ディズニーも出資する“MRお化け屋敷”運営のTYFFON、東急レクとタッグで国内出店加速へ

花火大会、海水浴、夏祭り——。夏といえば色々なイベントが多いシーズンだけど、僕個人としてはこの季節に無性に行きたくなるのがお化け屋敷だ。

今はそのお化け屋敷さえも“IT化”する時代。約1年前に紹介したTYFFON(ティフォン)が開発するMRホラーアトラクション「Magic-Reality: Corridor(コリドール)」は、まさにAR/VR/MR時代のお化け屋敷といえるだろう。

そんなコリドールなどが楽しめる施設「TYFFONIUM(ティフォニウム)」を2017年10月よりダイバーシティ東京内で展開しているTYFFON。同社は7月19日、東急レクリエーションと資本業務提携を締結し、国内でTYFFONIUMの出店を加速させることを明らかにした。

第1弾として、今秋に東急レクリエーション直営の「TYFFONIUM 渋谷店」のオープンを予定。同社によると今回の提携は「双方の強みを活かした店舗出店の取り組みが主幹となり、資本提携は提携を強固にするための補助的な位置付け」とのことで、調達額は数千万円規模になるという。

TYFFONについては前回の記事で詳しく紹介しているが、2011年11月の創業。2014年にディズニーのアクセラレーターの第1回プログラムに選ばれ、同社から出資を受けているほか、2017年にはインキュベイトファンドとアカツキが運営するファンドから100万ドルの資金調達を実施している。

現在同社が展開するTYFFONIUMで体験できるコリドールは、現実世界と仮想世界を融合させたMR(Mixed Reality)技術を活用するホラーアトラクション。周りから見れば体験者はカメラの付いたヘッドマウントディスプレイを装着して同じ所をぐるぐる回っているだけなのだけど、実際は巨大な化け物が襲ってきたり、ゾンビに遭遇したりといった恐怖体験をしているわけだ。

2017年12月からは独自の床振動システムを追加。僕もこの機能が追加された後に体験してみたのだけど、絶妙なタイミングで急に床が揺れるので何度もヒヤッとしたことを覚えている。

4月には新アトラクション「Magic-Reality: FLUCTUS(フラクタス)」を公開。こちらは最大5名で楽しめる、船上を舞台とした異世界ファンタジーとのこと。ホラー系が苦手だけどMRアトラクションを体験してみたいという人には良さそうだ。

TYFFONによるとTYFFONIUMの来場者数が認知度の拡大とともに右肩上がりで伸長。累計の来場者数は1万人を突破し、店舗単体での収益化を実現するに至っているという。

今回の提携は冒頭でも触れた通り「東急レクリエーションが持つエンターテインメント空間の運営力と、弊社が持つ次世代VRエンターテインメントコンテンツの創造力を掛け合わせることで、TYFFONIUMをより魅力的かつ身近なものにしていく」(TYFFON担当者)のが狙い。

今後は渋谷店のオープンを皮切りに、国内外で新店舗の展開を計画しているほか、ザッパラスと協同開発をしている「タロットVR:ボヤージュ・オブ・レヴリ 〜幻想の旅〜」(VR占いコンテンツ)など新コンテンツも順次リリースしていく予定だ。

「cluster.」にVR上で有料イベントができるチケット機能、第1弾はVTuber輝夜月の音楽ライブ

2017年末あたりから、バーチャルタレント業界が急速に盛り上がってきている。

YouTube上で活動しているバーチャルYouTuber(VTuber)が一気に増え、多くのファンを獲得。ユーザーローカルが公開するVTuberのランキングを見ても、1位のキズナアイを筆頭にそのファン数や動画の総再生回数の多さに驚かされる。

今後バーチャル上で活動するタレントが増えれば、例えば握手会やライブといったイベント活動やグッズの販売など「リアルなタレントが行っているような商業活動」も本格化していくだろう。

VRイベントプラットフォーム「cluster.」が目指しているのも、まさに「バーチャル上の商業スペース」を作ること。その一歩として運営元のクラスターは7月12日より、cluster.上で有料イベントを開催できるチケット機能のβ版を公開した。

有料イベントの第1弾は、8月31日に開催が予定されている人気VTuber輝夜月(かぐや るな)の音楽ライブだ。

VR上で音楽ライブやコミケを

cluster.については過去に何度か紹介しているけれど、ユーザーがバーチャル空間上にルームを作り、イベントやライブを楽しむことができるプラットフォームだ。バーチャルなので広さや距離といった物理的な制約を受けないのが大きな特徴。数千名規模のイベントやカンファレンスにも対応する。

運営元のクラスターは2017年5月にエイベックス・ベンチャーズ、ユナイテッド、DeNA、Skyland Venturesおよび個人投資家らから2億円を調達。6月にcluster.の正式版をリリースした。

同社の創業者でCEOを務める加藤直人氏の話では、リリース以降ゲームやコミュニティのユーザー同士の会合、会社の会議など、幅広い用途で利用が進むも「どういうところでしっかりとビジネスを回していくのか」で悩んでいたという。

もともとcluster.を立ち上げた背景のひとつとして「VRヘッドセットを着けた時に、ここで音楽ライブができたらいいなと考えていた」こともあり、イグニスの子会社でVR領域の事業を手掛けるパルスと業務提携を締結。2017年の夏頃からバーチャルアイドルの活動サポートも始めていたそうだ。

「当初はバーチャルタレントがブームになるのは2〜3年後を想定していたので、長いスパンでの事業になると考えていた」(加藤氏)というが、冒頭でも触れたように一気にブームが到来した。

バーチャルタレントの場合、リアルなタレントとは違い握手会やオフ会などファンとの接点が少ないことが一つの課題。それを解決するために3Dアバターのアップロード機能などを拡充したところ、VTuberを中心とした利用が増えてきたという。

「VR上で音楽ライブやコミケができるようになる、そしてそれに自宅から参加できるようになるというのがひとつの目標だった。バーチャル上に商業スペースを作りたかったので、有料チケットやグッズの販売機能などは以前から準備に取り掛かっていた」(加藤氏)

輝夜月が「Zepp VR」でライブ開催へ

今回チケット機能のβ版がリリースされることによって、今後企業はcluster.を使ってバーチャル上で有料のイベントを開催できるようになる(現在は社数を限定し、問い合わせベースで提供)。

冒頭で触れた通り第1弾のイベントは、ソニー・ミュージックエンタテインメントが主催する「輝夜 月 LIVE@Zepp VR」。チケット価格は5400円となっていて、「高い」と思う人もいるかもしれない。

ただこの点について加藤氏は「そこでしか味わえない希少な体験を提供できれば成立しうると考えているし、むしろ安いとすら思われる文化になっていく可能性もある」という。

「(ネット上に)情報が増え、情報の価値自体は下がってきている。でもVRデバイスが届けるのは情報ではなく、体験。ユーザーが求めているのも体験であり、(デジタルコンテンツに対しても)希少な価値を感じることができればお金を払うと考えている」(加藤氏)

VR上でビジネスが成り立つ主要ジャンルは「ゲーム」「イベント」「成人向けコンテンツ」の3つというのが加藤氏の見解。クラスターが狙っていくのはこのイベントのニーズだ。

あくまでチケットはそのためのひとつの機能にすぎず、今後はバーチャルアイテムの購入機能を始め商業活動に必要な要素をアップデートしていく。

「バーチャル上の商業スペースのニーズは今後10年、20年のスパンで高まっていくはず。そこで必要となるインフラを作っていく。直近はバーチャルタレントがアーティスト活動をしやすい場所として機能を強化し、バーチャルイベントの箱となるサービスにしていきたい」(加藤氏)

中国で加速するオリジナル番組制作――Baidu、Alibaba、Tencentが続々参入

【編集部注】筆者のHugh Harsonoは元金融アナリストで、現在はアメリカ陸軍に所属している。

近年オリジナルコンテンツ市場が賑わいを見せており、その主役は制作スタジオをはじめとする従来の主要コンテンツプロバイダーから、インターネット時代のスタートアップへと移行しつつある。彼らはオリジナルコンテンツを制作することで、事業ポートフォリオの拡大や限定コンテンツの配信を通じた有料会員数の増加を狙っているようだ。

アメリカでは、同市場の覇権を握るAmazonやNetflix、Huluが『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』『高い城の男』『侍女の物語』など評論家も絶賛するシリーズを投入しており、他の大手テック企業も彼らに必死で追いつこうとしている。たとえばAppleはスティーブン・スピルバーグ監督と契約を結び、『世にも不思議なアメージング・ストーリー』のリニューアル版の制作を予定しているほか、Facebookはオリジナルコンテンツの制作に最大10億ドルを投入Googleは将来的にTVシリーズの1エピソードあたりの制作費を最大300万ドルまで引き上げると発表しており、Disneyも独自のストリーミングサービス向けにオリジナルコンテンツを制作しようとしている。

