著者紹介:Noramay Cadena(ノーラメイ・キャデナ)氏は、エンジニアからベンチャーキャピタリストに転職し、現在MiLA Capital(MiLAキャピタル)とPortfolia’s Rising America(ポートフォリアズ・ライジング・アメリカ)の投資をリードしている。
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大抵の場合、機関投資家は、外部からベンチャーに踏み込んで来た者よりも、有名企業から独立したマネージャーを好む。そうしたマネージャーたちは、安全でリスクが低い選択肢に見えるのだ。
そうした印象は、魅力的であり、より注目や資本を集めるのに理想的だと表面上見えるだろう。しかし、実はもっと注目されるべき他の方法がある。それは、VC(ベンチャーキャピタル)に自らの資金で参入してきた新鋭のマネージャーを迎え入れることだ。新鋭マネージャーは、その経験や人格を武器に、確立された業界内でも飛躍できる人材である。
自分の経験を大きく踏まえたうえで、その理由をいくつか挙げていく。2015年、私は自分の資金調達プロセスに便乗し、ベンチャーキャピタルの世界に足を踏み入れた。私は以前、航空宇宙関連の仕事をしていたため、元来、飛行機を組み立てながら操縦するような無茶なことが嫌いだ。ところが、ベンチャーキャピタルの世界に入った時はそのような状況だったのである。それまで、私は十年間も衛星を宇宙に向けて飛ばしていたにも関わらず、ベンチャーキャピタルを始めた時には、猛勉強を強いられた。初めてキャピタルコールのメールを送信した時、その場にいたパートナーたちの表情が思いっきりこわばったことを今でも鮮明に思い出す。我々は、まさに飛行機を操縦しながら操縦方法を学んでいる状態だったのだ。
5年後、我々はMiLAキャピタルの初期資金をすべて配分し終え、身近な技術を開発する創設者のためのエコシステムを構築し、22社に投資した。この時に学んだことをときどき思い返すことがあるが、それは今でもとても役に立っている。
それでは、自ら企業を創設した新鋭のマネージャーが優れた候補者であり、迎え入れるべきなのはなぜなのか、主な理由を7つ挙げよう。
- 転職前に、自己という揺るぎないブランドと名声を高めてきた。彼らは、企業の体質に同調して言いなりになることなく、自力で自分を開花させたのだ。彼らの配慮に満ちたリーダーシップ、ツイート、創設者との働き方などは、まさに所有財産である。創設者の信頼を獲得し、契約を成立させるには、信頼性が何もよりも重要である。
- 生き残るための道として外国人の求人を積極的に活用してきた。プレスリリースや求人版では、一晩であふれるような応募が来るわけではない。チャンスを増やすために、さまざまな組織、大学、他の投資家とのつながりを確立している。
- 自分のポートフォリオを進化させ、生き延びるために努力してきた。第一投資に続いて第二投資を受けるために、新鋭のマネージャーは、自らのポートフォリオで成功例を提示する必要がある。つまりそのマネージャーは、創設者がハードルやチャレンジを乗り越えられるようサポートするために、第一線で尽力してきたこと、さらにスタートアップ企業の真のパートナーとして行動するにはどうすればよいかを理解していることになる。
- 大きい問題から些細な問題まで気苦労に慣れているからこそ、心配事を軽減するという能力を高く評価しているのである。税金やインターネットの請求書の支払い、インターンを雇うための資金調達、ウェブサイトの更新など、起業には、重大事項と共に、とても細かい作業も伴う。それは、創設者と同じように新鋭のマネージャーは、さまざまな役割をこなし、トイレ掃除や物品購入など、雑事を何でもこなすのに慣れているということだ。
- ファンド開発の過程で人格を磨いてきた。新鋭のファンドマネージャーは、必要なことを学び終える前に、仕事をスタートさせてきた。常に学び、実践してきたし、寝ている時でさえ「どうして今なのか」「どうして自分なのだ」と答えもないのに、自問し続けてきた。2019年、First Republic Bank(ファースト・リパブリック銀行)によると、米国に存在するマイクロベンチャーキャピタルの数は1000社に達しようとしており、2015年から毎年100社以上増え続けている。こうした事実にも関わらず、新鋭のマネージャーたちはその中において、個性を発揮し、頭角を現し、自身のコンセプトを証明する機会を勝ち取ったということだ。このようにして、周りに共有できる経験を積み、度胸もついたことだろう。
- ベンチャーでのキャリアを築くために、おそらくたくさんのことを犠牲にしてきただろう。ファンドの構築は時間がかかるうえ、見合った報酬がすぐに得られるわけでもない。この事実を受け入れて粘り強く努力できる人は、長期間の見通しを立てる習慣が身についているということであり(これはベンチャーキャピタルで大切なことである)、この業界にコミットしているということだ。多くの犠牲を払い、実生活に関わる影響を過剰に考えてしまわないよう自制しているのである。新鋭のマネージャーは、こうした特質を備えているのである。
- マイクロベンチャーキャピタルは、多様性に富んだリーダーをひきつけている。新鋭のファンドマネージャーは、資金の不足を埋めようという熱意に突き動かされて活動している。資金不足は、往々にして性別や人種に関係している。新鋭のファンドマネージャーは、今までにない結果を生み出そうという熱意に満ちたアウトサイダーか、チャンスがあっても能力を出し切れず不満を募らせたインサイダーのどちらかである。これが重要なのは、創設者が選択肢を増やし、投資家を逆指名できることに気付き始めているからである。特に、アーリーステージの投資では、この意識の違いが物を言う。
もっとこのことについて話を広げようと思う。なぜなら、多様性とその多様性の活用は、ベンチャー業界において広がりつつある問題だからだ。現在、ベンチャーキャピタル業界の投資家パートナーの内、80パーセントが白人である。それに比べ、ラテン系はたったの3パーセント、また黒人も3パーセントしかいない(NVCA)。ラテン系と黒人が所有する企業は、ベンチャーキャピタルの集計運用資産の1パーセントにしか関わっていない(Knight Foundation(ナイトファウンデーション)調べ)。NAICの報告によると、多様性のある所有者の企業はかなり優れたリターンを生み出しているにもかかわらず、この数字である。具体的には、そうした企業は中央値15.2パーセントに相当する内部収益率をあげている。対して、NAICのポートフォリオにあるすべてのPEファームでは、3.7パーセントにとどまっている。
私の経験から、多様性を持ったファンドマネージャーは、ウルベンチャーズのミリアム・リビエラのような注目に値する例外を除いては、マイクロベンチャーキャピタルに集中していると言えるだろう。そうしたマイクロベンチャーキャピタルは、持続可能なパイプと基盤の構築、また性別や多様性を考慮し、これまでとは違う投資を行うというビジョンを実現することに没頭している。
多くのベンチャーキャピタルでは、Black Lives Matter(「黒人の命は大切」運動)は肯定され有意義なものと捉えられており、さまざまな内容の議論が飛び交っている。業界は、才能のあるマイノリティの人々による投資の機会をどのように利用するか、工夫を凝らして考えている。サイドカー投資が普及しだし、ピッチコンテストが推進され、ベンチャーキャピタルの求人案内は、より広範囲に掲載されるようになった。最初でつまづく原因が排除され、プロセスの効率や透明性が向上しているのである。
これはとても良いスタートだと思う。こうした変化を持続していくために、2020年以降の投資の方向性を検討している企業は、長期的な視点で今後の過程全体をしっかり見極め、新鋭のマネージャーを探す必要がある。そうしたマネージャーたちはいずれ業界の代表格となり、ベンチャーキャピタルが公平性を重視した、長く存続する企業へと成長するための変革を推し進めていくだろう。
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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:コラム
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(翻訳:Dragonfly)