SaaS、PaaSそして今度はAIaaSだ。未来志向で起業家精神に富んだスタートアップ企業が、あらゆるタイプの企業のさまざまな問題解決に向けて、人工知能を利用したプラグ&プレイのソリューションをネットから提供しようとしている。
あらゆる業界が既製のAIソリューションを採用している。専門家の予測では、AIソフトウェアのグローバルな収益は、今後、その多くがオンラインのAIaaS(Artificial Intelligence as a Service)に由来し、34.9%という驚異的な年率で伸びていくという。2025年には1000億ドル(約11兆円)に到達するだろう。すばらしいアイデアのように聞こえるが、「一人勝ち症候群」という注意点がある。
AIを利用して差別化を図り、優位に立ちたい企業は、一種のブームに乗ってそれを行うのでないかぎり、計画と戦略が必要だ。しかも多くの場合、それは既製のソリューションではなく、あなたが独自にカスタマイズしたソリューションであることを覚悟しなければならない。
人工知能の重要なアルゴリズムの1つであるLSTMを提唱したSepp Hochreiter(ゼップ・ホッフライター)氏によると「AIプロジェクトにおける実装の最良のタイミングと最小のリスクが両立するためには、チームの構築をゆっくりと行い、外部の実績あるエキスパートも起用することだ」という。「最良の人材はすぐに雇用できるものではない。しかも、能力や才能は雇用時にわかるものではなく、数年後にやっとわかります」。
それは現在、オンラインでサービスを提供している既製のAIソリューションとは大違いだ。AIaaSが提供している人工知能の技術は、大別して2種類ある。優勢なのは極めてベーシックなAIシステムで、すべてのビジネスに対する万能のソリューションを提供する。それらは、AIサービスが複数のモジュールを提供して、在庫管理でも顧客データベースの最適化でも、どんな製品の製造過程の異状の発見でも、何でもできるという。
またAIaaSで製造工程を自動化すると称するAI企業は、彼らが個々のケーススタディから集めてきたデータがたまたまクライアントにフィットすればうまくいく。しかしながら、いずれにしても制約のあるデータ集合と、同じく制約のある総称的な目的がベースであるため、必然的に問題がある。汎用的なAIソリューションが作り出すのは、あくまでも汎用的な結果だ。
例えば損耗を検出するアルゴリズムを訓練するプロセスは、製品によって異なる。靴はスマートフォンではないし、スマートフォンは自転車ではない。そこで、環境やその他の要素の違いに対応して、インテリジェントなモジュールが生産工程を管理し変えていく「本物の」AIが動くために、企業はクライアントのためにカスタマイズされたソリューションを開発する。
しかしAIaaSのまずい体験に懲りた多くの顧客は、再挑戦をためらい時間の無駄だと感じている。それに、本格的なAI処理を必要とするユースケースの多くが、期待したあるいは約束された結果を生んでいない。それを知りながら顧客を騙したとして、クラウド企業を訴えたところもある。その訴えでは、既製のAIが有効なソリューションだと顧客に印象づけながら、そうではないことを最初から知っていたと非難している。また、テクノロジーが十分な回数正しく動かなければ、本物のAIを有効利用できる企業も、始める前にギブアップするだろう。
必要なのは、ソリューションを標準化して、すぐに使えるようにし、大量の専門知識を不要にすることだ。AIaaSのこれまでの成功によって研究者たちは、インフラ管理のために全AIのサービスを必要とせずに、複雑な実験ができるようになっている。
未来においては、AIのエキスパートでない個人がAIaaSを利用して、必要な結果を得られるようになって欲しい。とはいうものの、設定などすべてが正しければ、現在のレベルでもオンラインの自動化AIサービスは製造業にかなり貢献している。
正しく作られたAIは、現在、すでにさまざまな業界に大きな利益を提供している。だからAIをギブアップするのではなく、自分たちが利用しようと思っていたAIにもっと深入りすべきなのだ。例えばそのソリューションは十分にカスタマイズできるだろうか?サービスはどれだけのサポートを提供しているのか?アルゴリズムは自分のユースケースのデータを扱えるよう特別に訓練されているか?……AIサービスを購入するときには、これらの問いをするべきだ。そして、答えが親切丁寧で、その主張を正しいデータと高い成功率で証明できる企業を、パートナーに決めるべきだ。
ビジネスを強化する新しい開発がすべてそうだったように、AIの応用も高度な専門知識と専門技術が必要だ。大手のクラウド企業で働いている技術者には、そんな知識と技術がある。そして彼らなら、最初からカスタマイズされたソリューションを開発して顧客に大きな価値を提供できただろう。検討を要するテーマは、それだけの知識と技術をオンラインのサービスで提供できるかだ。今実際にあるそんなシステムは、答えになっていない。
編集部注:本稿の執筆者Ralf Haller(ラルフ・ハラー)氏は、NNAISENSEのセールス&マーケティング担当エグゼクティブ・バイス・プレジデント。
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画像クレジット:Feodora Chiosea/Getty Images
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(文:Ralf Haller、翻訳:Hiroshi Iwatani)