同様に中国のオリジナルコンテンツ市場も、ネット大手のBaidu、Alibaba、Tencentが支配権を握っている。欧米諸国に住む人は、これらの企業名や彼らが制作しているテレビシリーズにあまり馴染みがないかもしれないが、徐々に中国産のコンテンツも世界に向けて配信されはじめていることを考えると、この状況は近いうちに変わってくるだろう。

中国とアジア諸国の違い

世界はもとよりアジアの他の国々と比べても、中国には数々のユニークな点がある。たとえばモバイルデバイス上でのメディア消費量の増加や、テレビの視聴ボリュームの増大、爆発的な成長を遂げつつある映画・テレビ業界の存在などがその一例だ。

eMarketerによれば、近いうちに中国の成人は1日あたり約3時間をモバイルデバイス上で過ごすようになるとされている。これは1日あたりのメディア消費時間の41.6%にあたり、さらに彼らはもう40%にあたる時間をテレビの視聴に費やしているのだ。このモバイル中心の生活スタイルが今後数年のうちに視聴時間が急増するであろうとされているデジタル動画と組み合わさることで、人口と同じように動画の消費量も増えていくだろう。

さらに中国のテレビ業界もここ数年で前例がないほどの成長を遂げた。実際のところ、国内の映画業界とテレビ業界を合わせると350億ドル以上の規模に達すると言われるなか、テレビ関連の売上がその88%を占めているのだ。中国ではIP放送の利用者も増えており、2017年には利用者数が1億人を突破。オリジナルコンテンツ市場の盛り上がりをさらに後押ししている。ほかにも、昨年12月には国内のスタジオが集結しChinese TV Drama Export Allianceという団体が立ち上げられ、グローバル市場でのプレゼンス向上やNetflixなどのストリーミング企業に対する中国語コンテンツの売り込みに今後力を入れていくようだ。

中国オリジナルコンテンツ界の巨人

ネット系コングロマリットのBaiduは中国のオリジナルコンテンツ市場を支える一社。特に同社の傘下でストリーミングサービスを運営するiQiyiはひときわ存在感を放っている。国内のストリーミングサービスとしては最大級のiQiyiは、アメリカでのIPOを通して22.5億ドル以上を調達しており、その月間ユーザー数は4億2100万人、デイリーユーザー数は1億2600万人を超える。そして規模やリーチを背景に、同社のオリジナルコンテンツは国内で大きな人気を呼んでいる。

同社が制作したリアリティ番組『Rap of China』『Street Dance of China』『Hot Blood Dance Crew』は、中国政府によるヒップホップカルチャーやタトゥーに関するメディア規制をものともせず、何百万人もの視聴者を熱狂させた。なかでも『Rap of China』は、最近アメリカのヒップホップトリオMigosとパートナーシップを締結しており、今後欧米の人々の目に触れる機会もでてくるだろう。

リアリティ番組以外のオリジナルコンテンツも負けてはいない。推理ドラマの『Burning Ice』や『Tientsin Mystic』はセカンドシーズンの制作が決まったと同時に、今年Netflixを通じてアメリカでも放送されることになった。ほかにも『The Lost Tomb』『Evil Minds』『Unforgiven』などの人気シリーズはいずれも何百万人以上もの視聴者を抱えている(注:『The Lost Tomb』と『Evil Minds』は政府の検閲によりiQiyiのウェブサイトから削除された)。

特に中国では、オリジナルコンテンツ市場の成長に伴い、仮想現実(VR)や人工知能(AI)など関連分野にも大きな影響が出てくるだろう。

Baiduと並んでこの市場で活躍するのが、ストリーミングサービスYoukuを展開するAlibabaだ。Youkuはタブレットやルータ、テレビボックスなどYoukuブランドのハードウェアを含む強固な流通ネットワークを通して、5億人以上のユニークユーザーにコンテンツを届けている。Youkuのサービスはすでに消費者の生活の一部となっていることから、彼らのオリジナルコンテンツも国中の視聴者にリーチできるのだ。

人気シリーズ『Day and Night』に関連し、Youkuは2017年終わりにNetflixと契約を結び、同番組は中国語のテレビシリーズとしては初めて世界中に配信されることとなった。ほかにも有名なコンテンツとしては、歴史ドラマの『The Advisors Alliance』『Oh My General』、人気コミックが原作のファンタジードラマ『Rakshasa Street』などがある。Youkuは短いビデオクリップとオリジナルコンテンツのどちらでも人気作品を生み出していることから、中国のオリジナルテレビコンテンツの制作においてはマーケットリーダー的な存在だと言える。

そして最後がネット界の巨人Tencentだ。WeChatの成功で知られる同社だが、Tencent Videoの平均デイリーアクティブユーザー数は1億3700万人以上と言われており、Tencentのオリジナルコンテンツも市場での重要度が増してきている。

Tencent Videoの人気シリーズとしては、1日で2億回もの再生数を叩き出し、これまでに何十億回も再生されたアクションアドベンチャードラマ『Candle in the Tomb』や、同名の人気小説がベースの歴史ロマンス『Rule the World』がある上、同社は『The Tomorrow Children』のようなバラエティ番組の制作も手がけている。さらに直近では、小説『The Tibet Code』や『Mystery of the Antiques』、日本ではおなじみのマンガ『テニスの王子様』を原作としたテレビシリーズの制作が予定されている。Tencentは今後もオリジナルコンテンツへの投資を拡大していこうとしており、向こう数年で同社のポートフォリオはさらに拡大していくだろう。

中国にはこれまでに名前が挙がったiQiyi、Youku、Tencent Video以外のプレイヤーももちろん存在する。たとえば人気コンテンツプロバイダーのSohu TVもオリジナルコンテンツ市場に参入し、人気ドラマ『Indelible Designation』や推理シリーズの『Medical Examiner Dr. Qin』の制作に携わっているほか、『Saturday Night Live』風の番組の制作も予定されている。

人気動画プラットフォームのMango TVも、コメディ番組の『Fashion Rivers』やドラマ『Gold Matchmaker』、インタラクティブな『Big Brother』風の番組『Perfect Holiday』などさまざまな番組を制作している。SohuやMango、そして彼らが提供するコンテンツからも、中国のデジタル化を推進する上で、オリジナルテレビ番組がどのくらい大きな役割を担っているかがわかる。

一方、その他のアジア諸国では……

規模では差がありつつも、オリジナルコンテンツ市場が盛り上がっているのは中国だけではない。アジアの他の国々もインターネットを普及させるにあたり、モバイルファーストなアプローチをとってきたため、モバイルデバイス上でテレビを視聴する人の数は増え続けている。

タイではLINEが運営するLINE TVがモバイルテレビ市場を席巻しており、自社のストリーミングプラットフォーム向けにオリジナルコンテンツの制作も計画している。さらにLINE TVはすでに現地のテレビ番組制作会社とパートナーシップを結んでおり、もともとの出発点であるYouTubeのようなサービスから、Netflix、Huluのようなサービスへと変化つつある。

インドネシアでは、ライドシェアのGo-Jekがオリジナルコンテンツ市場への参入を画策している。先日、同社は制作会社Go-Studioの立ち上げを発表。Go-StudioはサブスクリプションサービスGo-Play向けのコンテンツを制作していくとのこと。さらにGo-JekはVICE Mediaともパートナーシップを締結し、2019年を目標にオリジナル映画『When We Dance』(監督:Joko Anwar)の制作を予定している。

オリジナルコンテンツ市場がスタートアップに与える影響

特に中国では、オリジナルコンテンツ市場の成長に伴い、仮想現実(VR)や人工知能(AI)など関連分野にも大きな影響が出てくるだろう。Baidu、Alibaba、TencentはいずれもVRやAI分野へ積極的に投資しており、今後ハードとソフトが上手く絡み合ったテレビ番組が一般家庭でも楽しめるようになってもおかしくない。たとえば、VRヘッドセットを使ってテレビ番組内のキャラクターの視点で物語を楽しめるようになったり、ユーザーの視聴傾向をもとにAIがオススメのハロウィーンのコスチュームを提案してくれたりといったこともありえるだろう。

このような未来を実現するにあたり、オリジナルコンテンツ市場の成長はその第一歩と言え、国内の巨大企業のリーチや影響力、そして成長を続けるテレビ業界は今後さらに重要な役割を担うことになるだろう。

