クラウド需要の急増が突きつけるグリーンエネルギーの課題

このロックダウン期間中に、膨大な数の人が仕事でビデオ会議を行っている。しかし、燃料を使う通勤手段をデジタルコネクティビティで置き換えると、個人が2時間のビデオ会議で使用するエネルギーは、4マイル(約6.4km)電車に乗る場合に使う燃料よりも大きなものになる。これに加えて、数百万人の学生が、徒歩ではなくインターネットを使って教室に「通って」いる。

一方、デジタル空間の他の領域では、科学者たちが研究を加速するためにアルゴリズムを猛烈な勢いで展開している。にもかかわらず、ひとつの人工知能アプリケーションのパターン学習フェーズが消費するエネルギーは、1万台の自動車が1日で消費するものを上回る可能性があるのだ。

社会のエネルギー使用を変化させるこの壮大な「実験」は、少なくとも間接的には、ある高レベルの事実セットで見ることができる。4月の第1週までに、米国のガソリン使用量は30%減少したが、全体的な電力需要の現象は7%未満だった。この動きは、実際のところ将来の基本的な傾向を示している。移動用燃料の使用量は最終的には回復するだろうが、真の経済成長は電気を燃料として使うデジタル未来に結びついている。

今回の新型コロナウイルス(COVID-19)危機は、経済が最後に崩壊した2008年のような「大昔」のインターネットと比べて、2020年のインターネットがどれほど洗練され、堅牢であるかを浮き彫りにしている。もし当時、全国でロックダウンが行われていたとしたら、現在在宅勤務している数千万人のほとんどが、解雇された約2000万人の集団に加わっていただろう。また当時だったら、何千万人もの学生や生徒が自宅で学習することも、大学や学校にとって現実的なものではなかった。

アナリストたちは、あらゆる手段での在宅勤務によるインターネットトラフィックの大幅な増加を様々な場所で発表している。デジタルトラフィックを使った手法は、オンライン食料品からビデオゲーム、そして映画のストリーミングまで、あらゆるものに対して急増している。これまでのところ、システムはすべてを適切に処理しており、クラウドは継続的に利用可能で、散発的な問題が発生する程度だ。

新型コロナウイルス危機に際してのクラウドの役割は、ワンクリックのテレビ会議やビデオチャットだけではない。遠隔医療がついに現実のものになった。例えば、症状を自己診断するためのアプリや、X線診断を強化したり、接触者追跡を支援するAIツールがどんどん登場している。また、クラウドを利用することで、研究者は臨床情報の「データレイク」を迅速に作成し、治療法やワクチンを探求するために展開されている現代のスーパーコンピュータの天文学的な能力を活用できるようになった。

AIとクラウドの未来は、新しい治療法のための超迅速な臨床試験はもちろんのこと、実用的な家庭診断や便利なVRベースの遠隔医療とともに、上記のようなことをたくさんもたらしてくれるだろう。そして、ここに述べたことは、医療の一部ではない残り80%の経済で、クラウドが何を可能にするかについてはまだ何も述べていないのだ。

これらの新機能がもたらしてくれるすべての興奮のために、クラウドコンピューティングの背後にある基盤システムは、エネルギーの需要を増やし続けている。エネルギーを節約するどころか、私たちのAIを利用した作業環境では、これまで以上に多くのエネルギーが使用されている。これは、テクノロジー業界が今後数年間で迅速に評価および検討する必要がある課題なのだ。

新しい情報インフラストラクチャ

クラウドは重要なインフラストラクチャである。これにより、多くの優先順位が再構成される。ほんの数カ月前には、ハイテク業界の大企業たちは、エネルギー使用量の削減と運用のための「グリーン」エネルギーの推進についての誓約の公言に対して、お互いに肩を並べていた。もちろん、そうした問題は引き続き重要だ。しかし、信頼性と回復性、つまりシステムの可用性(availability)が今や最優先事項となった。

2020年3月、国際エネルギー機関(IEA)の専務理事であるFatih Birol(ファティ・ビロル)氏は、風力発電と太陽光発電の将来について、外交的な控えめな言葉で次のように語っている。「今日、私たちは、デジタル技術への依存度がさらに高まっている社会を目の当たりにしています」そのことは「政策立案者が極端な状況下での柔軟性のある資源の潜在的な可用性を慎重に評価する必要性を強調しています」。新型コロナウイルスの危機に続くだろう経済的に困難な時代には、「可用性」を確保するために社会が支払わなければならないコストがはるかに重要なものになるだろう。

太陽光および風力技術で 高信頼性の電気を提供することは、依然として法外に高価なものだ。太陽光、風力発電が「グリッドパリティ」(既存電力コストと同等もしくはそれ以下になること)になっていると主張する人びとは、現実を見ていない。データによれば、風力発電や太陽光発電のシェアが米国よりもはるかに高い欧州では、送電網のキロワット時(kWh)のコスト全体が約200~300%高くなっていることがわかる。注目すべきは、消費者の大きな負担を横目に、テック企業を含む大規模な産業用電力需要家は、一般的にグリッド平均からの大幅な割引を受けているということだ。

やや単純化していうならば、大手ハイテク企業がスマートフォンにデータを流すための電気代への支払いが少なくて済むように、各消費者が家庭の電力供給に対して多くのお金を払っていることを意味する(私たちは、今回の危機後の世界で、市民がこの非対称性に対してどれほど寛容であるかを見届けることになるだろう)。

そのような多くの現実は、実際には、クラウドのエネルギー動向が個人的な移動と反比例するという事実によって隠されている。個人的な移動を考えると、消費者は自分の車のガソリンタンクを満たすときに、エネルギーの90%が費やされる場所を、文字通り自分の目で見ている。しかし「接続された」スマートフォンに関していえば、エネルギー消費の99%は遠隔地にあるクラウドの、広大なしかしほとんど目に見えないインフラの中に隠されているのだ。

こうした方面に詳しくない人のために説明すると、クラウドを駆動する貪欲なデジタルエンジンは、人の目に触れない何の変哲もない多数の倉庫規模のデータセンターの中に格納されている。そこには膨大な数の冷蔵庫サイズのラックが立ち並び、そこに置かれたシリコンのマシン群が、私たちのアプリケーションを実行し爆発的に増えるデータを処理している。多くのデジタルの専門家でさえ、そうしたラックのひとつひとつ毎年50台のテスラよりも多くの電力を消費していると知ると驚く。さらにこうしたデータセンターは、グラスファイバーで構成された約10億マイル(約16億km)の情報ハイウェイと、400万基の携帯基地局が作り上げる、さらに巨大な目には見えない仮想ハイウェイシステムを通して、データを送受信する(電力消費のさらに激しいハードウェアを備えた)市場と接続されているのだ。

