EdTechユニコーンDuolingoが株式公開を申請

ピッツバーグを拠点とする言語学習ビジネスのDuolingo(デュオリンゴ)が、24億ドル(約2653億円)の評価額とともに、正式に株式公開を申請した

この400人規模の会社は、Severin Hacker(セベリン・ハッカー)氏と、CAPTCHA(キャプチャ)やreCAPTCHA(リキャプチャ)を発明したLuis von Ahn(ルイス・フォン・アン)氏が共同で創業した企業だ。その中でも特に注目すべき点は何だろう?それは、シリコンバレー外の場所に拠点を置く、当時としては珍しいEdTech・コンシューマー・ビジネスが生み出した、収益化への道だ。同社は、完璧なビジネスモデルを見つけるために、試行錯誤を繰り返しながら、遠い道のりを歩んできた。当初は教育を無償で提供するというミッション下に、サブスクリプションには嫌悪感を見せていたものの、最終的はサブスクリプションにたどり着いた。

幸いなことに、S-1申請書を見るとそうした決断が会社の急速な収益増につながったことがわかる

現在Duolingoの収益の大部分は、サブスクリプションによるものだ。たとえば2020年の実績では、同社の総収入の73%がサブスクリプション収入によるものだった。この売上に続いて、2020年の総収入の中では、広告収入とDuolingo English Test(DET)がそれぞれ17%と10%を占めている(特にフォン・アン氏は、2019年までにDETがDuolingoの収益の20%になることを希望していたが、この数字には僅差で届かなかった)。

多岐にわたるビジネスモデルが功を奏しているように見える。同社の売上は、2019年の7080万ドル(約78億4000万円)から2020年の1億6170万ドル(約179億円)と129%の伸びを見せている。もちろん、最近の世界的なパンデミックがなくても、このような成長もある程度は達成されていただろう。しかし新型コロナに関係した加速を数字の中に読み取ることは難しいことではない。また、Duolingoの2021年第1四半期の売上高は5540万ドル(約61億3000万円)で、前年同期に比べて97%の伸びを示した。

同社は先日、調整後ベースでの黒字化を達成したところだ。

しかし、より厳密な会計条件では、Duolingoの純損失は拡大している。例えば、2021年3月31日までの3ヵ月間の純損失は1350万ドル(約14億9000万円)で、220万ドル(約2億4000万円)の純損失を計上した前年同期に比べて急増している。そして、2019年から2020年にかけての同社のGAAPベースの純損失は、1360万ドル(約15億円)から1580万ドル(約17億5000万円)に拡大した。

特筆すべきは、2020年に売上が2倍以上になり、損失の伸びはそれほどでもなかったため、同社の売上純利益率が改善したことだ。今回の上場においては、同社の収益性の高低は問題にならないだろう。

S-1申請では、Duolingoは1億ドル(約110億7000万円)という希望調達金額を提示したが、IPO時にどの程度の資金を調達することができるかは、ロードショー終了にIPOの価格帯を設定した後で知ることができるだろう。

このS1申請が事実上、2021年第3四半期のIPOシーズンのキックオフになるだろう、何人かの投資家がTechCrunchに語ったところによれば、このシーズンはより活発なものになることが期待されるという。

Duolingoは、これまでに1億8330万ドル(約202億9000万円)のベンチャーキャピタル資金を調達している。同社の主要投資家は、NewView Capital、Union Square Ventures、CapitalG、Kleiner Perkins、そして最近セカンダリー取引によって投資家のテーブルに加わったGeneral Atlanticなどである。

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現在の予想売上高が約2億2000万ドル(約243億5000万円)で成長率が100%以上であることを考えると、独自に設定した24億ドル(約2653億円)という価格をクリアすることは難しくないだろう。それは公開市場の投資家が、EdTech市場の成長がほとんど終わったと懸念していなければの話だが、第1四半期にDuolingoが100%近く成長したことは、そのような懸念を和らげることになるだろう。

その他の興味深いトピック

TechCrunchは、DuolingoのIPO申請書をまだ精査中だが、最近の成長と業績に彩りを添える、いくつかの詳細な出来事を発見した。ここでは、その中からいくつかをご紹介しよう:

  • 2020年の離職率は、従業員の2%に当たる4名のみという「過去最低」を記録した。
  • 同社は最終的に、提供している言語全体で「Duolingo Proficiency Score」(Duolingo習熟度スコア)を開始する予定だ。このことで「広く受け入れられる言語習熟度の指標を作り、Duolingoを世界的な習熟度の基準にしたい」と考えている。
  • 2020年にローンチされテキストの文章や音声を複数の言語間で翻訳できるApple(アップル)のiOS版「翻訳」アプリを「リスクファクター」の項目で競合として挙げている。
  • そして最後に、同スタートアップに補完的なサービスを追加するために、買収候補者を探していることを認めている

Duolingoは、ティッカーシンボルDUOLを使用して、NASDAQ証券取引所に上場する予定だ。

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カテゴリー:EdTech
タグ:DuolingoIPO

画像クレジット:Duolingo

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(文: Natasha Mascarenhas、Alex Wilhelm、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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