大工ロボットと一緒に家を建てよう

大工仕事の新参者(おんぼろだが頑丈な納屋を作ったことがある)として、私は良きパートナーのありがたみをよく知っている。測ったり、切ったり、押さえたりするのを手伝って第3第4の手になってくれる。人間に頼む場合の欠点は、お礼にお金や食事が必要なことだ。そんな私がチューリッヒ工科大学が作ったこのロボット大工アシスタントを見つけたときの喜びを想像してほしい。

複数機関の連携によるSpatial Timber Assemblies DFAB Houseプロジェクトは、家屋の枠組みだけでなく、設計の効率も上げようという取組みだ。

誰もが想像するように、プロジェクトのロボット部分を作るのは簡単ではなかった。作業場の天井に設置された1対のロボットアームが、木材を決められた長さに切断し、しかるべき位置においてドリルで穴をあける。

ほとんどの作業は人間の介入なしに行われ、何よりも補強材や足場を必要としない。これらのモジュール(部屋の大きさのバリエーションに応じて組み合わせが可能)は、事実上自立できるように特別な設計で作られていて、荷重や剛性は梁材の組み合わせによって対応されている

事前にCAD作業が行われ、ロボットは設計図に沿って、お互いぶつからないように気をつけて、ゆっくりとしかし効率的に作業する。

「プロジェクトに変更が加わると、コンピューターモデルが調整されて常に新しい要求に対応する」とプロジェクトを率いるMatthias Kohlerが説明した。こうした統合デジタル建築技術は、設計、計画、実施の隙間を埋める役目を果たす。

ボルト止めは人間の作業員が担当している。これも自動化できそうに思えるが、現在のロボットには作業に必要なセンサーやツールが備わっていないのかもしれない。

最終的に柱や梁は、これもプレハブ製のコンクリート柱で補強され、正確にこの配置に合わせて砂ベースの3Dプリンティングで作られた「スマート・スラブ」 に組み込まれる。3階建ての家は秋には完成して見学のために公開される予定。詳しくはプロジェクトのウェブページで。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

『ベスト・キッド』の続編、Cobra KaiがYouTube Redに――予告編公開

無頼空手道場、コブラ会が復活した。1984年の名作『ベスト・キッド』の続編がYouTube Redのオリジナルドラマとして放映される。.

新シリーズは5月2日からYouTubeの有料サブスクリプション・チャンネルでスタートする予定だ。YouTube Redのドラマにはオリジナルで主人公のダニエル・ラルッソを演じたラルフ・マッチオ、敵役のジョニー・ローレンスを演じたウィリアム・ザプカがそれぞれ同じ役で出演する。オリジナルで描かれた対決があってから34年後という設定だ。今週リリースされた予告編では主演の2人が50代に入っているはずなのに驚くべき華麗な技をを披露している。

予告編ではジョニーがビール缶が散乱する床にうつ伏せに転がっている。荒んだ生活を送っているらしい。一方ダニエルは自分が経営するカーディーラーの軽妙なテレビCMに登場する。前作のクライマックスで負け犬だったダニエルがいじめっ子のジョニーを今や伝説的な「鶴の構え」から顎を蹴り上げてノックアウトして以後、2人が送ってきた生活がこれの短いショットではっきりわかる仕組みだ。ダニエルのカーディーラーを訪れ、侮辱されたと感じたジョニーは恨みを晴らすべくCobra Kai道場を復活させ、歪んだ精神で空手を教える。

オリジナルが純然たるファミリー向け作品だったのに対し、新ドラマでは罵り言葉や激しい格闘シーン使いが散りばめら、路線が大きく変更されていることをうかがわせる。YouTube Redでの放映開始前にトライベッカ・フィルム・フェスティバルで4月24日先行公開される予定だ。

〔日本版〕YouTube Redは日本をカバーしてないが、YouTubeでドラマ、映画を有料で購入またはレンタルで視聴できる。Cobra Kaiのようなオリジナルドラマに関しては現在情報がない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

無から水を得る懸賞Water Abundance XPRIZEのファイナリスト5作品が決定

水は生命にとって欠かせないものであるにもかかわらず、戦争でインフラが破壊されたり、気候変動で川や帯水層が干上がってしまったところなどでは、飲用に適したきれいな水を得ることがとても難しい。技術革新推進のための懸賞NPO Xprizeの新しい応募課題Water Abundance XPRIZEがこのほど締め切りを迎え、大気から水を採取する技術5点が、決勝に残った。

課題の要件は、まるでSFなみに厳しい。それは、“再生可能エネルギーだけを使って大気から一日に2000リットル以上の水を取り出すこと、そのコストはリッターあたり2セント以下”だ。そんなこと、可能だろうか?

目の前に100万ドルの優勝賞金が人参のようにぶら下がっていると、誰もがその課題に挑戦したくなる。しかし決勝に残ったのは5社で、彼らは25万ドルの予選突破賞(milestone prize)を仲良く分け合う。それは決勝戦に向けての資金でもある。まだ詳しい技術情報は得られていないが、5つの作品をアルファベット順にご紹介しよう:

Hydro Harvest: オーストラリアのニューカッスル大学のチームは、“基本に帰れ”を実践した。コストを抑えるためには賢明な判断だろう。このチームは以前、ごみを燃料とする無公害の発電機を作ったことがある。

JMCC Wing: ハワイのチームのチームリーダーは長年、太陽光発電や風力発電に取り組んでいる。そこで今回の応募作品も、超高効率でスケーラブルな風力発電装置と商用の復水器(water condenser)を組み合わせている。発電機が大きいほど、エネルギーコストは安い。

Skydra: シカゴのチームの作品だが、“自然と工学系のシステムを併用したハイブリッドなソリューション”、という超短い情報しか、今のところ得られていない。

The Veragon & Thinair: これはアルファベットではUの下と上の両方に来るが、とりあえずここに置いた。このイギリスの共同チームは、復水(water condensation, (主に冷却により)空気中の水を回収)効率の高い素材を発明し、真水だけでなくミネラルウォーターへの応用も計画している。