このようにして、数十年前には存在しなかった、グローバルな情報インフラストラクチャは、ネットワークやデータセンターから驚くほどエネルギーを大量に消費する製造プロセスに至るまで、すべての構成要素を数え上げるなら、現在では年間約2000テラワット時(TWh)の電力を使用するシステムにまで成長したのだ。これは、全世界の500万台の電気自動車すべてが、毎年使用する電力の100倍以上の量だ。

これを個人レベルの話にするなら、個別のスマートフォンが年間で使用する平均電力は、典型的な家庭用冷蔵庫が使用するエネルギーよりも大きいことを意味している。そして、このような見積もりはすべて、数年前の情勢に基づいたものだ。

よりデジタル化される未来は、必然的により多くのエネルギーを使用するだろう

一部のアナリストは、近年デジタルトラフィックは急増しているものの、効率性の向上により、データ中心のエネルギー使用量の伸びは鈍化しているか、あるいは横ばいになっていると主張している。しかし、そのような主張は、拮抗する事実に直面している状況だ。2016年以降、ハードウェア建物 に対するデータセンターの支出が劇的に増えてしているが、そこにはハードウェアの電力密度の大幅な増加も伴っている。

近年、デジタルエネルギーの需要の伸びが鈍化したかどうかとは関係なく、クラウドの急速な拡大が進んでいる。クラウドのエネルギー需要がそれに比例して増加するかどうかは、データの使用量がどれだけ速く増加するか、そしてクラウドの用途に特に大きく依存する。エネルギー需要の大幅な増加は、クラウドの中心的な運用指標 、すなわち可用性を満たすための、エンジニアリングと経済的な課題をはるかに難しいものにする。

過去5年間でその前の10年間全部よりも、広い面積のデータセンターが 建設された。「ハイパースケール」データセンターと呼ばれる新しいカテゴリさえも生まれている。それぞれが100万平方フィート(約9万3000平方メートル)を超える、マシンで満たされた建物のことだ。これらを、1世紀前の不動産用語である「超高層ビルの夜明け」と同じものだと考えて欲しい。しかし、現在の世界には、エンパイアステートビルディング並の大きさの超高層ビルは50棟未満しかないが、地球上には既に約500カ所ほどのハイパースケールデータセンターがある。そして後者は合計すると、6000棟を超える超高層ビルに相当するエネルギーを必要としている。

クラウドトラフィックの成長を推進しているものが何かを推測する必要はない。このリストのトップを占める要因はAI、より多くの動画、特にデータを多用するバーチャルリアリティ(VR)、そしてネットワークの「エッジ」に置かれたマイクロデータセンターの拡大だ。

最近まで、AIに関するほとんどのニュースは、従来の仕事を奪う可能性の側面に焦点を当てたものが多かった。だが真実は、AIは生産性向上を推進するツールの最新版に過ぎない。こうしたツールは、生産性の向上が歴史の中で常に行ったきたことを再現することになる。つまり雇用を拡大し、より多くの人びとのためにより多くの富を生み出すのだ。新型コロナウイルス感染症からの復活の過程では、より多くの雇用や富の生産が必要とされる。だが、それについて話すのはまた別の機会にしよう。現時点では、個人の健康分析やドラッグデリバリーから医学研究や就職活動に至るまで、あらゆる分野の中にAIが果たす役割があることは既に明らかだ。おそらくAIは、最終的には「善い」ものと見なされるようになるだろう。

だがエネルギーに関していえば、AIはデータを大量に使い、電力を大量に消費するシリコンを使用している。そして世界は膨大な数のそのようなAIチップを使用したがっている。一般に、機械学習に費やされる計算能力は、数カ月ごとに倍増している、これはムーアの法則の一種のハイパーバージョンだ。例えば、Facebookは2019年にデータセンターの電力使用量が毎年倍増する主な理由としてAIを挙げている。

近い将来、数週間のロックダウンの最中に、小さな平面スクリーンでのビデオ会議の欠陥を経験した消費者たちが、VRを使ったビデオの時代への準備が整っていることにも期待しなければならないだろう。VRでは画像密度は最大1000倍までに増加し、データトラフィックが約20倍に増加する。進み方は断続的だったが、技術的には準備ができており程なくやってくる高速5Gネットワークは、そうした増加するピクセルを処理する能力を備えている。ただし繰り返しておく必要があるが、すべてのビットは電子であるため、バーチャルリアリティの増加は現在の予測よりも多くの電力需要につながることを意味している。

これに加えて、顧客の近く( エッジ )にマイクロデータセンターを構築する最近の傾向が挙げられる。会議やゲーム用のVR、自動運転車、自動化された製造業、あるいはスマート病院や診断システムなどの「スマート」な物理インフラなどのリアルタイムアプリケーションに、遠隔地のデータセンターからAI駆動のインテリジェンスを届けるには、光の速度は遅すぎるのだ(ヘルスケアにおけるデジタルとエネルギーの密度自身は、既に高く上昇している。病院の単位面積あたりのエネルギー消費量は、他の商業ビルの5倍程度に達しているのだ)。

エッジデータセンターは、この先10年も経たないうちに、10万メガワット(MW)の電力需要を積み上げると予想されている。別の見方をすれば、これはカリフォルニア州全体の電力網の電力容量をはるかに超えている。これらもまた、近年のエネルギー予測のロードマップには載せられていなかったものだ。

デジタルエネルギーの優先順位は変わるのか?

これは関連する質問へとつながる。ポストコロナウイルス時代のクラウド企業は、支出をエネルギー免罪符へと集中させ続けるのだろうか、それとも可用性へと集中させるようになるのだろうか? この場合の免罪符とは、自社施設に対する直接給電以外の場所(海外を含む)に対する、風力、太陽光発電への企業投資のことを指している。それらの遠隔地での投資は、実際には自社の施設に電力を供給していないにもかかわらず、自分たちの施設がグリーン電力であると主張するために「クレジット」されている。

グリーンエネルギーを求める企業が、従来の電力グリッドから物理的に切断して、独自のローカル風力、太陽光発電を構築することを妨げるものは何もない。ただし、それを行って24時間年中無休の可用性を確保することで、施設の電力コストは約400%押し上げられることになる。

購入された免罪符としての電力の現状に関しては、世界の情報インフラは既に世界中の太陽光発電所と風力発電所を合わせた発電量よりも、多くの電力を消費しているということを知っておくと役立つ。したがって、テクノロジー企業にとって(誰にとってもだが)、デジタルエネルギーの使用をすべて相殺するための「クレジット」として購入できる十分な風力、太陽光エネルギーは、もはや地球上に存在しないのだ。

デジタルエネルギーの傾向を研究しているひと握りの研究者は、今後10年間でクラウドによるエネルギー使用量が少なくとも300%増加する可能性があると予測していたが、それは今回の世界的なパンデミックの前のことだ。一方、国際エネルギー機関(IEA)は、その期間における世界の再生可能電力は「単に」倍増するものと予測している。その予測もまた、新型コロナウイルス以前の経済状況下で行われたものだ。現在IEAは、不況がコスト高なグリーンプランへの財政意欲を減らすことを心配している

