山梨大学と化学企業大手JNCは12月16日、下水中の新型コロナウイルスを世界最速レベルで分離する技術を開発したことを発表した。これは、JNCのウイルス分離のための特許技術Pegcision(ペグシジョン)法を用いたもので、磁気を使ってウイルスを分離する。
下水中の新型コロナウイルスを定期的にモニターする「下水疫学調査」により、感染流行の早期探知が可能になるのだが、これまで大量の下水から新型コロナウイルスを効率的に分離し濃縮する方法がなかった。だが今回、山梨大学大学院総合研究部附属国際流域環境研究センターの原本英司教授とJNCが開発したウイルス分離技術は、新型コロナウイルスの分離を30分ほどで可能にする。その回収率は、2021年3月30日に公益社団法人日本水環境学会COVID-19タスクフォースより公開された「下水中の新型コロナウイルス遺伝子検出マニュアル」で推奨されているポリエチレングリコール(PEG)沈殿法(処理時間9時間以上)と同等であることが確認された。
Pegcision法は既存のウイルス分離技術と比較して「迅速、簡便、高収率でかつ低コスト」とのこと。また磁石で分離することからスループットが高く、一般的な磁気分離装置で大量検体の処理も可能としている。今後は「早期の新型コロナウイルスの下水疫学調査普及につながるよう」研究を進めるという。