Uravu: インドのハイデラバードのチームもやはり“基本に帰って”ソーラーを利用しているが、太陽電池は使わずに、装置の設計により、太陽光を直接利用する。得られる水は、たぶんかなり温かいのだろう。

最初の試験は1月に行われ、第二ラウンドは7月だ。そのときは、ビジネスプランも評価の対象になる。8月に賞金100万ドルを得る勝者が決まる。誰が勝ってもいいけど、全員の今後の健闘と地球上各地での活躍を期待したいね。

画像提供: https://www.rwlwater.comのライセンスによる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Dropbox、IPOを明日に控え売出価格を21ドルに引上げか

本日(米国時間米国時間3/22)Dropboxは、明日の株式公開の売出価格を 当初の予定より高く設定すると発表した。時価総額は目標の100億ドルに近づく。

今週Dropboxは、IPO価格を1株あたり18~20ドルの範囲として時価総額最大80億ドル(完全希薄化した株数に基づけば約87.5億ドル)に設定すると発言していた。新しい価格設定によるとDropboxの評価額は約84億ドル(完全希薄化株数では90億ドル)になる。18~20ドルという価格範囲も当初提示された16~18ドルよりは上がっていた。DropboxはこのIPOで7億ドル以上の資金調達を見込んでおり、並行して既存株主が900万株以上を売りに出す。

つまりはDropboxが世間の関心を試したということで、実際関心は非常に高い。IPOの価格範囲を控えめに設定しその後その価格で買いたいという投資家候補がどれだけいるかを見て価格を上げる企業もある。Dropboxは明日、株式市場デビューを果たす予定で、時価総額を最大化するとともに、IPOポップとよばれる急騰(通常20%前後の値上がり)も確保したい。正式な価格は今日のSEC申請資料でわかるはずた。

順調に行けばDropboxは最後の調達ラウンドの評価額を上回り、消費者プロダクトスタートアップのブームの中、時価総額100億ドルに届く可能性がある。オンラインストレージの先駆者であるDropboxは、近年では大企業ユーザーを徐々に獲得して高収益な第2の事業も進めようとしている。同社は、まず企業内チームの顧客を取り込み、成長とともに会社幹部にリーチを伸ばす古典的なシナリオを展開しているが、Dropboxが普及するにつれ逆のパターンも可能になるだろう。

CNBC が最初にこのニュースを取り上げた

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

MIT、砂漠の空気から水を絞り出す装置をテスト中

スター・ウォーズの世界ではライトサーベル、ホログラム、ハイパードライブといったはなばなしいテクノロジーが有名だが、水不足の惑星タトゥイーンではルーク・スカイウォーカーのおじさん夫妻は水不足に苦しんでいた。ネタバレ覚悟でいえば、オーウェンとベルは悲劇に襲われ、水を得ようとする努力は実を結ばなかった。それでも砂漠の空気中から水を得るというアイデアは魅力的だった。

MIT〔マサチューセッツ工科大学〕の研究チームは、アリゾナ州テンピで新しいデバイスをテストしていることを発表した。これはまさにスターウォーズ的な装置で、砂漠の空気から水を絞り出すことができる。太陽光で駆動される装置はMOF〔金属フレーム〕に収められ、湿度10%以下という極端に乾燥した砂漠の大気から水分を抽出することができる。既存の同種の装置にくらべて50%以上効率が高いという

この装置は現在アリゾナ州立大学の建物の屋根に設置されている。取り出された水分はまだミリ単位だが、不純物を含まない水であり、実証実験としては有望なスタートだ。

研究チームのリーダー、Evelyn Wangは「この装置は水源から水を吸い上げる必要がなく、きわめて安定して作動し、高品位な水を得ることができる」と論文で紹介している。

可動部分はなく、いったん設置すれば作動中はかなりの期間放置しておいてよい。実用化できるかどうかは得られる水の量にかかっている。実用になるなら市場はそうとうな規模になるだろう。

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Google AssistantアプリがGoogle Payに対応――スマートフォンで個人間送金もできる

今日(米国時間3/22)から、OK, Google, send Bryan 15 dollars! などと命令できるようになるという。スマートフォンのGoogleアシスタントがGoogle Payを操作するコマンドをサポートするようになった。

Google Payは以前のAndroid Pay改名し、iOSアプリと統合されたサービスだ。Bryanへの送金が朝食代を貸しただけなら(そして例によってBryanが返すのを忘れているようなら)、OK, Google, request 15 dollars from Brian と催促できる。この機能は現在のところスマートフォン・アプリのみだが、Googleに取材したところ、数ヶ月以内にホーム・アシスタントでもサポートする計画だと明かした。

スマートフォンのアシスタントにまずGoogle Pay操作機能が導入されたのは、スマートフォン・プラットフォームの方が本人確認が確実だからだろう。スマートフォンではGoogleはアプリの使用にパスワードないし指紋による認証を求める。Googleホームはたしかに何人かの声を識別できるが、今のことろ、スマートフォンのような厳密なユーザー認証は行っていない。

Googleアシスタントは使っていてもGoogle Payは使っていないユーザーも多いことを考慮して、アシスタントはまずGoogle Payのセットアップを助ける。Google Payによる支払には手数料はかからない。

〔日本版〕英語版Google Homeのセットアップ・ページにはAssistantを通じてショッピングを行う場合の設定の仕方が記載されている。 日本版GoogleアシスタントにはショッピングないしGoogle Payについての情報はまだない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

スイス警察、通常任務用車両としてTesla Model Xを導入

TeslaのModel Xが、法執行機関からの注目を集めているようだ。と、こんな言い方をすると誤解を招いてしまったかもしれないが、悪い意味ではなく、肯定的な評価を得ているようなのだ。たとえばトロント警察は、警察車両として利用する場合のカラーリングを施したデモ車を公開していた。そしてスイスのバーゼルシュタット警察は、正式な警察車両としてModel Xをオーダーしたのだ。

