、ネイル版のInstagramとも言えるアプリ「Nailbook」を展開している。Nailbookではネイル写真とネイルを作成した店舗情報を紐付けて掲載。現在、ノンプロモーションながら120万DL、73万MAUを達成。これまでに100万枚の投稿が集まっているという。

ネイルサロンの予約はまだ10%しかオンライン化されていないそうで、今後は残り90%の市場を狙ってマネタイズを進めるそうだ。その第一歩として、サロン向けにネイリストと直接メッセージをやりとりしてカウンセリング・予約を行うアプリ「サロンブック」を開発している

トレタ

飲食店の予約台帳サービス「トレタ」を開発。 飲食店では通常紙の台帳を利用して予約管理を行うが、その業務は電話とメールの対応で1日3時間程度にもなるという。これを「紙と同等の簡単さ」「紙を圧倒する利便さ」のアプリで実現するのがトレタだ。

加盟店舗数は3000以上で、その課金継続率98.7%、MAU(月間アクティブユーザー)は95.6%だそう。すでにヤフー、ヒトサラと連携済みだが、今後はグルメサイトとの連携のほか、海外進出や決済連携なども検討している。

Misoca

クラウドで請求書を作成できるサービス。間もなくアプリ版もリリース予定だそう。登録事業者数はこの1年で4倍に成長しているそうだ。リリース後から口コミでユーザーを伸ばし、昨年の資金調達を契機に体制を強化したところユーザー数は急増。利用事業者は5万社、請求発行総額は年間750億円になるという。

同社の強みは3つ。まずエンジニア集団によるUXの高速改善体制を作っていること。そして次に名刺管理サービスからECモールまで、多くのサービスと連携していること。3つ目がバイラル。作成した請求書にロゴが入るので、自ずとサービスが広がっていくのだそう。現在サービスは基本無料。郵送代行などのオプションを有料で提供する。

Wizpra

グローバル企業でも重用される指標であるNPS(Net Promoter Score:顧客のロイヤルティ測定の指標)で顧客の「感動」を定量的なデータにし、企業の収益化の改善ツールとして活用する「Wizpra NPS」を提供する。 代表の今西良光氏いわく「サービスの現場は非効率。気合い、根性、勘の『3K』に頼りがち」なのだそう。それを変えるためこのサービスを開発した。

クラウド上で顧客の声の取得からからNPSに基づいた仮説立案、プランの実行までをカバーする。リリースから約1年で大手企業での導入も進んでいるということで、年度内に100社以上での導入を見込む。 また8月6日にはミクシィ・リサーチとの提携を発表。クレティセゾンとも新しい広告モデルを企画中だという。

A-STAR

ITアウトソーシング市場は国内80万人。ただしこのうち55万人、3兆円規模が多重下請構造の支配下にあり、政府からも「構造不況」と認定されている状況なのだそう。これを変革させようとしているのがA-STARだ。

同社はこの構造不況解決に向け、ITアウトソーシング特化のプラットフォームを展開している。現在登録するIT人材は4800人。案件応募数は月間600件程度だが、「IT人材に特化すると業界トップクラス」になるという。

ZUU

現在金融のバーティカルメディアが主力事業となっているZUU。メディアは1年で17倍に成長しているとのことで、現在250万UU、1000万PV(コンテンツ配信先を含めると2000万PV)。サイトで資産運用に興味のある潜在層を集客し、外部サービスや自社サービスのZUU Signalなどに送客している。

ZUU Signalは、自らの持つ株式銘柄や興味のある株式銘柄の状況や関連するニュースなどを閲覧できるダッシュボード。金融や投資に関する知識があまりないユーザーでも理解できるよう、10のテクニカル分析と4つのファンダメンタル分析をくみあわせた独自のアルゴリズムで、銘柄を信号機のように赤、黄、青のカラーで診断する。

Ayannah Information Solutions

フィリピン発のスタートアップ。同社が手がけるのは送金サービスの「Sendah Direct」は、銀行口座を持たないユーザー向けの送金サービスだ。東南アジアでは日本ほどクレジットカードや銀行口座を持っている人が少ないのだが、Sendahはそういった人向けにウェブ、SMS、スマホアプリを通じて送金できるサービスを提供している。今後はインド、インドネシア、アメリカにも進出を検討する。

Drivemode

Drivemodeはスマートフォン端末の画面を集中して見なくても電話やメッセージなどを利用できるというAndroidアプリ。

電話やメッセージングなどの機能を備えたインターフェースを運転手向けに設計しているので、例えば運転中に電話がかかってきても、道路を見ながらその対応ができるという。音楽アプリだってDrivemode経由で立ち上げることも可能。今後はカメラやハードウェアとの連携も進める。詳細は過去記事を参考にして欲しい。

Anywhere 2 Go

タイ発のスタートアップであるAnywhere 2 Goは、交通事故発生時の保険や事故後のサポートをスマートフォンアプリで実現する。例えば事故が起きたときはアプリを立ち上げ、現場の写真を撮影。相手の居る事故だった場合は、アプリを通じて相手とのやりとりを行うという。これによって、保険会社やユーザーの時間を80%、コストを90%削減できるとしている。

KAMARQ Holdings

グライダーアソシエイツ創業者の町野健氏が代表取締役兼COOを務め、建築家の鄭秀和などが参画するカマルクは、スタートアップの家具メーカーだ。

テスト販売したデザインこたつはヤマダ電機経由で6万5000台を完売して手応えを感じ、サービスを本格化させたという。

第1弾プロジェクトは「家具×自由」をキーワードにカラーやサイズを選べるデザイン家具を販売。さらに今後は「家具×音楽」として、スピーカーとして音が響く出るテーブルやベッドやTVチェストなどを展開。また 第3弾は「家具×安心」をテーマに、センサーで温度や人感を検知するドアを販売する予定。販路はECが中心となる。

グランプリを含む各賞は以下の通り。
グーグル賞:Misoca
住友不動産賞:KAMARQ Holdings
アマゾン賞:KAMARQ Holdings
インテリジェンス賞:ZUU
新日本監査法人賞:オープンエイト
AGS賞:トレタ
SMBC日興証券賞:Misoca
JAL賞:トレタ

