“VR会議”で遠隔でもリッチな対話体験を実現、SynamonがKDDIのファンドらから2.4億円を調達

遠隔会議などの用途で活用できるビジネス向けのVRコラボレーションサービス「NEUTRANS BIZ」を手がけるSynamonは3月26日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資と金融機関からの融資により、総額で約2億4000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回同社に出資したのはKDDI Open Innovation Fund、三井不動産のCVCファンドである31VENTURES Global Innovation Fund、三井住友海上キャピタル、SMBCベンチャーキャピタルおよび個人投資家ら。Synamonにとってはジェネシア・ベンチャーズなどから5000万円を調達した2017年11月以来の外部調達となる。

熱量や空気感が伝わるVR会議

前回も紹介した通り、SynamonはXR(VR/AR/MR)領域におけるプロダクトの研究開発をしているスタートアップだ。

同社ではVR空間内で最適なユーザー体験を実現するべく、マルチデバイス対応や複数人の同時接続機能などを搭載したベースシステム「NEUTRANS」を開発。これを軸にNEUTRANS BIZやVR関連の受託事業を展開している。

4月に正式ローンチを予定しているNEUTRANS BIZは複数人がVR空間でコラボレーションできるサービス。昨年5月から運用してきたクローズドベータ版に管理画面の追加やシステム面の強化、料金体系の変更など大幅なアップデートを加え、改めて正式版としてスタートする形だ。

Synamon代表取締役社長の武樋恒氏によると、今の所はブレストなども含めて「会議」での利用が多いのだそう。コンシューマー向けのサービスとは違い、ビジネス向けに特化したサービスとしてユーザー体験に磨きをかけてきたという。

これは僕もそうだったのだけど、“VR会議”と聞いて「別にテレビ会議(ビデオ会議)で十分なのでは?何が違うの?」と思う人も多いはずだ。VRの場合はそもそも専用端末を準備する必要があり、PCさえあればすぐに始められるビデオ会議に比べて最初のハードルも高い。

ただ、武樋氏によると「テレビ会議をやっている人ほど、VR会議にも興味を抱く」ようだ。

「顔の動きや身振り手振りを交えてコミュニケーションをすることで、熱量やその場の空気感を感じやすいというのは1つの特徴。3DCGのビジュアルデータなどを用いてインタラクティブな対話ができるのはもちろん、『空中にペンで絵を書く』といったように現実を超えたVRならではの体験もできる」(武樋氏)

今回実際に試させてもらったのだけど、確かにビデオ会議とは違うメリットがあるように感じた。特に複数人で会議をする場合、武樋氏が話していたように身振りや手振りに加え、相手の顔や体の向きがわかるのは大きい。

ビデオ会議ではリアルな表情がわかる反面、複数人だと誰が誰の方を向いて話しているのかが掴みづらい。その点、NEUTRANS BIZの場合はアバター越しではあるもののお互いの体の向きがわかるから「今、この人は自分の方を向いて話してくれている」ことが良くわかった。

もちろん“VR会議室”の中に3Dデータを持ち込んだり、仮想的なホワイトボードや空間にペンでアイデアを書きながらディスカッションできるのもVRならではの特徴。一方で相手の表情をしっかりと見たい場合などはビデオチャットの方が向いているので、この辺りは「VR会議 VS ビデオ会議」のような構図ではなく、両者が共存していくことになりそうだ。

武樋氏自身もこれまでNEUTRANS BIZを展開する中で、VRが刺さる場面と刺さらない場面がわかってきたそう。「ただ単に情報を伝えるだけの会議のような場面だと、VRは手間やコストがかかりすぎてマッチしない」一方で、実践型の研修やブレストスタイルの会議、グループインタビューなどとは相性がいいという。

「テレビ会議とリアルな会議の間に新しいレイヤーが加わるようなイメージ。どれが1番優れているかという話ではなく、VRでしかできないコミュニケーションを実現することで、新しい選択肢を提供していきたい」(武樋氏)

NEUTRANS BIZはOculus、VIVE、Windows MRに対応していて、同時接続人数は1部屋10人まで。月額課金モデルで提供する計画で、料金はライセンス数やサポートのレベルによっても異なる。

KDDIと協業、他の投資家とも事業面で連携

写真右からSynamon代表取締役社長の武樋恒氏、KDDI ∞ Labo長の中馬和彦氏

武樋氏によると今回出資を受けた投資家陣とは事業面での連携も見据えているそう。KDDIとは
NEUTRANS BIZの拡販を目指した顧客開拓サポート、および5G×VRの先進事例創出に向けての協業を実施。三井不動産とは同社が運営するコワーキングスペースでNEUTRANS BIZを導入する予定だ。

特にKDDIはアクセラレータープログラム「KDDI∞Labo」を通じてSynamonのビジネスを支援してきた。KDDI∞Labo長を務める中馬和彦氏によると以前からこの領域には注目していたそうで、非公開のものも含めると今年度だけでXR領域には5社以上投資しているという。

「営業面のサポートや今後どのようにマーケットを広げるかなども一緒にディスカッションする中で、結果としてKDDIのラインナップにSynamonのコラボレーションツールを加え、自社でも売っていくことになった。それならば資本も入れてより密に連携できればと出資に至った」(中馬氏)

実際にKDDIのチームではNEUTRANS BIZを社内で活用しているが「ブレストにおいては、オブジェクトやアバターを活用するという“非日常感”がプラスに働くことを実感した」という。アバターを介すことでシャイなメンバーでも話しやすく、役職や年齢関係なく議論が円滑に進められたそうだ。

なおKDDIではコンシューマー向けのVRプロダクトにも出資しているが「(VR体験が)B2B2Cで広がっていくことを考えると、企業側の一定のパーセンテージを抑えることでコンシューマー側のパイも取れる」という考えもあるという。

今後SynamonではKDDIとも連携を取りながらNEUTRANS BIZの提供を加速させる計画。まずはビジネス領域におけるVR技術活用の一般化を目指すとともに、今年春に発売予定のOculus Questを始めとする各端末への最適化も進めていく。

また中長期的にはツールキットやSDKの提供を通じて、「NEUTRANS BIZ for ◯◯」のように特定の用途や領域に特化したプロダクトをパートナーが作れる仕組みを考えているようだ。

「あくまで『XRという技術を使って、どのように世の中に新しい価値を提供できるか』ということに焦点を当てて、今後も技術開発に注力していく。NEUTRANS BIZはそのひとつの形であり、自分たちは基盤を作る役割。その基盤を基に顧客がより自分たちにあったツールを作れるような展開も考えている」(武樋氏)

Oculus Rift Sが399ドルで今春発売、外部センサーいらずの新型VRヘッドセット

Oculusは新形VRヘッドセット「Rift S」を発表した。以前にも報じられていたように、全面刷新というよりは順当なアップデートモデルとなっている。

まず前モデルからの最大の変更点としては、インサイドアウト方式のトラッキングカメラ「Insight」を本体前面に搭載したこと、そしてディスプレイ解像度が向上したことがあげられる。一方最大のサプライズは、このヘッドセットがLenovo(レノボ)との協力により開発され、いい意味でも悪い意味でのそのデザインの影響を受けていることだ。

Oculus Rift Sの外観は完全に新しくなったが、すべての変更点がVRファンが望んだものというわけではない。それでも、初代Oculus Riftを置き換えるプロダクトとして位置づけられている。

Oculus Rift Sでの変更点

  • 解像度の若干の向上:片目ぶんで1080×1200ドットから1280×1440ドットへ。またレンズも改良
  • フレームレートは90Hzから80Hzにダウン
  • 有機ELディスプレイから液晶ディスプレイに(Oculus Goのパネルと同じ)
  • インサイドアウト型のトラッキングカメラを5個搭載
  • 新形Oculus Touchコントローラーが付属、Oculus Questのものと同一
  • 音質の悪いオンイヤーヘッドホンから、Oculus Goのような耳のそばのスピーカーへ
  • 柔らかいストラップから、「PlayStation VR」風のしっかりとしたフレームに
  • Oculus Riftに比べると視野は若干広い
  • 瞳孔距離のマニュアル調整機能(IPD)はない
  • PCの要求スペックはほぼ変わらないが、より高速なCPUが必要だろう
  • 前モデルの349ドル(約3万9000円)に対し、399ドル(約4万4000円)に値上げ
  • 2019年春に発売