Electrekによれば、オーダーされたもののうち、最初の7台が秋に納車される予定となっているとのこと。バーゼルシュタット警察のこれまでの公式車両と比べて初期費用は高くつくものの(これまでは、1台あたり平均9万7千ドルのディーゼル車を使用していた。新しい警察仕様のModel X P100Dは14万7千ドル程度となっている)、トータルでのメンテナンスおよび燃料費をおさえることができると踏んでいるそうだ。

秋に導入される最初の7台に続いて、2019年中にも納車されることとなっている。バーゼルシュタット警察によれば、エコロジー面およびトータルコストの観点からModel Xの採用にいたったとのこと。荷物の積載量の多さも決め手のひとつだったと述べている。

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(翻訳:Maeda, H

AIをクラウドにデプロイする過程を単純化するためにPaperspaceはサーバーレスを選ぶ

GPUベースのインフラストラクチャをサービスとして提供することは、スタートアップにとって容易なことではないが、機械学習やVFXを多用するモダンなソフトウェアの開発とデプロイを目指すクラウドインフラストラクチャサービスPaperspaceは、あえてそれに挑んでいる。そして同社は今日(米国時間3/21)、さらに次の一歩として、AIや機械学習のプロジェクトでサーバーのデプロイを不要にするサービスプラットホームGradientを発表した。

どんなサーバーレスのアーキテクチャでも、サーバーがいなくなるわけではないが、ユーザー(デベロッパー)が手作業でそれらをデプロイする必要はなくなる。Gradientはコードをデプロイする手段を提供し、アロケーションやマネージメントはすべてPaperspaceが面倒見る。それにより、機械学習のモデルの構築に伴う複雑性の、大きな塊(かたまり)を取り除く。

同社の協同ファウンダーでCEOのDillon Erbによると、数年前に同社を立ち上げたときはGPUは今日のクラウドサービスのように一般化していなかった。最初は仮想マシンのGPUインスタンスを立ち上げるやり方が主流で、今でもそうだが、問題はツールの不備だった。

Erbの説明では、大企業はツールセットを内製することが多い。しかし実際には、それだけのリソースを持たない企業がほとんどだ。“GPUなどで十分な計算パワーがあっても、それだけではだめで、ソフトウェアスタックが必要なんだ”、と彼は言う。

同社が昨年1年間を費やして作ったGradientは、デベロッパーにそのための構造を提供し、それにより彼らは、もっぱらモデルやコードの構築と、プロジェクトを軸とするコラボレーションに集中できるようになる。そしてマネージメントは、Paperspaceにまかせる。DevOpsのチームが、チームとコードとその下のインフラストラクチャの間の対話を管理する必要も、なくなる。

“コードとDockerのコンテナだけをいただければ、VMのスケジューリングなどはわれわれがいたします。ご自分でマシンを立ち上げる必要はありません”、とErbは語る。

Paperspaceは、Y Combinatorの2015年冬季クラスを卒業して以来、クラウドにGPUをデプロイするという難題に取り組んできた。2014年にローンチしてから今日までに1100万ドルあまりを調達してきたが、シードラウンドの400万ドルがやっと2016年だった。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Twitterの創始者Jack Dorsey曰く、10年後にはbitcoinが世界で唯一の通貨になってる

Twitterの創始者Jack Dorseyがbitcoinを強力に推していることは周知の事実だが、 今日(米国時間3/21)は、彼がbitcoinに関してものすごく強気であることを伺わせる談話が飛び込んできた。

イギリスの有力紙The Timesのインタビューで、この、Twitterと簡易決済システムSquareのCEOは、bitcoinには成長痛に負けないだけの力があり、いずれは世界中で使われる普遍的なデジタル通貨になる、という信念を述べた。

“世界は最終的には単一の通貨を持ち、インターネットも単一の通貨を持つ。私の個人的な信条では、それはbitcoinだろう”、とDorseyは述べている。その変化に要する時間は、彼によると、“たぶん10年か、それよりもっと短いぐらい”、だそうだ。

今のbitcoinには“有効な貨幣になるための能力がない”、と認めるDorseyも、そのコア技術の改良によって、いずれは、より良質な貨幣に育つ、と考えている。

“今のbitcoinは遅いし高コストだが、もっと多くの人が持つようになると、その問題もなくなるだろう。ブロックチェーンの今後の新しい技術によって、bitcoinはもっと親しみやすいものになっていく”。DorseyはTimes紙にそう語っている

つい先週Dorseyは、bitcoinのような暗号通貨の処理を高速化できるプロトコルLightning Networkを扱うBay AreaのスタートアップLightning Labsに、250万ドルのシード資金を提供した。bitcoinなどの上にLightning Networkの層があることによって、独自の小さな台帳を持った二次的チャネルが作られ、それらが本体ブロックチェーンの過剰なトラフィックによる渋滞を緩和し、処理をスピードアップする。この技術に興味のある方には、Coindeskにあるこのドキュメントの一読をお勧めしたい。

Dorseyはまた、自分の企業Squareでも、そのモバイル決済システムでbitcoinのサポートを続けるつもりだ。Square Cashにbitcoinのサポートが加わったのは昨年で、今では Square Cashのすべてのユーザーが、そのサポートを利用できる

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

マイクロLEDの秘密研究所、アップルの研究開発、そして利幅の将来

アップルが、カリフォルニア州にマイクロLEDディスプレイのための研究施設を建設したようだと、BloombergのMark Gurmanは先週末伝えた。おそらく、iPhoneやその他の製品に使用する次世代の画面技術をテストし少量生産するためのものだという。これに先立ってアップルは、2014年、マイクロLEDのスタートアップLuxVueを買収している

