米DARPA、傷負戦士のためにスマート包帯を研究中

戦場ほど迅速で効果的な医療が重要な現場はない。DARPA(米国国防高等研究事業局)は、インテリジェント包帯を始めとする患者の要求を予測して自動的に処置するシステムを使って状況を改善しようと考えている。

通常の切り傷や擦り傷は、ちょっと保護してやるだけで、あとは人間の驚異的な免疫システムが引き受けてくれる。しかし兵士ははるかに深い傷を負うだけでなくその複雑な環境は治癒の妨げになるだけでなく予期せぬ結果を呼ぶ。

DARPAの組織再生のための生体電子工学プログラム(BETR)は、新たな治療方法と装置を開発し、「創傷の状況を細かくに追跡し、治癒過程をリアルタイムで刺激することにより組織の修復と再生を最適化する」。

「創傷は生体現象であり、細胞と組織が連携して修復を試みるにつれ条件が急速に変化する」とBETRのプログラム・マネジャー、Paul SheehanがDARPAのニュースリリースに書いた。「理想的な治療は、創傷状態の変化を感知して治療介入することで正確かつ迅速な治癒を促すことだ。たとえば、免疫反応の調節、創傷が必要とする細胞型の動員、治癒を早める幹細胞の分化などへの介入が考えられる」

どんな治療が行われるかは想像に難くない。スマートウォッチはいくつもの生体信号を監視する機能を持ち、すでにユーザーに不整脈などの警告を与えている。スマート包帯は、光学的、生化学的、生体電子的、機械的を問わず得られる信号は何でも使って患者を監視し、適切な治療を推奨し、あるいは自動的に調節する。

簡単な例を挙げると、特定の化学的信号によって創傷がある種のバクテリアに感染していること包帯が検知したとする。システムは処方を待つことなく適切な抗生物質を適切な分量投与し必要な時点で中止する。あるいは、スマート包帯がせん断応力を検知したあと心拍の上昇を検知すると、患者が移動されて痛みを感じていることがわかる。そこで鎮痛剤を投与する。もちろん、これらの情報はすべて介護者に引き継がれる。

このシステムにはある程度人工知能が必要だが、適用範囲はごく限られている。しかし生体信号にノイズが多いときには機械学習が強力なツールとなってデータ識別に活躍するだろう。

BETRは4年間のプログラムでDARPAはその間にこの分野にイノベーションを起こし、治療結果を著しく改善する「クローズドループの適応システム」を作りたいと考えている。このほかにも、戦闘中に重傷を負った多くの兵士が必要とする人工装具のオッセオインテグレーション手術に対応したシステムも求められている。

こうしたテクノロジーが普及することを期待したいが、慌ててはいけない。これはまだ大部分が理論上の話だ。しかし、さまざまな要素がつながって十分間に合うことも考えられる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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