 

 

 

 

 

 

実際のところ、Oculus Rift Sはトレードオフから生まれたプロダクトだ。より野心的なデザイン変更がキャンセルされた後に、製品の方向性が決まったのだ。また、これは前CEOかつ創業者のBrendan Iribe氏が激しく拒んだ決定だった。とあるソースによれば、Iribe氏が会社を去ったのもそれが原因だとされている。

初代Oculus RiftとTouchのセットは当初798ドル(約8万8000円)で販売されたが、最終的には349ドルにまで値下げされた。Oculus Rift Sはそれよりも高価だが、Lenovoによるプラスチック主体のデザインやオンイヤーヘッドホン、IPD機能の省略を考えると廉価に感じられる。一方で、初心者なら搭載カメラの簡単なセットアップや、有線センサーのUSBバンド幅を気にしないでいい点などが歓迎されるだろう。

トラッキングシステムはパワフルだが、Oculusの製品における選択は議論を呼びそうであり、今後の市場の反応が待たれる。なお、製品はコントローラー込みで399ドルにて、この春に販売される。

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(文/塚本直樹 Twitter

「恋はデジャ・ブ」がVRになって帰ってきた(予告編動画あり)

Sony Picturesは観客を再びパンクサタウニーに連れて行ってくれる。今回はバーチャルリアリティーで。

これがビル・マーレイ最高傑作の嫌悪すべき逸脱なのか、それとも銀幕にもたらされた史上最も完璧に再現された世界に観客を没入させるすばらしい手段なのかはわからない。それはプレーヤーの決めることだ。

“Groundhog Day: Like Father Like Son”のプレーヤーは、映画Goundhog Day[恋はデジャ・ブ]の主人公フィル・コナーズの息子、フィル・コナーズ・ジュニアになりきる。

この映画をご存知でない人のために書くと、ビル・マーレイ演じるキャラクターは、彼の人生の軌道を変える選択肢をすべて正解するまで何度でも同じ日を過ごさなくてはならない。

続編では、彼の子供が同じジレンマに陥り同じ日を何度も繰り返し体験する。それは、Sonyのメッセージによると、「彼が友達と家族の本当の価値を学ぶまで」続く。

Sony Pictures Virtual Realityが制作・配給するGroundhog DayのVR版続編は、Madison Wells MediaChained: A Victorian Nightmareも作った)の一部門であるMWM Immersiveとの共同制作で、開発はマドリッド拠点のビデオゲーム制作会社でDeadlightとRiMEを作ったTequila Worksが担当した。

 

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Molotovが、友人と一緒にテレビを観るためのVRコーヒーショップを作った

フランスのスタートアップMolotovは、徐々にフランスにおけるストリームテレビの、リーディングプラットフォームになりつつある。1つのアカウントで、ユーザーは、携帯電話、タブレット、コンピュータ、そしてセットトップボックス上でテレビを見ることができる。同社は、バーチャルリアリティヘッドセットを使ってテレビを見ることができるVRアプリを、リリースしようとしているが、そこには新しい工夫がある。

新しいサービスはMolotov Togetherという名前で、そして多くの点で面白い体験を提供する。私は数週間前に、このサービスの初期バージョンを試してみた。

当初私は、テレビをVRヘッドセットで観るというアイデアに対して、とても抵抗を感じていた。私は特にVRのファンではないし、多くのVRヘッドセットは既に、仮想現実内で動画を見ることを可能にしている。

多くの場合、結局落ち着く先は、仮想ルームの仮想壁上に投影されたWebブラウザの中で動く、YouTubeプレーヤーなのだ。しかしMolotovもそれは認識していて、動画の鑑賞は実際のテレビ上で見たほうがまだ良いということも分かっている。

Molotovの共同創業者でCEOのJean-David Blancが、Molotov Togetherのアイデアを私に説明し始めたとき、彼はまずライブで観るテレビについて話し始めた。

Netflixショーや膨大なiTunesライブラリの時代には、かつてはテレビを観るということが、何かをライブで観ながら、その瞬間を誰かと共有することを意味していたことを思い出すのは難しいかもしれない。いまでもアメフトの試合や、選挙の夜、その他の重要なイベントなどを通してそうした同時体験を行うことはできる。

そしてそのような場合には、隣の人間との会話やジョークは、コンテンツ自体と同じくらい重要なものとなり得る。

遠距離親友同士のためのテレビ

Molotovは、Molotov Caféという名の仮想現実コーヒーショップを作った。Molotov Togetherを使えば、ユーザーは1人または2人の友人を招待して、そのカフェで一緒にテレビを観ることができるようになる。全員が快適な仮想現実アームチェアに座って、お互いを見ることができる。

そこではそれぞれの人間が、自分が観てアクセスしたい全てのMolotovコンテンツのためにチャンネルを制御することが可能だ。各人が自分用のテレビを持っているからだ。しかしMolotov Togetherが本領を発揮するのは、全員が同じチャンネルを観るときだ。

そうすることで、全員が同じコンテンツを鑑賞し、ボイスチャットを使って一緒に話すことができる。何かのボタンを押したりする必要はない。気軽に座って一緒にコンテンツを見ることができる。

私はJean-David Blancと一緒にMolotov Togetherを試してみたが、それがそんなに上手くいくとは期待していなかった。まず、仮想的コーヒーショップに入ることは、大幅なコンテキストの変化を伴うため、少々奇妙に感じる。しかし、一度他の人とチャットを始め、見たものにコメントしてみると、まるで隣に並んで座っているような気持ちになってくる。

遠距離の親友や恋人たちは、デバイス上のSkypeやFacetimeで、同じ映画を観ることがある。Molotovはこのコンセプトを完璧なものにしたいと考えていて、このような場にいるひとたちはそのサービスを愛するようになるだろう。同様に、人気のテレビ番組に対するリアクションビデオを、人びとが観る理由もある。お気に入りの番組に対するジョークやコメントを聞くことで、お気に入りのコンテンツがさらに充実したものとなるのだ。

マインドトリック

Molotov Togetherのような製品は、それを背後で支えるチームが細部に注意を払っていないとうまくいかない。私はOculus Goを使ってMolotov Togetherを試したが、アプリは最終的にはすべての主要なVRヘッドセットで動作するはずだ。

Molotov Togetherはマルチプレイヤー体験だ。ビデオゲームと同様に、皆が同じものを同時に見る必要がある。もし贔屓のチームがゴールを決めたのに、自分の見ているフィードが5秒遅れだったら、そいつは面白くないだろう。それこそが、ビデオフィードを完全に同期させるために、Molotovが2人の人間が同じCDN(コンテンツ配信ネットワーク)からストリーミングを受信するようにしている理由なのだ。

仮想テレビの音量をコントロールできる一方で、友人たちの声もまた空間の中に位置づけられている。たとえ友人たちの声が似通っていたとしても、見ることなしに誰が喋っているかを知ることができる。

コーヒーショップからリビングルームまで

Molotov Togetherは2019年2月にリリースされる予定だ。互換性のあるVRヘッドセットを持っているMolotovユーザーなら、そのサービスにアクセスできるようになる。

同社はその後、新しい機能をリリースしていきたいと考えている。特にMolotovは、ユーザーが自身の仮想リビングルームに人びとを招いて、ユーザーの流すテレビを観ることができるようにする予定だ。この場合はホストがテレビを操作し、プレミアムコンテンツをストリーミングすることができる。ゲストたちはサブスクリプションを行っていなくてもそのプレミアムコンテンツを観ることができる。フランスの規制当局の反応を見るのが楽しみだ。

Molotovは現在、フランスに約700万人のユーザーを抱えている。毎日120万人のユーザーがMolotovで何かを観ていて、放映されるコンテンツはのべ110万時間にも及ぶ。想像できるように、こうしたMolotovセッションはかなり長くなる可能性がある。

この新製品によって、Molotovは自身がコンテンツ会社と競合するテクノロジー企業であることを証明している。Molotov Togetherは会社の顔を変えることはない。しかし、スタートアップはテレビを見る新しい方法の模索を続けている。そしてそのことが、競合相手よりも優位な位置に立つには十分かもしれない。

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(翻訳:sako)