この秘密の研究所のニュースは、研究開発により深く関わり、より多くの予算をかけるようになったアップルの大きな流れから見ても合点がゆく。アップル情報に特化した有料ブログサイトAbove AvalonのNeil Cybartによると、アップルは「2018年度の研究開発費が140億ドルに上る勢いであり、これはほんの4年前の研究開発費のほぼ2倍にあたる」という。さらにこう指摘する。「2018年にアップルが注ぎ込もうとしているこの140億ドルは、アップルが1998年から2011年までに費やした研究開発費の合計を上回る」

どんな企業にとっても、これは驚くべき額だが、アップルにしてみても、この規模の研究開発費は例外的だ。さらに注目すべきは、アップルの研究開発費の収益に対する割合は、この数年確実に増加し、そのときよりも収益が増しているにも関わらず、この10年間での最高だった5.3パーセントに近づきつつあるとCybartは話している。

収益に対するこの割合はアップルにしては高いと言えるだろうが、技術業界の同業者たちに比べると、驚くほど低い。グーグルやフェイスブックなどでは、アップルの収益に対する研究開発費の比率は2倍以上、ときには3倍にも達している。その理由のひとつとして、アップルの大きな収益と規模がある。競合他社よりも高い収益があるために、アップルは研究開発費を償却できるのだ。

さらに興味深い事実がある。アップルには、チップ開発やディスプレイ製造といった研究開発に多額の費用がかかる分野への参入を避けるという伝統があった。それよりも、製品の開発と統合にフォーカスしてきたのだ。それでも低予算な分野とは言えないが、新しい液晶技術を市場に送り込むといった事業よりは安上がりだ。

アップルは、自社製の携帯電話の無線モデムや電源管理システムは製造せず、
たとえばiPhone Xの場合はQualcommといった外部メーカーの製品を使っている。iPhone Xの大きな売りでもあるディスプレイですら、自社製ではなくサムスン製だ。アップルの価値は、そのディスプレイを(エッジレス・スクリーンとして)電話機に埋め込み、色を補正するソフトウエアを開発し、非常に高い画質を実現させるところにある

長い間アップルは、こうした統合にフォーカスした研究開発モデルでウィンウィンの状態を保ってきた。交渉では強みを活かし、最高の技術を低価格で使うことができる。さらに、それらの部品の研究開発費は、iPhoneだけでなく、その他の製品に技術を応用することで償却が可能になる。つまりアップルは、価値の高い製品の開発に資産を投入でき、自社製品に必要だがコストがかかる研究分野から遠ざかることで、ハードウエア業界で大きな利益を獲得し続けることができたのだ。

そんな研究開発モデルが変化したのは、今からちょうど1年前にアップルがP.A. Semiを2億7800万ドルで買収してからのことだ。アップルは、製品開発にフォーカスしていた研究開発から、製品の鍵となる重要なデバイスの自社開発に、徐々に移行を始めている。そのことは、iPhoneの中核となるプロセッサーを見れば明からだ。たとえば、iPhone XのA11 Bionicプロセッサーは、完全にアップルのカスタムデザインであり、TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)で製造されている。

このプロセッサーは、まさに垂直統合の出発点となる。これがiPhoneの数多くの機能を提供し、電池の寿命にも大きな影響力を与えている。顔認証機能も、A11チップに組み込まれた「ニューラルエンジン」によって支えられている。

顧客の興味を引き、大金を支払ってまでも欲しいと思わせる差別化された機能を生み出すことと、過去にアップルが避けてきた自社製部品の開発との間には、大きなつながりがある。ディスプレイは、差別化において決定的な意味を持つ重要な部品だ。サムスンに対抗するために、その技術を自社内に持っていたいとアップルが思うのは自然なことだ。

そうしたわけで、アップルは差別化を増すために、さらに研究開発費を注ぎ込もうとしている。それは結構なことだ。実際、そうした出費は、アップルの強い立場を活かした投資だという声がある。強烈な意志の強さでもって、アップルは世界でもっとも価値のある企業のひとつとなった。そして、競合する数多くの市場を支配してきた。とくにスマートフォン市場だ。ブランドへの高い忠誠心を示す顧客も数多い。そしてアップルは、さらに成長し、より多くの市場を獲得しようと、自動車のような新しいデバイス分野に手を広げる機会を伺っている。つまり、アップルは成長を進めるために研究開発費を拡大させているのだ。

アップルは、縮小するスマートフォン市場での立場を維持するために必死になっていて、研究開発費の拡大は、じつは同等の性能ではるかに安価な競合他社製品に対抗して、高い製品価格を守るため(つまり利益を守るため)の防衛手段なのだという否定的な見方もある。しかし、アップルの自社開発ハードウエアは、他社にない機能性の原動力となっている。そしてそれが、この先も利益を保つために必要な差別化を生み出す。

どちらの話にも真実があるが、ひとつだけ確実なのは、アップルの利益に対するプレッシャーが大きくなっていることだ。iPhone Xの売り上げについて、人々は確かな情報に基づく予測を立てていたが、アナリストの多くは、これまでもこれからも、期待を下回るだろうと見ている。価格が高いためだ。もしそれが本当なら、価格を高くすれば、高額な研究開発費の埋め合わせができないことになる。そしてこのふたつの関係は、スマートフォンのイノベーションにおいて、アップルがこれまでに経験したことがないほどの大きな重しとなるだろう。

何千億ドルもの資産を持つ企業は、マイクロLEDのような先端技術の研究開発に先陣を切って投資するべきだろう。しかしアナリストたちは、売り上げによる利益だけではなく、利幅も気にかけている。増え続ける支出と販売台数の低下は、アップルの資金繰りに関わる不吉な前兆となっている。

Image Credits: Tomohiro Ohsumi / Getty Images

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(翻訳: Tetsuo Kanai)

[ビデオ]: Uber自動運転車の死亡事故のときドライバーはよそ見をしていた

アリゾナ州テンピーの警察が、Uberの自動運転車による死亡事故の、直前の状況を撮ったビデオを公開した。そのビデオには、Uberから見た街路と、自動運転車の運転席にいる人間介助者の様子が写っている。

警告: このビデオには視聴者を不快にさせる要素があります。

そのビデオは、被害者が暗い通りを横切ろうとしたとき、Uberの自動運転によるVolvo XC90が時速60キロメートルで彼女にぶつかる様子を写している。そしてそのとき、自動運転車のお世話をすべき人物は、衝突の直前に下を向いている。その介助者が何に気を取られたのかは、よく分からない。また、明らかに自動運転車のセンサーの感知圏内を歩行速度で横切って行く被害者を、Uberのシステムが検出せず反応しなかった理由も、よく分からない。

Uberが本誌TechCrunchにくれた、事故関連の声明はこれだ:

私たちの心は被害者の家族と共にある。私たちは地元の当局によるこの事故の調査に全面的に協力している。

3月19日の事故以来Uberは、ピッツバーグとテンピー、サンフランシスコ、およびトロントの公道からすべての車両を引き上げた。自動運転モードで動いている自動運転車で死亡人身事故が起きたのは、今回が初めてである。国の道路交通安全局によると、同局は事故調査専門チームをテンピーに派遣した。局のスポークスパーソンは本誌TechCrunchにこう述べた: “この調査チーム派遣行為は、自動化技術を含むすべての自動車両と装備の安全性に対するわれわれの細心の監督と権能に基づくものである”。

“道路交通安全局はまた、この事故に関してUber, Volvo, および国と州レベルの監督当局と接触している。われわれは情報を調査し、必要な措置を講ずる”。

事故のあとToyotaは、アメリカにおける自動運転のテストを中断した

この悲しい事故は、自動運転車が解決すべき状況を表している。そのシステムには暗視能力が必須であり、また、Twitterなどによって注意力を逸(そ)らされてはならない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

MITの魚ロボット、フィジーで本物を調査

MITのCSAIL(コンピュータ科学・人工知能研究所)は同所で開発したロボットフィッシュ、Sofiの動画を公開した。フィジーの珊瑚礁を泳ぐ姿はくつろいでいるようだ。プロジェクトの目的は本物の魚にできるだけ似せた自動水中乗り物を作ることだ。海洋生物の邪魔をすることなく研究できることを願っている。

システムは柔らかいロボット筋肉を中心に作られていて、本物の魚の尾と同じように動作する。「シリコンエラストマーを使って体表面に等しく圧が分散するように空洞を置いた」と同研究の筆頭著者であるRobert KatzschmannがTechCrunchに話した。「バルーンチャンバーを2つ作り両者の間に水を行き来させる。圧の変化によって尾が波のようにうねる」

原理は既存のソフト・ロボティクスが利用しているものと似ている。多くのシステムが空気圧の移動を利用して関節を動かしている。この方式は魚が一定の動作を続けることが可能で、水中を進む際に発生する音が少ないのが特徴だ。

しかし研究チームは、音を別の目的で使用している。防水されたSuper Nintendoを持ったダイバーが専用の音響システムを使ってSofiを遠隔操作する。

「水中では電波信号が非常に早く吸収されるため、Wi-FiやBlootoothが1メートル以内でしか使えないことが課題だった」と大学院生のJoseph DelPretoが言う。「音は水中を速く進むので電波の代わりに使った。リモコンが発信する高い音は人間には聞こえないがロボットは解読できる。これを使ってロボットに高いレベルのコマンドを送ることができる」

今のところシステムから得られるのはすてきな動画だけだが、Sofiの内蔵カメラと魚眼レンズを活用すれば、海洋生物学者はこれまでに類をみない形で研究対象を調べることができるとチームは期待している。

「この魚ロボットは鯨の生態を理解するうえで非常に大きな役割を果たす可能性をもっている」とCSAILのDaniel Rus所長が話し、鯨の出産をビデオで捕らえるのは非常に難しいことを付け加えた。「われわれ作った魚を静かな観察者として使い、これまで見たことのない画像や映像を撮影するところを想像してほしい。私たちは海洋生物についてずっと多くのことを学べるようになるだろう」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

対戦現場で具体的にゲーマーを強くするAIアシスタントのGosu.aiが$1.9Mを調達

とっても難しいけど、どうしても勝ちたいゲームに挑戦しているときは、あなたの肩越しに覗き込んでアドバイスしてくれる名人がいるとありがたい。その人があなたの癖や戦い方のパターンなどをよく知ってる人なら、なおよろしい。

そう考えたGosu.aiは、ゲーマーを助けるためのAIアシスタントを開発した。このほど同社は、Runa Capitalがリードするラウンドで190万ドルを調達した。この投資ラウンドには、Ventechと、既存の投資家Sistema_VCが参加した。以前同社には、シリコンバレーでAI専門に投資しているアーリーステージVC Gagarin Capitalが投資していたが、そこは、のちにFacebookとGoogleにそれぞれ買収されたPrismaとMSQRDにも投資していた。

Gosu.aiは、ゲーマーがゲームに強くうまくなるためのツールやガイダンスを提供している。そのツールは対戦を分析して、各人に合ったアドバイスをする。またゲーム中で装備する装具やアイテムについても助言し、また敵のタイプごとに攻め方を教える。今はDota 2だけだが、近くCS:GOとPUBGもサポートする。

同社のファウンダーAlisa Chumachenko(上図)は、元クリエイターで、ゲーム大手Game InsightのCEOでもあった。彼女によると、“世界には20億人のゲーマーがいて、うち6億はMOBAsやShooters、MMOsなどのハードコアなゲームをプレーしている。我が社のAIアシスタントで、彼らが自分の潜在的な力をフルに発揮できるようにしたい”、という。

Gosu.aiの主なコンペティターは、MobalyticsやDojomadness、Moremmrなどだ。しかしこれらの競合他社は主に戦果を統計的に分析してプレーヤーの弱点を見つけ、一般的なアドバイスを提供する。対してGosu.aiは、各プレーヤーのアクション(マウスの動きなど)を分析して、直接的な指示を出す。まさにそれは、仮想アシスタントが自分のそばにいる感じで、一般的な訓練ではない。