イベント終了後に参加者とも話したのだが、各賞を受賞したプロダクトは非常に良くできているのだが、海外スタートアップが1社も賞に選ばれなかったのは少し残念だと個人的には感じた。VUNOは日本だと医療行為になってしまうのかも知れないが、過去のデータから統計的に病気を判定することで、診断の制度を高める素晴らしい試みだし、Anywhere 2 Goのようなサービスは日本でも実現して欲しいところだった。

楽天市場が返品無料の“試着体験”を強化——靴・ファッションECの「ロコンド」が出店

LOCOMALL

返品送料無料で靴やファッションアイテムを試着して購入できるEC「ロコンド」を運営するロコンド。5月にはアルペンからの10億円の資金調達を発表していたが、その際にロコンド代表取締役社長の田中裕輔氏は「今期の黒字化が見えた」と語っていた。そんな同社が楽天のECモールである「楽天市場」に進出。さらなる販路の拡大を目指す。

出店する店舗名は「LOCOMALL(ロコモール)」。当初はロコンドで取り扱う商品のうち約7万点(ロコンドでは季節によって変動するものの、1000ブランド15〜20万点の商品を扱っている)の販売を行うが、今後ラインアップを拡充していく予定。

田中氏は「創業から5年が経過して年商100億円が見えてきた中で、成長曲線を上げていきたい。 サービスの認知度が上がり、品揃えも増えてきたが日本のECユーザーの90パーセント以上は『試して(試着して)買う』という概念をまだ知らない。『サイズが合わないEC』では、ユーザーにとってエンターテインメントにはならない。ECで自分にピッタリのモノを買えることを知ってもらいたい」と説明。まずは店舗感覚で試着できる返品無料のECを体験して欲しいと訴える。

中小規模の店舗が出店する楽天市場だが、その一方ではZOZOTOWNをはじめとしたファッションEC対抗のサービス構築を進めている。2012年に出資したスタイライフを子会社化し、「楽天ブランドアベニュー」を展開するなどしている。

楽天のファッション部門を統括する楽天 スタイライフ事業 事業長で楽天市場営業第四部 部長の松山奨氏は「楽天市場は『商品数が豊富』『安い』に加えて『サイズや色がそろっている』と評価されているが、ユーザーには『高価なアパレルはサイズが分からない』『返品リスクがある』と購入ボタンに踏み切れない心理がまだある」と説明。その上で、「ロコンドの『試着』というエクスペリエンスを提供していきたい」と語る。

実は「試着」によるユーザーエクスペリエンスの向上は楽天が現在注力しているポイントの1つ。7月にはオンラインでのフィッティング技術を持つエストニア発のスタートアップFits.meも買収している

楽天ではロコンドの出店にあわせて返品送料無料商品の特設ページを用意(もともとあったそうだが、実質的にはフルリニューアルとのこと)する。楽天では今後返品送料無料の商品を拡充したいとしているが、これは店舗側の対応によるところが大きいし、ロコンドでも効率的な仕組み作りには苦労したと聞いている。もちろんすでに一部店舗では独自に送料無料をうたっているのだが、大々的な実施に関してはまだ少し先になりそうだ。

「内部統制の有効性に関して確認すべき事項を発見」健康・美容メディア運営のリッチメディアが上場取り消し

150807rich

東京証券取引所(東証)は8月6日、東証マザーズ市場への新規上場を承認したリッチメディアの上場承認を取り消した。東証では「同社の取締役会において、予定していた新株式発行及び株式売出しの中止が決議され、有価証券上場規程に定める形式要件を満たさないこととなったため」と説明している。

リッチメディアは「ヘルスケア大学」をはじめとする健康・美容情報を取り扱うメディアのほか、ヘアサロン予約サービス「Kamimado」、ヘアスナップSNS「HAIR」などを展開している。これまでにリンクアンドモチベーションやKDDI、日本アジア投資、みずほキャピタルなどが出資をしている。7月6日に上場が承認され、上場を8月10日に控えていた。

ではなぜリッチメディアは上場の要件を満たせなくなったのか? 同社コーポレートサイトでは、以下のようなアナウンスがされている。

平成 27 年7月6日及び平成 27 年 7 月 17 日開催の各当社取締役会において、当社普通株式の株式会社東京証券取引所マザーズへの上場に伴う募集株式発行並びに株式売出しについて決議いたしましたが、当社内部統制の有効性に関して確認すべき事項が発見され、本日開催の当社取締役会において、当該確認に時間を要するものと判断したことから、募集株式発行並びに株式売出しの中止と、それに伴う上場手続きの延期を決議いたしましたので、お知らせ申し上げます。

なお、今後の上場手続きの再開時期につきましては、当該確認の結果を踏まえ、状況を慎重に見極めたうえで総合的に判断する予定です。

こういったケースはそうあるわけではないが、例えば2012年にはジャパンケーブルキャストが「コンプライアンス体制の有効性に関して確認すべき事項が発見され、当該確認に時間を要するものと判断した」として、同様に上場を取り消している。

リッチメディアの発表では「内部統制の有効性に関して確認すべき事項」があったということなので、財務報告の信頼性や法令遵守などに関わる課題が出てきたと見るのが妥当だろうか。

承認後に上場を取り消す理由とは

ここからはリッチメディアの話ではないが、これまでに上場を承認された会社が上場を見送ることになったケースについて紹介しておく。

まずは雇用や労働に関する課題が上場承認後に見つかるケースがある。上場審査の過程では、コーポレートガバナンスや内部管理体制の有効性などが厳しく審査される。しかしその審査を通過しても、あとから元従業員が「以前にこの会社パワハラを受けた」「賃金の未払いがある」なんて内容のメールやファックスが証券取引所や主幹事証券会社に送ればどうなるだろうか。その体制の見直しが求められるだろう。

また、事業上のトラブルに起因するケースもある。2006年にはゲームオンが上場を取り消しているのだが、この背景には顧客情報流出事件があった。同社は上場の約1カ月前、自社で運営していたゲーム情報ポータルサイトにおいて、新規登録ユーザーに対して、本人のメールアドレスとパスワードに加えて他のユーザーのメールアドレス・パスワードを記載したメールを送ってしまい、3900件近い情報が流出したのだという。これを受けて「内容を確認するとともに、投資家に周知徹底することが必要と判断した」とアナウンスし、上場をいったん取り消すことになった。ほかにも2011〜2012年には、東日本大震災や当時の市場状況を鑑みて上場を中止するというケースもあった。

上場後に株価が上がらない企業を揶揄して「上場ゴール」なんて言うことが増えたが、そもそも上場自体が大変なことを忘れてはいけない。市場と向き合うには信頼性や健全性が求められるということだろう。

トランスリミットの「Brain Dots」が1カ月で1000万ダウンロード達成——海外比率は95%

image-20150806-1

ノンプロモーションながらリリースから10日で100万ダウンロードを達成したトランスリミットのスマートフォン(iOS/Android)向けパズルゲーム「Brain Dots」だが、リリース1カ月にして1000万ダウンロードを達成したという。

Brain Dotsは物理演算を用いたパズルゲーム。ステージごとに1つずつ用意される青と赤の2つ「点」をくっつけるとクリアとなる。ユーザーはそのために、画面に線をひいて道を作ったり、図形をぶつけて点を移動させたりすることになる。

トランスリミットによると、韓国や米国、ロシアをはじめとした海外からの利用が伸びており、ユーザーの海外比率は96.25%になるという。アクティブユーザーのアプリ平均滞在時間は1日約30分、全ユーザーの総プレイ回数は1日1億回(ステージへのチャレンジ回数)を超えるという。

アクティブ率は非公開だが、「かなり高い数字」(トランスリミット代表取締役の高場大樹氏)。また継続率については、「面クリア形式の方が(最高得点を競う形式より)難易度設計が難しいが、一方でユーザにとっては目標値を設定しやすく、継続しやすい。最高得点を目指す形式だと同じところを何度もプレイするため、飽きは早くなる傾向にあると思う」とのこと。

Brain Dotsのステージは合計300。すでに全クリアの報告もソーシャルメディア上で見かけるようになったが、近日中に複数ステージのクリア時間を競うタイムアタック制イベントを開催するほか、ステージ追加などを含んだアップデートも実施する予定。

image-20150806-2

 

TCオフィスのある秋葉原で起業家とVC向けのサマーパーティー開催します

3331

僕たちTechCrunch Japan編集部は、東京・末広町(秋葉原からも徒歩数分だ)にある建物「3331 Arts Chiyoda」の中にある。この建物は中学校をリノベーションしたもので、アートスペースやコワーキングスペースがあったり、そして地下1階には僕らが入居するオフィススペースがある。いわば廃校の地下室で日夜記事を書いてるわけだ。今日は、そんな僕らがサマーパーティーをすることにしたのでお伝えしたい。

日時は8月27日(木)18時から、会場は僕らのオフィスがある3331 Arts Chiyodaのラウンジスペースだ。参加費は無料だけど、1つだけ条件がある。僕らが11月に東京・渋谷で開催するイベント「TechCrunch Tokyo 2015」の目玉企画、スタートアップバトルに8月24日(月)までにエントリーしてくれた企業に限定させていただく。該当するスタートアップには編集部からご連絡し、参加の詳細をお伝えする。

エントリーシートはすべて編集部が目を通し、個人的に気になったプロダクトはイベントに先駆けて記事でご紹介していたりするので、この機会にぜひ早めにエントリーして僕たちと暑気払いしませんか。当日はシード期のスタートアップに投資するVCも参加予定だ。

スタートアップバトルは創業3年未満で、今年ローンチもしくはローンチ予定のプロダクトを持つ企業が、プレゼンで競い合う企画。昨年は113社の応募があり、書類審査に通過した12社が決勝に進出、会場でプレゼンを披露した。今年も決勝には10社前後に登壇してもらう予定だ。応募資格は以下の通り。

応募資格

  • 未ローンチまたは2015年1月以降にローンチしたデモが可能なプロダクト(サービス)を持つスタートアップ企業(未公開プロダクトを歓迎します)
  • 創業年数3年未満(2012年11月以降に創業)で上場企業の子会社でないこと。なお、このイベント以前に開催された他のイベントで受賞をしていないプロダクトを優先します。

応募フォーム

スタートアップバトルの登録ページはこちらから(外部サイトにリンクします)
https://tctokyo2015.wufoo.eu/forms/techcrunch-tokyo-2015/

応募受付期間

2015年10月2日(金)23時59分まで(サマーパーティー参加希望の場合は8月24日まで)

審査について

  • 審査基準: 企業とプロダクトを対象にし、そのプロダクトの市場性やビジネスの成長性、またビジョンを実現していけるチームであるかを基準とします。
  • 事前審査:一次審査は書類審査とし、その後一部評価に必要な情報が足りない場合はインタビューやデモを見せていただく場合があります。選考を通った応募企業には運営事務局から10月9日までに審査結果を通知します。
  • 決勝戦: TechCrunch Tokyo 2015の2日目(11月18日午後)に行います。TechCrunch Japanが選んだ審査員によって最優秀企業を選出します。

自動車のビッグデータ解析行うスマートドライブが産革から最大6.6億円の資金調達、アクサ損保と新商品の開発も

150805smartdeive

車速やエンジン回転数など150種類にも及ぶ情報を取得するために自動車に用意されている「OBD-IIコネクタ」。ここに専用のデバイスを接続してリアルタイムに運転情報を取得。この”自動車のビッグデータ”を解析し、保険や車輌動態管理、CRMツールなど、さまざまなサービスに利用できるテレマティクス(自動車や輸送車両などに対して、移動体通信を通じてサービスを提供すること)情報のプラットフォームを構築しようとしているのが、北川烈氏率いるスマートドライブだ。同社は8月5日、産業革新機構から最大6億6000万円の資金調達を実施することを明らかにした。

開発中のデバイス

開発中のデバイス

スマートドライブは2013年10月の設立、ベンチャーキャピタルのANRIからシードマネーを調達して自動車向けのデバイスや連携アプリなどを開発していた。2014年8月からは千葉県・柏の葉にて実証実験を実施していた。また総務省主催の新事業創出支援プログラム「I-Challenge!:ICTイノベーション創出チャレンジプログラム」の1号案件にも採択された。

またスマートドライブでは、アクサ損害保険との業務提携契約を締結。資本参加も決定しているという。両社は任意保険のアクサダイレクト向けに新商品および新サービスの開発を進めているという。

新商品・サービスの具体的な内容については明らかにされていないが、リアルタイムに取得する情報をもとに、ドライバーの運転特性に応じて保険料が割引される「テレマティクス保険」を提供することになるのだろう。

米国などではこの動きが先行しているが、国内でもすでにソニー損害保険の「やさしい運転キャッシュバック型」、あいおいニッセイ同和損害保険「つながる自動車保険」といったテレマティクス保険が今春以降登場している。

“スポーツのためのIoTデバイス”を開発するLemonade Lab、foxconnグループから580万ドルの資金調達

device

スマートウォッチがあなたの運動記録を計測しますなんていう話はよくあるけれども、ではその取得したログデータを解析し、実用的なデータとしてリアルタイムに利用できるというサービスはまだまだ少ないような気がする。特にスポーツになるとなおさらだ。スマートウォッチの小さい画面では表示できるデータに限りがあるし、大画面化しつつあるスマートフォンをスポーツ中に持ち歩くのもちょっと面倒だ。

そんな課題を解決すべく、独自にスポーツ特化のIoTデバイスを開発しているのがLemonade Labだ。同社は8月4日、台湾・Foxconn(鴻海科技集団/富士康科技集団)の子会社であるFIH Mobileのほか、複数の個人投資家から総額580万ドルの資金調達を実施したことを明らかにした・。

Lemonade Labは2012年の設立。CEOを務める加地邦彦氏と孫泰蔵氏の2人が立ち上げた会社だ。加地氏はJ.P.モルガンでの勤務後に独立し、モバイル向けの株式情報配信・取引サービスを手がける会社を立ち上げたのち、Lemonade Labを設立することになる。

2000年代から泰蔵氏と親交があったそうで、同氏を通じて孫正義氏とも出会い、ソフトバンクモバイル向けにサービスを開発していた時期もあったそうだ。一方でロードレースに出場。現在はサイクルロードチーム「湘南ベルマーレスポーツクラブ」のゼネラルマネージャー兼選手という肩書きも持っている。

そんなすポース選手としての加地氏のキャリアも生きているというLemonade Labのプロダクト。同社では現在、自転車やランニング向けのウェアラブル製品を開発中だという。

「スマートウオッチ」から「スポーツのためのプロダクト」へ

詳細については現時点では非公開だったが(ティザーサイトはこちら)、体の各所にセンサーを付けてデータをリアルタイムに収集。その結果や、フォームなどの最適なアドバイスをスクリーン(腕時計にしたり、自転車に備え付けたりできる)に表示するものになるという。年内には国内外のアスリートなどをターゲットに、1000台程度の出荷を検討。端末の価格は500〜800ドルを予定。今後は反響を見て2016年以降、米国、欧州、日本のスポーツ愛好者向けに製品の展開を目指す。

「当初は『スマートスポーツウォッチ』を作ろうと考えていた。だが僕らはスポーツのためのプロダクトを作っている。スポーツの本質的な欲求は『上達すること』。そのためには自分のイメージしている動きと、その実態が合っていることが重要で、それを実現する『コーチ』が必要になる。時計と言う機能ではなく、データを分析して、ユーザーにフードバックしてあげることが重要」——加地氏はプロダクトについてこう語る。

今回資金を調達したFIH Mobileの親会社であるFoxconnは、AppleのiPhoneも製造する電子機器受託生産(EMS)だ。同社とはプロトタイプを制作する段階から、孫泰蔵氏を経由してコミュニケーションを取っていたのだという。

「(当初検討していたスマートウォッチの)デザイナーは見つけたが、さすがに向上までは持てない。ファブレスでやっていくしかない。そこで彼らにプレゼンをして、『一緒にやってみよう』となった。現場ではフィジビリティスタディから、ピボットの時も一緒にやってもらい、いざ本腰になって開発するとなったときに投資担当部門に繋いでもらった。」(加地氏)。今回調達した資金の大半はFIH Mobileからのものだ。

なおLemonade Labは2013年にスポーツの運動量を計測し、友人とコミュニケーションできるアプリ「Lemonade」を提供している。

Lemonade Lab CEOの加地邦彦氏

Lemonade Lab CEOの加地邦彦氏

iPhone液晶割れの修理、最安はどこ? ジラフがスマホの修理価格比較サービスをローンチ

最安修理ドットコム
最安修理ドットコム

最安修理ドットコム

ガラケーからスマートフォンの時代になり、ケータイでできることはとてつもなく広がった。ゲームをやりたい人からスケジュールを調節したい人まで、その恩恵は計り知れないだろう。だが一方で、広い画面を持つがゆえの課題もある。当たり前だけど、ガラケーとは比較にならない大きな液晶は落とした際などに傷つきやすいし、複雑になったシステムのため、アップデート中に電源を切ってしまうと、最悪起動しなくなることもある。

こうした背景もあってか、スマートフォンの修理を生業にする業者も増えてきた。とは言えその条件や修理価格を比較できるようなサイトはほとんど存在していなかった。

そんな中、先日ジェネラルパートナーの木暮圭佑氏を紹介したばかりの独立系ベンチャーキャピタルのTLM。彼らのほか、East Venturesや個人投資家からシードファイナンスを調達するスタートアップのジラフが、新サービス「最安修理ドットコム」を公開した。

最安修理ドットコムはその名の通り、スマートフォン(iPhone、iPad、Android端末)の修理価格をランキング形式で閲覧できるサイトだ。価格は各種ウェブサイトの情報をクローリングするなどして、現在全国約1000店舗の修理価格の情報を掲載。サービスはすべて無料で提供。マネタイズは今後検討していくが、当面はまずユーザー数の拡大に注力。今後はユーザーによる価格の登録なども進めていく。

サービスを提供するジラフは2014年10月の設立。代表取締役社長の麻生輝明氏は、もともとベンチャーキャピタルから内定をもらっていたのだそうだが、スタートアップ関連イベントのスタッフとしての活動で起業家など交流する中で、自ら起業するという選択肢を選んだという。

ジラフを立ち上げることになり、麻生氏がまず最初に提供したのは、スマートフォンの買取価格比較サービス「ヒカカク!」。2014年9月にスタートしたこのサイトでは、スマートフォン買取サイト・店舗の価格を地域ごとに比較できる。現在のMAU(月間アクティブユーザー)は5〜6万人ほどだが、年内にもMAU数十万人を目指す。

ヒカカク!

