リノべるが三井物産から13億円調達、中古物件からスマートハウスの普及を目指す

住まいの購入が人生で最も高い買い物となるだろう。新築物件も魅力的だが、中古物件をリノべして自分の思い通りに作るのも良いかもしれない。不動産スタートアップのリノべるはオンラインと店舗でカスタマーに物件の選定から、リノベーションプランを提案している企業だ。リノべるは4月4日、三井物産から総額13億円の資金調達を実施したことを発表した。三井物産からの資金調達は、一部既存株主からの取得を含んでいる。

日本ではこれまで住宅を購入する場合、中古より新築を検討する人が多かった。国土交通省のデータによると、住宅流通における中古住宅のシェアは、アメリカで77.6%、イギリスで88.8%なのに対し、日本ではわずか13.1%に留まる。日本では中古物件が十分に活用されていないのが現状だ。

リノべるでは、こうした中古住宅をリノベーションする住み方を提案している。中古物件のリノベーションであれば新築物件を購入するより費用を3分の2ほどに抑えることができるとリノべる代表取締役を務める山下智弘氏は説明する。また、自分好みの間取りや内装を作ることができるし、駅近の物件も見つけやすい。「リノベーションであれば、その人にとって満足度の高い住まいを提供でき、浮いた3分の1のお金を好きなことに使えるようにもなります」と山下氏は言う。

リノべるはこうしたリノベーション事業の他に、hometech事業として工務店向けのコミュニケーションツール「nekonote」を提供している。これは工務店が図面や写真の共有やチャットができるアプリだ。現場近くのコンビニや駐車場を検索する機能もあるという。また、このnekonoteと連携する「ジャスくる」と名付けた資材流通事業を子会社を設立して、展開している。リノベーションを行うにはそのための資材が必要となるが、例えばマンションのリノベーションの場合、ユニットバスなど大型の資材を共有部に置くことはできない。必要な資材が必要な時間に到着すれば、効率良く作業を進めることができるだろう。ジャスくるは、それを実現するために資材の物流を担うサービスだという。

もう1つ、リノべるは新しい取り組みとして始めたスマートハウス事業も伸ばしたい考えだ。リノべるはソフトバンクのスタートアップ支援プログラム「Softbank Innovation Program」に採択され、2016年10月にソフトバンクと共同開発した住宅向けIoTデバイスやウェブサービスをつなぐアプリ「Connectly App」の提供を開始している。最近ではスマートキーやスマート家電などの住宅向けIoTデバイスが増えているが、不動産会社が新築物件にこうした端末を導入するのはまだ先になるだろう。しかし、中古物件のリノベーションであれば比較的導入しやすい。リノべるではこれまでに数件、IoTデバイスを導入するリノベーション案件があったそうだ。まだまだ数としては少ないが、まずはすべてのデバイスを一括して管理できるアプリを開発して、スマートハウスの普及を目指したい考えだ。

リノべるに出資を決めた三井物産は近年、衣食住関連のスタートアップへの投資を進めている。三井物産はその一環として2016年6月、ロシアのサブスクリプション型食材デリバリーサービスのChefmarketに出資したが、今回のリノべるの出資では「住×IT」の領域で国内市場を開拓を進めるという。

三井物産は米テレビショッピングQVCの日本展開を担ったことでも知られるが、リノべるとはメディア・マーケティング分野をはじめ、スマートハウス分野、工務店向けのSaaSプラットフォーム、住・不動産IT分野での事業開発などでも協業していくという。

リノべるは2010年4月に設立し、東京急行電鉄、グロービス・キャピタル・パートナーズのほか、Vector Group International、オークファン、GMO VenturePartners、三井住友海上キャピタル、西武しんきんキャピタルらから資金調達を実施している。

これまでに1000件のリノべ物件を扱った実績ができたと山下氏は話す。今回調達した資金は、人材採用やシステム開発に充てるという。将来的には、リノベーションに向け、カスタマーのカウンセリングで得たデータや工務店向けに提供しているアプリのデータを活用した付加サービスの提供を視野に入れていく計画だ。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。