しかもGOSUはB2Bもやっていて、ゲーム企業に、予測分析などのAIツールを提供している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

マーク・ザッカーバーグがもっと恐れる7つの質問

FacebookのCambridge Analytica問題はもっと巨大なスキャンダルの始まりにすぎないのだろうか。その答えは今のFacebookがどれほど透明であるかにかかっている。CEO Mark Zuckerbergは、データのプライバシー改善について声明と計画をつい先ほど発表したところだが、最も重要な疑問のいくつかに対する回答を避けていたほか、謝罪にもいたらなかった。

この複数年にわたる騒動にFacebookがどう具体的に対処したかは、大衆が過去を水に流して再びニュースフィードに戻ってくるか、規制当局が急襲し、ユーザーが大挙して去っていくのかを決める重要な別れ道だ。世界中のジャーナリストが情報を探り、政府当局がZuckerbergの証言を求めることで、真実はすこしずつ明らかになっていくはずだ。

  1. Facebookはどこまで追求したのか。2015年にCambridge AnalyticaがFacebookのユーザーデータを削除すると約束したとき、実際に削除されたかどうかをFacebookはどこまで厳しく調べたのか?なぜ公表しなかったのか? (Zuckerbergはいつそれを知ったのか? Zuckerbergはリベラルと見られることや、保守的政治団体を調査することを懸念したのか?)
  2. Cambridge Analyticaが不正入手したFacebookデータを使っていたことを、Facebookはどうやって知ったのか。当時Facebookの社員はドナルド・トランプ陣営と直接関わっていたのか?(Facebook社員はトランプ陣営のサンアントニオ事務所でCambridge Analyticaと机を並べて作業していた。だとすれば怪しいデータを見てみぬふりをしていたのか?)
  3. Cambridge Analyticaは不法なFacebookデータを別ルートでも入手していたのか。Aleksandr Koganのアプリ以外のアプリやFacebookグループのメンバーリストをスクレーピングしたり、他のデベロッパーからデータを買い取ったりしたのか。(トランプ陣営によるFacebookや他のソーシャルネットワークデータの熟練した利用状況からみて、彼らはこれ以外のデータも使っていた可能性が高い。)
  4. ロシア人ハッカーあるいはロシア政府発のデータをCambridge Analyticaがトランプ陣営の選挙運動に利用した証拠はあるのか?(証拠がある場合、Facebookはロシアとトランプ陣営の共謀を示す証拠になりうるのか?)
  5. FacebookはCambridge Analyticaの今後の捜査に関わるデータや広告を所持しているのか?(もしCambridge Analyticaが実際にデータを不正使用したのなら、どんなコンテンツに利用されたのか、ほかに誰が支援していたのか?)
  6. Facebookはなぜ、Cambridge Analyticaに関するThe Observerなどのニュース記事を法的措置を用いて排除しようとしたのか? スキャンダルの贖罪に真剣に取り組んでいたのではなかったのか?(一連の法的措置を承認、実行したのは誰か。その後彼らに何が起きたのか?)
  7. Facebookは不正入手されたデータのセキュリティーをどうやって守ったのか。Facebookが監査する予定の疑わしいデータ以外にも、データのコピーを保存しているデベロッパーは山ほどいるはずだ。(ほかのデベロッパーによる不正利用のニュースが今後出てくる可能性はあるのか?)

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

猫の飼い主同士をマッチングするnyansが複数のエンジェル投資家から3000万円調達

猫の飼い主同士をマッチングする「nyatching(ニャッチング)」を提供するnyans(ニャンズ)は3月22日、複数のエンジェル投資家を引受先とする総額3000万円の第三者割当増資を実施した。

2月22日の猫の日にサービスローンチしたnyatchingは、猫の飼い主限定のマッチングサービスだ。近所に住む猫の飼い主を探し、家を留守にする際の猫の世話を他のnyatchingユーザーに依頼することなどを目的としている。

サービスローンチ時には本社のある福岡県在住のユーザーを限定に事前登録を開始していたnyatching。ローンチからちょうど1ヶ月の現在、事前登録には数百人のユーザーが登録済みだという。同社は今回の資金調達を期に、東京23区在住のユーザーからの登録を受け付ける。

地域限定で事前登録を実施する意図について、nyans代表取締役の谷口紗喜子氏は「サービス自体がご近所さんでのマッチングを重要視しているため。地域を絞らないと会員が分散されてしまい、ご近所さん同士でのマッチングが図りづらくなることを懸念しており、まずは地域を絞ってサービスを展開する」と話す。全国での展開の時期は未定だという。

GoogleがLytroを4000万ドル前後で買収との情報――ライトフィールド技術でVR世界構築強化

先週、Googleは仮想現実中で没入的写真を表示する新しいアプリを発表した。また多数のカメラを利用してこうした全周写真を撮影するテクノロジーも紹介している。これは16台のGoProカメラを円周上に配置したデバイスだったが、Googleではエンドユーザーが手軽に利用できるサードパーティーのテクノロジーの採用を準備しているという観測が広がっていた。

複数の情報源がわれわれに語ったとこによれば、GoogleはLytroを買収するという。このスタートアップは当初ライトフィールド記録テクノロジーを用いた画期的な多焦点カメラを売り出したが、後にテクノロジーの応用先をVRへとピボットした。

TechCrunchは多数のLytroへの投資者に加えてGoogle、Lytro自身にメールで問い合わせているが、まだコメントは得られていない。しかしわれわれはこれら企業ないし買収手続きに近い複数の情報源から交渉が進行中であることを聞いている。

O一人の情報源は「これはLytroの資産を入手するのが目的で価格は4000万ドル以下だ」と述べた。別の情報源によれば2500万ドル以下だという。Lytroの売却先としてFacebook、ないしAppleも考慮されていたとする情報源もあった。別の情報源によれば、Lytroの社員でGoogleに移るものは多くないらしい。退職金を受け取って去ったり、単に会社を辞めた社員も多いという。

