「SEOは死んだ」
と言われて久しい。
調べてみたところ、この表現が初めて日本語のWebサイトに登場したのはでは2008年らしい。
らしいというのは、Google検索の期間指定で調査しただけのデータだからだ。
最初にこの表現が使われたきっかけは、2007年にパーソナライズド検索が導入だったようだ。
順位が絶対のものでなくなったということから、こんな表現が使われたらしい。
興味があったので、このキーワードを含む
- 日本語のWebページ
“SEOは死んだ” -site:web-tan.forum.impressrd.jp
“SEOは終わった” -”SEO japan “ - 英語圏のWebページ
“seo is dead”
と検索してみたのが下の表である。
※2013年に関しては6月8日現在まで
(Web担当者フォーラムとSEO Japanは関連記事として最近の記事のタイトルが、ページの下に表示されるため除外した)
これを調べてみて実感したことが二つあった。
- 日本はITのトレンドがアメリカに比べて数年遅れる、といった現象があるらしいがこんなところからも伺える。
グローバル化と言われ続けているが、やっぱり日本は遅いようだ。 - 英語圏ではSEO is Deadということが盛んに言われ始めたのは2008年であって、それからずっとずっとずーーーっと言われ続けていることがわかる。
アルゴリズム変更があるたびに、「ああ、もうだめだぁ、SEOはもう終わりだぁ。」
と騒ぐ人がいるってことだ。
結局SEOは終わらなくて、そんな騒ぎが繰り返されながら今日に至っているわけである。
後者について思うことが今回のテーマだ。
渡辺隆弘氏は「Googleの検索ランキングアルゴリズムは本当にブラックボックスなのか」の中で、
「同じ歴史が繰り返されている」ことがよくわかるようになり、事細かなスパムフィルタリングやリンク評価の変化関係の話が「くだらない」と思えるようになるはずです
と書いているが、まさしくそんな感じだ。
私としてはアルゴリズム変更って結構どうでもよくって「ああ、またあったのね」って思うぐらいのことだ。
ご覧のとおりなかなかスパムはなくならないし・・・、ソーシャルメディアの隆盛があっても、SEOの重要性はほとんど揺らいでいないし・・・、
というわけでSEOはしばらく死なないように感じていた。
妻とこのことで話をしたことがあって、
「で、結局SEOって仕事って一生食っていけるの?」
と聞かれたのだ。
その時、ちょっと真剣に考えてみたのだ。
そうしたら答えに困ってしまって、
「まあ、当面は食えるんだろうけど、10年後、5年後とかはわからないね」
って答えたのである。
ほとんどの産業は生まれて、盛んになって、斜陽になって、やがて死ぬ。
昭和の初期の頃は石炭産業が隆盛を極めていた。
石炭は当時黒ダイヤなどとも呼ばれ、産業の基幹を支える決定的に重要な鉱物であった。
まさに花形産業だったのだ。
しかし、エネルギー革命によって石油にとってかわられ石炭産業は急速に衰退した。
SEOもこれと同じだと思うのである。
特にITは移り変わりの早い産業だ。
ある日突然とまでは言わないにしても、ごく短期間で今までメジャーであったサービスが廃れることがある。
モノであれば、今までの設備を廃棄してすぐに買い替えることはできないため、新しい技術に刷新されるまである程度時間を要する。
しかし、ITのサービスは切り替えコストがかからないので、ごく短期間に刷新が行われる。
SEOは検索エンジンというWebサービスが存在するから、存在するWebの販促手法である。
検索エンジンがなくなってしまう、あるいはキーワード検索という手法がなくなったらSEOは消滅してしまう。
ではそれはいつなのだろう?
その日は近いのではないか?というような気がしている。
どのようなサービスがSEOを消滅させるのだろうか。
私はこんなことを思っているのだ。
- amazon.comによる小売業の寡占化
まあ、楽天でもいいのだが、特定のショッピングサイトが巨大化し他のECサイトを駆逐したらサイト内検索だけでよいことになる。
これは夢物語でもなんでもない。
amazon.comの利便性、価格は他の小売業を大きく圧倒している。家電量販店は価格競争力の強さで個人経営の電気店をぼぼ駆逐してしまった。
安売りができる理由は仕入れの量による。
amazon.comは急速に売上を伸ばしており、2012年の日本国内の売上は前年比18.6%増の78億ドルにも達している。家電量販店は現在amazon.comからの挑戦を受ける守勢の立場に回りつつある。
「ショールーミング」という言葉がある。
ネット通販で買うことを前提に、店には商品の実物を見るためだけに来店する現象だ。店は店ではなく、ショールームとなりつつある。amazonアプリには、商品のバーコードを読み込ませると、即座に同じ商品の価格を表示させる機能がある。これこそまさにショールーミングの最たるものだ。
ショールーミングによってリアル店舗が消滅すると、ますますamazonは売上を増やし、さらに価格競争力を増す。
一般の小売店舗が通販で生き残れる場所は著しく狭まる。日用品までインターネットで買う時代になってきている。
小売店舗が消滅する日はあんがい早く来るかもしれない。
5年後とかには一般の小売店がほとんどなくなり、ECのショップの販促手法としてのSEOは無意味になっている可能性もある。 - セマンティック技術の進化
セマンティック技術とは、単に文字としてのキーワードではなく、意味に基づいて分類整理する技術のことだ。
Googleは現在セマンティック検索を急速に推し進めている。
ショッピングやレシピといった特定の分野では既に実用化されている。レシピ検索ではカロリー数とか、必要な材料などで絞り込むことができるし、
ショッピングでは商品カテゴリ、メーカー、商品名、価格などで絞り込むことができる。様々な分野においてセマンティック技術が進展していくと、必要とする情報を、キーワードで検索して、ヒットした文章を読むという回りくどいことをしなくても済むようになる。
マウスやタッチといったよりユーザーフレンドリーなインターフェースだけで、必要とする情報に直接たどり着けるようになる。現在は定型化できない情報であっても、様々な視点から分類整理が進む可能性がある。
SFじみているのだが小説であれば、
ストーリーを覆う雰囲気を色で例えたり、
主人公と現在の自分のリアルに置かれている立場との距離を3次元的にグラフィカルに示したり、
(現代のサラリーマンを主人公にした小説であれば非常に近く、江戸時代の下級武士であれば年代はやや遠く立場は近いとか、スペースオペラに出てくる英雄はとても遠いとか・・・)
登場人物の抱く葛藤の種類を分析して、読者の感情とマッチングさせたり、
などなど・・・こんなことは技術の進展があれば近い将来できそうな気がする。
- 文脈解析の進化
Google音声検索といった技術は文脈解析技術によっている。
答えを返すのは、答えが含まれているであろうページを返すのではなく答えそのものを返す。
Google Glassの開発によってこの技術は重要度を大きく増した状況にある。
Googleがこれに注力することで、一足飛びに進化するかも知れない。
この3つのうちいずれかが現実になったら、SEOは死ぬかも知れない。
過去の歴史を振り返ってみると、花形産業に従事している人はその産業が没落するなどとほとんど考えていなかった。
繊維工業しかり、石炭産業しかり、造船、鉄鋼・・・。
産業はすべからく没落するのだ。
SEOも没落する。
ブラックハットSEOだけではなく、ホワイトハットも含めて全てだ。
そうして、SEOは上記の産業とも異なり消滅してしまうはずだ。
その日はもうそこに来ているかも知れない。