だが電気を作り出す技術の課題や議論がどうであれ、情報インフラの運営者にとっての優先順位は、ますます必然的に、可用性を重視するものへと移っていくだろう。それは、クラウドが私たちの経済的な健康にますます密接に結びつくようになってきただけでなく、心と体の健康にも関係を持つようになってきたからだ。

そうした可用性の重視が引き起こす変化は、パンデミックと前例のないシャットダウンからの経済の回復の先に、何がくるかについて(グリーンエネルギーへの自らの取り組みが活発になるという意味で)私たちを楽観的にしてくれるはずだ。Microsoft(マイクロソフト)が、新型コロナウイルス以前に出したエネルギーマニフェストの中で、「人類の繁栄を進めることは……エネルギーの賢い利用と表裏一体である」と述べていたことを評価しよう(このマニフェストの中でマイクロソフトはグリーンエネルギーへの大規模な取り組みを表明している)。私たちのクラウドを中心とする21世紀型インフラストラクチャもこれと同じだ。そして、良い結果へとつながるだろう。

【編集部注】著者のMark Mills(マーク・ミルズ)氏は書籍「Digital Cathedrals: The Information Infrastructure Era」(デジタル大聖堂:情報インフラストラクチャ時代)」の著者であり、Manhattan Instituteのシニアフェロー、ノースウェスタン大学のMcCormick School of Engineeringのファカルティフェロー、並びにエネルギーテックのベンチャーファンドであるのCottonwood Venture Partnersのパートナーである。

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(翻訳:sako)

GMとHondaが2024年発売の電気自動車2モデルを共同開発

GMとHondaが2024年発売予定の2種類の電気自動車を共同開発する。これは両社の既存のパートナーシップをさらに深めたものとなる。

計画では、両社はそれぞれが得意な部分を担当する。Hondaは新しい電動車のエクステリアとインテリアをデザインし、GMは電動車の新しいアーキテクチャとUltium(アルティウム)バッテリーで貢献する。GMが2020年3月に披露したこの新しいアーキテクチャは同社独自のEVプランを示すものであり、そのバッテリーとドライブユニットの構成は19通りもある。このアーキテクチャには、LG Chem(LG化学)とGMの合弁事業で製造された、大型のパウチ型バッテリーが含まれている。

これらの車両にはHondaのネームプレートが付き、GMのセーフティアンドセキュリティ機能であるOnStarが搭載される。また、Super Cruiseと呼ばれるステアリングから手を離すことができるGMの先進運転支援システムも新型車両に搭載される。

車両は北米にあるGMの工場で製造される。発売は2024モデル年度の初めとされており、Hondaの米国市場とカナダ市場で展開される。

American Honda Motor Co.の上級副社長であるRick Schostek(リック・ショスティック)氏によると、狙いは両社の長所を合わせて電気自動車にスケールメリットを引き出すことだという。氏によると、両社はすでに、パートナーシップのさらなる拡大についての話し合いも行っているとのことだ。

両社の協力関係は長い。車両の共有化は1990年代にまでさかのぼり、そのときはいすゞがGMの傘下だった。共同プロジェクトの大部分は水素燃料電池技術とバッテリー、そして最近では自動運転車が中心となっている。

GMとHondaは2013年に戦略的提携を結び、水素燃料電池を開発し、そこからおよそ1200件の特許が取得している。両社は2017年に水素燃料電池システムを生産するFuel Cell System Manufacturing LLC(FCSM)という名のジョイントベンチャーを作っている。FCSMは同社初の量産型水素燃料電池システム製造施設の生産設備をミシガン州ブラウンズタウンに設置し、GMによれば2020年中に生産を開始する予定だという。

両社は2018年に、Hondaが北米市場向けに作られた電気自動車にGMのバッテリーセルとモジュールを使用することで合意したと発表した。

GMは2016年にCruiseを買収。その後Hondaは27億5000万ドル(約2982億円)で、GMとその自動運転技術の子会社Cruiseとの独占的協定により、新種の自動運転車の開発と生産をしていくことになった。電動で自動運転のライドシェア用の車である、その協定の最初の製品Cruise Originが、1月21日に披露されている。

画像クレジット:GM/Photo by Steve Fecht

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

財務分析を応用して企業の炭素排出量削減を助けるYC卒のSINAI

企業にとって、気候変動と戦うための第一歩は、自分たちがそれにどれだけ貢献しているかを知ることだ。Y Combinatorを最近卒業したSINAI Technologiesは、その理解を助けてくれる企業だ。

創業者のMaria Fujihara(マリア・フジハラ)氏は持続可能性産業と16年つき合ってきたベテランで、最近では企業のLEED認証への適合を促進するための一連のツールを作ってきた。SINAIは認証ツールを国際市場に適合させるための長年の取り組みの成果であり、またこの5年間はSingularity University(シンギュラリティ・ユニバーシティ)で炭素排出プロファイルに関する研究を行っている。

フジハラ氏は「会社を起ち上げたときに、カーボンオフセットを始めた。最近の3年ぐらいで企業も政府も炭素排出量を計算しており、自らの炭素排出量と炭素インベントリを知り、自分の炭素インベントリを使って炭素クレジットを買うようになった」と語る。

そして彼女によると、その市場は成熟して多くの企業が参加するようになっているという。「それでも排出量は、過去6年間増える一方でまったく減らない。減らすためのソリューションを考えなかったからだ」と彼女は言う。企業は炭素排出量の測定にばかり集中して、さまざまなポリシーによる削減方法を見出さなかった。ビジネスのどの部分をターゲットにすべきかについても考えなかった。しかし「それぞれのビジネスをユーザーシナリオとして理解すれば、彼らのヴァリューチェーンの中で排出量を減らせる」という。

SINAIのサービスは企業における排出量関連のさまざまな報告書作成やデータ取得を自動化して、わかりやすいかたちでモニタできるようにすることだ。「財務分析と似ているが、対象はお金ではなくて環境分析だ。しかも四半期ごとではなくて、年に1回行う」とフジハラ氏は言う。

現在同社は製造業、運輸業、アパレルとリテール、食品と飲料、そして不動産という5つの業界にフォーカスしている。同社の声明によると「炭素循環の構成要素は、炭素排出インベントリ(フットプリント)の作成、オプションの適切な選択により低炭素シナリオを作る、カーボン削減のターゲットを設定する(科学的でない視点も含む)、炭素予算を計算する、今後可能性がある炭素税を分析する、最適最善の炭素価格を定義する、そして外部的シナリオ(国内的国際的政策へのコンプライアンスに基づくもの)を分析することだ。

フジハラ氏の共同創業者であるAlain Rodriguez(アラン・ロドリゲス)氏は、現在、気候問題に取り組んでいるUberの20名の技術者の1人だ。SINAIの声明によると「基本的に我々は気候問題に財務分析の方法論を結びつけて、排出の削減と低炭素技術の実装に伴うコストの管理を行う。そのコストは企業の炭素価格のベースになる。この方法ではさまざまな要素が互いに依存し合っており、炭素循環のどの段階にある企業でも分析でき、その一歩一歩における価値を提供する」という。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

電気自動車の保有車両管理は新しい巨大市場、Electriphiが約4億円調達

企業などの保有車両の充電の管理や電動車のモニタリングを行うソフトウェアを提供しているElectriphi(エレクトリファイ)が、現在米国で増加している電動車両にソフトではなくサービスを提供するスタートアップの競争仲間に加わった。

サンフランシスコ拠点は同社はこのほど、350万ドル(約3億9000万円)を調達した。投資家は、Wireframe Ventures、Urban Innovation Fund、Blackhorn Venturesなどだ。Lemnos LabsとAcario Innovationも、このラウンドに参加した。

Electriphiのピッチは学校の校区に受けている。同社はカリフォルニア州サクラメントのツイン・リバース統合校区を同社の顧客の好例として挙げている。

同校区の輸送サービス部長であるTim Shannon(ティム・シャノン)氏は 「ツイン・リバース統合校区は電動スクールバスが北米で最も多い。今後数年以内にすべてのスクールバスを電動にしたい。重要な事業であり、信頼できるパートナーを見つけ、技術的に最先端の充電管理とデータ収集およびモニタリングの支援を確保しなければならない」と語る。

電気自動車の車両管理については、すでに手掛けている企業がいくつかあり、彼らは支援してくれる企業と資本に恵まれている。例えば、EVConnectやGreenLots、GreenFlux、AmplyPowerなどはすべてElectriphiと競合する。

Electriphiの共同創業者であるMuffi Ghadiali(ムフィ・ガディアリ)氏は、これまでChargePointのシニアディレクターとして高速充電のインフラストラクチャのためのハードウェアとソフトウェアの開発を率いてきた。この経歴が顧客の信頼を獲得すると期待されている。もう一人の共同創業者であるSanjay Dayal(サンジェイ・デイアル)氏は、Agralogics、Tibco、Xamplify、Versata、そしてSybaseなど前歴が豊かだ。

車両管理の市場は巨大で複数の企業が勝者になりそうだ。Wireframe Venturesのマネージングパートナーを務めるPaul Straub(ポール・ストラウブ)氏は、「企業や公共機関などが保有する業務用車両は米国だけでも数百万台ある。すべての米国人が、交通やデリバリーやサービスの手段としてそれらを頼りにしている。多くが今、電動車への移行を検討し始めているのでElectriphiの前途には巨大な商機がある」と投資家としての見解をコメントした。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

気球ネットワーク開発のグーグル系Loonとの無人航空機開発のソフトバンク系HAPSMobileが空飛ぶ基地局を実現

Google(グーグル)の親会社であるAlphabet(アルファベット)傘下のLoonは、成層圏上の気球にアンテナを乗せて、僻地にインターネットを届けようとしている。同社はこのほど、パートナーのHAPSMobileのための新しいペイロードの開発を完了した。HAPSMobileはソフトバンクの子会社で、高高度を太陽エネルギーで飛ぶ無人航空機を開発している。両社が協力して互いに適応させた通信技術により、Loonの気球がインターネットの通信を地球に送受し、それをHAPSMobileのドローンが利用してモバイルの空飛ぶ基地局になる。

そのための両社の戦略的パートナーシップは昨年4月に発表されたが、それはLoonの機能試験が初めて気球以外のプラットホーム上で行われるという意味でも重要だ。HAPSMobileが開発したHAWK30航空機は、成層圏を時速100kmあまりで飛ぶ。巡航高度は約2万mだ。しかしそれではLoonの気球よりも早すぎるので、ペイロードの方でそのスピードに適応することが必要だ。例えば、LTE接続を地上のデバイスへ送受するために使うアンテナの感度を高めて高速回転を可能にし、良質な接続を維持する。

LoonとHAPSMobileによると、両社の通信技術では700km離れていても1Gpbsの高速でデバイス間の接続を提供できる。HAWK30プロジェクトにおけるHAPSMobileの目的は、圏域を地上の基地局よりも大きくすることだ。なにしろ高高度だから、最も高い地上基地局と比べても、それがカバーする圏域は大きい。現在では全体をカバーするために何万本もの地上基地局が使われているが、この方法なら40機のソーラー航空機で足りると同社は説明する。それに地上基地局方式では避けられなかった、たくさんの細かい圏外域が減ることも期待できる。

Loonにとってこれは、運用形式の有意義な拡張であり、通信技術を互いに適応させることによって、今後いろんなタイプの航空機や送受信方式にも対応できれば売上の機会も増える。だからこれは、同社の商用パートナーシップの一例にすぎない。もちろん今の気球による展開そのものが、ユーザー企業との新たなパートナーシップを獲得することもありえるが。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

米陸軍はレーザービーム兵器の早期実用化に本気

設立1927年の長寿の軍需企業であるNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)が、かなり前から、米軍との契約でドローンを撃墜するレーザー兵器を研究開発している。

軍が望むのは、出力50キロワットのレーザーシステムをGeneral Dynamics(ジェネラル・ダイナミクス)が設計した装甲車Stryker(ストライカー)に載せたビーム兵器を、米軍の短距離防空システムの一員にすることだ。つまりこのレーザー兵器の目的は、前線の戦闘部隊をドローンの攻撃から守ること。

この計画には、Stryker装甲車にビーム兵器を組み込むことによって一種の先導機として利用し、短距離防空システムの目的である前線部隊の完全な保護を実現することが含まれている。

Northrop Grummanのミサイル防衛および防御システム担当副社長兼ゼネラルマネージャーであるDan Verwiel(ダン・ヴァーウェイル)氏は「Northrop Grummanはその革新的で実証済みの技術と統合化専門技術の蓄積を活かして、わが国の機動部隊の次世代型保護装備を強力かつ迅速に提供していきたい」と声明でコメント。

軍は全地形型車両であるStrykerの一群に、ドローンやヘリコプター、ロケット、火砲、 臼砲などに対する防御システムを載せるつもりであり、その開発をNorthrop GrummanやRaytheon(レイセオン)に委託している。つまりRaytheonも、このプロジェクトに参加している。

陸軍中将で超音波兵器ビーム兵器宇宙兵器および迅速調達担当ディレクターであるL. Neil Thurgood(L・ネイル・サーグッド)氏は声明で「今や、ビーム兵器を戦場に持ち込むべき時である。陸軍は陸軍現代化計画の一環としてレーザービーム兵器の必要性を認識している。これはもはや研究事業やデモンストレーション事業ではない。それは戦略的戦闘能力の一環であり、それを兵士たちが手中にすることは正しい方向性である」とコメントしている。

陸軍にとってレーザーは、従来の動力学的兵器につきものだったサプライチェーンのハードル(前線への弾薬の補充など)をさらに削減してくれる技術だ。5月に陸軍は、歩兵、車両、および航空機をサポートするさまざまなレーザー兵器のプロトタイピングと現場導入を加速する戦略にゴーサインを出した。

