モバイルアプリのバックエンドプロセスの開発を容易にするAWS Mobile Hub、AWS Lambdaがベース

dsc01815

Amazonが今日(米国時間10/8)のre:Inventデベロッパカンファレンスで、モバイルデベロッパがアプリのバックエンドプロセスを作りやすくするための、AWS LambdaベースのツールAWS Mobile Hubのローンチを発表した。

hub_config_push_1

AmazonのCTO Werner Vogelsは今日のキーノートで、AWSはかなり前から、モバイルアプリのバックエンドを動かすために必要なすべてのサービスを提供してきたが、しかしその中には使いにくいものもあった。“われわれが痛感したのは、モバイルデベロッパが自分のデバイスはとてもよく知っているが、彼らにとってバックエンドが難関であることだ。モバイル開発をもっとシンプルにするためには、われわれは何をすべきか、と考えた”。

プラットホームごとにいろんなツールをセットアップするのではなく、今度のMobile HubではAndroidとiOSのデベロッパが自分のアプリのために必要なサービスを選んで構成し、Amazonはそれらの機能をLambdaで動かす。提供されているオプションには、ユーザログインのセットアップ、ユーザデータのストレージ、アプリのアナリティクスなどがある。

モバイルバックエンドのセットアップでデベロッパを助けるだけでなく、このサービスはバックエンドの構築とテストとモニタも楽にしてくれる。Amazonによると、わずか10分で、このサービスをセットアップして使えるようになる。

DSC01817

AWS re:Invent 2015

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

Google、アプリケーションからGoogle DriveにバックアップするAPIを公開。早速WhatsAppが対応へ

google_drive

スマートフォンをバスタブなど水の中に落としてしまったとき、まず気になるのが「バックアップはしてあっただろうか」ということだ。とくに気になるのが、頻繁にやりとりするメッセージのバックアップをきちんと行なっていたかどうかだ。大事な情報をいろいろとやりとりしていて、これが失われるかと思うとぞっとしてしまう。

こうした危惧も杞憂となる日がやってきたようだ。Google DriveはバックアップするためのAPIを提供し、それをまずWhatsAppにて提供することとしたのだ。これは数ヶ月にわたって順次公開されていく予定であるそうだ。この機能を使えば、WhatsApp上でやり取りしたコンテンツがGoogle Driveに自動的にバックアップされることとなる。Android上でWhatsAppを使っている人にとっては朗報だろう。

drive_whatsapp_n6_double

データをスマートフォンの上にだけおいておいて安心する人はいないでしょう(壊れてしまう可能性だってあります)。その心配に対処するため、WhatsApp for Androidにコンテンツのバックアップ機能を加えました。やりとりしたチャット、ボイスメッセージ、写真、そしてビデオがGoogle Driveにバックアップされるようになります。バックアップしておけば、端末を変更しても簡単にコンテンツを復活させることができます。

今回アナウンスしたバックアップ機能は、数ヶ月のうちに順次公開していく予定となっています。新版がリリースされた際には設定メニューをチェックしてみてください。今回のアップデートの詳細については、Help Centerなどにも記載しています。また自作アプリケーションにGoogle Driveへのバックカップ機能を搭載しようかと考えている方は、開発者向けサイトのチェックもお願いします。

quote_whatsapp

これからもGoogle Driveへのバックアップ機能を搭載するアプリケーションは増えていくことだろう。やりとりするビデオ、写真、住所情報や大切な数字などを手軽に保存しておきたいと考えている人も多いはずなのだ。10〜12のアプリケーションがすぐにも対応を始めるのではないだろうか。

Androidオンリーであるという点と、写真やビデオが自動的にGoogle Photoに展開されないという点に不満を感じはする。ただ機能は徐々に改善されていくのだろう。API側からどのコンテンツをどこにバックアップするという制御ができるようにもなるかもしれない。iOS版では今のところこの機能を利用する方法はない。

Google Driveへのバックアップ機能を実装する方法については、冒頭にも記載したこちらの記事からチェックすることができる。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

Appleがスマートフォン上で人工知能で写真を分類するアプリのデベロッパPerceptioを買収

apple-logo-dark

AppleがディープラーニングのPerceptioを買収したことを、今日(米国時間10/5)Bloombergに確認した。Perceptioのプロダクトは、人工知能を使ってスマートフォン上の写真を分類するアプリだ。

昨年10月のRe/codeの記事によると、Perceptioの技術ではデータをクラウドに保存せずモバイルデバイス本体の上で高度な計算処理ができる。ファウンダのNicolas PintoとZak Stoneは、写真共有アプリSmoothieも作った。

PintoのTwitterプロフィールによると、彼はMITとハーバードのリサーチサイエンティストおよびコンピュータ科学の講師だそうだ。一方Stoneは、ハーバードでコンピュータヴィジョンのPhDを取得している。

AppleのスポークスマンColin JohnsonはBloombergに、“Appleは小さなテクノロジ企業をときどき買収するが、その場合一般的に買収の目的や今後の計画を議論しない”、と述べている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

物理演算ゲームBrain Dotsに自分でステージを作れる「ビルダー機能」が搭載された

brain

トランスリミットが提供する物理演算パズルアプリ「Brain Dots」。当初300までだったステージ数も現在は500以上にまで拡大したが、ヘビーユーザーはすでに全ステージをクリアしているそうで、同社にはステージ追加の要望が寄せられている状況だ。

そんなBrain Dotsが10月1日にバージョン2.0のアプリの提供を開始した。その目玉となるのが、ユーザーが自らステージを作成し、他のユーザーと共有できる「ステージビルダー機能」だ。

ステージビルダー機能を使えば、ユーザーはBrain Dotsのステージを構成する様々なパーツを自由に配置し、新たなステージを作成できる。作ったステージは、作成したユーザーがクリアすると公開可能になる。公開されたステージは世界中のユーザーがプレイしたり、評価・お気に入り登録したりできる。

コンシューマーゲーム機のWii Uにおいては、9月に任天堂が「スーパーマリオメーカー」というタイトルをリリースしている。これは人気アクションゲーム「スーパーマリオブラザーズ」のステージを自ら作成し、世界中に公開できるというもので、ソーシャルネットワークを見ると非常に人気を博しているようだ。今回のステージビルダー機能のコンセプトはこれに近いだろう。トランスリミットでは新機能によって、「Brain Dotsはユーザーが作りユーザが遊ぶプラットフォームとして生まれ変わる」と説明している。

ちなみに最新のダウンロード数やアクティブユーザー数については聞けなかったが、「ダウンロード数は伸びているし、継続率は非常にいい。(アクティブについては)リリース当初の勢いがもの凄かったので目減りしている感はあるが、もうひと山作っていく」(トランスリミット代表取締役の高場大樹氏)とのこと。

ステージビルダー機能のイメージ

ステージビルダー機能のイメージ

Nexus 5Xおよび6Pに触ってみた最初の印象(ビデオ)

Googleが、サンフランシスコで行ったプレスイベントにて、2つの新しいNexusスマートフォンをデビューさせた。同時にChromecastのアップデートおよび音楽専用のChromecastも発表している。Googleが行った中では過去最大級のハードウェアイベントで、新しいデバイスを少々試してみることもできた。

金属ケースをまとったNexus 6Pは、高級感にあふれている。重量はそこそこあるが、これまでの(大きすぎた)Nexus 6よりも若干スマートになったことにより、手に馴染みやすくはなっているようだ。Googleによると、従来モデルよりも多少軽くなっているとのことだが、体感できるほどではないように思う。AMOLEDディスプレイは美しく仕上がっているようだ。ただし実際の使用環境で使ってみるまではよくわからない点もある。会場で見た限りでは非常にシャープで発色も素晴らしかった。しかし、予想を大きく上回るといったほどではない。