Lytroの資産の中心はもちろんライトフィールドに関連する59件の特許だ。

実現したとしてもGoogleによる買収はLytroや投資家にとって大勝利には遠い。PitchBookのデータによれば、同社はこれまで2億ドル以上を調達しており、、2017年に行われた最後のラウンドにおける会社評価額は3億6000万ドルだった。投資家はAndreessen Horowitz、Foxconn、GSV、 Greylock、NEA、Qualcomm Ventures他、多数に上る。Googleのハードウェア担当上級副社長、Rick OsterlohがLytroの取締役会に加わっている。

4000万ドルというのは同社が新しいコンセプトのカメラを発表したときに期待されていた額からはかけ離れたものだ。当時Andreessen Horowitzの共同ファウンダーのベン・ホロウィッツは「このカメラには仰天した」と述べていた。

Lytroは2006年にRefocus Imaging社としてRen Ngによって創立され、2011年に現社名となった。しかしハードウェアの製造は文字通りハードな事業であり、VRの普及速度も期待されたほどではなかった。また没入的映像のプラットフォーム構築に大企業が参入したこともあり、Lytroは苦境に陥っていた。

Lytroが失速したのは、テクノロジー的に優れていたもののカメラがマスマーケット向けプロダクトとして高価すぎ、大型過ぎたこと、VRにピボットした後もマーケティング力が弱すぎたことが原因だろう。同時にライバルの大企業には潤沢な資金にものを言わせて自動車であれ地図であれゲームであれ、VRに関連する市場環境が成熟するのを待つ余裕があったことも逆風となった。

GoogleがLytro買収で正確に何を目的としているのかはまだ不明だが、同社のテクノロジーが世界最大のIT企業のプロダクトに組み込まれる可能性が出てくることは確かだ。【略】

リアルな仮想現実を実現するにはいくつかの手法があるが、Lytroの場合は、映像を構成する光線の入射方向に関する情報を記録して画像を合成するライトフィールドと呼ばれるテクノロジーだ。2次元の映像に奥行き情報が畳み込まれて3次元の画像となっている。これは没入的体験を得るためには優れた方法だ。これにより一つの対象に焦点を絞ると他の対象はぼやけて表示される。これはグリーンスクリーンのような特殊な装置を使わずに特定の対象を分離するためにも役立てられる。

仮想現実体験の弱点のひとつがVR酔いと呼ばれる現象で、2次元映像に奥行きがないため、装着者の視点の移動に追随できないことが原因の一つだった。ライトフィールド・テクノロジーはこの弱点を解消するために適しているかもしれない。また他にも応用範囲は広いはずだ。【略】

この記事は当初の公開後、買収価格およびライトフィールド・テクノロジーに関してアップデートしてある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

CryptoKitties、1200万ドルを調達してスピンアウト―Andreessen Horowitz他が大人気の暗号化ゲームに投資

バーチャル世界でブロックチェーン・テクノロジーを用いてネコを集めるゲーム、CryptoKittiesがバイラルな旋風を巻き起こしていることを報じたが、同社が1200万ドルの資金調達に成功していることが判明した。これによりCryptoKittiesはAxiom Zenからスピンアウトして独自の企業となる。ゲームを開発したAxiom Zenはバンクーバーとサンフランシスコにオフィスを持つデザインスタジオだ。

資金調達ラウンドはAndreessen HorowitzとUnion Square Venturesがリードした。両社はCoinbaseのような急速に成長しつつある暗号通貨スタートアップを支援することで注目をあつめている。またラウンドにはNaval Ravikant(AngelListのCEO、ファウンダー)、Mark Pincus(Zyngaのファウンダー)、Fred Ehrsam(Coinbaseのファウンダー)など多数の著名なエンジェル投資家が参加している。

簡単にいえば、CryptoKittiesとはポケモンカードのような仕組みでネコを集めるゲームだ。Ethereumブロックチェーンを利用しているため、それぞれのネコは「世界でそれ一匹」というユニークさを備える。いわばビーニーベイビーズのデジタル版だ。ユーザーはバーチャル・ネコを購入するために大金を投じている。もっとも人気の高いネコは10万ドルを集めたという。

同社は将来の計画について明らかにすることを避けているため、調達した資金を何に使うのかも今のところ不明だが、プロダクトをバーチャル・ネコ以外のグッズの収集に拡大するつもりなのは間違いない。この場合にもEthereum ERC-721コレクティブル規格が利用されるだろう。同社のゲームは暗号通貨に詳しくない一般ユーザーでもプレイしやすいことが特長だ。

Union Square VenturesのFred WilsonはCryptokittiesに投資した狙いを説明し「ブロックチェーン・テクノロジーの各種の応用の中でもデジタル・コレクティブル・ゲームはきわめて重要な分野だと考えている。このテクノロジーが普及しつつあることで以前は不可能だった数々の機能が実現した。われわれはデジタル・コレクティブル・ゲームは、ブロックチェーンのマスマーケットへの適用として、唯一ではないにせよ最初の大型プロダクトの一つになると考えている」と述べた

CryptoKittiesについては冒頭のリンク先のTechCrunchのこの記事が詳しく紹介している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

この亀は、ロボット虐待はいけないことだと子供たちに教える

人類が危機に瀕しロボットに追い詰められたとき、私は何人かを相手にバットを振り回すことをいとわない。しかしそれまでの間、私たちは機械じかけの同士たちと仲良くしてければならない。そしてこの亀ロボットは、人間の子供たちにロボット虐待がいけないことだと教えてくれる

Naver LabsとKAIST、ソウル国立大学の研究者らは、子供たちにロボットに対する行動がどんな結果を呼ぶかを教えるためのこのロボットを作った。Shellyという名のロボットは、触られたり叩かれたりすると反応を示す。怖いときは色を変え、手足を引っ込める。子供たちは、Shellyが叩かれると怒ることを学ぶ。Shellyがかみつくことはない。