そして陸軍は、今契約しているRaytheonとNorthrop Grummanだけでなく、独自の研究成果を持つ他のベンダーからの売り込みを歓迎する、と言っている。デモに成功したら、総額4億9000万ドルの計画の一片に食らいつくことができる。そしてその技術を搭載した車両の実用化を陸軍は2022年と予定している。

陸軍の迅速配備展開部門(RCCTO)のビーム兵器担当上級研究員であるCraig Robin(クレイグ・ロビン)博士は声明で「レーザーのビーム利用に関しては軍と商用部門の両方が大きな進歩を遂げ、今では戦術的に有効なプラットホーム(装甲車など)で、十分な軍用能力のあるレーザービームを利用できる。今やわれわれは、そのための最良のソリューションを迅速にプロトタイプし、競争により最良の実装を実現して、前線の戦闘部隊に届けるべき時に来ている」と述べている。

画像クレジット: Northrop Grumman

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

日産のゼロエミッションのアイス販売車は古いEVの電池を再利用

アイスクリーム販売車は、実は「環境に重大な危害をもたらすとは誰も思わなかったけどもしかしたらそうかもしれない」モノの仲間だった。日産が開発した新しいコンセプトカーは、これまでのアイスクリーム販売車が作り出していたすべての排気ガスをなくし、特に古い車種ではアイスクリームが溶けないために停車中でもエンジンをアイドリングして作り出していた大量の温室効果ガスもなくしてしまう。

このプロジェクトのために日産がパートナーしたアイスクリーム企業であるMackie’s of Scotlandは、すでに原料の牛乳を、風や太陽などの再生可能エネルギーで操業している家族経営の自家農園から調達して、環境フットプリントの削減に一歩を踏み出している。製品の持続可能な生産方式と今回の日産が考案したゼロエミッションのデリバリーバンの組み合わせは、企業の炭素フットプリントを減らす最高の方法だ。

そのために日産が選んだ軽量級商用バンのe-NV200は、完全電動車で1回の充電で約200km走る。このアイスクリーム企業のコンセプトに合わせて日産が特製したリチウムイオン電池パック「Energy Roam」は、2010年以降に生産された日産の古いEVから回収したバッテリーセルを使っている。その再生電池パックはそれぞれ約0.7kWhを貯蔵し、1kWを出力する。うち2つはエンジン用ではなく、ソフトクリーム機や冷蔵庫、冷凍庫用だ。充電は通常の公衆電源(英国だから230V)でもいいし、またバンの屋根のソーラーを使えば2〜4時間で充電できる。

全電動であること以外に、この日産のコンセプトバンにはこれまでの移動アイスクリーム販売車になかった特徴がいくつかある。まず、バンの外に立つ売り子の頭上にはハッチが開いて、アイスクリームディスペンサーの面白さを子どもたちに見せる。Apple PayやGoogle Payで払えるから売り子はお金に手を触れない。What3Wordsを統合して、自分の位置をTwitterでブロードキャストしている。あの元気なベルの音が聞こえなくても、大丈夫。

そして、日産からのボーナスとして、冷菓の売れない季節には機器が使用するはずだった電池の電気を電力会社に売ることができる。ただしこれはまだ、構想の段階だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

機械学習のシステムはときどき人間をびっくりさせる…学習内容に忠実なだけで

機械学習の弱点や奇癖をまとめた、このシンプルなスプレッドシートは、それほど膨大ではないが、‘機械’の考え方を知るための楽しい資料だ。研究者のVictoria Krakovnaが作ったこのリストは、ロボットが法の精神と文字の両方に同時に従おうとしたときの、さまざまな状況を記述している。

たとえば下のビデオでは、機械学習のアルゴリズムが、ボートレースにただ参加するのではなく、円を描いてぐるっと回ったら高い得点が得られる、と学習した結果だ。

別のシミュレーションでは、“生きるためにはエネルギーが必要だが出産のエネルギー消費量はゼロ”、と学習した種族が、じっと座って動かない〔エネルギー消費量最小〕ライフスタイルを発達させ、もっぱら生殖行為〔エネルギー消費量ゼロ〕だけをして子孫を生産し、それを食べたり、それらにも生殖をさせて食料としての子孫を作らせる。Krakovnaはそれを、“怠け者の共食い種族”と呼んでいる。

もちろんこれらの‘機械’は本当の意味で“考えて”いるわけではないが、いくつかのパラメーターと、進化という能力と目標を与えられたロボットが、そのアルゴリズムに忠実に従って、おかしなことをしてしまう例だ。

あるテストでは、ロボットが自分の腕でテーブルを殴ることによってブロックを動かすことを学習したり、ある種の遺伝的アルゴリズムによってオシレーターの回路を作るはずのロボットが、隣接するコンピューターからの信号を拾うラジオを作ったりする。あるいは癌を検出するシステムが、悪性腫瘍の画像には目盛りがある、と学習して、大量の擬陽性を作りだしてしまう。

これらの例はどれも、‘機械’は正しく学習すると信じたために生じた、意図せざる結果だ。彼らは学習するけど、人間を当惑させることもある。機械学習とは、所詮、そんなものだ。機械が理解できるものだけを、学習しているのだから。

最後にもうひとつ例を: “絶対負けてはならない”、と学習したテトリスをプレイするロボットが、“負けないために無限に長時間ポーズする”。そいつに、負けて癇癪(かんしゃく)を起こすことを学習させたら、やっと彼は三歳児のレベルに達するだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Google、データセンターの空調管理をAIに一任

データセンターの中は暑くてうるさい——そしてサーバーをオーバーヒートから守ることは運用コストの大きな部分を占めている。業界の大物、Facebook、Microsoft、Googleらがさまざまな方法で冷却コストの節減を目指しているのも当然だ。Facebookは可能な限り外部の空気を冷やす。Microsoftは水中データセンターを実験中。そしてGoogleは、同社のAIモデルを使っていっそうの節約を目論んでいる。

数年前、Googleは傘下のDeepMindを通じて、データセンターに最適な冷却方法を運用者に提供するために、機械学習の利用を探ってきた。しかし、当時はまだシステムは推奨するだけで実施するかどうかは人間のオペレーターが判断していた。今後その人たちは、午後の昼寝時間を長くとれるようになる。モデルが十分に進歩した結果、AIを備えたシステムに冷却システムの制御を任せられるとチームが判断したからだ。もちろん、オペレーターは今も介入できるが、AIが中止の決定をくださない限り、システムは無人運転を続ける。

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新しい冷却システムは現在複数のGoogleデータセンターに設置されている。5分毎に、システムがデータセンター内の数千個のセンサーから値を取得しその情報を元に最適な行動を選択する。もちろん、そこには様々な抑制と均衡が働いているので、Googleのデータセンターがこのために崩壊する可能性は低い。

多くの機械学習モデルと同じく、システムはデータを収集すればするほど賢くなる。現在、これまでのデータセンターのエネルギー利用と比べて平均30%のエネルギー節約を実現している。

ひとつ指摘しておくべきなのは、Googleはわずかな節約のためだけなく、これを自社の機械学習サービスの宣伝のひとつと考えていることだ。つまるところデータセンターでうまくいくなら、大きなオフィスビルディングにも適用できるはずだ。「長期的には、このテクノロジーをほかの環境にも適用し、より大規模な空調にも役立てる可能性があると考えている」、とDeepMind今日の発表文に書いている。

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この新しい素材オーセチックスはエネルギーを抱き込んで自分の中に保存する

オーセチックス(auxetics)は、エネルギーを与えられると膨らんだり角が飛び出たりせずに、そのエネルギーを内部に保存する素材だ。押したり叩いたりするたびにそのエネルギーを蓄え、それを一定のペースで発散する。しかし歴史的にはこれらの素材には鋭利な角があって、押しすぎると簡単に破損した。そこでロンドンのクイーンメアリー大学とケンブリッジ大学の研究者たちは、オーセチックスもっと丈夫に効率的に利用する方法を発見した。この方法では、エネルギーを保存してそれを機械的に、何千回も放出するシステムを作れる。

クイーンメアリー大学のDr. Stoyan Smoukovはこう語る: “新しい素材設計の輝かしい未来は、それらがデバイスやロボットを置換していくことにある。すべてのスマートな機能を素材に埋め込める。たとえば鷲が獲物をくちばしでつつくときのように、オブジェクトを何度でもつつくことができるし、新たな力を加えることなく万力のように物を保持できる”。

たとえばロボットがこのシステムを使ったら、物を手で握って、それを離すときが来るまで手をずっと閉じていられる。開いて物を下に落とすときまで、手や鉤爪などに力を送り続ける必要がない。

このプロジェクトに参加した学部学生Eesha Khareはこう言う: “高熱など厳しい条件にさらされる素材の大きな問題は、その膨張だ。これからは、熱源との距離によって変わる温度勾配に合わせて、連続的に膨張特性が変わる素材を設計できる。それによって素材は自動的に、何度も繰り返される厳しい変化に対し、自分を自然に調節できる”。

このプロジェクトは3Dプリントを使って、歯のついたアクチュエータをつかむ小さなクリップを作った。エネルギーを放出するためには、物の反対側を引っ張って歯を外す。システムの全体はきわめて単純だが、エネルギーによってその素材が伸びたり膨らんだりせず、むしろそのエネルギーを蓄えるという事実は重要だ。これと同じ技術を使って、弾(たま)が装甲や防具に当たったら、その弾をつかんでしまうことが可能だろう。人も兵器も、より長寿になるね。

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Tesla、世界最大のバッテリーをオーストラリアの風力発電所に設置

Teslaがなんとか期日どおりに製品を納入した —— 電気自動車のModel 3は計画より遅れているのだが。同社はオーストラリア西部に巨大バッテリー施設を完成した。風力発電で生成したエネルギーを蓄積し、必要なときに送電網に送って夏場によく起きる停電を抑制するのが目的だ。

Teslaのバッテリー施設は、フル充電時にはおよそ3万世帯に1時間電力を供給することが可能で、数日中に最終テストで全設備が準備完了になったことを確認して本格稼働に入る。バッテリーの総容量は100メガワット時で世界最大だ。

Wall Street Journalによると、今後数週間の最終テスト期間中に予備電力を供給するが、本格的な負荷テストが始まるのはオーストラリアに夏が来る12月から3月にかけてだ。その間気温は急上昇し、各家庭がエアコンなどをフル稼働させて猛暑を避けようとするためエネルギーシステムに大きな負荷がかかる。

しかし、Teslaがこの施設でテストしているのは、オーストラリアの夏に対処するためだけではない —— 再生可能エネルギーが従来の環境にやさしくない電力供給方法を完全に置き換える現実的な手段として長期的に有効かどうかを証明することも重要な目的だ。

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トヨタの燃料電池車コンセプトモデルは長航続距離と柔軟性が狙い

トヨタは来るべき東京モーターショウで新しいコンセプトカーを発表する。水素パック一つで約1000 km走る燃料電池自動車で、約3分で再充填できる。見た目は大胆な未来スタイルのミニバンだが、「プレミアム・サルーン」という位置づけで、2列目シートのスペースを強調した室内デザインになっている。

“Fine-Comfort Ride” と呼ばれるその車は、シート構成の自由度が高く、一人だけで乗るときもグループでミーティングや会話や共同作業のスペースとして使うときも最適な配置が選べる。

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運転席と助手席の窓と画面のタッチディスプレイにはバーチャルエージェントが組み込まれ、サラウンドインフォテイメント体験を満喫できる。モーターはホイールの中にあり、車の外端に位置している。これによって走行音が静かになるとトヨタは言っている。

前列と後部座席を仕切るピラーはなく、ラウンジ仕上げのバケットシートはまるで映画ブレードランナーから飛び出してきたようだ。未来の移動手段の超クールなビジョンの1つと言えるが、必ずしも現実的ではない。

トヨタには来週の東京モーターショウで見せるものが山ほどあるはずなので、もっと大きな発表、願わくばもっと型破りのコンセプトが見られることを期待しよう。

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MIT、電力を小出しにできるスマート電源を開発

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MITの研究チームは、小型電子機器がエネルギーを「すする」ことのできる電源を開発した。電気を一定の流れではなくパケットにして送り出す。

ほとんどの電源装置は一定の電圧を供給する。これは、センサー等の常時電力を必要としない小型デバイスにとっては一般に効率がよくない。MITのMicrosystems Technologies Laboratoriesは、電力を要求に応じて供給し、それ以外は「休止」状態になる電源を作った。

「一般に電源コンバーターは、実際に電流を供給していない間も電力を消費している」と元MTLに所属していたArun Paidimarriは言う。「このため、例えば静止電力がマイクロアンペアなら、負荷電力がナノアンペアでも、マイクロアンペアの電流を消費することになる。このコンバーターは広い範囲の電流で効率を保つことが可能だ」。

コンバーターは最大3.3 V の入力を0.9 Vに降圧する。「これらのエネルギーのパケットに基づいて動作する。電源コンバーターの中には様々なスイッチと、インダクター、コンデンサーが入っていて、基本的にこれらのスイッチをオン/オフしている」とPaidimarriは言う。

これは、センサーがオンになり、何かの状態をチェックした後オフになれることを意味している。これが何度も繰り返されれば、IoTデバイスは極くわずかな電力(センサーと計算に必要なだけ)しか使わないですむ。

実に賢い解決策だ。要するに、デバイスがセンサー以外何も使っていなければ、少量のエネルギー「パケット」だけを供給する。デバイスが通信を行うときは「1秒間に100万パケットを供給する必要があるかもしれない」。つまりデバイスの低消費電力部分のみを動かし、高エネルギー部品は必要な時だけ活動させることができる。研究チームは最終的に50%の省電力を見込んでおり、実現すればIoTデバイスを限られたエネルギーで動作させることが容易になる。

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バクテリアで発電する紙状の電池、使い捨て電子製品に好適

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ニューヨークのビンガムトン大学の研究者たちが、“1枚の紙の上のバクテリア電池”というものを作った。このプロジェクトの目的は、使い捨てのマイクロエレクトロニクス製品のための、数週間程度使える電池を作ることで、そのためにバクテリア密度の濃い液体を使った。

“この方法は低コスト短時間の生産が可能で、しかもバイオ電池を、遠隔地や危険な場所、リソースの乏しい地域などで利用できる”、と研究者たちは書いている。

研究者たちが使ったのは、一片のクロマトグラフィー用ペーパーと、ワックスで覆った硝酸銀のリボンだ。電池の陽極は、ペーパーの残り半分の上の伝導性ポリマーと、バクテリア密度の濃い液体の貯水層で作られる。バクテリアの、細胞呼吸が電源になる。

この電池で電気自動車を動かすのは無理でも、ジュースを搾るぐらいはできるだろう。6つ並列で出力は31.51マイクロワット/125.53マイクロアンペア、6×6の構成では44.85マイクロワット/105.89マイクロアンペアだ。研究者たちは、用途として、グルコースセンサーや病原体の検出、あるいは小さな電子製品を数日稼働すること、などを想定している。

実はこれは、このチームが作った初めてのバクテリア電池ではない。紙を使用する最初のプロトタイプは2015年に開発し、その折りたたみ式電池はマッチブックにとてもよく似ていた。また今年の初めには、“忍者が投げる星〔手裏剣〕からヒントを得たデザイン”を披露した。

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Microsoftが行ったブラウザーテストではEdgeがエネルギー効率最良、ラップトップを長時間使える

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かつては、ブラウザーの性能は速度で評価され、各製品がJavaScriptのベンチマークの成績を競った。しかし、スピードは今でも重視されるが、デベロッパーの関心はエネルギー効率の方が上位になっている。今は、ラップトップでWebを閲覧する人が多いからだ。でもMicrosoftが以前、同社のEdgeブラウザーは競合製品のChromeやFirefoxやOperaよりもエネルギー効率が良い、と発表したときには、おもしろい議論が湧き起こった。

そのMicrosoftが今日(米国時間9/15)は、Windows Anniversaryリリースにおける最新版のEdgeの数字を引っさげて、再びリングに戻ってきた。今回もやはり勝者はEdgeで、独自の省エネモードをonにしたOperaよりも成績が良い。Microsoftによれば、Edgeのニューバージョンは、同社のWeb閲覧シミュレーションで行ったブラウザーのテストではページのレンダリングが旧バージョンより12%効率が良い。そのほかのブラウザーも今回のテストでは性能がアップしており、やはり、ブラウザーのテストはときどきやるべきだな、と思わせる。

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今回のMicrosoftの結果では、Edgeはラップトップ上で他のブラウザーよりも23%から69%、電池寿命が長い。最近大量の、エネルギー効率関連のアップデートを行ったChromeも、FirefoxやOperaに比べると相当良い(上図)。ビデオをストリーミングした場合のテストでは、ラップトップの電池の保(も)ちがFirefoxを62%上回った。

Microsoftのテストスイートのソースコードは、GitHubで入手できる。テストはもっぱらWindows 10の上だけだから、Safariのデータはない。でもAppleは、OS X上のブラウザーの中ではエネルギー効率はSafariが最高、と主張したいだろう。

この記事が出たらOperaやMozilla、それにGoogleからきっと反論が来るだろう。そのときは、この記事をアップデートしよう。

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IFTTT、HomeKitなどにも対応し、既存のエアコンを「スマート」化するTadoのAC Control

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スマートサーモスタットが世に登場してしばらくとなる。ただし、これまでのプロダクトはセントラルヒーティング(ないしクーリング)の存在を前提とするものだった。セントラル方式のエアコンディショナーは、アメリカでは比較的広く普及している。しかし一から環境を整えるとなると個別の冷暖房ユニットよりははるかに高くつくものだった。

そこで、初期投資を抑えながら、インテリジェントな温度管理を行いたいとして登場してきたのがTadoのSmart AC Controlだ。リモコンで動作するエアコンのほとんどをインテリジェント化することができる。

このTadoのデバイスは、世界に普及するエアコンの85%とつなぐことができる。ウィンドウタイプないしポータブルタイプなど、エアコンの種別は問わない。Smart AC ControlはWiFiおよび赤外線通信に対応している。すなわちスマートフォンを使って、よりインテリジェントにエアコン操作を行うことができるようになるわけだ。

設置すれば、従来のサーモスタット同様に利用することができる。たとえば帰宅前に部屋の温度を調整しておいたり、外出時には自動的にエアコンを切るというようなこともできる。もちろん既存の仕組みの代替としてのみでなく、IFTTTや、AppleのHomeKitにも対応している。さらには温度、湿度、光、音、動きなどを検知するセンサーを搭載し、またBluetooth LEにも対応しているのだ。

このデバイスは、アメリカ国内におけるTadoのお目見えプロダクトとなる。ただし、ヨーロッパではTado Thermostatはかなりの人気プロダクトだ。CEO兼ファウンダーのChristian Deilmann曰く、Tado Thermostatは欧州におけるサーモスタットプロダクトで、ナンバーワンの売上を誇っているのだとのこと。

価格は199ドルで、Tadoのウェブサイトより購入することができる。

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(翻訳:Maeda, H

AuroraTekはCESで物理の法則に反する技術を売ろうとしていた

 

CESの取材のためにラスベガスのThe Sandsホテルの、スタートアップだらけのEureka Parkを歩きまわっていると、ひとつのブースがぼくと、同僚のDarrell Etheringtonの前に立ちふさがった。テーブルの上に数台の電動スクーターがあり、その背後のパネルには“惑星地球上のもっとも進歩したテクノロジ!”(The MOST Advanced Technology on Planet Earth!)と書かれている。

ぼくたち二人は、その(たぶん)素敵な電動スクーターに関心を向けるためのギャグだと思ったから、そのブースの主(あるじ)、AuroraTekの社長でCEOのWilliam Alekに話を聞いた。上のビデオにはぼく自身も写っているから、そのときの会話の全貌が分かる。

AuroraTekは実際に電動スクーターを作っているのだが、Alekの話では、そのブースの本当のスターは、ものすごく特別な変圧器(トランス)で、入力よりも大きい電力を出力するのだ。

“カン、カン、カン、カン、カン、…”、ぼくの頭の中の、いかさま検出器が鐘を連打した。それは、熱力学の第一法則に反している。小学校の初等物理で教わると思うが、エネルギーは作ることも破壊することもできない。