やはり会場内の環境下で試した限りでの話だが、カメラの性能も大幅にアップしているように思える。ただし暗い場所でのテストなどは行えていない。

Screen Shot 2015-09-29 at 18.09.37

新しいNexus 6Pに比べると、小型のNexus 5Xの方は高級感に欠けると言わざるを得まい。6Pが金属カバーを採用しているのに対して、5Xの方がプラスチックであることが強く影響している。ただし6Pと比べると130ドルも安いこともあり、全体的には魅力的なデバイスと言えるだろう。カメラ性能については6Pと同等となっている。

5Xを手にしたとき、最初に感じるのはその軽さだろう。2400mAhのバッテリーを使っているとはちょっと信じられないほどだ。1080pの画面に新しさはないが、やはり表示は美しい。

どちらの機種を選ぶべきか。TechCrunchとしてはどちらかをおすすめするほどに十分なテストはまだ行えていない。詳細なレビューはまた時を改めて行いたい。少し触ってみた程度で判断するのであれば、自分としては6Pの方に魅力を感じる。以前のNexus 6ほどの扱いにくさを感じないように思うのだ。それに、手元にNexus 5を持っていることも6Pを持ってみたい理由だ。

google-nexus15

原文へ

(翻訳:Maeda, H

Googleが新しいAndroidタブレットPixel Cを発表…着脱型のキーボードアクセサリを別売

dsc_0021

Googleが今日(米国時間9/29)サンフランシスコで行ったNexusの発表イベントで、なんとNexusタブレットではない新型10.2インチタブレットPixel Cを予告発表した。発表を行ったプロダクト管理担当役員Andrew Bowersによると、このタブレットは、GoogleのPixeel製品系列(すでにChromebookがある)に“遊び”と“生産性”(お仕事)の要素を加えるものだ。

前のPixel機と違って、このタブレットはChrome OSではなくAndroid 6.0(Marshmallow)が載る。最初のPixel機はラップトップだったが、今度はタブレットだ。ただし、その最大の売り物は、着脱式のキーボードアクセサリだ(磁石方式)。タブレットでありながら、完全なQWERTYキーボードを使えるのだ。

Bowersは着脱式キーボードについて、“タブレットは、どうしてもラップトップ的に使って長文を入力したいことがある。メールの返事とかね”、と説明する。“これまでいろんなキーボードアクセサリが登場したけど、本当に使いやすいものは一つもなかった”。

“そこでわれわれは、タブレット用外付けキーボードの理想的な仕様について研究した。それは、タッチ画面とキーボードが互いに補完し合うものでなければならない”。そして彼は、Pixel Cの”C”は’Convertible’(コンバーチブル、可換型)だ、と説明した。

“Pixel Cのタブレットとキーボードは、一つのデバイス上に遊びと仕事の両方がある、新しいユーザ体験を切り拓くだろう”。

閉じたときにはキーボードとタブレットが一体になるが、磁石の配置によって両者は、ずれずにぴったり重なる。文字をタイプしたいときには画面を立てて、キーボードのうしろのフラップに装着する。画面の角度は100-130度の範囲で調節できる。90度(直立)はノー。

DSC_0015

“キックスタンドや留め金のような、邪魔物はない”、とBowersは述べる。それは、キックスタンドのあるMicrosoft Surfaceに対する軽いジャブだ。“膝の上でも、ベッドの上でも、カウチの上でも、どこにいても楽に使える”。

小型化するために、あまり使われない5つの記号キーは省かれている。それは画面上のタッチタイプの仮想キーボードで入力する。

キーボードとタブレットの通信はBluetoothなので、キーボードに電池はあるが、閉じてるときタブレットから電磁誘導で充電されるから、キーボードを単独で充電する必要はない。閉じるのを忘れたときでも、毎日ふつうに使って2か月以上はもつ。

Pixel Cは今年にクリスマス期にGoogle Storeで発売され、タブレット本体が499ドル、キーボードが149ドルだ。両方買うと計648ドル。

DSC_0028

Chromebook Pixelの初代機が発売されたのが2013年の2月 で、自社ブランドのハイエンドラップトップとChrome OSを組み合わせて、そのクラウドベースのオペレーティングシステムへの、世の中の関心を喚起しようとした。そのお値段は高かったが、2年後の今年にはニューバージョンが出て価格もやや下がった。

メタルケースのPixel Cはルックス的には高級機ではないが、Bowersは“手に持ったときの感触が頑丈でしっかりしている”、と形容する。カバーがキーボードアクセサリになっているMicrosoft Surfaceにルックスはやや似ている(キーボードだけで言うなら、Surfaceの方がゴージャスだ)。

ディスプレイは308ppiで2560×1800だ。AppleがRetinaディスプレイで謳ったpixel-free(人間の肉眼で個々の画素が見えない)をねらっているみたい。最大輝度は、500ニト。プロセッサはクワッドコアのNVIDIA X1と、“デスクトップクラスの”Maxwell GPU、RAMは3GBだ。“モバイルデバイスとしては相当強大なグラフィクス能力だ。どんなゲームでも、十分満足できるだろう”、とBowersは言う。

ステレオスピーカーが画面の両端にあるので、映画も十分に楽しめる。マイクロフォンは4基あって、Androidへの音声による命令は“部屋の向こう端からでもできる”。充電端子はUSB Type C、電池寿命は計測されてないが、Bowersによると、タブレットとしては最高だそうだ。今後、発売までに、さらに詳しいデータを発表していく、という。

google-nexus15

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

人気のNexus 5後継機のNexus 5Xが登場。カメラ性能も向上して価格は379ドルより

dsc_0819

噂通り、GoogleはNexus 5の後継となるスマートフォンを発表した。ちなみにNexus 5はNexusシリーズの中でもっとも人気のあるシリーズだ。

新たに発表されたLG製のNexus 5Xは5.2インチディスプレイを搭載し、Qualcomm Snapdragon 808プロセッサーで動作する。RAMは2GBで画面は1080pの解像度となっている。画面サイズは大きくなったが、解像度は変わっていないということになる。バッテリー容量は2700mAhだ。

価格の方は16GBモデルが379ドルで、32GBモデルが429ドルとなっている。本日からPlay Storeでのプレオーダーが開始となる。尚、Play Storeで利用できる50ドル分のクレジットもついているそうだ。

また、Apple Careと似た仕組みも投入されることとなった。59ドルで保証期間を延長して、事故による破損などの保証を1年間延長して受けることができるようになっている。

OSは上にも記したとおりAndroidの最新版(Marshmallow)で、アメリカのキャリアについてはすべて対応するようだ。

Screen Shot 2015-09-29 at 9.29.32 AM

ところで従来のNexus 5については、カメラがその最大の弱点となっていた。新しいNexus 5Xは背面側に12.3メガピクセルのカメラを搭載(旧版は8メガピクセルだった)し、フロント側には5メガピクセルのカメラを搭載している。またカメラアプリケーションの性能も向上しているようだ。これにより良い写真が撮れるようになっていると思いたいところではあるが、これまでNexusのカメラには何度も裏切られてきた。実際に試してみるまでは、カメラについての評価は先送りしておきたい。

なお、新しいカメラではスローモーションビデオも撮影できるようになっているらしい。

さらに、これも噂されていたが、背面には指紋スキャナーも搭載されている。Android Marshmallowは、指紋スキャンをサポートする最初のシステムとなる。それで、これまでと同様に、Nexusシリーズにて最新機能をサポートすることとしたわけだ。

充電にはUSB-Cのコネクターを用いる。USB-Cはデータの通信速度がはやいのが特徴だが、より大きな電力を供給することもできるようになっている。すなわち充電にかかる時間を短縮することができるわけだ。

USB-Cの企画策定にはGoogleも参加しており、Chromebook Pixelでも採用している。AppleもUSB-Cを採用している。但し今のところAppleは、スマートフォンではなく小型のMacbookでのみUSB-Cを採用している。