「子供の虐待行為が原因でShellyが遊ぶのをやめると、もっとShellyと遊びたかったほかの子供たちが不満を訴え、最終的に互いに虐待行為を制止するようになる」とNaver LabsのJason J. ChoiがIEEEに話した。研究の結果、Shellyの反応によって子供たちから受ける虐待が減ることがわかった。

研究者チームは、先週行われたACM/IEEE International Conference on Human Robot InteractionでShellyを披露した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Appleの無人運転試験車、この2カ月で倍増

Appleの自動運転車への取組みが進んでいる。1月以来試験走行車の数が2倍近くになった。

現在同社はカリフォルニア州運輸局に45台の自動運転車を登録しているとFinancial Timesは伝えている。この結果Appleの自動運転車両の数はカリフォルニア州でGeneral Motorsに次ぐ第2位となった。

2017年4月、Appleは3台の自動運転車をテストする許可を初めて受けた。今年1月に試験車は27台となり、その後わずか2カ月で倍近くに増やした。Appleはアリゾナ州でもテストを行う計画だ

その一方で、規制のハードルは上がろうとしている。日曜日(米国時間3/18)の夜、アリゾナ州テンピでテスト中の自動運転車が事故を起こし、衝突した歩行者が死亡した。

これは自動運転車の事故で死亡者がでた初めてのケースであり、Uberは全都市で試験運転を中止した。

この事故を受け、試験走行の実施に対して当局がこれまで以上に慎重な態度にでる可能性がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

AWS Lambdaのイベントトリガを使いやすくしてWebサイトの開発方法を改革するNetlify

Webプロジェクトの継続的なデプロイメントを支援するサービスNetlifyのビジョンは、Webサイトの作り方を変えることだ。とくに、フロントエンドのデザインとバックエンドで実行されるサービスとの結合を、もっとシンプルにしたい。今日同社は、そのビジョンの実現に向かう次の一歩として、NetlifyのサービスにAWS Lambdaのファンクションを導入した。

同社のねらいは、Web開発に伴う多くの複雑性を、できるだけ減らすことだ。たとえば、ユーザーがHTMLとJavaScriptでフロントエンドをデザインすると、Netlifyはそれをさまざまなサービスに結びつける。決済ならStripe、メールによるニューズレターの管理ならMailChimp、というように。このやり方でNetlifyは、Webサーバーという概念を抽象化(実体のないものに)してしまう。デプロイが遅くてセキュリティもスケーリングも困難なあのあれが、消えてなくなる。そして、一枚岩的なWebサイトから、スタティックなフロントエンドとバックエンドのマイクロサービスという組み合わせへ移行し、それによりセキュリティとスケーリングの問題を解決、そしてサイトを従来よりも相当早くユーザーに渡せるようになる(デリバリが早い)、と同社は信じている。

ユーザーは、サイトの構築に何を使ってもよい。ユーザーが作った設計/デザインを渡されたNetlifyは、バックエンドのコーディングのすべてをエッジに置き、コードはエッジで実行される。その意味で同社のサービスは、半分はContent Delivery Network(CDN)、残る半分はデベロッパーの自動化エンジンだ。

この、より動的なWebサイトをより早く作るというNetlifyの能力がAndreessen HorowitzのパートナーPeter Levineの目に留まり、昨年8月に同社の1200万ドルのシリーズを彼がリードした。Levineは曰く、“彼らの、マイクロサービスとAPIsを活用して柔軟性に富む動的な(ダイナミックな)Webサイトを作る、という考え方はすばらしいアイデアだ。しかも、エッジへデプロイすることによって、さらにハイパフォーマンスなユーザー体験を作れるし、GitHubを統合することによってアプリケーションを容易に作成し管理できる”。

今日の発表は、同社のサービスのそんなアプローチをさらに一歩前進させる。Lambdは、AWSのいわゆるサーバーレス・ツールだ。デベロッパーはファンクションを作り、それが特定のイベントにトリガされて実行される。デベロッパー側には、サーバーを24/7動かし管理しメンテナンスする苦労がない。これは、NetlifyのWeb開発アプローチとぴったり相性が良い。つまりそれは、AWS Lambdaと同じく、WebのパブリシングプロセスからWebサーバーを取り除くから。

そしてNetlifyは、Lambdaのファンクションを、もっと容易に実行できるようにした。同社によると、Webデベロッパーは確かにイベントトリガーという考え方を気に入っているけど、AWSのワークフローは複雑すぎる。イベントトリガーをデベロッパーのアイデンティティで容易に作れるようになれば、Lambdaをもっと気軽に利用できるだろう。

同社の協同ファウンダーChristian Bachは、こう説明する: “Lambdaが良いことは自明だが、それを軸とするワークフローがないために、使いづらい。われわれにはフロントエンドをパブリシングするワークフローがあるので、サーバーレスもそれと同じようにしたい、と考えた”。

“Lambdaのトリガのひとつひとつが小さなマイクロサービスになり、ブラウザーからそれらにアクセスできる”、と彼は述べる。たとえばStripeを使って決済をする場合なら、Stripeの秘密の認証情報のコードで決済のゲートウェイに入る。“従来なら、この小さな呼び出しのために、どこかでサーバーを動かす必要がある。この小さな機能だけのために、Railsのアプリケーションを作るだろう”、Bachはそう述べる。

しかしNetlifyのやり方では、認証情報を数行のコードでタイプし、それからLambdaのトリガとNetlifyの糊的なコードを少々使うだけだ。これにより、そのコードをどこに置くか、それをどうやって管理するか、という問題が解決する、とBachは言う。

かねてからエッジコンピューティングをテクノロジーの大きな駆動因として見ているLevineがNetlifyのシリーズAをリードし、同社の取締役会に加わったたのは、たぶん偶然ではない。

Levineは曰く、“かなり前からエッジコンピューティングには注目しているし、Netlifyは、エッジにおけるサービスという大きなトレンドの一部だ。同社は、現代的なWebサイトを構築しデプロイする方法を開発した”。

同社は、2015年に創業され、これまでに1410万ドルを調達している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa