シムシティを手本に新しい都市開発ツールを目指すUrbanFootprint

何十年間にもわたって、最高の都市計画シミュレーションは、都市計画の専門家にはまったくシミュレーションとして役に立たないものだった。しかし、幅広い人気を誇る街作りゲーム「シムシティ」は違うと、この分野の専門家でありUrbanFootprint(アーバンフットプリント)の共同創業者でもあるPeter Calthorpe(ピーター・カルソープ)氏は言う。

カルソープ氏は、都市プランナー、都市デザイナーとしてのキャリアを1970年代後半からスタートさせ、80年代中ごろには、著名な建築家でデザイナーのSim Van der Ryn(シム・バン・デル・リン)氏とともに持続可能なコミュニティーに関する本を著している。

ポートランド、ソルトレークシティー、ロサンゼルス、そして(私の故郷)ルイジアナ南部のデザインと開発計画に携わったカルソープ氏は、気候の影響からの回復力と持続性というレンズを通して都市デザインを考えてきた。その間ずっと、後にUrbanFootprintとなるツール群を開発していた。

「活動する中で、私たちはすべてのデータをひとまとめにでき、知的な質問ができるツールのことを考えるようになりました」。

【中略】

「質問ができてシナリオを構築できるものです」とカルソープ氏はインタビューの中で話している。

そのツールがUrbanFootprintのベースになった。これを使えば、特定の開発計画を視覚化でき、ひとつのデザイン上の決断を実行した場合に何が起きるかをソフトウェアでモデル化できると同氏は言う。

「都市は非常に複雑で、あらゆる次元で相互関係があるため、複数の結果を同時に見ることが、起こりうる結果を考えるうえで最も健全で最良の方法となるのです」と同氏。突き詰めれば、シムシティとそう変わらない。

このプロジェクトでカルソープ氏のパートナーを務めるのはJoe DiStefano(ジョー・ディステファーノ)氏。同社の最高責任者であり、自身の名前を冠した都市計画会社のCalthorpe(昨年5月にインフラ開発の大手 HDRに売却)でカルソープ氏とともに長年働いてきた同僚だ。

UrbanFootprintは、3年ほど前にCalthorpeから独立した会社であり、現在はベンチャー投資会社からの1150万ドル(約12億6000万円)という資金のおかげで拡大を計画している。この投資には、以前の投資会社Social Capitalと、新しくValo VenturesRadicle Impactが加わっている。

「すべての主要産業の企業は、都市で成功するためには都市を理解しなければならないと気づき始めています」とディステファーノ氏は声明の中で述べている。「基本計画のデータや分析結果の利用を簡便化することで、UrbanFootprintは、街や都市の市場に集中して効率性と持続性を高めたいと考えているすべての企業に、新しいソリューションを提供します」。

同社のソフトウェアは、行政機関の公開データや商業的に集められたデータセットなどを含むデータセットのクレンジングとキュレートを行い、アメリカ全体の土地活用のスーパー・スキーマを生成すると、ディステファーノ氏は言う。そして、UrbanFootprintがデータを持つすべての土地のあらゆる区画の現状を、クエリに基づいて提示する。

都市のインフラと、気候やその他の災害がインフラに与える潜在的リスクの分析結果を提示するUrbanFootprintのデータとツールセット

現在、都市には地球人口のおよそ半数が暮らしていて、その数は、数十年後には世界の男性、女性、子どもの70%に達すると言われている。「私たちは大きな問題にすべて対処しなければなりません」。

【中略】

「それらすべてが、私たちが都市を形作るときに関わってきますが、それをひとつにまとめて検討させてくれるツールがありません」とカルソープ氏。「私たちは、人々に都市そのものを理解してもらうためのプラットフォームなのです」。

都市を理解することは、都市計画や建築だけに留まらず、製造業から医療関係まで幅広い企業にとっても大きな価値がある。

米国結核予防会は、都市の密度と大気汚染が呼吸器系疾患と健康全般に与える影響を理解するために、UrbanFootprintのツールを利用している。

これはほんの一例に過ぎない。グローバル戦略と都市デザインのコンサルタント企業Gahlは、UrbanFootprintのソフトウェアを使って、マイクロモビリティー企業が街の中の自転車や電動キックボードの最適な配置場所と、それが通勤や地域の快適さにどう影響するかをを分析している。

また、北カリフォルニアに電気とガスを供給するパシフィック・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニー(PG&E)は、何かと評判を落としているが、熱波がそのインフラとガス電気の供給網にどのように影響を与えるかをUrbanFootprintで研究していると声明で述べている。