ヒカカク!

今後は会員制度を作って、メールベースでも情報提供を行う予定。また将来的には、業者向けに集客支援機能を提供するなどしてマネタイズを進める。

そうそう、最後にタイトルのとおりiPhoneの液晶を修理する最安値をお伝えしておこう。今僕らのオフィスがある末広町から一番近くて安い店舗での修理価格は7800円なのだそうだ。

ウェブ接客ツール「KARTE」提供のプレイド、5億円の資金調達—キャンペーンの売上7割増の事例も

プレイド代表取締役社⻑の倉橋健太氏

プレイド代表取締役社⻑の倉橋健太氏

ウェブ接客ツール「KARTE(カルテ)」を提供するプレイドは8月3日、Fidelity Growth Partners Japanおよび既存株主のフェムトグロースキャピタル投資事業有限責任組合を引受先とする第三者割当増資を実施し、合計5億円の資金調達を実施した。また今回の調達にあわせて、Fidelity Growth Partners Japanのデービッド・ミルスタイン氏が同社の社外取締役に就任する。

2014年9月にクローズドベータ版を公開し、2015年3月に一般にサービスを公開したKARTEは、リアルタイムにECサイトの来訪者を分析し、その状況にあわせてメッセージを配信したり、クーポンを発行したりという「接客」をすることでコンバージョンを促すツールだ。

導入費用は月額5000円から。接客数に応じて料金が発生する従量制課金制となっている。ユニークユーザー(UU)10万人以上の場合は定額のエンタープライズプランも用意する。ネットショップ作成サービスのカラーミーショップなどはワンクリックで導入ができるなど、外部サービスとの連携も積極的に進めている。

導入企業はアパレル・コスメ・家電といった各種ECサイトをはじめ、ホテルや人材紹介、不動産、英会話などに拡大。処理するページビューは月間10億以上。また累計UUは2億人以上で、一般公開した2015年3月以降、前月比40%増の成長を続けているという。「想像以上に著名なECサイトに使って頂けている。ECサイトは結局これまで来訪者がちゃんと見えないままサービスを提供してきた。ユーザーの行動や心理状況までをリアルタイムで見られるツールはほかにないと思っている」(プレイド代表取締役社長の倉橋健太氏)

 

その具体的な実績はというと——例えばアパレルECのベイクルーズでは、購入金額の合計が一定額を超えるとノベルティをプレゼントするキャンペーンを実施していたのだそう。その際、カート内の商品の合計金額が下回る場合にのみ「あと少しの金額を購入すれば貴重なノベルティがもらえる」という旨のバナーを表示した。これによって昨年比でキャンペーンの売上が69%も増加するという結果が出たそうだ。

ベイクルーズの事例

ベイクルーズの事例

 

またコスメECのコスメ・コムでは、共通の特徴を持った商品に興味を持った来訪者に対して、より詳細な情報をまとめた比較コンテンツに誘導して情報提供(接客)を行ったという。その結果、接客を実行した来訪者は接客されていない来訪者と比較して、購入率がPCで約6%、スマートフォンで約25%向上したという。

プレイドでは、今回調達した資金をもとに、エンジニアを中心とした人員を強化。サポート体制についても拡充する。「サービスの稼働率を上げるためにはサーポートとコンサルの両方が大事。顧客の分からないことを解決するだけでなく、次はさらに何ができるかを知ってもらうためのチームを強化したい」(倉橋氏)。また今夏をめどに、さらに大きな機能も提供することを検討中だという。さらに今後はグローバル展開を見据えた準備も進めるとしている。

経験者の“生の声”もとに子育て情報を提供する「cozreマガジン」、運営元が1億円の資金調達

cozre

子育てや子どもとのお出かけなど、子どもを持つ親をターゲットにした情報を提供するメディア「cozreマガジン(コズレマガジン)」および夫婦向けコミュニティ「cozre(コズレ)」を運営するトウキョウアイトは7月31日、グローバルブレインを割当先とする1億円の第三者割当増資を実施した。また同社は社名を8月1日より「株式会社コズレ(英文表記:Cozre Inc.)」に変更する。

トウキョウアイトは2013年7月の設立。当初はコミュニティサービスのcozreを提供してきたが、2014年4月よりcozreマガジンをスタートした。

cozreマガジンは、子育ての経験がある全国約300人の「ナビゲーター」が「季節のイベント」「食」「おでかけ」など7つのカテゴリに関する情報を投稿。それをトウキョウアイト内の編集者(こちらも子育て経験のある主婦編集者が中心)がチェックして掲載している。また、ナビゲーターとは別に子育て経験者のコミュニティを持っており、彼らに対して定期的にアンケートをとることで、子育てをする人たちの「生の声」を反映して記事を制作しているという。

7月時点のMAU(月間アクティブユーザー数)は125万人。子育てをターゲットにした情報サイトなんて聞くと女性ユーザーが中心というイメージだが、3割は男性ユーザーなのだそう。

同社では、今回の資金調達を契機にcozreマガジンの事業を強化。コンテンツ数の増加や品質向上、ユーザビリティ向上を進めるという。ナビゲーターについては年度内に10倍の規模まで拡大させる予定。またナビゲーターはリテラシーの低い人も少なくないため、容易に投稿や編集が可能な独自のCMSも開発しているという。加えて、現在トライアル中の子育て関連事業社向けマーケティング支援事業も年度内に本格化していく。

SmartNewsの“原型”になったニュースキュレーションサービス「Crowsnest」が終了

crowsnest_sc1

 

スマートフォンユーザーならばアプリストアで一度は見たことがあるであろうニュースキュレーションサービス。4月に上場したGunosyの「グノシー」、スマートニュースの「SmartNews」をはじめとして、今では多くのユーザーが利用している。

そのSmartNewsの原型とも言えるウェブサービス「Crowsnest」が今月、ひっそりと終了していた。以前にTechCrunchでも紹介しているとおり、Crowsnestは現在スマートニュースの共同代表であり、SmartNewsの開発者である浜本階生氏が手がけたサービスだ。

このサービスは、ユーザーがフォローするTwitterアカウントで言及されているリンクや全体のツイートから集計したリンク、経過時間などをもとに、重要だと思われるニュースを紹介してくれるというもの。このロジックを発展させたものがSmartNewsの「Twitter」のタブだと言ってもいい。

初期のグノシーも配信する記事の“パーソナライズ”をうたっていたのだが、Crowsnestのユーザーのフォロワーが言及するリンクを重視するパーソナライズという方向性はそこまで多くのユーザーには受け入れられなかったそうだ。そこで全体のツイートで言及されているリンクに重きを置いてサービスを設計したのがSmartNewsなのだそう。

スマートニュースによると、5月頃からサービスに不具合が出ていたそうで(実際僕がアクセスしても、記事が1本も表示されないことが何度かあった)、結局開発リソースを割り当てることができなくなり、サービスが終了することになったそうだ。「こういう終わり方は心残りだが、その分SmartNewsでのプロダクト開発に集中して、良い結果を出せれば」(浜本氏)

Facebook本社で任天堂スーパーマリオメーカーを使った新コースづくりハッカソン開催

2015-07-31-mario-gif

Facebookの社員の役得がまた一つ増えた。任天堂のスーパーマリオメーカーを発売の一月前にプレイできたのだ。昨日(米国時間7/29)、Facebookが本社で開催したスーパーマリオメーカーを使って新しいコースを作るハッカソンには約100人の社員が参加した。

このゲームはスーパーマリオブラザーズの設定を用いて新しい障害物コースを作るというもの。Facebookの社員チームは最高のコースづくりに奮闘した。おそろしく難しいコースもあれば、Facebookの「バウザーのタイムライン」テーマにしたユーモラスなもの、「すばやく動いて、ものを壊せ」というFacebookのモットーを取り入れたMove Fast And Brick Thingsというキュートなものもあった。

上のビデオでハッカソンの模様とともににスーパーマリオメーカーの雰囲気が分かるだろう。マリオ自身も登場した。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Yahoo!ニュースがステマ記事の配信停止、一方ではユーザーを「ブースト」獲得した過去も

yahoo-logo

Yahoo!ニュースがステルスマーケティング、いわゆる「ステマ」への姿勢を明確にした。
ヤフーは7月30日、Yahoo!ニュースのスタッフブログにて、ステマを行う記事提供媒体への対応を説明したブログエントリーを投稿した。

ステマ、ノンクレジット広告(「PR」などのクレジットを入れずに広告であることを隠し、編集コンテンツと誤認させるような記事広告)の問題はこれまでも多々あった。

3月には一般社団法人インターネット広告推進協議会(JIAA)がネイティブ広告に関するガイドラインを発表。これを受けての媒体、広告代理店などがユーザーに不利益や不信感を与えないコンテンツ作りに向けて動いたり、一方ではノンクレジット広告を作り続けたりと、様々な対応をしていると聞く(念のために言っておくと、TechCrunchは記事広告を一切やってないし、そんな商品メニューもない)。6月には日経デジタルマーケティングが「一部の媒体がYahoo!ニュースへ広告記事を配信している」といった旨の報道をしている。

Yahoo!ニュースは、社外や自社グループで運営するなど数多くの媒体から記事の提供を受けてニュースを配信している。だがYahoo!ニュースに記事を提供している媒体が、ニュース記事の体裁の広告——つまりノンクレジット広告——を編集記事として配信しているというわけだ。

ヤフーでは今回の発表について、「このタイミングになったことに特段理由はない」(広報部)として前述の報道との関連を否定した。だが同日付で「マイナビニュース」と「マイナビウーマン」を配信するマイナビ、「モデルプレス」を配信するネットネイティブとの配信契約を解除したことを明らかにしている。

スタッフブログのエントリーでは、ノンクレジット広告について「読者を裏切るステルスマーケティング(いわゆる「ステマ」)の一種であり、優良誤認として景品表示法違反に問われる可能性もある悪質な行為」とあらためて指摘。自らの方針を次のように説明した。

数多くの媒体から記事の配信を受けているYahoo!ニュースでは、ニュース提供各社との契約で、広告としての表記の有無にかかわらず記事広告やタイアップ記事を配信することを従来から明示的に禁止しており、また、記事中のリンクから広告に誘導することも禁止しています。

 

ニュース提供各社には契約遵守を強く要請していますが、残念ながら違反が認められた場合には、速やかに契約を解除してきました。今後も、契約違反が明らかになった場合は、契約解除はもちろんのこと、Yahoo!ニュースが信頼を損なうことによって被った損害や信頼回復のために要した費用の請求、その他法的措置を含む厳正な対処を行います。

スタッフブログのエントリーは、「もし仮にYahoo!ニュースでこのような悪質な行為を許せば、記事内容に対する信頼が損なわれるだけでなく、読者、広告主様との信頼関係をも損ない、ひいてはYahoo!ニュースが長年かけて構築してきたサービスそのものへの信頼を大きく揺るがす重大な問題と考えており、これらの行為について、積極的に排除し、撲滅したいと考えています」と結んでいる。

ヤフーは“優良誤認まがい”の行為をしたことがないのか

Yahoo!ニュースがこういった姿勢を対外的に発表し、実際にノンクレジット広告を配信していたとされる媒体を排除したというのは、彼らが言うように読者や広告主の信頼に応えるという点で本当に素晴らしいアクションだ。

だが一方で——ステマが景表法でいうところの優良誤認に当たる可能性があるのと同じように——彼らも結果的にユーザーに対して、サービスの価値を誤って認識させかねない行動をしていたことも伝えるべきだろう。

僕は昨月、App StoreやGoogle Playで、アプリのランキングを急上昇させる広告手法である「ブースト」について取材し、記事にしている。詳細については記事を読んで頂きたいのだけれども、ブーストについてざっくり説明すると、リワード広告(コンバージョンに応じて何らかの報酬が付与される広告のこと)の仕組みを利用して、Amazonのギフト券などに交換できる「ポイント」目的のユーザーに特定のアプリをダウンロードさせることでランキングを急上昇させる、極端に言えば「カネでダウンロード数やランキングを買う」手法のことだ。

当時取材に応じた広告代理店、アプリ開発者などは、この仕組み自体が「アプリの価値を実際より優れているように見せている」ということから、「優良誤認ともとらえられかねない」という声を聞くこともあった。そして記事の掲載と並行してヤフーが「Yahoo!ニュース」のアプリでそのブーストを実施していたのを知ったのだ。

以下の画像はブーストを実施していた根拠となる、おこずかいアプリ(指定のアプリをダウンロードすることでギフト券などに交換できるポイントを得られるアプリ。ブーストに使用される)のスクリーンショットだ。なおこの画像はブログ「アップトーキョー」に掲載されていたものを許諾を得た上で使用した。ヤフーでは「ブーストについて定義がないので回答できないが、あくまで広告手法の1つとしてリワード広告を使用したことがある」と説明する。

おこづかいアプリでブーストをしている「Yahoo!ニュース」のアプリ

おこづかいアプリでブーストをしている「Yahoo!ニュース」のアプリ

 

企業である以上ビジネスありきで、信頼性だけを追いかけるわけにはいかないだろう。いかにアプリのダウンロード数やアクティブユーザー数を増やすかも重要だ。だがユーザーの信頼を裏切るような不正な広告に対して毅然とした態度をとる企業だからこそ、自らが利用する広告についても、信頼を裏切らないものであって欲しいと思っている。

女性特化転職サイト運営のLiBが2.7億円を調達、キャリア支援の新構想も発表

screenshot_399

キャリア女性特化の会員制転職サイト「LiBz CAREER(リブズキャリア)」を運営するLiBは7月30日、リンクアンドモチベーション、クラウドワークス、サイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)、日本ベンチャーキャピタル、ニッセイ・キャピタルの計5社を引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額は2億7千万円。出資比率やバリュエーション等は非公開。

LiBは2014年4月の創業。「企業で活躍する女性を増やし、女性が活躍する社会を創る」をミッションに掲げて同年5月にLiBz CAREERを立ち上げた。同年7月にはCAVおよびEast Venturesから7千万円の資金調達を実施している。LiBz CAREERは2015年7月末時点で会員数約2万4000人に到達する見込みだという。

同社では今回の資金調達をもとにマーケティングを強化。さらに女性向けキャリア支援サービスの提供。機能拡充をするが、その一環として発表されたのが今回出資するリンクアンドモチベーション、クラウドワークスとともに展開する「キャリアパスポート構想」だ。

LiBではより広い領域で女性のキャリア支援を行うべく、今回出資を受けた事業会社との連携を進める。まずリンクアンドモチベーションと提携し、クライアント企業に対して女性が働く際のモチベーションの診断や、採用や研修、制度設計などの支援を行う。またクラウドワークスと連携ユーザーにリモートワーク可能な求人情報をの提供していく。

クラウドワークスは「職務の経歴を可視化することで、個人の与信を作っていく」といった話を常々しているが、LiBz CAREERでは同社と連携する形でそんな与信を作っていくことも考えているようだ。具体的な連携内容は明かされていないが、キャリア・評価などをサイト上のレジュメに蓄積して、「次のキャリアに移る際の『パスポート』となる経歴書を作ることが可能になる」(LiB)とうたっている。

LiBの「キャリアプラットフォーム構想」

LiBの「キャリアプラットフォーム構想」

DIYショップやECサイト運営をする“創業78年のベンチャー”大都、GCPなどから4.5億円の資金調達

体験型DIYショップ「DIY FACTORY」やDIY用品のECサイト「DIYツールドットコム」を運営する大都は7月27日、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)およびみずほキャピタルを引受先とする総額約4億5000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。また今回の資金調達にあわせてGCPの仮屋園聡一氏が同社の社外取締役に就任する。

工具の卸問屋からスタート、創業78年のベンチャー

大都は1937年(昭和12年)にスタートとした、創業78年の会社だ。もともと工具の卸問屋として創業したという同社が、今回のように資金を調達し、ベンチャー的な事業展開をするきっかけとなったのは、3代目となる現・代表取締役の山田岳人氏が入社したことなのだという。

大都代表取締役の山田岳人氏

大都代表取締役の山田岳人氏

当初大阪のリクルートで勤務していた山田氏は2代目代表取締役の娘と結婚したことを契機に大都に入社。社員15人ほどの工具問屋だった同社で、自らトラックを運転し、問屋やメーカー、ホームセンターを自ら回っていたのだという。「その頃初めて決算書を見たが真っ赤な状態。問屋業だけでは売上は出るが収益も悪化する一方だった」(山田氏)

そこで2002年頃にオンラインで商品の販売を開始。楽天市場に出店するところからスタートして、山田氏が問屋業の合間に対応するというところから1年半でやっと年商100万円を達成。そこからは専任の担当者も採用した。

それでもECの売上で業績を変えられる状況ではなく、問屋業の収益悪化から2006年にはいよいよ廃業をするかどうかという状況になった。そこで先代の代表と話して「(潰れるくらいなら)好きにやっていい」ということになり、当時の社員を全員解雇するという苦渋の決断をする。そして問屋業を縮小させ、EC化を進めた。

商品点数の拡大が成長の契機に

EC事業は徐々に成長するが、2009年前半に売上が鈍化した。「それまでは商品数1万8000点で日本最大級のDIY用品のECサイトをうたっていたが、問屋として持っていた10万点の商品データベースへの対応を進めた。アイテム数が増えて価格と納期が明確であれば、商品は売れる」(山田氏)。現在では実に90万点という商品数を誇っている。

増える発注に対応すべく、メーカーへの発注のシステムも2010年に内製した。「DIY用品のメーカーだとPCすら持っていないというケースも多かったが、売上がついてくれば認めてくれる。現在では86%がオンライン化されている」(山田氏)

DIYの楽しさを伝えていくためのリアル店舗

商品数の増加によって売上は伸びたが、それでも2013年頃からまた鈍化した。山田氏がそこで考えたのは、「競合も出てくる中で、我々がやりたいことは何なのかと考えた。日本にはDIYの文化はそれほど根付いていない。そうであれば、工具の使い方や、作る楽しさを未来に向けて伝えないといけない」ということ。それを形にしたのがDIY用品を購入できるだけでなく、ワークショップを通じてDIYの体験ができるリアル店舗だ。同社は2014年、大阪・難波に体験型DIYショップのDIY FACTORY1号店をオープンした。

DIY FACTORY2号店の店内

DIY FACTORY2号店の店内

店舗には、メーカー向けに月額5万円の壁面展示スペースを25カ所用意した。「メーカー向けにショースペースを提供することで、メーカーは自分たちの好きな商品を出す場所を確保できる。実は日本一のペンチメーカー、ドライバーメーカーなどは(同社の本社がある)大阪にあるのだが、そんなものは多くの人に知られていない。そういうモノを紹介する場所を提供することでメーカーは認知を高め、ユーザーはいい工具と出会え、我々は売ろう売ろうとしなくても収益を担保できる、という三方よしになるように考えた」(山田氏)

メーカー向けに提供する展示スペース

メーカー向けに提供する展示スペース

実際、このスペースの収入もあって、店舗は初月から黒字運営を実現している。2015年には東京・二子玉川の二子玉ライズに2号店をオープン。休日には7000人以上が訪れることもあるそうだ。

店舗を運営してはじめて理解したことも少なくない。「『電気ドリルを下さい』なんていって店舗に来る人はいない。たとえば『洗濯機の上に棚が欲しい』とかみんなやりたいことがあって店舗にくる。だからそのために商品や使い方を説明しないといけない。これは店舗を出してやっと分かったことだ。ユーザーが欲しがっているのは『モノ(商品)』ではなく『コト(体験)』」(山田氏)。これを受けて、ECサイトでも「やりたいこと」を基準にした検索機能を実装した。

店舗運営、ECサイトに加えてハウツー動画サイトを展開

大都が今回の資金調達を契機に進めるのは、店舗の拡大、ECサイトの強化・改善、ハウツー動画サイト運営の3点だ。

まず店舗については、都心部を中心に複数店舗を出店。DIYやセルフリノベーション向けのワークショップを積極的に開催する予定。「ABCクッキングスタジオのDIY版といった立ち位置を取っていく」(山田氏)。次にECサイトについては、在庫商品を増やして即納体制を強化。さらにシステム面での機能強化を予定する。さらにDIYのハウツーを動画で紹介するサイト「MAKIT!」を展開する。以下はMAKIT!で実際に紹介されている動画の一部だ。

日経、英フィナンシャル・タイムズ・グループをピアソンから1600億円で買収

2015-07-24-ft

メディア業界でまた大型企業買収が発表された。イギリスのPearsonはフィナンシャル・タイムズ(FT)・グループを日本経新聞社に8億4400ポンド(1623億円)のキャッシュで売却した。最近、PearsonはFTの売却先を探しているという噂が流れており、ドイツのAxel Springerが有力な売却先の候補として上がっていた。

今回の売却には、フィナンシャル・タイムズ紙の他に、ウェブサイトのFT.com、How to Spend It、FT Labs、FTChinese、Confidentials、Financial Publishing(The Banker、Investors Chronicle、MandateWire、Money-Media、Medley Global Advisorsなどを発行)が含まれる。

ただしエコノミスト誌のPearsonの50%の持ち株、テムズ川沿いのFTの本社ビルは含まれていない。しかしPearsonが今後教育事業に特化していくという方針であることを考えるとこれらの資産も将来は手放すことになるかもしれない。

PearsonのCEO、John Fallonは声明で次のように述べた。

われわれPearsonはFTを60年近くにわたって所有してきた。しかしわれわれはモバイル化とソーシャル化に起因するメディアの大きな変化の時期を迎えている。 このような環境において、ジャーナリズムとしてまたビジネスとしてFTの成功を保証する最良の道はグルーバルなデジタル・ニュース企業の傘下に入ることだ。

一方、Pearsonは今後、グローバルな教育事業戦略に100%集中していく。世界の教育は根本的な変化を遂げつつあり、われわれはグローバルに質の高い教育を提供していくことに巨大なビジネスの機会を見出している。

FTの発行部数は73万7000で、この数字は過去5年で30%アップしている。このうちデジタル版が70を占めている。FTはイギリス最大の新聞ではないが、高級紙とみなされており、ことにビジネス界ではもっとも権威あるメディアの一つだ。Pearsonによれば、FTの2014年の売上は 5億1900万ドル(642億円)だった。

Pearsonが教育関係の出版とサービスに特化していくのであれば、FTの受け皿として日経は自然な選択だろう。日経は日本でもっとも有力な経済メディアを運営する一方で海外への展開の機会を探っていた。この点は海外での買収を積極的に繰り返している楽天と似ている。

日経の喜多恒雄会長、グループCEOは、「世界でもっとも権威ある組織の一つフィナンシャル・タイムズをチームに迎え入れることができたことを大いに誇りに思っている」と述べた。

日経はグローバルな存在感ではフィナンシャル・タイムズに及ばないだろうが、両者には共通点が多い。その一つがペイウォール〔有料オンライン記事〕だ。140年の歴史を誇る日経の主要なオンライン・メディアは日経電子版だ。今年で5年を迎えたこのサイトは40万人の有料購読者を誇っている。

一方、日経に対しては調査報道に欠けるという批判がある。2011年の津波、また最近のタカタのエアバッグの欠陥に対する報道が不十分だったという指摘が出ている。

日本企業の大半はもっぱら国内市場をターゲットとしているが、日経は東南アジア市場への進出に意欲的だ。Nikkei Asian Reviewは週刊誌とオンラインの双方で発行されている。またタイのバンコクに編集拠点を持つ。シンガポールでは東南アジア地域での営業、販売活動を行うNikkei Group Asiaを運営している。

〔英文プレスリリースの全文は原文を参照〕

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+