今日(米国時間6/22)、Dropboxはビジネス・ユーザー向けアップデートをリリースした。新たに追加された多数の新機能には企業での利用を促進する狙いが含まれている。
もっとも興味ある新機能は、モバイル・アプリを利用するユーザーがドキュメントをスキャンして直接Dropboxにアップロードできるようになったことだろう。ビジネス・ユーザーが日々取り組んでいる現実の仕事は非常に多様であり、その多くはまだデジタル化されていない。Dropboxは新たな機能を開発してサービスを使いやすく拡張する努力を続けている。
Dropboxのプロダクト責任者、 Todd Jacksonは「われわれは今でもアナログ・ツールが好きだ。あちこちに接着剤つき付箋を貼るし、ホワイトボードに図を描く。また文書をプリントアウトして読んでいる。Dropboxではユーザーがアナログ情報を手軽に取り込めるようにしようと努力している。そしてDropboxで簡単に検索し、利用できるようにするのが目標だ」と述べた。
ユニークなのは、Dropboxはモバイル・アプリにOCR〔光学文字読み取り〕システムを追加した点だ。OCRはユーザーが撮影した文書をスキャンして文字に変換する。Dropboxの主張どおりならこれによってアナログ文書を内容によって検索できるようになる。
「われわれは現実の世界における仕事の複雑さを認識し、それをシンプル化しようとしている。たとえば〔OCRスキャン機能は〕他社から送られてきた文書をDropboxにアップロードして利用できるようにする」とJacksonは述べている。
新機能には多様なユースケースが考えられる。メディアやカンファレンスには日々有用な情報が現れる。Droboxが画像をスキャンして文字化できるなら、これまで死蔵されていた情報が簡単に活用できるようになる。これがDropboxが主張するようにシームレスにできるなら、従来は重たく大きいフラットベッドスキャナを利用していた作業の大半が不要となるかもしれない。フラットベッドスキャナどころかロッカーを占領していたバインダーの書類も新しいテクノロジーで置き換えられる可能性がある。
OCRを始めとする新機能は当初iOS版が利用可能となる。Android版の登場はまだのようだ。Dropboxに問い合わせたが、Android版のスケジュールについて詳しい回答はなかった。
ビジネス・ユーザー向けの新機能は多数あるが、その一つはアプリ下部に表示される大きなプラス(+)ボタンだ。Instagramアプリだと写真のシャッターボタンに当たる位置だが、Dropboxアプリでは新しいOffice文書を作成するボタンになっている。ユーザーはアプリ内からWord、PowerPoint、Excelのドキュメントを作成できる。ユーザーはスキャンして取り込んだ文書をOffice文書にインポートすることもできる。
今日リリースされた新機能には、過去のバージョンのさまざまな文書をプレビューする機能がある。文書を開こうとするといちいち新しいバージョンにアップデートするよう促され、時間を食ってしまうものだ。新しいプレビュー機能によれば、ユーザーはたくさんの文書をアップデートすることなく、必要な文書をすばやく見つけてることができる。その文書だけをアップデートすればいいので大いに時間の節約になる。また近く、一定地域のユーザーに共有されるコメントや閲覧のみのフォルダーの」共有なども実現するという。
単なるオンライン・ストレージはコモディティ化してきた。AppleとGoogleは日々無料ストレージの容量を拡張している。こうした中でDropboxのような企業にはある種のピボットが求められることになる。
しかし適切なバランスを発見するのはなかなか困難な作業だ。強力なライバルは多数存在する。 Boxは共同作業ツールに優れており、Microsoftのクラウド化した。Dropboxが新たなエンタープライズ・ユーザ-を獲得し、つなぎ止めるのは容易ではない。【略】
Jacksonは「Dropboxには登録ユーザーが5億人おり、最大級の企業にも多数のユーザーがいる」ことを指摘した。 Dropboxによればエンタープライズ向けプランを契約しているユーザーは15万社に上るという。またJacksonによれば、Fortune
500企業の大半はDropboxをなんらかの形で利用しているとされる(無料版ユーザーも含まれる)。
大企業は新しいテクノロジーの採用に関してきわめて動きが鈍いことで知られている。Dropboxのような企業にはトップダウンととボトムアップの両方の戦略が求められる。Dropboxの新ツールはこの点で採用の広がりを期待しているのだろう。【略】
Google、Apple、Microsoftなどが参入する中で、Dropboxのファウンダー、 CEOのドルー・ハウストンが長期間維持可能な強力なオンライン・ストレージ企業を築いていけるかは今後の課題であり、大きなクエスチョンマークだ。ハウストンは今月開催されたBloombergテクノロジー・カンファレンスでDropboxはキャッフローが黒字になったことを発表した。シリコンバレーの専門家の間ではこの発言における定義をさらに詳しく調べようとする動きが広がっている。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)