Google、デジタルアート・ギャラリーにARを導入

Googleは、アートの世界をもっと間近で見て欲しいと思っている。

同社のアプリ、Arts & Cultureは長きにわたりGoogleでもっともクールなニッチアプリのひとつで、私はこれを再発見するたびに見過ごしていたことに罪悪感を感じることがしょっちゅうある。本日(米国時間12/3)同社は、オランダの巨匠ヨハネス・フェルメールの作品に焦点を当て、収集品を一箇所にまとめた 体験を新たに加えた

同社の多くの作品集と同じく、展示には深く掘り下げられた研究や、事実情報のリスト、専門家のインタビューや論説などが備えられている。この表現方法でいちばんの特徴は、ミニチュアの3Dアートギャラリーを実際に構築したことで、見学者はスマートフォンのAR機能を使って眼の前の物理的空間でギャラリーを見ることができる。

ユーザーはARCoreまたはARKitを使ってこの「ポケットギャラリー」の中を動き回り、高解像度で取り込まれた絵画を間近で見られるとともに、作品に関する情報も得られる。

しかしちょっと試してみた限りでは、正直なところこれはスマホのARを使う意味をあまり感じないもののひとつだ。フルレンダリングされたギャラリーがリビングの目の前に広がるしくみは興味深いが、ARは移動可能なフルレンダリング3D環境に使うか、あるいは没入的体験はVRにまかせてスマートフォンでは2D体験にとどめておくほうがよかったかもしれない。

とはいえ、これが興味深い実験であることに間違いはなく、Googleがデジタルアートの没入的体験をさまざまな方法で試しているのはすばらしいことだ。GoogleのArts & CultureアプリはiOSおよびAndroid版が提供されている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Wreck-It Ralph(シュガー・ラッシュ)が4人で遊べる倉庫サイズのVR体験になった

昨年ぐらいからDisneyは、ポータブルなVR装具をくくりつけたプレーヤーが倉庫ぐらいの大きさのスペースの中を走り回る大規模な仮想現実体験を試していた。Disneyの2017年のアクセラレーターを巣立ったThe VOIDと、LucasfilmのILMxLabとのパートナーシップにより、同社はStar WarsをテーマとするVR体験Secrets of the Empireを、カリフォルニアのDowntown DisneyとフロリダのDisney Springsで2017年11月にローンチした。

では、Disneyの次のVR作品は何か? Wreck-It Ralph〔邦題: シュガー・ラッシュ〕だ。


今朝(米国時間11/14)リリースされたトレーラー(予告編):

近く封切られる、この前(2012)の本編の続編が“Ralph Breaks the Internet,”だから、その次は当然Ralph Breaks VRになる。以前のSecretsのように、このRalph体験も最大4人のプレーヤーがVR環境を共有して走り回る。でも宇宙銃を避(よ)けたりストームトルーパーを出し抜いたりするのではなくて、子猫たちと食べ物を奪い合ったり、セキュリティドローンから逃げたりする。

ぼくはRalphのファンでもないけど、これにはコーフンした。この前のSecrets of the Empireは、ぼくの知る限りもっともアホらしい仮想現実体験だった。ここでネタバレをしたくはないけど、今回は半分ぐらいの時間、自分の顎(あご)が外(はず)れそうだった。全体がわずか25分だから、ここでいろいろ明かさない方がよいと思うが、料金はお一人35ドル…にしては短すぎる。チケットを買えば30ドルから33ドルくらいだ。

Disneyは、Secrets of the Empireを廃版にしない、と言っている。VRの良いところは、物理空間をStar Warsらしくなく改作すれば、また新作として封切れるところだ。

(おっと、詳しい情報はまだないけど、Ralphの次は2019年にマーベルコミックスをテーマとするVR体験が‘封切られる’らしい。)

RalphのVR体験は、来週チケットが発売される。VOIDのDisneyland/Disneyworldのほかに、カリフォルニア州グレンデールとラスベガスでも‘上映’される。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Oculus GoにYouTube VRアプリが登場

本日(米国時間11/12)YouTube VRアプリが199ドルのOculus Goに登場した。これでウェブ最大のVRコンテンツライブラリーがFacebookの入門用VRデバイスで使えるようになった。

YouTubeは、通常のビデオでも没頭的ビデオのタイプでも大量のコンテンツを提供している。ここが360度コンテンツやVR180などのネイティブフォーマットを提供する最大のハブであることは間違いない。しかし、Oculusプラットフォームにとっては、ライブラリー全体を自由にアクセスできることの方がずっと重要だろう。

Oculus Goの戦略で興味深いのは、ゲームでの利用はメディア消費と比べて少数派であることだ。そんなに多くの人たちが360度ビデオを大量消費しているとは信じられない、と思うかもしれないが、実際そうではない。多くのユーザーはこのデバイスの能力の一部のみを利用して、通常の映画やテレビを見る装置として使っている。NetflixやHuluのアプリもあるほか、FacebookはOculus TVというApple TV風の環境を提供するアプリを提供しており、ソーシャルメディアにある大量の2Dコンテンツを見ることができる。

今年のOculus ConnectカンファレンスでCTO John Carmackは、ユーザーがGoで消費した時間の約70%はビデオの視聴で、30%がゲームだと話した。これまでOculusは自らをゲーム会社と位置づけてきたので、モバイルプラットフォームを成長させることによって、VRビジネスのビデオ利用をいかに魅力的にしていけるのかが注目される。

YouTubeによって、Oculusは大量のコンテンツを揃える容易な手段を手に入れた。YouTubeはOculus TVにとっても偉大なパートナーとなる可能性をもっているが、専用アプリはユーザーに多くのものをもたらすだすう。Googleは自社のVRハードウェアDaydreamが伸び悩んでいることから、スタンドアロンのYouTubeアプリをDaydreamにのみ提供するのではないかとも思われた。しかし、どうやらいまのところは外部プラットフォームに力を注ぐつもりのようだ。

YouTube VRアプリはここでダウンロードできる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

VR/AR用触覚デバイス「EXOS Wrist DK2」の無償レンタルプログラムが開始

VR/AR用触覚デバイス「EXOS」シリーズを開発・販売するexiiiは11月13日、手首装着型の「EXOS Wrist DK2」の無償レンタルプログラム「EXOS for Hackers」を開始した。

exiiiはEXOS Wrist DK2の販売を2018年10月に開始したが、販売先が“一定以上の規模の企業”に限定されてしまったという。原因は何といってもその値段で、通常販売では片手60万円(税別)、サブスクでは月額で片手5万円と確かに高額かもしれない。なので、今回のプロジェクトは予算が限られている個人開発者やスタートアップを対象としている。ユースケースの拡大やデベロッパーコミュニティの形成がその狙いだ。

応募の条件は以下のとおり。

対象:個人もしくはスタートアップのVR/ARコンテンツデベロッパー

地域:日本もしくは米国での使用を前提

期間:原則1ヶ月とし、希望の場合はexiiiと相談の上で最大6ヶ月まで延長

EXOS Wrist DK2はVR/AR内でバーチャルオブジェクトに触れることを可能とする、触覚ウェアラブルデバイス。手首の前後方向と左右方向の二方向へ力を加えることで、さまざまな触覚を提示する。Vive ControllerやOculus Touch等のコントローラと組み合わせて使用することもでき、これにより既存のVRコンテンツに触覚を付与するような拡張にも対応可能だ。

exiiiに関しては2018年4月に8000万円を資金調達した際にも記事を出しているのでそちらも参考にしていただきたい。あと、僕は今月中にも同社を取材する予定なので記事化を楽しみに待っていてほしい。

TC Sessions: AR/VR 変貌する業界内部の様子を聞く

先週、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の伝統あるロイスホールにて、TechCrunch主催の1日限りのイベント『TC Sessions: AR/VR』が開催された。急激に変化し熱気に溢れる業界と、それを支える人たちの現状を知ろうと、業界のベテランから学生までが一同に介した。Disney、Snap、Oculusを始めとする企業が登壇し、座談会に参加し、最新技術を披露した。参加できなかった方は、これを読んで、私たちが学んだことを知って欲しい。登壇者の話は、リンクを開くと動画で聞くことができる。

口火を切ったのはWalt Disney ImagineeringのJon Snoddy。ご想像のとおり、この会社は「エクスペリエンス」のために大きな投資をしている。だが彼は、VR(仮想現実)もAR(拡張現実)も、まだゴールデンタイムに進出する準備が整っていないと警告している。「まだそこまで到達していないと感じています。素晴らしいものだとはわかっています。とても面白いものだとも思っています。しかし、今後どうなってゆくのか、それが響いてこないのです」

