イマドキのスタートアップの命名傾向

【編集部注】著者のJoanna GlasnerCrunchBaseの記者である。

スタートアップたちは完璧な名前を見つけるために大変な努力をする。理想的には、短くて、覚えやすく、説明的で、そして発音が容易でなければならない。

しかしながら、すべての基準を満たす良い名前はほとんど既に取られてしまっているので、ほとんどの創業者たちは妥協を強いられることになる。彼らは創造的なスペルミスを使ったり、自分の好む単語や文字列を付け加えたりする。結局のところ、良い名前のついたスタートアップは、顧客と資金を引き寄せ易いことは事実なのだ。

ここ数年の間に創業され、資金提供された企業を見る限り、スタートアップたちは名前を選ぶ際にしばしば同じ方向性で考えていることは明らかだ。彼らがAIのような最新技術を参照しながら、2もしくは3ワードの名前を組み立てるか、単純に新しい単語を創出している。

「実際、辞書に載ってはいないものの、載っていても不思議ではないような単語を、いくらでも発明できることに驚いています」と語るのは企業のネーミング名前付けコンサルティング会社であるBrighter Namingの創業者Athol Fodenだ。彼はまた、ありふれた名詞と動詞の創造的な組み合わせから、多くの本当に良い名前が出てくることに感心している。

私たちは傾向を探るため、過去2年間に設立された1000以上のスタートアップの名前を調査した。なお、調査の過程で私たちは対象を20万ドル以上の資金を獲得できたスタートアップに絞り込んだ。

以下に最近の動向の一部をまとめた。

AI

最近のベンチャーキャピタリストのお気に入りは、人工知能(artificial intelligence)企業だ。そしてAIは簡潔で普遍的に認められている略語である。なので、資金調達したスタートアップたちが、その名前に”AI”をつけていたとしても驚くべきことではない。私たちは、過去2年間に設立され、資金調達を達成した企業の中に、AIの名前を含むものを少なくとも23社発見した。

これまでのところ、AIの名前を冠した最大の資金調達企業はArgo AIだ。同社はこの2月にFordから1億ドルの投資を受けた、自動運転業界の注目スタートアップだ。他の大規模なラウンドとしては、放射線技師のためのAI駆動医療画像ツールプロバイダのAidoc、顧客体験ソフトウェアにAIを組み込んだRulaiなどがある。

ロボット

ロボット会社が自分自身をそう呼ぶのは当然のことだと思うかもしれない。最近資金調達を行った企業を見ると、その傾向は明らかだ。Crunchbaseの記録によれば、過去2年間に創業し資金調達をした企業の少なくとも10社以上が、社名の一部に”robotics”もしくは”robot”を使っている。

しかし、これまでの投資サイクルでは、ベンチャーキャピタリストからはこの業界があまり注目されていなかったので、多くの企業によって、ロボットへの注力を表現しない名前が選ばれていた。最も顕著な例が、アマゾンが5年前に7億7500万ドルで買った、倉庫ロボット技術開発のKiva Systemsだ。その他の例には、 Harvest AutomationBlue River Technologyがある。もちろん、RoombaのメーカーであるiRobotのように、ロボットのルーツを反映した名前を選んだより古い企業もある。

ファーストネーム

会社に人間のファーストネームを与えることは、スタートアップの世界では特に目新しいことではない。おそらく、このカテゴリーで最もよく知られているスタートアップはOscarだ。創業4年の健康保険会社で、7億ドル以上を調達している。2年前にLinkedInに15億ドルで買収された、オンライン学習プロバイダのLynda.comも、ファーストネーム傾向に従っている。おそらく、Oscar、Lynda、そして最近ではVivが、他の企業にインスピレーションを与えているのだろう。

過去2年の間に、AlbertLucyOlliePennyPearl、Riley、そしてYoshi、その他の企業が現れている。マーケティング担当者向けのAIツールを提供するAidenは、AIという単語と、一般的なファーストネームの両方を含んでいるという意味で、ブランド認知上は更に有利なものになっている。

ハイテク企業の食品名

Appleはこの戦略でとても成功した。このため同じ戦略を使えないかと考える企業もいる。ここ数年の間、ネーミングのアイデアを得るために、食品棚に目を向けるテクノロジーベンチャーは沢山あった。乳製品の棚からは、デジタルパーソナルアシスタントであるButter.aiという名前が生まれている、また今週1900万ドルの資金調達ラウンドを終えたオンライン金融ニュースネットワークのCheddarがある。また農産物の棚からは、オンラインの保存ツールのPlumが生まれた。そしてベーカリーからは、スマートメジャーの開発者であるBagel Labsと、自動車愛好家をターゲットとしたスタートアップのDonut Mediaが生まれた。

ミススペル

理想のスタートアップネームが既に誰かにとられてしまっている?心配無用。”i”を削除して”y”に置き換えたり、”c”を “k”に変更したり、あるいは別の母音を試してみよう。これらは、スタートアップたちが一般的な言葉のように聞こえる名前をひねり出すために使用しているクリエイティブなミススペルテクニックの一部だ。”i”の代わりに”y”を使った名前の例には、MylestoneやShyft Technologiesなどがある。また”c”の代わりに”k”を使ったものには、KustomerやKardなどがある。その他のキャッチーなタイプミス名についてはこのリストを参照して欲しい

ケツ論(konclusion)

FodenがCrunchbase Newsに語ったように、創業者たちのクリエイティビティは、ネーミングプロフェッショナルたちが考えていたものよりも、はるかに幅広い種類のスタートアップ名を可能にしている。彼は数年前には、スタートアップたちはより謎めいた外国語の名前を選ぶようになるのではと予想していたが、現在でもほとんどの企業が彼らの母国語を利用している。

スタートアップたちはまた、2つの単語を使って名前の選択肢を広げることも行ってきた。この場合、通常最初の名前はブランド名で、2番目の名前は業界セクターを示している。

しかし、Fodenによれば、2つの単語によるネーミングの傾向は、大きな野心を持つ創業者たちにとっては一時的なものかもしれない。企業の評価額が1000億ドルを超えた場合、2番目の単語を落とすことが一般的だ。CiscoをCisco Systemsを呼ぶ者は、もはやいない。Appleにしたところで、大概の若者はそれがかつてApple Computerだったことなど覚えていないだろう。

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(翻訳:Sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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