SEOは総力戦の時代だ


最近はSEOという技術領域を定義することが難しくなってきていると思う。

以前はSEOとは人工リンクの作成と若干の内部修正とほぼ同義だった。
特に重要だったのが安価に、大量に、見破られないリンクを作るノウハウ。
それがSEOだったと言っても言い過ぎではない。リンク作成という特定のスキルに特化した一種の職人芸だった。

しかし、この方法は過去のものになったといってよい。
以前であれば、強引なリンクビルディングによってビッグキーワードで無理やり上位表示させれば、他の要因が悪くてもコンバージョンは取れたのだ。

しかし、人工リンクによって検索順位を上げることが難しくなった現在、
自然検索から見込み客を集め、コンバージョン数を最大化させることがSEOの目的であるが、
検索エンジンのアルゴリズムの知識だけでは達成することが無理になったのである。

SEOのスキルセット/あるいはSEO業界へのお誘いという辻正浩氏のブログの記事の図を引用してみたい。


SEOのスキルセット
これを見ると実に必要だとされるスキルが多岐にわたっていることがわかる。

この図を見て、

いくらなんでもこれは多過ぎじゃない?

と思う人も多いだろう。
しかし、これは誇張でもなんでもない。

様々なスキルを持った上で、状況に応じて必要な手法を組み合わせて使い分けることが必要なのだ。
検索エンジンからのコンバージョンはどのようにしてなされるかを考えてみるとよくわかる。

検索エンジンからのコンバージョンを簡単にモデル化するとこうなる。

コンバージョン数 = 検索エンジンからの集客数 
            × コンバージョン率

検索エンジンからの集客数は更に分解が可能だ。

検索エンジンからの集客数 = 
      検索エンジンからのサイト全体の評価 × 
      検索結果への露出経路数 ×
      検索結果表示時のCTR(クリック率)

つまりSEOを成功させるためには、

  1. 検索エンジンからのサイト全体の評価
  2. 検索結果への露出経路数
  3. 検索結果表示時のCTR
  4. コンバージョン率

この4つをそれぞれ高めなければならない。
これらは足し算ではなく、掛け算の関係にあるため、どこか1か所でも低い箇所があると充分なコンバージョンを得ることができない。

一番大切なことは、最も低い箇所、つまりボトルネックを発見してこれをつぶすことなのだ。
ボトルネックになっている箇所を発見する知識と、ボトルネック箇所を改善する技術を持たなければならない。
だから、広範囲な知識と技術が必要になるのだ。

辻氏のSEOのスキルセットに準じて具体的に書いてみることにする。

  1. 検索エンジンからの自サイトの評価を高める
    ●バズマーケティング・ソーシャルメディア対応
     ナチュラルリンクを取るために最重要な仕掛けだ。
    ●テキストライティング・コンテンツ制作・映像
     そのそもリンクされるコンテンツを作ることが前提。
    ●その他マーケティング
     オフラインからの戦略も重要。
    ●IA・情報分類
     検索エンジンから評価されるためにIAへの配慮が非常に重要
    ●スマートフォンやタブレットといったデバイスの知識
     デバイス別の正規化などの知識がSEOには重要。
    ●HTML/CSS
     検索エンジンに高く評価されるサイトを作るため必要
  2. 検索結果に自サイトのページを露出させる
    ●『検索エンジン』の知識
     ここがいわゆる今までのSEOの知識とされている部分。
    ●キーワードマーケティング
     検索エンジンへの露出を増やすために必須。
  3. 検索結果表示時のCTR
    ●テキストライティング
     検索結果からのCTRに大きく影響する。
    ●リスティング広告
     SEOと補完関係にある。またSEOの予備調査などにも有効。
    ●セマンティックウェブ
     リッチスニペット表示やレシピ検索などの検索への対応。
  4. コンバージョン率
    ●UX・ユーザービリティ・Webデザイン
     PV・再訪率・コンバージョン率を伸ばすため必須。
    ●LPO
     コンバージョン率を伸ばす技術。

あとは、このプロセス内に入らないが全体にかかわる重要な技術がある。

●Webプログラミング
 HTMLのみならずプログラミングの知識はほぼ必須。
●セキュリティ
 クラッキングされると来訪者が激減する。
●サーバ
 レスポンスは検索順位に影響を及ぼす。
 また正規化やURL振り分けにも知識が必要。

そして重要なこと、

●アクセス解析・データマイニング
 全体のボトルネックを把握するための重要なスキル。
 辻氏はアクセス解析を最重要スキルだとしている。
 データマイニングは大規模サイトになると重要だ。
●営業
 最重要スキルかも知れない。
 Webサイトの成功のためには、社内外の人の協力が必須。
 それを取り付けるための技術だ。

※NLPだけはなんのことかわかりませんでした。
 自然言語処理(Natural Language Processing)の略でしょうか・・・
 それであれば『検索エンジン』の知識の一分野として包含されるものだと思われる。

これらのスキルを全て持っているのが理想であり、弱い分野はすなわちそのSEOコンサルタント、あるいはそのSEO業者の弱点となる。

しかし、実際のところ一人のSEOコンサルタントがスキルをすべて網羅するのは無理だ。
『検索エンジン』の知識は当然持っていなければならないのだが、その他の技術をいかに身に着けて、どれほど深く掘り下げることができるか?
そこがこれからのSEOコンサルタントの価値になってくるだろう。

SEOコンサルタントになる前の出自、あるいは他に得意な分野が重要になってくると思うのだ。

デザイナーであれば、
Webデザイン・HTML/CSS・UX・ユーザービリティ・アクセシビリティ・LPOについて深い洞察と技能を持ちそれを強みとする。

SEであれば、
Webプログラミング・セマンティックウェブ・セキュリティ・各デバイスの知識・アクセス解析・データマイニングを得意とする。

といったようにプラスアルファの強みを持つことが、これからのSEOコンサルタントとしての生きていくポジショニングだと思う。
その上でできる限り他の分野についても、自分ではできなくてもどんな解決策があるかだけは知っておく必要がある

コンサルタントはクライアントの課題を、できる限り最短距離で解決する知識が求められる。
そのためには自分の得意分野だけでなく、幅広く知識を得て、

「自分はできないけど、こういう解決策がありそれは○○さんに頼めばやってもらえる」

ということを知っている必要があろう。

これからのSEOは総力戦であり、局地的な強みだけでは勝利を得ることはできない。

自分の強みと弱みを知り、強みを最大限に生かすことがコンサルタントの個性で付加価値だ。
弱みについては外部から味方を得て、全局面において勝てるようにならなければならないと考えるわけである。