まとめ

オリジナルのテレビ番組制作には計り知れないほどの可能性がある。というのも、オリジナルコンテンツ市場自体の成長もさることながら、先述の通りアジアではモバイルデバイス上でテレビ番組を楽しむ人の数は急増しつつあるのだ。その結果、中国のトップ企業も単に同市場に目を向けるだけでなく、自らオリジナルコンテンツの制作に乗り出し、視聴者獲得のために高品質なシリーズをリリースするまでになった。

オンライン限定シリーズや視聴者の数はかなりのスピードで増加し、今では年に何百という数の番組が公開され、何十億回も再生されている。中国のコンテンツが海外でも同じように評価されるかどうかはまだわからないが、今のところ中国のオリジナルコンテンツ市場が減速する様子はなく、中国企業にとってはグローバル市場への飛躍もありえる有力な収益源として今後も注目されることだろう。

Image Credits: Kevin Thrash / Getty Images

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Second Lifeの共同開発者によるVRブロックチェーンスタートアップが3500万ドルを調達

「ブロックチェーンベースのVRプラットフォーム」というフレーズに驚いてしまうようなら、今すぐタブを閉じてラッダイト運動を続けた方がいいだろう。

Second Lifeのクリエイターが立ち上げたソーシャルVRスタートアップのHigh Fidelityは、この度ブロックチェーンに特化した投資会社Galaxy Digital Venturesがリードインベスターを務めたシリーズDで3500万ドルを調達した。同ラウンドには、Breyer Capital、IDG Capital Partners、Vulcan Capital、Blockchain Capitalも参加していた。

High Fidelityは、ユーザーが作る世界をつなぎ合わせた宇宙のようなプラットフォームを開発している。プラットフォーム上ではユーザーが自由に交流でき、同社によれば市場に流通するVRハードウェアが彼らの期待に追いつけば、早急にスケール化が狙えるのだと言う。

最近ではゲーム内決済やその他の機能を推進するために、ブロックチェーン部分の開発に多大なリソースを割いており、レイテンシーや3D音声、背景の高画質化などに注力しながらも、プラットフォームの用途で差別化を狙っているようだ。現在60名いる従業員のうち、7、8人のエンジニアがブロックチェーンテクノロジーの開発にあたっていると、共同ファウンダーのPhilip Rosedaleは語る。

他方、Second LifeはLinden Dollarと呼ばれる通貨をベースにしたゲーム内経済の活発さで知られており、Rosedaleによれば、実は現在でも年間7億ドルものP2P決済が行われているのだという。

High Fidelityに関して言えば、ブロックチェーンを活用することで、ユーザーは購入したデジタルグッズを実際に所有した上で、アバターに装着できるようになる。そしてすべての決済は、同プラットフォームのデジタルアセット台帳に非中央集権的な形で記録されるのだ。さらにHigh Fidelityは、Virtual Reality Blockchain Alliance(VRBA)という団体を立ち上げた。先進的企業が集まるこの団体の目的は、ユーザーのアバターが購入物を持ったまま異なるプラットフォームを自由に行き来できるような環境を構築することだ。

VR上であればブロックチェーンを中心に据えたクローズドな環境を構築できるため、実用範囲が決まっていることの多いブロックチェーンサービスにとって、試験場のような役目を果たせるかもしれない。

High Fidelityが実現しようとしている未来は仕組みだけでなく、見た目にもかなり違いがある。Facebook SpacesやMicrosoftのAltspace VRでは、頭が体から切り離されて浮いているようなアバターが登場するが、High Fidelityはもっとリアリスティックなデザインアプローチをとっており、見ていて若干不安になるようなSecond Lifeのアバターとかなり共通点があるように感じられる。

Lineden Labが開発したVRプラットフォームSansar

Second Lifeの開発元であり、High Fidelityの株主でもあるLinden Labは、すでに独自のVRプラットフォームSansarのベータ版をローンチ済みだ。High Fidelity同様、Sansarでは各ユーザーが作り上げたスペースが、ゲームエンジン版のワールドワイドウェブのように統合され、それぞれのスペースをユーザーが行き来できるようになっている。Linden Lab自体もSansarのことを「VR版のWordPress」と呼んでいるように、現状のプラットフォームはそこまで洗練されているとは言えないものの、High Fidelityのような三次元仮想空間を使った構想が秘められているであろうことは察しがつく。

利用状況に関する情報が公開されておらず、まだベータ版のプロダクトしかないVRスタートアップのHigh Fidelityにとって、7000万ドルという累計調達額はかなりの金額だと言えるだろう。競合相手のFacebookが何十億ドルという資金を投入していることを考えるとなおさらだ。

Rosedale自身も状況の厳しさは認めつつも、Facebookにつきまとうプライバシーに関する不安は、今後VRが普及するにつれて、ますます高まっていくと考えているようだ。

「VRが一般化すれば、Facebookのようなサービスに関連したプライバシーやセキュリティ、アイデンティティ絡みの人々の不安は、現状のそれとは大きく変わってくるだろう」とRosedaleは弊誌のインタビューに答えた。「そのため私は、Facebookの広告頼みの収益構造や中央集権的なサービスには付け入るスキがあると見ている。だからこそHigh FidelityはソーシャルVR市場に進出しようとしているのだ」

彼らのゴールはいたってシンプルだが、Rosedaleを保守的だと非難する人はいないだろう。なぜなら彼は、今後10年間のうちにVRユーザーは10億人を超え、ゲーム内グッズの市場規模は1兆ドルに達すると予想しながら、自らの会社をその先頭に立たせようとしているのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

[ビデオ]ふつうの円形の車輪が地形や地質に応じて三角形になる未来の軍用車両

DARPAは、そのGround X-Vehicle Technologies計画の一環として、未来的でしかも実用的な新しい軍用車両を披露した。イノベーションのひとつである構成を変えられるホイール・トラックは、カーネギーメロン大学のNational Robotics Engineering CenterとDARPAの共同開発だ。しかもそのホイール・トラックは、戦闘用車両を単なる武装を超えて生存性を強化するための設計要素の、ひとつだ。

ビデオでお分かりのように、構成を変えられる(reconfigurable, リコンフィギュラブル)ホイール・トラックは、円形の車輪から三角形のトラック(キャタピラー)への変形およびその逆をなめらかに約2秒で行い、しかも走行時にスピードを落とさずにそれができる。円形の車輪は硬い地面に合い、キャタピラー方式のトレッドはやわらかい地面で武装車両が自由に動ける。

Ground X-Vehicle計画のトップ、Amber Walkerによると、この技術は“車両の戦術的な動きと、多様な地形における行動性を大きく改良する”。…そのアドバンテージは、下図のGIF画像でお分かりいただけよう。

車輪の技術なんて、一見ぱっとしないが、結果は見た目にも印象が強いし、とってもスムーズだから、あらためて見なおしてしまう。

ビデオには、ほかにも見逃せない設計機能が映っている。そのひとつが、窓なし走行技術Virtual Perspectives Augmenting Natural Experiences(V-PANE)で、これは複数のLIDARとビデオカメラの像から、まわりの状況をリアルタイムで作りだす。そしてドライバーは3Dのゴーグルをつけて、VRによる窓からの光景を見る。そのVRは奥行きの把握と再現が強化され、ドライバーの頭の動きにリアルタイムで追従する。もちろん、さまざまな地形データ等も表示する。

画像クレジット: DARPA

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

MicrosoftはXbox上のVRの約束を破りWin 10上のPCゲームに没頭か

[筆者: Sarah Wells]
Microsoftが2016年に約束した仮想現実機能をまだ待ってる人に、不幸なニュースがある。先週のE3でMicrosoftのチーフマーケティングオフィサー(CMO)Mike NicholsがGamesIndustry.bizに、同社にはその約束を果たす計画がない、と語った。

彼は同誌に、“仮想現実や混成現実のXbox固有の計画はない”、と述べている。

しかし2年前にはXboxのチーフPhil SpencerがThe Vergeに、Xbox One X(当時はXbox Scorpioというドラマちっくな名前だった)は、“今PCにあるようなハイエンドのVRを”サポートする、と言っている。

Xbox One XのリリースにはVRを統合するというニュースが伴わなかったが、しかしそのころMicrosoftは、Windows 10用のヘッドセットWindows Mixed Realityをリリースして、PCゲームのVRや混成現実に踏み出していた。