「PG&Eのクライメート・レジリエンス(気候変動による影響からの回復)チームは、気候変動のリスクが高まる中で、利用者への安全で安価で信頼性の高いエネルギーの供給を維持する回復システムが構築できるよう努力しています」と、PG&Eクライメート・レジリエンス責任者のHeather Rock(ヘザー・ロック)氏は話す。「その実現のために私たちは、どのように計画を立て、どのようにインフラ、従業員、顧客、私たちが奉仕するコミュニティーを守るかに関する適切な情報を、将来を見通したデータから得ています。UrbanFootprintは、そうしたリスクを慎重に見極め軽減するためのデータとツールを求める私たちにとって、大切なパートナーです」。

Social Capitalの長年のパートナーであるJay Zaveri(ジェイ・ザベリ)氏など投資家は、UrbanFootprintを、数を増しつつある、都市環境のための開発ツールに取り組む技術系企業のひとつと見ている。

「都市は、文化、ライフスタイル、願望、幸福の上部構造物であり、私たちの生活の中の現実版ソーシャルネットワークです」とザベリ氏は声明の中で述べている。「2018年以来、UrbanFootprintは民間と行政の都市計画立案者、交通とエネルギーの企業に協力して、米国の700都市超で4000近いプロジェクトを実施し、時間単位の複雑なシナリオへの答を提供してきました。都市住民が70億人に達すると言われる2050年に向けて、この10年のうちに都市システムの回復力と備えを緊急に整える必要がある中で、これは非常に重要な取り組みです」

画像クレジット:Ratnakorn Piyasirisorost / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

ANYmalはシミュレーションで起き上がり方を学んだ――チューリヒ工科大学、ロボット訓練システムを開発

高機能なロボットの開発はコストのかかる作業だ。新たに複雑な動作を教え込もうとすればおそろしく時間がかかる。しかし適切なシミュレーション・システムがあれば、マシンを訓練する費用も時間も大きく節約できる。スイスのチューリヒ工科大学のRobotic Systemsラボはこれが可能であることを実証する論文を発表した。

Robotic Systemsのサイトによれば、犬型4脚ロボット、ANYmalを訓練できるニューラルネットワークを利用したシミュレーション・システムを開発したという。TechCrunchではANYmalが倒れても起き上がれることを紹介したが、このアルゴリズムもシミュレーションによって実現した。

このシステムでは同時に2000台のANYmalの作動をリアルタイムでシミュレーションすることができるという。つまりどんなアルゴリズムがどんな結果をもたらすか、短時間に極めて多数の可能性を調べることができるわけだ。

収集されたデータは現実のロボットのソフトウェアにフィードバックされる。Popular Scienceによれば、多くのメーカーが自動運転車を開発する際にもこうした方法を用いているといいう。

チューリヒ工科大学の研究チームは、「シミュレーションによって得られた戦略を用いることにより、われわれの4脚ロボットは転倒してどんな姿勢になっても起き上がることができる能力を獲得した。これは従来の方法では不可能だった。ANYmalシステムでは無駄なエネルギーを使わず各パーツを正確にコントロールする高度な作動コマンドが発行される。これによって走る速度もアップし、困難な姿勢に転倒しても立ち上がることができるようになった」と述べている。

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滑川海彦@Facebook Google+

【以上】

ウォルマートが17000台のOculus GoヘッドセットをVRによる作業訓練用に試験的に採用

作業訓練は以前から、企業が仮想現実を利用する最初の主要な分野になる、言われていた。Walmartはすでに、そのトレーニングセンターにVRハードウェアを導入してその方向性を見せていたが、今回同社は、その5000近いストアのすべてにOculus Goヘッドセットを送って、Walmartの社員の教育訓練の頻度を上げようとしている。

この大型店の巨人は、Walmartスーパーセンターの各店舗にヘッドセットを4つずつ、そしてNeighborhood Marketには2つずつ送る。それは全社員を教育訓練できるほどの大量ではないが、それでもWalmartともなれば全体で約17000台のヘッドセットが年内に発送されることになる。

昨年同社は、STRIVR Labsの協力により、同社の200あるトレーニングセンター“Walmart Academy”に仮想現実によるトレーニングを導入する、と発表した。今回はさらにその進化形であり、前のようにPCにつないだOculus RiftではなくOculus Goを使用し、単体VRヘッドセットによる社員教育の将来性をさぐる。今回の、各店におけるわずかな台数でのテストがうまくいけば、OculusとFacebookにとっても勝利になる。なにしろこれまでVRヘッドセットといえば、実際に順調に使用する時間よりも、トラブルシューティングの時間の方が長いことで、悪名高かったのだから。

