Elon Musk: 金曜夜の土壇場でTeslaの非上場化を断念、株主は神様です

金曜日(米国時間7/24)の夜、CEOのElon Muskが、Teslaは上場企業であり続ける、と言った。彼がTwitterで、その電気自動車メーカーを一株420ドルで非上場にする、と発表してからまだ3週間も経っていない。

Muskの今度の発表は、Teslaのブログで行われた。それによると、株主たちと話し合い、会社を非上場にするための手順を調べた結果彼は、Teslaが上場企業であり続ける方が良い、と思うようになった。Muskは木曜日にTeslaの取締役会に彼の決定を伝え、了解を得た、という。

以下は、そのブログ記事の抜粋だ:

私がもらったフィードバックによると明らかに、Teslaの既存の株主たちの多くが、上場企業であり続ける方が良いと信じている。さらに、多くの機関株主たちの説明では、その内部的コンプライアンスの問題として、非上場企業への投資額には制限があるという。また、多くの一般投資家にとっては、非上場になった株を保有し続けるにあたっての、正しいやり方が分からない。私が話をした株主たちの過半数が、非上場になってもTeslaの株主として残る、と言ったが、要するにその本意は、“どうかそれをしないでくれ”だった。

非上場にする過程が困難であることは知っていたが、しかし明らかにそれは、最初に想定したよりも時間がかかり、本業への専念を困難にするだろう。今はModel 3に集中して利益を上げうる製品に育てなければならない時期だけに、それは問題である。そしてそのための持続可能な資金が得られなければ、持続可能なエネルギー〔ソーラー事業〕を前進させるミッションを達成できないだろう。

とは言うものの、Teslaには非上場にしてもよいほどの、あまりあるほどの資金がある、という私の信念は、今回の経緯でより強化された。

金曜日の夜のこの発表は、Muskのツイートに始まった17日間の騒動に終止符を打った。彼はそのツイートで、Teslaは資金が十分にあるので非上場化を検討している、と言った。そのツイートは、Teslaの取締役会や多くの株主に歓迎されなかったばかりでなく、アメリカの証券取引委員会の調査を誘発した

〔金曜日(アメリカ)深夜Muskの最新ツイート:
“In talking to our public investors, most were supportive of optimizing for long-term value creation over quarterly earnings. This was also a factor in remaining public.”…投資家たちが四半期の業績よりも長期的な実績を重視すると言ったので上場を継続することにした。〕

この17日間の経過は終わっても、Muskの行動(たとえばドラッグ問題)と同社の将来に関する疑問は依然として残っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

イーロン・マスク、Teslaにとって株式非公開化が最良の戦略と説明

今朝(米国時間8/7)、TeslaのCEO、イーロン・マスクは、 同社の非公開化を検討しているとツイートした。これを受けて、Teslaはマスクが全社員にこの点を説明するために送ったメールを公開した。ただしマスクはメール中で「まだ何も正式に決定されていない」ことを強調している。

マスクは株式非公開化がTeslaにとって「前進するための最良の道」だと述べている。プライベート化することで株価の乱高下によって受ける悪影響を最小限にできるからだという。またこれにより短期的でなく、長期的視野に立った経営が可能になると述べている。

マスクは「Teslaは株式市場の歴史上最大の空売りを浴びている。公開企業である限り、大勢の人々がTeslaを攻撃して〔株価を下落させる〕インセンティブを持つことを意味する」と書いている。

マスクはメールの最後に「非公開化の提案は株主の投票に基づいて最終的に決定される。私が期待するような方向で決定が行われるなら、非公開企業のTeslaが誕生し、その結果関係者すべてに莫大な利益をもたらすことになるだろう」と付け加えた。

マスクが株式非公開化を検討しているとツイートした後Tesla株は急騰し、NASDAQは売買を一時停止した。その後再開されている。

〔日本版〕原文にはメールの全文がエンベッドされている。またマスクが時価総額820億ドルでTeslaを非公開化したいとツイートする直前にサウジアラビアの国営ファンドがTesla株20億ドルを購入したというニュースが流れている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Netflixは時価総額でComcastを超えた――絶好調という噂一覧

Netflixの時価総額は今やケーブルTVの最大手、Comcastを超えた。企業を評価する尺度は時価総額以外にも多数あるが、象徴的な意味としてはAppleの時価総額がExxonを追い越したときと比較できる。テクノロジーの発達におけるある種の分水嶺となるかもしれない。

Netflixについて、実際の意味はともかく、象徴的に目立つ話題をいくつか拾ってみよう。

  • Netflixのユーザー数は依然上昇中:ユーザー数は市場が最初に注目する数字であり、Netflixの株価(つまりは時価総額)が上昇しているのもこれによる。
  • ケーブルTVの解約が続く:. Netflixはコンテンツの配信をビジネスとしており、ケーブルTVを提供しているわけではない。しかしNetflixから配信を受けるためにはインターネット接続が要るので現状では家庭になんらかのケーブルを引き込む必要がある。もちろん将来すべてが無線接続になれば話は別だ。
  • Netflixはコンテンツ製作に大金を投じている:人々が望む(消費する)のはコンテンツだ。ケーブルTVも結局はそのコンテンツを売っているわけだが料金が高い。Comcastはこれに対抗してNetflixをバンドルし始めた
  • NetflixとComcastは株価の基準が大きく異なる:Comcastの株価はその現実の収益性に基づいている。Netflixは…なんというか、成長中の会社として、将来はComcastより大きなビジネスになるだろうという期待に基づいて評価されている。そうなるかもしれないし、ならないかもしれない。
  • Comcastの売上はNetflixよりはるかに大きい:今年第1四半期の売上はNetflixが37億ドル、 Comcastが228億ドル、フリーキャッシュフローが31億ドルだった。一方、Netflixは2018年のフリーキャッシュフローについて30億ドルから40億ドルの赤字を予想している。

ともあれNetflixは2ヶ月くらいのうちに次の四半期決算を発表するはずだ。上に挙げたような指標にも変化が生じるだろう。Netflixの株価は市場の期待に基づいているため、簡単に動く。もちろん株価の変動はBitcoinほど大きいわけではないが、ランダム性も高く予測は難しい。

おっと、これからNetflixでリバーデイルのシーズン2を見なければならない。やっぱりこういう独占コンテンツがあるからComcast より強いのだろう。あと数時間は忙しいので悪しからず。

画像:Ethan Miller

〔日本版〕現在のNetflixの時価総額は1518億ドル、Comcastは1455億ドルとなっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Amazonが市場価値でAlphabetを抜く、Appleのダントツは揺るがず

Amazonは現在、マーケットの現在価値ではAppleにつぎ世界で二番目に大きい企業である。同社の時価総額は7632.7億ドル(NASDAQ:AMZN)、対してAlphabet(NASDAQ:GOOG)は7629.8億ドル“しか”ない。

Amazonは、前四半期(1710-12)がすごかった。株価は1月の初め以降29%も上がった。対してAlphabetの株価は高下した。

今日(米国時間3/20)だけを見ると、Amazonは2%上がり、Alphabetはフラットだ。今日の最終結果はまだ分からないが、たぶん逆転はないだろう。

現在、Amazonよりも時価総額が大きい唯一の企業はAppleだ。Appleの市場現在価値は8920億ドルだから、差は相当大きい。

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Twitter、時価総額でSnapを一時追い越す――決算の結果はどちらも好調

すでにいろいろと意外なことが起きている2018年だが、今やTwitterが時価総額でSnapchatを運営するSnapを追い越した。 発表された決算は両社とも好調だったが、Twitterがついに利益を出し始めたことが株価に反映された。

Twitterは四半期決算を発表し、とうとうGAAPベースで利益を出した。これを受けて今朝(米国時間2/8)の株価はロケットのように25%も急上昇した。どちらも苦闘しているソーシャルメディア企業であるもの、 2017年にはSnapの方が時価総額で高く評価されていた。しかしTwitterの時価総額は250億ドル台となり、Snapは240億ドル台にとどまった。僅差には違いないが、それでもTwitterが上回ったのは大きい。

そこでグラフを見てみよう。この1年ほどのTwitterの値動きだ。

こちらはSnap。

Snapも今週、第4四半期の決算を発表したが、十分に好成績だった。これによりSnapの株価も上昇した。そこで最初の疑問に戻る。四半期決算で示された好調な広告売上は今後もFacebookやGoogleと対抗していける内実を備えているのだろうか? これはまだ試されていない。しかしFacebookやGoogleとは異なる独自の特長を備えた広告プロダクトを開発することができるというストーリーが実現することを期待したい。

TwitterとSnapの2社は2017年の暮にはほぼ同サイズだった。Snapは2017年にいささか花々しさに欠けるもののそこそこ成功した新規上場を行い、これを追い風として多数の会社が上場するきっかけを作った。ところが今回の決算発表後、市場が開くとSnapの株価は7%以上ダウンし、Twitterに追い越されてしまった。Twitterの株価は20%(ある時点では25%以上)上昇した。

今日の両社は時価総額で抜きつ抜かれつの競争を続けている。現在のところTwitterが優位だが、明日は(あるいは夕方にも)逆転しているかもしれない。その先となればまったく分からない。ただしこうした日々の値動きは別として、ソーシャルメディア企業のパフォーマンスを長期的に測るものは規模の拡大と広告ビジネスの成長の可能性だというのは間違いない。

〔日本版〕記事にもあるとおり、営業終了時点での時価総額はSnapがわずかに逆転し、Twitterが224.18億ドル、Snapが233.51億ドルとなっている(Google検索とYahoo! Financeでは数字に若干違いがあるがいずれもSnapが上回った)。

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Samsungが世界最大のチップメーカーの座をIntelから奪取、モバイルが明暗を分ける

Samsungが今日(米国時間1/30)発表した2017年第四四半期の決算報告に伴う2017会計年度の財務報告により、同社はIntelの、これまでの25年間にわたる、世界最大のチップセットの売り手の地位を終わらせた。

この韓国のテクノロジー巨人のチップセット部門は、長年同社の稼ぎ頭だが、2017年の総売上が690億ドルとなり、Intelが昨年に関して報告した628億ドルを上回った。それはIntelにとっても記録的な年で、前年同期比で6%の成長を記録したが、Samsungにトップの座を奪われることを防ぐことはできなかった。BloombergによるとIntelは1992年以降一貫して、その地位にあった。

昨年、四半期の売上でSamsungがIntelを上回ったことを予兆とすれば、今回は押しも押されぬ年商の勝利だ。

この地位交替は、Samsungのモバイルへの注力の結果だ。とくにスマートフォンが、メモリチップの需要を押し上げた。Intelのチップが世界のコンピューターの90%に載っていても、同社はモバイルのブームを逃(のが)し、その後追いつくこともできなかった。

Samsung全体としては、年商がKRW 239.58兆(2250億ドル)、利益はKRW 53.65兆(507億ドル)である。2017年最終四半期では、売上がKRW 65.98(620億ドル)、営業利益はKRW 15.15兆(140億ドル)となった。

四半期としては前四半期に比べて利益がやや増、売上がやや減となった。モバイル事業の前年同期比は、3.2%の落ち込みとなった。

2018年の展望としてSamsungは、クラウドサービスとAIと自動車関連のチップセットの増産を挙げた。スマートフォンに関しては、消費者の知名度は高いが、同社は折りたたみ式ディスプレイなど“最先端技術”の採用を挙げている。またBixbyアシスタントや今後の5G技術へのフォーカスによる、スマートサービスの開発の継続にも言及している。

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Dellに関する噂に真実味――再上場ないしM&Aで巨額負債解消に動く可能性あり

Dellが抜本的な組織再編を検討しているという情報はすでに耳にしているかと思う。Dellは巨額の負債を解消するために思い切った手段を採る必要に迫られている。 赤字の大きな部分は2015年にDellが670億ドルでEMCを買収したことに起因している。

Dellに関する噂は先週金曜から流れ始めた。これにはいくつかのシナリオがあり、ひとつはDellが再上場するというもの、もうひとつは VMware株式の残りの部分も買い取るというものだ。しかしVMwareの完全買収が負債の解消にどのように役立つかは不明だ。そして今日(米国時間1/29)、CNBCは3つ目のシナリオを示した。それによるとVMwareが逆にDellを買収するという。

VMwareの株価はDellが買収するという情報で小幅ながらアップした

ともあれ私は金曜にDellに連絡してみた。予想通り、Dellの回答は「われわれは噂や憶測にはコメントしない」というものだった。しかし事情に通じた知人の話によれば、実際Dellは上記のシナリオ3つのをすべて検討しているが、まだ結論は出ていないという。

報道によれば、DellはEMCとの合併で生じた赤字を現在も460億ドル抱えているという。 BloombergのKiel Porterが指摘しているとおり、この額は利子の支払だけで20億ドルの負担だ。しかし新しい税制では利子支払の減価償却への参入が一部認められなくなるため、Dellの負担額の増大は実質では20億ドルよりかなり多くなるはずだ。利子支払はDellにとって前途に立ち塞がる暗雲であり、取締役会が抜本的対策を検討し始めたというのもおそらくこのあたりに原因があるだろう。

こう聞けば問題は赤字をあちこちに移すなにやら巧みな会計上の操作が検討されていると思うが、Gold and Associatesのプリンシパル、Jack Gold, のツイートによれば、トランプ政権による新税制と過熱気味の株式市場を組み合わせた有利な解決策を探っているのだという。

「株価は記録的水準に達しているが、これが将来も続くという保証はない。上がった株価はいつか最後に下がる。Dellはこのチャンスを利用して再上場し、キャッシュをかき集めようとしているのだろう。税制改革もこれを助けそうだ」とGoldはTwitterに投稿している。

2016年にDellがEMCを買収したとき、Dellがどうやってこのとき生じた負債を返済していけるかという疑問が生じた。そこでDellはEMCの事業の一部を売却するだろうと観測された。事実、2016年にDellはソフトウェア事業を20億ドルで売却した。また傘下のコンテンツマネジメント会社、Documentumも手放した。EMCは2003年にDocumentumを17億ドルで買収していたが、Dellは2017年1月に同社をOpenTextに売却した(額は不明)。驚いたことに、DocumentumはEMCとの提携関係を大部分維持した。

当時の観測は、DellはVMwareの8割を所有しているのだから、過半数の株式を所有し続けるものの、一部を売りに出すだろうというものだった。実際VMwareは株式市場では独自の企業として上場されていたのでこれは可能だった。 しかしDellはVMware株式を売却せず、噂によれば、残りの2割の株式も買収することを検討しているという。あるいは逆に小さいVMwareが巨大なDellを飲み込むことになるかもしれない。

つまりところ、問題はなぜDellはEMCを買収する必要を認めたのかという点に戻ってくる。一部ではこの大型買収が賢明だったか疑う声が出ていたものの、Oracleの会長、ラリー・エリソンは素晴らしい決断だと賞賛した。Oracleはクラウド化の過程にあり、巨額の資金を必要としたためEMCの買収には手がでなかったのが残念だったようだ。たしかにクラウド化には非常に巨大なデータセンターが必要なる。

もちろんここで述べたシナリオは現在のところ噂に過ぎない。Dellはまったく動かない可能性もある。しかしマイケル・デルと資金係のSilver Lake Partnersは大胆な手段を採ることで知られている。Dellが抱える巨額の負債は大胆な行動が必要だと示唆している。そこで近々Dellが上で述べたような手段、あるいはまだ噂に上っていない手段を採用したとしても驚いてはなるまい。

画像: Gary Miller/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SoftBank、「Uberとの交渉は継続中」と声明――100億ドル投資はまだ確定ではない

Uberは日曜日にSoftBank Groupからの投資の提案を承認したと発表した。しかしSoftBankの投資を管理するSoftBank Investment AdvisorsはCEO Rajeev Misra名で月曜日にメディア向け声明を発表し、投資はまだ確定していないと強調した。

「長期にわたる多大な努力を要する手続きを経てUberと株主はSoftBankによる同社株式の買付けの申し出を承認することとなったもようだ。しかしこのことはSoftBankが投資を決定したことを意味しない。われわれはUber投資に関心がある。しかし投資の決定は買い付け価格による。またSoftBankの〔取締役選任などに必要な〕最小限の株式持ち分割合にもよる」。

言い換えれば、株式買い付け価格はまだ決定されていないということだ。SoftBankは価格交渉が継続中であることを明確にしたかったものと思われる。同社は既存株主から90億ドル相当の株式を買い上げようとしている。

SoftBankはまた10億ドルをUberに直接投資しようとしている。これは前回のシリーズGの資金調達ラウンドの拡張という形式となる。この時点でのUberの会社評価額は700億ドル弱だった。SoftBankはUberの株式の14%の所有を求めているという。

SoftBankの月曜の声明はUberの日曜の声明に対する回答だ。SoftBank以下のように述べている。

SoftBankとDragoneer(Investment Group)が主導する投資に関して合意が得られた。この合意はUberの長期的な成長の可能性に対する強い信任の現れだと考える。この合意が正式に契約として締結されれば、SoftBankがコーポレート・ガバナンスを強化しつつテクノロジーへの投資および内外での活動を拡大することに資するものとなる。

UberとSoftBankはこの投資に関して数か月交渉を続けてきた。これほど時間がかかった理由の一つは共同ファウンダーで前CEOのトラビス・カラニックの取締役としての権限を巡って争いがあったからだ。情報源によれば、大口投資家のBenchmark Capitalはカラニックを訴えているが、SoftBankの投資が実現した場合は訴えを取り下げることに合意しているという。

この訴訟はカラニックが取締役を3名任命する権限を巡って争われている。カラニックは取締役会の同意を得ずにUrsula BurnsとJohn Thainを取締役に任命した。今後取締役が辞任すれば、カラニックは後任取締役の任命にあたって取締役会の承認を得る必要が生じる。

画像:Tomohiro Ohsumi/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Apple、タックスヘイブンをジャージーに変更――南ドイツ新聞とICIJがリーク

昨年、EUはAppleがアイルランドで違法な租税回避を行っているとして同社に145億ドルの支払いを命じた。競争担当欧州委員会の委員、Margrethe Vestagerが2014年にこの問題に関して調査を開始したとき、Appleは不穏な空気を感じたらしい。

昨日(米国時間11/5)、ICIJl〔International Consortium of Investigative Journalists=国際調査報道ジャーナリスト連合〕がParadise Papers暴露したところによれば、調査が開始された2014年始めにAppleは租税上の登記をジャージーに移したという。

ジャージーはフランスのノルマンディー半島沖に浮かぶ人口10万人程度の小さな島国〔イギリス王室属領〕だ。もっとも重要な点はジャージーでは企業は原則として課税されないことだろう。Appleはこれまでもジャージーを経由して利益を移転していた。

Appleは長年にわたり巧妙な資金操作とアイルランドの課税優遇措置を利用してヨーロッパでの課税を免れてきた。他の多国籍企業と同様、Appleもアイルランドに複数の子会社を持っている。

Appleの海外での利益はまずApple Sales Internationalというアイルランド子会社に移される。ICIJの調査によれば、同社は2009年から2014年までの間に1200億ドル以上を受け取っていた。

2つめの子会社はApple Operations Internationalと呼ばれ、この1200億ドルの大部分を配当収入として得る。2社得る利益の大部分は本社に属するものがだが、子会社は企業に課税する地域に登記されていない。両社への課税はまったく行われず、Appleの課税基準収入を著しく下げていた。

145億ドルという巨額の支払い命令となった調査は2014年6月に開始された。EUが税制改革を計画している現在、AppleがEUの命令にしたがって支払いを行うかどうかは不明だ。

フランスのブルーノ・ルメール財務大臣は「テクノロジー企業は利益を隠す方法を必ず見つけ出してしまうので、EU諸国における現実の売上に対して課税されるべきだ」と主張している。

Appleの租税回避テクニックはテクノロジー企業の間できわめてポピュラーな方法で、ダブル・アイリッシュという名前名前までついている。EUが2014年にダブル・アイリッシュを禁じたのはヨーロッパ各国政府からの強いう働きかけがあったからだ。

EUの税務調査とダブル・アイリッシュの廃止がAppleに登記をジャージーに移転させたものらしい。オフショア法律事務所のApplebyはAppleがジャージーにペーパーカンパニーを設立する手助けをした。今回の暴露はSüddeutsche Zeitung〔南ドイツ新聞〕とICIJが入手したApplebyの内部文書によるものだ。

Apple Sales InternationalとApple Operations Internationalは双方とも2014年に課税本拠地をジャージーとして登記している。ダブル・アイリッシュ方式が禁止されても、2014
年12月31日以前にアイルランドに設立された企業は2020年まで課税待遇措置をの恩恵を受けることができる。

Appleは現在、この猶予期間にあり、溜め込んだキャッシュを好都合な場所に移転することが可能だ。Appleは現在、アメリカ国外に2528億ドルの資産を持っている。もしAppleがこの利益をアメリカ本国に戻すと35%の課税を受けることになる。2020年以後も課税を逃れたいのであればAppleは何か新たな仕組みを考える必要がある。

Appleの「課税最適化措置」はそれ自身として違法ではなさそうだが、国際的な資金操作を行っていない他のもっと小さい企業に比べてAppleに対する課税が格段に軽いことを正当化するような理由もまた思いつかない。今回のAppleがいい例だが、租税回避のテクニックは日々変化しているものの、タックスヘイブンの本質は巨大多国籍企業に利益をもたらし、不公平な競争を生む根源だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

未払い請求書への対応を自動化するYayPayが$5.3Mを調達、新たに入金予報機能を導入

本誌TechCrunchのStartup Battlefieldに出てから2年になるYayPayが、530万ドルをQED Investors, Birchmere, Fifth Third Capital, それに500 Fintech Fund, Aspect Ventures, Gaingels, Techstars, Zelkovaなどから調達した。

YayPayは会社の経理部の仕事を最適化する。とりわけ、これまではあまりにも多くの中小企業が、未払い請求の催促をめぐって大量の時間を浪費していた。YayPayはそういう請求書の追跡を自動化し、状態のチェックや、リマインダー(この場合“督促状”)の送付を行う。

最近同社は、キャッシュフローの予報機能を導入した。YayPayは過去の請求〜支払い状況を見て、今の請求の支払日を予言する。そうやって入金の期日が分かれば、会社の銀行口座の近未来の残高も予測できる。

このサービスは既存のERPとの統合もでき、またチームでコラボレーションしながら利用できるから、今だれが何をやってるか分かり、放置されていた顧客にも対応できる。

また、このサービスの管理コンソール上で過去の請求書を調べ、履歴データを作れる。これまでYayPayが処理した請求書は15万あまり、それは1億ドル以上の売掛金(受取勘定)に相当する。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

建設企業の請求決済事務をオンライン化して中小下請け孫請けの苦境を救うNet30

建築業界の請求と決済の処理は、今や破綻している。実際に払ってもらえるまで70日ぐらいかかるので、建設業者の多くは運転資本が枯渇する。そこで、Y Combinatorで育ったNet30は、その問題を解決しようと志(こころざ)した。

このプラットホームの上で建設企業は請求書を処理し、下請け企業などの銀行口座にオンラインで支払いを行う。これにより、今でも紙を使っていることの多い事務処理がデジタル化される(今はまだ、請求書をFAXで送り、支払いは小切手が普通郵便で送られてくるパターンも少なくない)。実はNet30のファウンダーは、実際に建設企業でプロジェクトマネージャーをやっていたCasey BellとAnthony Cirinelliで、元々は決済を早めるためのプラットホームとしてNet30を作った。

しかし実際に建設業者たちの話を聞いてみると、建設業界の請求決済問題には改善すべき点がたくさんあることが分かってきた。問題は非常に深刻であり、決済の遅れが建設企業の倒産の原因になることも多いのだ。

“すごく大きな問題だし、しかも業界全体に血液を送る心臓の部分だ。それなのに、請求と決済の業務を簡素化することに、誰も取り組まなかった”、とBellは語る。

建設のプロジェクトは通常、数十社もの下請け〜孫請けが関わり、各社が請求書を発行する。しかし個々の請求書は、複数の文書の束であることが多い。そこには、完了した仕事の詳しい科目分類や、署名入りの法的文書、コンプライアンス関連の文書などがある。そこに日付の間違いなど誤記がひとつでもあると、決済が遅れたりする。

建設業者が操業を続けるためにはキャッシュフローが必要だから、ちょっとした遅れが悪夢を招くこともある。Net30はひとつのプロジェクトに関わる企業をすべて集めて、すべての請求書が最初から確実に正しい、という状態を作り出す。そして下請け孫請けの透明性を高める。

建設業界の既存の請求事務ソフトウェアには、昨年Oracleが買収したTexturaなどがあるが、それなどはエンタープライズ級の企業が対象で、請求決済事務の現代化を誰よりも必要としている、膨大な数の中小建設企業のニーズに対応していない、とBellは語る。

中小建設企業向けのスタートアップとしては、青写真アプリのPlanGridや、コンプライアンス関連のソフトウェアを作るUpCodesなどがあり、とくに後者は、Y Combinatorの今のバッチの同窓生だ

“一般的に建設業界は、ディスラプト(破壊的改革)が非常に後れている業界だし、テクノロジーの採用も遅い。でも最近では、ソフトウェアの実装と利用がそんなに難しくないことを、彼らは理解し始めている”、とBellは述べる。“これらのソリューションを利用すれば、建設業界はもっと先進的で生産性の高い産業になるはずだ”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Intelの第二四半期は予想を上回る好成績、データセンターも首位の座を堅持

Intelは今日(米国時間7/27)の午後、148億ドルの売上と72セントの一株当たり利益を発表した。それらはアナリストたちの予測144億1000万ドルと68セントを確実に上回っている。

同社の通常取引の株価は22セント/0.63%上がり、34ドル97セントで終わった。決算発表の直後には、Intelの株価は3.43%上がった。現在は時間外取引で36ドル17セントになっている(~1:05pm PST)。

Intelは今、企業として興味深い立場にいる。同社の未来が人工知能関連の能力にかかっていることを、同社自身が知っている。ウォール街における同社の命運を決めるのは、153億ドルで買収したMobileyeを、やがて巨大な産業になる自動運転車業界のニーズに応える、高収益のビジネスに育てられるかどうかだ。Intelによると、買収手続きは2017年のQ3に完了する。

しかし今日は、三つの買収(Mobileye, Movidius, Nervana)があったにも関わらず、重要な話題は今なおデータセンターだ。Intelは同社のx86チップで長年データセンターを支配してきたが、最近はAMDの攻勢が著しく、データセンター市場におけるIntelのトップの座がいつまで安泰か、わからなくなっている。しかし現時点では、Intelはこのビジネスで9%の成長を達成できた。

前年同期2016Q2のIntelの売上は、135億ドルだった。その時点での前年同期比成長率は3%だったが、本日の2017Q2では9%の前年同期比成長率になった。

今回の決算発表のプレスリリースで、同社のCFO Bob Swanはこう述べている: “本年前半の好調とPC事業への期待の高まりにより、目下、通年売上と同EPSの予想を上方修正している”。

Intelの2017Q3の予測は、売上が157億ドル、EPSが80セントだ。Q4を含む全年売上の予測は613億ドル、EPSは3ドルだ。この値の一部は、買収完了後のMobileyeの貢献部分である。

同社は本日の決算報告で、通年の営業利益率の向上を課題として挙げた。

今本誌TechCrunchはIntelのIR部門に追加取材をしているので、情報が得られ次第、お伝えしよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Netflixが外債で10億ドルを調達、同社の今年度のコンテンツ予算の総額は60億ドルだ

Netflixは“非米国人”からの優先債として10億ドル(10億ユーロ)あまりを調達する、と月曜日(米国時間4/24)に同社が発表した。 この債券の売上は同社の一般資本支出として使われるが、同時にNetflixの戦略の執行と関連したコンテンツの取得や投資、諸契約等の資金にもなる。

この調達は予想されていた。Netflixは今月初めの同社第一四半期の投資家宛書簡で、借入金による資金調達を増やす、と述べていた。このストリーミング企業は過去にも定常的に優先債の販売による資金調達を行っている。前の10月には8億ドル、2015年2月には15億ドル、というように。

オリジナルコンテンツの製作や取得は高価につく。Netflixは、それらの番組のマーケティングだけで2017年には約10億ドルを費消する、と言っている。同社の2017年のコンテンツ予算の総額は60億ドルだ。アメリカのエンタテイメント業界全体の中でも、これは相当上位の額だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Dropbox、6億ドル融資枠確保との報道

大型ユニコーン企業の一つ、Dropboxは素早いキャッシュ調達を必要としているようだ。Bloombergの最新の記事によれば、同社は6億ドルの融資枠を確保したという。これはDropboxが上場する前の最後の「資金調達」になるかもしれない。

Bloombergによれば、Dropboxは今年末の上場を計画しているという。ただし、 われわれの得ている情報ではこのスケジュールはまだ確定したものではない。

いずれにせよ、この6億ドルの使いみちはというと、まず第一には資金繰りに余裕をもたせることだろう。Dropboxが深刻なライバルに成長しそうな相手を買収するなど突然の資金需要が生じた場合に備えてのことだ。

次に、上場における選択肢を拡大できる。Dropboxは融資枠の確保により、上場を多少先延ばしできる。早めの上場を行えば融資枠に手を付けずにすむかもしれない。

どちらにせよ、Dropboxはフリー・キャッシュ・フローを増大させることができる。同社は通年ベースで10億ドルの収入を見込んでいるという。これは悪くない数字だ―驚異的ともいえる。

Dropboxは大企業をユーザーとして有利な契約を得つつ、独自のクラウド・インフラを構築してコストの削減に努めている。同社は以前はインフラとしてAWSに大きく依存していた。その後Dropboxは独自のデータセンターを建設している

Snapはこれと反対のアプローチを取り、Googleのクラウド・インフラに向こう5年間で20億ドルを支出する予定だ。Snapの上場申請書にこの点はリスクとして記載されていた。Dropboxが独自のインフラを所有することは同社に対する投資家にとって有利な条件となる。

Dropboxは融資の一部をインフラ投資に充てることもできる。自らインフラを所有することは有利だが、巨大な資金を必要とする事業だ。

JPMorgan、Bank of America、Deutsche Bank、Goldman Sachs、Macquarie、Royal Bank of Canadaなどの銀行が今回の融資枠を提供する。上場にあたってはこれらの金融機関のどれかが幹事を務めることになるかもしれない。Dropboxとしては有利な条件を交渉中なのだろう。

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Tesla、10億ドル以上の資金調達へ―Model 3量産のため株式、優先転換社債発行を計画

Teslaは総額11億5000万ドル程度の新株と優先転換社債の発行を計画している。昨日(米国時間3/15)、Teslaは発行の目的を「リスク軽減のため」と述べたが、これは同社がビジネスを急拡大しModel 3の生産を急いていることが背景にある。

Teslaが財務状況を改善するため大型の資金調達を行うことは多くのアナリストが予想していた。またCEO、イーロン・マスクの最近の発言からウォールストリート関係者もTeslaは近く、さらなる成長のために資本の充実を図るはずだと考えていた。

Model 3は今年中に量産体制に入る予定だ。先月、少量生産が開始されていたが、フレモントの工場で量産体制を整えるために、この臨時生産ラインは一時停止している。資金調達計画については、2億5000万ドルを普通株で7億5000万ドルを2022年を株式転換期日とする社債でまかなうとしている。Reutersによれば、イーロン・マスク自身が2500万ドルのTesla株を購入するという

前回のTeslaの資金調達は2016年5月に行われ、新株発行よってキャッシュで14億ドル分の増資に成功している。この資金も生産能力を拡大するために用いられた。

マスクは2月に、決算報告の電話会見で「Teslaは独力でModel 3の量産体制を準備することができる」としたが、同時にこれは資金繰りが「限界に近づく」と認めた。つまりTeslaにとって外部資金を導入することが財務状況のリスク軽減のために合理的だということになる。Teslaの資金繰りが綱渡りとなるのは既存の株主にとっても好ましくないだろう。

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ジェイ・クレイトンSEC委員長候補がシリコンバレーに歓迎される理由

2017-01-27-high-five

ウォールストリートの有力な弁護士、ジェイ・クレイトン( Walter “Jay” Clayton)はまだSEC〔証券取引委員会〕委員長への就任を正式に承認されていない。しかし共和党が多数を占めるアメリカ議会の勢力バランスを考えれば、クレイトンが承認されることはほぼ間違いない。

これはスタートアップのファウンダー、その投資家にとって歓迎されるニュースだ。最近のSECの動向に関心を強めていた人々はクレイトンの任命で証券市場においてかなりのフリーハンドを得られることになりそうだ。

クレイトンについて念のためにおさらいしておくと、彼は「インサイダー中のインサイダー」だ。今月初め、ドナルド・トランプ次期大統領(当時)がクレイトンをSEC委員長候補に選んだときのDealbookの記事によれば、「取引をまとめる達人」だという。 ワシントンの有力法律事務所、 Sullivan & Cromwellでクレイトンは長年にわたり公開、非公開企業のM&Aを担当してきた(ゴールドマン・サックスに対する助言を含む)。 また新規上場の専門家でもある(Alibabaの2014年の上場を担当)。2008年の危機〔リーマン・ショック〕の際には、サブプライム抵当に関連してクライアントと司法当局の和解を処理した。

企業の政治戦略と投資の専門家、ブラッドリーー・タスクは「こうした背景がシリコンバレーに対して持つ意味は大きく分けて2つある」と言う。タスクはUberを含め多数のスタートアップが当局の規制と戦うのを助けてきた。タスクによれば「クレイトンはテクノロジー企業についてある程度の経験がある。これはシリコンバレーで歓迎される資産だ」という。

タスクは「AlibabaのIPOを担当したというのはもちろんウィルソン・ソンシーニで日頃から取引をまとめていたのとは違う」と言う。ウィルソン・ソンシーニはスタートアップを担当する法律事務所としてシリコンバレーで長年トップの地位を占めてきた。「しかしそれでも〔Alibabaの上場は〕このビジネスに経験があることを意味する。経済全体に与える影響にも理解があるだろう」。

タスクによればさらに重要な点は「クレイトンは特定の政治信条を追求する活動家ではないという点だ。つまり証券取引の規制は強化されるべきだという信念の持ち主ではない」。

この点は退任したメアリー・ジョー・ホワイト前委員長と鋭い対照となる。ホワイトは1年近く前にシリコンバレーを訪問し、ファウンダー、投資家に対して、非公開企業の評価金額が急騰していることにSECは「懸念を抱いている」と警告した

昨年10月にわれわれも書いたとおり、SECは血液検査のスタートアップ、Theranosの不正を機にシリコンバレーのエコシステムにに介入を強めようとしていた。クレイトンはこれに対し、SECを効果的に運営することに専念し、アクティビストとしてSECの権限拡大を追求することには消極的とみられる。投資家とファウンダーの関係は相互の信頼に任されることになるだろう。

市場外取引のマーケットプレイス、EquityZenのファウンダー、シュリラム・バシャムは「クレイトンのSECは『シリコンバレーのことはシリコンバレーに任せる』という立場を取るだろう。ただし現在進行中の事件にどう影響するかはわからない」と述べた。昨年SECが調査を開始したと報道されたケースには、菜食主義者向け食料品のHampton Creek、オンライン小口金融のLendingClub、マイクロ・ベンチャーファンドのRothenberg Venturesなどがある(SECは進行中の調査に関してはコメントしないのが常だ)。「しかし将来を考えると、投資家は自分自身でリスクを判断せよ、という方向になりそうだ」とバシャムは見ている。

最近のSECは問題あるスタートアップの調査に力を入れ過ぎているという批判があった。クレイトンはこうした権限拡張の方向を是正するだけでなく、同時に、資本の調達、形成をバックアップするような規則を作ることも期待されている。最近のSECでは資本形成を助ける適切なルールづくりがなおざりにされているというのが共和党の主張だった。

バシャムはクレイトンのSEC委員長就任でクラウドファンディング・プラットフォームも含めてM&Aのペースは加速する可能性が高いと考えている。クラウドファンディングでは現在、企業が調達できる金額の上限は1年あたり100万ドルとされているが、SECは500万ドルにアップすることを準備している。

バシャムはさらに適格投資家(accredited investor)の定義もさほど遠くない将来、変更されると予想する。現在の定義は「純資産100万ドル以上(自宅不動産を除く)あるいは年間収入20万ドル以上」となっているが、バシャムは「適格投資家の範囲を拡大する方向で改正が行われるだろう」という。

結局問題になるのは誰が何のためにどういった改正を望むのかだ。

この点に関してタスクは「クラウドファンディング・プラットフォームは『さらに規制緩和を』と要求するだろう。しかし彼らには政治力が欠けている。テクノロジー業界も全体としてあまり関心がない。本格的なベンチャーキャピタリストや起業家はクラウドファンディングには興味を示さない。小口投資家はまだしばらく待つことになるだろう」と考えている。

画像: Bryce Durbin/TechCrunch

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新生Microsoftの展望―市場は引き続きサティヤ・ナデラのリーダーシップに好感

Microsoftがサティヤ・ナデラをCEOに選んだのは3年前になる。以來、Microsoftは運命の逆転を果たした。10年間にわたる不完全燃焼状態を脱し、成長株の地位を取り戻した。昨年もその勢いは続いた。

2016年にMicrosoftはクラウド・ベースのサービス提供企業への変身を続け、そのために複数の新たなプラットフォームをサポートした。LinkedInを262億ドルで買収するという大胆な賭けに出た。ハードウェアではSurfaceデバイスの拡充が続いた。こうした動きはすべてウォールストリートに歓迎された。Microsoftは Surface StudioでAppleのお株を奪った。デザイナーや各種のプロ向けデスクトップ機はこれまでAppleが独占的な強みを見せている分野だった。またHololensもVRの世界にMicrosoftが確固たる足場を築く努力として注目された。

株式市場は 2016年のMicrosoftをコアとなるサービスの運営に加えて、未来の分野にも大規模な投資をて行い巨大テクノロジー企業への道を歩んでいると見たようだ。

実際投資家のこうした考えは数字に反映されている。力強いリーダーの下で力強い成長がMicrosoftに2017年に向けての勢いをつけた。Azureクラウド・サービスは堅調だ。クラウド化の進行はAmazon AWSもテコ入れし、ウォールストリートも珍しく興奮した。Office生産性ツールはWindows以外のプラットフォームのサポートに本腰を入れるにつれてさらに快調だ。

ナデラのMicrosoftがいかに徹底的に変身したかは昨年11月にLinux Foundationに参加したことでもわかる。市場もMicrosoftがこれまでのしがららみを大胆に振り捨て、伝統と決別するつもりであることを認めた。 新戦略の採用には当然大きなリスクも伴うが、これまで企業の根幹を支える生産性ツールとして利益を産んできた会社に新しい成長の可能性を与える。

ナデラはMicrosoftの変身が必至になった時期にCEOに就任した。 モバイル・ビジネスは失敗し、全社的なりソースの再配分が避けられなくなっていた。変革は始まっていたが、ごく初期段階だった。改革は株価に対して上向きのようだった。しかし他社(Googleでさえ)と同様、賭けが結果を出すまでには時間がかかる。この間、Microsoftの売上の伸びはさほど目立つレベルではなかった。

大きな賭けには大きなリスクが伴う。2016年11月にMicrosoftは急成長中のビジネス・チャットのスタートアップ、Slackに対抗してTeamsというコラボレーション・ツールをリリースした。2016年初めにMicrosoftはSlackを80億ドル前後で買収することを検討していた。しかし結局資源を社内のSkypeとTeamsに振り向けることにした。Microsoftがエンタープライズ・コラボレーション分野に取り組むのはこれが初めてではない。2012年にはTwitterのエンタープライズ版、Yammerを12億ドルで買収している。だがMicrosoftはこの分野への参入で目立った成果を挙げていない。Slackが現在得ているような賞賛や清新なイメージを得ることに失敗している(なるほどSlackの成長はやや減速しているし、好印象はシリコンバレー所在企業だという点も影響しているだろう)。

MicrosoftはGoogleの失敗を教訓としているかもしれない。GoogleはNestやGoogle Fiberのような互いに関係が薄い垂直統合的分野に莫大なリソースを投じた。その結果、GoogleのCFO Ruth Poratはこうした新たな分野への投資にあたって「今後さらに慎重でなければならないだろう」と述べるに至った。Microsoftの新分野への賭けは、これに比べると同社のコア・ビジネスとの親近性が高い。そうであっても、エンタープライズ・チャットというような過去に失敗した分野への再参入にあたって非常に慎重な判断が求められるだろう。

そのような側面はあるが、株価は結局、成長率の問題となる。ウォールストリートでは新分野への賭けにGoogleやAppleのようになるのではないかと懸念する声があったが、Microsoftの成長をそうした声を吹き飛ばした。2016年にMicrosoftの株価は12%もアップした。過去2年では34%の上昇だ。それ以前、ほぼ10年にわたって時間が止まったような停滞状態にあり、投資家を失望させてきた大企業にしては驚異的な復活といえる。

2016年にMicrosoftは伝統的なエンタープライズ向けの巨人であるだけでなく、 コンピューティングがパソコンというデバイスの外に大きく拡張する時代に適合した未来をデザインする企業に生まれ変わった。Microsoftは自社OSが独占するハードウェアの世界に閉じこもった企業ではない。あらゆる主要プラットフォーム上で作動する多数のプロ向けサービスをサポートし、文字通りインターネット世界のバックボーンのひとつになろうとしている。

これに加えて、今やこの業界のほとんどプレイヤーが実験を始めている機械学習というトレンドがある。2016年9月のMicrosoft Igniteカンファレンスでナデラは基調講演のほとんどすべてを機械学習にあてた。ナデラは既存のデータを機械学習テクノロジーに適用し、Office 365のようなサービスを大幅に効率化するMicrosoftの計画を説明した。またMicrosoftは昨年初めに独自のバーチャル・アシスタントCortanaの利用をサードパーティーのデベロッパーに開放した。

こうした動きにはMicrosoft独自の部分もあるが、20017年にはGoogle Assistant、Amazon Alexa、Apple Siriなどのアシスタントの利用が急速に拡大し、ユーザーとの対話性に変革がもたらせることが予想させることに対するMicrosoftの回答といえるだろう。今年は既存サービスに機械学習の成果をシームレスに接続することでユーザーにとっての利便性を大きく高めることが各社にとって2017年の勝敗を決するカギとなるだろう。

Microsoftにとってこの部分は逃げ道のない主戦場であり、コアとなるサービスの改善のために避けて通れない道筋だ。昨年初めにMicrosoftはAIによる入力予測に基づくキーボード・テクノロジーのスタートアップ、SwiftKeyを買収した。 Officeのような企業業務の根幹となる大型の生産性ツールの改良には巨大な資源が必要だ。ことに自然言語処理能力を備えたツールのとシームレスな統合が強く必要とされている。

他社の戦略と比較した場合、Microsoftのやり方は多様性に富んでいる。Amazonはクラウド化に賭けている。Appleは新しいハードウェアと、たとえばApple Musickのようなオンライン・サービスの拡大で成長の勢いを引き続き維持するつもりだ。株式市場は多様性を好む。ナデラのMicrosoftが株式市場に好感される理由は多様性のあるアプローチにも大きな理由があるだろう。

〔日本版〕Graphiqの対話的グラフは2番目が「一時的に表示できない」とされた。この株価グラフはTechCrunch Japanトップ・ページのタイトル脇サムネールに画像として貼っておいた。対話的に操作するには原文参照。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

2016年度のUberの赤字は30億ドルに拡大へ―収入も拡大中

FILE - In this Dec. 16, 2015 file photo a man leaves the headquarters of Uber in San Francisco. Uber and advocates for the blind have reached a lawsuit settlement in which the ride-hailing company agrees to require that existing and new drivers confirm they understand their legal obligations to transport riders with guide dogs or other service animals. The National Federation of the Blind said Saturday, April 30, 2016, that Uber will also remove a driver from the platform after a single complaint if it determines the driver knowingly denied a person with a disability a ride because the person was traveling with a service animal. (AP Photo/Eric Risberg, File)

The Informationその他の情報によれば、 Uber赤字は昨年の22億ドルからさらに増え、2016年は30億ドルになるという。Uberといえばすでに確立された世界的なブランドというイメージが強いが、ビジネスとしての収益性には分かりにくい点が多い。

ドレイクやウィズ・カリファといったヒップホップのスターは歌詞で始終Uberに言及している。ハリウッドのビッグネーム、ウィル・ファレルはUberのドライバーをテーマにしたコメディを製作し、主演することも決まっている。

Bloombergの推計によれば、リムジン、タクシー配車サービスのパイオニアは2016年の純収入は55億ドルで昨年の20億ドルから大幅にアップしている。こういった金額や伸び率は普通なら驚くべき数字のはずだが、30億ドルの赤字が予想されるということはUberは1ドルの収入を得るたびに1.55ドルを支出している計算になる。

Uberの広報担当者は財務情報に関してコメントしないとしている。

Uberの赤字がどこから来ているのかだが、少なくとも次ような支出先がある。自動運転車の開発、食品配達ビジネスの拡大、ドライバーと社員の人件費、訴訟多数、ロビー活動、等々。Uberではここ昨年コスト削減のために報酬体系の見直しを行ったが、それでも人間のドライバーに対する支払いは大きなコストセンターになっている。

ドライバーへの支払の他に、Uberはライバルとの競争にも多大の費用を必要としている。つまりインセティブ、ボーナス、広告、ドライバー側アプリの改善などだ。またUberは契約者ではなく雇用者であることの確認を求めるドライバーのグループを始めとして多数の訴訟にさらされている

またUberは外部のパートナー企業に運転のためのナビゲーションを頼らなくてもすむよう、数億ドル地図テクノロジーの開発につぎ込んでいるという。

今年、Uberは引き続き企業買収を行ってきたが、特に 人工知能のスタートアップ、Geometric Intelligence自動運転トラックのスタートアップ、Ottoの買収が目立った。自動運転とロジスティクスの分野でもリーダーになろうとする戦略的投資なのだろう。

しかしこうした買収の一方で、20116年の下半期は配車回数が減少傾向だ。もっともこれはUberが中国でライバルとの競争を諦めたことから予想されたことだった。Uberは中国での事業を最大の地域的ライバルであるDidi Chuxing(滴滴出行)に売却し、両社を統合した会社の持ち分を得るという戦略に転じている。しかしこれは世界的にみてUber自身による配車回数の減少という結果をもたらしている。ただし中国市場から撤退したことにより、リソースを他の有望分野、料理の配達のUberEATSサービスを世界50都市に拡大するために振り向けることが可能になった。

ビジネスの観点からすると、一番重要なのは、ピッツバーグ、最近ではサンフランシスコにおける自動運転タクシーの実験だろう。将来、自動運転車が実用化されれば、Uberは膨大な人間のドライバーを必要としなくなる、少なくとも大幅に減少させることができる。株主はUberがこの分野に投資することを引き続き支持するだろう。

ただ同時に、スマートフォン配車ビジネスに多数のライバルが参入中だ。これによりドライバーの採用と引き抜き防止のための費用は大幅に上昇した。またGoogleはWaymoという新会社を設立し、自動運転テクノロジーの全面的なビジネス化を図ろうとしている。

ところが、Uberの内外のライバルはアメリカのLyft、インドのOla、東南アジアの Grab、ヨーロッパのGettを含めて、ほとんどが非公開企業であるためビジネスの内情をUberと正確に比較することが非常に難しい。しかし配車サービス事業に詳しい情報源によればUberはライバルのLyftなどより賢明な支出を行っているという。両社の財務内容に詳しい人物がTechCrunchに語ったところによれば、顧客サービスのための割引やドライバーへのインセティブを含めて、Lyftのコストは1配車ごとにUberより50%も高いという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ココペリインキュベートが1億円を調達、金融機関向け融資審査AIをローンチ予定

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中小企業向けスポットコンサルサービスのSHARESを運営するココペリインキュベートは、SBIインベストメント横浜キャピタルアドウェイズTISの4社を引受先とする第三者割当増資で、計1億円を調達したと本日発表した。

今回調達した資金は、既存ビジネスのBPO事業(給与計算・経理代行)とスポットコンサルサービスSHARESに続いて第三の柱となる、金融機関向けの融資審査AIエンジン・SHARESΦ(シェアーズファイ)の開発にあてられる。

中小企業の財務管理負担を軽減するサービス

ココペリインキュベート代表取締役の近藤繁氏は、もともと金融機関で中小企業への融資業務を担当していた。その現場で、財務管理が不十分なために融資を受けられないでいる企業を目の当たりにしたことから、中小企業をサポートするという使命感に目覚め、ココペリインキュベートを設立。

当初の財務コンサルティング業務から派生して、給与計算や経理作業を代行するサービスをスタートさせると、顧客から契約や登記関連業務の相談を受けるようになり、それをきっかけに同社は専門家と中小企業をマッチさせる、スポットコンサルティングサービスのSHARESを2015年6月にローンチした。

今では340名以上の専門家と1000社以上の企業が登録しているSHARES上では、既にSHARES AIという人工知能を利用したサービスが提供されている。企業が財務・労務・給与等の関連データを入力すると、AIがその内容を分析して、資金調達や助成金申請のタイミングなど経営課題に関する通知を行うようになっているのだ。

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なお、BPO事業での収益を中心とした、2015年度の売上規模は6000万円で、SHARESの有料化がはじまった今年度は20%前後の売上増加を見込んでいる。

AIで中小企業がお金を借りやすい環境をつくる

SHARES AIとは別のサービスとしてローンチ予定のSHARESΦは、月次の財務情報を基に与信判断を行うことができるAIエンジンだ。

大企業に対する貸し出しの状況はリーマンショック以前のレベルに回復している一方、中小企業への貸し出しについては、依然2008年の状況からそこまで好転していない。というのも、一般的に金融機関の与信審査は年次の財務情報を基に行われるため、一過性の減益などに左右されやすい。そのため、業績にブレが出やすい中小企業に対しては、銀行もリスクを取りづらい構造になっているのだ。

しかし、月次の情報を参照すれば企業の実態を深く把握でき、細かなリスク判断が可能になるため、金融機関も中小企業へ貸し出しを行いやすくなる。また、情報の受け渡しはクラウドベースで行われるため、融資担当者が決算書を受け取りにわざわざ企業を訪れたり、郵送を依頼したり、紙に印刷されたデータを金融機関側で再入力したりする手間もなくなり、結果的に審査プロセスがスピードアップする。

既にいくつかの金融機関で実証テストが開始されており、2020年までにSHARESΦを50の金融機関に導入することを目指していると近藤氏は話す。

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また、SHARES AIは、クラウド会計ソフトのfreeeやMFクラウドとのAPI連携に対応しているほか、130万以上の登録ユーザー数を誇る弥生ともCSV連携できるようになっている。そのため、将来的には会計ソフトの情報をダイレクトにSHARES AIへと供給し、企業が資金調達のタイミングに関する通知を受け取ったら金融機関に連絡をとり、金融機関がSHARESΦ経由でその情報をもとに融資審査を行う、という一気通貫サービスが提供できるようになるかもしれない。

顧客ベース拡大に向けて

今回投資に参加したSBIインベストメントは、今年の6月に300億円規模の「FinTechファンド」を設立しており、SHARES Φの顧客獲得に向け、同社にはファンドに参加している金融機関とココペリインキュベートの関係深化を促す役割が期待されている。

また、ココペリインキュベートは、横浜キャピタルの親会社にあたる横浜銀行や他数社と共に、小口融資の自動審査システムを開発するためのコンソーシアムを今年立ち上げた。そこでは企業からの申し込み後、即日もしくは翌日に融資ができるようなシステムの開発にあたっている。

さらに取締役COOの森垣昭氏によれば、弁護士や税理士など士業への営業力に定評のある、アドウェイズ傘下のサムライアドウェイズとの業務提携を通して、SHARES上の登録専門家の数を増やしていく計画だ。

金融機関へのシステム導入実績のあるTISとは、財務情報登録作業の効率化や事務作業の軽減を目的とした同社の既存のシステムと、ココペリインキュベートの与信審査テクノロジーを組合せた新たなシステムの開発にあたっていくとのこと。

その他にもココペリインキュベートは、先月よりビッグローブと提携し、同社が起業家向けに提供している創業支援サービスの一部として、SHARES経由の相談サービスを提供している。

今後もSHARESを利用する企業数の拡大に取り組むと共に、 特許出願中のSHARESΦで、融資先を増やしたいと考えている金融機関と資金調達のハードルに苦しむ中小企業のギャップを埋めていく考えだ。

EU、Appleが145億ドル(1.5兆円)の税を未払と認定―ティム・クック、「まったく無根拠」と反発

2016-05-17-timcook

今日(米国時間8/30)、Appleがアイルランドに保管している利益に関してEUは税の未払額が145億ドルであると決定した。これに対してAppleのCEO、ティム・クックは「事実に関しても根拠となる法律に関しても根拠がない」と強く反発した。

顧客に宛てた公開状でティム・クックはEUの決定を「前例がないもの」であり「有害」と批判した。Cookは「Appleはアイルランドで1980年からビジネスを続けており、現在6000人を雇用している。また国際法、現地法を順守してヨーロッパ諸国に納税してきた」と指摘した。クックはさらに次のように続けている。

「〔EUは〕アイルランドの税法を無視し、国際的税法のシステムを破壊することによってヨーロッパにおけるAppleの歴史を修正しようとしている。8月30日付でEUが発表した見解はアイルランドがAppleに特別な税制上の優遇を与えたとしている。

「その主張は事実においても法律においても根拠がない。Appleはアイルランドに対して税制上の優遇を要求したこともなければ受けたこともない。われわれはすでに支払った額以上の何らの納税義務も負っていないと考える。AppleはそのEUにより遡及的に税を追加されるという驚くべき立場に置かれた。」

クックは世界的に事業を展開するビジネスにとって税法は困難な問題を提起することを認めた。しかし「税は価値が創造された場所で納付されるべきであり、Appleはなんら違法な活動を行っていない。EUはAppleを不当に標的としている」と反論した。

「Appleにおける研究と開発〔という付加価値の創造〕はほとんどがカリフォルニアで行われている。したがって利益及の大半はアメリカで生み出され、納税のほとんどもアメリカで行われている。アメリカでビジネスを展開しているヨーロッパの企業もまったく同様の原則によって課税されている。ところがEUは遡及的にこの原則を変えようとしている。

「〔EUの事実上の追徴課税は〕明らかにAppleを標的として選び出したものだ。しかしそれ以上にヨーロッパの投資と雇用に有害な影響を与える。EU当局の決定はアイルランドのみならず、ヨーロッパ全土の企業を突如として法律に基づかない多額の課税という重大な危険にさらすことになった。

クックはAppleは国際的な税制改革を支持するが、その交渉相手は〔課税権を持つ〕個々の国の政府、指導者であり、EUであるべきではないと述べた。またクックは改革が必要であればEU指令一般の例にしたがって将来に向かって適用されるべきであり、遡及的であってはならないと付け加えた。

AppleはEUの決定を不服として申し立てを行う。クックはEUの決定が「取り消されるものと確信している」という。

Cookの公開状の全文はこちら

画像: Stephen Lam/Getty Images

〔日本版〕EUの決定は未払と認定した額をアイルランド政府に納付するよう命令するもの。アイルランド政府はEUの決定を不服としている。ただしEUは税が未払である企業に対し制裁金を課する権限がある。制裁金の額は決定されていないが、未払と認定された税額を基礎としたものになると見られている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+