ライブでビデオを撮っているのだから、Alekの話はAlekに有利に解釈してやるべきだ。そこで、彼に説明を求めた。彼は、量子トンネル効果がなんたらかんたらという、ニセ科学のような大風呂敷を広げ始めたが、その効果をふつうの分かりやすい英語で説明できなかった。AuroraTekのホームページの方が、まだましだ: “私たちはこれを、負から正へのエネルギー変換(NEGATIVE-to-POSITIVE Energy transformation)によるフリーエネルギー、または過統一(overunity)技術と呼んでいる。なぜならばそれは、“無から有を生む”を実現しているように見えるからだ”。

AuroraTekのブースのパネル

ぼくの場合、スタートアップのアイデアがだめだと思ったら、黙って立ち去ることにしている。それについて、いろいろ否定的な記事を書くのは簡単だけど、世界にはぼくとは違う頭や心やニーズを抱えた人がたくさんいる。一部の人たちにとっては、それは、価値あるアイデアかもしれない。でもガマの油(いんちき薬)のようなテクノロジを売ることは? それは、我慢できないけどね。

ぼくの中の別のぼくは、Alekがプロ級のトロルだったらおもしろいな、と思っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


再生可能エネルギーを用いた三葉飛行機が、実現を目指してKickstarterに登場

三葉機(Triplane)は、第一次世界大戦をもって退役したものだと思っていた。しかし再生可能エネルギーを利用するハイブリット電気飛行機として復活させようとする動きがあるようだ。FaradAirが、実現に向けたKickstarterキャンペーンを展開中なのだ。

バイオ―電気ハイブリッドの飛行機(Bio-Electric-Hybrid-Aircraft:略してBEHAと呼ぶようだ)は、世界初のハイブリッドなエコ飛行機の実現を目指すプロジェクトだ。2020年の実現を目指すという、少々気の長いプロジェクトではある。航空宇宙工学で名を知られるイギリスのクランフィールド大学(Cranfield)など米英の技術パートナーやベンチャーなどを巻き込んだプロジェクトとして運営していく予定であるらしい。

マネージング・ディレクターのNeil Cloughleyは、夜間の騒音対策や公害対策に対するソリューションともなり得ると話している。

既存テクノロジーとの最も大きな違いは、そのサイズにあると言えるだろう。これまでに発表された電気飛行機は、長大なグライダー様の翼を備えていて、それがために利用範囲が制限されるということにもなっていた。しかし三葉化することで、BEHAは一般的な飛行機と同様なサイズに収めることを可能としている。

飛行機上面はほぼすべてソーラーパネルで覆われており、風力タービンも備えていて、それにより地上にいるときも、飛行中にもバッテリーを充電できるようになっている。

ちなみに飛行機1台あたりの価格は100万ドルを見込んでいるとのことだ。

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(翻訳:Maeda, H


AirEnergyは、3Dプリンターで作るオープンソースの風力タービンだ

人里を離れ、必要なエネルギーを作れる自給自足生活に憧れたことはないだろうか。そのために自分の排泄物を乾燥させて燃やす必要ない。AirEnergy 3Dがあるのだから。

このポーランドでクラウドファンディングされたプロジェクトは、ポータブルでアップグレード可能な、翼とベースステーションからなる風力タービンだ。3DプリンターメーカーのOmni3Dのチームが作った。彼らはこれをカスタム化可能なプラットフォームとして設計し、オープンソース化した。標準的3Dプリンターで、追加のタービン翼をプリントして追加することさえ可能だ。

「始めたばかりの時から、3Dプリンターメーカーとしてわれわれにとって一番大切なことは、この驚くべきテクノロジーの可能性を人々に伝えることだった。Omni3D内部で常に特別プロジェクトを進めているのはそのためだ。われわれはケンカでくちばしを失くしたペンギンのために人工くちばしをプリントしたり、老若男女にこのテクノロジーを紹介するための無料でオープンなミーティングも開いている。今回のアイデアは、プリンターそのもの以上に価値のある何かをプリントすることだった。完全にオープンソースの再生可能エネルギーのソリューションを作ることも、理由の一つだった」と、Omini3Dの共同ファウンダー、Konrad Sierzputowskiは語った。

組み立てキットの価格は、Kickstarterで約350ドルだが、設計図はオープンソース化されるので、誰でも自分のタービンを作ることができる。さらに素晴らしいことに、彼らは2500ボンド出資されるたびに、完成品1台を必要としている町に寄贈する予定だ。

このタービンは、理想的条件下で300Wの発電能力がある。つまり、携帯電話やノートPCを充電したり、コンセントに差し込んで電力網に電気を戻すことができる。自宅の庭にタービンを置こうという人は少ないだろうが、なかなかいいポータブルオフライン発電システムだと思う。

彼らはこれを量産するつもりがあるのだろうか? Sierzputowskiにもまだわからない。彼はただ、何かクールなものを3Dプリンティングコミュニティーに返そうとしているだけだ。「このKickstarterキャンペーンは、プロジェクトに必要な資金を集め、コミュニティーに恩返しするためにやっているだけ」と彼は言った。「唯一必要なもの、それは・・・風」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


ホワイトハウス、気候変動問題を証明するためにクラウドソース活用キャンペーンを実施

ホワイトハウスは、気候変動キャンペーン推進のために、 優れたデータサイエンティストを必要としているようだ。自ら終末論のシナリオを書く代わりに、ホワイトハウスは政府データを公開し、研究者による独自のシミュレーションを可能にすると共に、各都市が変動に影響に備えられるようにした。

「オバマ政権は本日、アメリカ民間企業の優れたイノベーターらが、公開された政府データその他のデータセットを活用して、アメリカのコミュニティーの気候変動に対する抵抗力を増すためのツールを作り、分野を横断した協力によって、それらのツールをできるだけ有用なものにするよう要請する」、とホワイトハウスのウェブサイトに掲載された報告書は説明している

沿岸洪水から津波活動にいたるまで、あらゆるデータは開発者が使いやすい形式で、新しいウェブポータルData.govに置かれている。このやや不透明な主題に関する作業にインセンティブを与えるべく、新データには賞品付きの競技が設定されている。「沿岸洪水イノベーション・チャレンジ」から「人々に沿岸災害ならびに人口増加および海面上昇による脆弱性の増大を理解させる」までテーマは多岐にわたる。

この活動は、最高技術責任者、Todd Parkの〈オープン・データ・ハッピー政策〉の一環だ。Parkは2012年に彼のアプローチを私に説明してくれた。

われわれは、あらゆる方面の起業家やイノベーターが、機械読取可能な形で保管されている政府データを活用できるようにする。彼らは、天候データやGPSデータと同様、われわれが想像すらできないようなあらゆるサービスや製品を作ってくれるだろう」

デベロッパーやデータおたくは、新しいツールの全貌をここで見ることができる。

[Image Credit: Flickr User NASA Goddard Photo and Video]

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