次に登場したのはSnapのEitan Pilipskiだ。Snapchatでは、自分たちが何を作るべきかを決めるよりも、ARの創造性はクリエイターに任せたいと考えている。人々が日常的に装着してもよいと思えるARヘッドセットの完成には、まだあと数年かかる。それでもSnapは、AIを使った新しいフェイスフィルターとVRエクスペリエンスの試作を行っていると話した。

次に、私がスタートアップの一団を引き連れて登壇した。それぞれ方向性は異なるが、ホログラムや投影など、ビジネスとして成立する新しいディスプレイの形を追求しているという点で共通している。VNTANAのAshley CrowderとLooking GlassのShawn Frayneは、彼らが需要を見込んだ技術の開発方法を説明した。それは、簡単にリアルに3D映像を映し出すホログラム・ディスプレイだ。LightformのBrett Jonesは、現実世界を取り込んで拡張し、孤立した形ではなく共有できるエクスペリエンスについて語った。

ちなみに、Frayneのホログラム・デスクトップ・ディスプレイはロビーに展示されていた。とても素晴らしいものだった。大きなアクリルの箱の中に、キャラクターや風景が映し出される仕組みを覗こうと、三重四重に人垣ができていた。

BaoBab StudiosのMaureen Fanは、娯楽に焦点を絞ったVR企業の経費節約の重要性について語っていた。彼女の新作フィルム『Crow』のプレビューを見せながら、Fanは、物語を新しい方式で見せるためには、ゲームと映画の要素を創造的に融合させるなど、メディアを模索する必要があると話した。

次は投資家によるパネルディスカッションだ。登壇したのはNiko Bonatsos(General Catalyst)、Jacob Mullins(Shasta Ventures)、Catherine Ulrich(FirstMark Capital)、そしてStephanie Zhan(Sequoia)という面々。活発な討論の中で、彼らに共通していた意見は、Fanが言ったとおり、今はスタートアップが節約をする時代だというものだった。ベンチャー投資家の金を湯水のように使う企業によって競争が薄められてしまった。自力で効率的に運営されている企業が、頭角を現すという。

Oculusは、VRに関してはゲーム以外のエクスペリエンスには興味がないようだ。Oculusのエグゼクティブ・プロデューサーYelena Rachitskyは、座談会の中で詳しく説明してくれたた、彼らは、VRでユーザーがより深く世界と関われるようにするハードウエアに大変に注目しているという。Oculus Questのような新しいハードウエアは、360度VRビデオを遥かに超える能力をユーザーに与えるとのことだ。

Oculusが出てくれば、その親会社も黙ってはいられない。FacebookのFicus Kirkpatrickは、叩き台として利用できる使用事例に独立系の開発者を導くための、ARエクスペリエンスの典型となる「灯台」を作るべきだと考えている。創造的なエクスペリエンスとは別に、ARの発達は遅い。それは、スマートフォンを、長時間、手で持っているのが辛いからだ。Facebookはそこも考えていて、独自のARヘッドセットの開発に、すでに投資を行っている。

6d.aiのMatt Miesnieksは、同社のAR開発プラットフォームを一般公開したことを伝え、共同開発と大勢の人たちのためのオープンなARマッピング・プラットフォームとツールキットを作るという事例を示した。

Magic LeapやHoloLensなどのARヘッドセットがスポットライトを浴びることが多いが、ほとんどの人がARを最初に体験するのはスマートフォンだ。Parham Aarabi(ModiFace)、Kirin Sinha(Illumix)、Allison Wood(Camera IQ)はみな、ヘッドセットが進化したスタンドアローンの機器が普及して、この技術が主流になるのは3年から5年先だと考えている。彼らはまた、数々の技術や革新的なアイデアは数多くあっても、ARのためのキラーアプリがないという点でも同意している。

Derek Belch(STRIVR)、Clorama Dorvilias(DebiasVR)、Morgan Mercer(Vantage Point)は、VRの商業と工業での応用の可能性に着目している。一般消費者向けの技術を業務用グレードに引き上げるには、業務でのVR利用という大きな決断が必要になると彼らは結論付けた(StarVRなどの企業は業務用専門に的を絞っているが、それが成功するかどうかは未確定だ)。

FacebookがVR番組を提供する中、小さなVRスタートアップは、どうしたらソーシャルメディアに食い込むことができるのだろう。TheWaveVR、Mindshow、SVRFのCEOたちは、ユーザー同士が関わり合うことができ、いろいろな方法で人々をひとつにまとめるエクスペリエンスを作ることが鍵になると、口を揃えて言っていた。

休憩のあと、VRボクシングゲーム『Creed: Rise to Glory』のデモが披露された。これを開発したSurviosの共同創設者Alex SilkinとJames Iliffによる対決だ。その後、彼らは私と、ソーシャルおよびマルチプレイヤーVRの難しさと可能性について話し合った。 どれほど親近感のあるエクスペリエンスを作れるか、開発者は、プレイヤーの孤立や不正使用が起きないように、どう予防措置を取るべきかといった内容だ。

誕生したばかりの業界では、アーリーステージの投資が成功の鍵となる。だがその点では、VRは減速気味だ。BetaworksのPeter RojasとAnorakのGreg Castleは、彼らの投資戦略について詳しく話してくれた。また彼らは、技術業界の最大手企業がそこへ資金を投入し続けていることから、ARの分野に成功が期待できると教えてくれた。

UCLAは、AndersonのJay Tuckerと共に司会を務め、Mariana Acuna(Opaque Studios)とGuy Primus(Virtual Reality Company)を交えて、VRでの物語の表現はまだまだ初期段階にあるが、この模索と実験の時期は大いに励みになり、経験を積むことができると話し合った。映画はNetflixやMarvelで始まったわけではない。映画館や短編無声映画から始まったのだ。VRも同じ道を辿ることになる。

しかし、史上もっとも高い人気を獲得したARゲームの開発者のいないAR/VRカンファレンスというのは、どうなんだろう。Nianticはすでに『Pokémon GO』を超える成功を目指す大きな計画を立てている。『Harry Potter: Wizards Unite』の開発に深く関わった同社は、独自の最新AR技術を使った開発プラットフォームを作っている。今回の座談会で、AR開発責任者のRoss Finmanは、将来のAR世代のプライバシーと、この分野ではAppleが挑戦者側になっていることなどを話していた。

それが今回のイベントの締めくくりとなった。TechCrunchのFlickrページに、もっと別の写真がある(あなたも写っているかもしれない)。スポンサー、UCLAの寛大なるホストのみなさん、やる気に満ちて面白い話を聞かせてくれた登壇者のみなさん、そしてなにより観客のみなさんに感謝する。また会いましょう。

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(翻訳:金井哲夫)

Facebook、ARメガネ開発中をあっさり認める

「そうだよ、もちろん取り組んでるよ」。LAで開かれたTechCrunchのAR/VRイベントで、私がARメガネを開発中か尋ねた時、FacebookのARのヘッドFicus Kirkpatrickはこう答えた。「ハードウェアのプロダクトを開発中で、前に進めるつもりだ…そうしたメガネを現実のものにしたいし、実現に一役買いたいと思っている」。

ARメガネの計画についてFacebookから返ってきた答えの中で今回が今までで最もクリアなものだ。そのプロダクトはFacebookにとってメーンストリームのコンピューターデバイスを所有するチャンスとなるかもしれない。

今月、FacebookはPortalスマートディスプレイという、同社のR&D特別組織Building 8のラボで生まれた初の自社ブランドガジェットをローンチした。ハードウェア開発はいま回転中だ。ARについて、Kirkpatrickは「いま発表できるプロダクトはない。しかし、ヘッドセットの将来で役割を担ってほしい、本当に注目せずにはいられない最先端の研究をしている多くの優秀な人材を抱えている」と話した。

戦いは始まっている。Magic LeapThalmic LabsのようなARスタートアップは独自開発した初のヘッドセットやメガネを発売し始めている。Microsoftは初期のHoloLensプロダクトのおかげでリーダーとみなされていて、その一方でGoogle Glassはまだ企業向けに開発が進んでいる。そしてAppleは自前のヘッドセット開発を加速させるためにAkonia HolographicsVrvanaといったARハードウェアデベロッパーを買収した。

テクノロジー面での進歩と競争はどうやらFacebookのタイムテーブルを早めたようだ。2017年4月にさかのぼるが、CEOのMark Zuckerbergは「我々は、最終的にメガネが欲しくなるということを知っている」と言い、しかし「我々はいま、欲しいと思うARメガネをつくるサイエンスやテクノロジーを持ち合わせていない。おそらく5年、あるいは7年以内だ」と説明した。彼はまた「我々は、今欲しいと思うARプロダクトをつくることはできない。だからVR構築がそうしたARメガネにつながる道となる」とも語った。FacebookのOculus部門はARメガネのポテンシャルについて広範に語ったが、同様に先のことという扱いだった。

しかし数カ月後にARメガネに関する同社の特許申請Business Insiderが見つけた。レンズにメディアを反映させるのに“二次元スキャナーがついたウェーブガイドディスプレー”を使っていると詳細が報道されている。CheddarのAlex Heath記者は、テーブルの上に置かれたチェスボードのような物体の表面にARを映しだしたり、あるいは遠隔会議のために何かに人物を映しだしたりするためのプロジェクターを使ったプロジェクトSequoiaにFacebookが取り組んでいる、とレポートしている。これらは、Facebookの中でARリサーチの段階が過ぎたことを物語っている。

先週The Informationは、FacebookのReality Lab(以前のOculusリサーチ)でカスタムARコンピューターチップをつくる、経験あるエンジニアを求める4つの求人情報を見つけた。その1週間後、OculusのチーフサイエンティストMichael AbrashはFacebookのVR会議での30分におよぶテクニカル要旨発表の最中に「いつでも買えるわけでないディスプレーテクノロジーがARには必要だ。だから我々は新たなディスプレーシステムを開発する他ない。そのシステムというのはVRを異なるレベルへともっていく可能性を有している」と手短に言及した。

しかしKirkpatrickは、FacebookのARの取り組みは単にVRヘッドセットの複合現実機能だけではないとの見方を明らかにした。「我々がたった一つのデバイスに向かっているとは思わない。また、誰もが四六時中VRに浸るReady Player 1のような将来になるとも思わない」と語った。「思うに、家で逃避的で没頭感のある体験をしたり、どこかに自分自身をトランスポートするのにVRを使ったりといった、今日のような暮らしを続けるのではないだろうか。しかし、あなたがつながっているような人々や、あなたがしていること、アプリの状態など全てが一緒に持ち運べて、外出先でも使えるようポータブルでなければならないと考えている。それが、我々がARについて考えていることだ」。

OculusのVRヘッドセットとFacebookのARメガネはソフトウェアを共有できるかもしれない。それはユーザーが馴染みやすいインターフェースをつくる一方でエンジニアリングをスピードアップするする可能性がある。「そうした全てのことが、何らかの方法でソフトウェアレベルで一点に集中するだろうと私は考えている」とKirkpatrickは語った。

FacebookのARの問題はというと、家の中にPortalのカメラを設置することについて人々が持つのと同じ、プライバシーの懸念に直面するかもしれない、ということだ。VRヘッドセットがフィクションの世界をつくる一方で、ARはユーザーの現実世界の環境についてデータを集めなければならない。これは、Facebookが家の中だけでなく我々がすること全てを監視下に置き、そのデータをターゲット広告やコンテンツレコメンデーションに使うかもしれないという懸念を引き起こすかもしれない。こうしたFacebookに特有の懸念はFacebookの一挙一動に向けられる。Magic Leapのような曇りのないクリーンなスタートアップや、Appleのようにプライバシーをしっかり管理している大企業の方が、ユーザーに使用してもらいやすいかもしれない。おそらくFacebookは、同社がARをやるに値すると人々に思わせるために、他ではできないようなことがこなせる最高クラスのガジェットを必要とするだろう。

TechCrunchセッション、AR/VRイベントin LAでのFicus Kirkpatrickのフルインタビューは以下で閲覧できる。

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(翻訳:Mizoguchi)

Oculusの共同創業者、‘Rift 2’ヘッドセット開発中止を受けFacebookを退社

Oculusの共同創業者で前CEOのBrendan Iribeは今日、Facebookを退社すると発表した。TechCrunchはこの件について確認した。

詳しい関係筋がTechCrunchに明らかにしたところによると、IribeのFacebook退社は同社の次世代PCベースバーチャル・リアリティヘッドセット“Rift 2”の開発が中止となるなど、社内のバーチャル・リアリティ部門刷新によるものとのことだ。IribeはRift 2の開発を率いていた。

IribeとFacebookの役員チームは、“成長が見られなかったOculusの将来について根本的に異なった考え”を持っていた。そして、Iribeはパフォーマンスという点で“底辺への競争”には関心がなかったとされる。

Iribeは退社を今日のFacebookへの投稿で発表した。

我々が2012年7月にOculusを立ち上げてから本当に多くのことがあった。こんなに多くのことを成し遂げ、ここまでくるとは思わなかった。信じられないような6年がすぎた今、私は次に移る。

これまで我々が共に成し遂げたことを大いに誇りに思い、また感謝している。我々は史上最も素晴らしい研究・エンジニアリングチームの一つをつくりあげ、Oculus RiftとTouchで真のバーチャルプレゼンスへの最初の一歩を築き、完全に新たな産業をおこした。我々が描くこともできなかった方法で世界を変えるという革命をおこした。

我々は遠くにきたが、しかし旅はまだ始まったばかりだ。Michael Abrashは正しかった:“これらは、古き良き日々”。そしていま、次の素晴らしいコンピューティングプラットフォームと媒体の基礎を開拓するときだー最先端のものをさらに推し進めるときなのだ。 VRとARの全ての部分、特にハードウェアと基幹テクノロジーを改善する必要があるが、Oculusは世界でもベストなチームを抱えている。我々が夢みている魔法のスマートメガネを届けるにはまだ程遠いが、手の届くところにはきている。

Oculusで多くの才能ある人たちと働くことができ、Facebookでの経験は私のキャリアの中でも最も変革的なものだった。賛辞を送ったり感謝の意を述べたりするときの格言があるー“チームの努力の賜物”だ。Oculusの成功は並外れたチームの努力なしには成し得なかった。ここに私は、素晴らしい道のりを支えてくれた全ての人に心からの感謝の気持ちを伝えたい。特にMarkにはこのチーム、そしてVRとARの将来を信じてくれたことを感謝したい。

私事になるが、20年間ずっと走り続けてきて今回が初の本当の休憩となる。充電し、それを反映し、プロダクティブになるときだ。次なる章を楽しみにしている。

PCベースの次世代バーチャルリアリティプロダクト “Rift 2”のキャンセルは、Facebook幹部の関心がいかに外部PCや携帯電話への接続を必要としないオールインワン型のヘッドセットに集中しているかを物語っている。5月にOculusは199ドルのOculus Goヘッドセットをリリースし、来春ごろ399ドルのOculus Quesヘッドセットのリリースを計画していた。Facebookの広報はTechCrunchに対し、PC VRはFacebookの未来のプロダクトロードマップの一部であり、Iribeのチームがこれまで取り組んできたことの多くが未来のプロダクトにはっきりと表れるだろうと述べている。

Iribeの退社は、Facebookが買収した知名度の高いスタートアップのかなりの創業者がFacebookを去るのと重なっている。1カ月足らず前にInstagramの共同創業者のKevin SystromとMike KriegerがFacebookを去ると発表した。TechCrunchの情報では、この2人の退社は少なからず緊張が高まった結果とのことだ。WhatsAppの共同創業者Jan Koumも今年初めにFacebookを離れた。Iribeの仲間で共同創業者のPalmer Luckeyは2017年初めにFacebookをやめている。この決定については彼が下した決定ではなかった、とLuckeyは最近詳細を語っている。

Iribeは、彼が創業しCEOを務めていたOculus VRが2014年に20億ドルで買収されたあとにFacebookに移ってきた。2016年後半に行われたFacebookの組織再編で、IribeはCEO職からFacebookのPC VR部門の責任者というポジションに移されていた。