Neuxs 5Xにはまだいろいろな新機能が搭載されていると思われる。また新たな情報が入れば改めてお伝えしたい。

google-nexus15

原文へ

(翻訳:Maeda, H

Google、Nexus 6Pを発表。高性能カメラを搭載して価格は499ドルから

dsc_08171

昨年11月、TechCrunchでもNexus 6の記事を掲載した。その際にGreg Kumparakは「美しいのかもしれないが、でかくて扱いにくいシロモノ」(A Big, Beautiful, Cubersome Beast)と評していた。このNexus 6から、Androidファン以外からも「二度見」されるデバイスとなった。

そしてこのたび、Nexus 6の後継機となるNexus 6Pが登場してきた。プレオーダーの受付も開始されている(訳注:日本ではまだのようです)。まずはスペックのみお伝えしておこう。

  • Android Marshmallow搭載
  • Snapdragon 810 v2.1プロセッサー
  • 6.27インチWQHDディスプレイ
  • 12.3メガピクセル背面カメラ
  • 8メガピクセル前面カメラ
  • 3450mAhバッテリー
  • 前面デュアルスピーカー搭載

dsc_0809

メモリーは32GB、63GB、および128GBのものが用意されている。カラーもAluminum、Frost、Graphiteが用意されている。

新しい情報が入り次第、また詳細をお伝えしたい。

google-nexus15-banner

原文へ

(翻訳:Maeda, H

【詳報】ソラコムがベールを脱いだ、月額300円からのIoT向けMVNOサービスの狙いとは?

ソラコムがステルスで取り組んでいた新規プラットフォーム事業の詳細を明らかにした。ソラコムは、元AWSのエバンジェリスト玉川憲氏が2015年3月にAWSを退職して設立したスタートアップ企業で、創業直後に7億円というシードラウンドとしては大型の資金調達が注目を集めた。TechCrunch Japanは発表直前にソラコムに話を聞いてきたので詳しくお伝えしたい。

soracom02

提供を開始したSIMカードを手にするソラコム創業者で代表の玉川憲氏

ソラコムが取り組むのは、IoT向けの格安MVNOサービス「SORACOM Air」だ。これだけ書くと、何だまたもう1つ別のSIMカード提供会社か登場したのかと思うかもしれないが、2つの点で注目だ。

1つは、利用用途によっては月額利用料が300円で済むという衝撃的な安さ。これだけでもIoTや業務用スマホ・タブレットの全く新しい市場を切り開く可能性がある。

さらにもう1点、ソラコムの新プラットフォームが注目すべき理由は、基地局だけ既存キャリアのシステムを流用していて、残りをソフトウェアで実装している点だ。通信キャリアはもちろん、従来のMVNO事業者は、パケット交換、帯域制御、顧客管理、課金など、キャリア向けの専用機器を利用していた。ソラコムでは、この部分をAWSのクラウド上に展開したソフトウェアで置き換えてしまった。

これは単に運用コストの削減に繋がるだけでなく、高い柔軟性とスケーラビリティーを確保できるということだ。例えば、SIMカードを搭載したデバイス、もしくはそのデバイスを管理するサービス側からソラコムのAPIを叩いて通信速度をダイナミックに変更できたりする。これは、ちょうどAmazon EC2でインスタンスをソフトウェア的に切り替えるような話だ。暗号化通信もクラウドの豊富なコンピューティングリソースを使うことでソフトウェア的に簡単に実現できてしまう。AWSでサーバーがプログラマブルになったように、ソラコムは通信サービスをプログラマブルにしてしまうということだ。

IoTで未解決だった「通信とセキュリティー」問題を解決する

ソラコムの狙いと、今後のビジネスモデルの話は、創業者である玉川憲氏の経歴に重ねて説明すると分かりやすいかもしれない。

WP1.5view

WatchPad

玉川氏は東京大学大学院機械情報工学科修士卒で、日本IBMの基礎研究所でキャリアをスタートしている。2000年ごろ、IBMで「WatchPad」と名付けられた今で言うスマートウォッチを作っていたそうだ。製品化には至らなかったものの、Linux搭載で腕に巻きつけられる超小型コンピューターとして当事非常に大きな注目を集めた。

「2000年にIBMの基礎研でWatchPadを作っていたのですが、その頃からIoTの課題って変わってないなと思っています。1つはバッテリーが持たないこと。10年かかって2倍にもなっていませんよね。10年で100倍速くなっているコンピューターとは違います。もう1つはネット接続。近距離無線は進化しているものの、まだまだネット接続が難しいのが現状です」

「もう1つ未解決なのはセキュリティーです。デバイスで暗号化をすると小型化や低コスト化ができません」

ソラコムでは、通信とセキュリティーについての回答を用意したという。

近距離通信としてはBluetoothが普及しているし、家庭内のWPANとしてZ-WaveやThread、Weave、ZigBeeなどの規格もある。しかし、これらはスマホやハブといったアップストリームにぶら下がった端末までの接続のためのもので、ネット接続ではない。一方、Wi-Fiは小型デバイスにとっては難しい。玉川氏によれば、これまでモバイル通信は、おもにヒト向け。「IoT向けのモバイル通信を作りたい」と考えて立ち上げたのがソラコムだという。

従来のMVNOと違って専用機材ではなく、クラウド上に各機能を実装

モバイル向け通信に参入するといっても、「全国に設置した基地局だけで1兆円ぐらいのアセット。パケット交換や帯域制御、顧客管理、課金といった部分で数千億円規模の投資。さらにISPも入れて、この3つをやって初めて通信キャリアなわけですが、われわれは、そうはなれません」という。

「一方、MVNOといえば、楽天やイオン、DMMが参入しています。これは(1契約あたり)2000円で仕入れて2500円で売るというビジネスで、ブランドや販売網があればできますが、これもわれわれにはできないし、テクノロジーのビジネスでもありません。われわれがやるのは基地局だけをレイヤー2接続の契約で利用して、残りはクラウドネイティブで提供するというモデルです」

fig01

従来のMVNOの接続では、キャリアが持つ基地局からパケットが飛んでくるゲートウェイに続けて、MVNO事業者が利用者認証や課金管理、利用者ごとのポリシー適用のための機材などをそれぞれ用意する必要があった。ここはエリクソンなど専用ベンダーが提供するハードウェアの世界。ここの機能群をAWSのクラウド上にソフトウェアで実装したのがSORACOM Airで、クラウドの特徴であるスケーラビリティーの高さがメリットだ。玉川氏は「人口の10倍とか100倍のデバイスが繋がってきても対応できるような、IoTに特化したバーチャルキャリア」と、そのポテンシャルを説明する。

スケーラビリティーは上限のほうだけなく、小さい単位から即利用できるという点にも当てはまる。例えばデバイスとサービスを統合したソリューションを展開する企業が通信部分が足りていないようなケース。

「従来のMVNOだとSIMカード2000枚以上、500万円以上からと言われたような話が、SORACOM Airなら1枚から利用できる。誰でも通信キャリアになれるというモデルで、自在に値付けしてビジネスができます」

クラウド上に実装された通信管理機能には、AWSクラウドと同様にWebコンソールからでも、APIからでも操作可能で、複数SIMを一括操作するようなことができる。各端末からでもサービス側からでもAPIを通して、各SIMの通信状態の監視や休止・再開、速度変更といったことができる。

dashboard

SORACOM AirのSIMカードは20枚で1万1600円(1枚580円)など。月額基本料金は300円で、32kpbsだと1MBあたり上り0.2円、512kbpsで1MBが0.24円。上り・下りで料金が違ったり、夜間割引も適用されるなど明朗会計だ。料金設定はAmazon EC2のインスタンスサイズを選ぶようなイメージだ。将来的にはニーズに応じて料金を変動させる「スポットインスタンス」のようなことも、アイデアとしては検討しているそうだ。以下がSORACOM Airの価格表。s1.minimumとかs1.fastとか、何だか見慣れた命名規則だ。

price

SORACOM Beamで暗号化やルーティングなど高度な処理をクラウドにオフロード

IoTで未解決だった問題として、玉川氏はセキュリティーを挙げていた。これについてはクラウドで潤沢なリソースを使った「SORACOM Beam」というサービスで解決可能だという。SORACOM Beamはデバイスとサービスを繋ぐ通信経路を暗号化したり、ルーティングするサービスだ。

セキュアな通信を行うには暗号化が必要だが、小型デバイスに暗号化処理をやらせるのは重たい。ただ、もともとキャリアのパケット網はゲートウェイ部分まではセキュアなので、ソラコムにパケットが入ってきてインターネット側のシステム(サーバー)へと繋ぐ部分を暗号化すれば良いだけだ。そこで、

・HTTP→HTTPS
・MQTT→MQTTS
・TCP→SSL

という変換をソラコムのクラウド上で行うことで、重たく面倒な処理はデバイスではなくクラウドで済ませることができる。実際、車いす開発のWHILLは、バッテリーをできるだけ使わずにセキュアに見守りシステムを作ることを検討していて、こういうケースだと「TCP→SORACOM Beam→HTTP」とすることで、デバイス側の負荷をオフロードできるのだという。タイムスタンプやSIMのIDもソラコム側で分かるし、カスタムヘッダを付けてHTTPSで送ることもできる。そして、これがまた重要だと思うのだけど、こうした設定はすべて、デバイスの設定に触れることなくAPIで変更ができる。出荷したIoTデバイスに触れることなく、サービス改善や新規サービス開発が可能ということだ。

ソラコムでは今回、デバイスやソリューション、インテグレーションのサービスを提供するパートナープログラム(Soracom Partner Space)を発表している。現時点では、以下のような企業がテストしているそうだ。

・内田洋行:IoT百葉箱
・リクルートライフスタイル:無料POSレジアプリ「Airレジ」にSORACOM Air搭載、イベント会場で1カ月だけ臨時店舗運営
・フォトシンス:スマートロックのAkerunで応用、カギを開けるときには低速、ファームウェアのアップロード時には転送速度をアップ
・フレームワークス:物流システムにおける動態管理システム。トラックにスマホを搭載してGPSデータだけを利用。業務時間のみの小容量の通信
・キヤノン:事務機器でSORACOM Airの実証実験
・東急ハンズ:業務システムのバックアップ回線として利用
・Global Mobility Service:フィリピンでクルマにSORACOM Airを搭載。割賦未払いの利用者のクルマを遠隔地から停止

いろいろな実験的取り組みがベータ期間中にも出てきているが、ソラコムの新サービスは、Amazon S3が出てきたときと似ているかもしれない。S3のリリース初期には開発者だけではなく、個人利用で使ってしまうパワーユーザー層にもアピールしたものだ。SORACOM Airも1枚880円からAmazonで購入できるので、何かのアプリが出てきて個人ユーザーが使うような事例も出てきそうだ。

Amazon同様に継続的な値下げ努力とイノベーションで競合に勝つ

ステルス期間は別として、ローンチしてしまえばアイデアは自明だし、ソフトウェアの話なので誰でも実装できるのではないだろうか。競合が出てきたときに、ソラコムではどうやって戦っていくのだろうか。

「ソラコムは、モバイルとクラウドが融合した初めての形と思っています。単純な通信ではなく、暗号化したり、認証したりという付加価値があます。新機能や新サービスも開発していきます。まだ2つ3つは温めているアイデアがありますし、実際にお客さんと話している中でニーズが見えてくる面もあります」

「これはAWSが出てきたときと似てるなと思っています。AWSはクラウドです。当事は、うちもクラウドですといってプライベートクラウドみたいなのが、たくさん出てきましたよね。でも、その多くはあくまでもサーバー仮想化の話であって、AWSがやっているようなクラウドネイティブではありませんでした。ハードウェアを仮想化して、物理サーバー上に仮想マシンを複数設置しましたという程度にすぎなくて。もちろん仮想化は仮想化で価値はあるんですけど、瞬時に使えて、いつでもやめられて、いくらでもスケールできるというクラウドとは違いますよね」

「もしソラコムが取り組む市場が良い市場だとしたら、今後は競合がたくさん入ってくるはずです。でも正しいアプローチでやれる企業は少ないと思うんです。いつでも始められて、いつでも利用をやめられて、APIが備わっていて、自動化ができてという。そういうことを質実剛健にやっていけるような企業は少ない」

「われわれも運用コストに少しだけ利益をのせて回していくのですが、Amazonみたいな薄利多売モデルで、どんどん価格を下げていきます。Amazonにいた私からすると当たり前のことですけど、ふつうはそうじゃありません。多くの企業は大きな利益を取っていくので、同じアプローチを取る会社が多いとは思っていません」

「かつてAWSがでてきて、その結果、InstagramやDropbox、Pinterest、Airbnb、Uberといったサービスが出てきたみたいに、ソラコムのようなプラットフォームによって、きっと面白いIoTが出てくるんじゃないかなと思います」

Apple、watchOS 2の配信を開始

apple-watch-weather-tight

AppleがついにwatchOS 2をリリースした。アップデートは一般に公開されている。またOTAアップデートにも対応している。ただしアップデート用のサーバーの準備は順次整えられているとのことで、まだアップデートが有効になっていないというケースもある。スムーズなダウンロードを実現するために、キューシステムを採用しているせいもあるのだろう。

本来、このwatchOS 2は9月16日にリリースされるはずだった。しかし予想外のバグの影響でリリースを遅らさざるを得なかった

「watchOS 2の開発中に発見されたバグについて、修正に思ったよりも時間がかかってしまったのです」と、Appleのスポークスパーソンは言っていた。「スケジュールを延期せざるを得ませんが、まもなくリリースできるものと思います」とのことだった。そして今日を迎えたというわけだ。

Apple Watchが登場してまださほど時間も経っていないが、しかし今回のOSアップデートにはさまざまな機能追加が含まれている。ネイティブのアプリケーションを開発することができるようになり、またプログラム中からあらゆるセンサーにアクセスできるようにもなっている。乗り換え案内にも使えるようになり、Siriがさらに便利になっている。またウォッチフェイスも新しいものが用意されていて、サードパーティー製のコンプリケーションも可能となった。ナイトモードも場合によっては便利だし、また天気や予定を確認するための「タイムマシン」機能も使いやすい。watchOS 2についてはこちら(英文)でもレビューしているのでご参照いただきたい。

アップデートの方法についても記しておこう。iPhoneからWatchアプリケーションを起動して「一般」から「ソフトウェア・アップデート」を選んで行うことができる。アップデートを行うかどうかのプロンプトが表示されるはずだ。

watchOS 2へのアップデートは「絶対」のものだと思う。アップデートすれば、これまでのOSがベータ版であったかのように感じるはずだ。Appleとしては、このwatchOS 2こそが、リリースしたかったものであるはずだ。動作もはやく、また開発者にとっても便利な機能が満載されている。

891F6E74-F04D-425A-92A4-F992E3687FD505316C5E-1933-4D25-A409-9266F8613DB3

原文へ

(翻訳:Maeda, H

モバイルでの買い物体験を単純化したStripeの新サービスStripe Relayについて協同ファウンダのJohn Collisonが語る

決済サービスのStripeが昨日(米国時間9/14)、Stripe Relayと呼ばれる新しいツールをローンチした。これは、リテイラーがbuyボタン(‘買う’ボタン)を複数のプラットホームに置ける機能で、StripeのJohn Collisonによれば、これにより、モバイルのWebサイトをあちこち言ったり来たりする面倒がなくなる。上のビデオでは、Relayの詳細とその技術について彼にインタビューしている。

Stripe Relayでは、商業者が製品を店に出したらそれをパートナーにプッシュできる。たとえば最初のパートナーの一つであるTwitterでは、商業者が自分のツイートにStripeのbuyボタンを置き、消費者はそのツイートから直接、買い物ができる。目標は、ネイティブアプリにいる状態のまま、確実に買い物ができることだ。

このプロダクトは、モバイルにおける買い物の面倒臭さをなくそう、という動機から生まれた。これまでは顧客が複数のWebサイトを訪れ、大量の情報を入力してから、やっと買い物ができた。クレジットカード情報を入力したり、サイトにサインアップしたり、あるいはパスワードをリセットするなど、たいへん面倒な買い物手順だった。もちろんそれは、リテイラーのビジネス機会も損なっていた。

 

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Apple WatchとiPhoneの双方を、同時に充電できるPod Pro

screen-shot-2015-09-14-at-11-45-22-am

身の回りにテック・ガジェットが増え続けていく中、すべてを充電しておくことが難しくなりつつある。Apple Watchの購入をためらっている人の中には、充電が面倒だからと考えている人も多そうだ。しかし、そうした問題を解決してくれるプロダクトも出てきつつある。

このたびNomadがアナウンスしたのがPod Proというバッテリーパックだ。Apple WatchとiPhoneの双方を、同時に充電することができる。「世界初」のものであるとのことで、デザインもなかなかおしゃれだ。どうやっても格好良くはならない充電ケーブルはポッドの中にしまう形になっている。そしてそのポッド自体はApple Watchを充電するパワーマットとなっているのだ。

Screen Shot 2015-09-14 at 11.45.40 AM

これがあれば旅行に行くのにApple Watchの充電器を別にもっていく必要もなくなる。充電が切れてApple Watchが単なる腕輪になってしまうこともなくなるというわけだ。スマートフォンとスマートウォッチの双方に使うものなので、持っていくのを忘れる可能性も低くなるだろう。

Pod Proの容量は6000mAhで、これでiPhoneおよびApple Watchを2回ずつ充電することができる。先日のAppleの発表を受けて、ストラップなどのサードパーティー製品がいろいろと登場してきているところだ。Apple Watchの人気はまだまだ衰えていないとのことで、またWatchOS 2にも期待が集まっている。

Pod-Pro-Top_2048x2048

Pod Proの価格は99ドル99セントとなっている。但し現在は79ドル99セントでのプレオーダーを受け付け中だ。出荷予定は10月30日となっている。またBest Buyの店舗でも取り扱うそうだ。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

フリマアプリ「メルカリ」で匿名配送が可能に——配送事故や模倣品の補償プログラムも発表

匿名配送機能のイメージ

匿名配送機能のイメージ

 

ヤマト運輸と連携し、4月から全国一律料金の配送サービス「らくらくメルカリ便」を開始したフリマアプリ「メルカリ」。サービスを提供するメルカリは9月10日、そのらくらくメルカリ便において、出品者、購入者が互いの住所や氏名を相手に伝えることなく商品を送付できる匿名配送機能を提供することをTechCrunchに明かした。9月中旬より、希望者を抽選して試験的にサービスを開始。ユーザーの反応などを見て数カ月以内にも正式にサービスを開始する。

らくらくメルカリ便は、出品者がヤマト運輸の直営店に配送する商品を持ち込み、直営店にある端末「ネコピット」にQRコード(メルカリで契約成立した際にアプリ上で生成される)をかざすことで送り状が印刷され、サイズ・重さにより全国一律で195円から商品を送付できるというサービス。利用数などは非公開だが、「想定より多い。料金が全国一律で分かりやすく、しかも安い。ヤマト運輸でも新商品を提供するのと同じタイミングでスタートしたこともあって、ヤマト側としても一緒にやりやすかった」(メルカリ取締役の小泉文明氏)のだそう。

今回の匿名配送機能を利用する際も出品者のとるフローは同じだが、ネコピットで印刷される送り状は宛先欄・送付欄が空白のままになる。もちろんただ空白のままではヤマト運輸のドライバーが配送できないのだが、バックグラウンドでメルカリのデータベースとヤマト運輸のデータベースが連携しており、商品にはそれぞれドライバーだけが閲覧できるデータが紙で添付されるが、ドライバー以外が送付先の住所などの個人情報を知ることはないという。

またメルカリでは、この匿名配送機能と合わせて、補償サービス「あんしんメルカリケア」の提供も開始する。

これはらくらくメルカリ便利用時に限り、配送事故により商品が破損・紛失した際の商品代金を全額補償するほか、らくらくメルカリ便の使用に限らず、届いた商品が模倣品だと判明した場合に取引について調査し、その上で商品代金を全額補償するというもの。

メルカリいわく、こういった補償自体はカスタマーセンター(現在仙台約80人、東京約30人が24時間365日稼働し、問い合わせおよび規約違反への対応を行っている)への問い合わせベースで個別対応していたのだそうだ。だが「実質やっているのであればよりサービスへの安心感を持ってもらおうとなった。 2年サービスをやってきた中で財務的なノウハウもたまってきた」(小泉氏)ということで今回正式に発表することになったのだという。

メルカリのアプリダウンロード数は国内外2200万件以上(米国だけで400万ダウンロード以上)。月間の流通総額は数十億円で1日の出品数は数十万件と大きく成長した。そうなるとウェブサービスに不慣れなユーザーの割合も増え、「サービスが難しそう」「何かトラブルがあるんじゃないか」という不安が生まれることになる。前者に対してはアプリ自体の改善を進めるが、後者に対しては今回発表したような安心・安全に向けた取り組みをアピールしていくことで、さらなるサービスの利用に繋げる考えだ。

 

後付け型スマートロック「Akerun」のフォトシンスが4.5億円を資金調達

昨年のTechCrunch Tokyoスタートアップバトルのファイナリストでスマートロック「Akerun」を開発・提供するフォトシンスが、ジャフコ、YJキャピタル、ガイアックス、ベータカタリストの4社からの第三者割当増資による合計4.5億円の資金調達を実施したとTechCrunch Japanに明かした。フォトシンスはTechCrunch Tokyo 2014のファイナリストとして昨年デビューして、今年4月に製品販売を開始。サムターンと呼ばれる指で回すマンションやオフィスなどのロックに対して後付けするIoTデバイスによりスマートロック化する仕組みを提供する。

akerun

フォトシンス共同創業者でCEOの河瀬航大氏によれば、すでにアーリーアダプター層など個人での導入も進んでいるが、「法人で予想以上に反響をいただいている」という。中でも第三者へのカギの受け渡しが多いコワーキングスペースやAirbnb、オフィスで売れているそうだ。

導入する側はITリテラシーが高いケースが多いが、逆に利用側はそうとは限らない。「肝心のスマホを使うゲスト側のリテラシーがまちまちである点が課題かと感じています。特に不動産内覧の実証実験では顕著でした。仲介会社さんは意外とガラケーだったり、スマホであってもアプリの操作が苦手だったりする」(河瀬CEO)こうしたことから、この7月にはガラケー対応もしていて、特に「多くの方が出入りするエリアではフィーチャーフォン対応が必須」と考えているそうだ。Akerunによる解錠が必要な利用者でも、1度きりの場合はアプリのインストールや初期登録をするのは手間だという課題もある。この辺りも7月に発表したAkerun RemoteでURLによるワンタイムの鍵の払い出しなどで対応していくことができそうだ。

国内スマートロック市場では、ソニーとWiLが共同出資する「Qrio Smart Lock」(キュリオ スマートロック)のほか、2014年末に創業して不動産に特化したシステム開発を行うライナフの「Ninja Lock」、海外プロダクトの輸入販売としてM2モビリティーが販売する「danalock」などがある。

「たまごっち」風味を利かしたフィットネスアプリケーションのTep

tep

たまごっちをご記憶だろうか。イグノーベル賞さえ受賞した大人気キャラクター製品だ。このたまごっち風のテイストをつかって、ワークアウトのモチベーションを高めようとするアプリケーションが登場した。その名をTepという。キャラクターはキリンを模したもので、運動することでこのキリンに餌を与えたりすることができるようになる。

モチベーションの維持にキャラクターを使っているという点を除けば、RunKeeperRuntasticなどと同様の機能を持つプロダクトだといって良い。どういった運動を行うかを設定して、スタートボタンを押す。すると移動距離や継続時間、あるいはペースなどを記録してくれるというものだ。リアルタイムでの音声フィードバックを得ることもできる。対応しているのはiOS、Android、およびWindows Phoneだ。

ワークアウトを完了するとコインがもらえるようになっている。このコインを使ってバーチャルペットの面倒をみることができる。たとえば餌を買って与えたり、あるいは飼育環境のアップグレードを行うことができるのだ。ややわざとらしい感じがするものの、キリンキャラクターがかわいいので細かいことは気にならなくなる。

ちなみにTepはFitbitやJawboneと連携させることもできる。そうすることで、スマートフォン側のGPSを使わずともフィットネストラッキングが行えるようになっているわけだ。

たまごっちといえば、今でいう「free-to-play」ゲームの嚆矢ということもできよう。たまごっちにさほどの機能はないものの、しかし面倒をみるうちにどうしても手放せないものとなっていった。5日も一緒にすごせば、もうたまごっちなしではいられないという状況になるのだ。せっかく育ててきたものを、絶対にダメにしたくないという気分になる人が多かったのだろう。

それも含めて、たまごっちは「ゲーミフィケーション」のお手本でもあるだろう。Tepはこのお手本に従ったというわけだ。もちろん「たまごっち風」がもたらすノスタルジーも狙っているのだろう。フィットネスアプリケーションを使う年代には、リアルタイムでたまごっちに親しんだ人も多いだろうという狙いだ。

Apple Watchを身に着けてフィットネスを行えばバッジをゲットすることができる。しかしこれでは、フィットネスを行うモチベーションを高める効果は限定的なものとなるだろう。フィットネスをしてよく頑張りましたというバーチャルメダルをもらっても別に嬉しくもないという人も多いはずだ。ただ、かわいらしいキリンの成長がかかっているとなれば話は別だ。RunKeeperを使えば、もしかすると速く走れるようになり、自分の運動能力をあげるのに役立つかもしれない。しかし運動の継続という面では、Tepの方がより高い効果を示すこともあるのではなかろうか。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

3500万曲聴き放題の定額制音楽配信サービス「Google Play Music」が日本でもスタート

国産サービスの「AWA」や「LINE MUSIC」に続き、Appleが「Apple Music」を日本で開始するなど、サブスクリプション(定額)型音楽配信サービスのローンチが相次いでいるが、グーグルもここにきてその流れに乗ったようだ。同社は9月3日、音楽サービス「Google Play Music」を日本で提供開始した。Android端末のほか、iPhoneやiPadといったiOS端末(いずれもアプリで提供)、PC(ブラウザで提供)でサービスを利用できる。

Google Play Musicのトップ画面。おすすめのプレイリストや最近聴いた楽曲が並ぶ

Google Play Musicのトップ画面。おすすめのプレイリストや最近聴いた楽曲が並ぶ

Google Play Musicは、月額980円、3500万曲以上をラインアップするサブスクリプションサービスに加えて、1曲単位・アルバム単位で購入可能なストア、ユーザーが所有したり、購入したりしたデジタル音源5万曲を無料でクラウド上に保存できる無料のクラウドロッカーで構成する。

楽曲はソニー・ミュージックエンタテインメントやエイベックス・ミュージック・クリエイティブ、ユニバーサルミュージックをはじめとして国内外200レーベル以上が参加。なおサービス開始から1カ月間無料となるほか、10月18日までに契約したユーザーに対しては月額780円でサービスを提供する。

サブスクリプションサービスでは、ユーザーの好みに合わせて自動的に楽曲リストを作成する「ラジオ」や、サービスを担当するコンシェルジュが特定のシチュエーションに合わせて作成した「プレイリスト」などの機能を提供。アルゴリズム、そして人力を組み合わせてユーザーに最適な楽曲を提案していくという。また、各種のプレイリストや購入楽曲、ロッカーにアップロードした楽曲は「マイライブラリ」と呼ぶ機能で一括管理できる。

もちろんGoogleらしく検索機能も充実。例えば「ジュディマリ」の愛称で知られるアーティスト「JUDY AND MARY」であれば、「じゅでぃまり」とひらがなで検索できるし。「げすきわ」で「ゲスの極み乙女。」も検索できる。Googleらしく「I’m feeling lucky」の機能も用意。今まさにオススメという楽曲を表示してくれる。

レコメンドや検索はパーソナライズされているとのことで、ユーザーが使えば使うほどにユーザーの好みに合ったサービスになるのだそう。また、オフラインでの再生機能も用意。プレイリストから楽曲をダウンロードしておけば、オフラインでも楽曲を再生できる。

グーグルではこれまで世界59カ国でGoogle Play Musicのサービスを展開しており、日本が60カ国目となる。

Google Play Musicのパートナー

Google Play Musicのパートナー

PayPalがユーザー間決済のできるアプリPayPal.Meをローンチ

paypal-me-profile

PayPalは本日、新たなユーザー間決済のサービスをローンチした。デビューしたプラットフォームの名前はPayPal.Meだ。PayPalのカスタマーは個別のURL(例えば、paypa.me/username)が付いた自身のユーザープロフィールを設定することができるようになった。URLをテキスト、Eメール、インスタントメッセージ、ソーシャルメディアなどで共有するだけで、送金を受け取れるようになる。

PayPalのユーザー間決済の分野における取り組みはもちろんこれだけではない。ウェブサイトの「請求する」機能の他に、同社はVenmoを運営している。このソーシャルアプリは、特にモバイルが浸透している若い世代の人気が高く、お金を借りている友人にお金を返したり、レストランでの食事代を折半したりするのに利用されている。

PayPalがVenmoと競合するようなアプリをローンチしたことは奇妙に思える。PayPalはこれについて、Venmoはアメリカの銀行、クレジットカード、デビットカード会社としか連携していないが、PayPal.Meはより広範なグローバルなユーザーに向けたものだと説明する。

PayPalは世界規模で1億7000万のアクティブユーザーを抱え、彼らは既にPayPalを用いて送金や請求を行っている。PayPal.Meは、これまでのPayPalのツールとは違った、モバイル主導のより簡単で速いユーザー体験を提供することを念頭に置いて設計しているという。

PP.Me_2 plus note

PayPalによると、ユーザー間の小さな貸し借り、例えば友人間や家族間での金銭の貸し借りは、合計すると規模が大きいという。グローバル規模で、成人は累計510億ドルを互いに貸し借りているが、多くの人は貸した相手にお金を返してほしいと言うのに抵抗がある。

もちろん、PayPal.Meでお金返してほしいと要望することまで無くせるわけではないが、お金を借りている人が返すための簡単な方法を提供している。

「会話がデジタルになりつつある中、ユーザー間決済をより会話の流れに沿ったものにする方法を見つける必要がありました。どのチャネル、どのデバイス、どのコミュニケーション方法、例えそれがメール、テキストメッセージ、インスタントメッセージであろうと、簡単に利用できる方法を検討しました」とPayPalのGlobal Consumer Productsのシニアディレクターを務めるMeron Colbeciは、同社がこの方向に進んだ理由を説明する。

Colbeciによると、PayPal.MeはウェブでPayPalが提供している体験を代替するものではなく、ユーザーにとって別の選択肢を与えるものであるとした。

これまでのオンラインの体験とは違い、PayPal.Meを使用することで決済の手順を減らすことができる。これまでユーザーはPayPalのウェブサイトにログインし、「請求する」機能にアクセスして、請求依頼を製作するために相手のメールアドレスを入力しなければならなかった。一方、PayPal.Meではリンクを共有するだけで済む。

  1. pp-me_see-link-with-description.png

  2. pp-me_brianna-pp-page.png

  3. pp-me_all-set.png

  4. pp-me_1-you-sent-money-to-david.png

  5. pp-me_send_success_plus_create.png

  6. pp-me_2-plus-note.png

  7. pp-me_send_success_plus_manage.png

リンク自体は覚えやすいもので、ユーザーが選んだユーザー名がURLとなる。(例えば、私はpaypal.me/sarahperezに設定する)ユーザー名の設定ができたら、プロフィールのテーマを変えることができる。リンクを共有する際、友人間や家族間での支払いのために利用するか、あるいは仕事上の商品やサービスの料金を受取るのに使用するかを選ぶ。その後の手順は、友人にリンクを送るだけだ。友人は自身のPayPal口座にログインし、情報の確認から支払いまで一つの画面上で行うことができる。メモを残したい場合は、そうすることもできる。

支払いを楽にするため、請求する側は正しい金額を予め個別URLの最後に入力することができる。つまり、「paypal.me/username/50」で50ドルを請求することができる。

サイトはモバイルに最適化されているが、ネイティブのモバイルアプリでなくても、ウェブからアクセスすることもできる。PayPalアプリをインストールしていれば、支払い情報はメールとプッシュ通知で届く。PayPalアカウントから別のPayPalアカウントへの支払いは瞬時に行われるが、資金を銀行口座に送金する場合はもう少し時間がかかる。どの地域のどの銀行かによってかかる時間は異なる。

PP.Me_1 you sent money to david

将来的にPayPal.MeはPayPalのインスタント決済サービスのOneTeouchと統合し、ユーザー名とパスワードでログインする手間を省くことを考えている。ユーザーが既に別のブラウザやモバイルからPayPalにログインしていることを考慮に入れている。(OneTouchでは、PayPalユーザーが別のサイトからアクセスしても、それを認識してログイン状態を保持する。)これで、決済までのプロセスが一層速くなるだろう。

PayPalはPayPal.Meのサービスは18の市場で展開する予定だという。アメリカ、ドイツ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ロシア、トルコ、フランス、イタリア、スペイン、ポーランド、スウェーデン、ベルギー、ノルウェー、デンマーク、オランダ、スイスとオーストリアだ。

PayPalはこのプロダクトはまだ「1.0」版だという。

「ユーザーがどのようにこのサービスを利用するか理解したいと考えています。フィードバックを集め、それを元にプロダクトと機能の改善を行っていきます」とCobeciは話す。

その機能として、サービスによりソーシャルな要素を加えることが考えられるだろう。例えば、友人リストに簡単にアクセスできるような機能だ。あるいは、ビジネス向けのユーザーエクスペリエンスを向上させることかもしれない。ただ、これらは予想であり、開発には至っていないことを明記しておく。

PayPal.Meは数社あるユーザー間決済アプリと競合する。 Square Cash、Facebook(Messenger内)の決済機能、Google(Gmail内とGoogle Wallet)、Snapchat(アプリ内、Square Cashの協力による)の決済機能などがその内の一部だ。

該当の市場で、PayPal.Meのユーザー名にサインアップするにはPayPal.Meからできる。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

クラウド時代のスマートフォンを再発明するNextbit、Kickstarterで初の端末「Robin」を販売開始

Nextbitの「Robin」
Nextbitの「Robin」

Nextbitの「Robin」

iPhoneが世に出たのは2007年。Android端末の登場は2008年。そこから7〜8年が過ぎたが、その間に僕たちを取り巻くインフラ環境は大きく変化したのではないだろうか。

僕がその代表と思うのが「クラウド」だ。Googleのエリック・シュミットが「Cloud Computing」という表現をしたのは2006年で(AWSが正式にリリースされたのもこのタイミングだ)、Androidが登場した2008年時点でもクラウドの利用は今と比べるとまだまだという状態。個人向けのサービスになるとなおさらの話で、DorpboxやEvernoteが登場したのだって2008年になってから。無線LANの環境だって変化した。オフィスや自宅内などは別として、商業施設や店舗の公衆無線LANも増えたし、2009年からは新幹線の中でだって利用できるようになった。

つまり何が言いたいかというと、今のスマートフォンはクラウドとともに成長してきたのであって、“クラウドありき”で設計されたモノではないということだ。

今回紹介する米国のスタートアップ・Nextbitは、クラウドありきの今、スマートフォンを再発明するという。同社はクラウドファンディングサイトKickstarterにてAndroidベースのSIMフリー端末「Robin」を販売するプロジェクトを開始した。早期購入者は299ドル(すでに完売)からとなっており、2016年1月にもユーザーの手元に届く予定だ。

RobinはプロセッサにSnapdragon 808を搭載。メモリは内蔵32Gバイト(オンラインは100Gバイト)、ディスプレイは5.2インチのフルHD、リア13メガピクセル、フロント5メガピクセルのカメラを搭載。指紋認証も備える。製造はfoxconnが担当する。ちなみにこのRobinという名称はコミックや映画でおなじみの「バットマン」に登場するバットマンの相棒の「ロビン」から取ったのだそう。

RobinはAndroidベースのスマートフォンだが、その最大の特徴は「クラウドを使って内部メモリだけでなく、無限のストレージを提供する」というものだ。どういうことかというと、インストールしても使わないアプリなどを設定ごと自動的にクラウドにバックアップしていくのだ。

アプリをバックアップした場合、そのアプリのアイコンはグレーで表示される(僕が見たのはデモ版なのでその表現については変更があるかも知れない)。再びそのアプリを利用したければ、そのアイコンをタップすればいい。瞬時に再ダウンロードが行われ、ユーザーは最後に使用したのと同じ状態で利用を再開できるのだという。写真も同様に自動バックアップされ、普段は端末で見るのには問題ないサイズに圧縮されたものだけがローカルに残るといった具合だ。もちろん使用していなくても必ずローカルに残しておきたいアプリなどは、設定で任意に残すこともできる。

前述のDropboxやEvernote、最近ではGoogle フォトのようなプロダクトはあるが、Nextbitがすごいと思うところは、アプリのレイヤーでクラウドを扱うのではなく、OSのレイヤーで扱っていることだ。アプリのようにいちいち立ち上げなくても、ネットワーク環境にさえ繋がっていれば、クラウドを使ったほぼ無限のストレージに最適化してくれるのだ。バックアップ機能も備えており、端末を変更しても、Bluetoothのペアリングのような細かな設定までクラウド上からダウンロードしてすぐに利用できるのだという。

Nextbit CEOのTom Moss氏

Nextbit CEOのTom Moss氏

NextbitのCEOであるTom Moss氏は2007年にGoogleに入社。同年からAndroidのプロジェクトに参画。2008年にはアジアにおけるAndroidのおもにマーケティング領域を担当。日本に常駐し、キャリアやメーカーとの交渉を担当したとのことで、日本市場におけるAndroidの「育ての親」とも言うべき人物。

Moss氏は2010年夏には同社を退社。3LMなるスタートアップを立ち上げたが同社をMotorola Mobilityに売却。モトローラがGoogle傘下となったことから、Googleに出戻りするかたちとなった。その後Google、3LM両社でMoss氏を支えたエンジニアのMike Chang氏とともにNextbitを創業。さらにHTCでNexus Oneをはじめとした端末のデザインを担当したデザイナーのScott Croyle氏も同社に参画。Robinのデザインは同氏が担当している。

「クラウドは基本的に追加するもので、OSレベルで使われていなかった。そのためユーザーのストレージは尽きてしまう。NextbitのプロダクトはまさにクラウドOS。もちろんネットワークがなくても使えるものだ。これを完全に実現するには、(ソフトだけでなく)ハードウェアから作らなければならなかった」——Moss氏は自社のプロダクトについてこのように語る。

まずはKickstarter限定での販売となるし、その反応次第で戦略は変えていくということだが、今後は北米、イギリス、フランス、ドイツ、日本などの市場をターゲットにしたいという。「かつて日本にAndroidを紹介したからには日本でも成功したい。Robinのデザイン面でも日本のユーザーは意識している。魂のあるプロダクトを作りたかった」(Moss氏)

Moss氏は今後1年に1台ペースで端末をリリースしたいと語る。端末の価格にもこだわるという。「世界では、端末に700ドル以上払うならiPhoneを買うという人がほとんど。中にはSamsungを選ぶ人もいるが、iPhoneはブランドがあってAndroidにはまだそれがないという状況。だがハイスペックなAndroid端末を欲しがるユーザーはいるし、これからはそれを300〜400ドル程度で売る必要があると思う」(Moss氏)。しかしこの価格設定では、人も多ければ制作のプロセスも多い大手メーカーでは利益を出しにくいため販売できないはずだ。かといって中国のブランドが日本や欧米で認められるのは難しい。「だからこそ(Nextbitのような)新しいメーカーにはチャンスがある」という。

「『ちょっと違うね』じゃ面白くない。小さいことをやるんじゃなくて、新しいことをしたい。我々はハードもソフトも今までと全く違うものを作っていく」(Moss氏)

わずか1万DLのアプリが月商1000万円を達成する事例も——アプリ制作ツール「Yappli」運営元が3.3億円を調達

11990297_10156017543510343_1940117219_o

「1年目は本当に大苦戦、月の売上は数十万円で毎月微増を繰り返すだけ。『いいプロダクトを作ったから来て使ってよ』というのでは全然ダメだった」——ノンプログラミングでアプリを制作できるツール「Yappli」を手がけるファストメディアの取材は、代表取締役の庵原保文氏のこんな重たい言葉から始まった。

同社は9月1日付けでグロービス・キャピタル・パートナーズ、Salesforce Ventures(米Salesforce.comグループのコーポレートベンチャー事業部)、YJキャピタル(既存株主でもある)、個人投資家の川田尚吾氏を引受先とした総額約3億3000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにしている。出資比率やバリュエーションは非公開。

ファストメディアは、ヤフーで同僚として働いていた庵原氏と共同創業者で取締役の佐野将史氏、取締役の黒田真澄氏の3人が2011年に立ち上げた個人プロジェクトからスタート。2013年にYappliを正式公開した。

Yappliはブラウザ上で機能をドラッグアンドドロップで配置し、クリエイティブをアップロードしていくことで、ノンプログラミングでスマートフォンアプリ(iOS/Android)を作成できるサービスだ。詳細は以下の動画を見てもらえばと思う。

ジオプッシュ(スマートフォンが特定のエリアにある際にプッシュ通知を送る機能)を含むプッシュ通知にも対応し、広告配信も可能、アプリの申請も代行する。冒頭で庵原氏が語るように、プロダクト自体は——初めてデモを見たリリース時から——イケていると思った。価格も月額9800円からと比較的安価で中小規模の会社でも使いやすい。だが、クラウドサービスとしてサイト上で販売していたところで有料ユーザーはほとんど増えなかったという。

同社はYJキャピタルからシードマネーを調達していたが、サービスインから1年経たずで売上は数十万円。さすがに「これでは危ない」となって方針を転換。大手企業をターゲットに営業を始めたところ、今度は驚くように案件が取れ始めた。新生銀行や日本ロレアル、女性アパレルのアダストリアホールディングスなどが次々と自社アプリの制作にYappliを導入。3人というスモールチームだったこともあって、サービスインから1年半経たずして単月黒字を達成した。

「革新的なサービスを作って数万円で手軽にスモールビジネスに提供しようとしたが、結局市場のニーズを見ていなかった。自社アプリを求めていたのはすでに顧客を抱えている大手企業。だがいざ制作会社に相談すると1000万円単位の見積もりが来るので、容易にアプリを制作できないという課題があった」(庵原氏)。そんな大手企業にこそプロダクトが刺さったのだという。「制作会社と比べれば10分の1程度で導入が可能。またノンプログラミングでアプリを作れるというのは、ITリテラシーの低いEC担当者であっても運用できるということ。そこも評価されている」(庵原氏)

サービスに登録する法人は、無料も含めて5000社。有料ユーザー(社数非公開)の7割はアパレル関連の自社アプリやブランドアプリだという。アプリはそのブランドのファンがダウンロードすることもあって、アクティブ率が高く、売上への貢献度も大きいケースが多いという。

「ブランドアプリであれば、アプリのプッシュ通知はメールマガジンよりも効果がある。ECサイトの売上全体のうち10%程度がアプリ経由というブランドも複数ある。1社だけだが、1万ダウンロードのアプリだけで月商1000万円を達成するという事例もある」(庵原氏)。プッシュ通知の開封率(通知が来て、そのアプリを起動すること)は約30%、通知から5分以内での開封率が5〜10%あるため、タイムセールなどを積極的に行うブランドも多いという。

同社では今回の調達を契機にサイト上で提供していた低価格帯のサービスの新規募集をいったん終了する。今後は人員を拡大し、サービス開発および法人営業に注力するとしている。

スマホの画面をそのままリアルタイムに配信、DeNAの新アプリ「Mirrativ」

listings_01

国産サービスのツイキャスやTwitterが買収したPeriscopeをはじめ、スマートフォン1つで動画のリアルタイム配信を実現するサービスに注目が集まっているが、本日ディー・エヌ・エー(DeNA)がリリースした「Mirrativ(ミラティブ)」が面白い。このサービスは、スマートフォンの画面をそのまま配信できるのだ。

Mirrativの配信用アプリはAndroidでのみ提供しており、利用は無料。iOSアプリも「Coming Soon」となっているが、アップルの開発者向け規約の関係からAndroidとまったく同じ機能を提供するというのは難しいかもしれない。ただし閲覧についてはウェブブラウザでも可能なため、AndroidだけでなくiOS端末でも閲覧可能だ。ただしPCからの閲覧は現時点では許可していない。またサービス開始当初は、配信時間を20時〜24時に限定するという。

キャプチャ02

動画の配信者は、アプリを立ち上げて3タップで画面の配信が可能。音声のオン・オフ設定のほか、インカメラの映像も同時に配信可能(テレビの中継などにある「ワイプ」を思い浮かべて欲しい)。また一時的に動画を表示せずに音声だけで配信するといった機能も備える。

閲覧者は配信を見ながらコメントを投稿できるほか、画面をタップして、星のようなキラキラとしたエフェクトのついた「スタンプ」を飛ばすこともできる。画面は配信する内容に合わせて縦横どちらでも閲覧可能。リアルタイム配信の内容は、Mobageでのサービス監視を行ってきた新潟のカスタマーサポートセンターが担当するという。

サービスのデモを見せてもらった際はゲームのプレイ実況を配信をしていたのだけれども、それ以外にも用途はいろいろありそうだ。

DeNAでもプレスリリースで「ゲームアプリで遊びながらの実況やEコマースのサイトで視聴者のアドバイスをもらいながらの買い物、さらには新しいアプリの使い方解説など」と提案している。事業を手がけるDeNAの赤川隼一氏も「ニコ生やUstreamとは少し使い方が違って、よりパーソナルなところを見せられるのではないか。ただ最終的にはユーザーに使い方を提案してもらえばいい」と語っていた。