Oculusで企業とのパートナーシップを担当しているAndy Mathisが、プレスリリースでこう述べている: “Walmartは、VRを利用して社員教育の充実を図った最初の企業のひとつだ。今後その利用は、どんどん拡大するだろう。この分野でVRが魅力的なのは、ふつうのやり方では費用が高すぎたり、難しかったり、そもそも不可能だったりするような教程やシミュレーションを、VRは可能にするだけでなく、今すぐ気軽にできるからだ”。

仮想現実では、プロセスや製品が実在する前にそれらを体験できる。社員にとってその体験は、既存のオプションよりもおもしろいから、居眠り効果などもなく、学習効果が上がるだろう。

STRIVR LabsのCEO Derek Belchはこう述べる: “VRはシミュレーションをベースとする体験的学習の機会を与える。それは、2Dの教材ソフトなどでは不可能だった。VRと教育学習の関係が、Walmartの先進性によりこれほど急速に進展していく様子は、見るだけでも感動的である”。

STRIVRのVR教材ビデオは主に360度ビデオを使用し、画面上に対話を促すプロンプトが出るので、社員は実際のインフラストラクチャが存在する前に、新しい店舗形態などに触れる機会を与えられる。Walmartは、ネットで買った物のための“Pickup Towers”〔日本語参考記事〕という具体例を挙げて、実際に店に据え付けられる前に、VRでそれらと対話する体験があれば、稼働開始も早い、と述べている。

ヘッドセットの店舗への発送は、来月から始まる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ブロックチェーンを破壊するハッカーの手口をシミュレーションしてデベロッパーの事前対策を可能にするIncentivai

暗号通貨のプロジェクトは、人間がそのブロックチェーンを悪用すると破綻する。しかも分散デジタル経済が実際に動き出し、コインが離陸すると、それらを統治するスマートコントラクトの修復は難しい。あくまでも、デベロッパーによる事前対策が必要である。そこで、今日(米国時間8/17)ステルスを脱したIncentivaiは、その人工知能によるシミュレーションで、セキュリティホールを調べるだけでなく、ブロックチェーンのコミュニティを構成している人間たちの貪欲や非論理性にメスを入れる。暗号通貨分野のデベロッパーはIncentivaiのサービスを利用して、自分たちのシステムが動き出す前に、その欠陥を修復できる。

Incentivaiの単独のファウンダーPiotr Grudzieńはこう言う: “スマートコントラクトのコードをチェックする方法はいろいろあるが、新たに作った経済が期待通りに動くことを確認する方法はない。そこで私が考えたのは、機械学習のエージェントを利用するシミュレーションを作り、それが人間のように振る舞うことによって、システムの未来の振る舞いを予見する方法だ”。

Incentivaiは来週Y Combinatorを卒業するが、すでに数社の顧客がいる。顧客(ユーザー)は、Incentivaiの有料サービスにより自分たちのプロジェクトを監査してレポートを作るか、または自分でそのAIによるシミュレーションツールをホストしてSaaSのように利用する。同社がチェックしたブロックチェーンのデプロイは数か月後になるが、そのとき同社はすでに、そのプロダクトの有意義性を実証するための、いくつかのケーススタディーをリリースしているだろう。

Grudzieńは説明する: “理論的にあるいは論理としては、一定の条件下ではこれこれがユーザーにとって最適の戦略だ、と言うことはできる。しかしユーザーは、合理的でも理性的でもない。モデルを作ることが困難な、予想外の行動がたくさんある”。Incentivaiはそれらの理不尽な取引戦略を探求して、デベロッパーがそれらを想像しようと努力して髪をかきむしらなくてもよいようにする。

人間という未知数から暗号通貨を守る

ブロックチェーンの世界には巻き戻しボタンがない。この分散技術の不可変かつ不可逆的な性質が、良かれ悪しかれ、一度でもそれを使ったことのある投資家を遠ざける。ユーザーが偽りの請求をしたり、贈賄によりそれらを認めさせようとしたり、システムを食い物にする行動を取ったりすることを、デベロッパーが予見しなければ、彼らは攻撃を阻止できないだろう。しかし、正しくてオープンエンドな〔固定しない〕(AIに対する)インセンティブがあれば…これが社名の由来だが…AIエージェントはなるべく多くの収益を得るために自分にできることをすべてやってみて、プロジェクトのアーキテクチャにあるコンセプトの欠陥を明らかにするだろう。

Grudzieńはさらに説明する: “この〔すべてをやってみるという〕やり方は、DeepMindがAlphaGoでやったものと同じで、さまざまな戦略をテストするのだ”。彼はケンブリッジの修士課程でAIの技能を究め、その後Microsoftで自然言語処理の研究を担当した。

Incentivaiの仕組みはこうだ。まず、デベロッパーは、ブロックチェーンの上で保険を売るなどの、自分がテストしたいスマートコントラクトを書く。IncentivaiはそのAIエージェントに、何を最適化するのかを告げ、彼らが取りうるすべての可能なアクションを羅列する。エージェントの役柄はさまざまで、大金を手にしたいと思っているハッカーだったり、嘘をばらまく詐欺師だったり、コインの機能性を無視してその価格の最大化だけに関心のある投機家だったりする。

そしてIncentivaiはこれらのエージェントにさらに手を加え、彼らを、ある程度リスク忌避型だったり、ブロックチェーンのシステム全体を混乱させることに関心があったり、といったタイプにする。それから、それらのエージェントをモニターして、システムをどう変えればよいかというインサイトを得る。

たとえば、トークンの不均一な分布がパンプ・アンド・ダンプ(pump and dump, 偽情報メールによる価格操作詐欺)を招く、とIncentivaiが学習したら、デベロッパーはトークンを均一に分割して、初期のユーザーには少なめにする。あるいはIncentivaiは、認められるべき支払請求をユーザーが票決する保険製品は、投票者が偽の請求を偽と立証するために支払う債権価格を上げて、詐欺師から収賄しても投票者の利益にならないようにする必要があることを、学ぶかもしれない。

Grudzieńは、自分のスタートアップIncentivaiについても予測をしている。彼の考えによると、分散アプリケーションの利用が上昇すれば、彼のセキュリティサービスのやり方を真似るスタートアップが続出するだろう。彼によると、すでに一部のスタートアップは、トークンエンジニアリングの監査や、インセンティブの設計、コンサルタント活動などをやっているが、ケーススタディーを作る機能的シミュレーションプロダクトは誰もやっていない。彼曰く、“この業界が成熟するに伴い、そういうシミュレーションを必要とする、ますます複雑な経済システムが登場するだろう”。

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週末に頭を休めたい人にはMS-DOS(テキスト画面)上のdefragのシミュレーションがおすすめ

この前デフラグしたのは、何年前だろう。とくに最近は、コンピューターがそれを必要としない理由がいろいろある。でも、そんな人間こそ、デフラグをやるべきなのだ。一方、週末の休日に自分の脳をデフラグするためには、DOSマシンのシミュレーションの上で、ファンとハードディスクのノイズ付きで、えんえんと続くデフラグ過程を眺めるのが、最良の方法ではないだろうか。

それを見せてくれるのが、このTwitchのストリーミングだ。それはただただ、あなたの目の保養のために、defrag.exeを無限に動かし続ける。

自分がこういう画面と音を必要としていることは、実際に見てから分かった。ASCII文字のビジュアルには、なぜか癒やし効果がある。そして小さなブロックが動いて整列していく姿は、満足感を与える。ハードディスクの右下の方は、これからどうなるのだろう、と気になってしまう。

これが終わったら、Quake 2のような高難度のゲームをロードして、はやくなったことを確認しよう。

ハードディスクの、ブーンという音もいいね。その音も、もちろんある。ハードディスクのノイズだな、と信じてしまう。ハードディスクが、水責めに遭ってるようだ。静かな夜にプログラムを動かして、小さなノイズだけ聞こえるのは、いずれにしても良いムードだ。ときどき、ガーガーとうるさい音になるが、ちゃんと仕事をしていると分かって安心する。

誤字はわざとだろう。

もちろんこのデフラグ過程はシミュレーションだ。何十年も前のハードウェアの上で、たくさんのハードディスクとdefragが、ぼくを楽しませるために実際に動いているのではない。実際にそれをやるべきなのは、ぼくの古いコンピューターの方だ。でも、このシミュレーションは完璧だ。DOSを16:9/1080pのモニタで動かした人はいないと思うが、それは当然だ。本物らしさを犠牲にして、Windowsボックスを不要にしたんだから。

このTwitchDefragsのデフラグは、永遠に終わらないから癒やしになる。98SEの動くPCを作らなくてもよい。ハードディスクを断片化するために、いろんなファイルをコピーする必要もない。でもこのデフラグ・シミュレーションは、その過程と音も含めるべきだった。ぼくにとって、無限に鳴ってるホワイトノイズは、鯨たちが発するノイズより断然良い。

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NASAが作った雪の結晶が解けていくシミュレーションは嵐の予報に役立つだけでなくとても美しい

雪については、まだ分かってないことが多い。それはどこから来るのか? どこへ行くのか? どんな味がするのか? これらの疑問に、一応の答はあるけれども、もっと複雑な疑問もある。顕微鏡的な微細なレベルでは、空中の雪はどのように解(溶)けるのか? それが、NASAのあるプロジェクトのテーマで、その結果は実用的であると同時に美しい

雪は、天候というシステムの重要な要素だ(雪氷圏(cryosphere)という言葉をご存知だったかな?)。そして、雪が形成され解けていく過程は、気象学者が、たとえば嵐やその激しさを予報するのに役に立つ。でも雪について知るためには、雪片を手のひらに取って、それを見つめているだけではだめだ。どんな研究でも、それを正しく理解するためには現象の数学的モデルが必要だ。

Jussi Leinonenは、NASAのジェット推進研究所で長年、この問題に取り組んできた

“解けていく雪のモデリングに関心があった。それがわれわれの遠隔感知機器の観察に与える影響を、知りたかったからだ”、と彼は最近のリリースで言っている。天候のパターンを理解し予測できることは、もちろんロケットの打ち上げにも関係がある。

Leinonenがもたらしたものは、雪片の解ける様相や要因の正確なモデルだ。それを雪片のタイプごとに、温度の違いごとに、解け方の状態ごとに作っていく。そのベーシックなバージョンは: 雪片の凹面に水が集まってそこが液体になる。その小さな湖が広がり、やがて氷の結晶全体を覆い、核を包む。そしてそれもやがて解ける。

と書いてしまうと単純だが、Leinonenのモデルはきわめて詳細で、雪片の形の違いや塊りの違いによる解け方の違いも表している。それを3Dで視覚化した映像(下図)は、とても美しいだけでなく、とても正しく見える。

正確なモデルがあれば気象学者は、雪や雨のさまざまなタイプを分析でき、それらが、どんな条件下でどう振る舞う、ということも分かる。またそれらの違いがレーダーのどんな画像になるかも、詳細に分かる。

雪片が解けていく様子を高解像度で映像化した動画は、スクリーンセーバーとしても人気が出そうだ。ただしLeinonenが作ったのは、Geophysical Researchに載った研究論文のみだけど。

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オープンワールドゲームの仮想空間で自動運転車のソフトウェアを訓練する – 例えばグランド・セフト・オートなど

トップゲームの多くは、リマスターされたり他のプラットフォームでリリースされたりしながら長い寿命を保っている。しかしゲームに投入された労力が全く新しい形で実を結ぶこともある。たとえば自動運転車や、配送ドローン、その他のロボットの訓練を行っている企業たちが、実世界を模倣したシミュレーション訓練環境を提供してくれる、豊かで詳細な仮想世界を求めているのだ。

シミュレーションで可能になった進化のおかげで、小さなチームと限られた資金で超音速ジェットを構築することができたBoomといった企業の例や、NIO(以前のNextEV)といったスタートアップたちが、自動運転ソフトウェアの開発において、Grand Theft Auto V(GTA V)のようなゲームから派生した実世界環境のシミュレーションを用いることで、資金を要するより大きな技術課題に対して伍していくことが可能になって来ている。ブルームバーグの報告によれば、このアプローチはWaymoやトヨタ研究所などを含む、実世界の運転体験に対する補完を求めている企業の間で人気が高まっている。

もちろん、いくつかの欠点もある。どんな用途向けに対しても、シミュレーションは多くのことを行えるが、実世界のテストを完全に置き換えることはまだできない、最も進化したシミュレーションの中でも再現できないことが、実世界の中では起こるからだ。また、シミュレーションの中での走行距離は、ほとんどの法機関が自動運転システムの路上価値を決定する際に考慮する、ソフトウェアによる総走行距離としてはカウントされない。

もっとも驚くべきことは、ここで示されたGTA Vが、自動運転ソフトウェアのテストのために作成された二流の代替品ではないということだ。そのオープンワールドゲームデザインの中で扱われる様々なことは、それが信じられないほど進化したテストプラットフォームであることを証明している。このことが意味することは、この2つのマーケットが将来さらに緊密に連携して利用されるようになるだろうということだ。より包括的なオープンワールドゲームデザインは、真に没入感のある素晴らしいプレイ体験を求めるユーザーたちに喜ばれるだろう、そして、実世界テストの補完として同じプラットフォームのレベルアップを図る研究者たちに、より優れたシミュレーション結果をもたらすだろう。

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(翻訳:Sako)