今日のNicholsの説では、Microsoftは当面、PCゲームの世界に固執するらしい。

“PCは没入的なVRやMRにとってたぶん最適のプラットホームだ。しかしXboxに関しては、ノーだね”、と彼は言っている。

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フィラデルフィア・イーグルスのためにプレイするならホワイトハウスを仮想ツアーするこのアプリ

ホワイトハウスとその周辺を仮想ツアーできるAndroidとiOSのアプリがある。CuseumとWhite House Historical Associationが共同開発したそのアプリで、三つのツアーを体験できる。オーバルオフィスやリンカーンベッドルーム、プレスオフィスなどの各部屋を、MAGAハットをかぶるプレッシャーもなく訪問できる。

White House Historical Associationがメラニア・トランプとクレジットされている声明文をリリースした:

“White House Historical Associationの前向きなお考えにより、より多くのアメリカ人にPeople’s Houseを訪問できる機会を提供されたことを、とても嬉しく思います。White House Historical AssociationとAmazon Web ServicesとCuseumのみなさまに、このアプリの設計におけるクリエイティブで革新的なコラボレーションを感謝いたします。実際に、または仮想的に来訪されるみなさまに、この新しい機能はどなたにも、すばらしい邸宅の多くの歴史的な居室、居住区やイーストウィング、そしてウェストウィングをお見せできます。”

Cuseumは前から、こんなアプリが得意だ。同社ははSFMOMA(サンフランシスコ近代美術館)や, MF Houston, ICA Bostonなど100を超えるパートナーのために、このような仮想ツアーアプリを開発している。

ホワイトハウスのアプリには、新しい機能がある。ユーザーが自撮り写真を撮ると、歴代のどの大統領またはファーストレディーと似ているか、アプリが判断する。比較するのは、White House Collectionにある大統領らの肖像画だ。ただし、手のサイズまでは比べてくれないようだ。

〔訳注: 国家斉唱のとき一部の選手が抗議のため起立しなかったフィラデルフィア・イーグルスは今年のスーパーボウルで優勝したがトランプは彼ら“非国民たち”のホワイトハウス表敬訪問を断った。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

VRとARは何処へ向かう?

「2016年はVR(仮想現実)の年だという多くの宣言を目にしたものだが、それ以降仮想現実に対するまともな言葉は聞かされていない」と、The Economist誌が酷評したのは昨夏のことである。なにしろ2016年はVR関連のハードウェアとソフトウェアの合計販売額の予想が、51億ドルから36億ドルに減少し、実際には18億ドルという厳しいものになったのだ。いや、まあホリディシーズンが一度不調だったからと言って、そんなに悲観しなくても。2017年になればきっと ――

{0}{1/}{/0}おっとこんな記事が:“Shock Stat: In 2017, VR Headset Shipments For Most Top Brands Went DOWN Compared To 2016.” (衝撃の数字:2017年には多くのトップブランドのヘッドセット出荷が2016年に比べて減少した)。VRヘッドセットの出荷数は急速に増加するだろうと、多くの予想がずっと出されていたのに。最近では業界の動向と共に、煽り記事も出されるようになっている。でもそれは…Oculus Goが発表される前の話じゃないかって?まあ…Goが一番売れたのは、最初の数週間で25万台を売ったときのようだが、それでも同じ月の初めに出た同価格帯のNintendo Switchに比べれば、その数はわずかなものだったし、私がこれを書いている時点では、Amazonの“Video Games > Accessories”ベストセラーリストのトップ20からも遠ざかってしまっている。

とはいえ、これらはひどい数字ではない。ソニーのプレイステーションVRは、約300万台も売れたのだ!…つまり、これはPlayStationの所有者のほぼ4%に相当していることになる。しかし、VRとARは、次のささやかなニッチ(Next Little Niche)ではなく、次の目玉(Next Big Thing)になる筈だったのではなかっただろうか?そしてそれは、直線的にではなく、指数関数的に普及すると考えられていたのではなかっただろうか?

もちろんARは、AppleのARKit、GoogleのARCore、FacebookのAR Studioなどのおかげで誰の手にも届くようになっている。だがあなたは (a) Pokémon GOではなく、(b)家具も関係しないような、有名で成功したARスマートフォンアプリの名前をすぐに挙げることができるだろうか!?

もし私が誰かに向けて非難の指を向けているとするならば、それは自分自身に向けているものだ。私は現時点で、VR/ARがもっと進んでいることを期待しすぎていた。私たちはVRでしかプレイすることのできないヒットゲームに出会ったと思ったし、23ヶ月前にリリースされたPokémon GOが、全く新しいAR世界の先触れだと考えた。やがてそれらがお互いに関係を始め重なり始めるだろうと思ったのだ。長期的には、そう思っておけば良いのかもしれない。だが、短期的には ――

私は今週サンタクララで開催されたAugmented World Expoに参加したのだが、そこで私が理解したことは、業界が実質的に消費者向けAR/VR分野からは(少なくとも今は)手を引いたということだ。誰もが現在AR/VRを仕事の場所に持ち込もうとしている。しかし、複雑な情報をハンズフリーのやり方でアクセスする必要がある仕事が、いったいどれ位あるというのだろうか?VR会議で解決できて、ビデオ会議では解決できない問題はいくつあるのだろう?確かに、それは既に存在しており、その技術は本当に素晴らしいかもしれない。しかし、少なくとも今は、それは「次のささやかなニッチ」の話なのだ。

私は本当に目の覚めるようなものを見た。そのことで、私はつつましいQRコードが複合現実(MR)の極致を実現することができることを確信できるようになったのだ:

とはいえこれはとても素晴らしい工夫だ:「混合現実バックパック」は要するに着用可能なQRコードである。予測:これまで厳しい批判の対象だった(機械に対して以外は目立たないように隠されていた)QRコードが、現実世界とARを結ぶ架け橋の事実上の標準となるだろう。

…しかし、2つの世界の架け橋が用意されても、もし誰もがどちらか片方の世界にしか関心を持たないとしたら、その架け橋はどんな役割を果たすことができるだろう。

「でもゲームがある!」と叫ぶかもしれない。「没入型のストーリーテリングがある!」と。まあ確かに。私もそれについても非常に期待しているのだ…結局のところ私は空き時間はずっと小説家として過ごしているのだから。そしてそれは、現在業界内の明るい話題だ 「ロケーションベースVR」すなわち「VRアーケード」(VR体験機器が設置された遊戯施設)の数は増えていて、それは最近のPunchdrunkSleep No Moreや、Meow WolfHouse of Eternal Return、そしてThe Latitudeといった没入型の劇場の増加と歩調を合わせているように思える。

…しかし、私がこれまでに見たVR/MR没入型ストーリーテリングは皆、格好いいのは最長でも15分程で、誇大宣伝とバズワードがまとわりつき、そして基本的に荒削りなストーリー以上のものを伝えることはできていない。「ストーリーテリングではなくて、ストーリーリビング(物語の中を生きる)なんですよ」と、数ヶ月前に行ったイベントで、熱心なIndustrial Light&Magicの担当者が語ってくれた。もちろんそれはよい言い方だ ―― しかし私がこれまでに見たVRによる「ストーリーリビング」は皆、私が10代の頃に見たDungeons & Dragonsの宣伝よりも遥かに洗練されていないものばかりだった。

もちろん、現在新しいテクノロジーの黎明期にいることは承知している。それはまだ高価で、まだハードウェア集約型である。今でも私たちは、最高の使い方と、人間の物理的な場所とのやりとり、そしてストーリーテリングのための全く新しい文法を探している最中なのだ。しかし、OculusがKickstarterで立ち上げられたのはおよそ6年前であり、私はそれ以来とても多くのVR/AR/MRのデモを見てきた。そしてそのたびに、「このテクノロジーにはとても大きな可能性が秘められている」と帰り道に思うのだ。

しかし、次の目玉(Next Big Thing)になるためには、どこかの時点でその「可能性」を現実のものにし始めなければならないのだ。おそらくMagic Leapがそれをやってくれるだろう(いや冗談を言っているのではない。少なくとも半分は)。しかし、もしそうでなければ、がっかりするような真実は、いくら安価な新しいスタンドアロンハードウェアが手に入ろうと、そしてすべての努力がソフトウェアとデザインとストーリーテリングに注がれようと、私は2年前にいた場所から少しもその実現に近付いていると思えないだろうということだ。誰か私が間違っていると言って欲しい。

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(翻訳:sako)

アメリカ農務省に海軍も、3万社が使う日本のVRアプリ作成ツール「InstaVR」が5.2億円を調達

VRコンテンツの制作・配信・分析プラットフォーム「InstaVR」を提供するInstaVR。同社は6月4日、YJキャピタルなど日米のVC複数社を引受先とした第三者割当増資により総額5.2億円を調達したことを明らかにした。

今回のラウンドに参加した投資家陣は以下の通り。

  • YJキャピタル(リード投資家)
  • 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ
  • みずほキャピタル
  • グリーベンチャーズ
  • コロプラネクスト(Colopl VR Fund)
  • The Venture Reality Fund

上記VCより、グリーベンチャーズのジェネラルパートナーである堤達生氏、YJキャピタル取締役副社長の戸祭陽介氏がInstaVRの社外取締役に就任する。

同社では調達した資金をもとに開発体制および事業体制を強化し、人材育成VRプラットフォームを中心にさまざまな事業用途に特化したプラットフォームの開発を進める方針。また機械学習や人工知能の研究開発を推進し、蓄積してきた視聴データの活用にも力を入れていく予定だ。

InstaVRは2015年11月の設立。2016年8月にもグリーベンチャーズとColopl VR Fundから約2億円を調達している。

世界で3万社が利用、海外売上比率が9割

InstaVRはビジネスの現場でVRコンテンツを活用したい事業者向けのプラットフォームだ。プログラミングなど専門知識は不要で、ブラウザ上からVRアプリをスピーディーに作成できる。

さまざまな種類のVR動画、画像フォーマットに対応するVR再生プレイヤーを自社で開発。コンテンツは幅広いVRデバイスへ出力可能で、配信方式もアプリへの埋め込み、クラウドやイントラネットからのダウンロード、ストリーミングなど柔軟性に優れる。

世界最大のサーフィンリーグであるワールド・サーフ・リーグ (WSL)では1名の担当者がInstaVRを活用。2週間でiOS、Android、Daydream、Gear VR、Oculus Riftなどの主要なVRヘッドセットに、自社VRアプリを配信した事例もあるそうだ。

現在までに世界140ヶ国、3万社で導入。トヨタやサンリオ、エルメスを始めとした大企業のほか、少し変わったところではアメリカ合衆国農務省やアメリカ合衆国海軍、スタンフォード大学、イギリス政府、国連なども含まれる。海外での利用が多く、売上の約90%が海外企業によるものだ。

当初は不動産の内見や観光案内などの目的で使われることが多かったそうだが、現在は配信されたコンテンツも約20万本となり、利用用途も広がってきた。特にInstaVR代表取締役の芳賀洋行氏も意外だったというのが「90%がマーケットプレイスを利用せず、社内配布している」こと。

中でも直近では人材育成や人材採用用途での利用が増えてきているという。

人材育成に特化したプラットフォームの提供を開始

そのような背景も受けて、InstaVRでは人材育成VRプラットフォーム「InstaVRセントラル」の提供を始めた。これは簡単にいうと「OJTや職場体験をVR化」するようなイメージだ。

最大の特徴は専門知識や、実際に撮影した時間の10倍〜20倍の時間が必要となる「VR撮影後の現像工程」を不要にしたこと。InstaVRの独自再生プレイヤーを機能拡張することによって、ユーザーが360度カメラで撮影したデータをアップロードしさえすれば、自動でVRコンテンツが生成されるようになった。

「(以前から提供していたInstaVR本体でも)プログラミングスキルは不要で、ドラッグアンドドロップなどで直感的に作れるようにしていた。そのため十分簡単だとは思っていたが、それでもITになじみのない人からすれば難しいと言われたこともある。その作業を自動化し、ボタンをカチカチ押すだけでVRコンテンツができるようになった」(芳賀氏)

僕も実際にデモを見せてもらったのだけど、承認ボタンを押すような感覚で、順を追ってボタンをただ押すだけ。UIもエディタという感じはなく、かなりシンプル。Googleのトップページのようなイメージに近く、中央にボタンのみが設置されているような設計だった。

従来コストがかかっていた編集作業の自動化に加えて、InstaVRでは導入企業の担当者が自身で撮影できるように機材のマニュアルや講習を提供。専門のスタッフを派遣せずに済むようなフローを構築している。

これらによって「専門の制作会社に頼むと数百万円かかっていたようなVRコンテンツを、月額30万円から定額で作れるようになる」(芳賀氏)という

とはいえ、そもそもVRコンテンツにする必要性があるのか疑問に思う読者もいるはずだ。

芳賀氏自身も当初はEラーニングで十分ではないかと思っていたそうだが「VRは没入感がすごく、自身が現場を体験しているような感覚になれるのが大きい。業務が完全にマニュアル化されていない複雑な業務や、実地訓練を必要とするものに向いている。熟練従業員の技術を実際に体験するといった使い方もできる」という。

InstaVRセントラルは2017年より一部の企業向けに先行して導入済み。アメリカ合衆国農務省では、食肉加工工場のライン作業の訓練をすべてVR化したところ、訓練時間が1/3に短縮。年間研修費用が1/5に削減されるほか、離職率も10%以上低下できたそうだ。

すでに国内においても大手企業から中小ベンチャーまで導入実績があるが、今後は調達した資金も活用して組織体制を強化し、InstaVRセントラルを本格的に広げる計画。

またInstaVRではこれまで約1億再生分の視線データ、視野内の物体を人口知能によって認識した100億個超のタグデータを蓄積している。これらのデータを事業に活用するべく、人工知能の研究開発にも力を入れる方針だ。

AR/VRヘッドセットのマスマーケットの到来に備えてQualcommが低コストな専用チップセットを発表

今やスマートフォン用に最適化されたチップセットの上で、大量のプロセスが動いている。かつては、パソコンがあれば携帯電話にそれほど強力な処理能力は要らない、と思われていたのに。さらに最近の5年間では、ヘッドセットのパワーアップ競争が日に日に激しくなってきた。そして今日では、スマートフォンやヘッドセットなどのハードウェアに盛り込める処理能力はほぼ限界に達し、これからはむしろ、コストの低減と製品の特徴や仕様が勝敗を決する、とまで言われるようになってきた。

その新しい時代の先駆けとして今日(米国時間5/29)Qualcommが、スタンドアローンのヘッドセットのための専用チップセットを発表した。そのSnapdragon XR1は、同社としては初めてのARとVR専用のチップセットで、同社はその新しい機種ジャンルを“XR”と総称している。

XR1を搭載したデバイスの上では、たとえば、4K/30fpsのコンテンツをストリーミングできる。発表のステージには、 HTC Vive, Vuzix, Meta, そしてPicoなど、主なヘッドセットメーカーが招待された(上図)。今日実際に発売されるヘッドセットは多くないが、Qualcommは近年中に総出荷台数が1億台を超える、と想定している。

Qualcommの最新機でVR向けの参照設計でもあるSnapdragon 845との詳しい比較は発表されなかったが、しかしおそらくXR1は不要不急の機能をすべて省き、ハードウェアのメーカーが必要とする機能と性能だけを提供するローコスト機だ。

Snapdragon 845は、ヘッドセット上のコンテンツをハイエンドのPCが駆動する高性能なARやVR並にすることをねらっているが、XR1は店頭で大量に売られるローコストデバイスを目指している。XR1は845のように6DoFの自由度をサポートしないが、835のVRプラットホームのような、しっかりした動きをサポートするだろう。

Qualcomm XR設計チームのトップHiren Bhindeにメールでインタビューしたところによると、電力消費と温度上昇に関する同じベンチマークで比較すると、XRが扱えるワークロードは845より小さい。ただし、845がサポートするようなハイエンドのグラフィクスやメモリサイズを必要としないARの顧客もいるから、XR1は彼らにはぴったりだ、という。

今日のスタンドアローンのVRヘッドセットと比較すると、現在のPCをつながない消費者向けARヘッドセットは要求される計算処理能力が、それほど高くなくて、VRがねらっているような高忠実度な世界の再現を目指していない。そんなヘッドセットは簡単なヘッドアップディスプレイとして利用されることが多く、それに音声アシスタントがつく。Qualcomm XR1のパートナーVuzixがデモしたそんなヘッドアップディスプレイは〔その現場での利用目的が〕、Magic LeapやMicrosoftの“混成現実”が追っている、高度な、本物のように自然な環境マッピングを必要としない。

低コストでマスマーケット向けのヘッドセットに適したチップセットを発表したQualcommは、今がその発表の好機と信じており、XR1はAR/VR分野のメーカーたちに、より売りやすいハードウェアを作る能力を与える、と考えている。

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GoogleがXiaomiとパートナーしてARCoreの技術を中国に持ち込む、水面下の中国市場拡大努力を継続中

Googleが、中国に戻る努力を強化している。今年初めには、同社の拡張現実/仮想現実技術ARCoreを中国のスマートフォンに実装する計画を発表したが、今週はその最初のパートナーがXiaomiに決まった。

最初その技術はXiaomiのMix 2Sに実装され、アプリはXiaomi App Storeから提供されるが、しかしGoogleは長期的には中国本土のパートナーをもっと増やしたいと考えている〔下図のgoo.gl/f6pyCnリンク〕。Googleの以前の発表によると、その方向ですでに決まっているパートナーはHuaweiとSamsungだ。

Googleのメインのサービスは中国でまだブロックされているが、ARCoreのアプリはデバイス上で完全にローカルで動くから、中国政府の検閲の手は届かない。

問題は、ソフトウェア自身よりもその配布だ。中国でGoogle Play Storeの利用は制限されており、サードパーティのAndroidアプリストアは、メジャーなものだけでも各地に計10以上ある。しかしXiaomiやHuaweiなどとパートナーすれば、彼らのアプリストアが使えるほか、アプリをデバイスにプレロードするやり方もある。そしてGoogleは消費者に到達できる。

ARCoreアプリの画面

ARCoreの中国でのやり方は秘かに潜行するタイプだが、それもまた、中国でのプレゼンスを拡大しようとするGoogleの継続的努力の一環だ。それはメディアが騒ぐようなGoogle Play Storeの蘇生ではなく、ほかの方面での努力の積み上げだ。

最近同社はTencentとパートナーして、中国のスタートアップたちに投資していくことになった。それらは、バイオのXtalPi、ライブストリーミングのChushouなどだ。そのほか、北京におけるAIラボも発表した。さらにGoogleは台湾におけるプレゼンスも大きく、とくに目立つのがHTCの部分的買収だ。そして‘ハードウェアのシリコンバレー’と呼ばれる深圳にもオフィスを開いた。

そして9月に上海では、同社としてはアジア初のデモデーを主催する。参加受付は、先週からやっている。

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VR空間でAI講師が英会話を教える「Smart Tutor」開発元がDBJキャピタルとD4Vから150万ドルを資金調達

AI×VR技術を応用した英会話学習ツール「Smart Tutor」を開発するPlusOneは、5月16日にDBJキャピタルD4Vを引受先とする総額150万ドル(約1億6500万円)の第三者割当増資を実施していたことを明らかにした。

PlusOneは2016年8月、サンフランシスコを拠点に創業した。2017年3月にHTCのアクセラレータプログラム「Vive X」でエンジェルラウンドの資金調達を受けており、今回の調達は同社にとってシードラウンドにあたる。

PlusOneが英会話スクール向けに提供するSmart Tutorは、VR空間上で生徒がレッスンを受けられる英会話学習ツールだ。AIを搭載したヒューマン・ホログラム「Holosapiens」が生徒のスピーチを、発音・流暢さ・スピーチペースなど7つの評価指標でリアルタイム分析。スピーチ内容を客観的にスコア化することができる。

また、Holosapiensが発音などの基本的な指導や練習相手を不足する語学講師に代わって行うことで、講師の業務負担が軽減され、限られた時間でより多くの生徒を指導することができるという。

PlusOneでは、VR空間でのシナリオを作成するツール「WebTool」も提供。英会話スクールは自社コンテンツをVR内のコンテンツに手軽に変換でき、生徒へ割り当てることが可能だ。また、先生がWebTool上から生徒の練習状況や評価指標のトラッキングを行い、指導に生かすこともできる。

PlusOne CEOのJon Su氏は、ディズニー米国本社、日本支社、中国支社で6年間アートディレクターを務め、ディズニー ツムツムなどの人気アプリ作成にも携わった人物。自身の体験から「仕事の傍ら語学スクールに通うのはお金も時間もかかる。もっと効果的で、時間・空間に縛られない学習方法が必要だと強く感じた」と述べ、将来的に「誰もが手軽な値段で、時間・場所など物理的な制限に縛られることなく、良質な語学教育を受けられる世の中にしたい」と語っている。

また、プラスワンジャパン代表の栗原聡氏は英会話スクールの社長を務めてきた経験から、「既存の英会話教育は労働集約型で、良い先生を獲得するための採用コストや給料が経営を圧迫し、生徒の負担となる」と英会話スクールの経営課題について語る。「Smart Tutorは、AI技術により、先生のスキルに頼らない客観的評価を提供する。英会話教育を劇的に変えるソリューションだと感じた」(栗原氏)

Smart Tutorの料金は、組織用に1アカウント、講師用に5アカウント、生徒用に30アカウントが含まれているマスターライセンスで月額30万円から。

PlusOneでは今後、エンドユーザーへのVR浸透率やハードウェアの改良をみて、エンドユーザーが自宅からコンテンツにアクセスできるよう、Smart Tutorのプラットフォーム化も視野に入れていくとしている。

GoogleのVR180対応のカメラがLenovoから登場

Lenovoは、ヘッドセットのMirage Solo発売に合わせて、Googleの180度テクノロジーに対応した最初のカメラを発表した。Lenovo Mirage Cameraは、YouTubeクリエイター向きを強く意識した製品で、13メガピクセルの魚眼レンズ2基が両目の位置に配置され、VRビューイングに最適な高画質の3Dビジョンを提供する。299ドルというか価格は、試してみようというクリエイターにとって高すぎることはないが、そのニッチの大きさが果たしてどのくらいなのかは考えなくてはならない。今日から出荷される。

カメラはYouTubeのVR180プラットフォームをベースに作られていて、クリエイターが少しでも簡単にVRのライブ撮影できることを目的としている。実際360度カメラは多くの注目を集めてきたが、クリエイターはこれで何ができるのかわかっていなかった。Googleの割り切りは、撮影対象を360度の半分にしてメディアとカメラを簡易化することで、そこまでコストをかけずに鮮明な3D 4Kビデオを提供することだった。

カメラの作りは非常にしっかりしている。はっきりした高級感はないものの、十分堅牢で何よりも携帯性が非常に高い。多くの360度カメラと同じくバッテリーの持ちは2時間とさほど長くないが、交換可能で1台スペアがついてくるのがうれしい。VR180とは180度を意味している。これは、特にカメラの上端に指がかかっていると180度の半球に映り込んでしまうのでよくわかる。

GoogleのVR180アプリを使うと、写真をプレビューしたり、カメラからYouTubeにライブストリームすることができる。

これは成功のための正しい答なのかもしれないが、問題は商品の登場が遅すぎたのではないかということだ。山ほどのYouTubeクリエイターが、VRビデオを試そうとしてフラストレーションを募らせていることは間違いない。ヘッドセットの数は増えているものの、VR視聴者の数はチャンネルを維持できるのにはいたっていない。「マジックウィンドウ」モードを使うとヘッドセットがなくてもモバイルやデスクトップでVR180ビデオを見ることはできるが、当然のことながら最大の売り物である3D機能は失われる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

GoogleがモバイルVRの計算負荷を減らすツールSeuratをオープンソース化

今日(米国時間5/4)はGoogleが2017年のI/Oで行った、VRに関する多くの約束を果たす日だ。さきほど同社は、モバイルの高忠実度なVRから計算の複雑さを減らし、パフォーマンスを大幅に向上するツール、Seuratをオープンソースにする、と発表した。

このローンチは、Mirage Soloのリリースと平行している。こちらは同社のVRプラットホームDaydreamの初めてのヘッドセットで、それはGoogleの位置追跡システムWorldSenseを使っている。このヘッドセットはスタンドアローンで、〔クラウドなどではなく〕モバイルのチップセットで動くから、ゲーム用PCに接続されるヘッドセットよりもリソースの制約が厳しい。

Seuratは、ポリゴン(多角形)の数を減らすことをねらったソフトウェアツールだ。Seuratが基本的にやるのは、VRのユーザーが、さまざまな動きの中で持つすべての視点から、実際には見れない/行けない領域を取り除くことだ〔前面に物がある、など〕。たとえばSeuratは、そこに恒久的にあるオブジェクトを取り除く。仮想現実の中で見えない部分は、実際に存在しないと見なしてもよい。だからそこは、ポリゴンの計算をしない。

上のBlade Runnerの例では、ひとつのシーンに4660万個の三角形があるが、Seuratはそれらを30万7000に減らした。高性能なハードウェアから描画能力に制約のあるモバイルのVRハードウェアへ移植するときは、このような省略能力がデベロッパーにとって助かる。

このツールのソースコードとドキュメンテーションは、GitHub上にある。

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Appleが8+8=16Kの超精細VRヘッドセットを開発中か

Appleはかなり前から、拡張現実グラスを開発していると噂されていたが、今日はある記事が、同社は仮想現実でもGoogleやMicrosoftやFacebookと競合しようとしている、と示唆している。

そのCNETの記事によると、AppleはARとVR両用のワイヤレスヘッドセットを2020年に出すつもりらしい。その記事は、T288というプロジェクトのコードネームまで挙げている。そしてCNETの情報筋によると、そのヘッドセットはディスプレイが片目8Kで、専用の“ボックス”にワイヤレスで接続する。

VrvanaのTotemヘッドセット

市場ではこれまで、Appleはユーザーと現実世界との間にライフスタイルにフォーカスしたARを置くことに関心があるので、エンターテインメントにフォーカスしたVRは“スキップする”、という想定が一般的だった。

ぼくも、この記事のAR/VR両用説には懐疑的だ。むしろそこで“AR”と呼ばれているものは、MicrosoftがそのVRヘッドセットで実装した“混成現実”(mixed reality)に近いものではないか。それは、ヘッドセットの中で体験するVRの世界を、まわりの現実の情報でコントロールしたり、より豊かにする技術だ。Appleが昨年買収したVrvanaは、まさにそれをやろうとしていた。Appleが本当にARとVRをその解像度で合体させようとしたら、ARとは思えない相当でっかいデザインになってしまうだろう。

片目で8Kの画像は、microLEDだろう。それは現状ではものすごく高価なものになり、電力消費もすごいだろう。今の8Kのディスプレイを二台並べてテストすることを想像すると、複数のハイエンドのGPUをつないで動かすことになる。記事によれば、これはワイヤレスで、Appleが設計したチップが動く外部システムに接続する。二本の8Kフィードをワイヤレスで送るとなると、それもまたたいへんなチャレンジだが、アイトラッキング(eye-tracking)によるレンダリングだから、そのストリーミングの負荷はそれほど大きくはないかもしれない。

Magic Leapのライトウェア(lightwear)

今から2年先とは遠い話だが、Appleはディスプレイのコストを下げる技術に自信があるのだろう。Bloombergの最近の記事では、Appleは、ある特定タイプのディスプレイの製造工場をひそかに作り、その重要なユースケースがヘッドマウントディスプレイだ、という。レンズがあって、しかも人間の目にとても近いから、画素の高密度が重要な要素になる。

その記事でも、このディスプレイの完成を2020年としている。もちろん、それが変わることもありえるが。

VRは着実に改良が進んでいるようだ。初期のブームの原動力だった誇大な扱いは萎えてしまったが、実力に余裕のある大手のテクノロジー企業は、今もVRをひとつの産業に育てようとしている。FacebookとOculusの取り組みは、ある面ではとても洗練されている(限界はまだとても多いけど)。そしてAppleは、バスに乗り遅れたときの大損害を、今から意識しているようだ。

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Web上にロボットたちのソーシャルなVRを作るMozillaのHubsはWebVRの実験作

Web上のソーシャルなネットワークは厳しくて怖いものでもあるけど、フレンドリーなロボットとチャットできたら、それがもっと気楽になるかもしれない。

今日(米国時間4/26)、WebブラウザーFirefoxを作っているMozillaが、Hubsというサービスのプレビューを公開した。それは、すごくシンプルでソーシャルなWebVR体験で、ユーザーが二度のクリックでそこに入ると、URLを共有してほかの人たちと出会える。それは、モバイルからでも、デスクトップからでも、あるいはVRの中からでもよい。

それは架空世界Second Lifeではないし、ましてやソーシャルVRのFacebook Spacesでもない。もっとローキーだ。あなたは控えめで慎ましやかなロボットになり、ほかの人たちもロボットになって、互いにお友だちになる。

こういうユーモラスで子どもっぽいVRのソーシャルアプリは、ほかにもある。PS1(プレイステーション1)のようなグラフィクスと、参加型ゲームClub Penguinのような設定が、そんな感じを与える。でも、ここでねらっているのは、高品質で細かいグラフィクスや巧妙なインタフェイスではなく、みんなが一緒にソーシャルな環境に入って互いに結びつく、それだけの単純さだ。

Mozillaがここで取り組んでいる問題はほかの者たちと同じだが、MozillaはHubsをWebVRだけで作ることによって、最初から、クロスプラットホームな互換性という重いアプローチで行こうとしている。MozillaによるとHubsは、今あるメジャーなVRヘッドセットのすべてをサポートしている。WebをVRサービスのバックボーンにすることは一見安易だが、でも、そのほかのソーシャルVR体験の多くは、アプリストアとかダウンロードというものを必要とする。URLを使ってソーシャルな環境に飛び込むのは、なぜかユニークだ。

VRの実現能力としてはWebVRはまだまだだが、Mozillaは実験を継続してデベロッパーたちを惹きつけようとしている。Hubsもまだ現状はプレビューだが、次は新しいアバターシステムを導入し、その中に独自な空間を作れるためのツールを提供する予定だ。

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3Dアバター向け汎用規格「VRM」発表。「人格の許諾情報」や一人称視点に対応

eng-logo-2015ドワンゴが3Dアバター向けの汎用ファイルフォーマットVRMをオープンソースで公開しました。

VRMはいわゆる「VTuber」の配信やVRゲーム、チャットなどで使うアバターに特化した、プラットフォーム非依存のファイル形式。

3Dモデルとしてのテクスチャやボーンといった情報に加えて、視線設定など一人称で操作するアバターに必要な情報を扱えるようにし、環境により異なるスケールや座標系などを統一することで、アバターを作りやすく使いやすく、お気に入りのアバターを配信でもゲームでもプラットフォームを跨いで使えるようにすることを目指します。

人が操作して人格をまとわせるアバターの特性を考慮して、このアバターを演じて良いか(人格を与えることの許諾)、このアバターで暴力表現をしても良いか、性的表現は良いか、などの「人格に関する使用許諾」までをファイルに埋め込むことができるのも大きな特徴です。

VRChat や VTuber (バーチャルユーチューバー転じてVR配信者総称)界隈が恐ろしい勢いで進化し続け、「自分用のVRアバターを持つ」ことがSNSアカウントのアイコンを設定する程度のことに近づく気配すらある昨今ですが、アバター用のデータ形式はこれといった統一規格がなく、各アプリやサービスごとに汎用の3Dモデル形式を読み込んだのち、環境によって異なる機能や作法に応じて調整する必要があります。

ドワンゴが提案するVRMはこうした状況に対して、アバター特化の簡便なファイル形式をオープンソースで公開することで、プラットフォームを跨いだアバター利用や作成、配布を助けることを目指した規格です。

具体的には、OpenGL規格を策定するKhronosグループによる汎用3DフォーマットglTF2.0に、アバター用途に特化した独自拡張と、扱いやすくするための制約を加えたフォーマットになります。

主な特徴は視線や表情など、人が一人称操作するアバターに特化した情報に対応すること。また1ファイルにアバターのサムネイル画像、「アバターの人格に関する許諾」メタデータまでを含み扱いが容易なこと。

視線情報は、VRヘッドセットなどを使ってアバターをまとう際、どこが目なのか(どこから見えるのか)、一人称視点で視界を妨げないようどの部分を消すのか、また外から見た際の目線の動かし方など。

「アバターの人格に関する許諾」は、表示だけでなくそのアバターを演じることを許すのか拒否するのか、許す範囲を記述できるユニークなメタデータ。被って演じても良いけれど暴力表現はダメ、あるいは性的表現はダメ、というフラグもあります。

再配布や改変などについては、著者名表記や改変時の同一条件配布などを定めたCreative Commonsや、そのほかのライセンス形式を設定できます。

ドワンゴではVRMのドキュメンテーションと、Unity標準実装をMITライセンスで配付中。

先日開始したVRライブコミュニケーションサービス「バーチャルキャスト」のアバターでVRM形式を採用するほか、立体投稿共有サービス「ニコニ立体」でVRM形式の投稿を受け付けています。

「フォーマットが乱立してるから扱いやすいプラットフォーム非依存の新形式を考えました!」と宣言してマイナー方言を一つ増やしたあげく真っ先に消える例もままありますが、VRアバターに特化してオープン採用を目指すのは非常にユニークな動き。VRアバターによる表現やコミュニケーションの分野が猛烈な勢いで独自の進化を遂げつつある日本から、今そこにある不便を解消しつつ、将来と世界に向けたオープンフォーマットとして提案されるのは実に興味深いところです。

髪型を変えたり服を選ぶ感覚でアバターを持ち、コミュニケーションでもゲームでも同じ「自分」を維持できる将来像は確かに魅力ですが、成否は今後この動きに追従してVRMに対応するサービスやアプリケーションが増えるかどうかにかかってきます。多種多様な商用VRサービスが普及する将来に向けて、現在の閉じたゲーム世界ですら巨大市場になっている「アバターアイテム」の扱いがどうなってゆくかも注目です。

Engadget 日本版からの転載。

GoogleとCyArkが協力して世界中の著名な史蹟や遺跡を3Dモデルで保存、その中を歩き回れる

インディ・ジョーンズの“これは博物館のものだ!”、という叫びがデジタルの時代へタイムスリップしたら、遺跡をクラウドに保存しようとするGoogleのプロジェクトになるだろう。

Googleの非営利事業部門Arts and Cultureが、オークランドの同じく非営利のCyArkとパートナーして、何千もの写真とデータで史蹟の細密な三次元モデルを作る。現場のスキャンには、複数のカメラのセットアップとドローンを用い、写真測量製図法とライダーの技術を利用する。CyArkは前からそういうスキャンをやっていたが、これまでは一般公開されなかった。しかし今度はGoogleの協力により、それらへのアクセスを公開するとともに、さらに新たな史蹟のスキャンも行うことになった。

CyArkの本来のミッションは、史蹟の保護だ。同社によると、これらの歴史的構造物は天災と人災の両方にさらされているので、同社のデータを利用する今度の企画では、それらの正確な視覚的再現が、次世代にとっても有益だ、という。

GoogleのArt and Cultureチームはこれまでにも、世界中の優れた美術作品の高解像度な保存作業を大量にやってきた。過去数年で大きな3Dモデルを捕捉するためのさまざまな方法が発達してきたので。Googleが次の段階として物理的な構造物の保存に目を向けるのも理にかなっている。こういう3Dのデジタル化技術は、初期段階の消費者向けVRから始まっているので、それらを見るための高品質なプラットホームはすでにある。それらは今後、もっともっと良くなるだろう。360度写真と違うのは、見る人が実際に遺跡のまわりを歩いたり、中を覗いたり、何かのうしろにあるものを同じく3Dで見たりできることだ。

これは相当エキサイティングだし、文化を原寸大で保存してその中を歩けることは、歴史を肌で感じる感覚を人に与え、またそれは、現代のテクノロジーの最高の到達点でもある。Googleが非営利でも活動していることは大いに素晴らしいが、今後は参加し助力するリソースがもっともっと増えて、これらの努力の対象と結果を世界中各地で広げ、世界のみんなが体験できるようになると良いね。

今は、18か国25の史蹟をこのプロジェクトで見ることができる。これらのモデルと環境は、デスクトップモードやPC、モバイルのVRヘッドセットなどで見ることができる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

月額3980円から使えるVR制作システム「スペースリー」が1億円を調達、VR×AIの研究開発ラボも開設

360度VRコンテンツの制作編集サービス「スペースリー」を運営するスペースリーは4月9日、Draper Nexus 、Archetype VenturesDBJキャピタル、事業会社を引受先とする第三者割当増資により、総額約1億円を調達したことを明らかにした。

スペースリーが手がけているのは、VRコンテンツの制作編集をシンプルにするクラウドサービスだ。ユーザーは市販の360°カメラで撮影した画像をクラウド上にアップロード。キャプションの追加などちょっとした編集を加えるだけで、気軽にVRコンテンツを制作できる。

特徴はブラウザベースに特化していて、作るのも見るのもデバイスを問わないこと。PCやタブレット、スマホから同じように制作・閲覧することができ、サイトに埋め込んだりURLを共有したりと使い勝手がいいのがウリだ。

ビジネスモデルは月額課金制のいわゆるSaaS型。保存できる画像の上限数や機能などに応じて3つのプラン(無料、3980円のBASICプラン、12980円のPROプラン)がある。スペースリー代表取締役社長の森田博和氏によるとPROプランの利用者が多いそうだ。

2016年11月のリリース以降、不動産業界を中心に650以上の事業者が活用。ユーザーの多くは「問い合わ数や成約率の向上」や「業務効率化」の目的でスペースリーを導入している。

「不動産賃貸の場合では(サイト上にコンテンツを埋め込んでおくことで)オンラインからの問い合わせ率が2倍になったという事例や、成約率が4割から6割に上がった事例もでてきている。また内見が減ることで業務効率化に繋がるため、それを見込んで導入に至るケースも多い」(森田氏)

主な利用シーンはWebサイトに埋め込むほか、オフラインでの接客時など。スペースリーでは不動産内見などの営業や、イベントでのプロモーション時に使える小型のVRグラス「カセット」も提供している。

蓄積した空間データを解析して、デジタルアセットに

これまでスペースリーでは不動産物件管理の基幹システムや、ハウスメーカーなどに利用されている3D CADシステムとの連携を推進。合わせて東京都防災事業への採択、旅行業界への導入など、不動産以外への展開も進めてきた。

森田氏によると、この「他システムとの連携」がユーザーの使い勝手にも大きく影響するらしく、今後の強化ポイントのひとつだという。

「ユーザーの反応も含めて実感したのが『業務上でVRが独立して使われるケースは少ない』ということ。あくまで既存の業務の一部分や、成約にいたるまでのひとつの導線として使われていることがほとんどだ。それを踏まえると、普段使っているシステムと連携していた方が使い勝手がいい。ここをどれだけ進められるかが事業上のポイントになる」(森田氏)

不動産の場合であれば、上述した物件管理の基幹システムや3D CADシステムとの連携がまさにその一例だ。API連携の形で、すでに顧客が使っているサービスとシームレスに繋がる世界観を目指していくという。

合わせてスペースリーでは蓄積されてきた「データの活用」にも取り組む。資金調達を機にデータ分析や画像解析など、VR分野におけるAIの実用化を推進する施設としてSpacely Lab(スペースリーラボ)を設立した。

「約1年半ほどサービスを提供してきた中で、かなりのデータが貯まってきた。特に重要なのがコンテンツを閲覧しているユーザーの行動データだ。これを解析することで『よく見られているコンテンツの改善案を提示』したり、『適切なタイミングでメッセージをレコメンド』したりといった、効果的なアクションを提案できるようになる」(森田氏)

もともと森田氏は航空宇宙工学を学んだ後、経済産業省に入省。アメリカでMBAを取得して起業したというユニークな経歴の持ち主。現代アートのオンラインレンタルサービス「clubFm」に次いで立ち上げたのが、現在の主力サービスであるスペースリーだ(旧 3D Stylee)。

発想の原点にあるのは「空間をアーカイブすることで、それ自体がデジタルアセットになりえる」ということ。今後は蓄積された空間データを活かしながら「より多くの利用事業者が効果を実感できる360度VRのサービス」を目指していく。

スペースリーのメンバーと投資家陣。写真中央が代表取締役の森田博和氏

MozillaがFirefoxのVR/AR専用バージョンのデモを公開、Web上にまったく新しいメディアが出現か?

インターネットの次の挑戦課題は混成現実(mixed reality)だ、とMozillaは予想している。そこで同社は今日、ヘッドセット専用のブラウザー“Firefox Reality”を披露した。Mozillaはこれまで、A-FrameとかWebVR/WebARといったスタンダードを作ることによってこの動きにとても重要な貢献をしているから、それもとくに意外ではない。

Mozillaがこの、クロスプラットホームでオープンソースなプロジェクトに注力していることは、これまでそれぞれ独自の方法で従来的なWebのコンテンツにアクセスしていたヘッドセットメーカーたちにとって歓迎すべき変化のはずだ。

Firefox Realityはまだ主流的メディアに採用されるほどの完成度ではないが、チームはとりあえず短いデモを公開した(上のビデオ)。

このデモはブラウザー上の仮想現実としてそれほどの説得力はないと思うけど、VRをWebで体験することに伴う大きな問題が反映されている。Webという2Dの世界に、なぜVRを持ち込むのか? わざわざヘッドセットのユーザーのためにコンテンツを3D化することに、どれだけの投資価値があるのか?

結局のところこのようなブラウザーは、本誌TechCrunchのような既存のサイトがそのコンテンツを仮想化しておもしろくするためにあるのではなくて、Webの上にまったく新しいユーザー体験を作りだすためにあるのだ。やや長めの短期としては、それはゲームだろう。しかしFirefoxのブログ記事は分野を特定せず、どこから始めてもいい、と言っている。“これは、エキサイティングな新しいプラットホームでまったく新しい体験を提供していく、私たちの長期的なプランの第一歩だ”、とその記事は言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa