実在する人物のAIで合成キャラクターを作る技術のHour Oneが5億3000万円を調達

上の写真に写っている人たちは実在の人物だが、本当の姿ではなく合成によって生成された画像だ。プログラムすれば、何でも話すことができる。技術系未来学者はAIを使った本物そっくりの人物画像が人間に置き換わり、マシンと人間との区別がつかなくなる危険性をずっと警告し続けてきた。実際、「ディープフェイク」関する本も新しく出版されている。

しかし、未来はHour One(アワー・ワン)の本日のニュースによってまた一歩近づいた。実際の人物をベースにAIが生成した合成キャラクターで、同社は500万ドル(約5億3000万円)のシードラウンドをクローズした。主導したのはGalaxy Interactive(同Galaxy EOS VC Fundを通じて)、Remagine VenturesKindred VenturesAmaranthineも参加)だ。

Hour Oneは、この資金を使ってAI駆動のクラウドプラットフォームを拡大し、「数千」の新キャラクターを揃え、商業活動の幅を広げる予定だ。

2019年に創設されたHour Oneは、実際の人をベースに高品質なデジタルキャラクターを生成する技術を開発した。制作会社の使用に耐えるレベルの動画用キャラクターを、大規模に費用対効果の高い形で提供するのが狙いだ。本物の人に見えるキャラクターが、どんな製品であれ話題であれ、際限なく語ることができるという点が売りになっている。

Hour Oneの創設者でCEOのOren Aharon(オーレン・アーロン)氏は、声明でこう話している。「実際の人物の合成キャラクターは、私たちの日常の一部になると私は信じています。私たちの将来展望は、Hour Oneが合成キャラクターの利用を推し進め、市場全体とさまざまな使用事例において、事業者と人々との間のコミュニケーションの質を高めることです。私たちの拡張性のあるクラウドプラットフォームを使って、すべての人が自分のキャラクターを作れるようになれば、私たちは次世代の事業者と人との遠隔対話のさまざまなソリューションを提供できるようになります」。

Hour Oneは現在、eコマース、教育、自動車、コミュニケーション、そしてさまざまな業界と協力し、2020年の間に業務向けの応用法を広げたいと考えている。

CES 2020では、「本物か合成か」というそっくりテストが行われていた。人々に本物とAIが生成した合成キャラクターとの区別が付くかどうかを試してもらう催しだ。

だが問題は、このテクノロジーを悪用されずに展開できるかどうかだ。

共同創設者でCTOのLior Hakim(リオー・ハキム)氏によれば、その問題は暗号化技術で対処されるという。キャラクターの使用と権利を保護することで、誰もが「私たちの動画であることを特定でき、改変された場合は視聴者にわかる印が表示される」とのことだ。また同社は、そのテクノロジーの使用に関する倫理規約が設けられているという。

Galaxy Interactive(ギャラクシー・インタラクティブ)の共同創設者で業務執行取締役のSam Englebardt(サム・エングルバート)氏は、このスタートアップは「合成動画制作における倫理駆動のアプローチ」が鍵であり、「生身の俳優を使った撮影が新型コロナウイルスによって困難になった今、Hour Oneの合成キャラクターは、規模の大小に関わらず、あらゆるコンテンツ事業にとってパーフェクトなタイミング」だと話している。

これが合成キャラクターの生成コストを下げるのは明らかであり、文字だけのコンテンツは「文字を読んで視聴者に語りかける人物による実写映像に自動的に変換」できるようになると、Remagine Ventures(リマジン・ベンチャーズ)のEze Vidra(エゼ・ビドラ)氏はいう。

Hour Oneのビジネス戦略責任者Natalie Monbiot(ナタリー・モンバイオット)氏がTechCrunchに話したところによると、同社には「基本的にあらゆる人間を合成キャラクターに変換し、その人の生きているかのようなレプリカを作る」ユニークな能力を提供するという。「これはアバターでも、その人の別バージョンでもありません。本人にそっくりで、本人と同じように振る舞います。基本的に文章をアップロードしさえすれば、新しいコンテンツが生成されるのです。そのため、例えばeコマースでは、キャラクターを選んで製品を紹介させたり、製品の説明をさせたりが可能です。つまりあらゆるSKUの製品に、個別の紹介動画が作れるということです」。

カテゴリー:人工知能・AI

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画像クレジット:Hour One

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(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

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