自宅で尿検査できるFDA認可のアプリが初登場

尿路感染はかなり不快な症状に悩まされる。体の構造上、女性に多くみられる病気で、実際、メイヨークリニックによると多くの女性が少なくとも一度は経験する病気なのだという。

尿路感染に苦しむ人のほとんどが、保温パッドを使ったり、水分を多く摂取したり、また鎮痛剤を服用したりして自分で解決しようと試みる。しかしこの病気は短期間で悪化することが多く、医師が呼ばれたり入院したりすることになり、最終的には抗生物質を薬局にもらいに行ってなんとか落ち着く。

これが今までの流れだった。

設立されて間もないサンフランシスコ拠点のスタートアップScanwell Healthが今週、試験ストリップと携帯電話のカメラを使って自宅で尿検査ができるアプリを売り出した。FDA(米国食品医薬品局)の承認を得た消費者向けこの手の検査としては、初めてかつ唯一のものだ。このアプリでは、ストリップを分析するのに高度化された色メトリクスを用い、病気の有無を判断する。

このキットはたったの5ドルだ。Scanwellに電話して検査結果を確認するのにー外部の医師と提携しているー別途25ドルかかる。しかし、もし尿路感染が認められた場合、すぐに抗生物質の処方箋サービスを受けられる(ユーザーは抗生物質を注文することもできるが、届くまでに数日かかる)。

Y Combinator から12万ドルの資金を調達しただけのこのスタートアップはハーバード大のMBA を卒業したStephen Chenにより設立された。彼は、投資家をうっとりとさせるような経歴の持ち主だ。

MBA修了後は、体外診断薬と医療デバイスを扱う設立33年のTeco Diagnosticsに入社した。まずはR&Dマネジャーとして働き、後にGMとなる。彼は2013年にTecoを退社するが、Tecoで習得したものを活用してペットの尿を調べる会社Petnosticsを立ち上げた。このペット用の尿検査では、腎臓結石やバクテリア感染を診断できる。彼は数年前に、自宅から離れたところで“Shark Tank”が開催した公開テストでこの会社をアピールした(日本語版注:Shark Tankは米国のテレビ番組で、投資をしてもらうためにビジネスオーナーたちが投資家の前でプレゼンをするというもの)。そして会社の20%の株式と交換に30万ドルを調達した。

こうした露出作戦は奏功したが、額は大きなものではなかった。結局、Chenはこの資金を受け取らなかった。明らかに、その必要はなかった。というのもPetnosticsは消費者の関心を集め、Chenが言うところの彼のマスタープランの一部であるScanwellの開発費用を賄うのに十分な売上高を出してきた。事実、Chenは3年ほど前にScanwellにかかるFDA承認の手続きを開始した。なぜFDA承認取得に踏み込んだかというと、ヒトの尿路感染テストはペットより大きなマーケットだからだ。毎年、尿路感染による救急処置室行きの費用は数十億ドル規模というデータがある。はっきりとした額を算出するのは難しいが、尿路感染で救急処置室で手当てを受けるとなんと2600ドルもかかる。

こうした事態を変えられるかどうかは、 Scanwellが今後マーケットにどう効果的にアプローチするかにかかっているが、これまでのところはうまくいっているようだ。

消費者が直接使うサービスの導入には時間を要するものの(電話での処方箋サービスに関する規則は州ごとに異なる)、カリフォルニア州といくつかの州では今日からScanwellのサービスを利用できるようになった。一方で、Scanwellはこのキットをできるだけたさくんの大学のキャンパスで入手できるようにしたいと考えている。というのも、学生は性的に活発であり、尿路感染症によくかかるからだ。

また、Scanwellは保険会社とも連携を強化しようとしている。Scanwellのキットを活用することで医療サービスの利用、ひいては保険の支払いを減らすことができ、サービスの評価を高めることができるというのがScanwellの考えだ。

Scanwellの取り組みは尿路感染のテストにとどまらない。この4人のチームはすでに、慢性的な腎疾患や循環器疾患など他の病気を尿で調べるテストの開発に着手している。

「試験紙を使ったテストはかなり安価だ。AOLがかつて大量のCDを送っていたように、消費者に郵送できる。医療サービスと連携し、自宅テストを通して患者に効率的にアプローチできる」と Chenは語る。

Chenの考えに患者が納得するのが前提となるが、もちろんChenが指摘するように自宅テストは“待望のもの”である。

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(翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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