Oculus VRを共同創業する前、Iribeはソニーが2012年に3億8000万ドルで買収したGaikaiというクラウドゲーミングのスタートアップで最高製品責任者だった:その前は、2011年に3600万ドルでAutodeskに買収されたScaleformというゲーミングユーザーインターフェースツールのスタートアップを共同創業し、率いていた。

我々はIribeにコメントを求めている。

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(翻訳:Mizoguchi)

バーチャルリアリティーが食べ物を美味しくする

またまたVRが現実世界に入り込んできた。米コーネル大学の食品科学者らは、心地よいVR環境で食べたチーズが、殺風景な官能評価ブースで食べた同じチーズより美味しく感じることを発見した。

バーチャルリアリティーヘッドセットを着けた約50名のパネリストが3種類のブルーチーズサンプルを食べた。被験者は、標準官能評価ブース、心地よい公園のベンチ、コーネル牛の家畜小屋の3種類用意されたバーチャル環境に置かれ、特別に録画された360度ビデオを見ることができる。

被験者はチーズのサンプルが同一であることは知らされておらず、牛舎環境で食べたブルーチーズを評価ブースやバーチャル公園で食べたものよりも、優位に辛みが強いとと評価した。

その通り:バーチャルファームで食べたチーズは、なにもない殺風景なブースで食べるよりもずっと美味しかった。

「何かを食べる時、われわれは食物の味と香りだけを感じるのではなく、周囲からの感覚入力を受ける——目、耳、さらには周囲に関する記憶までも」と研究者のRobin Dandoは言った。

念のために言っておくと、この研究はVRが食べ物を美味しくするかどうかを確認することを意図したものではなく、VRが一種の味覚テスト環境として使えるかどうか、たとえばメーカーで食物のテストをするために、被験者を飛行機に乗せたり本物の牛舎に入れたりしなくても済むかどうかを検証するために行われた。食べ物は環境が変わると味も変わるため、VRでその環境をシミュレーションできることの価値は非常に大きい。

「この研究によってバーチャルリアリティーを利用できることが検証された。これはテストにのための没入環境をVRが提供するからだ」とDandoは言った。「バーチャルリアリティーは、食べている物に環境そのもの性質を視覚的に付与するため、テストの費用効果を高める」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

仮想現実による教育訓練の先頭走者STRIVRが顧客増大に対応して$16Mを調達

大手のテクノロジー企業の一部は、仮想現実(virtual reality, VR)をもっぱら、消費者向けの新しい商材と捉えているようだが、しかしもっと活発な傾向として、近年ではますます多くの企業が社員の教育訓練に仮想現実を利用し始めている。

VRによる教育訓練を提供するスタートアップのひとつであるSTRIVRは、そんな動きのリーダー格だが、今日同社はGreatPoint Venturesがリードするラウンドにより、1600万ドルを調達した。同社の調達総額は、これで2100万ドルになる。

同社は最初、スタンフォード大学のフットボールのチームをVRで訓練するプロジェクトを手がけていたが、昨年は大企業のWalmartとパートナーして、後者の社員教育にVRを利用するビッグな仕事が舞い込んできた。

同社が使用する主な教材は対話型の360度ビデオで、これは制作と利用が易しいだけでなく、ハードウェアが簡素で、Facebookの199ドルのOculus Goのような、ローエンドのシステムでも使える。

[関連記事: ウォルマートが17000台のOculus GoヘッドセットをVRによる作業訓練用に試験的に採用]

数週間前に同社は、Walmartが17000台のOculus Goヘッドセットを数千店に送り、それらにSTRIVR製の教材をロードした、と発表した。CEOのDerek Belchによると、今では同社は27のFortune500社を顧客として抱え、その業種は“ほとんどすべての業種”だそうだ。

Belchはこう語る: “最近の数か月は、チーム編成のスケーラビリティのことばかり考えていた。今回GreatPointから得られた資金も、顧客の急増に対応するチームの拡大に充てられるだろう。関連してオフィスの拡大なども課題だ。”

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Facebook、Oculus Questを発表――新しいワイヤレスVRヘッドセットは399ドル、来春出荷へ

デベロッパー向けVRカンファレンス、Oculus Connect 5のキーノートでFacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグはOculus Questを発表した。この新しいヘッドセットは2019年の春に出荷され、価格は399ドルが予定されている。

Questはワイヤレス接続のスタンドアローンVRヘッドセットとして初めてのフル機能のポジション・トラッキングが可能な製品だ。ヘッドセット自体だけでなく、両手に握るコントローラーにもポジション・トラッキング能力が備わる。出荷時には専用ゲーム50種類以上がバンドルされる。

399ドルというOculus Questの定価は現行フラグシップモデルのOculus Riftと同じだ。ただしRiftの場合、最適な体験を得るためには相当強力なデスクトップゲーム機にケーブルで接続する必要がある。Questの場合は必要なバッテリーやチップを含め処理能力がすべてデバイス内に収められている。今年に入って199ドルでOculus Goが発表されているがQuestはスタンドアローン・ヘッドセットのプレミアモデルとなる。Goは最新のモバイル向けチップセットで動作しているが、ポジション・トラッキングが6自由度ではなく、動きに制約が感じられた。

Questではヘッドセット正面にセットされた4台の広角カメラのおかげで6自由度のポジショントラッキングが可能だ。ハンド・コントローラーのデザインはRiftにバンドルされているものとやや異なるようだが、ボタンのマッピングは同一だ。つまりデベロッパーは従来パソコンペースで作動していた既存のVRゲームをQuest向けに移植するのが簡単になる。ただしモバイル・チップセットに移植するための手間がどの程度軽減されてるのかはまだはっきりしない。

2年前、Oculusがデベロッパー・カンファレンスで最初にデモしたプロトタイプはSanta Cruzと呼ばれ、ポジショントラッキング機能を内蔵したスタンドアローンVRヘッドセットだった。Oculusはその後ポジショントラッキング機能を備えたハンド・コントローラーも追加した。これによりスタンドアローン・ヘッドセットのVR体験がRiftなみに改善されることが期待された。Santa Cruzの製品版であるQuestが出荷されるまで数ヶ月あるので、デベロッパーはこのプラットフォームに慣れる時間があるだろう。QuestはRiftの能力とGoの手軽さの間で最適のバランスを取ろうとするOculusの努力の現れのようだ。

取材中…

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滑川海彦@Facebook Google+

アラスカ航空がファーストクラスのエンターテインメントにVRを試験導入

公共の場だけれども完全にくつろげる場所といえば、長時間の飛行機の旅を措いてほかにない。そして、そのことに目をつけた仮想現実企業は、それを人びとにVRのコンテンツを経験してもらう絶好の機会と見なしている。

今日(米国時間9/24)Alaska Airlines(アラスカ航空)は、Skylightsとパートナーして同社の最新のハードウェアを二つの航路で試験的に採用する、と発表した。

2年前にY CombinatorでローンチしたSkylightsは、VRを、飛行機で旅をする人が航空会社を選ぶ理由になるほどのビッグなエンターテインメントにすることを目指している。今度のアラスカ航空との契約はアメリカにおける初めてのパートナーシップで、これまではヨーロッパのEmiratesやXL Airwaysなどとのパートナーシップを成功させてきた。

ただしエコノミークラスの人には、楽しい仮想人生は手の届かないところにある。このサービスは、アラスカ航空のシアトル-ボストン便とボストン-サンディエゴ便のファーストクラスの乗客にのみ、提供される。

その“Allosky”と名付けられた新しいハードウェアは、かなりコンパクトだ。主に2Dと3Dのムービーを想定した設計だが、360度のコンテンツも一部楽しめる。モバイルのVRハードウェアとしては相当すっきりしているが、でも目立つ。これまでの最新世代の製品といえば、Samusung GlaxyのGear VRがスタンダードだったと思うが、この新世代製品はサングラスに似ている。まだ相当かさばってるけどね。

Boseのヘッドフォンは機内の騒音を遮断してくれるから人気になったが、Skylightsは、そのVRハードウェアが人びとの視界を遮断するので人気になることを、ねらっているのだ。

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ウォルマートが17000台のOculus GoヘッドセットをVRによる作業訓練用に試験的に採用

作業訓練は以前から、企業が仮想現実を利用する最初の主要な分野になる、言われていた。Walmartはすでに、そのトレーニングセンターにVRハードウェアを導入してその方向性を見せていたが、今回同社は、その5000近いストアのすべてにOculus Goヘッドセットを送って、Walmartの社員の教育訓練の頻度を上げようとしている。

