編集部記:Dennis MitznerはCrunch Networkのコントリビューターだ。Dennis Mitznerはテルアビブ在住でスタートアップやテックトレンドについて執筆している。
Sirin Labsは新たなハイエンド向けスマホ製造会社で、セキュリティーの高いスマホをローンチするため、 SingulariteamのファウンダーMoshe Hogeg、カザフスタンのビジネスマンKenges Rakishevと中国のSNSであるRenrenから7200万ドルをシードラウンドで調達した。
新型スマホはSirin Labsのロンドンにある旗艦店で5月に発表する予定だ。
AppleとFBIとの争いやWhatsappの暗号化の発表など、世界的にデジタルセキュリティーに対する関心が高まっている。この新しいスマホ会社(すでに3年間開発を行っている)は、軍が利用可能なレベルの安全性と毎日使うスマホの機能を組み合わせた端末を製作している。
「私たちは軍事利用が可能なスマホと毎日使うスマホの機能を組み合わせることができました。私たちはできる限りベストな端末を製作することを目指しています。限界を設けずに2つの世界から最高の要素を統合できるか試してみようと考えたのです」 とHogegは言う。
両方の機能を兼ね備えた端末は高額になるとHogegはいう。
「世界で最も高額なスマホにはなりませんが、1台あたり1000から1500ドル近辺になるでしょう。Teslaが私たちのお手本です。彼らは高い値段で車の販売を始めましたが、現在その価格は随分と下がっています」。
この価格帯を考えれば、対象となるカスタマーは25歳のテクノロジー愛好家ではなく、Fortune 500の企業の役員ということになるだろう。
Hogegは現状の商品群で抜け落ちているハイエンドの製品を作ろうと考えている。
「テクノロジー愛好家として、現在利用できる最先端技術を搭載したスマホを提供したいと考えています」とHogegはいう。「Fortune 500企業の91%はサイバー攻撃を受けていますが、企業が軍のスマホを使用できないのは、コンシューマーが使うようなアプリのほとんどが搭載されていないからです」。
セキュリティーの高いスマホ領域はBlackberryが2013年に撤退して以来、比較的手薄な分野になっている。この領域では現在セキュリティーに関心の高い企業をカスタマーとしている。
Silent CircleのBlackphoneは現在、そのようなカスタマーを獲得するのに注力している。同社の端末の価格は799ドルなので、Sirinのターゲット層とは異なるだろう。
しかし、Silent Circleは 昨年の2月に行った5000万ドルの調達に伴い、ビジネスユーザーを獲得し、BlackBerryのマーケットシェアを取りに行く考えだと示した。
また、フィンランドに拠点を置くBittium は2月のMobile World CongressのイベントでBittium Tough Mobileを発表した。これはBlackphone、そして価格が近いARCHOSのGranitePhoneと真っ向から競合する製品だ。
ARCHOS、Silent Circle、Bittiumがマーケットシェア獲得のために競争するなか、HogegのSirin Labsはコンシューマーが正当な不安を感じている時にローンチする。コンシューマーは利便性を妥協したり、時間を無駄に費やしてしまうアプリを諦めないで、セキュリティーの高い端末に高額な料金を出すことを厭わないかもしれない。
多くのセキュリティー重視のスマホメーカーは法人向けに特化している。Hogegが採用しているTesla方式が思惑通りにならなければ、その高額な価格帯を考えるとSirinもこのカテゴリーにあてはまることになるだろう。
Hogegは、セキュリテイーにおける専門性で有名なイスラエルの力を借りて、セキュリティー対策を施したスマホ市場を席巻するための知識をSirinに注入したい考えだ。Sirinの本社はスイスにあるが、Sirinの毎日のオペレーション業務とその管理はテルアビブにあるオフィス(研究開発とオペレーションを担う)とスウェーデンのルンドにある Sigma Connectivity内に集う人員で担っている。
Hogegはスウェーデンのエンジニアリングとイスラエルのセキュリティーの専門性を掛け合わせることが勝利への方程式だと考えている。
「テルアビブはハイテク企業の集積地で、その中心にインターネット・セキュリティー、アンチウイルスソフトウェア、そしてサイバー防御テクノロジーがあります。スウェーデンは世界でも有数の通信技術のエンジニア、デザイナー、コンピューター・サイエンティストの軸となる場所です」とYoアプリのファウンダーは言っていた。
RakishevとRenRenは、HogegのSingulariteamにも投資していたが、Sirinは両社にとって全く別のベンチャー投資だ。
Rakishevは活発な投資家で石油化学業界の大物だ。 Hogegは彼とMobliやGenesis Angelsなどのプロジェクトで組んでいた。Genesis Angelsの会長は、現在収監されているイスラエルの元首相エフード・オルメルトが務めていた。
Sirinは2人の最新のプロジェクトであり、2013年にRakishevのスマホがハッキングされた時に生まれた。ハッキングはRakishevのスマホ端末にもダメージを与えたが、それ以上にRakishevのモバイルテクノロジーに対する信頼に大きなダメージを与えた。
「Rakishevは彼のスマホがハッキングされた時のことを話し、プライバシーを守りつつ、それでも国際的なビジネスパーソンのニーズに答えるモバイル端末をなぜ見つけることができないのかと言った。テクノロジーのイベントや出版物にあるような最新テクノロジーがコンシューマー向け端末にはなぜ搭載されていないのかと言った」とHogegはいう。
同社のオペレーションの責任者とCEOはTal Cohenで、彼は以前マッキンゼーのコンサルタントを務めていた。他には元Sony Ericssonのプロダクトデジレクターを務めた Fredrik Oijerや、優美なミニマリズムのデザインで知られるKarim Rashidがデザインを担当する。
Rashidは高級品のデザインで有名だが、高級なスマホのデザインをするわけではない。
「Sirinは高級品ということではなく、最先端のテクノロジーを使用するためにハイエンド商品に行き着いたということです」とHogegは言う。
Sirinはユーザビリティとセキュリティーの両方のフォーカスするコンシューマー向け製品で競合に打ち勝ちたい考えだ。現在、完全な暗号化を提供する企業の多くは法人向けだ。
「私たちは包括的なアプローチを取ります。ハードウェアとソフトウェアのソリューションを統合することで、セキュリティーと暗号化を保証します。年内に行うローンチイベントでプロダクトの詳細を発表します」とHogegは言う。
本日投資家として名が挙がっていたRenrenは、同社のSirinに対する役回りについて言及しなかった。Renrenは以前からHogegとつながりがあること、そして中国のイスラエルへの関心が高まっていることを考えると今回の投資は不思議なことではない。さらにRenrenのソーシャルプラットフォームには1億6000万のユーザーがいて、モバイルに力を入れていることを考えていると、Renrenがスマホのセキュリティー市場で一枚噛んでいたいと思うことは驚くことではないだろう。
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