この大型店の巨人は、Walmartスーパーセンターの各店舗にヘッドセットを4つずつ、そしてNeighborhood Marketには2つずつ送る。それは全社員を教育訓練できるほどの大量ではないが、それでもWalmartともなれば全体で約17000台のヘッドセットが年内に発送されることになる。

昨年同社は、STRIVR Labsの協力により、同社の200あるトレーニングセンター“Walmart Academy”に仮想現実によるトレーニングを導入する、と発表した。今回はさらにその進化形であり、前のようにPCにつないだOculus RiftではなくOculus Goを使用し、単体VRヘッドセットによる社員教育の将来性をさぐる。今回の、各店におけるわずかな台数でのテストがうまくいけば、OculusとFacebookにとっても勝利になる。なにしろこれまでVRヘッドセットといえば、実際に順調に使用する時間よりも、トラブルシューティングの時間の方が長いことで、悪名高かったのだから。

Oculusで企業とのパートナーシップを担当しているAndy Mathisが、プレスリリースでこう述べている: “Walmartは、VRを利用して社員教育の充実を図った最初の企業のひとつだ。今後その利用は、どんどん拡大するだろう。この分野でVRが魅力的なのは、ふつうのやり方では費用が高すぎたり、難しかったり、そもそも不可能だったりするような教程やシミュレーションを、VRは可能にするだけでなく、今すぐ気軽にできるからだ”。

仮想現実では、プロセスや製品が実在する前にそれらを体験できる。社員にとってその体験は、既存のオプションよりもおもしろいから、居眠り効果などもなく、学習効果が上がるだろう。

STRIVR LabsのCEO Derek Belchはこう述べる: “VRはシミュレーションをベースとする体験的学習の機会を与える。それは、2Dの教材ソフトなどでは不可能だった。VRと教育学習の関係が、Walmartの先進性によりこれほど急速に進展していく様子は、見るだけでも感動的である”。

STRIVRのVR教材ビデオは主に360度ビデオを使用し、画面上に対話を促すプロンプトが出るので、社員は実際のインフラストラクチャが存在する前に、新しい店舗形態などに触れる機会を与えられる。Walmartは、ネットで買った物のための“Pickup Towers”〔日本語参考記事〕という具体例を挙げて、実際に店に据え付けられる前に、VRでそれらと対話する体験があれば、稼働開始も早い、と述べている。

ヘッドセットの店舗への発送は、来月から始まる。

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MozillaのVR用ブラウザーFirefox Realityが完成、VRがWebのふつうのコンテンツになる日も近い?

Mozillaが構想したVRファーストのWebブラウザーがついに完成し、一般消費者のダウンロードと判定を待っている。

そのFirefox Realityは、完全に仮想現実のために作られたブラウザーだ。デスクトップのFirefoxやChromeにWebVRのサポートを加える、という話は読んだことがあると思うが、Firefox RealityはVRヘッドセットの中だけで使うブラウザーだ。いろんなURLを訪ねたり、何かを検索したり、そのほか2Dや3Dのインターネットをこの新しいブラウザーの中で、マウスを使わずに閲覧できる。VRの手動コントローラーを使うだけだ。

関連記事: MozillaがFirefoxのVR/AR専用バージョンのデモを公開、Web上にまったく新しいメディアが出現か?

Firefox Realityが使えるのはOculus, Viveport, そしてDaydreamのプラットホームで、最新の単品のモバイルヘッドセットOculus GoやLenovo Mirage Soloに向けて最適化されている。

これはバージョン1.0で、まだこれから使い方をめぐる質問や問題をかき分けかき分け、前へ進まなくてはならない。なにしろVRだから、完成度が高いことが、当然追求すべきスタンダードだ。実験作ならUXの不安定も許されるかもしれないが、ユーザーにかなり奇妙なものを与えてもよい、ということにもなる。

このブラウザーの第一作は、ユーザーがコントローラー上でテキストをタイプしなくてもすむための音声検索など、クールな機能がいくつかある。

MozillaはWebVRのスタンダードに心血を注ぎ、おかげでかなりの数のVRデベロッパーたちが、このスタンダードを良く知るようになった。

VRはWebに似合うコンテンツだが、残念なことにこれまでは、仮想現実のコンテンツの多くが各プラットホームに限定されていて、それらの各サイトにユーザー登録したり、ダウンロードしたり、それをWebからでなく自機ローカルから立ち上げる、という面倒がつきまとっていた。このプラットホーム限定主義は、利益を追う企業やコンテンツを開発するデベロッパーには都合が良いかもしれないが、ユーザーにとっては、WebVR用のヘッドセットだけで、もっとシンプルなコンテンツを楽に見たいだろう。

そういう、VRの中のWebが実現するためには、多くのことを再検討しなければならない。今は当然のように、2DのWebコンテンツが圧倒的に多いけど、MozillaやGoogle、Appleなどのブラウザー提供者がもっとAR/VRに力を入れるようになり、多くの3Dモデルやライブのレンダリングが日常的に見られるようになれば、ずっとおもしろいだろう。

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Oculusの共同創設者が競合他社製Magic Leapヘッドセットを「悲劇の誇大広告」と痛烈批判

企業の創業者が、競合他社の新製品をこき下ろすレビュー記事を書くというのは尋常なことではないが、Oculusの共同創設者Palmer Luckeyは、ずっと尋常ではない起業家で通ってきた。

昨日(アメリカ時間8月27日)、Luckeyは、自身の個人ブログに『Magic Leapは悲劇の誇大広告』と題したMagic Leapの開発者向けキットのレビュー記事を掲載した。その中で彼は、いくつかお世辞を述べてはいるものの、大部分は、その新製品の欠点の列挙と、同社の重役たちがAR技術のたわごとを並べていながら、結局は、彼が言うところの3年前のHoloLensに毛が生えたようなものに収まってしまった理由の説明に割いている。

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「Magic Leap ML 1に関する私のレビュー。メディアでは大きく取り上げられておらず、分析もされていない、いくつかの点に焦点を当てている」
「Magic Leapは悲劇的な誇大広告:このレビューのタイトルはよく考えて付けた。軽率な言葉ではない。私はVRにとって最高のものを、そして現実-仮想連続体のための最高の技術を求めているのだ」

 

彼は、いくつもの問題点をレビューの中で掘り下げている。おそらく、もっとも深い洞察が行われているのは、ヘッドセットとコントローラーに使われているトラッキング技術に関するものだろう。それがユーザーエクスペリエンスを後退させているという。Magic Leap Oneのコントローラーには、磁気トラッキング・システムが使われている。Oculusを含むほとんどのVRメーカーが採用している光学トラッキング・システムとは大幅に違うものであり、概して複雑な仕組みになっている。クリック式のトラックパッドがないことを批判している段落を読めば、それがLuckeyの単なる個人的な好みの問題ではないことがわかる。

Magic Leap One Lightwear

 

現在、LuckeyはVRの日々を卒業して、(ほぼ)転職を果している。彼の新しい会社Anduril Industriesは、国境警備のための技術開発に特化した企業だ。しかし、彼はまだハードコアなVR愛好家としての評判が高く、VR世界では大きな発言力を持ち続けている。

彼の不満の原因は明らかだ。Magic LeapのCEO、Rony Abovitzは、この数年間、多額の資金を調達して、秘密裏に技術開発を行い、公には既存の技術をこき下ろしていた。Luckeyは、それがARやVRの分野への投資意欲を削いでしまうと心配していた。目の前に非現実的な期待をぶら下げられた投資家は、比較的保守的なアプローチで売り込みをかける既存の企業への興味を失ってしまうからだ。

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Palmer Luckey「驚き!」
Fernando Serrano「悪いけど、こうするしかなかった」

 

もっとも辛辣な言葉は、Magic Leap Oneのディスプレイ技術のために残されていた。Luckeyは、他のメーカーの視野にあるものと、まったく変わらないと指摘している。Magic Leapの開発チームは、彼らが作っているものを説明するときに、独自の専門用語を作り出すほどだったのに、自分たちで言い出した技術を完成できなかったとLuckeyは言っている。

彼らはそれを「Lightware」と呼んでいる。長年にわたり、彼らの宣伝文句の中心的な存在だった。また彼らは、「フォトニック・ライトフィールド・チップ」、「ファイバースキャンイング・レーザーディスプレイ」、「デジタル・ライトフィールドをユーザーの目の中に投影する」技術、さらには、数十年間にわたってヘッドアップディスプレイの世界を悩ませ続けている「輻輳(ふくそう)調整不調和を解決」する方法、つまり、両方の目の焦点と「ふくそう」を常に一致させるための、「恒久的神経疾患」や脳障害を予防するために必須であるとMagic Leapも訴えてきた、この世界では聖杯とも言うべき技術について、繰り返し語ってきた。ふくそう調整不調和の解消技術は、VRよりも、デジタル要素と現実の要素との整合性を保たなければならないARにおいて重要になる。

要約:「フォトニック・ライトフィールド・チップ」は、反射型シーケンシャルカラーLCOSディスプレイとLED照明とを組み合わせた、単なる導波管に過ぎない。同じ技術は、もう何年も前から広く使われている。Microsoftの最終世代のHoloLensもそうだ。Magic Leap Oneは、「ライトフィールド・プロジェクター」ではない。または、広く認知された定義によるディスプレイでもない。「2焦点ディスプレイ」なので、ひとつかふたつの焦点面にすべてのUIと環境要素を配置した怪しいデモで、ふくそう調整不調和を解決したように見せかけている。それ以外の距離では、不調和が起きる。止まった時計でも、1日かならず2回は正確な時刻を示すというのと同じだ。

彼はまた、ヘッドセットの視野の狭さも指摘している。ただ正直なところ、彼は、もっと単純な光学システムを使った他社製のARヘッドセットと比較しているので、ちょっと不公平に思える。Magic Leapのディスプレイの視野範囲は、HoloLensのものよりも40パーセント大きいと見積もられているが、それでも人によっては狭いと感じるのかも知れない。

もしこれが、鳴り物入りで登場した製品に対する誰かさんの辛口批評に聞こえたなら、そのとおりかも知れない。Luckeyは、同社の注文番号のシステムから、売り上げを試算している。

Magic Leapの注文状況は、発売から数日の間は、じつに簡単に把握できた。私は友人から注文番号を見せてもらい、注文した時間と比べてみた。そこから、私は最初の1週間の売り上げを予測できると確信した。残念ながら、彼らは私がこのことをツイートした直後に、システムを変更してしまった。私が集めた情報を元に計算すると、最初の週で2000台が売れている。しかし、それは最初の48時間に大きく集中している。そこから推測するに、現時点での販売台数は、3000台を下回る。これは残念なことだが、確かな理由がある。私はMagic Leap Oneを持っている人を100人以上知っているが、彼らの中にAR開発者はわずかしかいない。ほとんどが、技術系企業の重役か、「インフルエンサー」か、初期のころに業界にいたが、ARアプリを開発しようという気がもうない人たちだ。黎明期のVR業界にとって、これは大問題だ。何千何万という開発者がいて、何千何万という開発キットが売れているにも関わらずだ。この問題の桁数が大きくなれば、Magic Leapにはとても厳しいことになる。

Luckeyは、このレビューの続編を書くつもりはないようだが、レビュー用にしばらく遊んだ後、彼は個人で買ったMagic Leap OneをiFixitに渡して分解を依頼している。

このレビュー記事が公開されると、Magic LeapのCEO、Rony Abovitzは、アニメ『アバター 伝説の少年アン』のキャラクターとLuckeyとを比較した、じつに奇妙なツイートをしている。それに続いてもうひとつ、さらに奇妙なツイートを出している。

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「この社会は不和に満ちてる。人々を団結させよう。私たちのデジタルとフィジカルの世界を統合しよう。創造しよう。そして、アーティストとなって作って遊ぼう」

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「Magic Leapの旅もパーティーも、これから面白くてクリエイティブで物凄いものになる。目標ははっきり見えている。誰でも歓迎する。ただし、どうかお行儀よく」

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(翻訳:金井哲夫)

HTCがViveヘッドセット用のワイヤレスアダプターを発表, 9月5日から予約販売

HTCは今でも、VRでは大物でいたい。同社は今日、Vive Wireless Adapterの予約販売の開始を発表した。このアダプターを使うと、ViveとVive Proのオーナーは、いわば、コードをカットできる。そしてユーザーは、ワイヤレスで自分のPCに接続できる。

そのBase Adapter*はViveとVive Proの両方で使えるが、ただしVive Proは、60ドルの互換性パックというものが必要だ。それには、Vive Proの接続ケーブルや、発泡プラスチックの緩衝材、Vive Pro用のアタッチメントデバイスなどが入っている。〔*: 別途エンタープライズ用がある。後述。〕

Vive Wireless Adapterは単体で299ドルで売られる。

同社のブログによると、インストールはこうなる:

Vive Wireless Adapterのインストールは数分で終わる。PCI-eカードをインストールして、今やワイヤレスになったViveのヘッドセットとPCが通信するためのセンサーを取り付けるだけである。アダプターのブロードキャストレンジは、センサーを起点として視界150度/6メートルであり、IntelのWiGig仕様により、妨害のない60Ghzの帯域を使用する。コーデックはDisplayLinkのXRを使用し、低いレイテンシーと高いパフォーマンス、および数時間の電池寿命を確保する。

アダプターはHTC QC 3.0 PowerBankを電源として使用する。これはスマートフォン用のポータブル充電器としても使え、アダプターの価格に含まれている。

HTC Viveのワイヤレスアダプターはこれが初めてではなく、2016年にTCPCastが220ドルのアダプターを発売したし、またこのアダプターのエンタープライズバージョンは2kのコンテンツを2ms未満のレイテンシーで複数のHTC Viveに送れる。

このHTC自身によるアダプターは、9月5日よりAmazon, Best Buy, Microsoft, NewEgg, Vive.comなどで予約販売を開始する。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

GoogleがChromeブラウザーを仮想現実(Daydream)対応にした…VRの新時代か?

Googleの今日(米国時間7/30)の発表によると、同社はVRプラットホームDaydreamにChromeブラウザーを持ち込み、そのヘッドセットからWebを閲覧できるようにするつもりだ。デスクトップとモバイルのChromeにおける、GoogleのWebVRの実験はもうかなり長いから、ついにそのときがきたという感じだ。

同社の発表によると、その実験が始まったのは2017年のGoogle I/Oカンファレンスからというから、確かにかなり長い。

Daydreamの大型アップデートの歩みが遅いのに対してFacebookのOculusは、新たに登場したスタンドアローンのヘッドセットを中心に、とくにモバイル方面で大きな発表が相次いだ。Daydreamは夏の初めに位置追跡機能のあるヘッドセットをLenovoと共に発表したが、コンテンツの不足がその足を引っ張っている。しかしWebの一部をDaydream対応にできたら、その問題も解消し、しかも多くのモバイルデベロッパーの関心をWebVRに向けることになるので、コンテンツの発見をもっと単純化しようとしているGoogleにとってさらに追い風が吹く。

昨年同社はWebVRのコンテンツをスマートフォン上のChromeで開き、それをCardboard(ボール紙製)ヘッドセットで見られるようにした。それによって、VRの中で何かをローンチしたり、探検したり、ほかのところへ移動したりが、できるようになった。

デスクトップのWebページをVRヘッドセットにロードできるようになったからといって、何かすごいことが起きるわけではないが、Googleが行なう最適化によって、WebVR対応ではないふつうのページでも、“シネマモード”と呼ばれる特殊効果をつけられる。ほかにも、匿名モードや音声検索、ユーザーが保存したブックマークへのアクセス、などの効果・機能がある。

[VRでWebを閲覧するとどうなるか]

そのブラウザーはLenovoのMirage Soloや、Google自身のDaydreamヘッドセットViewで利用でき、またAndroid上でChromeをアップデートしてもアクセスできる。

Webは仮想現実にとって、まだまだ未開の大陸だ。ヘッドセットは大衆的普及にはほど遠いし、最近はVRそのものがやや沈滞している。でもWebという要素が加われば、ソーシャル環境の仮想化などで面白いことができそうだし、VRに熱心な各社の中で今回Googleがブラウザーをヘッドセットに持ち込んだことは、デベロッパーの関心を再び呼び覚ますのではないだろうか。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa